JPH06287637A - 溶接性が優れ音響異方性の小さい高張力鋼板の製造方法 - Google Patents
溶接性が優れ音響異方性の小さい高張力鋼板の製造方法Info
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- JPH06287637A JPH06287637A JP7576493A JP7576493A JPH06287637A JP H06287637 A JPH06287637 A JP H06287637A JP 7576493 A JP7576493 A JP 7576493A JP 7576493 A JP7576493 A JP 7576493A JP H06287637 A JPH06287637 A JP H06287637A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 780N/mm2以上の引張強さ、 -60℃以下のvTr
s、1.02以下のVL /VCを有する溶接性が優れ音響異方
性の小さい高張力鋼板の製造方法を提供する。 【構成】 C:0.01〜0.09%、Si:0.05 〜0.50%、Mn:0.3
0 〜2.50%、Cu:0.70 〜2.00%、Ni:0.50 〜3.50%、M
o:0.01 〜0.60%、Nb:0.01 〜0.050 %、Al:0.005〜0.1
0%、Ti:0.005〜0.025 %、Ca:0.001〜0.010 %を含有
しする鋼片を、1000〜1150℃の温度範囲に加熱後、930
℃以下の累積圧下率が50%以上の圧延を行い、 830〜90
0 ℃の温度範囲で熱間圧延を終了し、その後、10℃/s以
上の冷却速度で 400〜600 ℃の温度範囲まで加速冷却を
行い、加速冷却後 500℃以上Ac1点未満の温度で焼戻し
する。または、熱間圧延終了後、加速冷却に替えて、10
℃/s以上の冷却速度で 200℃以下の温度まで直接焼入れ
を行う。
s、1.02以下のVL /VCを有する溶接性が優れ音響異方
性の小さい高張力鋼板の製造方法を提供する。 【構成】 C:0.01〜0.09%、Si:0.05 〜0.50%、Mn:0.3
0 〜2.50%、Cu:0.70 〜2.00%、Ni:0.50 〜3.50%、M
o:0.01 〜0.60%、Nb:0.01 〜0.050 %、Al:0.005〜0.1
0%、Ti:0.005〜0.025 %、Ca:0.001〜0.010 %を含有
しする鋼片を、1000〜1150℃の温度範囲に加熱後、930
℃以下の累積圧下率が50%以上の圧延を行い、 830〜90
0 ℃の温度範囲で熱間圧延を終了し、その後、10℃/s以
上の冷却速度で 400〜600 ℃の温度範囲まで加速冷却を
行い、加速冷却後 500℃以上Ac1点未満の温度で焼戻し
する。または、熱間圧延終了後、加速冷却に替えて、10
℃/s以上の冷却速度で 200℃以下の温度まで直接焼入れ
を行う。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、橋梁、建築などの大型
構造物に使用される引張強さ780N/mm2級以上の高張力鋼
板の製造方法に関し、さらに詳しくは溶接性が優れ音響
異方性の小さい高張力鋼板の製造方法に関するものであ
る。
構造物に使用される引張強さ780N/mm2級以上の高張力鋼
板の製造方法に関し、さらに詳しくは溶接性が優れ音響
異方性の小さい高張力鋼板の製造方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】従来から高張力鋼板の溶接性の改善手段
として、Cuの析出強化を利用し炭素当量の低減を図る方
法が知られており、米国特許第3692514 号およびAST
M規格A710にその例を見ることができる。わが国で
も、この技術を改善したものとして、特公平2-47525 号
公報、特公昭62-5216 号公報、特開昭61-291920 号公報
などが公知である。
として、Cuの析出強化を利用し炭素当量の低減を図る方
法が知られており、米国特許第3692514 号およびAST
M規格A710にその例を見ることができる。わが国で
も、この技術を改善したものとして、特公平2-47525 号
公報、特公昭62-5216 号公報、特開昭61-291920 号公報
などが公知である。
【0003】これらの技術を適用した鋼板では、Cuの析
出強化に伴う靱性劣化を補うために、圧延終了温度を 8
00℃以下の低温とし、結晶粒の微細化を図っている。し
かし、このような低温圧延を行うと、集合組織の発達に
より超音波探傷時の圧延方向の音速(VL ) と圧延直角
方向の音速(VC )との差が大きくなり、いわゆる音響
異方性が大きくなるため、溶接部の斜角探傷の際に欠陥
位置の正確な評価が行えないという問題が生じ、斜角探
傷を行わねばならない橋梁、建築などの分野へ、このよ
うな鋼板を適用することは事実上できなかった。
出強化に伴う靱性劣化を補うために、圧延終了温度を 8
00℃以下の低温とし、結晶粒の微細化を図っている。し
かし、このような低温圧延を行うと、集合組織の発達に
より超音波探傷時の圧延方向の音速(VL ) と圧延直角
方向の音速(VC )との差が大きくなり、いわゆる音響
異方性が大きくなるため、溶接部の斜角探傷の際に欠陥
位置の正確な評価が行えないという問題が生じ、斜角探
傷を行わねばならない橋梁、建築などの分野へ、このよ
うな鋼板を適用することは事実上できなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、引張強さ78
0N/mm2級以上の高張力鋼板の製造において、Cuの析出強
化を利用して炭素当量の低減を図ることによって良好な
溶接性を確保するとともに、極端な低温圧延を避け、圧
延後の冷却速度を制御し、焼戻しすることによって音響
異方性および靱性劣化の問題を解決する溶接性が優れ音
響異方性の小さい高張力鋼板の製造方法を提供すること
を目的とする。
0N/mm2級以上の高張力鋼板の製造において、Cuの析出強
化を利用して炭素当量の低減を図ることによって良好な
溶接性を確保するとともに、極端な低温圧延を避け、圧
延後の冷却速度を制御し、焼戻しすることによって音響
異方性および靱性劣化の問題を解決する溶接性が優れ音
響異方性の小さい高張力鋼板の製造方法を提供すること
を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、Cuの析出
強化を利用した引張強さ780N/mm2級以上の高張力鋼板の
製造において、音響異方性を改善するために低温圧延を
避け圧延終了温度を高めた場合の良好な靱性確保の手段
について、鋭意検討を行った結果、結晶粒微細化元素で
あるNbの適正量添加および硫化物の展伸を防ぐCaの添加
により、過度の低温圧延によらずとも十分な靱性を確保
することができるという知見を得て、本発明に至ったも
のである。
強化を利用した引張強さ780N/mm2級以上の高張力鋼板の
製造において、音響異方性を改善するために低温圧延を
避け圧延終了温度を高めた場合の良好な靱性確保の手段
について、鋭意検討を行った結果、結晶粒微細化元素で
あるNbの適正量添加および硫化物の展伸を防ぐCaの添加
により、過度の低温圧延によらずとも十分な靱性を確保
することができるという知見を得て、本発明に至ったも
のである。
【0006】その第1発明は、C:0.01〜0.09%、Si:0.0
5 〜0.50%、Mn:0.30 〜2.50%、Cu:0.70 〜2.00%、N
i:0.50 〜3.50%、Mo:0.01 〜0.60%、Nb:0.01 〜0.050
%、Al:0.005〜0.10%、Ti:0.005〜0.025 %、Ca:0.00
1〜0.010 %を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物
から成る鋼片を、1000〜1150℃の温度範囲に加熱後、93
0 ℃以下の累積圧下率が50%以上の圧延を行い、 830〜
900 ℃の温度範囲で熱間圧延を終了し、その後、10℃/s
以上の冷却速度で 400〜600 ℃の温度範囲まで加速冷却
を行い、加速冷却後 500℃以上Ac1点未満の温度で焼戻
しする溶接性が優れ音響異方性の小さい高張力鋼板の製
造方法である。
5 〜0.50%、Mn:0.30 〜2.50%、Cu:0.70 〜2.00%、N
i:0.50 〜3.50%、Mo:0.01 〜0.60%、Nb:0.01 〜0.050
%、Al:0.005〜0.10%、Ti:0.005〜0.025 %、Ca:0.00
1〜0.010 %を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物
から成る鋼片を、1000〜1150℃の温度範囲に加熱後、93
0 ℃以下の累積圧下率が50%以上の圧延を行い、 830〜
900 ℃の温度範囲で熱間圧延を終了し、その後、10℃/s
以上の冷却速度で 400〜600 ℃の温度範囲まで加速冷却
を行い、加速冷却後 500℃以上Ac1点未満の温度で焼戻
しする溶接性が優れ音響異方性の小さい高張力鋼板の製
造方法である。
【0007】第2発明は、熱間圧延終了後、10℃/s以上
の冷却速度で 200℃以下の温度まで直接焼入れを行い、
直接焼入れ後 500℃以上Ac1点未満の温度で焼戻しする
請求項1記載の溶接性が優れ音響異方性の小さい高張力
鋼板の製造方法である。
の冷却速度で 200℃以下の温度まで直接焼入れを行い、
直接焼入れ後 500℃以上Ac1点未満の温度で焼戻しする
請求項1記載の溶接性が優れ音響異方性の小さい高張力
鋼板の製造方法である。
【0008】第3発明は、さらに、化学成分として、C
r:0.01 〜1.20%、REM:0.005 〜0.05%のうち一種また
は二種を含有する請求項1または2記載の溶接性が優れ
音響異方性の小さい高張力鋼板の製造方法である。
r:0.01 〜1.20%、REM:0.005 〜0.05%のうち一種また
は二種を含有する請求項1または2記載の溶接性が優れ
音響異方性の小さい高張力鋼板の製造方法である。
【0009】
【作用】以下に、本発明における化学成分の限定理由に
ついて説明する。C は、高張力鋼板としての強度を確保
するために必要な元素であるが、含有量が0.01%未満で
は、引張強さ780N/mm2級以上の強度を得がたい。また、
0.09%を超えて添加すると耐溶接割れ性を害するので好
ましくない。したがって、C 含有量は0.01〜0.09%の範
囲とする。
ついて説明する。C は、高張力鋼板としての強度を確保
するために必要な元素であるが、含有量が0.01%未満で
は、引張強さ780N/mm2級以上の強度を得がたい。また、
0.09%を超えて添加すると耐溶接割れ性を害するので好
ましくない。したがって、C 含有量は0.01〜0.09%の範
囲とする。
【0010】Siは、鋼の脱酸に必要な元素であるが、含
有量が0.05%未満ではこの効果は少なく、また、0.50%
を超えて過多に添加すると溶接性および靱性を劣化させ
るので好ましくない。このため、Si含有量は0.05〜0.50
%の範囲とする。
有量が0.05%未満ではこの効果は少なく、また、0.50%
を超えて過多に添加すると溶接性および靱性を劣化させ
るので好ましくない。このため、Si含有量は0.05〜0.50
%の範囲とする。
【0011】Mnは、強度を確保するために必要な元素で
あるが、含有量が0.30%未満ではこのような効果が十分
に得られず、また、2.50%を超えて過多に添加すると溶
接性および靱性を劣化させるので好ましくない。したが
って、Mn含有量は0.30〜2.50%の範囲とする。
あるが、含有量が0.30%未満ではこのような効果が十分
に得られず、また、2.50%を超えて過多に添加すると溶
接性および靱性を劣化させるので好ましくない。したが
って、Mn含有量は0.30〜2.50%の範囲とする。
【0012】Cuは、本発明の特徴とする元素であり、圧
延冷却後の焼戻し時の析出強化作用を活用することによ
り、炭素当量の低減を可能とし、溶接性の向上をもたら
す貴重な元素である。この析出強化作用を有効に得るに
は、0.70%以上の添加が必要である。しかし、過剰の添
加は靱性および溶接性を害するため、上限を2.00%とす
る。したがって、Cu含有量は0.70〜2.00%の範囲とす
る。
延冷却後の焼戻し時の析出強化作用を活用することによ
り、炭素当量の低減を可能とし、溶接性の向上をもたら
す貴重な元素である。この析出強化作用を有効に得るに
は、0.70%以上の添加が必要である。しかし、過剰の添
加は靱性および溶接性を害するため、上限を2.00%とす
る。したがって、Cu含有量は0.70〜2.00%の範囲とす
る。
【0013】Niは、Cu析出強化型鋼板において、Cu添加
に起因する熱間圧延時の割れを防止する作用があり、そ
の効果を十分に発揮させるには、0.50%以上が必要であ
る。また、Niは靱性向上効果も有するが、高価な元素で
ありコストアップを防ぐために、上限を3.50%とする。
したがって、Ni含有量は0.50〜3.50%の範囲とする。
に起因する熱間圧延時の割れを防止する作用があり、そ
の効果を十分に発揮させるには、0.50%以上が必要であ
る。また、Niは靱性向上効果も有するが、高価な元素で
ありコストアップを防ぐために、上限を3.50%とする。
したがって、Ni含有量は0.50〜3.50%の範囲とする。
【0014】Moは、強度上昇に有効な元素であるが、含
有量が0.01%未満では十分な効果が得られず、また、0.
60%を超えて過剰に添加すると溶接性を劣化させ、コス
トもアップする。したがって、Mo含有量は0.01〜0.60%
の範囲とする。
有量が0.01%未満では十分な効果が得られず、また、0.
60%を超えて過剰に添加すると溶接性を劣化させ、コス
トもアップする。したがって、Mo含有量は0.01〜0.60%
の範囲とする。
【0015】Nbは、圧延時のオーステナイト未再結晶温
度域を拡大する作用により、微細なアシキュラーフェラ
イト組織を生成させ、良好な靱性を確保する効果、およ
び圧延冷却後の析出強化作用を有する元素であり、これ
らの効果を有効に発揮させるためには、0.01%以上の添
加が必要である。しかし、後述するように 0.050%を超
えて添加すると低温圧延した場合の集合組織の発達が著
しく、音響異方性を増加させるため、Nb含有量は0.01〜
0.050 %の範囲とする。
度域を拡大する作用により、微細なアシキュラーフェラ
イト組織を生成させ、良好な靱性を確保する効果、およ
び圧延冷却後の析出強化作用を有する元素であり、これ
らの効果を有効に発揮させるためには、0.01%以上の添
加が必要である。しかし、後述するように 0.050%を超
えて添加すると低温圧延した場合の集合組織の発達が著
しく、音響異方性を増加させるため、Nb含有量は0.01〜
0.050 %の範囲とする。
【0016】Alは、脱酸元素であり、0.005 %未満では
そのような効果は少なく、また、0.10%を超えて添加す
ると靱性の劣化をもたらす。したがって、Al含有量は
0.005〜0.10%の範囲とする。
そのような効果は少なく、また、0.10%を超えて添加す
ると靱性の劣化をもたらす。したがって、Al含有量は
0.005〜0.10%の範囲とする。
【0017】Tiは、鋼片加熱時のオーステナイト結晶粒
の粗大化を防止し、TiN の微細析出による結晶粒微細化
効果をもたらし、靱性の向上に有用である。これらの効
果を得るには、0.005 %以上の添加が必要であるが、多
量に添加すると靱性が劣化するため、Ti含有量は 0.005
〜0.020 %の範囲とする。
の粗大化を防止し、TiN の微細析出による結晶粒微細化
効果をもたらし、靱性の向上に有用である。これらの効
果を得るには、0.005 %以上の添加が必要であるが、多
量に添加すると靱性が劣化するため、Ti含有量は 0.005
〜0.020 %の範囲とする。
【0018】Caは、非金属介在物の球状化作用を有し、
靱性の向上、異方性の低減に有効であるが、含有量が
0.001%未満では十分な効果が得られず、また、 0.010
%を超えて添加すると、介在物の増加により靱性が劣化
する。したがって、Ca含有量は0.001〜0.010 %の範囲
とする。
靱性の向上、異方性の低減に有効であるが、含有量が
0.001%未満では十分な効果が得られず、また、 0.010
%を超えて添加すると、介在物の増加により靱性が劣化
する。したがって、Ca含有量は0.001〜0.010 %の範囲
とする。
【0019】以上の各成分のほかに、本発明において
は、板厚、目標強度、靱性レベルに応じてCr、REM のう
ち一種または二種を添加するものとする。
は、板厚、目標強度、靱性レベルに応じてCr、REM のう
ち一種または二種を添加するものとする。
【0020】Crは、強度上昇に有効な元素であるが、含
有量が0.01%未満ではその効果は十分に発揮されず、ま
た、1.20%を超えて添加すると溶接性を害する。したが
って、Cr含有量は0.01〜1.20%の範囲とする。
有量が0.01%未満ではその効果は十分に発揮されず、ま
た、1.20%を超えて添加すると溶接性を害する。したが
って、Cr含有量は0.01〜1.20%の範囲とする。
【0021】REM は、介在物の形態制御効果があり、靱
性改善、板厚方向の延性改善に効果があり、このような
効果を発揮させるためには、0.005 %以上の添加が必要
である。しかし、0.05%を超えて添加しても、さらなる
向上は望めない。したがって、REM 含有量は0.005 〜0.
05%の範囲とする。
性改善、板厚方向の延性改善に効果があり、このような
効果を発揮させるためには、0.005 %以上の添加が必要
である。しかし、0.05%を超えて添加しても、さらなる
向上は望めない。したがって、REM 含有量は0.005 〜0.
05%の範囲とする。
【0022】つぎに、本発明における製造条件の限定理
由について説明する。まず、鋼片加熱温度については、
加熱時のオーステナイト結晶粒の粗大化を防止するため
には、低温の方が望ましく、加熱温度の上限は1150℃と
する。一方、加熱温度が低すぎると、圧延中の結晶粒の
微細化および圧延後の析出強化に有効なNbを固溶させる
ことができないため、加熱温度の下限は1000℃とする。
由について説明する。まず、鋼片加熱温度については、
加熱時のオーステナイト結晶粒の粗大化を防止するため
には、低温の方が望ましく、加熱温度の上限は1150℃と
する。一方、加熱温度が低すぎると、圧延中の結晶粒の
微細化および圧延後の析出強化に有効なNbを固溶させる
ことができないため、加熱温度の下限は1000℃とする。
【0023】圧延温度域、圧下条件としては、Cuの析出
強化に伴う母材靱性の劣化を補うために、低温圧延を行
い結晶粒の微細化を達成することが不可欠である。しか
し、過度の低温圧延は集合組織の発達による音響異方性
の増加という問題を招くため、靱性および音響異方性を
両立できる適切な圧延条件および化学成分を選定するこ
とが重要である。
強化に伴う母材靱性の劣化を補うために、低温圧延を行
い結晶粒の微細化を達成することが不可欠である。しか
し、過度の低温圧延は集合組織の発達による音響異方性
の増加という問題を招くため、靱性および音響異方性を
両立できる適切な圧延条件および化学成分を選定するこ
とが重要である。
【0024】このような観点から、靱性、音響異方性に
及ぼす化学成分および圧延終了温度の影響を調査した。
この場合、対象とする元素には、NbとCaを選定した。こ
れらを選定した理由は、Nbはオーステナイト粒の展伸、
高密度の転移や変形帯の導入をもたらし、集合組織の発
達を促進するからであり、Caは非金属介在物の球状化作
用を有し、靱性の向上、異方性の低減をもたらすからで
ある。
及ぼす化学成分および圧延終了温度の影響を調査した。
この場合、対象とする元素には、NbとCaを選定した。こ
れらを選定した理由は、Nbはオーステナイト粒の展伸、
高密度の転移や変形帯の導入をもたらし、集合組織の発
達を促進するからであり、Caは非金属介在物の球状化作
用を有し、靱性の向上、異方性の低減をもたらすからで
ある。
【0025】表1に調査に使用した鋼の化学成分を示
す。ここでは、Nb添加量を0.03%と0.06%の二水準と
し、Caを添加したものと添加してないものを準備した。
これらの鋼を1050℃に加熱した後、圧延終了温度を 730
〜900 ℃の範囲に変化させて、板厚34mmに圧延し、その
後、冷却速度14℃/sで 450℃まで加速冷却を行い、 550
℃で焼戻しを行った。このようにして得られた鋼板の引
張特性、衝撃特性および音響異方性を図1に示す。
す。ここでは、Nb添加量を0.03%と0.06%の二水準と
し、Caを添加したものと添加してないものを準備した。
これらの鋼を1050℃に加熱した後、圧延終了温度を 730
〜900 ℃の範囲に変化させて、板厚34mmに圧延し、その
後、冷却速度14℃/sで 450℃まで加速冷却を行い、 550
℃で焼戻しを行った。このようにして得られた鋼板の引
張特性、衝撃特性および音響異方性を図1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】図1から明らかなように、Nb、Caの添加量
や圧延終了温度にかかわらず、強度は一定であり、目標
の780N/mm2級以上を十分に満足しているが、靱性はNb量
の低減、Caの添加、あるいは圧延終了温度の低下によっ
て向上することがわかる。一方、音響異方性はNb量の低
減、圧延終了温度の上昇によって減少することがわか
る。ここで靱性の目標値をvTrs(破面遷移温度)で -60
℃以下とし、音響異方性の目標値を1.02(VL とVC の
比)以下し、これらの目標を同時に満足するのは、ここ
では0.03%Nb−Ca添加鋼で、圧延終了温度は 830〜900
℃の範囲である。
や圧延終了温度にかかわらず、強度は一定であり、目標
の780N/mm2級以上を十分に満足しているが、靱性はNb量
の低減、Caの添加、あるいは圧延終了温度の低下によっ
て向上することがわかる。一方、音響異方性はNb量の低
減、圧延終了温度の上昇によって減少することがわか
る。ここで靱性の目標値をvTrs(破面遷移温度)で -60
℃以下とし、音響異方性の目標値を1.02(VL とVC の
比)以下し、これらの目標を同時に満足するのは、ここ
では0.03%Nb−Ca添加鋼で、圧延終了温度は 830〜900
℃の範囲である。
【0028】以上の調査結果をもとに、Caの添加を必須
とし、前述のNbおよびCaの含有量を限定し、また、圧延
終了温度は 830〜900 ℃の範囲に限定した。
とし、前述のNbおよびCaの含有量を限定し、また、圧延
終了温度は 830〜900 ℃の範囲に限定した。
【0029】また、 930℃以下の累積圧下率を50%以上
とするのは、良好な靱性確保に必要な十分な結晶粒の微
細化を達成させるためである。
とするのは、良好な靱性確保に必要な十分な結晶粒の微
細化を達成させるためである。
【0030】熱間圧延終了後の加速冷却、直接焼入れの
冷却速度は、目標の780N/mm2級以上の強度を得るために
は、10℃/s以上が必要であり、このため、圧延終了後の
加速冷却、直接焼入れの冷却速度は10℃/s以上に限定す
る。
冷却速度は、目標の780N/mm2級以上の強度を得るために
は、10℃/s以上が必要であり、このため、圧延終了後の
加速冷却、直接焼入れの冷却速度は10℃/s以上に限定す
る。
【0031】圧延終了後の加速冷却においては、鋼板の
残留応力の低減、水素の放出促進のために加速冷却を停
止する場合は、そのような効果を十分に発揮させるため
に、加速冷却停止温度は 400℃以上とする必要があり、
一方、加速冷却停止温度が高すぎると、アシキュラーフ
ェライト組織を生成させ靱性の改善を図ることができな
い。したがって、加速冷却の停止温度は 400〜600 ℃の
範囲に限定する。
残留応力の低減、水素の放出促進のために加速冷却を停
止する場合は、そのような効果を十分に発揮させるため
に、加速冷却停止温度は 400℃以上とする必要があり、
一方、加速冷却停止温度が高すぎると、アシキュラーフ
ェライト組織を生成させ靱性の改善を図ることができな
い。したがって、加速冷却の停止温度は 400〜600 ℃の
範囲に限定する。
【0032】これに対して、残留応力や水素の問題を別
の手段で解決し、冷却による強度上昇効果を最大限に活
用することを狙いとする直接焼入れでは、その効果を十
分に得るために、200℃以下の温度まで継続して冷却す
る。
の手段で解決し、冷却による強度上昇効果を最大限に活
用することを狙いとする直接焼入れでは、その効果を十
分に得るために、200℃以下の温度まで継続して冷却す
る。
【0033】焼戻しについては、Cuの析出およびNbの炭
窒化物の析出による強化を図るために行うものである。
この温度が 500℃未満ではCuおよびNb炭窒化物の析出に
長時間を要し、工業的な処理が行えず、また、Ac1点を
超える温度ではオーステナイトへの逆変態を生じ、強度
の低下が著しくなる。したがって、焼戻し温度は 500℃
〜Ac1点の温度範囲とする。なお、Ac1点は次式で与え
られる。各合金元素は含有量(%)で表す。 Ac1 (℃)=723-14Mn+22Si-14.4Ni+23.3Cr
窒化物の析出による強化を図るために行うものである。
この温度が 500℃未満ではCuおよびNb炭窒化物の析出に
長時間を要し、工業的な処理が行えず、また、Ac1点を
超える温度ではオーステナイトへの逆変態を生じ、強度
の低下が著しくなる。したがって、焼戻し温度は 500℃
〜Ac1点の温度範囲とする。なお、Ac1点は次式で与え
られる。各合金元素は含有量(%)で表す。 Ac1 (℃)=723-14Mn+22Si-14.4Ni+23.3Cr
【0034】
【実施例】以下に、本発明の実施例について説明する。
供試鋼板は表2表に示す化学成分を有する鋼を常法によ
り溶製、鋳造し、得られた鋼片を表3に示す製造条件に
したがい、加熱、圧延、加速冷却または直接焼入れ、お
よび焼戻しを行ったものである。これらの鋼板から試験
片を採取し、引張試験、2mmVノッチシャルピ衝撃試験
および音響異方性の調査を行った。その結果を表3に併
記する。
供試鋼板は表2表に示す化学成分を有する鋼を常法によ
り溶製、鋳造し、得られた鋼片を表3に示す製造条件に
したがい、加熱、圧延、加速冷却または直接焼入れ、お
よび焼戻しを行ったものである。これらの鋼板から試験
片を採取し、引張試験、2mmVノッチシャルピ衝撃試験
および音響異方性の調査を行った。その結果を表3に併
記する。
【0035】表3から明らかなように、本発明法による
A〜Iは、いずれも780N/mm2級以上の引張強さと、 -60
℃以下のvTrs(破面遷移温度)と、1.02以下のVL /V
C を有している。
A〜Iは、いずれも780N/mm2級以上の引張強さと、 -60
℃以下のvTrs(破面遷移温度)と、1.02以下のVL /V
C を有している。
【0036】これに対して、比較例JとNは圧延終了温
度が低いため、KはNbが多いため、いずれもVL /VC
が1.02を超え音響異方性が大きい。比較例LはCaが添加
されていないため、vTrsが -49℃で靱性が悪い。比較例
Mは加熱温度が低いため、780N/mm2級以上の引張強さが
得られていない。
度が低いため、KはNbが多いため、いずれもVL /VC
が1.02を超え音響異方性が大きい。比較例LはCaが添加
されていないため、vTrsが -49℃で靱性が悪い。比較例
Mは加熱温度が低いため、780N/mm2級以上の引張強さが
得られていない。
【0037】以上のように、本発明法によれば、780N/m
m2級以上の引張強さと、 -60℃以下のvTrs(破面遷移温
度)と、1.02以下のVL /VC を有する溶接性が優れ音
響異方性の小さい高張力鋼板を得ることができる。な
お、本発明は本実施例にのみ限定されるものではない。
m2級以上の引張強さと、 -60℃以下のvTrs(破面遷移温
度)と、1.02以下のVL /VC を有する溶接性が優れ音
響異方性の小さい高張力鋼板を得ることができる。な
お、本発明は本実施例にのみ限定されるものではない。
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
【発明の効果】本発明は、Cuの析出強化を利用して炭素
当量を低減して良好な溶接性を確保し、極端な低温圧延
を避け、圧延後の冷却速度を制御し、焼戻しすることに
よって780N/mm2級以上の引張強さを有し、音響異方性と
靱性を改善した高張力鋼板の製造方法であって、本発明
法によれば、780N/mm2級以上の引張強さと、 -60℃以下
のvTrs(破面遷移温度)と、1.02以下のVL /VC を有
する溶接性が優れ音響異方性の小さい高張力鋼板を得る
ことができる。
当量を低減して良好な溶接性を確保し、極端な低温圧延
を避け、圧延後の冷却速度を制御し、焼戻しすることに
よって780N/mm2級以上の引張強さを有し、音響異方性と
靱性を改善した高張力鋼板の製造方法であって、本発明
法によれば、780N/mm2級以上の引張強さと、 -60℃以下
のvTrs(破面遷移温度)と、1.02以下のVL /VC を有
する溶接性が優れ音響異方性の小さい高張力鋼板を得る
ことができる。
【図1】Nb−Ca量と圧延終了温度が引張特性、衝撃特性
および音響異方性に及ぼす影響を示す図である。
および音響異方性に及ぼす影響を示す図である。
Claims (3)
- 【請求項1】 C:0.01〜0.09%、Si:0.05 〜0.50%、M
n:0.30 〜2.50%、Cu:0.70 〜2.00%、Ni:0.50 〜3.50
%、Mo:0.01 〜0.60%、Nb:0.01 〜0.050 %、Al:0.005
〜0.10%、Ti:0.005〜0.025 %、Ca:0.001〜0.010 %を
含有し、残部がFeおよび不可避的不純物から成る鋼片
を、1000〜1150℃の温度範囲に加熱後、930 ℃以下の累
積圧下率が50%以上の圧延を行い、 830〜900 ℃の温度
範囲で熱間圧延を終了し、その後、10℃/s以上の冷却速
度で 400〜600 ℃の温度範囲まで加速冷却を行い、加速
冷却後 500℃以上Ac1点未満の温度で焼戻しすることを
特徴とする溶接性が優れ音響異方性の小さい高張力鋼板
の製造方法。 - 【請求項2】 熱間圧延終了後、10℃/s以上の冷却速度
で 200℃以下の温度まで直接焼入れを行い、直接焼入れ
後 500℃以上Ac1点未満の温度で焼戻しする請求項1記
載の溶接性が優れ音響異方性の小さい高張力鋼板の製造
方法。 - 【請求項3】 さらに、化学成分として、Cr:0.01 〜1.
20%、REM:0.005 〜0.05%のうち一種または二種を含有
する請求項1または2記載の溶接性が優れ音響異方性の
小さい高張力鋼板の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP7576493A JPH06287637A (ja) | 1993-04-01 | 1993-04-01 | 溶接性が優れ音響異方性の小さい高張力鋼板の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP7576493A JPH06287637A (ja) | 1993-04-01 | 1993-04-01 | 溶接性が優れ音響異方性の小さい高張力鋼板の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH06287637A true JPH06287637A (ja) | 1994-10-11 |
Family
ID=13585616
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP7576493A Withdrawn JPH06287637A (ja) | 1993-04-01 | 1993-04-01 | 溶接性が優れ音響異方性の小さい高張力鋼板の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH06287637A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR100256357B1 (ko) * | 1995-10-16 | 2000-05-15 | 이구택 | 저온인성이 우수한 구리석출강화형 고장력강판의 제조방법 |
CN113502440A (zh) * | 2021-02-26 | 2021-10-15 | 上海交通大学 | 一种节镍型超低温用高强钢及其热处理工艺 |
-
1993
- 1993-04-01 JP JP7576493A patent/JPH06287637A/ja not_active Withdrawn
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR100256357B1 (ko) * | 1995-10-16 | 2000-05-15 | 이구택 | 저온인성이 우수한 구리석출강화형 고장력강판의 제조방법 |
CN113502440A (zh) * | 2021-02-26 | 2021-10-15 | 上海交通大学 | 一种节镍型超低温用高强钢及其热处理工艺 |
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