JPH06264180A - 耐デント性と耐面歪性及び加工性に優れた冷延鋼板とその製造方法 - Google Patents

耐デント性と耐面歪性及び加工性に優れた冷延鋼板とその製造方法

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JPH06264180A
JPH06264180A JP7287493A JP7287493A JPH06264180A JP H06264180 A JPH06264180 A JP H06264180A JP 7287493 A JP7287493 A JP 7287493A JP 7287493 A JP7287493 A JP 7287493A JP H06264180 A JPH06264180 A JP H06264180A
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JP
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less
steel
layer
steel sheet
workability
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Application number
JP7287493A
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English (en)
Inventor
Nobuhiko Matsuzu
伸彦 松津
Hirohide Asano
裕秀 浅野
Makoto Tefun
誠 手墳
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は主にプレス加工される自動車部品等
に使用される耐デント性と耐ひずみ性および加工性に優
れた鋼板とその製造方法を提供する。 【構成】 C:0.02〜0.2%、Mn:0.8〜3
%を含有し、その他の成分量を規制した鋼Aと、C:
0.01%以下、Mn:0.5%以下更にTi、Nbの
内1種以上を含有し、その他の成分量を規制した鋼Bと
の2種の鋼が、A、B、Aの順で複層構造をなし、かつ
遷移層を有する耐デント性と耐面ひずみ性および加工性
に優れたクラッド冷延鋼板。その製造にあたっては、上
記成分の複層鋼片を素材として熱延、冷延後、再結晶温
度以上で焼鈍し1℃/s以上の冷却速度で冷却する。
尚、内層にBを所定量添加しても良い。電気亜鉛めっき
をしても良い。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、クラッド鋼板とその製
造方法に係わり、主としてプレス加工される自動車部品
等を対象とし、30kgf/mm2 以上の引張強度を有
し、耐デント性と耐面歪性及び加工性に優れた冷延鋼板
とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、自動車の軽量化や安全性向上の観
点から、鋼板の高強度化が要求されている。特に自動車
外板パネル類では耐デント性が要求されることから、外
板パネル用鋼板の高強度化の要請が強い。しかし、高強
度化は成形性の低下を伴い、特に外板の高強度化におい
ては降伏強度の上昇による面歪の発生という問題が生ず
る。このような問題点を克服するため、加工時は比較的
低降伏強度であるが、塗装焼き付け後に降伏強度が上昇
する、いわゆるBH鋼板が開発されてきた。例えば、極
低炭素鋼にTi、Nb等を添加し、固溶C量を制限した
り(特開昭59−38337号、特開昭59−3182
7号公報)、NとS量を調整し、析出物の生成を制御す
る方法(特開昭61−26757号、特開昭62−78
22号公報)等が知られているが、これらの鋼板では耐
面歪性には優れるが、耐デント性は十分ではない。耐デ
ント性を確保すべく高強度BH鋼板が開発されてきた
が、成形性が厳しい部材への適用が困難であったり、面
歪の発生により適用が限られているのが実情である。
【0003】本発明は表層(両面)を高強度とし、内層
を軟質とした、いわゆる鋳込みクラッド鋼板にて耐デン
ト性の確保と耐面歪性・加工性確保という課題を解決す
るものである。
【0004】クラッド鋼板にて耐デント性の確保と耐面
歪性・加工性確保の両立を試みたものとして特開平3−
133630号公報、特開平4−191330号、特開
平4−191331号公報記載の技術があるが、鋳造方
法については検討されていない。クラッド鋼の圧延にお
いては異種成分鋼の境界で割れや剥離が生じる場合があ
る。又、製造後のユーザーでの加工時にやはり異種成分
鋼の境界で割れや剥離が生じる場合がある。鋼板の安定
製造と加工性の安定化のためには適切な鋳造方法が必要
である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、表層の高強
度鋼と内層の軟質鋼からなり、遷移層を有する鋳込みク
ラッド鋼板にて、通常の鋼板では達成困難である耐デン
ト性と耐面歪性・加工性を両立させた鋼板とその製造方
法の提供にある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明はこのような課題
に対して、特定の表層及び内層の成分とし、鋳込みによ
って所定の遷移層を有するクラッド鋳片もしくはクラッ
ド鋼塊を素材として、熱間及び冷間圧延し、これに特定
の焼鈍を施すことで解決しようとするもので、その趣旨
とするところは、以下の通りである。
【0007】(1)2種の成分系A、Bの鋼がA、B、
Aの順で複層構造を成している鋼板において、表層に位
置する鋼Aの成分が質量割合で C :0.02〜0.2% Si:3.0%以下 Mn:0.8〜3% P :0.1%以下 S :0.02%以下 Al:0.1%以下 N :0.01%以下 を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、内
層に位置する鋼Bの成分が質量割合で C :0.01%以下 Si:0.5%以下 Mn:0.5%以下 P :0.1%以下 S :0.03%以下 Al:0.1%以下 N :0.01%以下 かつ Ti:0.006〜0.2% Nb:0.003〜0.1% のうち1種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純
物からなり、A層とB層との境界部に鋼板板厚の1〜1
0%の厚さの遷移層を有することを特徴とする耐デント
性と耐面歪性及び加工性に優れた冷延鋼板である。
【0008】(2)2種の成分系A、Bの鋼がA、B、
Aの順で複層構造を成している鋼板において、表層に位
置する鋼Aの成分が質量割合で C :0.02〜0.2% Si:3.0%以下 Mn:0.8〜3% P :0.1%以下 S :0.02%以下 Al:0.1%以下 N :0.01%以下 を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、内
層に位置する鋼Bの成分が質量割合で C :0.01%以下 Si:0.5%以下 Mn:0.5%以下 P :0.1%以下 S :0.03%以下 Al:0.1%以下 N :0.01%以下 B :0.0001〜0.002% かつ Ti:0.006〜0.2% Nb:0.003〜0.1% のうち1種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純
物からなり、A層とB層との境界部に鋼板板厚の1〜1
0%の厚さの遷移層を有することを特徴とする耐デント
性と耐面歪性及び加工性に優れた冷延鋼板である。
【0009】(3)上記(1)項に記載の鋼板の片面若
しくは両面に電気めっきを施した耐デント性と耐面歪性
及び加工性に優れた電気めっき鋼板である。
【0010】(4)上記(2)項に記載の鋼板の片面若
しくは両面に電気めっきを施した耐デント性と耐面歪性
及び加工性に優れた電気めっき鋼板である。
【0011】(5)2種の成分系A、Bの鋼がA、B、
Aの順で複層構造を成している鋼板の製造において、表
層に位置する鋼Aの成分が質量割合で C :0.02〜0.2% Si:3.0%以下 Mn:0.8〜3% P :0.1%以下 S :0.02%以下 Al:0.1%以下 N :0.01%以下 を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、内
層に位置する鋼Bの成分が質量割合で C :0.01%以下 Si:0.5%以下 Mn:0.5%以下 P :0.1%以下 S :0.03%以下 Al:0.1%以下 N :0.01%以下 かつ Ti:0.006〜0.2% Nb:0.003〜0.1% のうち1種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純
物からなり、これらの溶鋼において、まずAの鋼が表側
から凝固を開始し、これが凝固を終了する部位におい
て、引き続いてBの鋼が凝固を開始して、結果形成され
たA、B両層が成分分析の点から巨視的に分離されてお
り、かつA層とB層との境界部において鋳片厚の1〜1
0%の厚さの遷移層を形成させた鋳片あるいは鋼塊を素
材として、熱間圧延するに際し、Ar3 −50℃以上で
熱延を終了し、酸洗、冷延後、再結晶温度以上で焼鈍
し、1℃/s以上の冷却速度で冷却することを特徴とす
る耐デント性と耐面歪性及び加工性に優れた冷延鋼板の
製造方法である。
【0012】(6)2種の成分系A、Bの鋼がA、B、
Aの順で複層構造を成している鋼板の製造において、表
層に位置する鋼Aの成分が質量割合で C :0.02〜0.2% Si:3.0%以下 Mn:0.8〜3% P :0.1%以下 S :0.02%以下 Al:0.1%以下 N :0.01%以下 を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、内
層に位置する鋼Bの成分が質量割合で C :0.01%以下 Si:0.5%以下 Mn:0.5%以下 P :0.1%以下 S :0.03%以下 Al:0.1%以下 N :0.01%以下 B :0.0001〜0.002% かつ Ti:0.006〜0.2% Nb:0.003〜0.1% のうち1種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純
物からなり、これらの溶鋼において、まずAの鋼が表側
から凝固を開始し、これが凝固を終了する部位におい
て、引き続いてBの鋼が凝固を開始して、結果形成され
たA、B両層が成分分析の点から巨視的に分離されてお
り、かつA層とB層との境界部において鋳片厚の1〜1
0%の厚さの遷移層を形成させた鋳片あるいは鋼塊を素
材として、熱間圧延するに際し、Ar3 −50℃以上で
熱延を終了し、酸洗、冷延後、再結晶温度以上で焼鈍
し、1℃/s以上の冷却速度で冷却することを特徴とす
る耐デント性と耐面歪性及び加工性に優れた冷延鋼板の
製造方法である。
【0013】(7)上記(5)項に記載の方法におい
て、得られた鋼板の片面若しくは両面に電気めっきを施
すことを特徴とする耐デント性と耐面歪性及び加工性に
優れた鋼板の製造方法である。
【0014】(8)上記(5)項に記載の方法におい
て、得られた鋼板の片面若しくは両面に電気めっきを施
すことを特徴とする耐デント性と耐面歪性及び加工性に
優れた鋼板の製造方法である。
【0015】
【作用】耐デント性には表面の強度が強く影響すること
から、表層部は高度強化する。一方、内層まで高強度化
するとプレス時に面歪が生じやすくなり、又、加工性も
劣化するため、内層は軟質にする必要がある。こうする
ことによって耐デント性と耐面歪性・加工性を両立させ
ることが可能となる。
【0016】次に本発明の各構成要件の限定理由につい
て詳述する。
【0017】まず、表層に位置するA鋼の化学成分の限
定理由について詳述する。
【0018】C:Cは強化元素の一つであり、強度確保
の意味からは0.02%は必要である。一方、0.2%
をこえるとスポット溶接性が劣化するため、Cの上限は
0.2%とする。
【0019】Si:Siは強化元素であるので、表層部
の強度確保のために添加してもよいが、過大な添加は加
工性・溶接性の劣化を招くため上限を3%とする。望ま
しい上限は2%である。下限値は特に規定するところで
はなく、0.005%まで下げても構わない。
【0020】Mn:Siと同じくMnは強化元素であ
り、強度確保の意味合いから下限を0.8%とする。上
限は加工性・溶接性の観点から3%とする。
【0021】P:Pは強化元素であるので、表層部の強
度確保のために添加してもよいが、2次加工性や溶接性
を阻害するので、上限を0.1%とする。下限値は規定
するところではなく、0.001%程度まで下げても構
わない。
【0022】S:Sは加工性・溶接性を劣化させ、熱間
割れを助長するため低いほど良く、上限を0.02%と
する。
【0023】Al:Alは、脱酸剤として用いる。Al
が多すぎるとアルミナ系介在物が増加し、鋼の加工性を
劣化させるので上限を0.1%とした。本鋼では脱酸剤
としてSiを利用しても本発明の主旨には反しないの
で、Alの下限値は特に規定する必要はない。望ましい
範囲としては0.002〜0.1%である。
【0024】N:Nは加工性の観点から0.01%以下
とする。
【0025】尚、Ca、REM、Crの添加は本発明の
必須条件ではないが、Ca、REMは介在物の球状化、
即ち加工性への介在物の悪影響の低減に寄与し、Crは
焼鈍中のC汚れ防止に寄与するので、選択的に添加する
ことは本発明の主旨に反しない。しかし、これらの元素
の添加は製造コストの上昇を招くため、これらの元素の
合計添加量の上限は0.5%とする。
【0026】次に内層に位置するB鋼の化学成分の限定
理由について詳述する。加工性と耐面歪性を確保するた
め、内層は基本的に軟質とする必要がある。
【0027】C、N:C、Nは強化元素であると共に、
侵入型固溶元素でr値向上に寄与する集合組織の形成を
阻害する。従って、極力低減させる必要がある。そのた
め、0.01%を上限とする。
【0028】Si:Siも強化元素であり、加工性を劣
化させるので上限を0.5%とする。下限は特に規定す
る必要はなく、0.005%程度まで低くても良い。
【0029】Mn:C、Siと同様に加工性を劣化させ
るので上限を0.5%とする。尚、Mnの極端な低減は
熱間割れを助長するとともに経済的でないため、Mnは
0.05%以上とすることが望ましい。
【0030】P:強化元素であるとともに、中心偏析を
助長し、溶接性を低下させる作用があるため上限を0.
1%とする。望ましくは0.06%以下とする。下限値
は特に規定するところではなく、0.001%程度まで
下げても構わない。
【0031】S:A系介在物を増加させ、加工性を劣化
させる。又、熱間割れを助長するので、上限を0.03
%とする。望ましくは0.02%以下とする。
【0032】Al:Alは、脱酸剤として用いる。Al
が多すぎるとアルミナ系介在物が増加し、鋼の加工性を
劣化させるので上限を0.1%とした。本鋼では脱酸剤
としてSiやTiを利用しても本発明の主旨には反しな
いので、Alの下限値は特に規定する必要はない。望ま
しい範囲としては0.001〜0.1%である。
【0033】更に本鋼ではTi0.006〜0.2%、
Nb0.003〜0.1%のうち1種以上を含有させる
必要がある。
【0034】Ti、NbはN、Cを固定し、固溶C、N
の悪影響を防止する。下限未満ではこれらの効果がな
く、上限を超える添加は不純物としての悪影響が大きく
なり、加工性が劣化する。望ましくは、数1 式とす
る。
【0035】
【数1】C(%)/12+N(%)/14≦Ti(%)
/48+Nb(%)/93+Al(%)/27
【0036】B:2次加工性の向上のためにBを0.0
001〜0.002%添加しても良い。下限未満ではそ
の効果はなく、上限を超えると再結晶温度を上昇させ、
加工性が劣化する。
【0037】本鋼はこのような表層A鋼と内層B鋼を持
つ鋳片あるいは鋼塊を素材に熱延・冷延されるが、圧延
時にA、B鋼の境界において剥離や割れが発生せず、均
一に塑性変形することが必要である。そのためには、鋳
片あるいは鋼塊を鋳造する際、遷移層を有することが必
要である。遷移層とはA層とB層の境界部に形成される
層であって、A層とB層の鋼成分が混合している領域を
いう。鋳造時に形成された遷移層は圧延・焼鈍後も保持
される。0.75mm厚の製品の遷移層付近における成
分変化を図1に例示する。遷移層では図1のように成分
が連続的に変化し、組織もこの成分変化に準じて変化す
る。
【0038】この遷移層は、鋳込み法にて、まずAの鋼
が表側から凝固を開始し、これが凝固を終了する部位に
おいて、引き続いてBの鋼が凝固を開始することにより
得られる。然して、遷移層を挟んだA、B層は大きく混
ざりあうことなく連続して凝固し、成分分析の点から巨
視的に分離されていることが必要である。当然ではある
が、異なる組成の溶鋼が大きく混ざりあうと目的とする
材質が得られなくなる。
【0039】尚、このようなA鋼−B鋼−A鋼の構造を
もった鋼板を得る方法としては、圧延において接合する
方法、あるいは一旦凝固したB鋼の鋼片あるいは鋼板の
外側に溶融したA鋼を凝固させる方法などが知られてい
るが、これらの方法によって製造された素材においては
内層と外層が組織的に不連続である。又、鋳込み法と異
なり、これらの方法ではA層とB層との境界面が必ず酸
化雰囲気にさらされることから、この境界にはマクロ
的、あるいはミクロ的な欠陥が存在することもあり、圧
延等で強い加工を加えた場合には境界の一部に応力集中
を生じて圧延が不安定となり、剥離や割れを生じやすく
なる。
【0040】遷移層の厚さは鋳造厚み又は鋼板板厚の1
〜10%が望ましい。尚、遷移層は内層(B層)の両側
に形成されるが、ここでいう遷移層厚みは片側あたりの
厚みとする。
【0041】上述のように遷移層は圧延作業の安定化の
ため必要であるが、製品の加工性の安定性確保のために
も必要である。一般に薄鋼板はシャー剪断あるいはポン
チとダイスによる打ち抜きを経て加工されるが、遷移層
が薄すぎると鋼板の剪断面に板厚を分割するようなセパ
レーション状の割れ、あるいはその起点となるミクロク
ラックが発生する。この割れあるいはミクロクラックは
剪断時の変形が表層部と内層部で異なるために生ずるも
のである。これらの欠陥はそれだけでは問題にならなく
てもその後の加工における割れやネッキングの原因とな
る。
【0042】図2はポンチとダイスにて20φの初期穴
を打ち抜いた後穴広げを行った場合の不良率(セパレー
ション状割れないし穴広げ率40%以内でのネッキング
発生率)と遷移層厚みの関係を示したものである。ここ
で素材の表層部は引張強度50〜60kgf/mm2
当で、内層は引張強度は27〜35kgf/mm2 相当
であり、表層部厚みは片側当り板厚の10〜15%であ
る。遷移層の厚さが鋼板板厚の1%未満では不良率が急
増する。一方、遷移層が1%以上あれば遷移層が変形の
干渉層となって打ち抜き時のセパレーションの発生がな
くなるため、加工不良を防ぐことができる。従って、遷
移層の厚さは鋼板板厚の1%以上とする。
【0043】一方、遷移層の厚さが増加すると、実質的
に内層部の厚み比率が低下するので、加工性の確保が困
難となる。このため遷移層の厚み比率は10%以下とす
る。
【0044】また、クラッド率としては、内層/表層の
厚み比を2〜10に制御することが好ましい。ここでの
表層厚みは表裏を合わせた部分をいい、遷移層部分は除
くものとする。内層/表層の厚み比2未満では内層の割
合が少なく、全体としての加工性が不足すると共に表層
部の影響により面歪が生じやすくなる。一方、10を越
えると表層部が薄すぎて耐デント性の確保が困難とな
る。
【0045】こうして製造された鋳片あるいは鋼塊は、
必要があれば分塊圧延し、その後熱延される。熱延に際
しては、加熱炉に挿入して再加熱した後に熱間圧延して
も良いし、加熱炉に挿入することなく直接熱間圧延して
も良い。再加熱する場合は、加熱温度は1000〜13
00℃が望ましい。
【0046】熱延での仕上げ圧延終了温度はAr3 −5
0℃以上とする必要がある。この温度未満になると成品
の加工性が劣化する。仕上げ圧延終了後の冷却及び巻取
りは通常の方法で良い。巻取温度は、450〜800℃
が好ましい。
【0047】本鋼は熱延の後、酸洗され、冷延される。
冷延圧下率は内層部の加工性確保のために60〜90%
が望ましい。
【0048】次に焼鈍を行う。ここでは再結晶と粒成長
を通して加工性を確保する。このため、焼鈍温度は再結
晶温度以上が必要である。望ましい焼鈍温度は750〜
950℃である。更に、表層の強度を確保するため、焼
鈍後の冷却速度は1℃/s以上が必要である。冷却速度
の上限は特定する必要はないが、1000℃/s以下で
良い。尚、過時効処理はあってもなくても良い。焼鈍後
の調質圧延は通常条件、例えば調圧率0.5〜2%で良
い。
【0049】尚、本鋼板に耐食性を付与するため、焼鈍
後亜鉛等を電気めっきしてもよい。このめっきは片面だ
けでも、又は両面に施しても良い。
【0050】
【実施例】表層及び内層を表1(A〜G)に示す化学成
分に調整して、特開昭63−108947号公報に開示
された方法、即ち2本ノズルにて2種の溶鋼を注入し、
かつ鋳片の厚みを横切る方向へ磁束を付与する方法にて
連続鋳造で溶製した。いずれのスラブも表層と内層が成
分分析の点から巨視的に分離されており、かつそれぞれ
の層の境界において、鋳造厚みの1〜10%の厚みの遷
移層を形成しており、この遷移層厚みは焼鈍後も変化し
ていないことを確認した。A〜Eは本発明の成分であ
る。Fは表層のC、Mnが低い。Gは内層のPが高い。
尚、H、Iは通常の連続鋳造法にて製造した比較用単層
スラブである。
【0051】
【表1】
【0052】これらのスラブを熱延後、酸洗ラインにて
脱スケール処理を施した後に圧下率75〜85%で冷延
し、焼鈍した。焼鈍では、5〜20℃/sで昇温し、各
焼鈍温度で40〜120s保持した後にガス又は気水で
冷却した。過時効処理を行う場合は冷却後直ちに所定の
温度で150〜400s保持した。尚、一部については
過時効開始温度が過時効終了温度より高い、いわゆる傾
斜過時効を行った。その後一部については電気亜鉛めっ
きを施した。熱延・焼鈍・めっき目付量等の条件を表2
及び表3に示す。スキンパス伸び率は1〜1.5%であ
った。表2及び表3には製品の引張特性・耐デント性・
耐面ひずみ性を併記した。
【0053】引張試験は、JIS Z2201に準じた
5号試験片を用いた。平均r値は圧延方向に対して、0
°、45°、90°の各方向のr値の面内平均(=(0
°方向r値+90°方向r値+45°方向r値×2)/
4)で表した。
【0054】耐デント性の測定方法は、鋼板に対して直
径100mmの円筒平底張出し成形を行い、平底面に
2.5%の予ひずみを与えた後、半径25mmの鋼製圧
子を20kgfの負荷で押しつけて塑性変形(へこみ)
を与え、へこみ量をスパン40mmにて3点法で測定す
る方法とした。
【0055】耐面ひずみ性は、600×600mmの鋼
板をしわ押さえ力60tonにてかまぼこ型(エンボス
付)に成形し、エンボス周辺を目視にて評価した。
【0056】表2及び表3において、No.1、2、
5、6、7、8、9、11、12は本発明法にしたがっ
て製造した鋼板であり、比較材に比べ加工性(伸び・r
値)・耐デント性・耐面ひずみ性が優れている。又、単
層板ではYP22kgf/mm2 で面ひずみが発生して
いるが、本発明鋼ではYPが22kgf/mm2 以上で
あっても面ひずみが発生しておらず、内層を軟質化する
ことにより、耐面ひずみ性が向上することが分る。
【0057】図3は横軸を引張強度として、表2の本発
明鋼の耐デント性を通常の単層板(No.11、12)
及びその他の比較材と比べたものである。板厚が厚いほ
ど強度が高いほどへこみ量は少なくなるが、本発明鋼は
同一強度の単層板と比較して板厚が薄くてもへこみ量が
少ない。このことは本発明により耐デント性の観点から
板厚を低減できることを意味する。
【0058】その他の鋼板について説明する。No.3
は焼鈍後の冷却速度が遅すぎるために表層の強度が不足
し、耐デント性が劣る。No.4は熱延仕上温度の低す
ぎのためにr値が本発明鋼より劣る。No.10は強度
の高い表層が厚すぎ、耐デント性には優れるが、面歪が
発生すると共に、加工性が劣る。No.13は表層の強
度が低いために耐デント性が劣る。No.14は内層の
強度が高いために加工性が劣ると共に面歪が発生した。
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】表2及び表3において、下記の通りであ
る。 注1)クラッド率(比)=内層厚み/表裏層厚み。 注2)過時効:矢印、例えば410→350は過時効入
側温度が410℃であり、出側温度が350℃であるこ
とを示す。 注3)H、Iは材質比較のための従来の単層鋼板(箱焼
鈍材)。
【0062】
【発明の効果】本発明により、自動車部品等でますます
要求の高まっている高強度化・耐デント性と耐面歪性及
び加工性の両立が可能となる。このことは鋼板板厚の低
減による燃費低減(天然燃料の浪費防止)や、衝突強度
の向上による安全性の向上等につながり、社会的な意義
も大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】表層・遷移層・内層部の板厚方向の成分変化の
例を示すグラフである。
【図2】遷移層の比率と加工不良率との関係を示すグラ
フである。
【図3】耐デント性(へこみ量)と引張強度を示すグラ
フである。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成5年4月13日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0059
【補正方法】変更
【補正内容】
【0059】
【表2】

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 2種の成分系A、Bの鋼がA、B、Aの
    順で複層構造を成している鋼板において、表層に位置す
    る鋼Aの成分が質量割合で C :0.02〜0.2% Si:3.0%以下 Mn:0.8〜3% P :0.1%以下 S :0.02%以下 Al:0.1%以下 N :0.01%以下 を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、内
    層に位置する鋼Bの成分が質量割合で C :0.01%以下 Si:0.5%以下 Mn:0.5%以下 P :0.1%以下 S :0.03%以下 Al:0.1%以下 N :0.01%以下 かつ Ti:0.006〜0.2% Nb:0.003〜0.1% のうち1種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純
    物からなり、A層とB層との境界部に鋼板板厚の1〜1
    0%の厚さの遷移層を有することを特徴とする耐デント
    性と耐面歪性及び加工性に優れた冷延鋼板。
  2. 【請求項2】 2種の成分系A、Bの鋼がA、B、Aの
    順で複層構造を成している鋼板において、表層に位置す
    る鋼Aの成分が質量割合で C :0.02〜0.2% Si:3.0%以下 Mn:0.8〜3% P :0.1%以下 S :0.02%以下 Al:0.1%以下 N :0.01%以下 を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、内
    層に位置する鋼Bの成分が質量割合で C :0.01%以下 Si:0.5%以下 Mn:0.5%以下 P :0.1%以下 S :0.03%以下 Al:0.1%以下 N :0.01%以下 B :0.0001〜0.002% かつ Ti:0.006〜0.2% Nb:0.003〜0.1% のうち1種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純
    物からなり、A層とB層との境界部に鋼板板厚の1〜1
    0%の厚さの遷移層を有することを特徴とする耐デント
    性と耐面歪性及び加工性に優れた冷延鋼板。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載の鋼板の片面若しくは両
    面に電気めっきを施した耐デント性と耐面歪性及び加工
    性に優れた電気めっき鋼板。
  4. 【請求項4】 請求項2に記載の鋼板の片面若しくは両
    面に電気めっきを施した耐デント性と耐面歪性及び加工
    性に優れた電気めっき鋼板。
  5. 【請求項5】 2種の成分系A、Bの鋼がA、B、Aの
    順で複層構造を成している鋼板の製造において、表層に
    位置する鋼Aの成分が質量割合で C :0.02〜0.2% Si:3.0%以下 Mn:0.8〜3% P :0.1%以下 S :0.02%以下 Al:0.1%以下 N :0.01%以下 を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、内
    層に位置する鋼Bの成分が質量割合で C :0.01%以下 Si:0.5%以下 Mn:0.5%以下 P :0.1%以下 S :0.03%以下 Al:0.1%以下 N :0.01%以下 かつ Ti:0.006〜0.2% Nb:0.003〜0.1% のうち1種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純
    物からなり、これらの溶鋼において、まずAの鋼が表側
    から凝固を開始し、これが凝固を終了する部位におい
    て、引き続いてBの鋼が凝固を開始して、結果形成され
    たA、B両層が成分分析の点から巨視的に分離されてお
    り、かつA層とB層との境界部において鋳片厚の1〜1
    0%の厚さの遷移層を形成させた鋳片あるいは鋼塊を素
    材として、熱間圧延するに際し、Ar3 −50℃以上で
    熱延を終了し、酸洗、冷延後、再結晶温度以上で焼鈍
    し、1℃/s以上の冷却速度で冷却することを特徴とす
    る耐デント性と耐面歪性及び加工性に優れた冷延鋼板の
    製造方法。
  6. 【請求項6】 2種の成分系A、Bの鋼がA、B、Aの
    順で複層構造を成している鋼板の製造において、表層に
    位置する鋼Aの成分が質量割合で C :0.02〜0.2% Si:3.0%以下 Mn:0.8〜3% P :0.1%以下 S :0.02%以下 Al:0.1%以下 N :0.01%以下 を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、内
    層に位置する鋼Bの成分が質量割合で C :0.01%以下 Si:0.5%以下 Mn:0.5%以下 P :0.1%以下 S :0.03%以下 Al:0.1%以下 N :0.01%以下 B :0.0001〜0.002% かつ Ti:0.006〜0.2% Nb:0.003〜0.1% のうち1種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純
    物からなり、これらの溶鋼において、まずAの鋼が表側
    から凝固を開始し、これが凝固を終了する部位におい
    て、引き続いてBの鋼が凝固を開始して、結果形成され
    たA、B両層が成分分析の点から巨視的に分離されてお
    り、かつA層とB層との境界部において鋳片厚の1〜1
    0%の厚さの遷移層を形成させた鋳片あるいは鋼塊を素
    材として、熱間圧延するに際し、Ar3 −50℃以上で
    熱延を終了し、酸洗、冷延後、再結晶温度以上で焼鈍
    し、1℃/s以上の冷却速度で冷却することを特徴とす
    る耐デント性と耐面歪性及び加工性に優れた冷延鋼板の
    製造方法。
  7. 【請求項7】 請求項5に記載の方法において、得られ
    た鋼板の片面若しくは両面に電気めっきを施すことを特
    徴とする耐デント性と耐面歪性及び加工性に優れた鋼板
    の製造方法。
  8. 【請求項8】 請求項6に記載の方法において、得られ
    た鋼板の片面若しくは両面に電気めっきを施すことを特
    徴とする耐デント性と耐面歪性及び加工性に優れた鋼板
    の製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009233708A (ja) * 2008-03-27 2009-10-15 Toshihiko Koseki 複層鋼
WO2018199328A1 (ja) * 2017-04-28 2018-11-01 新日鐵住金株式会社 高強度鋼板およびその製造方法

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