JPH06317394A - 冷却塔における循環冷却水の水質管理方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 （修正有） 【目的】ブロー装置及び水処理剤注入装置を備えた冷却
塔における循環冷却水の水質管理において、水処理剤の
初期注入操作を自動化する。 【構成】冷却塔１の使用開始時または冷却塔の掃除時に
ける冷却水の導電率の予定のレベルに基づき一定の時間
経過後水処理剤注入装置１２を作動させ自動的に初期注
入を行い、その後一定の期間経過するまでは再度の初期
注入が行なわれないようにした。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、ブロー装置及び水処理
剤注入装置を備えた冷却塔における循環冷却水の水質管
理方法に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】冷却塔は一般に知られているように冷却
水を空気と直接接触させて水を蒸発させ、その潜熱によ
り水を冷却するもので、冷却水と空気とを直接接触させ
ているので、単に空気の温度を高くして熱を運ぶ空冷熱
交換器より伝熱効率がよく、小型でしかも低価格にでき
るなどの特徴をもち、従って従来大型から小型のものま
で種々の冷却塔が提案され、冷凍、空調用として実用に
供されている。ところで冷却塔の管理上において生じる
問題としては循環冷却水系に発生する腐蝕障害、スケー
ル障害及びスライム障害等があり、特に開放式循環冷却
水系では、循環冷却水の一部が冷却塔で蒸発するため、
循環冷却水中の溶存塩類は循環冷却水中で濃縮されるこ
とになる。また循環冷却水中にイオンの形態で存在する
カルシウム、シリカ等はスケール生成のもととなってい
る。これらの障害は熱交換効率を低下させるだけでなく
冷凍機や配管等を損傷させることになる。このような障
害を防止するため、循環水中に含まれる塩分やその他の
不純物の含有量を一定の値以下に保つための循環水の一
部を循環冷却水系外へ排出するブローダウン及び防食
剤、スケール防止剤等の薬剤注入が行われている。ブロ
ーダウンによる循環冷却水系の濃縮管理及び薬剤注入管
理は通常循環水の電導率を測定し、それに基づき循環水
の濃度倍率を算出し、ブロー水量を自動制御する方式が
採られている。一方防食剤やスケール防止剤等の水処理
剤は循環水中に適度な濃度を常時保持する必要があり、
この保持投入に必要な水処理剤の量は、設定した薬剤の
保持濃度に基づきブロー量、飛散損失量または補給水量
等に応じて決められ、薬剤注入装置により設定した量の
水処理剤を補給注入するようにしている。

【０００３】ところで、水質管理、特に防食剤、スケー
ル防止剤等の薬剤注入は、冷却塔内の水槽中の循環冷却
水の導電率を定期的に測定し、その測定データに基づい
て投入量を決められるが、循環冷却水が蒸散して薬剤の
濃縮が設定された上限に達すると、導電率センサがこれ
を感知し、ブローを開始させ、薬剤の濃縮が設定された
上限より小さなディファレンシャル値以下になると、ブ
ローは停止される。従来の方法では、ブロー量と関係な
く薬剤の注入量が設定され、濃縮に関係なく定量注入ポ
ンプで設定した量の薬剤が注入されていた。そのため外
気の低い時は薬剤濃度が高く、外気温が高くなりはじめ
て規定量になるので、時期に応じて知識や経験を有する
者が注入量を決めていた。一方このような管理のできる
者がいない場合には負荷（蒸発量）の多い７〜８月頃を
基準にしてポンプ設定するのが一般的であった。そこで
先に特願平３−11956 号においてブロー量と薬剤注入量
とを直接関連させて管理する方法を提案し、それにより
薬剤の無駄をなくすと共に経時的にも水処理剤の濃度を
常にほぼ一定に保持することができるようになった。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】上記の特許出願におい
て先に提案した、ブロー装置及び水処理剤注入装置を備
えた冷却塔における循環冷却水の水質管理方法は、ブロ
ー装置の作動によるブローダウン量を計測し、計測した
ブローダウン量に応じて水を補給すると共に水処理剤注
入装置を作動させ水処理剤を冷却塔における循環冷却水
中に注入して循環冷却水中の水処理剤の濃度を所望のレ
ベルに維持することから成っている。これにより上述の
ように、ブローダウン操作と水処理剤の注入操作とを一
連の水管理操作として自動的に実施することができ、ま
た計測したブロー装置の作動時間に比例して水処理剤注
入装置による水処理剤の注入量を設定しているので、余
分に注入する必要がなく、しかも水処理剤の濃度を常に
ほぼ一定に保持することができるが、しかし冷却塔の使
用開始時または冷却塔の掃除時における水処理剤の初期
注入は従来のように人為的に行う必要がある。このこと
は、装置の完全自動運転化の妨げとなっているだけでな
く、この種の装置の使用開始時期がほぼ同じ時期（４〜
５月頃）に集中しており、その時期に掃除や保守点検を
行うと共に水処理剤の初期注入を行う必要があるため、
作業人員を確保するのが困難となる等の解決すべき課題
を残している。そこで、本発明は、上記のような課題を
解決するため冷却塔において従来人為的に行われていた
使用開始時または掃除時における水処理剤の初期注入を
自動化できるようにした冷却塔における循環冷却水の水
質管理方法を提供することを目的としている。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明による、ブロー装置及び水処理剤注入装置
を備えた冷却塔における循環冷却水の水質管理方法は、
冷却塔の使用開始時または冷却塔の掃除時における冷却
水の予定の第１の電導度からこの第１の電導度より高い
予定の第２の電導度への変化を検出した時点から一定の
時間経過後水処理剤注入装置を作動させ初期注入として
一定量の水処理剤を冷却塔における循環冷却水中に一回
注入することを特徴としている。一回の一定量の水処理
剤の初期注入から次回の一定量の水処理剤の初期注入ま
での間隔は上記一定の時間より長く設定され得る。

【０００６】

【作用】水処理剤の初期注入量は、保有推量に対して水
処理剤注入装置の作動時間を設定することによって決め
られる。導電率は冷却塔に冷却水の入っていない状態で
は０μS/cmであり、水道水補給水では200 μS/cm程度が
多く、東京近辺の井戸水では300 μS/cm前後が多く、冷
却塔を洗浄した時または冷却塔を洗浄せずに冷却水を補
充した時における冷却水の第１の電導度を例えば200 μ
S/cmとし、第２の電導度を例えば300 μS/cmとする。そ
して導電率検出器で検出される値が、第１の電導度であ
る200 μS/cmから第２の電導度である300 μS/cmへ変化
した時点から計時が行われ、一定時間（例えば24時間程
度）経過した後水処理剤注入装置が作動され、水処理剤
の初期注入が自動的に一回行われる。次回の初期注入は
上記の一定時間より長い任意の期間（例えば240 時間程
度）後に可能となるようにされる。これにより水処理剤
の初期注入の自動化が可能となり、また水処理剤の初期
注入のサイクルも最適化できると共に予定の期間内に重
複した初期注入を避けることができる。

【０００７】

【実施例】以下添付図面を参照して本発明の実施例につ
いて説明する。図１には、本発明の方法を実施している
冷却塔及び水管理装置の一例を示し、１は冷却塔で、こ
の冷却塔１には冷却水の循環管路２、３及び水補給管４
が連接されている。また冷却塔１の下部水槽内にはオー
バーフロー管５が配設され、このオーバーフロー管５の
上端を跨いでブロー装置を構成している逆Ｕ字形のサイ
ホンパイプ６が取付けられ、サイホンパイプ６の一端に
は下部水槽内の冷却水をサイホンパイプ６へ送り込んで
サイホン現象を生じさせるポンプから成る水供給手段７
が取付けられ、またサイホンパイプ６の他端はオーバー
フロー管５内へ伸びている。サイホンパイプ６の屈曲し
た頂上部には空気を供給してサイホン現象を止める空気
供給管８が連通しており、この空気供給管８は適当な形
式の開閉弁９が取付けられている。水供給手段７及び空
気供給管８における開閉弁９はブロー動作制御装置10に
接続され、サイホンパイプ６によるブロー操作を制御す
るように構成されている。11は冷却水の導電率を検出す
る検出器で、この検出器11で検出された導電率を表す信
号はブロー動作制御装置10に供給される。12は防食剤や
スケール防止剤等の水処理剤を冷却水中に導入する水処
理剤注入装置であり、ブロー動作制御装置10によって動
作制御される。また13はブロー装置における水供給手段
７及び空気供給管８の開閉弁９の動作に応動して水供給
手段７の作動開始時点から開閉弁９の開放時点までのサ
イホン現象継続時間すなわちブロー時間を計測するブロ
ー時間設定用タイマー装置であり、このタイマー装置13
で計測したブロー時間信号はブロー動作制御装置10に送
られ、計測したブロー時間に比例して水処理剤注入装置
12の動作を制御するのに用いられる。

【０００８】また、図１において14は水処理剤の初期注
入動作制御装置で、この初期注入動作制御装置14には検
出器11で検出された導電率を表す信号が供給される。そ
して初期注入動作制御装置14は初期注入時点及び初期注
入量設定用タイマー装置15及び初期注入サイクル設定用
タイマー装置16を介して水処理剤注入装置12に接続さ
れ、検出器11からの導電率を表す信号に基づいて水処理
剤注入装置12による水処理剤の初期注入を制御するよう
に構成されている。すなわち、初期注入動作制御装置14
においては、冷却塔１の使用開始時または冷却塔の掃除
時に、検出器11からの冷却水の導電率を表す信号が、例
えば200 μS/cmの第１のレベルから例えば300 μS/cmの
第２のレベルへ変化すると、初期注入時点及び初期注入
量設定用タイマー装置15への動作制御出力信号が発生さ
れ、それによりタイマー装置15は作動される。タイマー
装置15は、初期注入動作制御装置14からの動作制御出力
信号による始動から予定の時間（この時間は任意に設定
でき、通常冷却塔の清掃に一日要するので例えば一例と
して24時間程度）経過後、水処理剤注入装置12を予定の
時間作動させるように機能する。同時に初期注入サイク
ル設定用タイマー装置16も作動され、このタイマー装置
16は、上記の水処理剤の初期注入から一定の期間（例え
ば240 時間、この時間は装置の運転状態や条件等を考慮
して任意に設定することができる）タイマー装置15によ
る初期注入動作を阻止するように働く。そしてタイマー
装置16で設定された一定の期間が経過すると、タイマー
装置15は再び作動可能となる。さらに、図示してない
が、ブロー装置を構成している各要素、水処理剤注入装
置、各タイマー装置及び各動作制御装置の電源としては
同一の電源、例えば太陽電池を用いることができ、駆動
電源として太陽電池を利用した場合には既存の冷却塔に
対して特別な電気的配線工事をする必要なしに本発明の
方法を実施することができる。

【０００９】このように構成した装置を用いて実際に冷
却水を管理する操作について説明すると、冷房運転を始
める場合には通常冷却塔１を洗浄するか或いは洗浄は行
わないで水張りを行う。この時点では冷却水の導電率は
200 μS/cm程度にあり、運転を開始すると導電率は高く
なっていく。検出器11で導電率の検出が行われ、この20
0 μS/cm程度の第１のレベルからそれより高い300 μS/
cm程度の第２のレベルへ変化すると、初期注入動作制御
装置14は出力信号を初期注入時点及び初期注入量設定用
タイマー装置15へ供給して作動させ、このタイマー装置
15は、予め設定された２４時間経過した後、水処理剤注
入装置12を予定の時間作動させて予定量の水処理剤を冷
却塔における循環冷却水中に注入する。この初期注入動
作が終了すると、例え冷房終了後に冷却塔の水を抜い
て、検出器11で検出される導電率が300 、200 、０μS/
cmとなっていっても、初期注入サイクル設定用タイマー
装置16の働きで、設定された初期注入サイクル期間（24
0 時間）が経過しないと、再度の初期注入は行われな
い。一方、運転開始後は、検出器11で検出された冷却水
の導電率に基づき予め設定されたブロー必要量に応じて
動作制御装置10の働きで水処理剤注入装置12を作動させ
て実際に計測したブロー時間に比例した水処理剤を冷却
水中に注入させ、負荷に応じた濃縮と水処理剤濃度が維
持できるように制御される。

【００１０】

【発明の効果】以上説明してきたように、本発明の方法
によれば、冷却塔の使用開始時または冷却塔の掃除時の
一定時間後に水処理剤の初期注入を自動的に行うことが
でき、しかもこの初期注入後は、仮に冷却水の導電率が
初期注入の行われるレベルまで低下しても所定の期間が
経過するまでは再度の初期注入は阻止され得る。その結
果、管理上の省力化ができるだけでなく、ユーザーの都
合に合わせて初期注入を人為的に行う手間が省け、作業
がある特定の時期（通常冷房運転開始時期）に集中する
ことがなくなり、この種の装置の保守点検作業を年間を
通じて平均化することができるようになる。また本発明
による方法を先に提案した冷房運転中のブロー量に比例
した薬剤注入制御と組み合わせることによって冷却塔お
ける循環冷却水の水質制御を完全自動化ることができ
る。その結果、年間を通じての水処理剤の総体使用量を
大幅に削減することができると共に、水管理を大幅に簡
素化することができるので、装置のランニングコストの
大幅な低減が期待できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明による冷却塔における循環冷却水の水
質制御方法を実施している冷却塔の一例を示す概略線図
である。

【符号の説明】

１：冷却塔 ２：冷却水の循環管路 ３：冷却水の循環管路 ４：水補給管 ５：オーバーフロー管 ６：逆Ｕ字形のサイホンパイプ ７：水供給手段 ８：空気供給管 ９：開閉弁 10：ブロー動作制御装置 11：冷却水の導電率の検出器 12：水処理剤注入装置 13：ブロー時間設定用タイマー装置 14：水処理剤の初期注入動作制御装置 15：初期注入時点及び初期注入量設定用タイマー装置 16：初期注入サイクル設定用タイマー装置

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】ブロー装置及び水処理剤注入装置を備えた
   冷却塔における循環冷却水の水質管理方法において、冷
   却塔の使用開始時または冷却塔の掃除時における冷却水
   の予定の第１の電導度からこの第１の電導度より高い予
   定の第２の電導度への変化を検出した時点から一定の時
   間経過後水処理剤注入装置を作動させ初期注入として一
   定量の水処理剤を冷却塔における循環冷却水中に一回注
   入することを特徴とする冷却塔における循環冷却水の水
   質管理方法。
2. 【請求項２】上記一回の一定量の水処理剤の初期注入か
   ら次回の一定量の水処理剤の初期注入までの間隔を上記
   一定の時間より長く設定した請求項１に記載の冷却塔に
   おける循環冷却水の水質管理方法。