JPH062154B2 - リン酸カルシウム系物質コーティング用粉体、コーティング方法及び複合生体セラミックス - Google Patents

リン酸カルシウム系物質コーティング用粉体、コーティング方法及び複合生体セラミックス

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JPH062154B2 JP63077779A JP7777988A JPH062154B2 JP H062154 B2 JPH062154 B2 JP H062154B2 JP 63077779 A JP63077779 A JP 63077779A JP 7777988 A JP7777988 A JP 7777988A JP H062154 B2 JPH062154 B2 JP H062154B2
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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、リン酸カルシウム系物質コーテイング用粉
体、コーテイング方法及び複合生体セラミックスに関す
る。この生体セラミックスは高強度を有し、かつ生体親
和性に優れ、人工骨材などとして有用である。
従来の技術 サフアイア、アルミナ焼結体などのセラミックスは、高
強度を有する上、生体に対して毒性がないので、人工歯
根や人工骨などの生体セラミックスとして利用が計られ
ている。しかしながら、これらの材料は、生体組織に対
して不活性であるために、新生骨との結合能がなく、ま
た被包化(異物膜)が生じやすいので長期間にわたって
生体内に埋入することができないという欠点がある。
一方、水酸アパタイトやリン酸三カルシウムなどのリン
酸カルシウム系物質は、骨、歯などの生体無機質の主成
分であるので、生体に対する安全性、骨との結合性、新
生骨との置換性などの優れた生体親和性を有しているも
のの、リン酸カルシウム系物質の実用に供しうる高強度
セラミックス焼結体は得られていない。
このような事情に下、サフアイア、アルミナ焼結体など
の高高度セラミックス表面にリン酸カルシウム系物質を
コーテイングした生体親和性を有する複合材が要望され
ている。
従来、このような生体セラミックス表面へのリン酸カル
シウム系物質コーテイング方法としては、溶射法、スパ
ッタリング法、スラリー法などが知られている。溶射法
は、リン酸カルシウム系物質粉末を高温の火炎中で溶解
し、高速で基材に吹き付ける方法であるが、このもの
は、高温を必要とするために、リン酸カルシウム系物質
の分解や結晶構造の変化等をひき起こすという欠点があ
る。スパッタリング法は基材表面にリン酸カルシウム系
物質をスパッタリングする方法であるが、このものは高
真空下で行う必要があるために、生産性が低く、製造原
価が高くなるのを免れない。スラリー法は、基材にリン
酸カルシウム系物質スラリーをスプレーしたのち、乾
燥、焼結する方法であるが、このものは、基材とコーテ
イング層との密着性が十分でないという欠点がある。
発明が解決しようとする課題 本発明は、このような従来の欠点を克服し、簡単で、安
価な工業に適したリン酸カルシウム系物質コーテイング
方法、そのコーテイング用粉体及びその方法によって得
られた生体親和性に優れた医用材料としての複合生体セ
ラミックスを提供することを目的としてなされたもので
ある。
課題を解決するための手段 本発明者らは、前記目的を達成すべく種々研究を重ねた
結果、アルミナ、シリカ、リン酸カルシウム系物質を所
定の割合で混合調製したコーテイング用粉体を用いて、
スラリーや膜状体のようなコーテイング用物を得、これ
らにより生体セラミックスの表面を処理し、次いで熱処
理することにより、生体セラミックス上にリン酸カルシ
ウム系物質を融着させることを見出し、この知見に基づ
いて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、アルミナとシリカとを重量比1:
2〜1:4で混合した粉末に10〜60重量%のリン酸
カルシウム系物質を配合したリン酸カルシウム系物質コ
ーテイング用粉体、前記リン酸カルシウム系物質コーテ
イング用粉体から得られたコーテイング用物で生体セラ
ミックスの表面を処理したのち、熱処理することを特徴
とするリン酸カルシウム系物質コーテイング方法及び前
記方法によりリン酸カルシウム系物質をコーテイングし
た複合生体セラミックスを提供するものである。
本発明のコーテイング用粉体を調製するには、先ず、ア
ルミナとシリカとを重量比1:2〜1:4、特に1:3
で混合することが必要である。これよりもアルミナの量
が多くなると密着性が低下するし、また、これよりも少
なくなると基材との反応性が低下するのを免れない。次
いで、得られた混合粉末に10〜60重量%、好ましく
は20〜50重量%のリン酸カルシウム系物質を配合す
ることから成る。これよりもリン酸カルシウム系物質の
量が多くなると強度が不十分となるし、また、これより
も少なくなるとリン酸カルシウム系物質の望ましい性
質、例えば人工骨材としての生体親和性が低下するのを
免れない。
本発明に用いる生体セラミックスとしては、例えばα-
アルミナのようなアルミナ、サフアイア、部分安定化ジ
ルコニア、安定化ジルコニアのようなジルコニア系セラ
ミックス、チタニアなどが挙げられ、特にアルミナやサ
フアイアやジルコニア系セラミックスが構造材として強
度や靭性が大きく、しかも安定性が高いので好ましい。
さらにこの生体セラミックスは一部をち密にすることに
より、一層強度や靭性が増大する。
本発明に用いるリン酸カルシウム系物質としては、例え
ば水酸アパタイト、リン酸三カルシウムなどが好ましく
用いられる。
このリン酸カルシウム系物質として水酸アパタイトを用
いる場合には、このものは乾式法又は湿式法による合成
アパタイトでもよいし、各種脊椎動物の骨、歯から回収
された生体アパタイトでもよい。例えば、乾式法として
は900〜1300℃の高温下の水蒸気気流中で多孔質リン酸
カルシウムと過剰のCaOを反応させる方法等が挙げられ
る。
次に、本発明方法においては、このようなコーテイング
用粉体を用いて、スラリーや膜状体のようなコーテイン
グ用物を得、これらにより生体セラミックスの表面を処
理し、次いで熱処理することが必要である。
このような表面の処理法としては、例えば、生体セラミ
ックスの表面にコーテイング用粉体のスラリーを塗布す
る、生体セラミックスをコーテイング用粉体のスラリー
中に浸漬する、生体セラミックスの表面にコーテイング
用粉体から形成された膜状体を密着させるなどの一般的
な方法が用いられる。スラリーとしては、スプレー塗布
に適した水性スラリーが好ましい。
このような処理後の熱処理方法としては、900〜2000℃
好ましくは1000〜1500℃で焼成する方法などが用いられ
る。この際、熱処理は加圧することなく行えるし、また
例えばホットプレス法のように加圧して行うこともでき
る。
本発明方法の熱処理過程においては、十分な融着が行わ
れる。すなわち、熱処理初期にコーテイング用粉体中と
アルミナ、シリカ、リン酸カルシウム系物質は液相を生
じ、被コーテイング材の生体セラミックスと十分に接触
させることができる。さらに液相中でアルミナとリン酸
カルシウム系物質は反応してリン酸アルミニウムを生成
する。この生成したリン酸アルミニウムは、未反応のリ
ン酸カルシウム系物質に固溶することによって被コーテ
イング材とリン酸カルシウム系物質との密着を強固に
し、さらに熱処理後の冷却過程でアルミナ、シリカ及び
リン酸カルシウム系物質から成る系の液相の結晶化を促
進し、コーテイング用粉体層の生体内耐久性を高める。
本発明の生体セラミックスにおいては、コーテイングの
厚さが通常、0.01〜10mmの範囲のものであり、
0.1〜2.0mm、特に0.2〜1.0mmの範囲のもの
が好ましい。コーテイングの厚さが、これよりも厚くな
ると強度が不十分となるし、また、これよりも薄くなる
とリン酸カルシウム系物質の望ましい性質、例えば人工
骨材としての生体親和性が低下するのを免れない。
本発明の複合生体セラミックスは、例えば、人工骨、人
工歯根や人工関節等の人工骨材などに用いて好適であ
り、従来の生体セラミックスの場合と同様の手段で生体
内に嵌値することができる。
発明の効果 本発明方法は、十分な融着により生体セラミックス表面
にリン酸カルシウム系物質をコーテイングすることがで
き、簡単、安価で、工業化に適するという顕著な効果を
奏する。
本発明方法で得られた複合生体セラミックスは高強度を
有し、かつ生体親和性に優れ、人工骨材などとして有用
である。
特に、多孔質生体親和性のものを用いたものは、生体内
に嵌値すると容易に新生骨と置換しうるので、整形外科
や歯科や口腔外科の治療用材料として好適に利用しう
る。
[実施例] 次に実施例によって本発明をさらに詳細にせ説明する。
実施例1 アルミナとシリカとを重量比1:3に混合した粉末にリ
ン酸三カルシウム粉末を20%配合したコーテイング用
粉体を5%含有する水性スラリーを、アルミナ焼結体に
スプレー法で塗布し、乾燥した後、1250℃で1時間
熱処理した。このようにして得られたα-アルミナ焼結
体表面は、厚さ0.3mmのリン酸カルシウム系物質層に
よってコーテイングされていた。
実施例2 実施例1において、リン酸三カルシウムの配合率を50
%に代え、コーテイング用粉体を厚さ1mmの加圧成形膜
としたものをアルミナ焼結体に密着させて行った以外
は、実施例1と同様にして処理して、厚さ0.8mmのリ
ン酸カルシウム系物質層でコーテイングされたα-アル
ミナ焼結体を得た。
参考例1 実施例1において、コーテイング用粉体にリン酸三カル
シウムを含有しない粉末を用いた以外は、実施例1と同
様にして処理したが、コーテイング層はアルミナ焼結体
に全く密着しなかった。
参考例2 実施例1において、コーテイング用粉体に200重量%
のリン酸三カルシウム粉末を配合した以外は実施例1と
同様にして処理したが、コーテイング層はアルミナ焼結
体に全く密着しなかった。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アルミナとシリカとを重量比1:2〜1:
    4で混合した粉末に10〜60重量%のリン酸カルシウ
    ム系物質を配合したリン酸カルシウム系物質コーテイン
    グ用粉体。
  2. 【請求項2】特許請求の範囲第1項記載のコーテイング
    用粉体から得られたコーテイング用物で生体セラミック
    スの表面を処理したのち、熱処理することを特徴とする
    リン酸カルシウム系物質コーテイング方法。
  3. 【請求項3】特許請求の範囲第2項記載の方法によりリ
    ン酸カルシウム系物質をコーテイングした複合生体セラ
    ミックス。
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