JPH06288882A - 透過型電子顕微鏡用試料の作製方法及び試料染色用 装置 - Google Patents

透過型電子顕微鏡用試料の作製方法及び試料染色用 装置

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JPH06288882A
JPH06288882A JP9484793A JP9484793A JPH06288882A JP H06288882 A JPH06288882 A JP H06288882A JP 9484793 A JP9484793 A JP 9484793A JP 9484793 A JP9484793 A JP 9484793A JP H06288882 A JPH06288882 A JP H06288882A
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staining
dyed
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JP9484793A
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English (en)
Inventor
Toshio Ishii
俊男 石井
Tomio Nomura
富夫 野村
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Tonen General Sekiyu KK
Original Assignee
Tonen Corp
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Abstract

(57)【要約】 【構成】ポリマー材料から、ミクロトーム(試料の薄片
化装置)にセットできる形状の試料ブロックを作製し、
その試料ブロックを加熱状態で染色し、その後にミクロ
トームで薄片化して透過型電子顕微鏡用試料を作製す
る。 【効果】試料ブロックのままTEM観察用試料を染色す
るので、試料ブロックが硬化し、ミクロトームによる切
削が可能となり容易に薄片化できる。また加熱染色をす
るので染色時間が短くて済み、TEM観察用試料を作製
する時間を短縮でき、作業能率を向上できる。更に染色
を自在に組み合わせることが可能となり、従来観察でき
なかったポリマー材料の微細構造が観察できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は透過型電子顕微鏡を用い
て単元系、多元系ポリマー(ポリマーブレンド)の微細
構造を観察する際の観察用試料の作製方法、及びその観
察用試料を染色する際に用いる染色用装置に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】近年、ポリマーの物性に対する要求が多
様化し、しかもより高性能化、複合化の傾向にある。こ
のような傾向の中にあって、ポリマーの微細構造からそ
の物性を明らかにする必要があり、透過型電子顕微鏡
(以下TEMという)を用いてポリマー試料を観察し、
解析評価することは、そのための有力な手段である。
【0003】TEMでは透過力の弱い電子線が試料を透
過しやすいように、観察用の試料の厚さを非常に薄くす
る必要がある。またポリマーのようにコントラストの弱
いものは、コントラストを上げて観察しやすくするため
に、染色をしなければならない。
【0004】ポリマーには単元系ポリマーと、単元系ポ
リマーのブレンド物である多元系ポリマー(通称ポリマ
ーブレンドという)とがある。各単元系ポリマーはその
種類によって染色剤が異なる。そのため単元系ポリマー
では、その種類により選択される一個の染色剤による染
色(以下単染色という)が行なわれる。しかし多元系ポ
リマーの場合、1個の染色剤でそれを構成するすべての
単元系ポリマーについて染色することができないので、
通常複数の染色剤による染色(以下多重染色という)が
行なわれる。単染色あるいは多重染色の場合のポリマー
のTEM観察試料は、従来次の方法により作製されてい
る。
【0005】ポリマー材料からミクロトーム(試料の
薄片化装置)にセットできる大きさ、形状の試料(以下
試料ブロックという)を作製する。 試料ブロックを液体窒素で−100℃程度に冷凍し、
試料ブロックを硬化させてミクロトームで切削し、厚さ
約0.1μmの試料片を連続的に作製する。 の試料片を室温に戻し、室温でこの試料片を染色剤
で染色する。 単染色の場合は〜でTEM観察用試料の作製は終
了する。多重染色の場合はさらに別の染色剤による染色
を行なう。
【0006】上記従来法で試料ブロックを冷凍するの
は、次の理由による。室温ではポリマー試料が柔らか
く、ミクロトームで超薄片化することができず、またで
きてもまれであり、その確率が非常に小さく、実用性が
ない。そのため試料ブロックを冷凍して硬化させ、ミク
ロトームによる薄片化を容易にしている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしこの方法では次
のような問題点があった。 冷凍処理に時間と費用がかかるばかりでなく、薄片化
に熟練を要する。 染色剤の浸透力が弱いため、超薄片化した試料片を染
色するのに、かなりの染色時間を要する。 専用の染色用装置がなく試料作製に労力を要する。 そこで本発明はこのような課題を解決し、短時間で能率
的にTEM観察用試料の作製が可能な作製方法と、試料
ブロックの染色用装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】このような目的を達成す
るために、第1の発明は次のようなTEM観察用試料作
製方法を提供する。この作製方法は、ポリマー材料か
ら、ミクロトーム(試料の薄片化装置)にセットできる
形状の試料ブロックを作製した後に、上記試料ブロック
に、一つまたは複数の染色剤を個別に作用させて、染色
を行ない、その後に、上記染色された試料ブロックを上
記ミクロトームで、薄片化して透過型電子顕微鏡用試料
を作製する方法であり、上記試料ブロックの染色のう
ち、少なくとも一つの染色を、加熱状態で行なうことを
特徴とする。
【0009】また上記目的を達成するために、第2の発
明は次のような試料ブロックの染色用装置を提供する。
この染色用装置は、蓋を有する容器と、上記蓋に取り外
し可能に取り付けられた、請求項1記載の複数の試料ブ
ロックを保持する保持具とからなる試料ブロックの染色
用装置であり、試料ブロックを取り付けた上記保持具
を、上記蓋に取り付けて蓋を閉めると、蓋と容器はネジ
等によって接合して容器内は完全に密閉され、保持具に
保持された複数の試料ブロックが、容器内の染色剤に浸
漬保持されることを特徴とする。
【0010】
【作 用】第1の発明の方法によれば染色によって試料
ブロックが硬くなるため、冷凍処理を施さなくても、ミ
クロトームで薄片化するのが容易になる。また加熱状態
で染色するため染色剤の浸透力が増し、染色に要する時
間が短縮される。第2の発明に係る染色用装置を用いれ
ば、多数のTEM観察用試料を同時に染色できる。
【0011】
【実施例】以下本発明に係るポリマーのTEM観察用試
料の作製方法(第1の発明)およびその際に使用する試
料ブロック染色用装置(第2の発明)の実施例について
説明する。第1の発明については実施例1〜6、第2の
発明については代表的な一つの実施例を示す。
【0012】(1)試料および染色剤 最初に実施例1〜6で使用した試料を表1に染色剤を表
2に示す。表1中PPはポリプロピレン、EPDMはエ
チレン・プロピレン・ジェンターポリマー、をそれぞれ
表す(以下同様)。
【0013】
【表1】
【0014】
【表2】
【0015】(2)実施例1〜6で用いる試料と染色剤
の組み合わせ 表1に示す試料のうち、A−1は単一のポリマーである
がA−2〜A−4は異種ポリマーの混合物(ポリマーブ
レンド)である。このようなポリマーブレンドの異種の
ポリマーの微細構造を同時に観察するためには、複数の
染色剤で個別に染色を行なう方法(多重染色法)が用い
られている。後述する実施例1〜6について使用する試
料と染色剤の組み合わせ及び染色条件を表3に示す。
【0016】
【表3】
【0017】表3に示す実施例のうち実施例1から3ま
では1個の染色剤を用いる単染色方法であり、実施例4
から6までは複数の染色剤を用いる多重染色方法であ
る。表3に示す染色条件は染色時の温度と染色時間を示
している。この染色条件はリン−タングステン酸(B−
1)と四酸化オスミウム(B−2)についてのものであ
り、四酸化ルテニウム(B−3)の染色は従来と同様に
室温で24時間の蒸気染色方法である。
【0018】(3)実施例1〜6に共通な手順および染
色用装置の一実施例 実施例1〜6に共通する手順と染色用装置の一実施例に
ついて説明する。
【0019】まずポリマーから試料ブロックを作製す
る。試料ブロックの大きさはミクロトームに装着可能な
大きさ、形状とする。本実施例では1辺が15mm×7
mm×2mmの直方体の先の部分を図1に示すようにピ
ラミッド形にした。図1に示す0.5mm×0.5mm
四方の部分からミクロトームにより、厚さ0.1μmの
試料片を切削する。なお図1に示すものは試料ブロック
の一例であり、本発明の試料ブロックはこれに限らない
ことはいうまでもない。
【0020】次に試料ブロックを染色用装置で染色す
る。この染色用装置の一実施例を図2に示す。染色用装
置10は蓋11、容器12、及び保持具13から構成さ
れ、保持具13は蓋11に取り外し可能に取り付けられ
る。蓋11、及び容器12にはネジが切られており、蓋
11を容器12にネジ締めすると容器は完全に密閉され
る。また蓋11、容器12、保持具13は染色剤に侵さ
れないように耐蝕性、耐熱性のある材料(例えば内側に
テフロンを取り付けたステンレス)を用いる。複数の試
料ブロック14は、図1に示すピラミッド上の先端部が
下になるようにして保持具13に取り付けられ、その保
持具13が蓋11に取り付けられる。保持具13を取り
付けた蓋11が閉められると、試料ブロック14は容器
12内の染色剤溶液に浸され、または染色剤が蒸気の場
合には蒸気中におかれる。
【0021】上記染色用装置を用いれば、複数の試料ブ
ロックの染色が同時に行なえ、TEM観察用試料片の作
製のための染色作業が簡単で作業能率が上がるのでTE
M観察の能率が向上する。また密閉系のためリン−タン
グステン酸及び四酸化ルテニウム(蒸気)の取扱い上の
安全性も確保できる。またこのような染色用装置を使用
し、あるいはこれに加えてロボット化(自動化)を図る
ことにより、更に染色操作がより能率化され、TEM観
察試料片の作製が容易になる。このような染色用装置を
用いて染色する方法には、室温で行なう方法と、50℃
〜120℃に加熱した状態で行なう方法があるが、この
点については後に詳述する。50℃以下では、室温で染
色したときと同様の染色時間を要する。120℃以上で
は、密閉系で染色するので、容器の耐性の観点から好ま
しくない。尚、本実施例では容器をネジによる密閉方法
としたが、他の方式、例えばボルト・ナット締め、バン
ド締め等の方式で密閉系にすることも可能である。
【0022】次に単染色の場合は試料ブロックをミク
ロトームで薄片化してTEM観察用試料を作製する。こ
の薄片化技術は従来の手法を用いる。多重染色の場合
は、最初の染色が終わると、蓋11を開けて最初の染色
剤を容器12から除去した後、試料ブロック14、保持
具13、容器12を水洗する。その後と同じ手法で試
料ブロックを再度染色する。染色剤が3種以上ある場合
も同様に水洗、染色を繰り返す。そしてその後に試料ブ
ロックを薄片化してTEM観察用試料を得る。
【0023】(4)実施例1〜3について 実施例1〜3は単染色方法によるTEM観察試料の作製
方法である。実施例1、2はリン−タングステン酸(P
TA)を染色剤とし、実施例3は四酸化オスミウムを染
色剤としている。この方法の特徴は従来室温で染色を行
なっていたものを加熱状態で染色している点にある。そ
の結果従来よりも染色時間を大幅に短縮することができ
た。
【0024】(4−1)実施例1 本実施例で用いた試料はポリアミド(酸アミド結合−C
ONH−を有する重合体の総称)の一種であるナイロン
−6である(ポリアミドのうち繊維形成能のある線状重
合体をナイロンという)。
【0025】試料ブロックの作製 この試料をミクロトームに装着可能な大きさに切り出
し、先端をピラミッド状にトリミングし面出しをして、
試料ブロックを作製する。
【0026】染色剤の調製 リン−タングステン酸を蓋付三角フラスコ等の容器に入
れ、蒸留水を加えて溶解し、10%水溶液とする。水溶
液は酸性なので皮膚に付着しないように注意する。
【0027】染色条件 この水溶液を前述した容器12に入れ、ポリアミドの試
料ブロック14を取り付けた保持具13を水溶液中に浸
して容器を密閉する。ポリアミドの融点は230℃以上
であるが、安全性および操作性を考えて本実施例では染
色条件を100℃で10時間に設定した。本実施例では
染色剤と試料ブロックを入れた染色用装置をオーブン中
に置き、100℃に保って染色を行なった。
【0028】薄片化 染色を施した後の試料ブロックをミクロトームで切削
し、TEM観察用試料を作製した。100℃で10時間
加熱染色後の試料ブロックは、色の変化は見られないも
のの、硬度が増して非常に硬くなっており切削し易く、
この点に染色の効果が認められた。そのためミクロトー
ムで試料ブロックを室温で切削するのは容易であった。
これに対して比較のために行なった室温での染色では、
染色時間を24時間〜3週間の範囲のいずれの染色後も
試料ブロックの色、硬さとも染色前と変化がない。その
ため薄片化することは不可能であった。一般にリン−タ
ングステン酸はポリマーへの浸透速度が遅いと言われて
おり、今回の実験でもそれが実証された。
【0029】TEMによる観察結果 以上のような手法で得られた試料のTEM写真を図3に
示す。試料ブロックの状態で染色したにも拘らず、ポリ
アミドのラメラ構造が明瞭に観察され、充分な染色がな
されていることが確認できた。ここに示すラメラ構造と
は固体の合成高分子などで見られる、分子が層を積み重
ねた配列をとる構造をいう。図3の白い部分で、細紐が
折り畳まれたように見える部分がラメラ構造である。
【0030】実施例1についてまとめると次のようにな
る。従来室温でリンータングステン酸染色を施しても、
軟弱で薄片化するのが不可能であったポリアミドを、加
熱染色することにより冷凍処理を施さなくても薄片化す
る事が可能となった。そして薄片化した試料をTEMで
観察すると、ポリアミドの微細なラメラ構造が明瞭に観
察され、TEM観察用試料として充分な染色がなされて
いることが確認できた。
【0031】(4−2)実施例2 本実施例で用いた試料はポリアミド/PPブレンド物で
ある。染色剤は実施例1と同じリン−タングステン酸で
ある。試料ブロックの作製、染色剤の調製は実施例
1と同じである。
【0032】染色条件 80℃に加熱した状態で8時間染色した(80℃−8時
間)。
【0033】薄片化 染色を施した後の試料ブロックをミクロトームで切削
し、TEM観察用試料を作製した。加熱染色後の試料ブ
ロックは、色の変化は見られないものの、硬度が増して
非常に硬くなっており切削し易く、この点に染色の効果
が認められた。そのためミクロトームで試料ブロックを
室温で切削するのは容易であった。
【0034】TEMによる観察結果 80℃−8時間の染色条件により得られた試料のTEM
写真を図4に示す。ポリアミド部分はリン−タングステ
ン酸の染色効果により黒いコントラストでその分散状態
が明瞭に観察できる。図5は染色されたポリアミド部分
を特性X線分析装置によって分析した結果を示してお
り、縦軸が特性X線強度、横軸が元素種である。この図
5から、ポリアミド部分からタングステンが検出されて
いることがわかり、リン−タングステン酸による染色が
確認できる。なお図5で銅(Cu)のピークが見られる
が、これは試料観察用メッシュ(銅製)の銅が検出され
ているためである。図4からわかるようにポリアミド部
分にひび割れはなく、明瞭なコントラストが得られてお
り、良好な試料と言える。この点から染色条件を80℃
−8時間とする本実施例の方法によれば、良好な染色が
なされていることがわかる。
【0035】染色した深さを確認するために、染色条件
が80℃−8時間で得られた染色後の試料ブロックの断
面を電子線マイクロアナライザーによって、タングステ
ンの線分析を実施した。この分析結果を図6に示す。図
6の横軸は距離でありC点が試料ブロック表面を示す。
また縦軸はタングステン濃度である。この図6より、試
料ブロック表面から約50μmの深さまで染色剤が浸透
していること、すなわち染色深さが50μmであること
がわかる。
【0036】実施例2についてまとめると次のようにな
る。ポリアミド/PPブレンド物を試料としてリン−タ
ングステン酸の加熱染色を行なう場合、染色条件を80
℃−8時間とすれば良好な染色がなされることが、TE
M写真および電子線マイクロアナライザーによる染色後
の試料ブロック断面のタングステン分析から、明らかと
なった。
【0037】(4−3)実施例3 本実施例はEPDM/ポリプロピレン系樹脂ブレンド物
を試料とし、四酸化オスミウムを染色剤としている。
【0038】四酸化オスミウムを染色剤とした染色法は
一般にポリマー中のゴム相の構造、分散状態の観察など
に用いられている。従来のTEM観察用試料作製方法は
試料ブロックをミクロトームで切削し薄片化し、グリッ
ド上に載せた後、2%四酸化オスミウム水溶液中に浸
し、染色する方法である。四酸化オスミウムは浸透力が
弱いので従来の方法では染色に時間がかかり、室温で2
週間(約350時間)の染色時間を要していた。
【0039】試料ブロックの作製は実施例1、2と同
じである。
【0040】染色剤の調製 実施例1と同様の操作で調製した2%四酸化オスミウム
水溶液を用いる。
【0041】染色条件 加熱温度を80℃とし、染色時間を20時間として行な
った。
【0042】薄片化 染色を施した後の試料ブロックをミクロトームで切削
し、TEM観察用試料を作製した。加熱染色後の試料ブ
ロックは、色の変化は見られないものの、硬度が増して
非常に硬くなっておりこの点に染色の効果が認められ
た。そのためミクロトームで試料ブロックを室温で切削
することができた。
【0043】TEMによる観察結果 80℃−20時間の染色条件により得られた観察用試料
のTEM写真を図7に示しており、充分な染色効果が得
られている。すなわちEPDM相は黒いコントラストで
はっきりと観察できる。また図8にはEPDM相(図7
の黒い部分)の特性X線分析結果を示す。この図8よ
り、EPDM相からオスミウム(Os)が検出されてお
り、オスミウム(Os)による染色がなされていること
がわかる。また四酸化オスミウムの浸透深さも試料ブロ
ックの表面から50μm以上あることがわかった。
【0044】実施例3についてまとめると次のようにな
る。EPDM/ポリプロピレン系樹脂ブレンド物を試料
として四酸化オスミウムによる加熱染色をするには染色
条件を80℃−20時間とすれば良好な染色がなされる
ことが明らかとなった。従来四酸化オスミウムで染色を
施す場合にはまず試料を超薄片とした後、染色に2週間
の時間を要していた。これに対して試料ブロックのまま
で加熱染色し、その後に薄片化をする本発明に係る方法
によれば20時間の染色時間で従来と同様の効果が得ら
れる。
【0045】(5)実施例4〜6 実施例4〜6は2種の染色剤を用いた多重染色方法であ
る。実施例4と6の染色剤はリン−タングステン酸と四
酸化ルテニウムであり、実施例5の染色剤は四酸化オス
ミウムと四酸化ルテニウムである。この多重染色方法の
うち、リン−タングステン酸と四酸化オスミウムの染色
方法は前述した加熱染色方法であり、四酸化ルテニウム
による染色方法は従来から行なわれている方法である。
【0046】(5−1)実施例4 試料は実施例2で用いたものと同じポリアミド/PPブ
レンド物である。 本実施例ではポリアミドをリン−タ
ングステン酸により、またポリプロピレン(PP)を四
酸化ルテニウムにより染色する。
【0047】試料ブロックの作製方法は実施例2と同様
である。染色順序は浸透速度の遅い順とし、最初にリン
−タングステン酸による染色、その後に四酸化ルテニウ
ムによる染色を行なった。なお本発明は、このように染
色剤の浸透速度が小さいものから行なう方法に限らない
ことはいうまでもない。リン−タングステン酸による染
色条件は実施例2と同様に80℃−8時間とした。
【0048】リン−タングステン酸による染色が終わっ
た後、四酸化ルテニウムによる染色を行なった。この染
色方法は従来から行なわれている方法である。すなわち
ガラスデシケータ中で、試料ブロックを、室温で揮発す
る四酸化ルテニウムの蒸気によって染色する。染色条件
は室温で24時間である。四酸化ルテニウムは浸透力が
強く、この条件で試料ブロック表面から50〜80μm
程度の深さまで染色できる。
【0049】2種の染色が終わった後、試料ブロックを
ミクロトームで切削し、薄片化する。実施例2と比べて
本実施例では染色が多くなされているため、試料ブロッ
クの硬度が増し、薄片化は容易である。
【0050】このようにして得られた観察用試料のTE
Mによる観察写真を図9に示す。図9には倍率の異なる
2つの写真を示しており、下の図が高倍率のものであ
る。これらの写真から、ポリアミド相、ポリプロピレン
相のどちらも良好に染色され、明瞭なコントラストで観
察できることが確認できた。多重染色の場合、単染色と
同じ条件で染色をしたのでは先の染色剤が後の染色効果
を妨害するのではないかという問題が考えられるが、図
9を見る限りでは、そのような心配はなく、最初の染色
により浸透したリン−タングステン酸が、後の四酸化ル
テニウムによる染色を妨害するような悪影響はまったく
見られない。
【0051】(5−2)実施例5 本実施例で用いた試料は実施例3で用いたのと同じEP
DM/ポリプロピレン系樹脂ブレンド物である。染色剤
は四酸化オスミウムと四酸化ルテニウムである。染色順
序は実施例4と同じく浸透速度の遅い順とし、最初に四
酸化オスニウムによる染色、次に四酸化ルテニウムによ
る染色を行なった。染色条件は四酸化オスミウムについ
ては実施例3と同様に80℃−20時間であり、四酸化
ルテニウムについては実施例4と同様に室温で24時間
である。
【0052】このようにして染色された試料ブロックを
薄片化し、観察用試料片を得、TEMで観察した。TE
M写真を図10に示す。図10には倍率の異なる2つの
写真を上下に示しており、高倍率の下の図は上の図の四
角で囲んだ部分の拡大図である。この図10からEPD
M相、ポリプロピレン系樹脂相とも良好に染色されてい
ることがわかる。多重染色でも個々の染色剤の染色条件
を単染色の染色条件と同じにして良いことも実施例4同
様に示されている。また図示していないが特性X線分析
によると、EPDM相にはオスミウム(Os)が、ポリ
プロピレン系樹脂相にはルテニウム(Ru)が検出され
ており、この点からも良好な染色がなされたことが確認
できる。
【0053】(5−3)実施例6 本実施例で用いた試料はスチレン系樹脂/PP/ポリア
ミドブレンド物である。
【0054】(5−3−1)本発明の方法と従来の方法
の比較 本実施例で用いた試料について従来実施してきた方法
と、本実施例による方法の比較を行った。この従来例と
本実施例の多重染色による試料作製方法とを比較してブ
ロック図で示したものが図11である。
【0055】図11の左に示す本発明による方法は、 試料ブロックを作製し、試料ブロックの状態で80℃
−8時間、リン−タングステン酸による加熱染色を行な
う。 次に、室温−24時間の四酸化ルテニウムによる染色
を行なう。 その後に薄片化してTEM観察用試料片とした。
【0056】図11の右に示す従来の方法では 最初に四酸化ルテニウムによって試料ブロックの染色
を行なう。このように試料ブロックを薄片化する前に染
色する理由は、染色しない状態では柔らかく、薄片化が
不可能なため、染色により硬くして薄片化を可能にする
ためである。なぜ先にリン−タングステン酸による染色
でなく、四酸化ルテニウムによる染色を行なう理由は、
前者では染色速度が非常に遅いため試料ブロックが硬く
ならず薄片化が困難となるからである。 次に染色された試料ブロックを薄片化する。 その後に薄片化された試料片にリン−タングステン酸
による染色を行なう。この染色を薄片化の前でなく後で
行なうのは、室温ではリン−タングステン酸の浸透力は
弱いため試料ブロックのままの状態では染色に時間がか
かりすぎるため、薄片化した後に染色することにより、
染色時間を短縮しようとするものである。
【0057】しかし、それでもリン−タングステン酸に
よる染色時間は室温で1週間以上必要となり、従来例で
は図11にも示すようにTEM観察用試料片作製までに
1週間から10日を要していた。これに対し、図11の
左に示す本実施例では、TEM観察用試料片作製までの
所要時間はわずか2日である。
【0058】(5−3−2)試料片のTEM観察結果の
比較 このようにして作製された観察用試料片をTEMで観察
した。図12に従来の方法で作製された観察用試料片の
TEM写真を示す。図12には、左右に倍率の異なる2
つの写真をしている。図12の左図(低倍率のもの)か
らスチレン系樹脂中のポリプロピレンの状態およびポリ
アミドの分散状態が明瞭に観察できる。しかし高倍率の
図12の右図には通常四酸化ルテニウムによる染色によ
って観察されるポリプロピレンのラメラ構造がまったく
見えない。またスチレン系樹脂、ポリプロピレン、ポリ
アミド各相の界面の微細構造が明瞭に観察できない。
【0059】これに対して本実施例の方法により作製さ
れた観察用試料片のTEM写真を図13、14に示す。
図13と図14は倍率が異なり、低倍率のものが図1
3、高倍率のものが図14である。図13を見ると従来
例(図12左図)と同じくスチレン系樹脂中のポリプロ
ピレンの状態、ポリアミドの分散状態が明瞭に観察でき
る。図15に示した試料片(図13と同じ倍率のもの)
のスチレン系樹脂相、ポリプロピレン(PP)相及
びポリアミド相について特性X線分析を行ない、結果
を図16に示す。この図16からポリアミド相にはタン
グステン(W)のみ、ポリプロピレン相にはルテニウム
(Ru)のみの存在が確認できる。またスチレン系樹脂
相からタングステン(W)、ルテニウム(Ru)が観察
されていないことから、染色がなされていないことがわ
かる。これらのことから各相への染色剤の混在はなく、
良好な染色がなされていると判断できる。
【0060】従来例の図12左図と本実施例の図13を
比較すると、図13では従来例に比べ、ポリプロピレン
相の染色の程度が高く、またポリプロピレン相中のポリ
アミドがやや染色されにくいことがわかる。しかしこの
点は分散状態の解析に全く支障はない。
【0061】次に従来例の図12右図と本実施例の図1
4(共に高倍率の写真)を比較すると本実施例では、従
来例では観察されなかったポリプロピレン相のラメラ構
造が非常に明瞭に観察されていることがわかる。特にポ
リプロピレンと他の樹脂との界面のポリプロピレン相の
ラメラ構造を鮮明に見ることができる。通常の染色では
このような鮮明な観察例はなく、本発明によれば従来得
られなかった界面の微細構造が明らかにされ、本発明が
ポリマーの物性を解析する上で強力な手段にもなり得る
ことが確認された。
【0062】
【発明の効果】本発明に係る方法によれば、試料ブロッ
クのままTEM観察用試料を染色するので試料ブロック
が硬化し、ミクロトームによる切削が可能となり容易に
薄片化できる。また加熱染色をするので染色時間が短く
て済み、TEM観察用試料を作製する時間を短縮でき、
作業能率を向上できる。更に染色を自在に組み合わせる
ことが可能となり、従来観察できなかったポリマー材料
の微細構造が観察できる。次に本発明に係る染色用装置
を用いれば、TEM観察用試料片の作製のための染色作
業が簡単であり、また染色容器を複数個準備して同一操
作を行なうことにより同時に染色が行なえるので作業能
率が上がり、TEM観察の能率が向上する。また密閉系
のためリン−タングステン酸及び四酸化ルテニウム(蒸
気)の取扱い上の安全性も確保できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】試料ブロックの一例を示す図である。
【図2】染色用装置の一実施例を示す図である。
【図3】実施例1の方法により作製されたポリアミド試
料片の粒子の構造を示す写真である。
【図4】実施例2の方法により作製されたポリアミド/
PPブレンド物試料片の粒子の構造を示す写真である。
【図5】図4に示す写真のポリアミド相について行なっ
た特性X線分析結果を示す図である。
【図6】実施例2の方法により作製された染色後の試料
ブロック断面のタングステン分析結果を示す図である。
【図7】実施例3の方法により作製されたEPDM/ポ
リプロピレン系樹脂ブレンド物試料片の粒子の構造を示
す写真である。
【図8】図7に示す写真のEDPM相について行なった
特性X線分析結果を示す図である。
【図9】実施例4の方法により作製されたポリアミド/
PPブレンド物試料片の粒子の構造を示す写真である。
【図10】実施例5の方法により作製されたEPDM/
ポリプロピレン系樹脂ブレンド物試料片の粒子の構造を
示す写真である。
【図11】実施例6の方法と従来の方法を比較したブロ
ック図である。
【図12】従来の方法で作製したスチレン系樹脂/PP
/ポリアミドブレンド物試料片の粒子の構造を示す写真
である。
【図13】実施例6の方法により作製したスチレン系樹
脂/PP/ポリアミドブレンド物試料片の粒子の構造を
示す写真(低倍率のもの)である。
【図14】実施例6の方法により作製したスチレン系樹
脂/PP/ポリアミドブレンド物試料片の粒子の構造を
示す写真(高倍率のもの)である。
【図15】実施例6の方法により作製したスチレン系樹
脂/PP/ポリアミドブレンド物試料片の粒子の構造の
写真(低倍率のもの)を示す図である。
【図16】図15の写真に示すスチレン系樹脂相、
ポリプロピレン相、ポリアミド相の各相について行な
った特性X線分析の結果を示す図である。
【符号の説明】
10 染色用装置 11 蓋 12 容器 13 保持具 14 試料ブロック

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリマー材料から、ミクロトーム(試料
    の薄片化装置)にセットできる形状の試料ブロックを作
    製した後に、 上記試料ブロックに、一つまたは複数の染色剤を個別に
    作用させて、染色を行ない、 その後に、上記染色された試料ブロックを上記ミクロト
    ームで、薄片化して透過型電子顕微鏡用試料を作製する
    方法において、 上記試料ブロックの染色のうち、少なくとも一つの染色
    を、加熱状態で行なうことを特徴とする透過型電子顕微
    鏡用試料の作製方法。
  2. 【請求項2】 蓋を有する容器と、上記蓋に取り外し可
    能に取り付けられた、請求項1記載の複数の試料ブロッ
    クを保持する保持具とからなる試料ブロックの染色用装
    置において、 試料ブロックを取り付けた上記保持具を、上記蓋に取り
    付けて蓋を閉めると、蓋と容器はネジ等によって接合し
    て容器内は完全に密閉され、保持具に保持された複数の
    試料ブロックが、容器内の染色剤に浸漬保持されること
    を特徴とする、試料ブロックの染色用装置。
JP9484793A 1993-03-31 1993-03-31 透過型電子顕微鏡用試料の作製方法及び試料染色用 装置 Pending JPH06288882A (ja)

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Cited By (7)

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JP2008046127A (ja) * 2006-08-16 2008-02-28 Fei Co 試料の薄片から画像を取得する方法
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