JPH06218616A - エンドミル - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【構成】 工具本体１１の先端部に切屑排出溝１２が形
成され、その溝壁面１３と外周逃げ面１４との交差稜線
部に外周刃１５が形成されるとともに、溝壁面１３と先
端逃げ面１６との交差稜線部に底刃１７が形成されてい
る。溝壁面１３の先端には、底刃１７に沿って外周刃１
５から回転中心に向かうギャッシュ面１８が形成され、
このギャッシュ面１８が、工具本体１１の周方向に多段
に曲折する二つの平面１８ａ，１８ｂからより形成され
ている。これにより底刃１７も二つの切刃部１７ａ，１
７ｂから形成される。 【効果】 工具本体１１の先端外周部のコーナー部１９
等における刃先強度を確保しつつ、円滑な切屑排出を可
能とすることができる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、工具本体の先端部外周
に外周刃が形成されるとともに、この工具本体の先端に
は上記外周刃に連なる底刃が形成されたエンドミルに関
するものである。

【０００２】

【従来の技術】切削加工における溝削り加工や肩削り加
工には、超硬合金等の硬質材料から成り、その軸線回り
に回転される円柱軸状の工具本体の先端部外周に切屑排
出溝が形成され、この切屑排出溝の工具回転方向を向く
溝壁面と、工具本体の外周面との交差稜線部に外周刃が
形成されるとともに、この溝壁面と工具本体の先端面と
の交差稜線部に、上記外周刃の先端から工具本体先端の
回転中心に向かう底刃が形成されたエンドミルが用いら
れる。ここで、上記切屑排出溝の溝壁面は外周刃および
底刃のすくい面とされ、また工具本体の上記外周面は外
周刃の逃げ面（外周逃げ面）とされ、さらに工具本体の
上記先端面は底刃の逃げ面（先端逃げ面）とされる。

【０００３】ところで、このようなエンドミルでは、外
周刃と底刃とが交差する工具本体先端外周部のコーナー
部における刃先強度を確保したり、あるいは底刃によっ
て生成される切屑の排出を促進したりするために、上記
溝壁面の先端側の底刃に連なる部分を底刃に沿って全体
的に、あるいは部分的に平面状に一段削り落として、い
わゆるギャッシュ面を形成することが行なわれている。
図７ないし図１０は、このようなギャッシュ面１が形成
されたエンドミルの先端部を示すもので、図７および図
８は底刃２の全長に亙って溝壁面３先端にギャッシュ面
１が形成されている場合を、また図９および図１０は底
刃２の一部に沿ってギャッシュ面１が形成されている場
合を示すものである。なお、図中に符号４で示すのは当
該エンドミルの工具本体であり、同じく符号５は切屑排
出溝を、符号６は外周逃げ面を、符号７は外周刃を、符
号８は先端逃げ面を、さらに符号Ｏは工具本体４の軸線
を、それぞれ示すものである。また上記溝壁面３は、外
周刃７に正の径方向すくい角が与えられるように、工具
回転方向（図中矢線Ｔ方向）の後方側に凹む凹曲面状に
形成されている。

【０００４】ここで、図７および図８に示す例のエンド
ミルでは、ギャッシュ面１が工具本体４先端の工具回転
中心から底刃２の全長に亙って外周刃７に至るまで形成
されているので、底刃２と外周刃７とが交差するコーナ
ー部９は平面状に削り落とされたギャッシュ面１の角部
に形成されることとなり、これによりギャッシュ面１と
外周逃げ面６および先端逃げ面８とがなす交差角を大き
く設定し得て、各切刃２，７の該コーナー部９における
刃先強度を確保することができる。一方、図９および図
１０に示す例のエンドミルでは、ギャッシュ面１が上記
工具回転中心から底刃２の中途までしか形成されていな
いので、工具本体４の径方向においてこのギャッシュ面
１から溝壁面３に至る部分で底刃２が曲折せしめられる
こととなる。そして、これにより底刃２により生成され
る切屑Ｃは、生成の段階で図１０に示すように２つに分
断されてしまうので、良好な切屑の排出を促すことが可
能となる。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】このように、上記従来
のエンドミルによれば、そのギャッシュ面１を底刃２に
沿って適宜に形成することにより、それぞれに工具寿命
の延長や切屑排出性の向上を図って円滑な切削加工が可
能であるという利点を得ることができる。しかしなが
ら、これらのエンドミルでは、互いに他方のエンドミル
の有する利点を得ることは不可能であり、一方の利点を
得るためには他方の利点をある程度犠牲にせざるを得な
かった。

【０００６】すなわち、図７および図８に示したエンド
ミルでは、コーナー部９における切刃２，７の刃先強度
は確保されるものの、ギャッシュ面１が底刃２の全長に
亙って設けられているために該底刃２は一直線状に形成
されざるを得ず、このため底刃２によって生成される切
屑Ｃは図８に示すように幅広なものとなってしまい、切
屑排出性が著しく損なわれてしまう。一方、図９および
図１０に示したエンドミルでは、上述のように底刃２が
曲折するため切屑Ｃを分断せしめて良好な排出性を得る
ことはできるものの、底刃２と外周刃７とが交差するコ
ーナー部９にまでギャッシュ面１が延びていないため
に、このコーナー部９の近傍において底刃２や外周刃７
の刃先角をあまり大きくすることができず、刃先強度の
劣化を招いて欠損等が生じるおそれがある。

【０００７】従って、上記従来のエンドミルでは、切削
加工の条件に合わせて適当なエンドミルを選択するか、
あるいは切屑排出性や切刃の強度等のエンドミルの性能
に合わせて切削条件を設定しなければならず、一つのエ
ンドミルによって幅広い切削条件に対応することは困難
とされており、このため良好な切屑排出性を備えつつも
高い刃先強度を有する、上記２種のエンドミルの利点の
双方を兼ね備えた汎用性の高いエンドミルを要望する声
が高かった。本発明は、このような事情に鑑み、かかる
要望を満足させることを目的としてなされたものであ
る。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明は、このような課
題を解決して上記目的を達成するために、軸線回りに回
転される工具本体の先端部外周に切屑排出溝が形成さ
れ、この切屑排出溝の工具回転方向を向く溝壁面と、上
記工具本体の外周面との交差稜線部に外周刃が形成され
るとともに、上記溝壁面と上記工具本体の先端面との交
差稜線部には、上記外周刃の先端から上記工具本体先端
の回転中心に向かう底刃が形成されて成るエンドミルに
おいて、上記溝壁面の先端に、上記底刃に沿って上記工
具本体の外周から上記回転中心に向かうギャッシュ面を
形成し、このギャッシュ面を、上記工具本体の周方向に
多段に曲折する複数の平面、または曲面、または平面お
よび曲面により形成したことを特徴とする。

【０００９】

【作用】このような構成のエンドミルによれば、まずギ
ャッシュ面が工具本体先端の回転中心からみて工具本体
の外周に至るように形成されており、このため外周刃と
底刃とのコーナ部において両切刃の刃先角を確保するこ
とができ、刃先強度を維持して欠損等の防止を図ること
ができる。また一方、上記ギャッシュ面は、複数の面に
よって工具本体の周方向に多段に曲折するように形成さ
れているので、これに伴い底刃も同じく多段に曲折せし
められることとなる。そして、これにより、この底刃に
よって生成される切屑は、生成の段階においてその幅方
向に分断されてしまうので、円滑な切屑の排出を促すこ
とが可能となる。従って、本発明によれば、切刃の強度
を維持して工具寿命の延長を図りつつ、優れた切屑排出
性を得ることができ、上述した２種の従来のエンドミル
がそれぞれに有する利点を兼ね備えた汎用性の高いエン
ドミルを提供することが可能となる。

【００１０】

【実施例】図１ないし図３は、本発明の一実施例を示す
ものである。本実施例のエンドミルにおいて工具本体１
１は超硬合金等の硬質材料から形成されて略円柱の軸状
をなし、その先端部には工具本体１１の先端から基端に
向かって捩れ角αで螺旋状に捩れる２条の切屑排出溝１
２，１２が、工具本体１１の周方向に等間隔に形成され
ている。そして、この切屑排出溝１２の工具回転方向
（図中矢線Ｔ方向）を向く溝壁面１３と、工具本体１１
先端部の外周面（外周逃げ面）１４との交差稜線部に
は、外周刃１５が形成されている。また、この溝壁面１
３の先端には、工具本体１１の先端面（先端逃げ面）１
６との交差稜線部に、上記外周刃１５の先端から工具本
体１１先端の工具回転中心に向けて延びるように、底刃
１７が形成されている。

【００１１】ここで、本実施例ではこの底刃１７は、一
方の切屑排出溝１２の先端に形成される底刃１７の方
が、工具本体１１先端側からの正面視に上記工具回転中
心を越えて、他方の切屑排出溝１２先端の底刃１７より
も長くなるように形成されている。また、上記外周刃１
５は、切屑排出溝１２の捩れに応じて捩れて形成されて
おり、これによって外周刃１５には正のアキシャルレー
キ角αが与えられる。さらに、上記溝壁面１３は工具回
転方向後方側に凹む凹曲面として形成されており、これ
によって当該外周刃１５には、やはり正のラジアルレー
キ角が与えられている。

【００１２】そして、上記溝壁面１３の先端部には、底
刃１７に沿って工具本体１１の外周から上記工具回転中
心に向かって、該溝壁面１３が一段削り落とされるよう
にしてギャッシュ面１８が形成されている。従って上記
底刃１７は、実際にはこのギャッシュ面１８と上記先端
逃げ面１６との交差稜線部に形成されることとなる。ま
た上記外周刃１５についても、その先端部分はこのギャ
ッシュ面１８と上記外周逃げ面１４との交差稜線部に形
成されることとなる。さらに本実施例では、このギャッ
シュ面１８は、工具外周側に向かい工具本体１１の周方
向に曲折する二つの平面１８ａ，１８ｂによって形成さ
れている。ここでこれらの平面１８ａ，１８ｂは、工具
回転中心側に配置される平面１８ａに対して工具外周側
に配置される平面１８ｂが、工具外周側に向かうに従い
工具回転方向の後方側に向かうように、互いに鈍角をな
して交差せしめられている。しかして、これにより底刃
１７も工具本体１１の周方向に曲折して互いに鈍角に交
差する二つの切刃部１７ａ，１７ｂから形成されること
となる。

【００１３】また、これらの平面１８ａ，１８ｂは工具
本体１１の軸線Ｏ方向に関しては、上記溝壁面１３の軸
線Ｏに対する傾斜角、すなわち上記捩れ角αよりも、小
さな傾斜角φで傾斜するように形成されている。従っ
て、これらの平面１８ａ，１８ｂが先端逃げ面１６とな
す交差角は、上記溝壁面１３が先端逃げ面１６となす交
差角よりも大きくなる。さらに、上述のように平面１８
ａに対して平面１８ｂが鈍角に交差するように形成され
ているので、当該ギャッシュ面１８の工具外周側におい
て平面１８ｂと外周逃げ面１４とがなす交差角は、溝壁
面１３と外周逃げ面とがなす交差角よりも大きくなり、
これによって外周刃１５の先端部におけるラジアルレー
キ角δは負角側に設定されることとなる。

【００１４】このような構成のエンドミルでは、溝壁面
１３の先端に形成されるギャッシュ面１８の二つの平面
１８ａ，１８ｂが先端逃げ面１６に対して大きな交差角
で交差するように形成されているとともに、このうち工
具外周側に配置される平面１８ｂは外周刃１５に達して
外周逃げ面１４に対しても大きな交差角で交差するよう
に形成されており、すなわち底刃１７の刃先角および外
周刃１５の先端部における刃先角が大きく設定されるこ
ととなる。このため、上記構成のエンドミルによれば、
各切刃１５，１７に高い刃先強度を与えることができ、
特に脆弱となりがちな外周刃１５と底刃１７とが交差す
るコーナー部１９においても切刃の欠損等の事態が未然
に防止されて、工具寿命の延長を図ることが可能とな
る。

【００１５】一方、上記構成のエンドミルでは、ギャッ
シュ面１８が工具本体１１の周方向に曲折する二つの平
面１８ａ，１８ｂによって形成されることにより、底刃
１７も折れ線状に曲折する二つの切刃部１７ａ，１７ｂ
から形成される。従って、このような底刃１７により生
成される切屑Ｃは、図３に示すようにその生成の段階か
ら幅方向に分断された状態で流出することとなるので、
速やかな切屑処理が可能となり、円滑な排出を促すこと
が可能となる。このように本実施例によれば、上述した
２種の従来のエンドミルが有する利点の双方を同時に奏
し得て、工具寿命の延長を図りつつも良好な切屑排出性
を備えたエンドミルを提供することが可能となる。そし
てこれにより、従来のように切削条件に合わせたエンド
ミルの選択を強いられたり、あるいはエンドミルに合わ
せた切削条件の設定を強いられたりすることなく、一つ
のエンドミルで幅広い条件の切削を行なうことが可能と
なりエンドミルの汎用性の拡張を図ることができる。

【００１６】なお、本実施例ではギャッシュ面１８を工
具本体１１の周方向に曲折する二つの平面１８ａ，１８
ｂにより形成したが、これを例えば図４（イ）に示すよ
うに平面１８ｃと凹曲面１８ｄとにより形成したり、図
４（ロ）に示すように平面１８ｅ，１８ｆと凹曲面１８
ｇとにより形成したり、図４（ハ）に示すように３つ以
上の平面１８ｈ，１８ｉ，１８ｊ，１８ｋ…により形成
したり、あるいは図４（ニ）に示すように平面１８ｌ，
１８ｍと凸曲面１８ｎとにより形成したり、さらにはこ
れらを適当に組み合わせた構成としたりしてもよい。こ
こで、図４（イ）や（ハ）に示した例では外周刃の先端
部におけるラジアルレーキ角δは正角側に設定されるこ
ととなるが、各面１８ｃ，１８ｄや１８ｈ，１８ｉ，１
８ｊ，１８ｋと先端逃げ面１６との交差角をより大きく
設定することにより、コーナー部１９における刃先強度
は十分に確保することが可能である。しかも、逆にこれ
らの例では上記ラジアルレーキ角δを正角側に設定する
ことにより、外周刃１５に作用する切削抵抗の低減が図
られるという利点を得ることもできる。

【００１７】さらに、図１ないし図３に示した実施例で
は、本発明を２枚刃のエンドミルに用いた場合について
説明したが、本発明がこのような切刃の数に限定される
ことは勿論なく、例えば図５および図６に示すような４
枚刃のエンドミルや、それ以外の刃数のエンドミルに用
いることも可能である。なお、図４ないし図６において
は、図１ないし図３に示した実施例と同じ構成の部分に
ついては同一の符号を配して説明を省略してある。ま
た、図４においては工具本体の先端の先端逃げ面１６、
底刃１７、およびギャッシュ面１８のみが示されてい
る。

【００１８】

【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、外
周刃と底刃とを備えたエンドミルにおいて、これらの切
刃の刃先強度、特にこれらの切刃が交差する工具本体の
先端外周部のコーナー部における刃先強度を確保し、欠
損等の発生を抑えて工具寿命の向上を図りつつ、切屑を
その生成の段階から細かく分断して円滑な切屑排出を可
能とすることができる。そしてこれにより、一つのエン
ドミルで幅広い切削条件に対応し得る汎用性の高いエン
ドミルを提供することが可能となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例を示す側面図である。

【図２】図１に示す実施例の先端部の（イ）側面図、
（ロ）正面図、（ハ）上面図である。

【図３】図１に示す実施例による切削における切屑の生
成状態を示す正面図である。

【図４】図１に示す実施例の変形例を示す正面図である
（先端逃げ面１６、底刃１７、およびギャッシュ面１８
のみ記載）。

【図５】本発明の他の実施例を示す側面図である。

【図６】図５に示す実施例の正面図である。

【図７】従来のエンドミルの一例を示す（イ）側面図、
（ロ）正面図、（ハ）上面図である。

【図８】図７に示す従来のエンドミルによる切削におけ
る切屑の生成状態を示す正面図である。

【図９】従来の他のエンドミルの例を示す（イ）側面
図、（ロ）正面図、（ハ）上面図である。

【図１０】図９に示す従来のエンドミルによる切削にお
ける切屑の生成状態を示す正面図である。

【符号の説明】

１１ 工具本体 １２ 切屑排出溝 １３ 溝壁面 １４ 外周逃げ面 １５ 外周刃 １６ 先端逃げ面 １７ 底刃 １７ａ，１７ｂ 切刃部 １８ ギャッシュ面 １８ａ，１８ｂ ギャッシュ面１８を形成する面（平
面） １９ コーナー部 Ｏ 工具本体１１の軸線 Ｃ 切屑

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 軸線回りに回転される工具本体の先端部
   外周に切屑排出溝が形成され、この切屑排出溝の工具回
   転方向を向く溝壁面と、上記工具本体の外周面との交差
   稜線部に外周刃が形成されるとともに、上記溝壁面と上
   記工具本体の先端面との交差稜線部には、上記外周刃の
   先端から上記工具本体先端の回転中心に向かう底刃が形
   成されて成るエンドミルにおいて、 上記溝壁面の先端には、上記底刃に沿って上記工具本体
   の外周から上記回転中心に向かうギャッシュ面が形成さ
   れ、このギャッシュ面は、上記工具本体の周方向に多段
   に曲折する複数の平面、または曲面、または平面および
   曲面により形成されていることを特徴とするエンドミ
   ル。