JPH0624889A - 高分子化合物薄膜のエピタキシャル成長 - Google Patents

高分子化合物薄膜のエピタキシャル成長

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JPH0624889A
JPH0624889A JP14013492A JP14013492A JPH0624889A JP H0624889 A JPH0624889 A JP H0624889A JP 14013492 A JP14013492 A JP 14013492A JP 14013492 A JP14013492 A JP 14013492A JP H0624889 A JPH0624889 A JP H0624889A
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正人 佐野
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 単結晶面が露出した固体基板の表面近傍で重
合反応を行わることにより、高分子化合物をエピタキシ
ャル成長させた機能性薄膜を得る。 【構成】 固体基板の表面付近で高分子前駆体を重合さ
せる際、製造される高分子化合物の構造上の繰返し単位
等に整合する原子格子をもつ単結晶面が表面にある固体
基板を使用する。重合反応後、未反応前駆体やバルク重
合体等は、適当な溶媒で固体基板表面を洗浄することに
よって除去される。 【効果】 固体基板の表面に露出している単結晶面を反
応場として使用することにより、構造的に二次元の規則
性を持って特定の化学単位が配列された高分子化合物薄
膜が得られる。この薄膜は、その構造的特徴を活かし、
光学素子,電気素子等の機能性薄膜或いは表面修飾膜と
して使用される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、固体基板上に高分子化
合物をエピタキシャル成長させ、機能性薄膜を得る方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】有機化合物の超薄膜は、化学気相成長法
(CVD),プラズマCVD法,クラスタイオンビーム
法,ラングミュア法等で製造されている。また、固体基
板の表面で高分子前駆体を電解重合することによって、
固体基板を表面修飾した膜を作製することも知られてい
る。
【0003】電解重合では、ラジカル,カチオンラジカ
ル等の活性種が電極表面上に発生し、重合が開始され
る。電子の移動に伴って重合が進行し、所定の高分子化
合物が修飾膜として形成される。しかし、この電解重合
においては、活性種の発生時期や空間的な分布が制御さ
れないため、ナノメータの膜厚で重合反応を停止させる
ことができず、得られる薄膜も膜厚が不均一になる。ま
た、重合していく高分子鎖を配向させることは、実際上
不可能である。
【0004】固体基板の表面に高分子化合物をエピタキ
シャル成長させる方法としては、すでに重合された高分
子を溶液中又は融液から固体基板表面にエピタキシャル
成長させることがJournal of Polymer Science Macromo
lecular Review(1978年)第13巻第1〜61頁に
記載されている。この方法においては、融点近傍の温度
に加熱することによって高分子化合物を溶融し、この融
液に同じ温度に保持された単結晶の固体基板を浸漬す
る。浸漬された固体基板は、高分子化合物の融液中で劈
開され、新しい単結晶面を露出させる。この新しい単結
晶面の上で、エピタキシャル成長が開始される。また、
同じ温度の溶媒で高分子化合物の融液を希釈することに
よって、エピタキシャル成長反応を停止させる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】電解重合では、作製さ
れる高分子薄膜の膜厚を分子レベルで制御することが困
難である。また、薄膜自体も、異方性,配向性等に特色
のないアモルファス状の分子構造をとる。
【0006】CVD,プラズマCVD,クラスタイオン
ビーム法等は、主として低分子量の化合物薄膜の作製に
適用され、膜厚を分子レベルで制御することができる。
しかし、低分子量の化合物では、膜内面の分子配向制御
が極めて難しくなる。たとえば、プラズマCVDにおい
ては、モノマーガス又はその混合ガスをグロー放電させ
ることにより活性化させる。
【0007】この活性化の過程で、また活性化された粒
子を基板に輸送する過程で、更に重合させる過程で、熱
力学的な乱れが生じる。また、放電中のイオン,電子,
活性粒子等の衝突により不均質な反応物質が生成する。
気相反応で生成した不均質な反応物質は、基板の表面近
傍における重合反応によって生成した反応物質と共に、
基板表面に吸着される。そのため、放電電力,ガス圧等
を制御しても、広い範囲で配向性を持った薄膜を基板表
面に形成させることは困難である。
【0008】他方、重合された高分子化合物をエピタキ
シャル成長させる方法は、限られた高分子化合物を固体
基板上に成長させることに止まっており、また膜厚も制
御されていない。そして、広範囲にわたって膜厚及び分
子配向性が制御された薄膜を作製する方法は、これまで
のところ報告されていない。
【0009】すなわち、重合された高分子化合物をエピ
タキシャル成長させるとき、結晶性の高い高分子化合物
が必要である。しかし、結晶性の高い高分子化合物は、
一般的にいって溶媒に溶けにくい性質をもっている。ま
た、固体基板に吸着された高分子化合物が折畳み鎖構造
をとるため、膜厚制御が困難になる。しかも、単結晶育
成に必要な純度をもった高分子化合物試料を調製するこ
とも容易ではない。このようなことから、適用される高
分子化合物に制約が加わり、多様なニーズに対応する特
性を備えた高分子化合物のエピタキシャル成長薄膜を製
造することができない。。
【0010】本発明は、このような問題を解消すべく案
出されたものであり、表面調製された固体基板の上で重
合反応を行わせ、固体基板表面の原子構造を反映するこ
とにより、膜厚,分子配向性等がナノメータオーダで制
御された機能性薄膜を得ることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明のエピタキシャル
成長方法は、その目的を達成するため、単結晶面がでて
いる表面層をもつ固体基板の表面近傍で高分子前駆体を
重合して高分子化合物をエピタキシャル成長させること
を特徴とする。重合反応には、開環重合,付加重合等が
ある。
【0012】固体基板としては、単結晶面が表面に露出
している限り種々のものが使用されるが、高分子化合物
の繰返し単位構造に比較的近い構造の原子格子をもつグ
ラファイトを使用することが好ましい。また、製造され
る高分子化合物の構造上の繰返し単位及び隣接した高分
子鎖間の位置関係が固体基板の表面層にある原子格子に
整合する高分子前駆体を選ぶことが、高分子化合物をエ
ピタキシャル成長させる上で有利である。
【0013】反応後の固体基板表面に残留する未反応の
前駆体やバルク状の高分子化合物等は、適宜の溶媒を使
用した洗浄によって基板表面から除去される。このとき
使用される溶媒としては、バルク状の高分子化合物を溶
解する能力を持つ他に、重合に使用された未反応前駆体
等の化合物や重合により副生した化合物等を溶け込ませ
ることができる溶媒を使用することが好ましい。或い
は、それぞれの化合物ごとに異なる溶媒を使用し、未反
応前駆体,副生化合物等を多段階で洗浄除去しても良
い。これにより、高分子化合物のエピタキシャル成長層
で修飾された固体基板が得られる。
【0014】
【作 用】本発明者等は、高分子前駆体の重合反応を固
体基板の表面近傍で行わせるとき、得られた高分子重合
体の分子構造が固体基板の表面状態を反映していること
を実験の過程で見い出した。ポリエチレンオキサイド
は、溶液からグラファイト上にキャストしただけではバ
ルクと同様の螺旋状構造をとる。これに対し、エチレン
オキサイドをグラファイト表面上で重合させたところ、
作製された高分子化合物薄膜は、螺旋構造ではなく、エ
ピタキシャル成長した平面的にジグザクな分子構造を持
っていた。
【0015】作製されたポリエチレンオキサイド薄膜
は、基板表面上に二次元的な規則性を持って化学単位が
配列され、固体基板表面の原子構造を反映したものであ
った。エピタキシャル成長層が形成されることは、溶液
中で重合された高分子ポリエチレンオキサイドがグラフ
ァイト表面上に成長するものではなく、エチレンオキサ
イドが重合する過程でグラファイト表面上にエピタキシ
ャルに配列したことを意味する。このように重合反応の
過程で固体基板の表面状態が反映される理由は、次のよ
うに推察される。
【0016】ポリエチレンオキサイドの酸素原子は、平
面ジグザグ構造におけるトランス結合の一部である。そ
のため、隣接する酸素原子は、高分子鎖の骨格からみて
逆方向に位置する。したがって、ポリエチレンオキサイ
ドの構造上の繰返し単位は、平面ジグザグ構造でCPK
モデルから推定して、一つおきの酸素原子を含む7.4
Åの距離をもっている。この繰返し単位は、グラファイ
ト基板の表面にある六方単位格子の3個分(7.38
Å)に相当する。また、凝集状態にある高分子化合物の
鎖間距離も、ポリエチレン等に比較するとグラファイト
六方単位格子の2個分(4.26Å)付近で安定する。
【0017】したがって、ポリエチレンオキサイドの構
造上の繰返し単位は、たとえば図1のモデルに示すよう
に、グラファイト六方単位格子上に配列される。すなわ
ち、幾何学的にみると、高分子主鎖上にある構造上の繰
返し単位及び隣接した鎖にある同じ原子との相対的な位
置関係という二次元的な要素が固体基板の表面格子に当
てはまるように配列されるものと推察される。
【0018】図1のモデルでは、ポリエチレンオキサイ
ドの隣接した繰返し単位構造における同じ原子を結ぶベ
クトルAを隣接したグラファイト六方単位格子の同じ位
置を結ぶベクトルCに平行に、隣接した高分子鎖間にお
ける同じ繰返し単位構造における同じ原子を結ぶベクト
ルBをグラファイト六方単位格子のベクトルCで示され
た等価原子を結ぶもう一本の基本ベクトルDに平行にし
た配列を示している。ポリエチレンオキサイドの配列状
態は、これに限らず、たとえばグラファイト六方単位格
子に対してポリエチレンオキサイド鎖が旋回し、ベクト
ルAとベクトルCとの間に角度がある場合も生じる。
【0019】何れの場合にあっても、グラファイト六方
単位格子の各点を結ぶ単位長さの整数倍に相当する長さ
をベクトルA及びBがもつとき、グラファイト基板上に
ポリエチレンオキサイドがエピタキシャル成長する。本
願明細書においては、このような意味において、製造さ
れる高分子化合物の構造上の繰返し単位及び隣接した高
分子鎖間の位置関係が固体基板の表面層にある原子格子
に整合しているものをいう。なお、ベクトルA及びB
は、グラファイト六方単位格子の格子点を結ぶ単位長さ
の整数倍に相当する長さに数学的な厳密さで一致する必
要はなく、若干の差があっても良い。格子点を結ぶ単位
長さに対し比較的小さな整数倍の長さをベクトルA及び
Bがもつとき、ポリエチレンオキサイドがエピタキシャ
ル成長する確率が高くなっていた。この傾向は、ポリエ
チレンオキサイドとグラファイト基板との組合せに限っ
たものではなく、後述する実施例にみられるように、高
分子化合物及び基板の種類を変更した場合にも同様に成
立する。
【0020】また、ポリエステルのように主鎖にカルボ
キシル基等の双極子モーメントをもつ化合物,ポリアミ
ド系のように水素結合基をもつ化合物等では、幾何学的
なフィッティングだけではなく、高分子鎖間における官
能基の相互作用エネルギー,官能基と固体基板の表面原
子との相互エネルギー等が関与する。その結果、これら
の化合物では、全エネルギーを最低にする配列をとるも
のと推察される。
【0021】すでに重合された高分子化合物を溶液から
固体基板に吸着させるとき、テイル部,トレイン部及び
ループ部をもった構造が形成されることが知られてい
る。この高分子化合物の構造を全てトランス結合をもっ
たトレイン部にするためには、非常に大きなエネルギー
が必要とされる。これに対し、重合過程で分子配向させ
るとき、モノマー又は重合されつつある高分子鎖のテー
ル部は、他の鎖との間に相関関係を保ちながら、固体基
板の表面に順次吸着される。その結果、比較的少ないエ
ネルギーで、所定の分子配向をもったエピタキシャル成
長層が固体基板表面に形成されるものと推察される。
【0022】この推論を基礎として、高分子前駆体及び
固体基板の種類を変更し、同様に種々の高分子重合を行
ったところ、作製された高分子薄膜の繰返し単位構造と
固体基板の表面層にある原子格子との間に密接な関係が
成立していることが判った。
【0023】高分子化合物をエピタキシャル成長させる
上で、固体基板の原子構造と高分子化合物の構造との間
に、高分子の主鎖に沿った構造上の繰返し単位の長さが
固体基板のブラベ格子を与える二つの基本ベクトルのう
ちの一つのほぼ整数倍であり、高分子鎖間の距離がもう
一つの基本ベクトルのほぼ整数倍である相対的な関係を
持たせることが望ましい。たとえば、グラファイトを固
体基板とする場合、隣り合った炭素間距離は1.42Å
で、図1のベクトルC及びDで表される隣接した六方格
子間距離は2.46Åである。また、バルクでの構造回
折から見積もられ一般に使用されている原子間距離及び
角度から、トランス結合したCH2 −CH2 −CH2
主鎖に沿った距離は2.55Å、同じくCH2 −O−C
2 で2.34Å,CH2 −NH−COで2.38Å等
である。
【0024】したがって、たとえばポリテトラヒドロフ
ランの繰返し単位である (CH2)5O (CH2)5 Oの平
面ジグザグ構造をもつ主鎖に沿った距離は、12.1〜
12.3Åと見積もられ、グラファイト5個分の距離1
2.3Åと一致している。他方、グラファイトの一つお
きの六方格子上にある等価の炭素原子間距離は、図1 向で4.92Åである。これは、トランス結合し且つ大
きな側鎖をもたないポリエチレン骨格のバルクにおける
高分子鎖間距離4〜5Åと良く対応する。このような対
応関係にあるとき、固体基板表面に高分子化合物がエピ
タキシャル成長する。
【0025】ただし、エピタキシャル成長した高分子化
合物は、バルク状の高分子化合物と基本的に構造が異な
る。そのため、固体基板表面に対する適合性を考察する
とき、バルク状の高分子化合物から得られた原子間距離
や角度等を単純にグラファイト等の固体基板と比較する
ことはできず、多少の差が存在することが避けられな
い。また、適合性に関する条件は、固体基板表面に対し
て直接的な相互作用を及ぼす高分子部分によって左右さ
れる。固体基板表面に直接相互作用しない位置にある側
鎖等は、少なくとも高分子の最密充填が可能である限
り、その影響を無視することができる。
【0026】このようなことから、固体表面としてグラ
ファイトの単結晶面を利用して平面ジグザグ構造をもつ
高分子化合物をエピタキシャル成長させる場合、分子構
造がグラファイトの六方格子に類似するポリエチレン骨
格等をもつ高分子化合物が適当である。
【0027】そこで、この関係を利用し、作製しようと
する高分子薄膜に応じて固体基板の種類及び表面調製の
条件等を選択するとき、多種多様なエピタキシャル成長
高分子薄膜が得られる。また、高分子重合体をエピタキ
シャル成長させる従来の方法では困難であった高分子化
合物に対しても適用可能となる。そのため、多様なニー
ズに応じた特性をもつエピタキシャル成長高分子薄膜が
得られる。
【0028】固体基板としては、高分子薄膜をエピタキ
シャル成長させることから、高分子化合物の繰返し単位
構造に整合する原子格子をもった単結晶面が表面にでて
いる基板が使用される。表面に単結晶面がでている限
り、基板全体が単結晶であるもの、微結晶が集合した多
結晶の表面のみを単結晶面としたもの等が使用可能であ
る。また、材質的には、反応媒体中で化学的,物理的に
安定な表面をもつ限り、無機化合物,金属,半導体等の
各種の基板が使用される。具体的には、グラファイト,
シリコン,サファイア等がある。単結晶面が露出した状
態に固体基板の表面を調製する方法としては、たとえば
劈開により新鮮な単結晶面を露呈させる方法等がある。
【0029】固体基板の表面近傍で重合されるモノマー
としては、特にその種類が制約されるものではなく、固
体基板表面にある原子格子を考慮して、従来から重合反
応に使用されていた各種の高分子前駆体を使用すること
ができる。たとえば、エーテル系のテトラヒドロフラ
ン,オキシサイクロブタン,エチレンオキサイド等、ア
ミド系のε−カプロラクタム,エステル系のε−カプロ
ラクトン,ビニル系の塩化ビニリデン等がある。
【0030】重合反応は、従来のバルク重合とほぼ同じ
であり、アニオン重合,カチオン重合,ラジカル重合等
が採用される。この重合に使用される重合開始剤,溶媒
等も、バルク重合に用いられているものと同じ化合物を
使用することができる。ただし、エピタキシャル成長を
固体基板の表面で行わせる上から、実施例に示すように
反応速度を適度に遅くすることが好ましい。重合反応
は、モノマー濃度,反応温度の低下等によって緩慢にす
ることができる。
【0031】
【実施例】実施例1 :テトラヒドロフラン20mlを乾燥させ、窒
素気流下で50mlのフラスコに入れた。フラスコを室
温に維持し、(CF3 SO2)2 Oを10滴加え、十分撹
拌することによって反応液を調製した。劈開により新た
に(0001)面を露出させたグラファイト基板(高配
向度熱分解グラファイト,表面積:10×20mm2
を反応液に浸漬した。12時間後、反応液にエタノール
を添加し、重合反応を終了させた。フラスコからグラフ
ァイト基板を取り出し、エタノール及びテトラヒドロフ
ランで十分洗浄した。
【0032】グラファイト基板の表面をフーリエ変換赤
外線スペクトル(FTIR)を測定したところ、図2に
示すように基板表面に高分子の存在を示す吸収がみられ
た。また、X線光電子スペクトル(XPS)を測定した
ところ、図3に示すように反応前のグラファイトに比較
して酸素の含有量が著しく増加したが、更にF原子,S
原子等のピークが検出されなかった。このことは、グラ
ファイト基板表面に形成されている高分子薄膜がポリテ
トラヒドロフランのみからなることを示す。走査型トン
ネル顕微鏡(STM)による観察の結果、作製された薄
膜は、広範囲にわたりポリテトラヒドロフランが規則的
に配列されたナノメータレベルの膜厚をもつ超薄膜であ
った。ポリテトラヒドロフラン薄膜の分子構造は、図4
に示すように、基板として使用したグラファイト表面に
おける原子構造の格子に良く対応していた。
【0033】実施例2:乾燥したCH2 Cl2 5mlで
エチレンオキサイド3.9mlを希釈し、窒素気流下で
フラスコに入れた。新たな劈開面を露出させた表面積1
0×20mm2のグラファイト基板を浸漬し、−63℃
の低温雰囲気でBF3 O (C25)2 を3滴加えた。十
分に撹拌した反応液を−63℃に2時間保持した後、自
然に室温まで戻した。12時間後にエタノールを加え、
エチレンオキサイドの重合反応を終了させた。そして、
フラスコからグラファイト基板を取り出し、エタノール
で十分洗浄した。
【0034】実施例1と同じ測定装置を使用してグラフ
ァイト基板を観察したところ、B原子,F原子等の吸収
を示すピークがX線光電子スペクトルにみられず、ポリ
エチレンオキサイド超薄膜が基板表面に形成されている
ことが判った。この超薄膜は、図5に示すように、バル
ク状の高分子化合物における螺旋構造とは異なり、トラ
ンス結合で構成され平坦に直線状に延びたエピタキシャ
ル成長構造をもっていた。
【0035】実施例3:オキシサイクロブタン20ml
を乾燥し、窒素気流下でフラスコに入れた。新たな劈開
面を露出させた表面積10×20mm2 のグラファイト
基板を浸漬し、−63℃の低温雰囲気で (C25)3
BF4 を3滴加えた。十分に撹拌した反応液を−63℃
に2時間保持した後、自然に室温まで戻した。12時間
後にエタノールを加え、エチレンオキサイドの重合反応
を終了させた。そして、フラスコからグラファイト基板
を取り出し、エタノールで十分洗浄した。
【0036】反応後のグラファイト基板を、実施例1と
同じ測定装置を使用して観察したところ、基板表面に高
分子薄膜の存在を検出することができなかった。しか
し、反応液中に、バルク状の高分子化合物が形成されて
いた。
【0037】そこで、重合反応を穏やかにするため、C
2 Cl2 で反応液を種々の濃度に希釈し、同様な実験
を繰り返した。その結果、オキシサイクロブタンモノマ
ーの濃度が50%以下になった反応液を使用した場合
に、エピタキシャル成長したポリサイクロブタンの高分
子超薄膜が観察された。
【0038】実施例4:106mgの水素化ナトリウム
(60%オイル溶液,2.7mモル)を窒素雰囲気中で
フラスコに入れ、ヘキサンによる洗浄を3回繰返し、ジ
メチレングリコールジメチルエーテル10ml及びε−
カプロラクタム3.0gを入れて溶解した。調製された
混合液に、新たな劈開面を露出させたグラファイト及び
N−アセチルカプロラクタム41mgを入れ、130〜
138℃で2時間反応させた。次いで、室温まで自然冷
却させ、エタノールを加えた。グラファイトをフラスコ
から取り出し、115℃の酢酸で3時間洗浄し、更に
水,THF,CH2 Cl2 等で洗浄した。
【0039】実施例1と同じ測定装置を使用してグラフ
ァイト基板を観察したところ、高分子に由来するO原子
及びN原子がXPSスペクトルにより、エチレン鎖の存
在がFTIRスペクトルにより確認された。しかし、N
a原子は、検出されなかった。得られた反応生成物は、
図6に示すSTM像をもっていた。また、図7に示すよ
うに、水素結合による二次元的な薄膜構造が観察され
た。
【0040】作製された高分子化合物薄膜は、何れもエ
ピタキシャル成長した特異な構造に由来し、溶媒に対す
る溶解度,分子配向性等の物性がバルク状高分子と著し
く異なっていた。そこで、これらの物性を活用した非線
形光学素子,フォトリフラクティブ素子等の有機光学素
子、量子細線,量子井戸等の有機電気素子、複合材料製
造用の表面修飾膜、バイオテクノロジーのための表面修
飾膜等として広範囲にわたる分野において機能性薄膜と
して使用が期待される。
【0041】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明において
は、単結晶面が露出した基板の表面近傍で重合反応を行
わせるとき、作製される高分子化合物薄膜の繰返し単位
構造や隣接高分子鎖の位置関係に応じた原子格子が表面
に露出する単結晶面をもつ固体基板を使用することによ
り、種々の高分子化合物薄膜をエピタキシャル成長させ
ている。得られた高分子化合物薄膜は、基板表面の規則
性が反映された分子構造をもつものとなる。この特異な
構造のため、種々な分野における機能性薄膜,表面修飾
膜等として利用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 グラファイト表面でエピタキシャル成長する
ポリエチレンオキシドのモデル
【図2】 ポリテトラヒドロフランで覆われたグラファ
イト基板表面からのFTIRスペクトル
【図3】 グラファイト基板を使用したXPSスペクト
ルであり、反応前のグラファイト(a),エピタキシャ
ル成長したポリテトラヒドロフランで覆われた反応後の
グラファイト(b)及びバルク重合されたポリテトラヒ
ドロフランで覆われた反応後のグラファイト(c)のX
PSスペクトルをそれぞれ示す。
【図4】 ポリテトラヒドロフラン超薄膜のSTM像
【図5】 ポリエチレンオキサイド超薄膜のSTM像
【図6】 ナイロン−6超薄膜のSTM像
【図7】 同じくナイロン−6超薄膜の高分子構造を示
すモデル
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成5年7月26日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図面の簡単な説明
【補正方法】削除 ─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成5年7月28日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図面の簡単な説明
【補正方法】追加
【補正内容】
【図面の簡単な説明】
【図1】 グラファイト表面でエピタキシャル成長する
ポリエチレンオキシドのモデル
【図2】 ポリテトラヒドロフランで覆われたグラファ
イト基板表面からのFTIRスペクトル
【図3】 グラファイト基板を使用したXPSスペクト
ルであり、反応前のグラファイト(a),エピタキシャ
ル成長したポリテトラヒドロフランで覆われた反応後の
グラファイト(b)及びバルク重合されたポリテトラヒ
ドロフランで覆われた反応後のグラファイト(C)のX
PSスペクトルをそれぞれ示す。
【図4】 ポリテトラヒドロフラン超薄膜のSTM像
【図5】 ポリエチレンオキサイド超薄膜のSTM像
【図6】 ナイロン−6超薄膜のSTM像
【図7】 同じくナイロン−6超薄膜の高分子構造を示
すモデル
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】追加
【補正内容】
【図2】
【図4】
【図1】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 単結晶面がでている表面層をもつ固体基
    板の表面近傍で高分子前駆体を重合して高分子化合物を
    エピタキシャル成長させることを特徴とする高分子化合
    物薄膜のエピタキシャル成長方法。
  2. 【請求項2】 固体基板としてグラファイトを使用する
    請求項1記載のエピタキシャル成長方法。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の高分子前駆体は、開環重
    合,付加重合等の重合反応でポリマー化される高分子化
    合物薄膜のエピタキシャル成長方法。
  4. 【請求項4】 製造される高分子化合物の構造上の繰返
    し単位及び隣接した高分子鎖間の位置関係が固体基板の
    表面層にある原子格子に整合する高分子前駆体を選び、
    該高分子前駆体を前記固体基板の表面近傍で重合し、高
    分子化合物をエピタキシャル成長させることを特徴とす
    る高分子化合物薄膜のエピタキシャル成長方法。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4記載のエピタキシャル成長
    した高分子薄膜が固体基板の表面に形成された後、未反
    応前駆体,バルク状の前記高分子化合物等を溶媒により
    洗浄除去することを特徴とする高分子化合物のエピタキ
    シャル成長層で修飾された固体基板の製造方法。
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