JPH06306662A - 水溶性洗浄兼防錆剤組成物 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 洗浄性及び防錆性に優れ、取扱いが容易な水
溶性洗浄兼防錆剤組成物を提供する。 【構成】 水溶性洗浄兼防錆剤組成物全体を１００重量
部とした場合に、（ａ）炭素数４〜１２のモノカルボン
酸（ドデカン酸等）及び炭素数４〜１２のジカルボン酸
（セバシン酸等）の少なくとも一方を５〜２０重量部、
（ｂ）アルカノールアミン（トリエタノールアミン等）
を１５〜３０重量部、（ｃ）下記の一般式（Ｉ）で表さ
れるジアミン（Ｎ−ドデシルプロピレンジアミン等）を
０．５〜１０重量部、及び水を含有することを特徴とす
る。 Ｒ（Ｈ）Ｎ（ＣＨ₂ ）_n ＮＨ₂ （Ｉ） （但し、Ｒは炭素数６〜１８の非芳香族系炭化水素基、
ｎは２〜４の整数を示す。）

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、水溶性洗浄兼防錆剤組
成物に関し、更に詳しく言えば、熱処理した自動車用金
属部品等の洗浄及び防錆を同時に行うことができる洗浄
兼防錆剤組成物に関する。

【０００２】

【従来の技術】焼入れ、焼き戻し等の熱処理を行った後
の自動車用金属部品には、通常、熱処理油及びスケール
等が付着している。また、熱処理油を使用しない場合に
は、スケールの他に、結露水が金属部品の表面に付着す
る。そして、これらの付着物は、作業上の不具合を生じ
させたり、金属部品の品質を損ねたりすることがある。
例えば、金属部品に熱処理油が付着すると、金属部品
同士或いは金属部品と搬送ロールとがべとつき搬送がで
きなくなったり、スケールの付着による加工精度の低
下、水分の付着によるさびの発生等の問題が生じ易
い。上記の問題を排除するために、従来は、熱処理され
た自動車用金属部品に、中間工程用の防錆剤として、Ｊ
ＩＳＫ２２４６に規格化された溶剤希釈型防錆油を塗布
し、部品の組込み・加工工程前で、有機溶剤系洗浄剤を
用いて、防錆剤及びスケールの洗浄が行われていた。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
防錆剤及び洗浄方法では、防錆剤塗布後の金属部品表
面残存油膜の粘着性による搬送不良を防止するために、
有機溶剤による洗浄工程が必要となり、作業性が低下す
る問題及び有機溶剤としてトリクロロエタン、フロン
等を使用するため、防災、労働、衛生環境面での設備、
対策を必要とする等の取り扱い上の欠点がある。以上の
ように、作業性がよく、取り扱いが容易で且つ防錆及び
洗浄を同時にできる兼用剤及びその方法はいまだ見出さ
れていないのが実情である。

【０００４】本発明は、上記観点に鑑みなされたもので
あり、洗浄と防錆を同時に行うことができるとともに優
れた洗浄性及び防錆性を発揮し、また有機溶剤（特にト
リクロロエタン、フロン等）による洗浄を不要とするこ
とができる水溶性洗浄兼防錆剤組成物を提供することを
目的とする。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、洗浄と防
錆を兼ね備えた組成物成分と洗浄性及び防錆性との関係
について鋭意検討した結果、洗浄性及び防錆性に優れた
組成物を見出して、本発明を完成するに至ったのであ
る。即ち、本発明の水溶性洗浄兼防錆剤組成物（以下、
「組成物」という。）は、組成物全体を１００重量部
（以下、「部」とい。）とした場合に、（ａ）炭素数４
〜１２のモノカルボン酸及び炭素数４〜１２のジカルボ
ン酸の少なくとも一方を５〜２０部、（ｂ）アルカノー
ルアミンを１５〜３０部、（ｃ）上記の一般式（Ｉ）で
表されるジアミンを０．５〜１０部、及び水を含有する
ことを特徴とする。

【０００６】本発明におけるモノカルボン酸及び／又は
ジカルボン酸の炭素数を４〜１２とするのは、炭素数が
３以下では防錆性が不足し、１３以上では組成物の分離
又は泡立ちが多くなり使用に際して支障が生ずるからで
ある。上記「モノカルボン酸」としては、例えば、
（１）ペンタン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン
酸、デカン酸、ドデカン酸、２−エチル−ヘキサン酸等
の脂肪族酸、（２）安息香酸、ブチル安息香酸等の芳香
族酸等を挙げることができる。また、上記「ジカルボン
酸」としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、ドデ
カンジカルボン酸等を挙げることができる。また、カル
ボン酸の含有量を上記の如く定めるのは、含有量が５部
未満では防錆性が不足し、２０部を越えると組成物の分
離が生じるからである。

【０００７】また、本発明における「アルカノールアミ
ン」は、上記カルボン酸と塩を形成して洗浄作用を発揮
する成分であり、モノエタノールアミン、ジエタノール
アミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノール
アミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノ
ールアミン、Ｎ−エチルエタノールアミン、Ｎ−メチル
ジエタノールアミン、Ｎ−シクロヘキシルジエタノール
アミン等を挙げることができる。更に、このアルカノー
ルアミンの含有量を上記の如く定めるのは、含有量が１
５部未満では組成物が分離し、３０部を越えると組成物
の粘度が高くなり、取り扱いが不便となるからである。

【０００８】また、本発明における上記の一般式（Ｉ）
で表される「ジアミン」は、カルボン酸とアルカノール
アミンの塩による洗浄作用及び防錆作用を向上させる作
用を有する成分である。そして、この一般式（Ｉ）にお
けるＮ−置換基である「Ｒ」は、非芳香族系炭化水素基
であり、鎖式のものであっても、脂環式のものであって
もよい。また、この炭化水素基としては、通常、飽和炭
化水素基を用いるが、不飽和炭化水素基（例えば、オレ
イル基等）であってもよい。更に、この「Ｒ」の炭素数
を上記の如く定めるのは、炭素数が５以下の場合には、
洗浄作用及び防錆作用の向上効果がないためであり、１
９以上の場合には、組成物の分離が生ずるからである。
アルキレン基の「ｎ」の数を上記の如く定めたのは、ｎ
が２〜４の場合に、洗浄作用及び防錆作用を向上させる
効果が大きいからである。

【０００９】上記「ジアミン」としては、例えば、Ｎ−
ドデシルプロピレンジアミン、Ｎ−パルミチルプロピレ
ンジアミン、Ｎ−シクロヘキシルプロピレンジアミン、
Ｎ−ドデシルエチレンジアミン、Ｎ−パルミチルエチレ
ンジアミン、Ｎ−シクロヘキシルエチレンジアミン、Ｎ
−ドデシルブチレンジアミン、Ｎ−パルミチルブチレン
ジアミン、Ｎ−シクロヘキシルブチレンジアミン等を挙
げることができる。更に、このジアミンの含有量を上記
の如く定めるのは、０．５部未満ではカルボン酸とアル
カノールアミンの塩による洗浄作用及び防錆作用を向上
させることができず、１０部を越えると組成物が分離す
るからである。尚、本発明の組成物は、上記必須成分と
水より構成されるが、その他の任意成分として、従来よ
り用いられている酸化防止剤、銅合金防食剤、消泡剤等
を適宜添加することもできる。

【００１０】

【実施例】以下、実施例及び比較例により本発明を具体
的に説明する。本発明の組成物の性能を明らかにするた
め、表１に示す実施例及び表２に示す比較例に係わる組
成物について、以下に述べる性能試験を行った。尚、同
表中、比較例１１は、溶剤希釈型防錆剤「ノンラスター
Ｐ３１１」（商品名、ユシロ化学工業株式会社製、ＪＩ
Ｓ Ｋ２２４６ ３種に該当、金属石けん、酸化ワック
ス、スルホネート及び鉱物油からなる防錆皮膜成分を石
油系溶剤で希釈したもの）を用いた。また、表１及び２
における組成を示す数値の表示は部を示す。

【００１１】

【表１】

【００１２】

【表２】

【００１３】（１）性能試験 洗浄性 ６８番タービン油８０部と２００〜３００メッシュの化
学鉄粉２０部を混合したものを、「汚れ」として試験片
（ＳＰＣＣ−ＳＤ，１．２ｍｍ×６０ｍｍ×８０ｍｍ）
に塗布し、下記の条件で洗浄した時の洗浄率（％）を測
定した。 洗浄液：実施例及び比較例に係わる組成物の３０倍水希
釈液 液温度：６０℃ 洗浄方法：洗浄液中に試験片を浸漬し３分間超音波（２
８ｋＨｚ）洗浄した。 洗浄率（％）： ［（汚れを塗布した試験片の重量−洗浄後の試験片の重
量）／（汚れを塗布した試験片の重量−汚れを塗布する
前の試験片の重量）］×１００

【００１４】防錆性 本性能試験は、上記「洗浄性」で用いたものと同様な
試験片及び試料液を用いて行ったものである。即ち、試
験片を上記各試料液に浸漬した後、引き上げ、２４時間
懸垂して放置した後、ＪＩＳＫ２２４６に規定された格
納貯蔵試験法に準じて、１０日後の錆の発生状態を調べ
た。尚、本性能試験における評価の表示は、「◎」は
「錆発生無し。」を、「△」は「試験片の全表面の１１
〜２５％の面に錆が発生した。」を、「×」は「試験片
の全表面の２６〜５０％面に錆が発生した。」をそれぞ
れ示す。

【００１５】非粘着性 溶剤で洗浄した清浄な鋼板（ＳＰＣＣ−ＳＤ，１．２ｍ
ｍ×６０ｍｍ×８０ｍｍ）を水平に固定し、その上に上
記洗浄性の項で得られた洗浄試験後の試験片をそれぞ
れ重ね合わせた後、試験片を水平に引っ張って、各試験
片が移動する際の抵抗感を手の触感により調べた。尚、
本性能試験における評価の表示は、「○」は「抵抗感が
なく、試験片がスムースに移動する。」を、「△」は
「抵抗感がややあり、試験片の移動がやや困難であ
る。」を、「×」は「抵抗感を強く感じ、試験片を移動
するのが困難である。」をそれぞれ示す。

【００１６】（２）性能試験の結果と性能評価 以上の性能試験の結果を表３に示す。

【００１７】

【表３】

【００１８】以上の性能試験によれば、上記一般式
（Ｉ）のジアミン（ｃ）を含有しない比較例１〜６及び
含有量の少ない比較例７の各組成物においては、いずれ
の要求性能をも満足することができなかった。また、モ
ノカルボン酸（ａ）等の含有量の少ない比較例８、モノ
カルボン酸（ａ）としてプロピオン酸（炭素数３）を用
いた比較例９では防錆性能が十分ではない。更に、アル
カノールアミン（ｂ）の含有量が過剰な比較例１０及び
溶剤希釈型防錆剤を用いた比較例１１は、粘着性が高く
取扱いの不便な組成物であった。尚、Ｎ−ドデシルプ
ロピレンジアミンの含有量を１２部（過剰）とすると共
に、水の含有量を６１部としたこと以外は実施例１と同
様な組成物、ドデカン酸の含有量を２２部（過剰）と
すると共に、水の含有量を５６部としたこと以外は実施
例１と同様な組成物、ドデカン酸の代わりにミリスチ
ン酸（炭素数１４のモノカルボン酸）を用いた以外は実
施例１と同様な組成物、トリエタノールアミンの含有
量を１２部（過少）とすると共に、水の含有量を７９部
としたこと以外は実施例１と同様な組成物の調整も試み
たが、いずれも組成物に分離を生じ、上記各性能試験を
行うことができなかった。

【００１９】一方、本実施例に係わる組成物（実施例１
〜９）においては、全ての要求性能を満足し、優れた組
成物であることを示した。

【００２０】（３）実機ラインによる試験及び評価 自動車用部品（エンジン小物部品；コッター、キー、ボ
ール）組付実機ラインにおいて、本発明の組成物（実施
例Ｎｏ．６）及び従来例の場合の実用試験を行った。そ
して、以下に示す各工程の場合の組付実機ラインにおけ
るパーツフィーダ及び直進フィーダ内での部品の流れ
（以下、「搬送」という。）不良率（％）（部品づまり
程度）を調べた。 工程Ａ ：前処理→熱処理→溶剤希釈型防錆剤塗布→遠
心脱油→乾燥→搬送→組付（搬送の不良率；５０％） 工程Ａ′：前処理→熱処理→溶剤希釈型防錆剤塗布→遠
心脱油→洗浄→乾燥→搬送→組付（搬送の不良率；５％
以下） 工程Ｂ ：前処理→熱処理→実施例Ｎｏ．６の洗浄兼防
錆剤塗布→遠心熱風乾燥→搬送→組付（搬送の不良率；
５％以下） 尚、上記において、溶剤希釈型防錆剤としては商品名
「ＶＲ１０（ダイヤ化学製）」（ＪＩＳ Ｋ２２４６
３種該当）を用い、洗浄工程ではトリクロロエタンを使
用した。

【００２１】以上より、従来の溶剤希釈型防錆剤を塗布
し、トリクロロエタン洗浄を行う工程Ａ′においては、
搬送の不良率に優れるものの、防錆と洗浄の２工程が必
要であり、且つ衛生安全上好ましくない有機溶剤洗浄が
必要である。この有機溶剤洗浄を行わない工程Ａでは、
搬送の不良率が著しく大きい。一方、本発明に係わる実
施例Ｎｏ．６の洗浄兼防錆剤を用いれば、防錆と洗浄が
同時にできるとともに、水溶性のものであり、しかも搬
送の不良率が小さい。尚、本発明においては、前記具体
的実施例に示すものに限られず、目的、用途に応じて本
発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができ
る。

【００２２】

【発明の効果】以上のように、本発明の水溶性洗浄兼防
錆剤組成物を用いれば、従来の溶剤希釈型防錆剤と有機
溶剤による洗浄方法と比較して、溶剤による洗浄工程を
省略でき、洗浄と防錆を同時に行うことができるので、
作業効率向上、環境の改善を図ることが可能となる。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 久保 武丈 愛知県豊田市トヨタ町１番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 上田 一明 愛知県豊田市トヨタ町１番地 トヨタ自動 車株式会社内

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 水溶性洗浄兼防錆剤組成物全体を１００
   重量部とした場合に、（ａ）炭素数４〜１２のモノカル
   ボン酸及び炭素数４〜１２のジカルボン酸の少なくとも
   一方を５〜２０重量部、（ｂ）アルカノールアミンを１
   ５〜３０重量部、（ｃ）下記の一般式（Ｉ）で表される
   ジアミンを０．５〜１０重量部、及び水を含有すること
   を特徴とする水溶性洗浄兼防錆剤組成物。 Ｒ（Ｈ）Ｎ（ＣＨ₂ ）_n ＮＨ₂ （Ｉ） （但し、Ｒは炭素数６〜１８の非芳香族系炭化水素基、
   ｎは２〜４の整数を示す。）