JP2599072B2 - 磁気記録媒体の製造方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は買物カード、預貯金カー
ド、定期券、乗車券、回数券、プリペイドカード、キャ
ッシュカード、クレジットカード、ポイントカード、身
分証明書、診察券等において、生産性も高く偽造し難い
磁気記録媒体の製造方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】近時、前記の如き磁気記録媒体において
は、偽造、変造等の不正使用を如何に防止するかが大き
な問題となっている。そこで、様々な不正使用防止策が
用いられているが、そのうち最も簡単なものは磁気記録
情報を略号化するソフトウエアによる方法であるが、不
正使用防止効果はそれ程高くはない。そこで、不正使用
防止効果の高い磁気カードそのものに不正使用防止機能
を持たせるという方法が提案されている。これらは大別
すると二種類あり、第１の方法は記録された磁気情報を
隠蔽して読みとれなくすることにより、磁気情報の改ざ
んや複製を困難にする方法であり、第２の方法は磁気カ
ードが正規のものか否かを判定するための識別情報をカ
ードそのものに入れておくことにより偽造を防止する方
法である。例えば、第１の方法の不正防止策として知ら
れているものには、磁気記録部を多層化することによっ
て正規の情報を読み取れなくしたり、ダミー情報を重畳
し正規の情報の解析を困難にするものがある。また、第
２の方法の不正防止策としては、光学バーコードや磁気
バーコードを設けたものがある。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしこれらの方法は
それぞれ欠点があり、未だ充分とは言えない。すなわち
第１の方法は製造工程が複雑であり、かつ記録の書込
み，読出し装置が複雑になる等の欠点がある。また隠蔽
する方法の詳細が判ってしまえば、磁気記録に詳しいも
のであれば、情報を読み出し、解析することは可能であ
り、従って複製も可能となってしまう。第２の方法の不
正使用防止策を施したものは、正しい判定情報を持った
正規のカードでなければ例え磁気情報を偽造できたとし
ても、実際には使用できない。しかしこの方法も製造工
程が複雑となったり、判定情報の読み出し装置が複雑に
なるという欠点がある。本発明は第２の方法による不正
使用防止機能を有するものであって、従来の方法の欠点
を克服し、不正使用が殆ど不可能な磁気記録媒体の製造
方法を提供するものである。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明の概要は、磁気カ
ードが正規か否かの判定するための識別情報をカードそ
のものに入れて偽造を防ぐ方法の改良であって、その概
要は以下のとおりである。請求項１の発明は非磁性体か
らなる基体上に磁性塗料を塗布して磁性層を形成し、該
磁性層が乾燥する前に、光エネルギー照射により部分的
に磁性層を乾燥させ、続いて磁場配向用磁石により磁性
層の残余の部分を所定の方向に配向させ、その後磁性層
の塗工面全体を乾燥させる磁気記録媒体の製造方法であ
る。請求項２の発明は非磁性体からなる基体の上に磁性
塗料を塗布して磁性層を形成し、該磁性層の磁性体を塗
布方向に対して所定の方向に配向処理した後、光エネル
ギーにより部分的に磁性層の配向方向を乱し、続いて磁
性層の塗工面全体を乾燥させる磁気記録媒体の製造方法
である。

【０００５】本発明において用いられる光エネルギーの
付与手段は、レーザー光およびキセノンランプの閃光が
あげられる。レーザーとしてはＨｅ−Ｎｅレーザー、Ｈ
ｅ−Ｃｄレーザー、ルビーレーザー、ＹＡＧレーザー、
炭酸ガスレーザー、アルゴンレーザー等のレーザーがあ
げられる。レーザーの場合は可動ミラーによりビームを
スキャンニングし、磁性塗料の塗工面の所定の個所にバ
ーコード状または文字や図形のパターン状に一部を乾燥
することができる。また、前記のレーザーの代りにキセ
ノンランプのフラッシュを用いる場合は、バーコード状
または文字や図形のパターン状をしたマスクを介して光
エネルギーを磁性塗料の塗工面の所定の部分に照射する
ことにより、塗工面の所定の一部分に熱を与え乾燥する
ことができる。

【０００６】次に本発明の方法の実施に際して用いられ
る磁気記録媒体の形成材料について述べる。先ず非磁性
体からなる基体としては、厚さ１５０μｍ〜１ｍｍのポ
リエステルフィルム、塩化ビニルフィルム、合成紙、木
材パルプ紙、ラミネート紙等のシート状の非磁性体が適
用できる。磁性層の形成に用いる磁性体としては、γ−
酸化鉄，コバルトドープのγ−酸化鉄，酸化クロム，バ
リウムフェライト，ストロンチウムフェライト等が適用
され、これらの磁性体を塩化ビニル・酢酸ビニル共重合
体，塩化ビニル・酢酸ビニル・ビニルアルコール共重合
体，ポリウレタン樹脂，ポリエステル樹脂，エポキシ樹
脂，ポリイソシアネート樹脂等の結着剤に顔料等他の添
加剤とともに分散した塗液を基体上に塗布することによ
って磁性層を形成することができる。

【０００７】また、前記磁性層の上には、必要に応じて
下記の被覆層を設けることができる。すなわち、 （ａ）前記磁性層の着色を隠蔽するためのアルミニウム
粉末，白色顔料等を含んだ着色層 （ｂ）ロイコ染料型感熱記録層，錫，アルミニウム等の
金属蒸着層からなる放電記録層等の印字記録層 （ｃ）紫外線硬化型樹脂からなる保護層 のうちの１層もしくは複数層を順次積層して形成するこ
とができる。

【０００８】本発明の方法により得られる磁気記録媒体
は、上記のような構造を有するのであり、配向方向に磁
気記録を行なう場合は、その再生出力は、例えば配向を
施された部分では正常な出力を得るが、部分的に設けら
れた配向方向の乱れた部分ではそれよりも低い出力を得
る。すなわち、この出力差によって配向方向の乱れた部
分の有無、幅を検知でき、これを偽造防止情報として利
用すれば極めて有効な偽造防止法とすることができる。
また、磁気バーコード等は個々のカードにそれぞれ異な
った情報を持たせることは不可能であるが、本発明によ
る方法は、個々のカードに異なった情報を付与すること
が可能である。

【０００９】図１は本発明の方法の一例の説明図で、非
磁性体からなるシート状の基体Ｓー１を送出しロール１
１より送り出し、塗工ヘッド１３を有する磁性塗料の塗
布装置１２に導いて塗工する。シート状の基体Ｓー１上
に磁性塗料が塗布された塗布体Ｓー２はロール１４を経
て磁場配向器１５、乾燥パート１６、ロール１７を経て
巻取りリール１８に巻き取る。この場合磁場配向器１５
で配向する前に、レーザー発振器１９よりレーザービー
ムを照射し、ミラー２０により反射してシート状の塗布
体Ｓー２に直交して投射するようになっており、該塗布
体Ｓー２の特定の個所にレーザービームをスキャンニン
グし、磁性塗料の塗工面の一部（後に無配向箇所１１と
なる）を乾燥させ、その後塗布面を磁場配向し、乾燥パ
ート１６、ロール１７を経て巻取りリール１８に巻き取
り磁気記録媒体の原反を得た。図２は前記図１の方法に
おいてシート状の塗布体Ｓー２の磁性層は、磁場配向器
１５により磁化方向（シートの長手方向に対する角度ａ
＝０の方向）に磁場配向２され、かつ特定の個所に無配
向部３が設けられている状態を示す要部の説明図であ
る。図３は前記の方法により得られたものをカッティン
グして得られたカードの構造例を示す平面説明図で、基
体１に磁性層が設けられ、これが一定方向（カードの長
手方向）に磁場配向２がなされており、かつ所定の所に
無配向部３が設けられている。

【００１０】図４は本発明の方法の他の一例の説明図
で、磁場配向器１５を用いて斜め（４５°）の方向に磁
性層を配向し、その後、レーザービームを照射し、ミラ
ー２０より反射してシート状の塗布体Ｓに直交して投射
するようになっており、前記塗布体Ｓの所定の箇所にレ
ーザービームをスキャンニングし、磁性塗料の塗工面の
一部（後に無配向箇所３となる）を無配向となるように
加熱し、その後乾燥パート１６、ロール１７を経て巻取
りリール１８に巻取り磁気記録媒体の原反を得た。図５
は前記図４の方法において、磁場配向器１５によりシー
トの長手方向に対して角度ａ＝４５°の方向に磁性層を
配向し、かつ特定の個所に無配向部３が設けられている
状態を示す要部の説明図である。図６は前記の方法によ
り得られたものをカッティングして得られたカードの構
造例を示す平面説明図で、基体１に磁性層が設けられ、
これが一定方向（カードの長手方向にある角度で傾斜し
た方向）に磁場配向２が設けられており、かつ所定の所
に無配向部３が設けられている。

【００１１】

【実施例】以下本発明の実施例について述べる。 実施例１ 第１の磁性層の塗料を以下の配合で調製した。 バリウムフェライト、ＢａＯ・６Ｆｅ₂ Ｏ₃ 保磁力２７５０エルステッド 比表面積８ｍ² ／ｇ １００重量部 カーボンブラック ３重量部 レシチン １重量部 塩化ビニル・酢酸ビニル・ビニルアルコール共重合体 ２０重量部 ポリウレタン樹脂 ２０重量部 トルエン ６０重量部 メチルエチルケトン ６０重量部 メチルイソブチルケトン ６０重量部 上記配合からなる混合物をボールミルで８時間分散した
後、ポリイソシアネート樹脂を５重量部添加し、更に１
時間分散を行ない磁性層用磁性塗料を得た。この磁性塗
料を用い、図１に示す方法で塗工した。

【００１２】なお、図２に示すように磁場配向は角度α
を０°となるように５ＫＯｅの磁場配向装置を用い、Ｈ
ｅ−Ｎｅレーザーを光源としたレーザービームを可能ミ
ラーにより反射させて塗工面に当て、続いて配向器によ
り配向を行ないその後塗工面を乾燥させた。このように
して得られた磁気記録媒体から、図３に示すように無配
向の部分が３箇所入るようにＪＩＳサイズの磁気カード
を打ち抜き、カード用磁気リーダー／ライターを用いて
２１０ＦＣ１でオールＦ（１６進）のＦＭ記録をし、読
み出しを行なったところ、図７のような出力パターンを
得た。無配向の部分の磁気出力ｃは、そうでない部分の
正常な出力ｄに対し、約４０％低くなった。この出力の
低い部分の個数やカード端からの位置を検知することに
より十分に安定してカードを識別することができた。

【００１３】実施例２ 実施例１と同じ塗料混合物をボールミルで８時間分散し
た後、ポリイソシアネート樹脂を５部添加し、更に１時
間分散を行ない、磁性層用磁気塗料を得た。この塗料を
用い、図４に示した方法で塗工を行なった。磁場配向は
角度αを４５°となるように６ＫＯｅの磁場配向装置を
用いた。なお、塗工面は乾燥パート中で乾燥した。Ｈｅ
−Ｎｅレーザーを光源としたレーザービームを可能ミラ
ーにより照射し、塗工面の一部を加熱した。その際塗工
面は乾燥器中で乾燥した。このようにして得られた本発
明による磁気記録媒体から無配向部分が３個所入るよう
にＪＩＳサイズの磁気カードを図６に示すように打ち抜
き、カードの配向方向に記録再生ヘッドを設けた。カー
ド用磁気リーダー／ライターを用いて２１０°ＦＣ１で
オールＦ（１６進）のＦＭ記録をし、読み出しを行なっ
たところ、図７のような出力パターンを得た。無配向部
分の磁気出力ｃは、そうでない部分の出力ｄより約４０
％低くなった。この出力の低い部分の個数や、カード端
からの位置を検知することにより、十分に安定してカー
ドを識別することができる。

【００１４】

【発明の効果】以上の如く本発明の磁気記録媒体は、磁
場配向した部分と磁場配向の前もしくは後にレーザー等
の光エネルギーにより部分的に乾燥させることによっ
て、無配向である部分を設けてあり、その部分の出力差
を検知することにより容易に識別情報を得られる。ま
た、製造方法は極めて簡単であるにもかかわらず、偽造
をなしがたいという格別の効果を奏するものである。即
ち、本発明の磁気記録媒体はカードにした時に個々のカ
ードに対し異なった偽造防止のデータを入れることが可
能であるために偽造は極めて困難である。また、このデ
ータは後で追加したり消去できない。さらにまた、磁性
層の上に被覆層を施工、印刷などにより設けることがで
きるため、偽造防止部は殆ど目視不能となるとともに、
磁気記録面に図柄、広告などを入れることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の方法の一例の説明図

【図２】図１の要部説明図

【図３】図１の方法で得られたカードの一例の説明図

【図４】本発明の方法の他の一例の説明図

【図５】図４の要部説明図

【図６】図４の方法で得られたカードの一例の説明図

【図７】本発明で得られたカードの出力パターン

【符号の説明】

１ 非磁性体からなる基体 ２ 磁場配向 ３ 無配向部 Ｓ−１ 基体 Ｓ−２ 塗布体 １１ 送出しリール １２ 塗工装置 １３ 塗工ヘッド １４ ロール １５ 磁場配向器 １６ 乾燥パート １７ ロール １８ 巻取りリール １９ レーザー発振器 ２０ ミラー

フロントページの続き (72)発明者 鈴木 雅康 静岡県静岡市用宗巴町３番１号 株式会 社巴川製紙所電子材料研究所内 (72)発明者 茶谷 和男 東京都千代田区麹町３丁目３番地麹町ス クエアビル 日本カードトランスファー 株式会社内 (72)発明者 高井 盛 東京都千代田区麹町３丁目３番地麹町ス クエアビル 日本カードトランスファー 株式会社内 (56)参考文献 特開 昭63−9016（ＪＰ，Ａ)

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 非磁性体からなる基体の上に磁性塗料を
   塗布して磁性層を形成し、該磁性層が乾燥する前に、光
   エネルギー照射により部分的に磁性層を乾燥させ、続い
   て磁場配向用磁石により磁性層の残余の未乾燥部分を所
   定の方向に配向させ、その後磁性層の塗工面全体を乾燥
   させることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
2. 【請求項２】 非磁性体からなる基体の上に磁性塗料を
   塗布して磁性層を形成し、該磁性層の磁性体を塗布方向
   に対して所定の方向に配向処理した後、光エネルギーに
   より部分的に磁性層の配向方向を乱し、続いて磁性層の
   塗工面全体を乾燥させることを特徴とする磁気記録媒体
   の製造方法。