JPH06349047A - 磁気記録媒体及び磁気記憶装置 - Google Patents

磁気記録媒体及び磁気記憶装置

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JPH06349047A
JPH06349047A JP14035193A JP14035193A JPH06349047A JP H06349047 A JPH06349047 A JP H06349047A JP 14035193 A JP14035193 A JP 14035193A JP 14035193 A JP14035193 A JP 14035193A JP H06349047 A JPH06349047 A JP H06349047A
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JP14035193A
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English (en)
Inventor
Tomoo Yamamoto
朋生 山本
Akira Ishikawa
石川  晃
Yoshihiro Shiroishi
芳博 城石
Yuzuru Hosoe
譲 細江
Shinan Yaku
四男 屋久
Akira Ozaki
明 尾嵜
Kiwamu Tanahashi
究 棚橋
Emi Mangyo
恵美 萬行
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Hitachi Ltd
Original Assignee
Hitachi Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】高密度記録時での電磁変換特性が良好な磁気記
録媒体を提供すること。 【構成】非磁性基板11と、非磁性下地層12、12’
と、この上に設けられた複数の磁性層13、13’、1
5、15’、17、17’と、この磁性層の間に設けら
れた非磁性中間層14、14’、16、16’とからな
り、この磁性層の層数を3層以上29層以下とし、さら
に、その残留磁化膜厚積を10[G・μm]以上150
[G・μm]以下、保磁力を1400[Oe]以上35
00[Oe]以下とするか又は非磁性中間層の膜厚を
0.1nm以上5nm以下とした磁気記録媒体。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、超高密度の記録に適し
た薄膜型の磁気記録媒体及びこのような磁気記録媒体を
用いた磁気記憶装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年における電子計算機の目覚ましい発
展に伴い、情報化社会が発達し、扱う情報量は増加の一
途をたどっている。これに従い、外部記憶装置の大容量
化、高速アクセス化は必要不可欠な課題である。特に磁
気ディスク装置は、高密度記録に適した記憶装置であ
り、高速、小型大容量化への要求は一段と強まってい
る。磁気ディスク装置に用いられる磁気記録媒体として
は、酸化物磁性体の粉末を基板上に塗布した塗布型磁気
記録媒体と、金属磁性体の薄膜を基板上に蒸着又はスパ
ッタリングした薄膜型磁気記録媒体とが知られている。
この薄膜型磁気記録媒体は、塗布型磁気記録媒体に比べ
て記録膜中の磁性体の密度が高いため、より高密度の記
録に適している。そのため、現在製造されている磁気デ
ィスク装置の大半では薄膜磁気記録媒体が用いられるよ
うになってきている。
【0003】薄膜磁気記録媒体の一般的な構成として
は、非磁性基板上に非磁性下地層、磁性層、保護層を順
次形成した単層磁気記録媒体が知られている。また、最
近ではより優れた特性を持つ磁気記録媒体として、特開
平1−173313、特開平1−217723等に見ら
れるような非磁性基板上に非磁性下地層を形成し、その
上に磁性層と非磁性中間層を交互に順次形成した後、最
後に保護層を形成した多層磁気記録媒体が知られてい
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の磁気記録媒
体は、高密度記録に対応するための充分な電磁変換特性
が得られなかった。すなわち、単層磁気記録媒体で高密
度の記録再生を行う場合には、高いS/Nを得ることが
できず、多層磁気記録媒体では比較的高いS/Nは得る
ことができるものの未だ不充分であり、しかもオーバー
ライト特性が劣化するといった問題があった。
【0005】本発明の第1の目的は、高密度記録時での
電磁変換特性が良好な磁気記録媒体を提供することにあ
る。
【0006】本発明の第2の目的は、高密度記録時での
電磁変換特性が良好な磁気記録媒体の特性を充分に活か
せた大容量の磁気記憶装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記第1の目的を達成す
るために、本発明の磁気記録媒体は、非磁性基板と、非
磁性基板上に設けられた複数の磁性層と、磁性層の間に
設けられた非磁性中間層とを有し、この磁性層の層数を
3層以上29層以下、その残留磁化膜厚積を10[G・
μm]以上150[G・μm]以下、保磁力を1400
[Oe]以上3500[Oe]以下としたものである。
この非磁性中間層は、膜厚が0.1nm以上5nm以下
であることが好ましい。
【0008】さらに、本発明の磁気記録媒体は、非磁性
基板と、非磁性基板上に設けられた複数の磁性層と、磁
性層の間に設けられた非磁性中間層とを有し、この磁性
層の層数を3層以上29層以下、非磁性中間層の膜厚を
0.1nm以上5nm以下としたものである。
【0009】いずれの磁気記録媒体においても、上記磁
性層の層数は、奇数であることが好ましい。磁性層の層
数が2層以下ではS/Nが十分でなく、30層以上では
一層の膜厚が薄くなり過ぎ、保磁力が低下すると共に耐
温度安定性が著しく劣化するため、3層以上29層以下
が好ましい。さらに層数を16層以上とすることは製造
上の不便さを伴うことから、3層以上15層以下とする
ことがより好ましい。また、複数の磁性層のそれぞれの
膜厚は、実質的に等しい厚さであることが好ましい。こ
こに実質的に等しい厚さとは、各磁性層の膜厚が略等し
いが、全体の膜厚を調整するために、1層だけは、多少
他のものと異なった厚さであってもよいことを意味す
る。
【0010】本発明の磁気記録媒体の磁性層として、C
oP、CoPt、CoTa、CoSi、CoCrPt、
CoCrTa、CoNiCr、CoNiPt、CoNi
Zr、CoSiPt、CoSiTa、CoCrPtS
i、CoCrPtTa、CoCrTaSi、CoNiC
rPt等のCoを主たる成分とする磁性合金を用いるこ
とは、高い保磁力及び記録密度特性が得られるので好ま
しい。磁性層の膜厚は0.2nm以上50nm以下の範
囲であることが、S/Nを高める上で好ましい。
【0011】非磁性中間層としては、Cr、Mo、W、
Ta、Nb又はこれらを主たる成分とする合金等を用い
ることが、磁性層の結晶性、結晶配向性及び結晶粒径を
制御できるために好ましい。合金として上記元素に添加
する元素はTi、Si、Fe、V、Ge、Cu、Pt、
Rh、Ru、Re、Pd、C、N、O等が好ましく、そ
の組成としては0.1at%以上30at%以下である
ことが望ましい。非磁性中間層の膜厚を0.1nm以上
5nm以下の範囲とすることにより、オーバーライト特
性を高めることができる。
【0012】非磁性下地層を設ける場合には、非磁性中
間層と同様にCr、Mo、W、Ta、Nb又はこれらを
主たる成分とする合金等を用いることが、磁性層の結晶
性、結晶配向性及び結晶粒径を制御できるために好まし
い。他の元素、組成については非磁性中間層の場合と同
様である。非磁性下地層の膜厚は5nm以上500nm
以下とすることが好ましい。
【0013】さらに、上記第2の目的を達成するため
に、本発明の磁気記憶装置は、上記のいずれかの磁気記
録媒体と、この磁気記録媒体を保持する保持具と、保持
具と連結する磁気記録媒体駆動部と、磁気記録媒体のそ
れぞれの面に対向して設けられた磁気ヘッドと、磁気ヘ
ッドを駆動する磁気ヘッド駆動部と、磁気ヘッド駆動部
を制御する記録再生信号処理系より構成される。
【0014】上記磁気ヘッドを記録又は再生用磁極の少
なくとも一部に薄膜を用いた磁気ヘッドとし、上記記録
再生信号処理系を最尤復号による信号処理回路を含む回
路とすることが好ましい。さらに、再生用の磁気ヘッド
として磁気抵抗効果を用いて再生する素子(以下、MR
素子という)を有する磁気ヘッドとし、上記記録再生信
号処理系を再生信号波形の非対称性を修正する回路を含
む回路とすることが好ましい。
【0015】
【作用】単層磁気記録媒体の磁性層の膜厚を薄くすると
結晶粒を微細化でき、再生信号の減少分以上に低ノイズ
実現できるので、再生出力と媒体ノイズの比(媒体S/
N)は高めることができる。しかし、実際に装置を正常
に動かすために必要な装置S/Nは、媒体ノイズだけで
なく信号処理を含む回路系や磁気ヘッドのノイズを含ん
だトータルノイズと再生出力との比で決まるため、磁性
膜をあまり薄くし過ぎると、かえって装置S/N(以
下、装置S/Nを単にS/Nという)が劣化してしま
う。このため、単層磁気記録媒体の磁性層の薄膜化には
限度がある。
【0016】一方、多層磁気記録媒体では個々の磁性層
を薄くし、磁性層間に非磁性中間層を介在させることに
よって、結晶粒を微細化したまま磁性層を積層でき、し
かも実質的に各層を統計的に略独立とみなされるまでに
交換相互作用を低減できる。さらにこの場合には、磁性
層間の磁気的な相互作用を弱めることができ、ノイズを
統計和に従って減少できるので、より一層の低ノイズ化
が実現できる。出力についても、磁性層を多数積層する
ことによって、再生出力を高めることができる。これら
の理由から、磁性層間に非磁性中間層を設けた多層磁気
記録媒体では、高いS/Nが実現可能となる。
【0017】しかしながら、この磁性層間の相互作用を
弱める効果は、層数によって異なり、多層磁気記録媒体
の磁性層の積層数を奇数とすることで、各層間の独立性
を高めながら各層からの漏れ磁束が閉じにくい構造にで
きるので、ノイズの低減効果の効率が高められる。層数
を30層以上と分割数を増やすと、一層の膜厚が薄くな
り過ぎ、保磁力が低下すると共に耐温度安定性が著しく
劣化するため、好ましくない。また、非磁性中間層を設
けることによって、非磁性中間層を含む実効的な磁性層
の膜厚が厚くなるので、オーバーライト特性は劣化する
傾向になる。高いS/Nを確保したまま良好なオーバー
ライト特性を確保するには、実効的な磁性層の膜厚を薄
くすることが重要で、さらに非磁性中間層の膜厚を5n
m以下と極力薄くすることが好ましい。
【0018】さらに、非磁性中間層を物理的な成膜法で
実際に成膜しなくとも、磁性層の成膜を一旦停止して再
び成膜するということを繰り返すだけでも、磁性層間に
0.1nm以上の酸化物層、窒素含有層若しくは炭素含
有層又はこれらの混合物層が形成され、実質的に磁性層
間に非磁性中間層を設けたことと同じ効果をもたらすこ
ともできる。
【0019】多層磁気記録媒体の磁気特性としては、残
留磁化膜厚積を150[G・μm]以下とすることで高
い記録密度特性を実現できるが、10[G・μm]より
も小さくすると熱揺らぎの影響が大きくなって保磁力、
再生出力が著しく劣化するので好ましくない。また、保
磁力は1400[Oe]以上とすることで、高記録密度
記録時に高い再生出力が得られるが、3500[Oe]
よりも高くするとオーバーライト特性が著しく劣化する
ので好ましくない。
【0020】本発明の磁気記録媒体と、少なくとも磁極
の一部に金属薄膜を用いた誘導型磁気ヘッドと最尤復号
による信号処理回路とを組み合わせる場合は、高品位の
再生信号が得られるので、従来に比べて1.2倍以上の
大容量の磁気記憶装置が実現できる。これは、少なくと
も磁極の一部に金属薄膜を用いた磁気ヘッドでは、磁極
に金属薄膜を用いない磁気ヘッドに比べ、記録磁界が急
峻になり、媒体ノイズがさらに低く押さえられると同時
に、オーバーライト特性が3dB以上向上することによ
るものである。
【0021】さらに、MR素子を用いた磁気ヘッドを再
生専用ヘッドとして用いる場合には、再生信号のS/N
を高くでき、その再生信号波形の非対称性を修正する回
路と組み合わせることにより、信号処理し易い極めて高
い再生出力が得られるため、1.5倍から2倍以上の大
容量の磁気記憶装置が実現できる。
【0022】
【実施例】
〈実施例1〉本発明の多層磁気記録媒体の断面図を図1
に示す。非磁性基板11としては強化ガラス基板、結晶
化ガラス基板、SiC等のセラミックス基板、Ni−P
メッキAl合金基板、プラスチック基板、ボロン基板、
カーボン基板、Ti合金基板等が用いられる。12、1
2’はCr、Mo、W、Ta、Nb又はこれらを主たる
成分とするCr−Ti、Mo−Nb、W−Ta等の合金
からなる非磁性下地層、13、13’はCoCrPt、
CoCrTa、CoNiPt、CoNiCr、CoSi
Ta、CoSiPt等の磁性合金からなる磁性層、1
4、14’はCr、Mo、W、Ta、Nb又はこれらを
主たる成分とするCr−V、Cr−Fe、 Mo−P
t、Mo−Ge、W−Si、W−Cr等の合金からなる
非磁性中間層、15、15’はCoCrPt、CoCr
Ta、CoNiPt、CoNiCr、 CoSiTa、
CoSiPt等の磁性合金からなる磁性層、16、1
6’はCr、Mo、W、Ta、Nb又はこれらを主たる
成分とする上記のような合金等からなる非磁性中間層、
17、17’はCoCrPt、CoCrTa、CoNi
Pt、CoNiCr、CoSiTa、CoSiPt等の
磁性合金からなる磁性層である。以後、さらにn(n=
0、1、2、3……)回だけ非磁性中間層と磁性層が設
けられている。18、18’はC、WC、(WMo)
C、(ZrNb)N、B4C、水素含有カーボン等から
なる保護層、19、19’はパーフルオロアルキルポリ
エーテル等からなる潤滑層である。
【0023】なお、基板と非磁性下地層の間に、基板表
面の不純物等の影響を低減するために、Ar等のプラズ
マ処理を施したり、或いはNb、Ta、V、Ti、Z
r、Hf、Ni−P、B、Al、Al23等の非磁性層
を設けてもよい。非磁性下地膜は設けなくてもよい。ま
た、磁性層、非磁性中間層は、各層毎に組成や膜厚が変
化していてもよい。
【0024】媒体の残留磁化膜厚積を10[G・μm]
以上、150[G・μm]以下、保磁力を1400[O
e]以上、3500[Oe]以下とするために、基板温
度、He、Ne、Ar、Kr、Xe等のガスの種類、ガ
ス圧力、バイアス電圧、スパッタ時の投入電力等を磁性
層組成、膜構成に応じて調整した。
【0025】以下、さらに詳細に本実施例について説明
する。Ni−Pを10μm程度メッキし、表面を略円周
方向に中心線平均面粗さで0.5から3nmの範囲の微
小傷が入るように研磨した外径95mmφのAl合金か
らなる非磁性基板11に、基板温度300℃、Arガス
圧力1.7mTorr、バイアス電圧−200V、投入
電力密度5W/cm2としてDCマグネトロンスパッタ
リング法で非磁性下地層12、12’としてCrを50
nm成膜した。上記と同じ方法で、磁性層13、13’
としてCo−16at%Cr−4at%Taを成膜し、
次に非磁性中間層14、14’としてCrを2.5nm
成膜し、次いで磁性層15、15’としてCo−16a
t%Cr−4at%Taを成膜し、さらに非磁性中間層
16、16’としてCrを2.5nm、磁性層17、1
7’としてCo−16at%Cr−4at%Taを順次
成膜した。
【0026】以後、n(n=0、1、2、3……)回だ
け非磁性中間層と磁性層を順次成膜した。このとき、磁
性層全体の膜厚が30nmとなるように、磁性層1層の
膜厚を調整した。すなわち、磁性層が3層のとき、各層
の膜厚は10nm、10層のとき、各層の膜厚は3nm
とした。最後に保護層18、18’としてCを25nm
成膜した後、5nmのパーフルオロアルキルポリエーテ
ル系の潤滑層19、19’を形成した。また、比較例1
として、上記実施例と同じ成膜条件のもとで、磁性層の
層数を1層又は2層とした磁気記録媒体を作製した。
【0027】作製した磁気記録媒体の電磁変換特性をN
i−Fe合金薄膜で磁気コア部を形成したギャップ長
0.4μmの薄膜磁気ヘッドを用い、相対速度12.5
m/s、線記録密度65kFCI(キロ フラックス
チェンジ パー インチ)で評価した。測定結果を図2
に示す。同図から、磁性層の層数を増やせばS/Nは大
きくなり、またその改善率は層数を奇数層としたときの
方が高いことが分かる。これは特に媒体ノイズの低減率
が偶数層よりも奇数層としたときの方が高いことに起因
している。一方、オーバーライト特性は磁性層の層数を
増やすほど劣化しており、媒体の設計に当たってはS/
Nとオーバーライト特性の両特性から最適な層数に設定
する必要がある。
【0028】また、残留磁化膜厚積は、磁性層の層数3
層の媒体が135[G・μm]、5層の媒体が125
[G・μm]、保磁力は、3層の媒体が1950[O
e]、5層の媒体が1780[Oe]であった。これ以
外の本実施例の媒体も全て、残留磁化膜厚積が10[G
・μm]以上、150[G・μm]以下、保磁力が14
00[Oe]以上、3500[Oe]以下の範囲にあっ
た。
【0029】なお、磁性層の組成をCo−14at%C
r−6at%Ta、Co−14at%Cr−4at%P
t、Co−30at%Ni−5at%Pt、Co−20
at%Ni−10at%Cr、Co−16at%Si−
4at%Ta、Co−18at%Si−8at%Ptと
変えても同様な結果が得られた。さらに、多層磁気記録
媒体の各磁性層の組成、膜厚を様々に変化させて組み合
わせた構造としても、略同様な結果が得られた。
【0030】〈実施例2〉非磁性基板に1.8”のカー
ボン基板を用い、非磁性基板と非磁性下地層との間に5
0nmのZrを設け、さらに、磁性層をCo−16at
%Cr−4at%Ptとし、かつ、その層数を3層と
し、非磁性中間層の膜厚を0.1nm以上5nm以下の
範囲で変化させた他は実施例1と同様な多層磁気記録媒
体を、バイアス電圧を−300Vとした以外は実施例1
と同様な方法で作製した。ただし、このときの磁性層全
体の膜厚は24nmとした。また、比較例2として非磁
性中間層の膜厚を5nmを超えて変化させた多層磁気記
録媒体も同時に作製した。これらの媒体のオーバーライ
ト特性を実施例1と同様な条件で評価した。測定結果を
図3に示す。
【0031】ここで、非磁性中間層の膜厚が0.1nm
の媒体とは、まず磁性層を8nm成膜した後、一旦成膜
を停止して再び磁性層を8nm成膜するということを繰
り返して、磁性層全体で24nmとなるようにしたもの
である。このとき実質的には、磁性層間に0.1nm程
度の主として酸化物からなる非磁性中間層が形成されて
いる。このとき、成膜雰囲気を変えることにより、この
層を窒素含有層又は炭素含有層とすることもできる。
【0032】図3から本実施例である非磁性中間層の膜
厚が0.1nm以上5nm以下の媒体では、オーバーラ
イト特性が比較例の媒体に比べて著しく向上しているこ
とが分かる。これは、非磁性中間層の膜厚が5nmより
も厚い媒体では、非磁性中間層の膜厚を含む実効的な磁
性層の膜厚を厚くし過ぎたために、記録磁界が実質的に
弱められたことに起因している。なお、非磁性層下地層
を設けなかった場合、又は非磁性下地層、非磁性中間層
をMo、W、Ta、Nb、Cr−Ti、Cr−Mo、W
−Ta、Mo−V等と変えた場合にも同様な結果が得ら
れた。
【0033】〈実施例3〉非磁性基板として2.5”の
強化ガラス基板を用い、磁性層をCo−20at%Cr
−5at%Taとし、磁性層数を5層として非磁性中間
層の膜厚を1nmとした外は実施例1と同様な多層磁気
記録媒体を、バイアス電圧を−400Vとした以外は実
施例1と同様にして作製した。ただし、このときの磁性
層全体の膜厚は、残留磁化膜厚積が10から150[G
・μm]の範囲で変化するように、それぞれの媒体で調
整した。すなわち、各磁性層の膜厚を5.2nmから
5.3nm、全体で26.3nmとして100[G・μ
m]の媒体が得られた。磁性層の膜厚を変化させても、
残留磁化の変化は極めて僅かであり、全体の膜厚に略比
例して残留磁化膜厚積が変化する。例えば、各磁性層の
膜厚を略0.5nm、全体で2.6nmとして10[G
・μm]の媒体を、各磁性層の膜厚を略8nm、全体で
39.5nmとして150[G・μm]の媒体を得た。
また、比較例3として、残留磁化膜厚積が10[G・μ
m]より小さく、或いは150[G・μm]より大きな
媒体も同時に作製した。
【0034】これらの媒体を実施例1と同様な条件で評
価した。S/N及び保磁力と残留磁化膜厚積の関係を図
4に示す。同図から本実施例である残留磁化膜厚積が1
0から150[G・μm]の範囲にある媒体は、比較例
の媒体に比べS/Nが高いことが分かる。また、この範
囲にある媒体の保磁力はいずれも1400[Oe]以上
である。
【0035】磁性膜の組成を、実施例1と同様に、Co
−14at%Cr−6at%Ta、Co−14at%C
r−4at%Pt、Co−30at%Ni−5at%P
t、Co−20at%Ni−10at%Cr、Co−1
6at%Si−4at%Ta、Co−18at%Si−
8at%Ptと変えても、残留磁化膜厚積が10から1
50[G・μm]の範囲の媒体は、保磁力の値は上記と
大きく変わるが、1400[Oe]以上、3500[O
e]以下の範囲にあった。
【0036】良好なS/Nを得るためには、最低でも保
磁力は、1400[Oe]は確保しなければならなかっ
た。しかし、保磁力が3500[Oe]よりも高い媒体
ではオーバーライト特性が劣化して、媒体の特性をトー
タルで考えた場合に好ましくない結果となった。さら
に、残留磁化膜厚積については、いずれの組成でも10
から150[G・μm]の範囲にあることが必要であっ
た。10[G・μm]未満の媒体では再生出力が小さ過
ぎて高いS/Nが得られず、150[G・μm]を超え
る媒体では高密度記録時での再生信号と低密度信号記録
時での再生信号との比(分解能)が著しく劣化した。
【0037】〈実施例4〉実施例1と同じ多層磁気記録
媒体について、再生にMR素子を用いた磁気ヘッドと、
その再生信号波形の非対称性を修正する回路とを用いて
評価したときの電磁変換特性を図5に示す。図2に示し
た自己録再による結果に比べて再生出力が大きくなるた
め、同じ媒体を使っているにもかかわらず著しい電磁変
換特性の向上が認められる。
【0038】〈実施例5〉本発明の磁気記憶装置の一例
の上面図を図6(a)に、そのAA’線断面図を図6
(b)に示す。磁気記録媒体61は、磁気記録媒体駆動
部62に連結する保持具に保持され、磁気記録媒体61
のそれぞれの面に対向して磁気ヘッド63が配置され
る。磁気ヘッド63は、最尤復号による信号処理LSI
を含む記録再生信号処理系65からの信号に基づき、磁
気ヘッド駆動部64により駆動される。
【0039】磁気ヘッド63として、ギャップ長0.4
μmの薄膜磁気ヘッドを用い、これと上記各実施例記載
の磁気記録媒体と組み合わせることにより磁気記憶装置
を構成した。その結果、従来の装置に比べて約1.5倍
の容量を持つ大容量磁気記憶装置を得ることができた。
最尤復号LSIを設けなかった場合には、高々1.2倍
の装置容量の増加に留まった。
【0040】また、磁気ヘッド63として、Ni−Fe
磁極の先端にFe−Al−Si合金薄膜を用いたメタル
インギャップヘッドを用いた場合には、従来装置に比べ
て約1.2倍の容量の磁気記憶装置が得られた。さら
に、磁気ヘッド63を記録、再生分離ヘッドとし、再生
用ヘッドにMRヘッドを用い、これと再生信号波形の正
負の非対称性を10%以下に修正する回路を組み合わせ
たことにより、約2.0倍の大容量磁気記憶装置が実現
できた。出力非対称修正回路を設けなかった場合には、
装置容量の増大は高々1.5倍に留まった。
【0041】以上の実施例では、ディスク状の磁気記録
媒体とそれを用いた磁気記憶装置について述べてきた
が、本発明は片面のみに磁性層を有するテープ状、カー
ド状の媒体及びこれを用いた磁気記憶装置にも適用でき
ることは言うまでもない。
【0042】また、磁気記録媒体の成膜方法はスパッタ
リング法に限らず、蒸着法、イオンビームスパッタリン
グ法、プラズマCVD法、塗布法、メッキ法等のどのよ
うな手法を用いても構わない。
【0043】
【発明の効果】本発明の磁気記録媒体は、従来の磁気記
録媒体に比べてより効率の良いノイズの低減が図られ、
その結果、著しくS/Nが向上できた。また、非磁性中
間層の膜厚を極力薄くし、0.1nmから5nmとする
ことにより、実効的な磁性層の膜厚が薄くなり、オーバ
ーライト特性を向上できた。
【0044】さらに、上記磁気記録媒体を用いた磁気記
憶装置は、電磁変換特性が良好であった。また、この磁
気記録媒体と少なくとも磁極の一部に金属薄膜を用いた
磁気ヘッド又はMR素子を有する磁気ヘッドを用い、出
力非対称修正回路又は最尤復号による信号処理回路を組
み合わせた場合は、従来の磁気記憶装置に比較して大容
量高密度記録の磁気記憶装置が得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の磁気記録媒体の断面構造を示す模式図
である。
【図2】本発明の磁気記録媒体と従来の磁気記録媒体の
S/Nを比較した図である。
【図3】本発明の磁気記録媒体と従来の磁気記録媒体の
オーバーライト特性を比較した図である。
【図4】本発明の磁気記録媒体と従来の磁気記録媒体の
S/Nと保磁力を比較した図である。
【図5】本発明の磁気記録媒体とMRヘッドを組み合わ
せたことによるS/Nを示す図である。
【図6】本発明の磁気記憶装置の上面と断面構造を示す
模式図である。
【符号の説明】
11…非磁性基板 12、12’…非磁性下地層 13、13’、15、15’、17、17’…磁性層 14、14’、16、16’…非磁性中間層 18、18’…保護層 19、19’…潤滑層 61…磁気記録媒体 62…磁気記録媒体駆動部 63…磁気ヘッド 64…磁気ヘッド駆動部 65…記録再生信号処理系
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 細江 譲 東京都国分寺市東恋ケ窪1丁目280番地 株式会社日立製作所中央研究所内 (72)発明者 屋久 四男 東京都国分寺市東恋ケ窪1丁目280番地 株式会社日立製作所中央研究所内 (72)発明者 尾嵜 明 東京都国分寺市東恋ケ窪1丁目280番地 株式会社日立製作所中央研究所内 (72)発明者 棚橋 究 東京都国分寺市東恋ケ窪1丁目280番地 株式会社日立製作所中央研究所内 (72)発明者 萬行 恵美 東京都国分寺市東恋ケ窪1丁目280番地 株式会社日立製作所中央研究所内

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】非磁性基板、該非磁性基板上に設けられた
    複数の磁性層及び該磁性層の間に設けられた非磁性中間
    層を有する磁気記録媒体において、上記磁性層の層数
    は、3層以上29層以下であり、その残留磁化膜厚積
    は、10[G・μm]以上150[G・μm]以下、保
    磁力は、1400[Oe]以上3500[Oe]以下で
    あることを特徴とする磁気記録媒体。
  2. 【請求項2】請求項1記載の磁気記録媒体において、上
    記非磁性中間層は、膜厚が0.1nm以上5nm以下で
    あることを特徴とする磁気記録媒体。
  3. 【請求項3】非磁性基板、該非磁性基板上に設けられた
    複数の磁性層及び該磁性層の間に設けられた非磁性中間
    層を有する磁気記録媒体において、上記磁性層の層数
    は、3層以上29層以下であり、上記非磁性中間層は、
    膜厚が0.1nm以上5nm以下であることを特徴とす
    る磁気記録媒体。
  4. 【請求項4】請求項1から3のいずれか一に記載の磁気
    記録媒体において、上記磁性層の層数は、奇数であるこ
    とを特徴とする磁気記録媒体。
  5. 【請求項5】請求項1から4のいずれか一に記載の磁気
    記録媒体において、上記複数の磁性層のそれぞれの膜厚
    は、実質的に等しい厚さであることを特徴とする磁気記
    録媒体。
  6. 【請求項6】請求項1から5のいずれか一に記載の磁気
    記録媒体において、上記複数の磁性層は、Coを主成分
    とする磁性合金からなることを特徴とする磁気記録媒
    体。
  7. 【請求項7】請求項1から6のいずれか一に記載の磁気
    記録媒体において、上記磁性層の層数は、3層以上15
    層以下であることを特徴とする磁気記録媒体。
  8. 【請求項8】請求項1から7のいずれか一に記載の磁気
    記録媒体において、上記非磁性基板と上記複数の磁性層
    との間に、非磁性下地層が設けられたことを特徴とする
    磁気記録媒体。
  9. 【請求項9】磁気記録媒体、該磁気記録媒体を保持する
    保持具、該保持具と連結する磁気記録媒体駆動部、該磁
    気記録媒体のそれぞれの面に対向して設けられた磁気ヘ
    ッド、該磁気ヘッドを駆動する磁気ヘッド駆動部及び該
    磁気ヘッド駆動部を制御する記録再生信号処理系よりな
    る磁気記憶装置において、上記磁気記録媒体は、請求項
    1から8のいずれか一に記載の磁気記録媒体であること
    を特徴とする磁気記憶装置。
  10. 【請求項10】請求項9記載の磁気記憶装置において、
    上記磁気ヘッドは、記録又は再生用磁極の少なくとも一
    部に薄膜を用いた磁気ヘッドであり、上記記録再生信号
    処理系は、最尤復号による信号処理回路を含むことを特
    徴とする磁気記憶装置。
  11. 【請求項11】請求項10記載の磁気記憶装置におい
    て、上記磁気ヘッドは、磁気抵抗効果を用いて再生する
    素子を有する磁気ヘッドであり、上記記録再生信号処理
    系は、再生信号波形の非対称性を修正する回路を有する
    ことを特徴とする磁気記憶装置。
JP14035193A 1993-06-11 1993-06-11 磁気記録媒体及び磁気記憶装置 Pending JPH06349047A (ja)

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