JPH06251362A - 磁気記録媒体及びその製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 偽造し難く、かつ生産性も高い磁気記録媒体
及びその製造方法を得ること。 【構成】 非磁性体からなる基体上に磁性層を設けた磁
気記録媒体において、該磁性層を形成する磁性体の大部
分が、該磁性層の塗布方向に対して所定の方向に磁場配
向され、かつ一部分が基体に対して垂直方向に磁場配向
されている磁気記録媒体、および非磁性体からなる基体
上に磁性塗料を塗布して磁性層を形成し、該磁性層を形
成する磁性体を基体に対し垂直方向に配向処理した後、
塗布面が乾燥する前に、部分的に光エネルギーを照射し
て照射部分を乾燥させ、更に未乾燥部分の磁性層を形成
する磁性体を塗布方向に対して所定の方向に磁場配向処
理し、しかる後、塗布面全体を乾燥させる磁気記録媒体
の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、買物カード、預貯金カ
ード、定期券、乗車券、回数券、駐車券、プリペイドカ
ード、キャッシュカード、ポイントカード、身分証明
書、診察券等において、生産性も高く偽造し難い磁気記
録媒体及びその製造方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】近年、前記の如き磁気記録媒体において
は、偽造、変造等の不正使用を如何に防止するかが大き
な問題となっている。そこで、様々な不正使用防止策が
用いられているが、そのうち最も簡単なものは磁気記録
情報を暗号化するソフトウエアによる方法であるが、不
正使用防止効果はそれ程高くない。そこで、不正使用防
止効果を高めるため、磁気記録媒体そのものに不正使用
防止機能を持たせるという方法が提案されている。これ
らは、大別すると２つの方法に分けることができる。第
１の方法は、記録された磁気情報を磁気的に隠蔽して読
み取れなくすることにより磁気情報の改ざんや複製を困
難にする方法であり、第２の方法は磁気記録媒体が正規
のものであるか否かを判定するための識別情報を磁気記
録媒体そのものに入れておくことにより偽造を防止する
方法である。例えば、第１の方法の不正防止策として知
られているものには、磁気記録部を多層化することによ
って正規の情報を読み取れなくしたり、ダミー情報を重
畳し正規の情報の解析を困難にするものがある。また、
第２の方法の不正防止策としては、光学バーコードや磁
気バーコードを設けたものがある。

【０００３】しかしこれらの方法はそれぞれ問題があ
り、未だ十分とは言えない。すなわち第１の方法は製造
工程が複雑であり、かつ記録の書き込み、読み出し装置
が複雑になる等の問題がある。また隠蔽する方法の詳細
がわかってしまえば、磁気記録に詳しいものであれば、
情報を読み出し解析することは可能であり、従って複製
も可能となってしまう。第２の方法の不正防止策を施し
たものは、正しい判定情報を持った正規の磁気記録媒体
でなければ例え磁気情報を偽造できたとしても実際には
使用できない。しかしこの方法も、製造工程が複雑にな
ったり、判定情報の読み出し装置が複雑になるという問
題がある。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記第２の
方法による不正使用防止機能を有するものであって、従
来の方法の問題を克服し、不正使用がほとんど不可能な
磁気記録媒体とその製造方法を提供するものである。

【０００５】

【問題点を解決するための手段】本発明は、磁気記録媒
体が正規か否かの判定をするための識別情報を磁気記録
媒体そのものに入れて偽造を防ぐ方法の改良であって、
その概要は以下の通りである。本発明は、非磁性体から
なる基体上に磁性層を設けた磁気記録媒体において、該
磁性層を形成する磁性体の大部分が、該磁性層の塗布方
向に対して所定の方向に磁場配向され、かつ一部分が基
体に対して垂直方向に磁場配向されていることを特徴と
する磁気記録媒体を提供するものである。また本発明
は、非磁性体からなる基体上に磁性塗料を塗布して磁性
層を形成し、該磁性層を形成する磁性体を基体に対し垂
直方向に配向処理した後、塗布面が乾燥する前に、部分
的に光エネルギーを照射して照射部分を乾燥させ、更に
未乾燥部分の磁性層を形成する磁性体を塗布方向に対し
て所定の方向に磁場配向処理し、しかる後、塗布面全体
を乾燥させることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法
を提供するものである。

【０００６】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の
磁気記録媒体は図１あるいは図２に示すようなカード状
の構成となっている。すなわち、図１は本発明の磁気記
録媒体の一例を示す平面図で、基体全面に磁性層１が設
けられ、該磁性層１を形成する磁性体の大部分は、該磁
性層の塗布方向（図の長手方向）に対して角度α＝４５
゜または１３５゜の方向に磁場配向がなされており、か
つ磁気記録媒体の一部分に基体に対して垂直方向に磁場
配向された配向部Ａが設けられている。また、図２は本
発明の磁気記録媒体の他の一例を示す平面図で、基体全
面に磁性層１が設けられ、該磁性層１を形成する磁性体
の大部分は、該磁性層の塗布方向（図の長手方向）に対
して角度α＝０゜の方向に磁場配向がなされており、か
つ磁気記録媒体の一部分に基体に対して垂直方向に磁場
配向された配向部Ａが設けられている。なお、本発明の
磁気記録媒体は、上記のような基体全面に磁性層を設け
たものに限らず、例えばストライプ状のような基体の一
部に磁性層を設けたものでもよい。

【０００７】本発明の磁気記録媒体を構成する非磁性体
からなる基体としては、厚さ１５０μｍ〜１ｍｍのポリ
エステルフィルム、塩化ビニルフィルム、合成紙、木材
パルプ紙、ラミネート紙等のシート状の非磁性体が適用
できる。

【０００８】また、磁性層に用いる磁性体としては、γ
−酸化鉄、コバルトドープのγ−酸化鉄、酸化クロム、
バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト等が適
用され、これらの磁性体を塩化ビニル・酢酸ビニル共重
合体、塩化ビニル・酢酸ビニル・ビニルアルコール共重
合体、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ
樹脂、ポリイソシアネート樹脂等の結着剤に顔料等他の
添加剤とともに分散した塗料を基体上に塗布することに
よって磁性層を形成することができる。

【０００９】更にまた、前記磁性層の上には、必要に応
じて下記の被覆層を設けることができる。すなわち、
（ａ）前記磁性層の着色を隠蔽するためのアルミニウム
粉末、白色顔料等を含んだ着色層、（ｂ）ロイコ染料型
感熱記録層、錫あるいはアルミニウム等の金属蒸着層か
らなる放電記録層、（ｃ）熱硬化性樹脂、熱可塑性樹
脂、紫外線硬化型樹脂等からなる保護層、のうちの１層
もしくは複数層を順次積層して形成することができる。

【００１０】次に本発明の磁気記録媒体の製造方法につ
いて図を示しながら説明する。図３は本発明の磁気記録
媒体を製造する方法の一例の説明図で、非磁性体からな
るシート状の基体Ｓ−１を、送り出しリール１１より送
り出し、塗工ヘッド１３を有する磁性塗料の塗布装置１
２に導いて塗布する。シート状の基体Ｓ−１上に磁性塗
料が塗布された塗布体Ｓ−２はロール１４を経て基体Ｓ
−１に対して垂直方向に磁場配向するように設定した磁
場配向器１５と、塗布体Ｓ−２の進行方向、すなわち磁
性層の塗布方向に対して斜め４５゜方向に磁気配向する
ように設定した磁場配向器１６、乾燥パート１７、ロー
ル１８を経て、巻き取りリール１９に巻取られる。この
時、磁場配向器１５中で、磁性塗料中の磁性体が垂直方
向に配向している部分にレーザー発振機２０より照射さ
れたビームを可動ミラー２１によって導いて、塗布体Ｓ
−２の特定の部分にレーザービームをスキャニングし、
磁性塗料の塗布面の一部を垂直配向のまま光熱変換によ
り乾燥させる。その後、乾燥されていない他の磁性体を
磁場配向器１６により、塗布方向に対して所定の方向に
磁場配向処理するものである。

【００１１】図４を用いて更に詳細に説明すると、前記
図３の方法においてシート状の塗布体Ｓ−２の未乾燥の
磁性層中の磁性体全体が磁場配向器１５により垂直方向
に磁場配向され、次に磁場配向器１５中においてレーザ
ーによりパターン状に部分乾燥処理され基体に対して垂
直方向に磁場配向された配向部Ａを形成し、更に磁場配
向器１６により乾燥していない磁性体を塗布方向に対し
４５゜の方向（磁性層の塗布方向に対して角度α＝４５
゜の方向）に磁場配向されるものである。

【００１２】また、図５は本発明の磁気記録媒体を製造
する方法の他の一例の説明図である。すなわち、磁場配
向器１５により未乾燥の磁性層中の磁性体全体が垂直方
向に磁場配向され、次に磁場配向器１５中においてレー
ザーによりパターン状に部分乾燥処理され基体に対して
垂直方向に磁場配向された配向部Ａを形成し、更に磁場
配向器１６により乾燥していない磁性体を塗布方向（磁
性層の塗布方向に対して角度α＝０゜の方向）に磁場配
向させるものである。

【００１３】なお、本発明の製造方法においては、前記
図４および図５のごとく基体上の磁性層の全面に垂直の
磁場配向を施すこと以外に、基体上の磁性層の一部分を
磁場配向器により基体と垂直方向に磁場配向処理を施
し、垂直方向に配向した配向部の所定部分に光エネルギ
ーを照射して乾燥させ、次に乾燥していない磁性体を塗
布方向に対して所定の方向に磁場配向して乾燥させ磁気
記録媒体を形成してもよい。

【００１４】本発明の製造方法において基体に対して垂
直方向に磁場配向された配向部を形成する光エネルギー
の付与手段としては、Ｈｅ−Ｎｅレーザー、Ｈｅ−Ｃｄ
レーザー、ルビーレーザー、ＹＡＧレーザー、炭酸ガス
レーザー、アルゴンレーザー等のレーザーやキセノンラ
ンプの閃光があげられる。レーザーの場合は可動ミラー
によりレーザービームをスキャニングし、磁性塗料の塗
布面の所定の部分にバーコード状または文字や図形のパ
ターン状に一部を光熱変換して乾燥することができる。
また、ビームの口径が広いレーザーを用いる場合は、バ
ーコード状または文字や図形のパターンのマスクを介し
て光エネルギーを磁性塗料の塗布面の所定の部分に照射
することにより、磁性塗料の一部分を乾燥することがで
きる。

【００１５】また、前記のレーザーの代わりにキセノン
ランプの閃光を用いる場合は、バーコード状または文字
や図形のパターン状をしたマスクを介して光エネルギー
を磁性塗料の塗布面の所定の部分に照射することによ
り、塗布面の所定の一部分に光熱変換による熱を与え乾
燥することができる。

【００１６】

【作用】本発明による磁気記録媒体は、上記のような構
造を有するので、例えば磁気記録媒体の部分的に配向方
向が異なっているトラック上を、磁性層の大部分を磁場
配向処理した方向に磁気記録・再生を行った場合、その
方向の再生出力は磁性層の大部分と同じ方向に磁場配向
処理された部分の出力が、基体に対し垂直方向に配向処
理された部分の出力よりも高くなる。この出力差によっ
て、配向方向の異なる部分の有無、幅を検知でき、これ
を偽造防止情報として利用すれば極めて有効な偽造防止
手段とすることができる。また、従来の製造方法では、
磁気バーコード等の識別情報を個々の磁気記録媒体に対
して異なるように形成させることは不可能であった。し
かしながら、本発明の磁気記録媒体の製造方法では、図
３におけるレーザー発振機２０の出力や照射のタイミン
グを変化させたり、あるいは可動ミラー２１の角度を変
化させて塗布体Ｓ−２に照射されるレーザー光の位置を
変化させることが容易に可能であるから、塗布体Ｓ−２
に形成される垂直方向に磁場配向された配向部Ａの形状
を磁気記録媒体１つ１つが別々になるように付与させる
ことができる。したがって、本発明の製造方法では、容
易に個々の磁気記録媒体に異なった識別情報を与えるこ
とが可能であり、よって、偽造防止効果を格段に向上さ
せることができる。

【００１７】

【実施例】以下、実施例により本発明を詳述する。尚、
配合部は全て重量部を示すものとする。 実施例１ 磁性層の磁性塗料を以下の配合で調製した。 上記混合物をボールミルで８時間分散した後、ポリイソ
シアネート樹脂を５部添加し、更に１時間分散を行い磁
性層用磁性塗料を得た。この磁性塗料をポリエステルフ
ィルムからなるシ−ト状の基体に図３に示す方法で塗布
しシート状塗布体を得た。そして、シ−ト状塗布体が通
過する部分の磁場が５ＫＯｅとなる垂直配向用の磁場配
向器に前記シート状塗布体を通過させ、該配向器中でＨ
ｅ−Ｎｅレーザーを光源としたレーザービームを可動ミ
ラーにより反射させ塗布面にあて、バーコードパターン
状となるよう部分的に塗布面を乾燥させた。続いて角度
α＝４５゜となるような５ＫＯｅの磁場配向器で配向処
理を行い、その後、全塗布面を乾燥させ本発明の磁気記
録媒体を得た。このようにして得られた本発明による磁
気記録媒体から、図１に示すような垂直配向部分が３箇
所入るようにＪＩＳサイズの磁気カ−ドを打ち抜いた。
そして、カ−ド用磁気記録／再生装置を用いて記録密度
２１０ＦＣＩで磁気記録／再生を行ったところ、図６の
ような出力パターンを得た。垂直方向に配向された部分
の磁気出力ｂは、そうでない部分のｃに対し、約３０％
低くなった。この出力の低い部分の個数、幅、カ−ド端
からの位置、を検知することにより充分に安定して磁気
カ−ドを識別することができた。

【００１８】実施例２ 実施例１で得た磁性塗料をポリエステルフィルムからな
るシ−ト状の基体に図３に示す方法で塗布しシート状塗
布体を得た。そして、シ−ト状塗布体が通過する部分の
磁場が５ＫＯｅとなる垂直配向用の磁場配向器に前記シ
ート状塗布体を通過させ、該配向器中でＨｅ−Ｎｅレー
ザーを光源としたレーザービームを可動ミラーにより反
射させ塗布面にあて、バーコードパターン状となるよう
部分的に塗布面を乾燥させた。続いて角度α＝０゜とな
るような５ＫＯｅの磁場配向器で配向処理を行い、その
後、全塗布面を乾燥させ本発明の磁気記録媒体を得た。
このようにして得られた本発明による磁気記録媒体か
ら、図１に示すような垂直配向部分が３箇所入るように
ＪＩＳサイズの磁気カ−ドを打ち抜いた。そして、カ−
ド用磁気記録／再生装置を用いて記録密度２１０ＦＣＩ
で磁気記録／再生を行ったところ、図７のような出力パ
ターンを得た。垂直方向に配向された部分の磁気出力ｂ
は、そうでない部分のｃに対し、約５０％低くなった。
この出力の低い部分の個数、幅、カ−ド端からの位置、
を検知することにより充分に安定して磁気カ−ドを識別
することができた。

【００１９】

【発明の効果】以上のごとく本発明の磁気記録媒体は垂
直配向部分を設けてあるので、その部分の出力差を検知
することにより容易に識別情報を得られる。又、製造方
法は極めて簡単であるにもかかわらず、偽造が不可能で
あるという別格の効果を奏するものである。即ち、本発
明の磁気記録媒体は磁気カードにした時に、個々の磁気
カードに対し異なった偽造防止のデータを入れることが
可能であるために偽造は困難である。又、このデータは
後で追加したり消去することが出来ない。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の磁気記録媒体の一例を示す説明図

【図２】本発明の磁気記録媒体の他の一例を示す説明図

【図３】本発明の製造方法の製造工程略図

【図４】図３の要部説明図

【図５】図３の他の要部説明図

【図６】実施例１で得られた磁気カードの出力パターン

【図７】実施例２で得られた磁気カードの出力パターン

【符号の説明】

１ 磁性層 Ａ 垂直方向に磁場配向された配向部 １１ 送り出しリール １２ 塗布装置 １３ 塗工ヘッド １４ ロール １５ 磁場配向器 １６ 磁場配向器 １７ 乾燥パート １８ ロール １９ 巻き取りリール ２０ レーザー発振機 ２１ 可動ミラー Ｓ−１ 基体 Ｓ−２ 塗布体

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 非磁性体からなる基体上に磁性層を設け
   た磁気記録媒体において、該磁性層を形成する磁性体の
   大部分が、該磁性層の塗布方向に対して所定の方向に磁
   場配向され、かつ一部分が基体に対して垂直方向に磁場
   配向されていることを特徴とする磁気記録媒体。
2. 【請求項２】 非磁性体からなる基体上に磁性塗料を塗
   布して磁性層を形成し、該磁性層を形成する磁性体を基
   体に対し垂直方向に配向処理した後、塗布面が乾燥する
   前に、部分的に光エネルギーを照射して照射部分を乾燥
   させ、更に未乾燥部分の磁性層を形成する磁性体を塗布
   方向に対して所定の方向に磁場配向処理し、しかる後、
   塗布面全体を乾燥させることを特徴とする磁気記録媒体
   の製造方法。