JP3596912B2 - リンス不要洗浄剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、金属、セラミックス、ガラス、プラスチック等の脱脂洗浄に用いる水系の洗浄剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、金属、セラミックス、ガラス、プラスチック等の工業用の脱脂洗浄剤としては、アルカリ洗浄剤を代表とする水系洗浄剤、および1,1,1−トリクロロエタンを代表とする溶剤系洗浄剤が用いられている。
【0003】
アルカリ洗浄剤は、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルを代表とする非イオン界面活性剤、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムを代表とするアニオン界面活性剤等の界面活性剤、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ塩、トリポリリン酸ナトリウム、エチレンジアミンテトラ酢酸塩、ニトリロトリ酢酸塩、グルコン酸塩等のキレート剤、ベンゾトリアゾール、アミン類、アルカノールアミン類、亜硝酸ナトリウム等の防錆剤等を適宜配合したものである。その配合組成は、たとえば、辻薦著「精密洗浄技術」工学図書p117−120、辻薦編著「精密洗浄技術マニュアル」新技術開発センターp50−56に記載されているように、洗浄する物品、金属、汚れに応じて種々のものが提案されている。
【0004】
この水系洗浄剤を用いた脱脂洗浄工程は、通常、洗浄工程、水洗によるリンス工程、熱風等による乾燥工程からなる。
一方、1,1,1−トリクロロエタン等の塩素系溶剤は、脱脂力、浸透力に優れ、切削油、引き抜き油、プレス油等あらゆる脱脂に適用でき、複雑な構造を有する物品や、高い清浄度を要求する精密部品の洗浄分野で用いられている。
【0005】
この1,1,1−トリクロロエタン等の塩素系溶剤を用いた脱脂洗浄工程は、通常、洗浄工程、その蒸留液によるリンス工程、およびその蒸気による乾燥工程からなり、塩素系溶剤自身を連続して蒸留、凝縮させるシステムが用いられている。
ところが、近年、塩素系溶剤による地下水汚染、大気汚染、オゾン層破壊等の環境問題が顕著に現れるようになり、産業界では、これを代替するための洗浄剤として、従来の水系洗浄剤を適用しつつある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の水系洗浄剤を用いる場合、通常、洗浄工程の後、水洗によるリンス工程が必要で、この工程から多量の排水が出るという問題がある。このため、やむを得ず、水リンス工程を省く方式が試みられているが、洗浄剤の成分が、残渣として物品表面に残り、これが、固体異物やシミになる、発錆、変色を引き起こす、塗装、溶接、接着等の後工程に悪影響するといった問題が出るため、清浄度が悪くてもかまわない荒い洗浄の場合にのみ可能である。そこで、水リンスしないで用いられても、残渣が少なく、固体異物、シミになり難く、防錆性に優れ、後工程に影響しない水系洗浄剤が求められている。
【0007】
また、従来の水系洗浄剤は、脱脂力、浸透力を上げるために、多量の非イオン界面活性剤を配合したり、アルカリ塩を増量してpHを高める方法が取られているが、水リンスしないで用いられた場合の残渣の増加、固体異物化や、製品として安定な液体状化が困難となり、さらに非鉄金属に悪影響を及ぼし、作業者への安全性が低下し好ましくない。
安定な液体状とする方法としては、たとえば特公昭63−13480に示されるような、芳香族カルボン酸ナトリウムを使用する方法があるが、芳香族カルボン酸ナトリウムの代表として用いられるパラターシャリーブチル安息香酸ナトリウムは腎臓、肝臓に悪影響を及ぼすという問題がある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討した結果、アルカノールアミン、グリコールエーテル、ブロックポリマー、脂肪酸およびジカルボン酸を組み合わせることにより、前記問題が解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、少なくとも
(1)アルカノールアミン 1〜25重量%
(2)グリコールエーテル 1〜20重量%
(3)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー 1〜10重量%
(4)炭素数6〜12の脂肪酸 1〜20重量%
(5)炭素数6〜18のジカルボン酸 1〜20重量%
(6)水
からなり、pHが7〜9.5であることを特徴とする洗浄剤である。
【0009】
アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンおよびこれらのアルキル化物等のエタノールアミン類が挙げられる。アルカノールアミンの量が1重量%より少ないと洗浄力が低下し、25重量%より多いと非鉄金属、特にアルミニウムに対する腐食性、水リンスしない場合の残渣量の増加、塗装等への悪影響が出て好ましくない。
【0010】
グリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコールモノフェニルエーテル、トリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、トリプロピレングリコールモノフェニルエーテル等が挙げられる。アルキル基としては、炭素数1から8の直鎖、分枝、環状のものが好適に用いられる。グリコールエーテルの量が1重量%より少ないと水リンスしない場合の残渣が固体状になり易く、20重量%より多いと残渣量の増加、塗装等への悪影響が出て好ましくない。
【0011】
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーとしては、ポリオキシプロピレン部分の平均分子量が600〜2000、エチレンオキシドの割合が10〜40重量%のものが好適に用いられる。この配合量が1重量%より少ないと洗浄力が低下し、10重量%より多いと残渣量の増加、塗装等への悪影響が出て好ましくない。
【0012】
炭素数6〜12の脂肪酸は、本発明の洗浄剤を、常温以下の低温から50℃以上の高温まで幅広い温度範囲で安定な液体状として保つために必要な成分で、具体的には、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸等の直鎖脂肪酸およびこれらの分枝脂肪酸、たとえば2−エチルヘキサン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸等が挙げられる。炭素数が6より少ないと、不快な臭気が強くなり、12より大きいと、泡立ちが大きくなり好ましくない。この添加量が1重量%より少ないと、安定な液体状に保つことが困難になり、20重量%より多いと、脱脂力が低下するようになり好ましくない。
【0013】
炭素数6〜18のジカルボン酸としては、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1、9−ノナメチレンジカルボン酸、1、10−デカメチレンジカルボン酸、1、11−ウンデカメチレンジカルボン酸、1、12−ドデカメチレンジカルボン酸、1、13−トリデカメチレンジカルボン酸、1、14−テトラデカメチレンジカルボン酸、1、15−ペンタデカメチレンジカルボン酸、1、16−ヘキサデカメチレンジカルボン酸が挙げられる。炭素数が6より少ないと鉄に対する防錆性が劣るようになり、18より大きいと水リンス不要で用いた場合の残渣が固体状になり易くなり好ましくない。この添加量が1重量%より少ないと防錆性が劣るようになり、20重量%より多いと水リンス不要で用いた場合の残渣が固体状になり易くなり好ましくない。
【0014】
水は、アルカノールアミン、グリコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、脂肪酸、ジカルボン酸等、洗浄剤有効成分を均一な液体製品とするための溶媒として用いる。その量は、前記洗浄剤有効成分および後述の公知の添加剤等の量と水の総量が100重量%になるように決められる。
洗浄剤のpHは7〜9.5、好ましくは7〜9、より好ましくは7〜8.5に調整される。7より低いと鉄に対する安定性が劣るようになり、9.5より高いとアルミに対する安定性が劣るようになり、また、皮膚に対する刺激が強くなり好ましくない。
【0015】
本発明の洗浄剤を実際の洗浄工程に用いる場合は、水によりさらに希釈して用いる。その時の洗浄剤有効成分濃度は、通常0.05〜5重量%である。この洗浄剤有効成分濃度は、洗浄方法、洗浄物品、汚れ、後工程等の条件により、適宜調整される。
なお、本発明では、その他の界面活性剤、公知の添加剤、たとえば、グルコン酸塩、エチレンジアミンテトラ酢酸塩、ニトリロトリ酢酸塩等のキレート剤、ベンゾトリアゾール、アミン類、亜硝酸塩等の腐食防止剤、脂肪酸油、シリコン油等の消泡剤、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、s−アミルアルコール、t−アミルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類、ピロリドン、N−メチルピロリドン等の溶剤を適宜配合して用いることも可能である。
【0016】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明する。
(実施例1〜5および比較例1〜3
表1に示す洗浄剤を配合し、以下の試験を行った。その結果を表2に示す。
(1)脱脂力試験
30メッシュのステンレス金網(60×30mm)に下記金属加工油を含浸させ、100℃で30分加熱した。これを、表1の洗浄剤の3重量%水溶液で洗浄し、水リンスせずに乾燥した後、洗浄前後の付着油分量から下記数1で脱脂率を計算し、1,1,1−トリクロロエタンによる脱脂と比較評価した。
試験に用いた金属加工油:ユニカットGH35(商品名、日本石油株式会社製)
【0017】
(2)安定性試験
表1の洗浄剤を−5℃、30℃、50℃に保ち、洗浄剤有効成分の分離、沈澱がないか観察した。
(3)蒸発残渣試験
表1の洗浄剤0.3μlをホールスライドガラス上に滴下し、120℃で30分、乾燥した後、残渣の性状を評価した。
(4)塗装密着性試験
表1の洗浄剤の3重量%水溶液でアルミ板を洗浄し、水リンスせず乾燥した後、ラッカーで塗装した。塗膜の密着性を、JISK5400のクロスカット試験(1mmマス目100個)により判定した。
(5)防錆性試験
DIN51−360に準じ、濾紙の上にFC20の切粉を乗せ、表1の洗浄剤の3重量%水溶液を滴下し、30℃で2時間放置した。濾紙に転写された錆の量により防錆性を判定した。
【0018】
【数1】
Figure 0003596912
【0019】
【表1】
Figure 0003596912
【0020】
【表2】
Figure 0003596912
【0021】
【発明の効果】
本発明は、塩素系溶剤に匹敵する脱脂力を有し、水リンス不要で用いることのできる、安定な液体状の優れた洗浄剤である。

Claims (1)

  1. 少なくとも
    (1)アルカノールアミン 1〜25重量%
    (2)グリコールエーテル 1〜20重量%
    (3)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー 1〜10重量%
    (4)炭素数6〜12の脂肪酸 1〜20重量%
    (5)炭素数6〜18のジカルボン酸 1〜20重量%
    (6)水
    からなり、pHが7〜9.5であることを特徴とする洗浄剤。
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