JPH0557013A - ＴｉまたＴｉ合金製複合インプラントおよびその製造法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 歯科および整形外科の分野で使用される生体
親和性に優れたＴｉまたはＴｉ合金製複合インプラント
およびその製造法を提供する。 【構成】 ＴｉまたはＴｉ合金製インプラント本体の表
面に、燐酸カルシウム系セラミックス粗粉末または顆粒
が一部露出するように埋め込まれているＴｉまたはＴｉ
合金製複合インプラント、および燐酸カルシウム系セラ
ミックス粗粉末または顆粒が鋳型のキャビティ内面に一
部突出露出するように埋込まれて保持されている鋳型に
ＴｉまたはＴｉ合金を鋳込むＴｉまたはＴｉ合金製複合
インプラントの製造法。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、歯科および整形外科
の分野で使用される生体親和性に優れたＴｉまたはＴｉ
合金製複合インプラントおよびその製造法に関するもの
である。

【０００２】

【従来の技術】一般に、人工関節、人工歯根などの生体
に埋設されるインプラントは、例えば、ステンレス鋼、
Ｃｏ−Ｃｒ合金、ＴｉまたはＴｉ合金などの耐蝕性に優
れた金属または合金で製造されている。

【０００３】その中でもＴｉまたはＴｉ合金は、軽量で
人体組織および体液に対する耐蝕性は優れており、さら
に人体組織に対して炎症、過敏症、アレルギー症などの
原因となることがないところからインプラント材料とし
て特に適していることも知られている。

【０００４】しかしながら、ＴｉまたはＴｉ合金製イン
プラントは、他の金属または合金製インプラントと同様
に長期の生体親和性に劣っている。そのためＴｉまたは
Ｔｉ合金製インプラント本体の表面に生体親和性に優れ
たハイドロキシアパタイトまたは燐酸３カルシウムなど
の燐酸カルシウム系セラミックス層を溶射または焼結に
より被覆したＴｉまたはＴｉ合金製複合インプラントも
提供されている（特公昭５８−３９５３３号広報参
照）。

【０００５】上記燐酸カルシウム系セラミックス層は、
ＴｉまたはＴｉ合金製インプラント本体の表面に対する
密着性が悪く、そのためにいろいろな工夫が成されてい
る。例えば、特開昭６３−１６０６６６号公報には、
Ｗ、Ｍｏ、Ｇｅなどの金属を被覆したセラミックス粒を
用意し、この金属被覆したセラミックス粒をＴｉまたは
Ｔｉ合金製インプラント本体の表面に溶着し、この溶着
した金属被覆セラミックス粒の表面を研磨して中のセラ
ミックスを露出せしめ、上記露出したセラミックス面に
ハイドロキシアパタイトまたは燐酸３カルシウムなどの
燐酸カルシウム系セラミックス層を被覆したＴｉまたは
Ｔｉ合金製複合インプラントが記載されている。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】上記ＴｉまたはＴｉ合
金製複合インプラントは、燐酸カルシウム系セラミック
ス層とＴｉまたはＴｉ合金製インプラントとの間にＷ、
Ｍｏ、Ｇｅなどの金属を介在させることによりＴｉまた
はＴｉ合金製インプラントに対する燐酸カルシウム系セ
ラミックス層の密着性が大幅に改善されたが、その製造
工程は複雑であり、コストのかかるものであった。

【０００７】

【課題を解決するための手段】そこで、本発明者らは、
低コストでしかもＴｉまたはＴｉ合金製インプラント本
体の表面にに燐酸カルシウム系セラミックスが強固に密
着したＴｉまたはＴｉ合金製インプラントを開発すべく
研究を行った結果、燐酸カルシウム系セラミックス粗粉
末または顆粒を鋳型の内部に保持しておいた鋳型の内部
にＴｉまたはＴｉ合金溶湯を鋳込むことにより製造され
た、ＴｉまたはＴｉ合金製インプラント本体の表面に燐
酸カルシウム系セラミックス粒子または顆粒が一部露出
するように埋め込まれているインプラントは、Ｔｉまた
はＴｉ合金と燐酸カルシウム系セラミックス粗粉末また
は顆粒との境界にチタン酸カルシウム層が形成されとと
もにアンカー効果も伴って、ＴｉまたはＴｉ合金インプ
ラント本体と燐酸カルシウム系セラミックス粗粉末また
は顆粒との結合を一層強固なものとし、製造コストも少
なく、さらに生体親和性も優れている、という知見を得
たのである。

【０００８】この発明は、かかる知見に基づいて成され
たものであって、（１）ＴｉまたはＴｉ合金製インプラ
ント本体の表面に、燐酸カルシウム系セラミックス粗粉
末または顆粒が一部露出するように埋め込まれているＴ
ｉまたはＴｉ合金製複合インプラント、（２） 上記燐
酸カルシウム系セラミックス粗粉末または顆粒の一部露
出面は、上記ＴｉまたはＴｉ合金製インプラント本体の
表面と同一平面を成すように研磨されているＴｉまたは
Ｔｉ合金製複合インプラント、（３） 燐酸カルシウム
系セラミックス粗粉末または顆粒が鋳型のキャビティ内
面に一部突出露出するように埋込まれて保持されている
鋳型にＴｉまたはＴｉ合金を鋳込むＴｉまたはＴｉ合金
製複合インプラントの製造法、に特徴を有するものであ
る。

【０００９】上記燐酸カルシウム系セラミックス粗粉末
または顆粒は、粒径が１ｍｍ以上、好ましくは１ｍｍ〜
２．５ｍｍの範囲内の所定の粒径を有するハイドロキシ
アパタイトまたは燐酸３カルシウムの粒子または顆粒で
あることが好ましい。

【００１０】

【実施例】次に、この発明のＴｉまたはＴｉ合金製複合
インプラントおよびその製造法を図面を用いて説明す
る。

【００１１】実施例１ まず、図１に示されるような、Ｔｉ合金製人工股関節と
同一形状の臘型１を作製した。一方、燐酸３カルシウム
粗粉末として、湿式合成した燐酸カルシウム粉末を温
度：８００℃で約３時間仮焼後、湿式ボールミルにて約
１０時間粉砕し、バインダーを加え、スラリー中に分散
し、それをスプレードライすることによって得られる粉
末を造粒あるいは金型プレスで成形後、大気中、温度：
８００℃で仮焼し、さらに温度：１２００℃で焼成する
ことにより、丸みのある粒径：１〜２．５ｍｍの範囲内
の燐酸３カルシウム粗粉末を用意した。

【００１２】上記燐酸３カルシウム粗粉末を加熱し、上
記臘型１の表面に上記加熱した燐酸３カルシウム粗粉末
２をふりかけたのち、臘型１の表面に付着した燐酸３カ
ルシウム粗粉末２を押つけるか、あるいは上記燐酸３カ
ルシウム粗粉末を幾何学的配置に保持する凹部をもつ保
持具を用意し、保持具ごと加熱し、上記臘型１の表面に
押し付けることにより図２および図２のＩＩＩ−ＩＩＩ
断面図である図３に示されるような燐酸３カルシウム粗
粉末２が一部突出露出し、一部臘型１内に埋込まれてい
る複合臘型３を作製した。

【００１３】この複合臘型３を、シリカ・フラワをエチ
ルシリケートの水溶液に混ぜて泥状とした被覆剤中に浸
漬し、乾燥させた後、水分を３０％含んだアルミナ：２
０％、残部：ジルコニアからなる鋳型剤を被覆し、バッ
クアップ用充填剤を流し込み、充填剤が固まった後、加
熱して臘型１の臘を溶かし出すと、図４の断面図に示さ
れるように、鋳型のキャビティ５内面に燐酸３カルシウ
ム粗粉末２が一部突出露出し一部埋込まれている精密鋳
造鋳型４がえられる。

【００１４】この精密鋳造鋳型４に温度：１８００℃の
Ｔｉ−６％Ａｌ−４％ＶのＴｉ合金溶湯をＡ方向から鋳
込むと、図５に示されるような、Ｔｉ合金人工股関節本
体６の表面に燐酸３カルシウム粗粉末２が一部突出露出
し一部埋込まれているＴｉ合金製複合人工股関節を製造
することができる。

【００１５】燐酸３カルシウム粗粉末の粒径が小さい場
合は、燐酸３カルシウム粗粉末２が一部突出露出し一部
埋込まれているＴｉ合金製複合人工股関節をそのまま使
用することができるが、燐酸３カルシウム粗粉末２の粒
径が大きい場合は、突出し部を研磨し、図６に示される
ように、Ｔｉ合金製人工股関節本体６の表面と同一平面
を成すようにする方が好ましい。

【００１６】上記Ｔｉ合金精密鋳造に際して、Ｔｉ合金
溶湯が燐酸３カルシウム粗粉末２に接触し、上記Ｔｉ合
金溶湯が固まるまでに、Ｔｉ合金と燐酸３カルシウムと
の境界に図７にしめされるようなチタン酸カルシウム層
７が形成され、このチタン酸カルシウム層７がＴｉ合金
インプラント本体６と燐酸３カルシウム粗粉末２との結
合を一層強固なものにするのである。したがって、この
発明のＴｉ合金製複合人工股関節の本体は、Ｔｉ合金と
することが必要である。

【００１７】このようにして得られたこの発明のＴｉ合
金製複合人工股関節を曲げ加工し、燐酸３カルシウム粗
粉末の脱落を調べたが、脱落は認められかった。

【００１８】実施例２ 燐酸カルシウム系セラミックス粗粉末として粒径：１〜
２．５ｍｍのハイドロキシアパタイト顆粒を用意し、こ
のハイドロキシアパタイト顆粒を鋳型内に一部突出露出
した精密鋳造鋳型を実施例１と同様にして作製し、この
精密鋳造鋳型に温度：１８００℃の純Ｔｉ溶湯を鋳込む
ことにより、図５と同一形状を有する純Ｔｉ人工股関節
本体の表面にハイドロキシアパタイト顆粒が一部突出し
一部埋め込まれている純Ｔｉ製複合人工股関節を製造
し、純Ｔｉ製複合人工股関節を曲げ加工し、ハイドロキ
シアパタイト顆粒の脱落を調べたが、脱落は認められな
かった。

【００１９】実施例３ Ｔｉ合金製人工歯根と同一形状の人工歯根臘型を用意
し、さらに、実施例１と同様にして粒径：１ｍｍ〜１．
５ｍｍの範囲内の燐酸３カルシウム粗粉末を作製した。

【００２０】上記燐酸３カルシウム粗粉末を加熱し、上
記人工歯根臘型の表面に上記加熱した燐酸３カルシウム
粗粉末をふりかけたのち、人工歯根臘型の表面に付着し
た燐酸３カルシウム粗粉末を押つけることにより実施例
１と同様にして燐酸３カルシウム粗粉末が一部突出露出
するように埋込まれている人工歯根複合臘型を作製し
た。

【００２１】この人工歯根複合臘型を用い、実施例１と
同様にして、鋳型内部に燐酸３カルシウム粗粉末が一部
突出露出し一部埋め込まれている精密鋳造鋳型がえられ
る。

【００２２】この精密鋳造鋳型に温度：１８００℃のＴ
ｉ−６％Ａｌ−４％ＶのＴｉ合金溶湯を鋳込むと、Ｔｉ
合金人工歯根本体の表面に燐酸３カルシウム粗粉末が一
部突出し一部埋め込まれているＴｉ合金製複合人工歯根
を製造し、突出し部を研磨し、図８に示されるような、
Ｔｉ合金製人工歯根本体の表面と同一平面を成すＴｉ合
金製複合人工歯根を製造することができる。

【００２３】上記精密鋳造に際して、Ｔｉ合金溶湯が燐
酸３カルシウム粗粉末に接触し、上記Ｔｉ合金溶湯が固
まるまでに、Ｔｉ合金と燐酸３カルシウムとの境界にチ
タン酸カルシウム層が形成され、Ｔｉ合金人工歯根本体
８と燐酸３カルシウム粗粉末２との結合を一層強固なも
のとなることも実施例１と同様である。

【００２４】このようにして得られたこの発明のＴｉ合
金製複合人工歯根を曲げ加工し、燐酸３カルシウム粗粉
末の脱落を調べたが、脱落は認められなかった。

【００２５】

【発明の効果】この発明は、ＴｉまたはＴｉ合金を燐酸
カルシウム系セラミックス粗粉末または顆粒が鋳型のキ
ャビティ内面に一部突出露出するように埋込まれて保持
されている鋳型に鋳造するだけで、ＴｉまたはＴｉ合金
製インプラント本体の表面に、燐酸カルシウム系セラミ
ックス粗粉末または顆粒が一部露出するように強固に埋
込まれているＴｉまたはＴｉ合金製複合インプラントを
従来よりもコストを安く簡単に製造することができ、医
療産業上優れた効果を奏するものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】人工股関節の臘型の側面図である。

【図２】燐酸３カルシウム粗粉末が一部突出露出し一部
臘型内に埋込まれている複合臘型の側面図である。

【図３】図２のＩＩＩ−ＩＩＩ断面図である。

【図４】鋳型のキャビティ内面に燐酸３カルシウム粗粉
末が一部突出露出し一部埋込まれている精密鋳造鋳型の
断面図である。

【図５】Ｔｉ合金人工股関節本体の表面に燐酸３カルシ
ウム粗粉末が一部突出露出し一部埋込まれているＴｉ合
金製複合人工股関節の側面図である。

【図６】Ｔｉ合金人工股関節本体の表面に燐酸３カルシ
ウム粗粉末が一部露出し一部埋込まれているＴｉ合金製
複合人工股関節の側面図である。

【図７】図６のＶＩＩ−ＶＩＩ断面図である。

【図８】Ｔｉ合金製複合人工歯根の側面図である。

【符号の説明】

１ 臘型 ２ 燐酸３カルシウム粗粉末 ３ 複合臘型 ４ 精密鋳造鋳型 ５ キャビティ ６ Ｔｉ合金人工股関節本体 ７ チタン酸カルシウム層 ８ Ｔｉ合金製複合人工歯根本体

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ＴｉまたはＴｉ合金製インプラント本体
   の表面に、燐酸カルシウム系セラミックス粗粉末または
   顆粒が一部露出するように埋込まれていることを特徴と
   するＴｉまたはＴｉ合金製複合インプラント。
2. 【請求項２】 上記燐酸カルシウム系セラミックス粗粉
   末または顆粒の一部露出面は、上記ＴｉまたはＴｉ合金
   製インプラント本体の表面と同一平面を成すように研磨
   されていることを特徴とする請求項１記載のＴｉまたは
   Ｔｉ合金製複合インプラント。
3. 【請求項３】 上記燐酸カルシウム系セラミックスは、
   ハイドロキシアパタイトまたは燐酸３カルシウムである
   ことを特徴とする請求項１または２記載のＴｉまたはＴ
   ｉ合金製複合インプラント。
4. 【請求項４】 燐酸カルシウム系セラミックス粗粉末ま
   たは顆粒が鋳型のキャビティ内面に一部突出露出するよ
   うに埋込まれて保持されている鋳型にＴｉまたはＴｉ合
   金を鋳込むことを特徴とするＴｉまたはＴｉ合金製複合
   インプラントの製造法。