JPH06328684A - インク噴射装置 - Google Patents

インク噴射装置

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JPH06328684A
JPH06328684A JP5123862A JP12386293A JPH06328684A JP H06328684 A JPH06328684 A JP H06328684A JP 5123862 A JP5123862 A JP 5123862A JP 12386293 A JP12386293 A JP 12386293A JP H06328684 A JPH06328684 A JP H06328684A
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  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 インク噴射が行われるインク室に隣接するイ
ンク室におけるノズルからの空気の巻き込みを防止する
こと。 【構成】 圧電セラミックスプレート2の隔壁56の前
半部の分極57と後半部の分極58とは、分極方向が反
転している。そして、電極8に対して電圧を印加する
と、隔壁56の分極57,58が反対であるので、隔壁
56の前半部と後半部とが反対方向に変形する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、インク噴射装置に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】今日、これまでのインパクト方式の印字
装置にとってかわり、その市場を大きく拡大しつつある
ノンインパクト方式の印字装置のなかで、原理が最も単
純で、かつ多階調化やカラー化が容易であるものとし
て、インクジェット方式の印字装置が上げられる。なか
でも印字に使用するインク滴のみを噴射するドロップ・
オン・デマンド型が、噴射効率の良さ、ランニングコス
トの安さなどから急速に普及している。
【0003】ドロップ・オン・デマンド型として特公昭
53−12138号公報に開示されているカイザー型、
あるいは特公昭61−59914号公報に開示されてい
るサーマルジェット型がその代表的な方式としてある。
このうち、前者は小型化が難しく、後者は高熱をインク
に加えるためにインクの耐熱性に対する要求が必要とさ
れ、それぞれに非常に困難な問題を抱えている。
【0004】以上のような欠陥を同時に解決する新たな
方式として提案されたのが、特開昭63−252750
号公報に開示されているせん断モード型である。
【0005】図6に示すように、上記せん断モード型の
インク噴射装置1は、圧電セラミックスプレート2とカ
バープレート10とノズルプレート14と基板41とか
ら構成されている。
【0006】その圧電セラミックスプレート2には、ダ
イヤモンドブレード等により切削加工され、複数の溝3
が形成されている。また、その溝3の側面となる隔壁6
は矢印5の方向に分極されている。それらの溝3は同じ
深さであり、かつ平行である。それら溝3の深さは圧電
セラミックスプレート2の一端面15に近づくにつれて
徐々に浅くなっており、一端面15付近には浅溝7が形
成されている。そして、溝3の内面には、その両側面の
上半分に金属電極8がスパッタリング等によって形成さ
れている。また、浅溝7の内面には、その側面及び底面
に金属電極9がスパッタリング等によって形成されてい
る。これにより、溝3の両側面に形成された金属電極8
は浅溝7に形成された金属電極9によって電気的に接続
されている。
【0007】次に、カバープレート10は、セラミック
ス材料または樹脂材料等から形成されている。そして、
カバープレート10には、研削または切削加工等によっ
て、インク導入口16及びマニホールド18が形成され
ている。そして、圧電セラミックスプレート2の溝3加
工側の面とカバープレート10のマニホールド18加工
側の面とがエポキシ系接着剤20(図8参照)によって
接着される。従って、インク噴射装置1には、溝3の上
面が覆われて横方向に同じ間隔を有する複数のインク流
路であるインク室4(図8参照)が構成される。図8に
示すように、そのインク室4は長方形断面の細長い形状
であり、全てのインク室4内には、インクが充填され
る。
【0008】図6に示すように、圧電セラミックスプレ
ート2及びカバープレート10の端面に、各インク室4
の位置に対応した位置にノズル12が設けられたノズル
プレート14が接着されている。このノズルプレート1
4は、ポリアルキレン(例えばエチレン)テレフタレー
ト、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケ
トン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネイト、酢酸
セルロース等のプラスチックによって形成されている。
【0009】そして、圧電セラミックスプレート2の溝
3の加工側に対して反対側の面には、基板41が、エポ
キシ系接着剤等によって接着されている。その基板41
には各インク室4の位置に対応した位置に導電層のパタ
ーン42が形成されている。その導電層のパターン42
と浅溝7の底面の金属電極9とは、周知のワイヤボンデ
ィングによって導線43で接続されている。
【0010】次に、制御部のブロック図を示す図7によ
って、制御部の構成を説明する。基板41に形成された
導電層のパターン42は各々個々にLSIチップ61に
接続されている。また、クロックライン52、データラ
イン53、電圧ライン54及びアースライン55もLS
Iチップ61に接続されている。LSIチップ61は、
クロックライン52から供給される連続したクロックパ
ルスに基づいて、データライン53上に現れるデータに
応じて、どのノズル12からインク滴の噴射を行うべき
かを判断する。そして、駆動するインク室4内の金属電
極8に導通する導電層のパターン42に、電圧ライン5
4の電圧Vを印加する。また、駆動するインク室4以外
の金属電極8に導通する導電層のパターン42にはアー
スライン55の電圧0Vを印加する。
【0011】次に、図8,図9によって、インク噴射装
置1の動作を説明する。LSIチップ61が、所要のデ
ータに従って、インク噴射装置1のインク室4bからイ
ンクの噴射を行なうと判断する。すると、金属電極8e
と8fとに正の駆動電圧Vが印加され、金属電極8dと
8gとが接地される。図9に示すように、隔壁6bには
矢印13bの方向の駆動電界が発生し、隔壁6cには矢
印13cの方向の駆動電界が発生する。すると、駆動電
界方向13b及び13cは分極方向5とが直交している
ため、隔壁6b及び6cは、圧電厚みすべり効果によ
り、この場合、インク室4bの内部方向に急速に変形す
る。この変形によってインク室4bの容積が減少してイ
ンク圧力が急速に増大し、圧力波が発生して、インク室
4bに連通するノズル12(図6参照)からインク滴が
噴射される。
【0012】また、駆動電圧Vの印加が停止されると、
隔壁6b及び6cが変形前の位置(図8参照)に戻るた
めインク室4b内のインク圧力が徐々に低下する。する
と、図示しないインクタンクからインク供給口16(図
6)及びマニホールド18(図6)を通してインク室4
b内にインクが供給される。
【0013】なお、通常では、インク室4内のインクを
効率よく噴射するために、上記分極方向を反対にして、
正の電圧を印加することによって、まず、隔壁6b及び
6cをお互いに離れるように変形させ、その後、電圧の
印加を停止することによって、隔壁6b及び6cを変形
前の位置(図8参照)に戻して、インク滴を噴射させる
方法が用いられている。
【0014】このような駆動方法を用いた場合の各イン
ク室4内におけるインク噴射時の圧力波の挙動につい
て、図10のタイミングチャートと図11のインク噴射
装置1の断面図を参照しながら具体的に説明する。ま
ず、図11のインク室4bからインクを噴射するため
に、当該インク室4に対し図10(a)で示す噴射用電
圧パルスBを与える(ここで、あるインク室4に対して
電圧を与えることは、そのインク室4に面する電極に電
圧を印加することを言う)。すると、隔壁6は矢印方向
71に分極されているので、最初の立ち上がりで隔壁6
bと6cはお互いに離れるように動く(図11参照)。
インク室4bの体積が増えて、ノズル12付近を含むイ
ンク室4b内の圧力が減少する(図10(b))。この
状態を図10中のALで示される間だけ維持する。する
と、その間マニホールド18(図6)からインクが供給
される。
【0015】なお、上記ALはインク室4内の圧力波が
インク室4の長手方向(マニホールド18からノズルプ
レート14まで、またはその逆)に対して、片道伝播す
るに必要な時間であり、インク室4の長さとインク中で
の音速によって決まる。圧力波の伝播理論によると、前
記パルスBの立ち上げからちょうどALの時間が経過す
るとインク室4b内の圧力が逆転し、正の圧力に転じ
る。このタイミングに合わせてインク室4bに印加され
ている電圧を0Vに戻す(図10(a))。すると、隔
壁6bと6cは変形前の状態に戻り、インクに圧力が加
えられ、前記正に転じた圧力と隔壁6b、6cが変形前
の状態に戻ることにより発生した圧力とが合成され、図
10(b)に示すような比較的高い圧力Pbがインク室
4b内のインクに与えられて、インクがノズル12から
噴射される。
【0016】上述した構成のインク噴射装置1を用いて
記憶媒体にイメージ情報を形成するにあたっては、その
構造上明らかに少なくとも隣接するインク室4から同時
にインクを噴射することはできない。そのため、例えば
特開平2−150355号公報に記述されたようにイン
ク室4を奇数のものと偶数のものの2つのグループに分
けて交互に噴射させる方法を用いる。さらに、このよう
な方法を用いた場合において、各インク室4間の相互干
渉いわゆるクロストークが大きいときには、その改善方
法としてインク室をお互いまたがる3つ以上のグループ
(例えばグループが3つの場合は、図9においてインク
室4aと4dが、インク室4bと4eが、インク室4c
と4fがそれぞれ同一グループのメンバーである)に分
けて順次にローテーションして駆動することも提唱され
ている。
【0017】また、特開平4−284253号公報に
は、図12に示すように、隔壁6の長手方向に3つに分
割された電極91a,91b,91cが形成されてお
り、電極91c、電極91b、電極91aの順位に電圧
を印加し、隔壁6の長手方向の変形するタイミングを変
えて、インクを噴射するインク噴射装置90が記載され
ている。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開平
2−150355号公報では、2つ以上のグループに分
けて駆動する時、次に述べるような不都合が生じる。つ
まり図9において例えばインク室4bから噴射するとき
に、当然ながらそれの隔壁6bおよび6cが変形する
が、隔壁6bは同時にインク室4aの隔壁でもあり、隔
壁6cは同時にインク室4cの隔壁でもあるので、イン
ク室4a及び4c内にも圧力波が生じる(図10
(c))。これら各インク室4内の圧力波はインクを媒
体としてインク室4内を伝播するとともに壁面などで反
射され、インク室4内を往復しながら減衰していくが、
インクを噴射するインク室4bとその隣のインク室内4
cの圧力波の変動は常に位相が反対で、振幅が比例する
ことが明かである。インク室4a,4cのノズル12付
近の圧力は、パルスBの立ち上がりにより、正圧が発生
し、AL経過すると、負圧Pc1となり、時間AL毎に
圧力が変化する。
【0019】したがって、インク滴の飛翔速度を上げる
ために、高い駆動電圧パルスBを印加して、インク室4
b内の圧力Pbを高くすると、必然的にその隣のインク
室4c内の負圧Pc1も増大する。それが原因でノズル
12のメニスカスが破壊されて、ノズル12からインク
室4c内に空気が巻き込まれて、インク室4c内で気泡
が生じ、インク室4cからインク噴射ができなくなるこ
とがしばしばある。また、負圧Pc1がALの期間発生
しているので、メニスカスがノズル12からインク室4
cへ移行して、ノズル12からインク室4c内に空気を
巻き込んで、インク噴射を妨げることがあった。
【0020】また、特開平4−284253号公報で
は、電極91a,91b,91cを分割しているので、
インク噴射装置90の構成が複雑になる。また、幅の狭
い溝3内に電極91a,91b,91cを形成すること
は難しく、その製造に時間がかかるといった問題があっ
た。
【0021】本発明は、上述した問題点を解決するため
になされたものであり、簡単な構成であって、インク噴
射が行われるインク室に隣接するインク室におけるノズ
ルからの空気の巻き込みを防止し、印字品質が良好であ
るインク噴射装置を提供することを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するため
に本発明の請求項1では、分極された圧電素子の隔壁で
分離された複数の溝を形成した基板と、インク室を形成
するために前記基板の溝を覆うカバープレートとを有
し、前記圧電素子の隔壁の変形によってインク室内のイ
ンクに圧力を与えてインク室に対応したノズルからイン
クを噴射するインク噴射装置において、前記圧電素子の
隔壁の分極方向が、隔壁の長手方向において一様でない
ことを特徴とする。
【0023】請求項2では、前記隔壁の分極方向は、一
様でない部分において180゜異なっていることを特徴
とする。
【0024】請求項3では、前記隔壁を変形させるため
の電極は、隔壁の長手方向に一様に形成されていること
を特徴とする。
【0025】
【作用】上記の特徴を有する本発明のインク噴射装置で
は、圧電素子の隔壁の変形がインク室の長手方向におい
て一様でないため、隔壁の各部分の変形により生じた各
圧力波が、インク室内で伝播し、ノズル付近で異なった
位相をもって合成して、インクを噴射する。
【0026】
【実施例】以下、本発明を具体化した一実施例を図面を
参照して説明する。尚、従来技術と同一の部分には同一
の符号を付し、その説明を省略する。また、インク噴射
装置そのものは、隔壁の分極方向を除いて図6,7に示
したものと同一のものを用いる。
【0027】まず、本実施例の隔壁について説明する。
図1に示すように圧電セラミックスプレート2の隔壁5
6の分極方向を示す矢印57,58が隔壁56の長手方
向において、その約中央を境に反対になっている(以
下、隔壁56の分極57の部分を前半部とし、分極58
の部分を後半部とする)。これは、隔壁56を分極する
ときに、それぞれの部分に反対の電圧を印加することに
よって実現できる。一方、この隔壁56の上半分には、
電極8が隔壁56の長手方向に一様に形成されている。
そして、電極8に対して電圧を印加すると、隔壁56の
分極57,58が反対であるので、図2に示すように、
隔壁56の前半部と後半部とが反対方向に変形する。
【0028】次に、インク噴射装置51の動作について
図3および図4を用いて説明する。インクを噴射するた
めに図3(a)の駆動電圧パルスFを図4のインク室4
bに印加する。すると、電圧パルスFの立ち上がりで、
隔壁56bと隔壁56cとの前半部が図4中実線で示す
ように互いに離れるように変形し、後半部が図4中破線
で示すように互いに接近する方向に変形する。
【0029】電圧パルスFの立ち上がり時における、イ
ンク室4b内のインクには、隔壁56b,56cの前半
部の変形によりインク室4b前半部に負圧を発生し、隔
壁56b,56cの後半部の変形によりインク室4b後
半部に正圧が発生する。そして、図3(b)に示すよう
に、電圧パルスFの立ち上がり時における、インク室4
b内のノズル12(図5)付近のインクには、隔壁56
b,56cの前半部の変形による負圧が発生する。
【0030】その後1/2AL経過すると、ノズル12
付近には、圧力波の伝播理論により、隔壁56b,56
cの後半部の変形による正圧が伝播する。また、電圧パ
ルスFの幅は1/2ALであるので、立ち上がり後1/
2AL経過すると、電圧パルスFが立ち下がり、隔壁5
6b,56cが元の状態に戻る。このとき、インク室4
b内のインクに、隔壁56b,56cの前半部の変形に
よりインク室4bの前半部に正圧を発生し、隔壁56
b,56cの後半部の変形によりインク室4bの後半部
に負圧を発生する。従って、1/2AL経過時には、ノ
ズル12付近の圧力は、前記伝播した正圧と、電圧パル
スFの立ち下がりによる隔壁56b,56cの前半部に
よりインク室4bの前半部に発生する正圧とが合成され
た正圧P1となる。以下、インク室4bのノズル12付
近の圧力は、圧力波の伝播理論により、1/2AL経過
毎に変化し、電圧パルスFの立ち上がり後、AL経過す
ると負圧P2となり、3/2AL経過すると正圧P3と
なっていく。
【0031】このような電圧パルスFをインク室4bに
対して印加することによって、インク室4bのノズル1
2付近での圧力変動が得られ、インクがP1及びP3の
2回の正圧によってノズル12から押し出される。この
正圧P1及びP3と従来技術の圧力波形図10(b)の
正圧Pbとを比べると、正圧の高さは同じであって、正
圧のかかる時間もトータルで同じである。
【0032】したがって、もし図3(b)の負圧P2が
なければ、前記両者の場合のインクをノズル12から押
し出すために投入したエネルギーはほぼ同様であり、ほ
ぼ同様な飛翔速度と体積をもつインク滴が得られると予
測できる。ところが、図3(b)の圧力波形の正圧P1
と正圧P3との間に負圧P2が発生しており、この負圧
P2はノズル12からすでに正圧P1によって押し出さ
れたインクを吸い込むように働き、噴射効率が格段に落
ちてしまうように見える。しかし、インクメニスカスの
状態をも考慮にいれて考える場合では、噴射効率の低下
が必ずしも大きくはないといえる。なぜなら、図3
(b)の正圧P1が終了し、負圧P2に変化するときの
インクメニスカスの状態は図5に示すようになってい
て、その頭部13は、すでに正圧P1によってノズル1
2から押し出され、しかも一定の速度を持っている。し
たがって、図3(b)の負圧P2が発生しても、メニス
カスのネック部17を細くするだけで、頭部13に対す
る減速作用はほとんどない。その後メニスカスの頭部1
3が慣性で進行しながら、ネック部17が徐々に細くな
る。
【0033】そして、ネック部17が切れる前、または
切れた後に、ノズル12付近の圧力は再度正圧P3に転
じ、再度インク室4b内のインクをノズル12から押し
出す。それ以降は新たな正圧がないから、メニスカスが
ノズルから離れて、インク滴となって噴射される。
【0034】一方、インク室4bの隣のインク室4cで
は、ノズル12付近の圧力変動が図3(c)で示すよう
になる。電圧パルスFの立ち上がり時における、インク
室4c内のインクには、隔壁56cの前半部の変形によ
りインク室4c前半部に正圧を発生し、隔壁56cの後
半部の変形によりインク室4c後半部に負圧が発生す
る。その電圧パルスFの立ち上がり時における、インク
室4c内のノズル12付近のインクには、隔壁56cの
前半部の変形による正圧が発生する。
【0035】その後1/2AL経過すると、ノズル12
付近には、圧力波の伝播理論により、隔壁56cの後半
部の変形による負圧が伝播する。また、電圧パルスFの
幅は1/2ALであるので、立ち上がり後1/2AL経
過すると、電圧パルスFが立ち下がり、隔壁56cが元
の状態に戻る。このとき、インク室4c内のインクに、
隔壁56cの前半部の変形によりインク室4cの前半部
に負圧を発生し、隔壁56cの後半部の変形によりイン
ク室4cの後半部に正圧を発生する。従って、1/2A
L経過時には、ノズル12付近の圧力は、前記伝播した
負圧と、電圧パルスFの立ち下がりによる隔壁56cの
前半部によりインク室4cの前半部に発生する負圧とが
合成された負圧P11となる。以下、インク室4cのノ
ズル12付近の圧力は、圧力波の伝播理論により、1/
2AL経過毎に変化し、電圧パルスFの立ち上がり後、
AL経過すると正圧P12となり、3/2AL経過する
と負圧P13となっていく。
【0036】電圧パルスFをインク室4bに対して印加
することによって、インク室4cのノズル12付近での
圧力変動が得られ、負圧P11とP13によってインク
メニスカスがノズル内で後退し、もし、正圧P12がな
けらば、負圧のトータル作用時間が従来技術を示す図1
0(c)の負圧Pc1とほぼ同様で、空気の巻き込みも
従来と同じように発生し易い。ところが、本発明のイン
ク噴射装置51においては、負圧P11とP13の間に
正圧P12が存在するので、負圧P11によって後退し
たメニスカスが、正圧P12によって一旦回復されるの
で、空気の巻き込みに寄与するのは負圧P13だけであ
る。この負圧P13の発生する期間は1/2ALである
ので、メニスカスのインク室4c内への移行量が小さく
なって、インク室4c内への空気の混入が防止される。
【0037】なお、インク室4bに隣接するインク室4
aについても、インク室4cと同様である。
【0038】そして、前記電圧パルスFを所定のタイミ
ングで、インク室4bに複数個印加すれば、インク室4
bから複数個のインクが噴射されので、それら噴射され
たインク全体の容量が変化し、印字の階調を制御するこ
とができる。
【0039】このように構成されたインク噴射装置51
では、隔壁56における前半部の分極57と後半部の分
極58との方向が反転しており、隔壁56に電圧を印加
すると、前半部と後半部との変形方向が反対であるの
で、噴射するインク室4bのノズル12付近の圧力は1
/2AL毎に変化する。この圧力変化を利用して、噴射
するために、インク室4bの隔壁56b,56cに1/
2ALの幅の電圧パルスFが印加され、その電圧パルス
Fの立ち上がりと立ち下がりによる隔壁56b,56c
の前半部と後半部との変形による、圧力が合成されてイ
ンクが噴射される。このとき、隣接するインク室4cの
ノズル12付近の圧力も、1/2AL毎に変化し、メニ
スカスを後退させる負圧がP11,P13が発生し、負
圧P11と負圧P13との間に正圧P12が発生する。
このため、負圧P11により後退したメニスカスは正圧
P12により押戻されて回復し、負圧P13により再び
後退されるが、負圧P13の期間が1/2ALであるの
で、メニスカスの後退量が小さく、インク室4c内への
空気が混入しなくなる。
【0040】また、電極8が隔壁56の長手方向に一様
に形成されているので、電極8の形成を容易に行なうこ
とができる。
【0041】更に、インク室4bの隔壁56b,56c
に1/2ALの幅の電圧パルスFが印加されて隔壁56
b,56cが変形し、インク室4b内のインクに圧力が
与えられてインクが噴射され、初めに圧力が与えられて
から2.5AL後にインク室4b内の圧力変動が収まる
ので、従来と比較して、0.5AL分速く圧力変動が収
まる。このため、インク噴射装置51の駆動周波数が速
くなり、印字速度が速くなる。
【0042】尚、本発明は以上詳述した実施例に限定さ
れるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲の変更は
可能である。
【0043】本実施例では分極57と分極58とが隔壁
56の長手方向の中央で反転しているが、反転する位置
は必ずしも中央でなくても良い。分極57,58の反転
位置をずらすことによって、図3(b),(c)の圧力
波形を調整することができる。したがって、異なる特性
を持つインクに応じて、噴射特性がよく、かつ気泡の混
入を最大限に防止できるようにすることができる。
【0044】また、本実施例では分極57と58とが隔
壁56の長手方向において反転するのみであって、分極
57,58の強さ(度合い)は一様であったが、分極5
7,58の強さは必ずしも一様である必要はない。隔壁
56の各位置での分極57,58の強さを調整すること
によって、図3(b),(c)の圧力波形を調整するこ
とができる。したがって、異なる特性を持つインクに応
じて、噴射特性がよく、かつ気泡の混入を最大限に防止
できるようにすることができる。
【0045】更に、本実施例では、隔壁56の分極が2
つに分割されていたが、3つ以上に分割してもよい。
【0046】
【発明の効果】以上説明したように本発明のインク噴射
装置によれば、前記圧電素子の隔壁の分極方向が、隔壁
の長手方向において一様でないので、インク室の隔壁の
各部分の変形方向が異なり、ノズル付近の圧力変動の周
期が速くなる。このため、インクを噴射するインク室の
隣のインク室におけるノズル付近の圧力変動の周期も速
くなり、メニスカスが後退する負圧の期間が短くなっ
て、ノズルからの気泡混入が防止される。従って、気泡
混入によるインクの噴射不能が発生しなくなって、印字
のドット抜けがなく、印字品質が良好である効果を奏す
る。また、インク室内での圧力変動が従来より速く収ま
るので、インク噴射装置の駆動周波数が速くなり、印字
速度が速くなる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例のインク噴射装置の分極方向
を示す説明図である。
【図2】前記実施例のインク噴射装置の隔壁の動作を示
す説明図である。
【図3】前記実施例の動作を示すタイミングチャートで
ある。
【図4】前記実施例のインク噴射装置の動作を示す説明
図である。
【図5】前記実施例のインク滴形成を示す説明図であ
る。
【図6】従来技術のせん断モード型インク噴射装置を示
す斜視図である。
【図7】従来技術の制御部を示す説明図である。
【図8】従来技術のせん断モード型インク噴射装置を示
す断面図である。
【図9】従来技術のせん断モード型インク噴射装置の動
作を示す説明図である。
【図10】従来技術の噴射装置の動作を示すタイミング
チャートである。
【図11】従来技術のせん断モード型インク噴射装置の
動作を示す説明図である。
【図12】他の従来技術のせん断モード型インク噴射装
置を示す説明図である。
【符号の説明】
2 圧電セラミックスプレート 3 溝 4 インク室 6 隔壁 8 電極 10 カバープレート 12 ノズル

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 分極された圧電素子の隔壁で分離され
    た複数の溝を形成した基板と、インク室を形成するため
    に前記基板の溝を覆うカバープレートとを有し、前記圧
    電素子の隔壁の変形によってインク室内のインクに圧力
    を与えてインク室に対応したノズルからインクを噴射す
    るインク噴射装置において、 前記圧電素子の隔壁の分極方向が、隔壁の長手方向にお
    いて一様でないことを特徴とするインク噴射装置。
  2. 【請求項2】 前記隔壁の分極方向は、前記一様でな
    い部分において180゜異なっていることを特徴とする
    請求項1記載のインク噴射装置。
  3. 【請求項3】 前記隔壁を変形させるための電極は、
    隔壁の長手方向に一様に形成されていることを特徴とす
    る請求項1記載のインク噴射装置。
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