JPH06329809A - 薄片状シルクパウダー及びその製造法 - Google Patents

薄片状シルクパウダー及びその製造法

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JPH06329809A
JPH06329809A JP14708093A JP14708093A JPH06329809A JP H06329809 A JPH06329809 A JP H06329809A JP 14708093 A JP14708093 A JP 14708093A JP 14708093 A JP14708093 A JP 14708093A JP H06329809 A JPH06329809 A JP H06329809A
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silk
powder
silk fibroin
aqueous solution
fibroin
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Kiyoshi Otoi
清 音居
Osami Yamamoto
修身 山本
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KANEBO SILK EREGANSU KK
Kanebo Ltd
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KANEBO SILK EREGANSU KK
Kanebo Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 薄片状の形状であり、かつ従来のフィブロイ
ン粉末の持つ適度な吸保湿性、皮膚に対する優れた親和
性や平滑性、良好な親水性と親油性のバランス、さらに
は紫外線吸収性等を保持した粉体化粧料用基剤として有
用なシルクパウダーを提供する。また、斯る薄片状シル
クパウダーを工業的容易且つ安価に製造する方法を提供
する。 【構成】 絹フィブロインからなる粉体であって、その
単体形状が薄片状であることを特徴とし、またその製造
方法は、単繊維の平均強度が2.5g/デニール以上で
ある絹繊維を水系媒体に溶解して得られた絹フィブロイ
ン水溶液を、絹フィブロイン濃度として2〜40重量%
に調整した後、凍結乾燥し粉砕することを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高純度のシルクパウダ
ー及びその製造法に係り、特に化粧料基剤に好適な薄片
状のシルクパウダー及びその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】シルクパウダー(絹フィブロイン粉末)
は、その適度な吸湿性や保湿性、皮膚に対する優れた親
和性や平滑性、更には皮膚に対する保護作用等の特性を
有しているために、従来から主としてメークアップ化粧
料基剤等の用途に使用されてきた。
【0003】従来、シルクパウダーとして、特公昭40
−24920号公報には、絹糸をそのまま或は化学的処
理で脆化させたものを粉砕した繊維状のシルクパウダー
が、また特公昭26−4947号公報には絹フィブロイ
ンを適当な濃厚中性塩等に溶解透析し得られたコロイド
溶液を、粉霧乾燥して製造したゲル状絹フィブロインを
粉砕した粒状のシルクパウダーが、更に特公昭58−3
8449号公報には、絹フィブロインを適当な無機中性
塩或はアルカリ性水溶液に溶解後透析し或はしないで得
られたコロイド溶液から、凝固性塩の添加、空気吹込
み、等電点凝固、超音波処理或は高ずり変形速度での攪
拌等で絹フィブロインを凝固析出せしめ、脱水乾燥後熱
水不溶化(β構造化)し、粉砕した、5万以上の平均分
子量を有し、ほぼ球形に近い粒状で、分子の配向が天然
絹糸の1/2以下であり、且つ粒子径が1〜100μで
あり、少なくとも50重量%が熱水不溶性フィブロイン
(β構造)であるシルクパウダーが開示されている。
【0004】しかし特公昭40−24920号公報に記
載のシルクパウダーは、繊維状であり、粒子も大きいた
め化粧料基剤として使用した場合には種々の欠点を有す
る。また、特公昭26−4947号公報に記載のシルク
パウダーは、乾燥方法が粉霧乾燥であるため必然的にそ
の形状は粒状である。そして同じく粉霧乾燥のため水溶
性(α構造)と非水溶性(β構造)の絹フィブロインが
混在し粉体化粧料基剤としては再凝集が起こり易く、ま
た水性化粧料基剤としては不溶物が多く、化粧料基剤と
して不適当である。さらに特公昭58−38449号公
報記載のシルクパウダーも、粒状であるため、顕著に良
好な化粧料用基剤であるが感触や皮膚との馴染み等で若
干の不満足な点がある。
【0005】要するに、これ等の方法で得られたシルク
パウダーは、冷水に不溶性〜難溶性であるため化粧料用
途としてはメークアップ化粧用基剤に限られていて、水
溶性化粧料(基礎化粧料)基剤としては不適当である。
また、その形状は、繊維状〜粒状であって、メークアッ
プ化粧用基剤として理想である薄片状(例、雲母形状)
に比べて化粧用基剤機能としては劣る。
【0006】また絹繊維を原料とした水溶性化粧料基剤
に関しては、絹繊維を塩酸、硫酸、リン酸等の強酸水溶
液中で煮沸分解し、絹繊維の分解で生成する混合アミノ
酸を主成分とする粉末を得る方法、特公昭42−170
30号公報に記載の様に、絹フィブロインを高濃度リン
酸で処理して得られる溶液にアセトン等の特定の有機溶
媒よりなる凝固剤を混合して部分分解物を析出せしめ、
再びこれを水に分散した後、蛋白分解酵素を作用させ、
次いで前記凝固剤を用いて沈澱を析出させる方法が知ら
れている。
【0007】これ等の方法のうち、前者は混合アミノ酸
を主成分とするものであるため、化粧用基剤として特に
有用というものではない。また、後者の場合、本質的に
固液反応であるため分子量分布は広くならざるを得ず、
また平均分子量を低くすればアミノ酸の生成量が必然的
に増加し凝固剤で析出し難くなる等のため品質、コスト
両面に問題があり、操作も煩雑である。
【0008】一方、特開昭56−40695号公報に
は、銅−エチレンジアミン水溶液、水酸化銅−アルカリ
−グリセリン水溶液、臭化リチウム水溶液、カルシウム
或いはマグネシウム又は亜鉛の塩酸塩或いは硝酸塩又は
チオシアン酸塩の水溶液、チオシアン酸ナトリウム水溶
液よりなる群から選ばれた少なくとも一種の溶媒に精練
絹原料を溶解後透析して得た0.5〜20重量%の絹フ
ィブロイン水溶液を酵素或いは酸又はアルカリにより加
水分解して得られる絹フィブロインペプチド水溶液をス
プレードライ法にて粉末化した平均重合度nが2〜45
であり、且つ10〜40μの平均粒径及び嵩密度ρ(g
/cm3 )として e-0.095n-1.77+0.04≦ρ≦e-0.095n-1.77+0.06 で示す範囲の特性を有し、実質的に非晶質である水溶性
の粉末状フィブロインペプチドの製造法が提案されてい
る。
【0009】該方法の場合、溶媒が穏やかなものである
ため絹フィブロインの化粧料用基剤として有用な蛋白質
構造を損傷することが無く、また透析を 膜表面積(cm2 )/プライミング容量(cm3 )≧1
0 を満足する多層膜構造物又は中空糸集束構造物を使用し
て実施し、また加水分解が液−液反応で均一に行われる
ため、得られた絹フィブロインペプチドは分子量分布の
巾がせまく、その平均分子量の調整が容易であり、さら
に乾燥がスプレードライ法で瞬時に乾燥されるため、水
溶性化粧料用基剤として有用で、水への溶解度及び溶解
速度が比較的大きくて速い粉末状絹フィブロインペプチ
ドが得られる。
【0010】しかしながら該方法はスプレードライ法で
乾燥することに、その特徴があるのであるが、一方スプ
レードライ法ならではの問題点を有する。即ち、該方法
の場合、乾燥物が極端にポーラスであるため嵩密度が異
常に小さいことである。このためパウダーの生産効率や
操業性を低下せしめ、保管や輸送の面でもコスト高であ
るのみならず、実際に該パウダーを使用するに当って
は、軽微な粉末であるため空中に飛散しロスが多いと
か、環境を汚す等の問題がある。
【0011】さらに、特開昭61−180800号公報
には、絹繊維を水系媒体に溶解して得られた絹フィブロ
イン溶液を加水分解するか又は加水分解することなく該
溶液の絹フィブロイン濃度を2〜40重量%、pHを
4.5〜7.5に調製した後、凍結乾燥することを特徴
とする冷水易溶性の粉末状絹フィブロインペプチドの製
造法が開示されている。
【0012】該粉末状絹フィブロインペプチドは、平均
重合度が3〜600で且つ平均粒子径10〜40μに於
ける嵩密度が0.2〜0.7g/cm3 の粉末であっ
て、その少なくとも50重量%が冷水易溶性のα構造に
より構成されてなる実質的に非晶質の粉末であり、水に
対する溶解度及び溶解速度が大きく絹フィブロインの好
ましい特性を保持し、吸湿性、保湿性が良く、且つ適度
の嵩密度を持つ化粧料その他に有用な粉末状絹フィブロ
インペプチドである。
【0013】しかしながら、該絹フィブロインペプチド
の形状は粒状であって、メークアップ用化粧用基剤とし
て理想である薄片状(例、雲母形状)に比べて化粧用基
剤機能としては劣る。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明者等は感触や皮
膚との馴染み、さらには紫外線遮蔽性等の面で、メーク
アップ化粧用基剤として理想的な粉体形状である薄片状
(例、雲母形状)のシルクパウダーを製造しようとし
て、その製造条件を鋭意研究の結果本発明を完成したも
のである。
【0015】本発明の目的は薄片状の形状であり、かつ
従来の絹フィブロイン粉末の持つ適度な吸保湿性、皮膚
に対する優れた親和性や平滑性、良好な親水性と親油性
のバランス、さらには紫外線吸収性等を保持した粉体化
粧料用として有用なシルクパウダーを提供するにある。
他の目的は斯る薄片状シルクパウダーを工業的容易且つ
安価に製造する方法を提供するにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】上述の目的は、絹フィブ
ロインからなる粉体であって、その単体形状が薄片状で
あることを特徴とするシルクパウダー、及び単繊維の平
均強度が2.5g/デニール以上である絹繊維を水系媒
体に溶解して得られた絹フィブロイン水溶液を、絹フィ
ブロイン濃度として2〜40重量%に調整した後、凍結
乾燥し粉砕することを特徴とする薄片状シルクパウダー
の製造法によって達成される。尚、絹フィブロイン水溶
液は蚕の絹糸腺を水で希釈して製造したものでも良い
が、経済的にはかなり高価なものになる。
【0017】本発明の薄片状シルクパウダーの平均重合
度は650〜3500(絹フィブロインの構成アミノ酸
の平均分子量を85として平均分子量≒55000〜3
00000)、特に好ましくは800〜2000であ
る。平均重合度が650未満では絹フィブロイン粉末は
薄片状というよりも粒状に近くなる。
【0018】本発明の薄片状シルクパウダーの薄片の厚
みは3μ以下、好ましくは1μ以下である。薄片の厚み
の調整は凍結乾燥する絹フィブロイン溶液の濃度、用い
る絹繊維の単繊維の平均強度で実施する。絹フィブロイ
ン溶液の濃度は希薄なほど薄片の厚みは薄くなるので、
絹フィブロイン溶液の濃度は40重量%以下が好まし
く、特に好ましくは20重量%以下である。40重量%
を越えると、薄片の厚みを3μ以下に調整することは困
難になる。また、用いる絹繊維の単繊維の平均強度は高
いほど薄片の厚みは薄くなるので、絹繊維の単繊維の平
均強度は2.5g/デニール以上、特に好ましくは3.
0g/デニール以上である。2.5g/デニール未満で
あると、薄片の厚みを3μ以下に調整することは困難と
なる。
【0019】本発明の薄片状シルクパウダーは平均重合
度が650以上であるため、水に対する溶解性は平均重
合度が600以下のシルクパウダーに比べてかなり低下
する(参考:特開昭61−180800号公報)。しか
しながら、本発明の薄片状シルクパウダーはこのままで
はメークアップ化粧料用の粉体としては不適当である。
メークアップ化粧料用基剤として使用すべく、該シルク
パウダーを完全に水不溶性にするには、80℃以上の水
蒸気で湿熱処理し、絹フィブロインの結晶構造を少なく
とも50%以上をα→β変性することが必要である。
【0020】ただし本発明のα→β変性前の薄片状シル
クパウダーを冷水に溶解した場合、一時的には完全に溶
解する。しかしながら経時的には不溶性になり、析出物
が発生する。ただ、一時的に水に溶解し、直ちにこれを
化学的又は物理的に修飾する場合は、該シルクパウダー
を水溶性シルクパウダーとして取扱うことは出来る。
【0021】本発明に使用する精練絹原料は、まゆ、生
糸、まゆ屑、生糸屑、キキ、ビス、揚り綿、絹布屑、ブ
ーレット等の単繊維の平均強度が2.5g/デニール以
上の物を常法に従い必要に応じて活性剤の存在下、温水
中で又は酵素の存在下温水中でセリシンを除去し乾燥し
たものを使用する。
【0022】本発明に適用する絹フィブロインの水系媒
体は、銅−エチレンジアミン水溶液、水酸化銅−アンモ
ニア水溶液(シュワイサー試薬)、水酸化銅−アルカリ
−グリセリン水溶液(ローエ試薬)、臭化リチウム水溶
液、カルシウム或はマグネシウム又は亜鉛の塩酸塩或い
は硝酸塩又はチオシアン酸塩の水溶液、チオシアン酸ナ
トリウム水溶液、チオシアン酸リチウム水溶液、臭化リ
チウム水溶液が挙げられるが、コスト及び使用上の点か
らカルシウム又はマグネシウムの塩酸塩又は硝酸塩、品
質の点からはリチウムの臭化物又はチオシアン酸塩が好
ましい。また、これ等の水溶液の濃度は使用する溶媒の
種類、温度等により異なるが、金属塩等の濃度は通常1
0〜80重量%、好ましくは20〜40重量%である。
【0023】精練後の絹原料を前記水溶液よりなる水系
媒体に添加し、温度60〜95℃、好ましくは70〜8
5℃でニーダの如き装置内で均一に溶解するが、液比は
通常2〜50、好ましくは3〜30である。
【0024】得られた絹フィブロイン溶解液から高純度
の絹フィブロインを得るためには、引続いて透析する。
透析はセロファン膜に代表される透析膜や銅−アンモニ
アレーヨンの中空繊維を使用した透析器を用い、前記の
塩類等をほぼ完全に除去する。この場合、絹フィブロイ
ンの品質維持のためには、透析量と透析膜面積を特定す
る必要がある。即ち下記式を満足する多層膜構造物又は
中空糸集束構造物を使用して脱塩を行う。 膜表面積(cm2 )/プライミング容量(cm3 )≧1
0 (ここで、プライミング容量とは透析チューブ又は膜間
の内容積を示す)
【0025】上記数値が10未満の場合、膜分離が迅速
に行われないため透析器中での滞留時間が長くなり、得
られるフィブロイン水溶液は、既に腐敗が始まっている
事が多い。特に本発明を円滑に且つ経済的に行うため
に、上記数値は30以上が好ましく50以上が特に好ま
しい。該条件を満足させる為には、例えば中空糸集束構
造物の場合中空糸の直径を4mm以下にする必要があ
る。
【0026】本発明方法に於いて得られた透析液は、残
留塩濃度が0.003〜0.06重量%と極めて少な
く、特に中空糸の径が0.2mm程度になると、 膜表面積(cm2 )/プライミング容量(cm3 )≒2
00 となり透析器中での滞留時間は数10分で、これを達成
することができ、これより極めて高品質の絹フィブロイ
ン水溶液を得ることができる。
【0027】凍結乾燥に移される透析液の絹フィブロイ
ン濃度は上述したように40重量%以下、特に好ましく
は20重量%以下で、必要に応じて濃縮して調整され
る。本発明方法に於ては、得られた絹フィブロイン水溶
液を、引き続き凍結乾燥法により乾燥する。凍結乾燥は
通常の凍結乾燥機により実施し得るが、水溶液中の絹フ
ィブロイン濃度が2%未満の場合、得られた乾燥物の収
量が仕掛水溶液量に比して極端に少なく、実用的でな
い。
【0028】凍結乾燥の処理は例えば、まず、絹フィブ
ロイン水溶液を浅いバット状の容器に深さ5〜10mm
になるように注入し、全体を一旦−20〜−40℃に急
冷して凍結させる。これを凍結乾燥のチャンバー中の棚
に複数段挿入し、初期は0.5torr程度、終了時に
は0.05torr程度の減圧下乾燥する。減圧乾燥中
は棚に埋め込んだヒーターで気化熱を補給し、凍結物の
表面温度を適当な範囲(共晶点)に調節する。
【0029】かくして得られた乾燥物は、雲母状の薄片
が積層したもので、これを粉砕機で所望の大きさに粉砕
する。粉砕物は、キラキラと輝く絹光沢のやわらかい薄
片で、嵩比重が粉体の大きさにもよるが0.05g〜
0.5g/cm3 の非常に軽い粉末である。
【0030】本発明に於て、凍結乾燥に掛ける絹フィブ
ロイン水溶液に、絹フィブロインの改質を目的として水
溶性高分子を混合することも可能である。水溶性高分子
としては、例えばカゼイン、コラーゲン等の蛋白質、ポ
リビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の合成高
分子等で、これ等は絹フィブロインの剪断力凝固による
結晶析出の防止や粉体強度の増強等に効果がある(参
考:特開平2−113066号公報,特開平2−281
079号公報)。
【0031】本発明に於て、凍結乾燥上りの再生フィブ
ロインは、その少なくとも50重量%がα構造の冷水溶
性フィブロインで構成されている。これを乾燥後または
粉砕後に蛋白質のβ化処理を行うことによって、フィブ
ロインを熱水不溶性することができる。そのβ化処理と
しては乾燥後または粉砕後の粉末を80〜120℃の飽
和水蒸気で湿熱処理することによって行われる。上述の
如き再生フィブロインの熱水不溶化の促進(β構造率の
増大)と共に、フィブロインの結晶化度も増大し、これ
により優れた付着性、伸展性、隠蔽性、分散性、混和
性、それに良好な感触を有するシルクパウダーを得るこ
とができる。
【0032】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明
する。なお、実施例中の測定及び測定結果の算出は次の
方法で行った。
【0033】a. 絹フィブロインの平均分子量の測定 絹フィブロインの平均分子量の測定はゲル濾過分析で行
った。 (ゲル濾過分析条件) カラム: TSKgel G−3000 SWXL(東
ソー(株)) 溶離液: 0.1M Phosphate−Na 緩衝
液/0.3M NaCl(pH7.0) 流速 : 1.0 ml/min 検出器: UV 220nm 標準試料:Thyroglobulin(MW 66
万) γ−Globulin (MW 15万6千) Albumin (MW 6万7千) Cytochrome C (MW 1万2400) 各種蛋白質の標準試料から溶離時間と分子量についての
検量線を求めて絹フィブロインの平均分子量を測定し
た。
【0034】b. 冷水易溶性絹フィブロイン(α構
造)割合の測定 25℃の冷水50cc中で10〜40μに調製した絹フ
ィブロイン10gを5分間攪拌溶解し、溶解せずに残っ
た絹フィブロインを絶乾秤量し(Wgとする)、次式に
より算出した。 α構造絹フィブロイン含有率(重量%)=(10−W)
/10×100
【0035】c. 絹フィブロインの結晶化度の測定 反射粉末法によるX線回析で実施。本発明の絹フィブロ
イン水溶液をテフロン板上で自然乾燥させて得られた厚
さ60μの膜状物を無定型とし、生糸を100%結晶型
と仮定した場合の相対値で測定した。
【0036】d. シルクパウダーの薄片の厚みの測定 電子顕微鏡写真で測定した。
【0037】実施例1 絹フィブロイン原料として平均3.5g/dの糸強度の
生糸屑を用いて、これの100部をマルセル石けん30
部、水3000部の溶液で95〜98℃において3時間
攪拌精練し、残膠を0.1%以下にまで減少させ、水洗
後80℃で熱風乾燥した。塩化カルシウム(CaCl2
・4H2 O)を水に溶解し、表1に示す濃度の水溶液を
調製し70℃に加熱した。これの100部に前記生糸屑
20部をニーダーを用いて攪拌溶解し絹フィブロイン溶
液を製造した。表1に示す如く、塩化カルシウム濃度が
10重量%を超えると生糸屑は容易に溶解したが、比較
例1−(1)のように塩化カルシウム濃度が10重量%
未満である場合には、長時間(24時間以上)でもほと
んど溶解しなかった。
【0038】次に、内径200μ、膜厚20μ、長さ5
00mmの再生セルロース系中空糸を2,000本束
ね、これの両端を中空穴を閉塞することなく集束固定
(シール)したホローファイバー型の透析装置を用い
て、前記各溶解液を1 l/時間の割合で流入させて脱塩
し、フィブロイン水溶液を得た。この場合、透析膜表面
積(cm2 )/プライミング容量(cm3 )は200で
あり、透析液の残留塩化カルシウムは0.07〜0.0
33重量%であった。
【0039】平均分子量測定法により、溶解時の塩化カ
ルシウムの各濃度での絹フィブロインの分子量を測定し
た。比較例1−(6)のように塩化カルシウム濃度が9
0重量%程度になると、5万程度にまで分子量が低下
し、蛋白構造がかなり損傷されていることが推測された
が、塩化カルシウム濃度が80重量%以下により製造し
たものは5万5千以上の分子量を有していた。
【0040】得られた絹フィブロインの6.0重量%の
水溶液を−30℃に急速に冷却し凍結せしめた。これを
乾燥初期は0.5torr、終了時点では0.05to
rr程度の通常の凍結乾燥法で乾燥し、これをヘンシェ
ルミキサーで粉砕し、水溶性で積層雲母板状のシルクパ
ウダーを得た。
【0041】本発明で得られたシルクパウダーは、キラ
キラ輝くやわらかい薄片状の水溶性粉体であり、その厚
みは3μ以下であった。一方、比較例1−(6)の場合
は、光沢は鈍く粒状の粉体であった。
【0042】図1に実施例1−(3)で得られた薄片状
のシルクパウダーの電子顕微鏡写真を示す。また、得ら
れた絹フィブロインの平均分子量、薄片の厚み、α構造
の割合、結晶化度等の物性を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】実施例2 実施例1で製造したシルクパウダーを110℃の飽和水
蒸気で15分間湿熱処理(αβ変性)した結果、該シル
クパウダーは熱水不溶性になり、メークアップ化粧料用
基剤として好適な感触の粉体が得られた。その結果を表
2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】実施例3 実施例1で製造した生糸屑の精練綿を用い、A)法とし
て臭化リチウムの飽和水溶液に室温で溶解し、B)法と
してロダン酸リチウムの飽和水溶液に室温で溶解し、1
5%の溶解液を製造し、実施例1に準じて透析精製し、
5.75%の絹フィブロイン水溶液にし、これを凍結乾
燥後粉砕し、水溶性のシルクパウダーを得た。得られた
シルクパウダーは、キラキラ輝くやわらかい薄片状の粉
体であった。表3に得られたシルクパウダーの物性を示
す。
【0047】
【表3】
【0048】さらに凍結乾燥上りのシルクパウダーを1
10℃の飽和水蒸気で湿熱セット(αβ変性)したとこ
ろ、いずれもα構造の割合は2%以下で熱水不溶性であ
り、結晶化度は80%以上であり、メークアップ化粧料
用基剤として好適な感触の粉体であった。
【0049】実施例4 実施例1−(4)に準じてシルク原料を硝酸マグネシウ
ムの40%水溶液に溶解し、透析後表4に示す濃度の絹
フィブロイン水溶液を調整し、凍結乾燥後粉砕し、水溶
性のシルクパウダーを得た。本発明で得られたシルクパ
ウダーは、キラキラ輝くやわらかい薄片状の水溶性粉体
であり、その厚みは3μ以下であった。表4に得られた
シルクパウダーの物性を示す。
【0050】
【表4】
【0051】さらに凍結乾燥上りのシルクパウダーを1
10℃の飽和水蒸気で湿熱セット(αβ変性)したとこ
ろ、いずれもα構造の割合は2%以下で熱水不溶性であ
り、結晶化度は60%以上であり、メークアップ化粧料
用基剤として好適な感触の粉体であった。
【0052】実施例5 第5令期の蚕から絹糸腺を取り出し、水で希釈し、5.
0%の絹フィブロイン水溶液を製造した。これを実施例
1に準じて凍結乾燥したところ、平均分子量30万、薄
片の厚み0.5μ、α構造の割合100%、結晶化度3
%の水溶性で薄片状のシルクパウダーが得られた。ま
た、これを110℃の飽和水蒸気で湿熱セット(αβ変
性)したところ、α構造は2%以下になり熱水不溶性の
粉体が得られた。
【0053】実施例6 実施例1で精練した生糸屑を1.0g/ lの苛性ソーダ
で80℃で処理し、表5に示す繊維強度の絹原料を調整
した。これを実施例1−(4)に準じて溶解し、透析精
製し、得られた絹フィブロイン水溶液を凍結乾燥し粉砕
した。本発明で得られたシルクパウダーは、キラキラ輝
くやわらかい薄片状の水溶性粉体であり、その厚みは3
μ以下であった。表5に得られたシルクパウダーの特性
を示す。
【0054】
【表5】
【0055】さらに凍結乾燥上りの粉体を110℃の飽
和水蒸気で湿熱セット(αβ変性)したところ、いずれ
もα構造は2%以下で熱水不溶性であり、結晶化度は8
0%以上でメークアップ化粧料用基剤として好適な感触
の粉体であった。
【0056】
【発明の効果】本発明のシルクパウダーは、フィブロイ
ン粉末の持つ適度な吸湿性、皮膚に対する優れた親和性
や平滑性、良好な親水性と親油性のバランス、さらには
紫外線吸収性等を保持したままで、メークアップ化粧料
用基剤として理想的な薄片状粉体である。また、αβ変
性前のシルクパウダーは一時的ではあるが易水溶性であ
り、水溶性シルクパウダーとして基礎化粧料基剤、医薬
品基剤、カプセル剤、浴用剤、シルクプラスティック原
料、食品配合剤等の用途に極めて有用であり、その製造
法は工業的容易且つ極めて有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のシルクパウダーの電子顕微鏡写真であ
る。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 絹フィブロインからなる粉体であって、
    その単体形状が薄片状であることを特徴とするシルクパ
    ウダー。
  2. 【請求項2】 単繊維の平均強度が2.5g/デニール
    以上である絹繊維を水系媒体に溶解して得られた絹フィ
    ブロイン水溶液を、絹フィブロイン濃度として2〜40
    重量%に調整した後、凍結乾燥し粉砕することを特徴と
    する薄片状シルクパウダーの製造法。
  3. 【請求項3】 蚕の絹糸腺を水で希釈して得られた絹フ
    ィブロイン水溶液を、絹フィブロイン濃度として2〜4
    0重量%に調整した後、凍結乾燥し粉砕することを特徴
    とする薄片状シルクパウダーの製造法。
JP14708093A 1993-05-25 1993-05-25 薄片状シルクパウダー及びその製造法 Pending JPH06329809A (ja)

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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2000037581A1 (fr) * 1998-12-22 2000-06-29 Marine Bio Co., Ltd. Agents de protection contre les ultraviolets
JP2008169171A (ja) * 2007-01-15 2008-07-24 Luc Sangyo Kk 絹フィブロイン含有組成物及びその製造法
JP2009221401A (ja) * 2008-03-18 2009-10-01 Tokyo Univ Of Agriculture & Technology 再生絹材料及びその製造方法
CN103768654A (zh) * 2012-10-18 2014-05-07 上海纳米技术及应用国家工程研究中心有限公司 一种水溶性丝素粉及其制备方法

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