JPH06251435A - 記録再生装置 - Google Patents

記録再生装置

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JPH06251435A
JPH06251435A JP5040183A JP4018393A JPH06251435A JP H06251435 A JPH06251435 A JP H06251435A JP 5040183 A JP5040183 A JP 5040183A JP 4018393 A JP4018393 A JP 4018393A JP H06251435 A JPH06251435 A JP H06251435A
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Etsuro Kishi
悦朗 貴志
清 ▲瀧▼本
Kiyoshi Takimoto
Isaaki Kawade
一佐哲 河出
Kyoji Yano
亨治 矢野
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 記録層に膜厚変動や膜質変動等の変化が存在
しても、それらに起因する再生エラー等の不具合の発生
を防止する。 【構成】 弾性部材3に支持されるプローブ2は、記録
媒体1の記録層1aに対向配置される。記録層1aとプ
ローブ2との間には再生バイアス発生回路5によりバイ
アス電圧が印加される。そのとき記録層1aとプローブ
2との間に発生する電流が電流検出回路8により検出さ
れ、再生条件サーボ回路10に送られる。再生条件サー
ボ回路10は電流検出回路8で検出された検出電流信号
に基づいて再生条件補正サーボ信号を形成し、再生バイ
アス発生回路5に送るもので、これにより再生バイアス
信号の補正が行なわれる。補正された再生バイアス信号
下で電流検出回路8により検出された検出電流は、記録
層1aの膜厚変動ノイズが除去されたものとなる。この
検出電流により、再生信号処理回路13で正確な再生復
元データが得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、プローブと試料間に発
生するトンネル電流または力等によって試料の表面情報
を検出する走査型プローブ顕微鏡を利用して、情報の記
録再生を行なう記録再生装置に関する。
【0002】
【従来の技術】走査型プローブ顕微鏡(以下、「SP
M」という)は検出する物性によりいくつかに分類さ
れ、トンネル電流、原子間力、静電気力、磁気力等の、
力、光、静電容量等多種多様な物理量が検出対象とな
る。いずれの場合も先端の尖ったプローブによって物理
量を検出する点で共通しており、0.1〜数十nmの高
い空間分解能を示す検出法として近年急速に発展してき
た。
【0003】SPMの発展に伴い、SPMの原理を応用
した記録再生装置に関する提案が数多くなされている。
SPMの高い空間分解能を生かし、プローブと記録層の
局部領域との間に発生する電流、電界、力等の刺激によ
って1〜数百nmの極微小記録ビットを形成し再生する
ことが可能となり、記録密度を飛躍的に高めることがで
きる。
【0004】記録方法としては、記録層の表面に物理的
形状変化を与えるものと、記録層の表面に電気的、磁気
的、化学的、あるいは光学的状態変化を与えるものとに
大別され、前者としてはプローブによる物理的変形を与
えるもの、レーザー光線、電子線等の高エネルギー線に
よる熱的変形を与えるもの、高電界による電界蒸発を利
用したもの、あるいは微粒子を付着させるもの等が挙げ
られる。後者としては、π電子系有機化合物やカルコゲ
ン化合物において見出された電気的スイッチング現象を
利用したもの(特開昭63−161552号公報、特開
昭63−161553号公報)、シリコン窒化膜におけ
る電荷蓄積を利用したもの(米国特許4575822号
公報)、遷移金属酸化物、ビオロゲン、スチリル類化合
物、希土類ジフタロシアニン、ポリアニリン、ポリチオ
フェン、ポリピロール、金属−TCNQ電荷移動錯体
等、各種酸化還元反応を利用したもの、あるいは酸化バ
ナジウム系結晶化ガラスを用いた結晶相/非結晶相変化
を利用したもの等が挙げられる。
【0005】従来の記録再生装置の一例について図6を
参照して説明する。図6は、従来の記録再生装置の一例
の概略ブロック図である。図6に示したものは、プロー
ブ微動機構104に弾性部材103を介して支持された
プローブ102と、プローブ102に対向配置された記
録媒体101とを有し、プローブ102と記録媒体10
1の記録層101aとの間に発生するトンネル電流を電
流検出回路108により検出し、これをサーボ信号とし
て距離サーボ回路107に出力することでプローブ10
2と記録層010aとの距離を制御するものである。そ
して、記録パルス発生回路106によりプローブ102
と記録層101aとの間に電圧パルスを印加することに
より記録層101aに記録ビットを形成する。一方、再
生バイアス発生回路105によりプローブ102と記録
層101aとの間にバイアス電圧を印加しつつ、電流検
出回路108によりプローブ102と記録層101aと
の間に流れるトンネル電流を検出し、その検出電流に再
生信号処理回路113で所定の処理を施して再生復元デ
ータを形成する。
【0006】また、従来の記録再生装置の他の例につい
て図7を参照して説明する。図7は、従来の記録再生装
置の他の例の概略ブロック図である。図7に示したもの
は、プローブ122と記録層121aとの間に発生する
原子間力を力検知センサ129により検出し、これをサ
ーボ信号として距離サーボ回路127に出力することで
プローブ122と記録層121aとの距離の制御を行な
うものである。そして、記録パルス発生回路126によ
りプローブ122と記録層121aとの間に電圧パルス
を印加することにより記録層121aに記録ビットを形
成する。一方、再生バイアス発生回路125によりプロ
ーブ122と記録層121aとの間にバイアス電圧を印
加しつつ、バイアス電圧下での電流を電流検出回路12
8で検出し、その検出電流に再生信号処理回路133で
所定の処理を施して再生復元データを形成する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上述した
記録再生装置のうち、図6に示した、トンネル電流を利
用してプローブと記録層との距離を制御するものでは、
記録層の表面形状、膜厚、あるいは膜質等の変動に起因
するノイズが再生情報に混入してしまい、再生エラーが
発生してしまう場合があるという問題点があった。
【0008】また、図7に示した、原子間力を利用して
プローブと記録層との距離を制御するものでは、記録層
の表面形状の変動によるノイズと再生情報とを完全に分
離できる点で、図7に示したものに比較して優れてい
る。しかしながら、記録層に膜厚や膜質の変動がある場
合には、これらの変動に起因するノイズは依然として再
生情報に混入するおそれがあるという問題点があった。
【0009】以下に、記録層の膜厚に変動がある場合の
問題点について、図8を用いてさらに詳しく説明する。
【0010】図8の(a)はプローブと膜厚に変動があ
る記録層とプローブとの模式図であり、この図では、記
録領域1〜11のうち、記録領域3〜5での膜厚が基準
膜厚に対して減少し、記録領域9、10での膜厚が基準
膜厚に対して増大している記録層が示されている。ま
た、各記録領域1〜11のうち、ON状態のものについ
ては斜線で示した。
【0011】図8の(a)に示すように、プローブ10
2と記録層101aとの接触状態を一定に保持した状態
で、プローブ102を各記録領域1〜11に沿って図示
矢印A方向に走査しつつ、プローブ102と記録層10
1aとの間に、図8の(b)に示すように再生条件の一
つである再生バイアス電圧v0 を印加すると、図8の
(c)に示すような検出電流が得られる。すなわち検出
電流の変化は、ON状態の記録領域における記録層10
1aの導電率変化に対応する変化の他に、記録層101
aの膜厚変動に対応する変化がノイズとして混入してい
る。そして、この検出電流は再生信号処理回路に出力さ
れる。再生信号処理回路では、まず図8の(d)に示す
再生タイミング信号によって検出電流をサンプリング
し、図8の(e)に示すような再生サンプリングデータ
を得る。次に、この再生サンプリングデータを再生条件
の他の一つである判定レベルとの比較を行なうことによ
って、図8の(f)に示す再生復元データを得る。判定
レベル信号の電圧値は、標準膜厚、標準膜質におけるO
N状態の記録領域出力値とOFF状態の記録領域出力値
との中間値に設定されるもので、予め実験によって求め
られた固定値である。得られた再生復元データは、図8
の(f)に示したように、実際にはOFF状態の記録領
域3、5がON状態と判定され、一方、ON状態の記録
領域10がOFF状態と判定され、再生エラーが発生し
ている。
【0012】以上、膜厚に変動がある場合について説明
したが、膜質の変動に関しても全く同様な問題が発生す
る。従って、従来の記録再生装置においては、再生情報
と、膜厚や膜質の変動に起因するノイズとを区別するこ
とは困難であり、記録層に欠陥が存在せず膜厚や膜質が
理想的に均質である場合を除いて、記録再生システムの
信頼性を著しく損なってしまうおそれがあった。
【0013】また、再生バイアス電圧は、標準膜厚にお
いてON状態・OFF状態の電流変化が電流検出系のダ
イナミックレンジ内で良好に検出できるように設定され
るが、膜厚が標準値から大きく変動した場合には、検出
電流値がダイナミックレンジから外れるおそれがあると
いう問題点があった。さらに、極端な例として、膜厚や
膜質の大きな変動に伴って再生バイアス電圧等の再生条
件が記録電圧等の記録しきい値を越えた場合には、所望
の記録領域以外の領域をON状態に遷移させてしまうと
いう問題もあった。
【0014】そこで本発明の目的は、記録層に膜厚変動
や膜質変動等の変化が存在しても、それらに起因する再
生エラー等の不具合の発生を防止し、信頼性の高い記録
再生装置を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
本発明の記録再生装置は、プローブと、前記プローブに
対向配置され、かつ前記プローブに対して相対移動可能
に設けられた記録媒体と、前記プローブと前記記録媒体
との間に発生する物理量を検出する物理量検出手段と、
前記検出された物理量に所定の処理を施して、前記記録
媒体に形成された記録ビットの再生復元データを得る再
生処理手段と、前記記録ビットの再生時に前記物理量を
発生させるための信号発生手段とを有する記録再生装置
において、前記記録ビットの再生前に、前記物理量に反
映される記録媒体情報を検出する記録媒体情報検出手段
と、前記記録媒体情報に基づいて前記記録ビットの再生
条件を補正する補正手段とを有することを特徴とする。
【0016】また、前記記録媒体情報検出手段は、前記
記録媒体の記録領域近傍で前記記録媒体情報を検出する
ものであってもよいし、前記記録媒体情報は、前記記録
媒体の表面に形成された記録層の膜厚および膜質であっ
てもよい。
【0017】さらに、前記補正手段を、前記記録媒情報
を前記再生条件へ帰還制御するものとしたり、前記補正
手段により補正される再生条件として、前記物理量の信
号検出条件または前記再生処理手段での信号処理条件の
少なくとも一方を対象とするものであってもよい。
【0018】
【作用】本発明の記録再生装置では、記録ビットの再生
前に、記録媒体情報検出手段により、プローブと記録媒
体との間に発生する物理量に反映される記録媒体情報が
検出され、この記録媒体情報に基づいて、補正手段によ
り記録ビットの再生条件が補正される。これにより、再
生動作中、記録媒体の各記録領域における変化に対応し
て再生条件を補正し、それぞれの記録領域に対して最適
の再生条件を独立に設定することが可能になるので、記
録媒体の各記録領域における変化に起因する再生エラー
が防止される。また、補正手段により、記録媒情報を再
生条件へ帰還制御することで、再生条件の補正が実時間
で可能となる。そして、再生条件の補正は、物理量の信
号検出条件または再生処理手段での信号処理条件の少な
くとも一方を対象とすることで容易に行なわれる。
【0019】
【実施例】次に、本発明の実施例について図面を参照し
て説明する。
【0020】(第1実施例)図1は、本発明の記録再生
装置の第1実施例の概略ブロック図である。本記録再生
装置は、記録層の検出情報としてトンネル電流、電界放
射電流、接触電流またはそれらの変調信号を用い、補正
する再生条件として信号検出条件の一つである再生バイ
アス電圧を対象とするものであり、以下にその構成につ
いて説明する。
【0021】記録媒体1は、基板1a上に下地電極1b
および記録層1cが積層されたものである。記録層1a
の材料としてはポリイミドが用いられ、ラングミュア・
ブロジェット法(累積法)により単分子膜10層の累積
膜を下地電極1bの表面に形成したものである。本実施
例に用いられたポリイミドはπ電子共役系有機化合物の
一種であり、電圧印加によって膜の導電性が可逆的に変
化することを利用して、消去可能な記録媒体として用い
ることができる。また、しきい値以上の電圧を印加する
ことによって導電率が3〜4桁上昇することが実験によ
って確かめられている。
【0022】記録媒体1の記録層1aに対向して、片持
ち梁型の弾性部材3の自由端部に支持された、先端が尖
鋭な導電性部材からなるプローブ2が配置されている。
記録層1aとプローブ2との間の距離はプローブ微動機
構4により変えることができる。プローブ2を記録層1
aに対して数十nm〜数nmの距離まで接近させると、
両者間には原子間力が発生するが、この原子間力による
弾性部材3の弾性変形を検出するための光てこ方式また
はトンネル電流検出方式等の力検知センサ9を設け、こ
の検出力が常に一定になるように距離サーボ回路7を介
してプローブ微動機構4を帰還制御することにより、プ
ローブ2と記録層1aとの間の距離が一定に保持され
る。実際の記録再生装置では、弾性部材3をマイクロメ
カニクス技術により同一基板上に複数個形成し、その各
々の弾性部材3についてプローブ2およびプローブ微動
機構4が設けられているが、ここでは簡単のため一つに
のみ着目して説明する。
【0023】上述した制御方式では、力検知センサ9に
よる検出力が、引力領域(プローブ2と記録層1aとの
間の距離>0)の場合と斥力領域(プローブ2と記録層
1aとの間の距離=0、すなわち接触)の場合とがある
が、検出感度に優れる斥力領域において使用されること
が多い。また、弾性部材3の弾性定数を記録層1a表面
に比べてはるかに小さく設定することによって、プロー
ブ微動機構4による帰還制御なしでもプローブ2と記録
層1aとの接触状態をほぼ一定に保持することが可能で
ある。
【0024】記録パルス発生回路6は、記録時に記録層
1aとプローブ2との間に記録用の電圧パルスを印加し
て記録層1aにONビットを形成するための回路であ
る。一方、信号発生手段としての発生バイアス発生回路
5は、再生時に記録層1aとプローブ2との間に再生用
のバイアス電圧を印加するための回路であり、加算回路
およびサンプルホールド回路を有する。また、物理量検
出手段としての電流検出回路8は、電流電圧変換回路お
よび対数変換回路よりなる回路であり、再生バイアス発
生回路5によるバイアス電圧下で発生する物理量である
電流を検出し、再生条件サーボ回路10および再生信号
処理回路13に送るものである。また、電流検出手段8
は、後述するように記録媒体情報検出手段も兼ねてい
る。補正手段としての再生条件サーボ回路10は差分回
路および増幅回路を有し、電流検出回路8で得られた検
出電流信号に基づいて再生条件補正サーボ信号を形成
し、これを再生バイアス発生回路5に送る。再生処理手
段としての再生信号処理回路13は、電流検出回路8で
得られた検出電流に後述する所定の処理を施すことで、
再生復元データを得るものである。
【0025】次に、本記録再生装置による記録再生方法
について説明する。
【0026】まず、記録は、記録層1aプローブ2との
間の距離を一定に保持した状態(接触状態を含む)で、
記録媒体1とプローブ2とを相対的に走査しつつ、記録
パルス発生回路6により記録層1aとプローブ2との間
に記録しきい値以上の記録電圧パルスを印加し、記録層
1aの所望の記録領域に対して順次ONビットを形成す
ることにより行なわれる。
【0027】次に、再生について図2を交えながら説明
する。図2は、図1に示した記録再生装置による再生方
法を説明するための図であり、図2の(a)はプローブ
と膜厚に変動がある記録層との模式図である。この図で
は、記録層1aはプローブ2の走査方向Aに沿って1〜
11の記録領域を有し、各記録領域1〜11のうち、記
録領域3〜5では膜厚が基準膜厚に対して減少し、記録
領域9、10では膜厚が基準膜厚に対して増大している
記録層が示されている。また、各記録領域1〜11のう
ち、ON領域のものについては斜線で示した。図2の
(b)〜(g)は、それぞれ後述する再生バイアスサン
プルホールド信号、再生バイアス信号、検出電流、再生
タイミング信号、再生サンプリングデータ、および再生
復元データのタイミングチャート図であり、図2の
(a)の各記録領域1〜11の位置が、各タイミングチ
ャート図の時間軸と対応するように書かれている。
【0028】まず、記録層1aとプローブ2との接触状
態を一定に保持した状態で、再生バイアス発生回路5に
より、記録層1aの標準膜厚に対する適正バイアスに相
当する標準バイアス電圧vを印加しながら、プローブ2
を図示矢印方向に移動させ、各記録領域1〜11上を順
次走査する。このとき発生する電流を電流検出回路8で
検出した後、電流検出回路8は検出電流信号を再生条件
サーボ回路10に送る。再生条件サーボ回路10では、
差分回路において検出電流信号と標準膜厚における適正
電流値に相当する設定値との差分信号を出力し、増幅回
路を通して形成された再生条件補正サーボ信号を再生バ
イアス発生回路5に送る。
【0029】再生バイアス発生回路5では、まず加算回
路において標準バイアス電圧vと再生条件サーボ回路1
0から送られた再生条件補正サーボ信号とが加算され
る。その後サンプルホールド回路において、図2の
(b)に示す、プローブ2が各記録領域1〜11に進入
する直前のタイミングで、前記加算された値がその時点
での値にホールドされるように制御することで、再生バ
イアス信号の補正を行なう。これにより、ON状態の記
録領域での記録層1aの導電率変化による電流変化の影
響が除かれ、補正された再生バイアス信号は図2の
(c)に示すように、記録層1aの膜厚変動に対応した
値となる。
【0030】補正された再生バイアス信号下で検出され
る検出電流を図2の(d)に示す。上述したように、再
生バイアス信号の補正は記録層1aの膜厚変動に伴う電
流変化のみに対して行なわれるため、補正された再生バ
イアス信号下で検出された検出電流からは膜厚変動ノイ
ズが除去され、ON状態の各記録領域1、4、6、8、
10における導電率変化による電流変化のみを反映した
信号が形成される。
【0031】以上のようにして得られた検出電流を、再
生信号処理回路13において、まず図2の(e)に示
す、各記録領域1〜11に対応するタイミングでパルス
が発せられる再生タイミング信号によってサンプリング
する。これにより、図2の(f)に示す再生サンプリン
グデータが得られる。そして、得られた再生サンプリン
グデータを判定レベル信号と比較することで、図2の
(g)に示すように、ON状態の各記録領域1、4、
6、8、10のみが正確に復元された再生復元データが
得られる。
【0032】以上説明したように本実施例では、再生の
過程で、電流検出回路8により検出された検出電流に反
映される膜厚変動ノイズをサーボ信号として、再生バイ
アス発生回路5により与えられる再生バイアス電圧を補
正することによって、膜厚変動ノイズによる影響が相殺
されるとともに、記録層1aのON状態・OFF状態の
電流変化が電流検出系のダイナミックレンジ内で良好に
検出できる設定レベルに保持される。これにより、膜厚
変動に起因する再生エラーを防止することができる。
【0033】また、適正再生バイアス電圧は、記録層1
aの層数が多くなるにつれて上昇するが、適正再生バイ
アス電圧下での検出電流は、膜厚の変動に関わらず大き
くは変動しないことが確認されており、この方法によれ
ば再生バイアス電圧が記録しきい値電圧を越えるような
事態も回避できる。その結果、所望の記録領域以外で記
録層1aがON状態に遷移することもなくなる。
【0034】本実施例では、再生条件の補正を、記録領
域を除く一連の再生動作中定常的に行なう場合の例につ
いて述べたが、これに限らず、タイミング信号によって
再生直前に記録領域近傍で行なってもよいし、記録領域
列毎のように、ある一定期間または一定区間毎に行なっ
てもよい。また、再生バイアス電圧の補正におけるON
状態の記録領域の電流変化の影響を除去するために、再
生条件サーボ回路10のサンプルホールド回路による制
御を行なっているが、再生条件サーボ回路10の遮断周
波数を記録領域空間周波数よりも小さく設定すれば、サ
ンプルホールド制御は必ずしも必要ではない。
【0035】(第2実施例)図3は、本発明の記録再生
装置の第2実施例の概略ブロック図である。本記録再生
装置も、第1実施例と同様に記録層の検出情報としてト
ンネル電流、電界放射電流、接触電流またはそれらの変
調信号を用いるものであるが、補正する再生条件として
は、信号処理条件の一つである判定レベル信号を対象と
している点が、第1実施例の記録再生装置と異なってい
る。すなわち構成上において、補正手段としての再生条
件サーボ回路30は、再生バイアス発生回路25に対し
てではなく、再生信号処理回路33で形成される判定レ
ベル信号に対してサーボを行なう構成となっている点
が、第1実施例のものと異なっている。その他の構成に
ついては、第1実施例のものと同様であるので、その説
明は省略する。
【0036】また、本記録再生装置の動作のうち、記録
媒体21の記録層21aとプローブ22との間の距離の
制御方法および記録方法に関しては第1実施例と同様で
あるのでその説明は省略し、以下に、再生方法について
図4を交えながら説明する。
【0037】図4は、図3に示した記録再生装置による
再生方法を説明するための図であり、図4の(a)はプ
ローブと膜厚に変動がある記録層との模式図である。こ
の図では、記録層21aはプローブ22の走査方向Aに
沿って1〜11の記録領域を有し、各記録領域1〜11
のうち、記録領域3〜5では膜厚が基準膜厚に対して減
少し、記録領域9、10では膜厚が基準膜厚に対して増
大している記録層が示されている。また、各記録領域1
〜11のうち、ON領域のものについては斜線で示し
た。図4の(b)〜(h)は、それぞれ後述する再生バ
イアス信号、検出電流、判定レベルタイミング信号、判
定レベル信号、再生タイミング信号、再生サンプリング
データ、および再生復元データのタイミングチャート図
であり、図4の(a)の各記録領域1〜11の位置が、
各タイミングチャート図の時間軸と対応するように書か
れている。
【0038】まず、記録層21aとプローブ22との接
触状態を一定に保持した状態で、再生バイアス発生回路
25により、図4の(b)に示す固定バイアス電圧v0
を印加しながら、プローブ22を図示矢印方向に移動さ
せ、各記録領域1〜11上を順次走査する。このとき発
生する電流は、電流検出回路28により検出されるが、
この検出電流は、図4の(c)に示すように記録層21
aの膜厚変動に伴うノイズの影響を受けたものとなって
いる。
【0039】電流検出回路28により得られた検出電流
信号は再生条件サーボ回路30に送られる。再生条件サ
ーボ回路30では、差分回路において検出電流信号と記
録層21aの標準膜厚における適正電流値に相当する設
定値との差分信号が出力された後、予め実験的に求めら
れている補正係数による掛算回路等を含む換算回路を通
して判定レベル補正サーボ信号が形成される。
【0040】再生条件サーボ回路30で形成された判定
レベル補正サーボ信号は、再生信号処理回路33に送ら
れる。再生信号処理回路33では、まず、図4の(d)
に示すように、記録領域を除く位相(本実施例では記録
領域の位相よりπ早い位相)に相当するタイミングでパ
ルスが発せられる判定レベルタイミング信号で判定レベ
ル補正サーボ信号をサンプリングし、ON状態の記録領
域での導電率変化による電流変化の影響を除去する。そ
の後、加算回路において、サンプリングされた判定レベ
ル補正サーボ信号と標準判定レベルとを加算し、図4の
(e)に示すような、膜厚変動ノイズが反映された判定
レベル信号を得る。
【0041】一方、再生信号処理回路33では、電流検
出回路28により得られた検出電流信号を、図4の
(f)に示す再生タイミング信号によってサンプリング
して図4の(g)に示す再生サンプリングデータを得た
後、位相補償回路、差分回路、絶対値回路等を介して、
この再生サンプリングデータと、図4の(e)に示した
判定レベル信号との比較を行なう。これにより、図4の
(h)に示すように、ON状態の各記録領域1、4、
6、8、10のみが正確に復元された再生復元データが
得られる。
【0042】(第3実施例)図5は、本発明の記録再生
装置の第3実施例の概略ブロック図である。本記録再生
装置は、記録層の検出情報として静電容量を用い、これ
を再生条件へと帰還制御するものである。
【0043】本実施例の記録再生装置に用いられる記録
媒体41の記録層41aは、シリコン基板上に形成され
たシリコン酸化膜、シリコン窒化膜により構成され、ボ
ロンドープのP型シリコン[100]基板上にHClに
よる化学処理によりシリコン酸化膜を1〜2nmの膜厚
で形成した後、LPCVD(低圧CVD)によってシリ
コン酸化膜を30〜50nmの膜厚で形成することによ
り得られたものである。この窒化膜はトラップ準位を豊
富に含んでおり、プローブ42と記録層41aとの間に
記録用電圧パルスを印加することで窒化膜中に電子がト
ラップされ、また、逆極性の電圧パルスを印加すること
で電子が放電されることが確認されており、消去可能な
電荷蓄積型記録媒体として注目されている。
【0044】記録媒体41としてこのような電荷蓄積型
記録媒体を用いることにより、再生は、記録領域におけ
る静電容量を検出することによって行なうことができ
る。すなわち、電荷の蓄積によって発生する過電圧によ
り、P型シリコン基板界面に発生する空乏層の発生しき
い値電圧が変化するので、物理量として、適当な再生バ
イアス電圧下で空乏層の発生状態に対応して変化する記
録層41aの静電容量を検出することで、蓄積電荷の有
無を検出することができる。
【0045】この場合、最適再生バイアス電圧は窒化
層、酸化層の膜厚、およびシリコン界面でのドーピング
レベルのムラによって変動するため、従来の記録再生装
置のように記録電圧パルスが一定の場合には、記録層の
変動ノイズに起因する再生エラーが発生するおそれがあ
る。
【0046】そこで本実施例においては、上述した記録
層の変動に応じて変化する標準バイアス電圧下での静電
容量を検出し、この静電容量または電圧微分信号をサー
ボ信号として再生バイアス電圧を補正するものである。
【0047】図5に示すように、記録層41aとプロー
ブ42との間に、再生バイアス発生回路45による記録
しきい値以下の標準バイアス電圧と、変調バイアス発生
回路52による変調バイアス電圧とを重畳した状態で、
記録層41aの静電容量をLC共振器、ロックイン検出
器等で構成された物理量検出手段としての静電容量検出
回路51により検出する。検出された静電容量またはそ
の電圧微分信号は、再生条件サーボ回路50に送られ
る。
【0048】再生条件サーボ回路50では、差分回路に
よって記録層41aの標準静電容量(微分)値との差分
信号が出力された後、増幅回路を通して再生バイアス電
圧補正サーボ信号が形成され、この補正信号電圧が、再
生バイアス発生回路45において標準再生バイアス電圧
に加算される。
【0049】また、本実施例でにおけるプローブ42と
記録層42aとの間の距離の制御方法および記録方法に
ついては、第1実施例のものと同様であるので、その説
明は省略する。
【0050】以上説明したようにして再生バイアス電圧
を補正することによって、記録層41aに変動がある場
合にも、記録層41aの変化に対応して最適再生バイア
ス電圧への補正が実時間で行なわれ、記録層41aの変
動に起因する再生エラーをなくすことができる。
【0051】本実施例では、再生条件サーボ回路50の
遮断周波数を記録領域空間周波数よりも小さく設定して
いるため、ON状態の記録領域での静電容量の影響を除
去するためのサンプルホールド制御は行なっていない
が、必要に応じて、第1実施例や第2実施例で行なった
ようなサンプリングを行なうこともできる。
【0052】以上説明した各実施例では、プローブと記
録層との間の距離の制御を力検出によって行なうものの
例を示したが、それに限らず、検出電流をサーボ信号と
して両者の距離を制御してもよい。この場合、電流検出
回路から再生条件サーボ回路へ送られる記録層信号は、
両者の距離を一定電流制御で行なう場合には設定電流の
差分出力に相当するいわゆるトポ電流であり、両者の距
離を一定高さ制御で行なう場合には検出電流であるカレ
ント信号である。また、再生バイアス、または距離制御
信号を加算し応答電流成分をロックイン検出することに
よって、記録層信号として膜形状、膜厚によらない電子
状態密度、または障壁高さ等の電子状態を反映する膜質
を設定することも可能である。
【0053】さらに、以上説明した各実施例では膜厚変
動ノイズに関する補正について述べたが、膜質に関する
補正、またはより一般的な場合として膜質変動と膜厚変
動とが混在するような場合にも、全く同様の方法による
補正が可能であることはいうまでもない。そして、記録
媒体とプローブとの間に発生する物理量としては、トン
ネル電流、電界放射電流、接触電流、静電容量、原子間
力、磁気力、静電力、エバネッセント光等の、記録媒体
情報を反映する信号あるいはそれらの変調信号を利用す
ることができる。記録層の記録媒体情報についても、上
述した物理量に応じて、記録層の電気的特性、磁気的特
性、力学的特性、光学的特性、表面形状、あるいは内部
構造を利用することができる。これらの記録媒体情報の
検出には、上述した各実施例のように物理量検出手段を
兼用したものを利用してもよいし、新たに専用の検出手
段を設けてもよい。
【0054】
【発明の効果】以上説明したように本発明の記録再生装
置は、記録ビットの再生前に記録媒体情報を検出する記
録媒体情報検出手段と、この記録媒体情報に基づいて記
録ビットの再生条件を補正する補正手段とを有すること
で、再生動作中、各記録領域に対して最適の再生条件を
独立に設定することが可能になるので、記録媒体の各記
録領域における変化に起因する再生エラー、再生信号の
検出帯域オーバー、および記録情報の損傷等のない信頼
性の高い再生を行なうことができる。
【0055】また、補正手段により、記録媒情報を再生
条件へ帰還制御することで、再生条件の補正を実時間で
行なうことができる。さらに、再生条件の補正は、物理
量の信号検出条件または再生処理手段での信号処理条件
の少なくとも一方を対象とすることで容易に行なえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の記録再生装置の第1実施例の概略ブロ
ック図である。
【図2】図1に示した記録再生装置による再生方法を説
明するための図である。
【図3】本発明の記録再生装置の第2実施例の概略ブロ
ック図である。
【図4】図3に示した記録再生装置による再生方法を説
明するための図である。
【図5】本発明の記録再生装置の第3実施例の概略ブロ
ック図である。
【図6】従来の記録再生装置の一例の概略ブロック図で
ある。
【図7】従来の記録再生装置の他の例の概略ブロック図
である。
【図8】従来の記録再生装置による再生方法を説明する
ための図である。
【符号の説明】
1、21、41 記録媒体 1a、21a、41a 記録層 1b 下地電極 1c 基板 2、2 プローブ 3 弾性部材 4 プローブ微動機構 5、25、45 再生バイアス発生回路 6 記録パルス発生回路 7 距離サーボ回路 8、28 電流検出回路 9 力検知センサ 10、30、50 再生条件サーボ回路 13、33、53 再生信号処理回路 51 容量検出回路 52 変調バイアス発生回路
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 矢野 亨治 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 プローブと、前記プローブに対向配置さ
    れ、かつ前記プローブに対して相対移動可能に設けられ
    た記録媒体と、前記プローブと前記記録媒体との間に発
    生する物理量を検出する物理量検出手段と、前記検出さ
    れた物理量に所定の処理を施して、前記記録媒体に形成
    された記録ビットの再生復元データを得る再生処理手段
    と、前記記録ビットの再生時に前記物理量を発生させる
    ための信号発生手段とを有する記録再生装置において、 前記記録ビットの再生前に、前記物理量に反映される記
    録媒体情報を検出する記録媒体情報検出手段と、 前記記録媒体情報に基づいて前記記録ビットの再生条件
    を補正する補正手段とを有することを特徴とする記録再
    生装置。
  2. 【請求項2】 前記記録媒体情報検出手段は、前記記録
    媒体の記録領域近傍で前記記録媒体情報を検出するもの
    である請求項1に記載の記録再生装置。
  3. 【請求項3】 前記記録媒体情報は、前記記録媒体の表
    面に形成された記録層の膜厚および膜質である請求項1
    または2に記載の記録再生装置。
  4. 【請求項4】 前記補正手段は、前記記録媒情報を前記
    再生条件へ帰還制御するものである請求項1、2または
    3に記載の記録再生装置。
  5. 【請求項5】 前記補正手段により補正される再生条件
    として、前記物理量の信号検出条件または前記再生処理
    手段での信号処理条件の少なくとも一方を対象とする請
    求項1、2、3または4に記載の記録再生装置。
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