JP4270525B2 - 球状再生セルロース微粒子及びそれからなる水懸濁液、ゲル状物質及び球状再生セルロース微粒子の製法 - Google Patents

球状再生セルロース微粒子及びそれからなる水懸濁液、ゲル状物質及び球状再生セルロース微粒子の製法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はセルロース微粒子及びそれから得られる水懸濁液、ゲル状物質及びセルロース微粒子の製法に関するものであり、さらに詳しくは食品、医薬、塗料用途などに有用な再生セルロース微粒子、水懸濁液、ゲルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、ナイロン、ポリエチレン、ポリアクリロニトリル、セルロースなど数多くの高分子微粒子が様々な工業用途に用いられている。これらの中でも特にセルロースは生体適合性に優れていること、食物繊維としての性能があることなどから、食品、医薬分野で非常に幅広い用途があり、用途に応じて微粒子の形態を変化させて使用されている。例えば、セルロース微粒子を水に分散させた水懸濁液は、ココアや牛乳などの飲料の分散安定剤として用いられている。また乾燥させた微粉化セルロースはアイスクリームなどの食品添加剤、錠剤整形時の形態安定剤、あるい化粧クリームや洗剤などの添加剤などに用いられている。
【0003】
一般にこれらのセルロース微粒子の性能を支配している構造因子は粒径とその分布、形態などである。特に食品、化成品など一部の用途では微粒子の粒径を小さくすることが望まれており、今までにも数多くの微細化の試みがなされてきた。これらの中で最も容易なものは物理的方法である。これはボールミルなどの機械力によって粒子同士を衝突させる方法、あるいは凍結割断法などである。これらの方法では化学的にセルロースが変性する心配がない反面、粒径はそれほど小さくならないこと、また粒子の形状、粒径などは一定ではなく分布が広いという致命的な欠点がある。例えばこれを応用したものとして特開昭56−100801の微小繊維状セルロース(ミクロフィブリル化セルロース)が挙げられる。これはパルプの水懸濁液を高圧用均質化装置で処理したものであるが、これで得られたセルロースは大きさの不均一なフィブリル状であり、かつその大きさは数10μmにも及ぶ。よってこれらの懸濁液はざらつき感が非常に強く用途はかなり限定される。
【0004】
一方化学的処理によって得られた微結晶素材として微結晶セルロース(特公昭40−26274)がある。これは木材パルプあるいはコットンリンターのようなセルロース原料の非晶部分を鉱酸で加水分解して崩壊させて得た結晶の集合体からなる粉体である。ただこれらの微粒子の平均粒径は15〜40μmであり、1μm以下の微結晶はほんの0〜2%であることが特開平3−163135の追試実験によって示されている。特開平3−163135ではこれらの問題をクリアしさらに微細化したセルロースの分率を増加させることを目的として、酸加水分解、アルカリ加水分解、酵素分解、スチームエクスプロージョン分解、水蒸気蒸煮のうちの1つまたは2つ以上の組み合わせ処理を前処理として、その後に媒体を湿式粉砕するという方法を開発した。この方法によると水懸濁液にした際、積算体積50%の粒径が0.3〜6μであり、かつ3μ以下の積算体積割合が25%以上の微粒化セルロース素材が得られる。
【0005】
しかし、上記の特公昭40−26274及び特開平3−163135の方法で得られる微粒化セルロースから得られる懸濁液の粒径は少なくともサブミクロン以上の混合物であるため、水懸濁液の透明感は著しく低いという欠点があり、ある種の食品分野への応用が制限されている。
【0006】
また天然セルロースを60%以上の濃厚硫酸で極限まで加水分解することによって幅30nm、長さ100〜200nmの比較的小さいrod状微結晶セルロースが得られることが知られている。これを1〜20%含むサスペンションも透明感に優れている。ただ、これらの微結晶セルロースは長軸方向と短軸方向の比(L/D)が10以上のrod状であり、食品として大量に使用した際、食感として若干の苦み感を生ずるという問題点がある。また粒径としても長軸方向の長さは100〜200nmと比較的大きい。よって食品添加剤として他の懸濁液などと混合する際、均一性が低くなりやすいなどの問題点もある。
【0007】
他方、錠剤成型用の補助助剤としてセルロース微粒子が用いられている。錠剤の中でも一面の中央に割線を有した、いわゆる割線錠は、患者の服用性を向上させるために比較的弱い力で分割することが求められている。その反面、輸送時の錠剤の摩損や破壊などが少ないことも要求されており、そのバランスを保つことが課題の一つとされている。従来技術では割線錠の形態を変えることでそれらの値を向上させようという試みがなされてきたが充分な結果は得られていない。また助剤であるセルロース微粒子の種類を変えても満足な結果は今のところ得られていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、食品として用いた際、ざらつき感、苦み感がなく、分散性の高い透明性に優れたセルロース水懸濁液及びゲル状物質を調製できるようなセルロース微粒子、及び錠剤を形成した際に低打圧でも成形性が良く、かつ摩損性の低いセルロース微粒子を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記のように従来技術には様々な問題点が存在する。本発明者らはかかる点に鑑み、これらの問題点をクリアすべく鋭意検討を重ねた結果、原料セルロースに再生セルロースを用い、硫酸あるいは塩酸による加水分解処理を行って得られる再生微粒子セルロースが、平均粒径20〜100nmの範囲であり、ほぼ均一な球状であることを見いだした。そして驚くべきことに、これらのセルロース微粒子の中で結晶化度が高いサンプルから形成される錠剤は、低打圧で成形可能で摩損性が非常に小さいことを見いだした。またこの範囲の再生セルロース微粒子から得られる水懸濁液は、幅広いPHにおける分散性、透明感、食感が従来のものに比べて著しく優れていること、この懸濁液を水溶液中で濃縮した場合、透明かつ弾性率が高いゲル状物質が生成することを見いだし、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)動的光散乱法(DLS)で求めた0.01wt%水懸濁液の数平均粒径が20nm〜100nmである球状再生セルロース微粒子。
(2)動的光散乱法(DLS)で求めた0.01wt%水懸濁液の数平均粒径が20nm〜100nmであり、かつその粒径分布曲線の半値幅が50nm以下である球状再生セルロース微粒子。
(3)広角X線回折法から求められる結晶化度が60%以上であることを特徴とする上記(1)記載の球状再生セルロース微粒子。
(4)動的光散乱法(DLS)で求めた0.01wt%水懸濁液の数平均粒径が20nm〜100nmである球状再生セルロース微粒子と水からなる水懸濁液。
(5)動的光散乱法(DLS)で求めた0.01wt%水懸濁液の数平均粒径が20nm〜100nmである球状再生セルロース微粒子と水からなるゲル状物質。
(6)重量比で3wt%以下の界面活性剤を含む上記(4)記載の水懸濁液。
(7)再生セルロースを反応温度25〜75℃、反応時間5〜100時間、重量比で20%以上55%以下の硫酸で、あるいは反応温度60〜90℃、反応時間150〜300分、2N以上4N以下の塩酸で加水分解処理することを特徴とする上記(1)記載の球状再生セルロース微粒子の製法。
【0011】
本発明における平均粒径とは、動的光散乱法(DLS)で求めた水懸濁液中での数平均の値である。この際0.01wt%に調製した懸濁液をDLS測定するものとする。本発明における粒径分布曲線とは上記DLS測定で得られたものである。本発明における球状とは、凍結乾燥後のセルロース微粒子の電子顕微鏡写真もしくはAFM(原子間力顕微鏡)写真において観察される微粒子の直径が、おおよそプラスマイナス25%以内の範囲に収まることを言う。本発明における球状再生セルロース微粒子は、平均粒径が20nm〜100nmの範囲に収まり、かつ形状が球状な再生セルロースであることを条件とする。これらの条件が満たされれば、従来技術に比べて透明度、分散性が高く、かつ食品としてのざらつき感、苦み感がない懸濁液が得られる。
【0012】
そしてここで粒径分布曲線の半値幅が50nmの条件が満たされれば、さらにその性能は著しく向上する。
【0013】
本発明における結晶化度とは、磯貝らによって報告された方法[Akira Isogai and Makoto Usuda 繊維学会誌 Vol.46,No.8 p.324(1990)]に従い、広角X線回折パターンから(1)式を用いて求められるセルロースII型についての値である。
χc = I(002)−Iam/I(002) X 100 (1)
【0014】
ここでI(002)、Iamはそれぞれ図1に示すように2θ=12゜における全回折強度及び非晶成分のみの回折強度を表す。セルロース微粒子のχcは水懸濁液の分散性や透明性にそれほど影響を及ぼさないが、χcが60%以上であれば、それから得られる錠剤は低打圧でも強度が高く、かつ摩損性が著しく低い。χcを60%以上にするためには、後述する加水分解反応の条件として、酸濃度を高くするか反応時間を長くする必要がある。
【0015】
本発明における水懸濁液とは、本発明におけるセルロース微粒子が液全体に均一に分散したものを指し、一部の微粒子が沈降したり、2相、3相に分離したような不均一なものは含まない。水懸濁液の分散性は、懸濁液の濁度を尺度として評価することができる。本発明における濁度とは、1wt%水懸濁液の660nmの吸光度を指し、吸光度が高いほど懸濁液の濁度は高い。様々なPHにおける水懸濁液の濁度は以下の実験方法に従って測定する。PH=2〜10に調製した所定濃度の水懸濁液に2分間超音波処理を施した後濁度をそれぞれ測定し、それ以後一日おきに濁度を測定する。本発明における水懸濁液は、サンプル調製時点で、PH=2〜10の9種類の懸濁液の濁度のふれ幅が20%以内に収まり、かつその状態が10日以上継続する。
【0016】
本発明における界面活性剤を含む水懸濁液は、フィルム作成やコーティングの際に安定に懸濁液をキャストできると共に他の素材に対する接着性を増大させる働きがある。一般に、界面活性剤は親水基の種類によってアニオン性、カチオン性、非イオン性、両性の4種類に分類できるが、本発明においてはその種類は問わないが、透明な液体状であることが望ましい。界面活性剤の濃度は3wt%以下でなければならない。3wt%を越える界面活性剤はセルロース微粒子の分散性を阻害する。懸濁液のコーティング安定性は、懸濁液と素材との接触角の大きさを指標として判定することができる。すなわち懸濁液の水滴を素材の上に滴下し、その水滴を写真撮影した際、その接触角が小さいほど素材との親和性は高く、コーティング安定性は高い。
【0017】
本発明におけるゲル状物質とは、本発明におけるセルロース微粒子と水からなり、系全体に微粒子が分散したままゲル状となったものを指し、一部の微粒子が沈降したり、水が遊離したような不均一なものは含まない。懸濁液とゲル状物質との違いは、動的粘弾性測定において損失弾性率(G’’)と貯蔵弾性率(G’)との比tanδ(G’’/G’)で判定することができる。この際測定はG’が線型領域で行うものとする。本発明ではtanδが1より小さいものはゲル状物質とする。
【0018】
本発明におけるセルロース微粒子は、20〜55%の硫酸水溶液、あるいは2N〜4Nの塩酸で再生セルロースを加水分解処理したスラリーを脱イオン水で希釈し、遠心分離−デカンデーション処理したを繰り返した後、0.1wt%以下の濃度に希釈したのち凍結乾燥、あるいは臨界点乾燥あるいはスプレードライ法を用いて乾燥する事によって得られる。この際、水をアセトンやエタノールに置換した後に凍結乾燥あるいは臨界点乾燥することによっても微粒子の凝集を防ぐことができる。またセルロース微粒子を水懸濁液やゲル状物質として用いる場合は、凍結乾燥することなく、「NEVER DRY」の状態で上記の溶液からそのまま、あるいは濃縮することによっても単離できる。遠心分離−デカンデーション処理でサスペンションが中性になりにくい場合は、脱イオン水による透析、あるいは中和処理を併用することも好ましい。反応の際の酸濃度は酸の種類によって異なる。硫酸を用いた場合は20%〜55%、塩酸の場合は2N〜4Nでなければならない。酸濃度が上記範囲より低い場合は加水分解反応が充分に起こらない。一方酸濃度が高い場合はセルロースが一部溶解して収率が著しく低下する。反応時間、反応温度については酸濃度に併せて適宜変化させる必要がある。硫酸を用いた場合、おおよそ反応温度は25〜75度、反応時間は5hから100h程度である。一方塩酸を用いた場合は、反応温度は60度から90度、反応時間は150分〜300分である。反応の終了は溶液をサンプリングして酸濃度を希釈し、DLSを測定してその粒径から判断する。
【0019】
本発明における再生セルロースとは、天然セルロースを一度溶剤に溶解し、再生して得られるものであれば形態、重合度は何でも良い。また原料となる天然セルロースの種類、溶剤の種類は問わない。但し上記(1)式から求められるX線結晶化度χcが20%以上であることを条件とする。
【0020】
本発明における微粒子の平均粒径、形状の確認に用いた測定法の詳細について以下に示す。
1)粒径分布:大塚電子製DLS700を用い、0.01wt%の水懸濁液を 25℃、散乱角60°で測定した。また粒径は数平均での値を用いた。
2)形状:Degital Instruments社製 Nano Scope IIIを用い、0.1wt%の水懸濁液を凍結乾燥した後、25℃、大気中でのtappingモードで測定した。
【0021】
【実施例】
以下実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。
【0022】
実施例1〜3および比較例1〜3
公知の方法で調製した銅アンモニアセルロース溶液から得られた再生セルロース不織布10gを50wt%の硫酸1000gに浸責し、70℃で16時間加水分解処理した。得られたセルロース微結晶分散液を10000rpmの速度で 10分遠心分離した。沈殿物をデカンデーションにより取り出し、脱イオン水を注入して攪拌し、再び遠心分離した。この操作を数回繰り返すことによって、セルロースは沈殿することなくセルローススラリーが得られた。これを凍結乾燥して得られたサンプルを実施例1とする。
【0023】
また加水分解に用いる酸が2Nの塩酸であり、反応温度が90度、反応時間が200時間であること以外は実施例1と全く同じ条件で球状再生セルロース微粒子を調製した。これを実施例2とした。
【0024】
また加水分解に用いる硫酸濃度が38wt%であること以外は実施例1と全く同じ条件で球状再生セルロース微粒子を調製した。これを実施例3とする。
【0025】
また硫酸濃度が18%である以外は実施例1と同様の条件で球状再生セルロース微粒子を調製した。これを比較例1とする。
【0026】
また公知の方法で天然セルロースの微結晶セルロースサスペンションを調製した。以下にその製法を示す。DP=1500のアラスカパルプを64wt%の硫酸で70度、10分間加水分解処理した。得られた分散液を上記と同様の方法で連続の遠心分離−デカンデーションの繰り返し処理を行い、比較サンプルとして0.01wt%のサスペンションを得た。これを実施例1と同様に凍結乾燥して得られたセルロースを比較例2とする。
【0027】
また特開平3−163135記載の方法で調製した0.01wt%のセルロース懸濁液から凍結乾燥で得られたセルロースを比較例3とする。
【0028】
これらのサンプルのAFM写真を図2〜4に示す。すなわち、実施例1、2のセルロース微粒子は図2に、実施例3および比較例1のセルロース微粒子は図3に、そして比較例2および比較例3のセルロース微粒子は図4に示す。比較例2、3はrod状であるのに対して、実施例1、2、3及び比較例1はほぼ球状の微粒子から形成されていることがわかる。また実施例1〜3及び比較例1のセルロース微粒子を広角X線回折測定し、結晶化度χcを求めた結果を表1に示す。ここで比較例2、3についてはセルロースI型の結晶型を持つため、本法では結晶化度は算出できない。実施例1、2に比べて実施例3のχcは小さく、酸加水分解の際の硫酸濃度がχcに影響を及ぼすことが明らかになった。さらにこれら実施例1〜3及び比較例1〜3のセルロース微粒子を0.01%含む水懸濁液を調製し、これらのDLS測定から求めた数平均の粒径及びその粒径分布の半値幅を表1に併せて示す。実施例1、2、3の平均粒径は比較例3に比べて著しく小さい。また比較例1、2に比べても実施例1、2、3の平均粒径は小さいことがわかる。
【0029】
Figure 0004270525
【0030】
実施例4〜7および比較例4〜6
実施例1〜3の球状再生セルロース微粒子を1%含む水懸濁液を調製し、それぞれ実施例4〜6とした。また実施例4の水懸濁液に0.5wt%の界面活性剤[旭化成工業社製アミノ酸系界面活性剤「アミノサーファクタント」(アニオン性)]を添加したサンプルを実施例7とした。また比較例1〜3のセルロース微粒子を1wt%含む水懸濁液を調製しそれぞれ比較例4〜6とした。これらのサンプルについて分散性試験を行った結果を表2に示す。またこれら6種類の水懸濁液のポリ塩化ビニルフィルム上での接触角を測定した結果も併せて示す。
【0031】
分散性の指標である濁度は上述の方法に従って測定した。すなわち1wt%水懸濁液をPH=2〜10に調製し、温度25℃、周波数45kHz、本田電子社製強力超音波洗浄機を用いて2分間超音波処理を施した後660nmの吸光度を測定する。それ以後一日おきに濁度を測定する。
【0032】
ここではPH違いによる濁度のふれ幅が10%未満の状態が10日以上継続するサンプルを◎、10%以上20%未満のサンプルを○、10日までに濁度の値が20%以上に変化してしまうものを△、固形分が沈殿して吸光度が測定できない場合を×として表示した。比較例5はPH=2,3の条件で濁度が50%以上高くなった。また比較例6はPH=2〜4の条件下、調製後すぐに沈殿物を生じた。これに対して実施例4、5、6はPH=2〜10のすべての範囲で濁度の変化幅は20%未満であり、全てのPHにおいて良好な分散性を示した。またその状態は10日以上継続した。特に実施例1はこの効果が高いことがわかる。このように本発明において得られるセルロース微粒子からなる水懸濁液は、従来のものに比べて幅広いPHで分散性が高いことが明らかになった。さらに粒径分布の狭い単分散性の高い水懸濁液は著しくその効果が高いことが明らかになった。
【0033】
また接触角の結果から本発明における水懸濁液は従来品に比べて汎用プラスチックであるポリ塩化ビニルフィルムとの接触角が小さく、コーティング安定性が高いことが予想される。中でも、少量の界面活性剤を含むサンプルは著しくその効果が大きいことが示された。
【0034】
Figure 0004270525
【0035】
次に実施例4〜6及び比較例4〜6の水懸濁液の食品としての苦み感を100人のパネラーにランク付けをさせ、性能を調査した。この際ランクとしてはABCDの4種類を選びAを最高ランク(苦み感なし)、Dを最低ランク(苦み感強い)とした。その結果を表4に示す。また実施例1〜3の球状再生セルロース微粒子を4wt%含むゲル状物質を調製し、それぞれ実施例8〜10とした。また比較例1〜3のセルロース微粒子を4wt%含む懸濁液を調製し、比較例7〜9とした。これらの6種類のサンプルについても同様に苦み感の検査を行った。この結果を表5に示す。
【0036】
これらの結果から、本発明で得られる水懸濁液、及びゲル状物質は食品としての苦み感が非常に低いことがわかる。さらに粒径分布の狭い実施例1はこの効果が著しい。
【0037】
Figure 0004270525
【0038】
Figure 0004270525
【0039】
次に実施例1〜3及び比較例1〜3のセルロース微粒子600g、フェナセチン800g、とうもろこしでんぷん200g、乳糖400gをポリ袋中で3分間混合し、ついでステアリン酸マグネシウムを10g加え更に30秒間混合したものをロータリー打錠機で8.5mmφ、隅角平杵(割線付き)の杵を用いてターンテーブル回転速度24rpmで打錠し、片面に割線のある錠剤を得た。これを実施例11〜13及び比較例10〜12とする。この錠剤の高度及び摩損度を表6に示す。
【0040】
Figure 0004270525
【0041】
これらの結果から、本発明の球状再生セルロース微粒子から作成された割線錠は、比較例に比べて同じ打錠圧で比較するとより高い硬度となり、かつ低い摩損度となる。さらに本発明の球状再生セルロース微粒子の中でもX線結晶化度の高いサンプルはその効果が著しいことが明らかになった。
【0042】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、幅広いPHにおいて分散性が高くかつ食品としての苦み感の低い水懸濁液やゲル状物質を調製できるような球状再生セルロース微粒子を得ることができ、またこの中で粒径分布の一定範囲以下のサンプルについては著しい効果が得られる。またX線結晶化度の高い微粒子から得られる錠剤は低打圧でも成形性が高く、かつ摩損性が小さい優れたものである。よって本発明から得られるセルロース微粒子は、食品分野だけでなく医薬、建築材料をはじめ様々な用途で展開可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】球状再生セルロース微粒子の広角X線回折パターン。
【図2】実施例1、2の球状再生セルロース微粒子のAFM写真。
【図3】実施例3および比較例1の同写真。
【図4】比較例2、3の同写真。

Claims (7)

  1. 動的光散乱法(DLS)で求めた0.01wt%水懸濁液の数平均粒径が20nm〜100nmである球状再生セルロース微粒子。
  2. 動的光散乱法(DLS)で求めた0.01wt%水懸濁液の数平均粒径が20nm〜100nmであり、かつその粒径分布曲線の半値幅が50nm以下である球状再生セルロース微粒子。
  3. 広角X線回折法から求められる結晶化度が60%以上であることを特徴とする請求項1記載の球状再生セルロース微粒子。
  4. 動的光散乱法(DLS)で求めた0.01wt%水懸濁液の数平均粒径が20nm〜100nmである球状再生セルロース微粒子と水からなる水懸濁液。
  5. 動的光散乱法(DLS)で求めた0.01wt%水懸濁液の数平均粒径が20nm〜100nmである球状再生セルロース微粒子と水からなるゲル状物質。
  6. 重量比で3wt%以下の界面活性剤を含む請求項4記載の水懸濁液。
  7. 再生セルロースを反応温度25〜75℃、反応時間5〜100時間、20%以上55%以下の硫酸、あるいは反応温度60〜90℃、反応時間150〜300分、2N以上4N以下の塩酸で加水分解処理することを特徴とする請求項1記載の球状再生セルロース微粒子の製法。
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