JPH06227896A - ダイヤモンドの合成方法 - Google Patents

ダイヤモンドの合成方法

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JPH06227896A
JPH06227896A JP1879093A JP1879093A JPH06227896A JP H06227896 A JPH06227896 A JP H06227896A JP 1879093 A JP1879093 A JP 1879093A JP 1879093 A JP1879093 A JP 1879093A JP H06227896 A JPH06227896 A JP H06227896A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 均質でかつ大型の単結晶ダイヤモンドを気相
合成によって得ることができるダイヤモンドの合成方法
を提供することである。 【構成】 本発明は、ダイヤモンドを気相より合成させ
るダイヤモンドの合成方法において、複数のダイヤモン
ド結晶板同士の結晶方位のずれをいかにして小さく抑え
て大型で良質のダイヤモンド膜を形成するかについて開
示する。本発明に従うダイヤモンドの合成方法では、自
形を呈するダイヤモンド単結晶1を成長面(100)面
1aに平行にスライスし、ダイヤモンド結晶板2を得
る。得られた複数のダイヤモンド結晶板2同士を自形面
(111)面で接触するように配置することでほぼ同一
の結晶方位[100]を示す面が平面状に繋がった一体
の気相成長用基板3を得る。この基板3上にダイヤモン
ドを気相成長させて一体のダイヤモンド膜を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ダイヤモンドの合成方
法に関し、特に切削工具、耐摩工具、精密工具、半導体
材料、電子部品、光学部品などに用いられる比較的大型
のダイヤモンド単結晶の合成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ダイヤモンドは、高硬度、高熱伝導率、
透明度などの数多くの優れた性質を有することから、各
種工具、光学部品、半導体、電子部品などの材料として
幅広く用いられており、今後さらにその重要性が増すも
のと考えられる。
【0003】ダイヤモンドは、これまでに知られている
物質中で最高の硬度を示すこと、電気的には非常によい
絶縁体であること、熱伝導率が大きく、高温で銅の5倍
程度の値を示すことなどの優れた性質を同時に有する。
【0004】また、ダイヤモンドは、赤外領域の一部を
除いて、紫外、可視、赤外線の広い波長領域にわたって
光の透過性がよく、さらに不純物の添加により半導体と
なるなどの特質を有する。
【0005】これらの性質を利用して、工具表面へのコ
ーティング、電子材料、特に高出力の半導体レーザに用
いられるLSIなどの放熱板などへのダイヤモンドの応
用が既に進められている。また、高温領域でも動作可能
な高温半導体としてのダイヤモンドの応用も考えられて
いる。
【0006】ダイヤモンドは過去には天然に産出するも
のが工業用途に使用されていたが、現在では人工的に合
成されたものが中心である。
【0007】ダイヤモンドの単結晶は現在工業的にはす
べてそれらが安定である数万気圧以上の圧力下で合成さ
れている。このような大きな圧力を発生する超高圧容器
は非常に高価であり、また容器の内容積には制限があ
る。このため大面積のダイヤモンド単結晶を成長させる
ことは非常に困難であり、単結晶ダイヤモンドを安価に
供給できない原因となっている。
【0008】一方、従来から気相合成法を用いて比較的
大面積のダイヤモンドが人工的に製造されてきたが、こ
れらはすべて多結晶薄膜からなり数十μm以上の厚さを
有する良質の単結晶ダイヤモンドは得られていない。
【0009】通常、ダイヤモンド薄膜を気相合成により
成膜する際には、基板に対して予めダイヤモンド粒によ
るスクラッチングが施されることが多い。スクラッチン
グによりダイヤモンド薄膜の成長が促進される効果はダ
イヤモンドの小結晶片が基板上に残り、これを種結晶と
してダイヤモンドが成長するためであると理解されてい
る。(S.Iijima,Y.Aikawa and
K.Baba:Appl.Phys.Lett.57
(1990)2646.)。スクラッチング後に基板上
に残されるダイヤモンド小結晶片は様々な方位を向いた
ものが混じっているため、これを種結晶として成長させ
たダイヤモンド薄膜は多結晶膜となる。
【0010】しかしながら、ダイヤモンドの用途の中で
も特に平滑な面を必要とする超精密工具や光学部品、半
導体などには、結晶方位が揃った単結晶ダイヤモンドを
用いることが不可欠である。そこで、従来から気相合成
法により大型でかつ単結晶のダイヤモンドをエピタキシ
ャル成長させる条件が検討されてきている。
【0011】ところが、これまでのところダイヤモンド
を異種基板上に気相合成法によりヘテロエピタキシャル
成長させる方法では、成功を見るに至っていない。これ
は、ダイヤモンドと異種基板との格子定数や熱膨張係数
が異なるために歪みが発生しやすく欠陥の多い単結晶し
か得られないことによる。そこで、ダイヤモンドを同種
のダイヤモンド基板上に気相合成法によりホモエピタキ
シャル成長させる技術が検討されてきている。
【0012】たとえば、特開平2−131994号に開
示されるように、高圧合成法によって得られたmmオー
ダーの単結晶ダイヤモンドを結晶方位を揃えて並べ基板
とし、その基板表面上に一体の単結晶ダイヤモンドを得
る方法がある。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな方法では、所望の結晶方位が成長面となるように単
結晶ダイヤモンドから結晶板を切出し、側面を成長面に
対して垂直となるように研磨したものを並べて配置し基
板として用いていたため、隣り合うダイヤモンド結晶板
の成長面に平行な面内における結晶方位にばらつきが生
じやすく、基板内の結晶方位を一方向に揃えることは困
難であった。
【0014】このため、基板表面上に気相合成によりダ
イヤモンド層をホモエピタキシャル成長させて一体のダ
イヤモンド単体を得ようとすると、各ダイヤモンド結晶
板上の成長層の接合部に多結晶成分が形成されたり、双
晶や欠陥も多くなる等という問題が生じてきた。
【0015】したがって、ダイヤモンド結晶板同士の結
晶方位のずれをいかに小さく抑えるかが重要な課題とな
っていた。
【0016】本発明は、上述の課題を解消するためにな
されたものであって、均質でかつ大型の単結晶ダイヤモ
ンドを気相合成によって得ることができるダイヤモンド
の合成方法を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明に従うダイヤモン
ドの合成方法は、ダイヤモンドを気相合成させる方法で
あって、高圧下で成長した自形を呈するダイヤモンド結
晶を、高圧下における成長時の成長面の一つに対して平
行に切断することで、複数のダイヤモンド結晶を製作
し、複数のダイヤモンド結晶同士をそれぞれに形成され
ている自形面で接触させることにより、複数のダイヤモ
ンド結晶の表面にそれぞれ現われ、成長面の一つと平行
でかつほぼ同一の結晶方位を示す複数の面が平面状に繋
がった集合面を形成し、集合面上にダイヤモンドを気相
成長させて一体のダイヤモンド膜を得ることを特徴とす
る。
【0018】本発明において「自形を呈するダイヤモン
ド結晶」とは、ダイヤモンドが外的条件に妨げられるこ
となく自由に成長した場合に、その結晶構造の対称性に
支配された固有の結晶面で完全に囲まれた結晶形態をと
るダイヤモンド結晶と定義することができる。
【0019】本発明において、高圧下で成長した自形を
呈するダイヤモンド結晶としては、天然ダイヤモンド結
晶および通常の超高圧合成法に従い50,000気圧以
上の圧力下で人工的に合成されたダイヤモンド結晶のい
ずれかを好ましく用いることができる。
【0020】通常、自形を呈するダイヤモンド結晶は、
たとえば、図1または図5に示すような6つの(10
0)面と8つの(111)面からなる多面体構造(本発
明においては、六八面体と呼ぶものとする)をとるもの
と考えられている。
【0021】本発明においては、高圧下における成長時
の成長面の一つに、以下の実施例に示すように、(10
0)面を選ぶことが最も好ましい。
【0022】ダイヤモンド結晶の成長面として(10
0)面は最も単純な構造をなしており、そのうえ比較的
加工性がよい。したがって、この面を成長面の一つに選
ぶことにより、切断による複数のダイヤモンド結晶の製
作をより容易にすることができるという利点がある。ま
た、(100)面を成長面の一つに選ぶことにより、複
数のダイヤモンド結晶の表面にそれぞれ現われ、成長面
の一つと平行でかつほぼ同一の結晶方位[100]を示
す複数の面が平面状に繋がった集合面を形成することが
できる。これにより、集合面上に表面が比較的平滑なダ
イヤモンド層を気相成長させることができる。
【0023】なお、ダイヤモンド単結晶の成長面の一つ
としては、(100)面以外にも(111)面を選ぶこ
ともできる。
【0024】本発明において、図1に示すような六八面
体のダイヤモンド結晶を成長面の一つである(100)
面に対して平行に切断することで、図2に示すような形
状の複数のダイヤモンド結晶を製作する場合には、たと
えば図3に示すように、2つのダイヤモンド結晶のうち
一方を反転させてそれぞれに形成されている自形面の一
つ(111)面で接触させることにより、複数のダイヤ
モンド結晶の表面にそれぞれ現われかつほぼ同一の結晶
方位[100]を示す複数の面が平面状に繋がった集合
面を形成することができる。
【0025】一方、図5に示すような六八面体のダイヤ
モンド結晶を成長面の一つである(100)面に対して
平行に切断することで、図6に示すような形状の複数の
ダイヤモンド結晶を製作する場合には、たとえば図7に
示すように、複数のダイヤモンド結晶同士をそれぞれに
形成されている自形面の1つ(100)面で接触させる
ことにより、複数のダイヤモンド結晶の表面にそれぞれ
現われかつほぼ同一の結晶方位[100]を示す複数の
面が平面状に繋がった集合面を形成することができる。
【0026】本発明において、ダイヤモンドを気相成長
させる方法として、たとえば、熱CVD法、プラズマC
VD法、マイクロ波CVD法、光CVD法およびレーザ
CVD法などのCVD法、スパッタリング、ならびにイ
オンビーム蒸着法などを挙げることができる。
【0027】原料ガスを分解励起してダイヤモンドを集
合面上に気相成長させる方法についてより具体的に列挙
すると、たとえば、(1)熱電子放射材を1500K以
上の温度に加熱して原料ガスを活性化する方法、(2)
直流波、交流波またはマイクロ波電界による放電を利用
する方法、(3)イオン衝撃を利用する方法、(4)レ
ーザなどの光を照射する方法、(5)原料ガスを燃焼さ
せる方法等がある。
【0028】ダイヤモンドを気相成長する際に使用する
原料物質には、炭素含有化合物が一般的に用いられる。
この炭素含有化合物は、好ましくは水素ガスと組合せて
用いられることが好ましい。また、必要に応じて、酸素
含有化合物および/または不活性ガスが原料ガス中に添
加されてもよい。
【0029】炭素含有化合物としては、たとえば、メタ
ン、エタン、プロパンおよびブタン等のパラフィン系炭
化水素、エチレン、プロピレンおよびブチレン等のオレ
フィン系炭化水素、アセチレンおよびアリレン等のアセ
チレン系炭化水素、ブタジエン等のジオレフィン系炭化
水素、シクロプロパン、チクロブタン、チクロペンタン
およびシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、シクロブタ
ジエン、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびナフタレ
ン等の芳香族炭化水素、アセトン、ジエチルケトンおよ
びベンゾフェノン等のケトン類、メタノールおよびエタ
ノール等のアルコール類、トリメチルアミンおよびトリ
エチルアミン等のアミン類、炭酸ガスならびに一酸化炭
素などを挙げることができる。これらは、1種を単独で
用いるこもできるし、2種類以上を併用することもでき
る。また、炭素含有化合物は、グラファイト、石炭、コ
ークス等の炭素原料のみからなる物質であってもよい。
【0030】原料ガスに添加される酸素含有化合物とし
ては、水素、水、一酸化炭素、二酸化炭素、または過酸
化水素が容易に入手できるゆえ好ましい。
【0031】原料ガスに添加できる不活性ガスとして
は、たとえば、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプト
ン、キセノン、またはラドンを用いることができる。
【0032】
【作用】高圧下で成長した自形を呈するダイヤモンド結
晶では、(100)面や(111)面のような特に低指
数の成長面において、原子レベルでの段差等のミクロな
欠陥はわずかに存在するものの、面方位のずれはほとん
ど見られない。
【0033】そこで、本発明に従うダイヤモンドの合成
方法では、まず高圧下で成長した自形を呈するダイヤモ
ンド結晶を、たとえば(100)面のような高圧下にお
ける成長時の低指数の成長面の一つに対して平行に切断
することで、面方位のずれの少ない複数のダイヤモンド
結晶を製作する。
【0034】このようにして得られる複数のダイヤモン
ド結晶は、そのダイヤモンド結晶表面にそれぞれ現わ
れ、成長面の一つと平行でかつほぼ同一の結晶方位[1
00]を示す複数の面を有する。
【0035】次に、複数のダイヤモンド結晶同士を、複
数のダイヤモンド結晶にそれぞれ形成されている自形面
すなわち成長面の一つまたは成長面の一つと平行でかつ
ほぼ同一の結晶方位[100]を示す複数の面以外の面
で接触させることにより、ほぼ同一の結晶方位[10
0]を示す複数の面が平面状に繋がった一体の集合面を
形成する気相成長用の基板を得ることができる。
【0036】基板を構成する複数のダイヤモンド結晶は
面方位の揃った自形面で面接触によって安定的に配置さ
れるので、ダイヤモンドを気相成長させる際に複数のダ
イヤモンド結晶間相互で相対的な位置ずれ等はほとんど
生じず、これにより集合面内における結晶方位のずれを
極めて小さく抑えることができる。
【0037】したがって、集合面上に気相合成によりダ
イヤモンドをエピタキシャル成長すれば、小傾角粒界の
みを有する大型の単結晶ダイヤモンド膜を一体的に形成
することができる。
【0038】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明
する。
【0039】実施例1 本実施例においては、図1に示すような高圧合成による
六八面体のIb型ダイヤモンド単結晶1を用意した。ダ
イヤモンド単結晶1をその成長面である(100)面1
aに平行にスライスし、図2に示すような厚み100μ
mのダイヤモンド結晶板2を得た。得られたダイヤモン
ド結晶板2の切断面の面方位と[100]とのずれは、
0.05度以内であることをX線回析により確認した。
【0040】(100)面1aおよび切断面を鏡面研磨
したダイヤモンド結晶板2を2枚準備し、一方のダイヤ
モンド結晶板を反転させ、図3に示すように2枚のダイ
ヤモンド結晶板2,2′を(111)面で接触するよう
に配置して気相成長用基板3とした。
【0041】公知のマイクロ波プラズマCVD法によっ
て、メタン3%、水素71%、酸素1%、アルゴン25
%となるように原料ガスを供給して、ガス圧力80To
rr、基板温度900℃の条件下で基板3上にダイヤモ
ンド薄膜の成長を500時間かけて行なった。
【0042】ダイヤモンドの成長後、基板3を取出して
調べたところ、基板3上には一体的に厚さ約500μm
のダイヤモンド薄膜が成長していた。
【0043】電子線回析を利用した測定法を用いて、配
置した2枚のダイヤモンド結晶板2,2′の面方位同士
のずれを調べたところ、0.05度以内に小さく抑えら
れていた。
【0044】一体化したダイヤモンド薄膜の成長面を鏡
面研磨し、さらに基板3部分を研磨により除去すること
で、図4に示すような厚み450μmの一体のダイヤモ
ンド単体4を得た。肉眼で観察したところ、2枚のダイ
ヤモンド結晶板2,2′上に成長したダイヤモンド薄膜
の接合面にはとくに強い反射等は見られなかった。
【0045】さらに、ダイヤモンド単体4からなる試料
表面を研磨してSTM(走査型トンネル電子顕微鏡)に
より表面を観察したところ、成長したダイヤモンド層の
接合部に小傾角粒界は存在するものの、多結晶成分やア
モルファス成分は存在しないことが確認された。
【0046】実施例2 本実施例においては、図5に示すような高圧合成による
六八面体のIb型ダイヤモンド単結晶5を用意した。ダ
イヤモンド単結晶5をその成長面である(100)面5
aに平行にスライスし、図6に示すような厚み150μ
mのダイヤモンド結晶板6を得た。得られたダイヤモン
ド結晶板6の切断面の面方位と[100]とのずれは、
0.1度以内であることをX線回析により確認した。
【0047】(100)面5aおよび切断面を鏡面研磨
したダイヤモンド結晶板6を9枚準備し、図7に示すよ
うにダイヤモンド結晶板6を(111)面で接触するよ
うに配置して気相成長用基板7とした。
【0048】公知のマイクロ波プラズマCVD法によっ
て、メタン5%、水素69%、酸素1%、アルゴン25
%となるように原料ガスを供給して、ガス圧力75To
rr、基板温度1050℃の条件下で基板7上にダイヤ
モンド薄膜の成長を500時間かけて行なった。
【0049】ダイヤモンドの成長後、基板7を取出して
調べたところ、基板7上には一体的に厚み約1000μ
mのダイヤモンド薄膜が成長していた。
【0050】電子線回析を利用した測定法を用いて、配
置した9枚のダイヤモンド結晶板6の面方位同士のずれ
を調べたところ、最大で0.2度と小さく抑えられてい
た。
【0051】一体化したダイヤモンド薄膜の成長面を鏡
面研磨し、さらに基板7部分を研磨により除去すること
で、厚み800μmの一体のダイヤモンド単体を得た。
肉眼で観察したところ、9枚のダイヤモンド結晶板6上
に成長したダイヤモンド薄膜の接合面にはとくに強い反
射等は見られなかった。
【0052】さらに、ダイヤモンド単体からなる試料表
面を研磨してSTMにより観察したところ成長したダイ
ヤモンド層の接合部には小傾角粒界は存在するものの、
多結晶成分やアモルファス成分は存在しないことが確認
された。
【0053】比較例 比較例においては、図8に示すように天然ダイヤモンド
を(100)面が成長面となり、側面がほぼ(110)
面となるように、縦3mm×横3mm×厚み1mmのサ
イズに成形研磨した市販のダイヤモンド基板8を4枚準
備した。
【0054】このダイヤモンド基板8の面方位と[10
0]とのずれは約3度であることをX線回析により確認
した。
【0055】図9に示すように、4枚のダイヤモンド基
板8を(110)面でほぼ接触するように縦横各2列に
配置して気相成長用基板9とした。
【0056】公知のマイクロ波プラズマCVD法によっ
て、実施例1と同様にメタン3%、水素71%、酸素1
%、アルゴン25%となるように原料ガスを供給して、
ガス圧力を100Torr、基板温度900℃の条件下
で基板9上にダイヤモンド薄膜の成長を500時間かけ
て行なった。
【0057】ダイヤモンドの成長後、基板9を取出して
調べたところ、基板9上には一体的に厚さ約450μm
のダイヤモンド薄膜が成長していた。
【0058】電子線回析を利用した測定法を用いて、配
置した4枚のダイヤモンド基板8の面方位同士のずれを
調べたところ、約3度であった。
【0059】一体化したダイヤモンド薄膜の成長面を鏡
面研磨し、さらに基板9部分を研摩により除去すること
で、厚み400μmの一体のダイヤモンド単体を得た。
肉眼で観察したところ、4枚のダイヤモンド基板8上に
成長したダイヤモンド層の接合面には褐色の層が形成さ
れていた。
【0060】さらに、ダイヤモンド単体からなる試料の
一部を研磨およびイオンミリングにより薄片化を行ない
TEM(透過型電子顕微鏡)により接合部を観察したと
ころ、成長したダイヤモンド層の接合部には厚さ100
nm〜1μmのアモルファス層が形成されていることが
確認された。
【0061】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、高圧下
で成長した自形を呈するダイヤモンド結晶から成長面に
一つに対して平行に切出された複数のダイヤモンド結晶
を用いてダイヤモンド結晶同士を自形面で接触させるこ
とにより、複数の面からなる集合面内における方位のず
れを極めて小さく抑えることができるので、集合面上に
気相合成によりダイヤモンドを成長させると、小傾角粒
界は存在するものの多結晶成分を一切含むことなく、集
合面上で互いに均質に融合し全体として一体をなす良質
で大面積のダイヤモンド単体を容易に得ることができ
る。
【0062】また、本発明では、ダイヤモンドの合成を
気相合成により行なうので、成長中のダイヤモンド結晶
に硼素元素や窒素元素等の不純物元素のドーピングを容
易に行なうことができる。したがって、本発明を、精密
工具刃先、耐摩工具、耐熱工具、半導体基板、放熱基
板、高圧半導体材料、光学材料、音響振動板等の用途に
適用できる種々のダイヤモンドの製造に幅広く応用する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】高圧条件下で成長した自形を呈するダイヤモン
ド結晶の一例を示す模式図である。
【図2】図1に示したダイヤモンド結晶から切出された
ダイヤモンド結晶を示す模式図である。
【図3】図2に示したダイヤモンド結晶からなる気相合
成用基板を示す模式図である。
【図4】図3に示した気相合成用基板上に合成されたダ
イヤモンド単体を示す模式図である。
【図5】高圧合成下で成長した自形を呈するダイヤモン
ド結晶のもう一つの例を示す模式図である。
【図6】図5に示したダイヤモンド結晶から切出された
ダイヤモンド結晶を示す模式図である。
【図7】図6に示したダイヤモンド結晶からなる気相合
成用基板を示す模式図である。
【図8】従来法に従い高圧条件下で成長した天然ダイヤ
モンド結晶から切出されたダイヤモンド結晶を示す模式
図である。
【図9】従来法に従い図8に示したダイヤモンド結晶か
らなる気相合成用基板を示す模式図である。
【符号の説明】
1,5 ダイヤモンド単結晶 1a,5a (100)面 2,2′,6 ダイヤモンド結晶板 3,7 気相成長用基板 4 ダイヤモンド単体 なお、各図中、同一符号は同一または相当部分を示す。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ダイヤモンドを気相合成させる方法であ
    って、 高圧下で成長した自形を呈するダイヤモンド結晶を、前
    記高圧下における成長時の成長面の一つに対して平行に
    切断することで、複数のダイヤモンド結晶を製作し、 前記複数のダイヤモンド結晶同士をそれぞれに形成され
    ている自形面で接触させることにより、前記複数のダイ
    ヤモンド結晶の表面にそれぞれ現われ、前記成長面の一
    つと平行でかつほぼ同一の結晶方位を示す複数の面が平
    面状に繋がった集合面を形成し、 前記集合面上にダイヤモンドを気相成長させて一体のダ
    イヤモンド膜を得ることを特徴とする、ダイヤモンドの
    合成方法。
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