JPH0621321B2 - 低温靭性にすぐれた溶接用鋼とその製造方法 - Google Patents

低温靭性にすぐれた溶接用鋼とその製造方法

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JPH0621321B2
JPH0621321B2 JP63013761A JP1376188A JPH0621321B2 JP H0621321 B2 JPH0621321 B2 JP H0621321B2 JP 63013761 A JP63013761 A JP 63013761A JP 1376188 A JP1376188 A JP 1376188A JP H0621321 B2 JPH0621321 B2 JP H0621321B2
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康人 深田
裕一 小溝
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【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、溶接部靭性を考慮した鋼とその製造方法、特
に従来に比較してC 量を高くしたにも関わらず溶接部靭
性を改善した鋼とその製造方法に関する。
(従来の技術) オイルショック以降の経済環境の変化により、溶接性、
溶接部靭性を考慮した性能のよい経済的な低温用鋼が要
求されるようになってきた。
従来、中、高C 鋼は、溶接性が悪く、上記要求を満足す
ることができず、したがって、C 量を低減させマイクロ
アロイの添加により鋼材の性能を改善してきた。特に、
ラインパイプ用鋼にてそのような方法が適用されてき
た。
事実、例えば特開昭57-140858号、同60-204863号、同60
-245768号、溶接性を考慮した鋼材のC 含有量の上限
は、ほぼ0.15%とされていた。同様な傾向は、その他特
開昭56-102551号、同59-35619 号、同61-270333号にも
見られる。
しかし、C 含有量を低減させるには、C含有量の低い原
料、良質なスクラップの使用、あるいは転炉製鋼時の吹
錬時間を長くする必要がある等、経済的でない面が多
く、製造コストの上昇は免れない。
(発明が解決しようとする課題) そこで、本発明の目的は、従来の底C 材よりC量を上昇
させた場合の鋼材に見られる上記問題点を解決する手段
を検討し、HAZ(熱影響部)靭性の優れた、しかも溶接
低温割れの起こりにくい鋼材とその製造方法を提供する
ことである。
すなわち、従来、特にラインパイプ用鋼の溶接性を考慮
してC量を0.15未満に抑えられていた鋼材に代えて、そ
の経済性を考慮してC:0.20 %超0.27%以下と従来に
なくC量を上昇させるとともに、HAZ 靭性に優れ、かつ
溶接低温割れの起こりにくい低温用鋼とその製造方法を
提供することである。
(課題を解決するための手段) 本発明者らは上述の課題を達成すべく種々検討を重ねた
ところ、次のような知見を得た。
(1)C量の増加により、強度は上昇するが、C量のみの
増加であればHAZ 靭性は単調に劣化する。
(2)HAZ 靭性改善方法として、劣化の主因子である島状
マルテンサイトを低減させること、および粗大な粒界フ
ェライトの生成を抑制することが重要である。
(3)その手段として、Si、Mn、およびAlの添加量を従来
鋼より少なく抑える、Ti-Nの添加バランスを限定し、
TiN粒子を有効に微細分散させることが有効である。
かくして、本発明の要旨とするところは、重量%で、 C :0.20 %超0.27%以下、 Si: 0.01〜0.15%、 Mn: 0.4 〜1.25%、 Ti: 0.004 〜0.027 % N : 0.0015〜0.007 %、Al: 0.001 〜0.015 % O : 0.005 %以下、 Feおよび不可避不純物 : 残部 より成る組成を有するとともに Ti/N = 1〜5、C +Si/30 +Mn/6≦0.44% なる関係を満足する鋼組成を有する低温靭性にすぐれた
溶接用鋼であり、またそのような鋼組成(ただしC:0.
15〜0.27%を有する鋼を、1280℃〜Ac3 点に加熱し、こ
れに圧延加工を施し、850 〜680 ℃にて圧延を終了し、
圧延終了温度から少なくとも500 ℃以下までを50℃/sec
以下の冷却速度で冷却することを特徴とする、溶接熱影
響部の低温靭性に優れた溶接用鋼の製造方法である。
本発明にかかる前記鋼はさらに、 Nb: 0.005 〜0.04%、 および/または B : 0.0003〜0.0013% をさらに含むものであってもよく、あるいは、さらに、
所望により、 Cu: 0.7 %以下、 Ni: 1.0 %以下、 Cr: 1.0 %以下、 Mo: 0.5 %以下、および V : 0.07%以下 のうちの少なくとも1種または2種をさらに含むもので
あってもよい。
かくして、本発明により得られた鋼は、溶接低温割れ感
受性が、従来の溶接性を考慮した低温用鋼と比較して同
等かそれ以上に優れている。
しかも、本発明により得られる鋼は、従来の溶接性を考
慮した低温用鋼と比較してC 量が多く、鋼材の強度上昇
が容易で他の成分を添加することなく、圧延方法、主に
冷却方法を一部変更するだけで40kgf/mm2から80kgf/mm2
級の高張力鋼までの製造が非調質で可能となり、また、
破壊発生特性の観点より高張力鋼においても降伏比、つ
まりYR( 降伏応力/引張応力) の低い鋼(例えばYR≦85
%) の製造が容易である。
(作用) 次に、本発明にあって鋼組成、製造条件を上述のように
限定した理由を述べる。なお、本明細書にあって、特に
ことわりがない限り、「%」は「重量%」である。
C: 鋼材の強度確保に有効であるが、0.27%を超えるとその
他の成分を種々制限しても優れたHAZ 靭性を確保するこ
とはできない。溶接性のみからは低C 程有効であるが、
経済性を考慮して、下限を0.20%超に設定するが、製造
方法の場合にはC:0.15〜0.27%とする。なお、従来、
この種の鋼材でC:0.15%以上のものはなかった。好ま
しくは、製造方法としては、 C:0.15 〜0.21%である。
Si: Siは鋼の脱酸材として有効である。そのため、0.01%未
満では脱酸効果が不十分である。一方、Siはセメンタイ
ト中に固溶しにくくセメンタイト析出が抑制されるため
高含有量の場合、島状マルテンサイトが多く生成し、HA
Z 靭性が劣るため、Siは≦0.10と低いほうが好ましい
が、靭性が顕著に劣化しない範囲として上限を0.15%に
設定した。
Mn: Mnは強度確保に有効であり、強度、靭性(母材)の確保
のためには0.4 %以上必要とする。一方、1.25%を超え
ると、C を従来より多く含有する本発明鋼においてHAZ
は焼き入れ性が高くなり、その靭性が著しく劣化するた
め、その含有量を0.4〜1.25%とした。
Ti: Tiは鋼中で酸化物、窒化物を形成し、オーステナイト粒
の粗大化を防止するとともに、HAZ において溶接熱サイ
クルの冷却過程でフェライトの析出核として作用し、組
織の微細化を実現するなど靭性面において有効な元素で
ある。しかし、TiNを形成するなどN量とも深く関係
し、添加量を誤ると靭性が著しく劣化する。したがっ
て、Ti0.004 %未満では靭性改善に必要なTiN形成が不
足する。Ti0.027 %超では鋼材の靭性劣化が見られる。
N: Nは上述のようにTiとともにTiNを形成し、HAZ靭性改善
効果に有効である、しかし、0.0015%未満ではTiN数減
少により効果がなく、一方、溶接数によりTiNは一部溶
解し、ボンド部でTiN数が減少し、固溶Nが増加し、靭
性劣化するが、この傾向は0.007 %を越えると著しくな
る。望ましくは0.005 %以下である。ここに、本発明に
おけるTiNの上述のような効果は、特に、Ti/Nが1〜5
の範囲ではじめてなし得るものであることがわかった。
したがって、本発明にあってはTi/Nを1〜5に制限す
る。
Al: Alは脱酸剤として有効である。しかし、0.001%未満で
は脱酸不足となり、一方、0.015 %超では上記成分限定
範囲内においてもHAZ 靭性改善効果が不十分となる。
O(酸素): 酸素は0.005 %を越えて含まれると鋼中の清浄性に悪影
響がでてくることから、酸素含有量を0.005 %以下とし
た。
C、Si、Mn合計量: 本発明によれば、上述の組織限定に加えて、C+Si/30+Mn
/6≦0.44%の関係式を満足しなければならない。これは
従来の方法に比較して本発明によればC量を高めている
ためそれにより十分な強度が確保できることから、同じ
く強度改善効果のあるSi、Mn量を抑えるとともにそれら
が存在することにより生成しやすくなる島状マルテンサ
イトの生成抑制を図るものである。好ましくは、C+Si/3
0+Mn/6≦0.40%である。
次に、本発明においてNb、Bは任意添加成分として用いら
れるが、その限定理由は次の通りである。
Nb: Nbは鋼材の強靭化に有効であり、細粒化効果を呈すが、
0.005%未満では効果なく、一方、0.04 %超ではこれま
での成分との組合せにおいてHAZ靭性が劣化する。
B: 鋼の焼入性を増して、強度・靭性を改善する作用がある
が、HAZ 靭性の観点からは、その含有量をできるだけ抑
える必要がある。しかし、上記成分との組合せにおいて
微量の添加はHAZ 靭性に有害性はなく、強度上昇に効果
がある。本発明では必要により0.0003〜0.0013%添加す
る。
同様に、本発明にあって下記成分も任意添加成分として
加えられる。
Cu、Ni、Mo、V: いずれも強度上昇に有効であるが、添加量が多いと靭性
・溶接性に悪影響を及ぼす。そこで上限を、それぞれ、
0.7 %、1.0 %、1.0 %、0.5 %、0.07%とした。
すでに述べたように、本発明にあっては圧延に際しても
微細フェライトの生成を確保するのであって、そのため
の加工条件の限定理由は次の通りである。
圧延加熱温度: Ac3 点未満では完全にオーステナイト化されない。一
方、1280℃超ではオーステナイト粒の粗大化が生じる。
圧延仕上温度: 850 ℃超では加工にる微細化が不十分で安定して高靭性
が得られず強度バラツキが大となる。一方、680 ℃未満
ではフェライトに加工を加えることになり、加工歪みが
残ったままとなり母材靭性が劣化する。
冷却条件: 50℃/sec超では焼入れ組織となり所要靭性が得られな
い。なお、500 ℃超で冷却を停止すると冷却の効果が得
られない。
次に、実施例によって本発明をさらに具体的に説明す
る。
実施例1 第1表に示す鋼1〜25(Ac3点:771〜856 ℃) を圧延加
熱温度1100℃、仕上温度720 ℃で熱間圧延を行い、その
後450 ℃まで15℃/secの冷却速度で冷却し、以下放冷
し、厚さ12、20、30mmの各鋼板を得た。それぞれX開先に
よる両面各一層溶接を行った。溶接材料は母材の強度に
みあった市販のものを使用した。このときの溶接方法お
よび溶接条件を第2表にまとめて示す。なお表中の電
流、電圧の欄に示すLおよびTはleadおよびtrailの略
である。
第1図は溶接ボンド部に切欠きを有するシャルピー試験
片の採取様子を示す説明図である。HAZは点線で示す。
結果をまとめて第3表に示す。ここでシャルピー吸収エ
ネルギ値は3ヶの最低値を示す。
第2図(a)および(b)は、本発明例1および比較例6にお
いてそれぞれ得られた鋼を45kJ/cmの入熱量で溶接した
例のHAZ のミクロ組織を示す。第2図(c)および(d)はそ
れぞれ第2図(a)および(b)の拡大図である。本発明によ
れば微細組織が得られるのが分かる。特に、拡大図によ
れば一層明瞭である。
次に、第3表のデータをTi、N含有量についてまとめて
第3図にグラフで示す。溶接入熱45kJ/cm のとき、vE
-45 ≧10kgf-mが得られる領域をプロットすると、Ti/
N: 1〜5の範囲でこれを満足することが分かる。な
お、図中、丸の中の数字はvE-45 (kgf-m)の値を示す。
同様に第4図には{C+Si/30+Mn/6}の値とvE-45の値と
の関係をグラフで示す。
実施例2 第1表の鋼1、3、6、13、26から実施例1に示した圧
延条件で板厚20mmの鋼板を製造し、溶接低温割れ性を調
べた結果を第4表に示す。
ここで鋼1、3は本発明例、鋼6、13は比較例、鋼26は
従来例である。
これは鉄研式斜めy形溶接割れ試験(JIS Z-3158)で得た
もので、溶接条件は150A-20V -10cm/minで溶接棒は低水
素系を用いた。また、溶接は湿度70%一定とし室温を0
℃、50℃と一定に保った恒温恒湿槽内で行った。
実施例3 第1表の鋼17(本発明例)、鋼23(比較例)を実施例1
に示した圧延条件で冷却条件を種々変更し、母材性能を
調査した。なお板厚は20mmであった。結果は第5表にま
とめて示す。
実施例4 第1表の鋼17(Ac3点817℃)を種々の圧延条件で板厚20m
mに仕上げ母材性能を調査した。
結果は第6表にまとめて示す。高Cであるにもかかわら
ず、本発明の製造条件によれば十分満足のゆく低温靭性
が得られることが分かる。
(発明の効果) 以上詳述したように、本発明によれば、従来になくC量
を上昇させた鋼においても他成分のコントロールによ
り、HAZ 靭性はもとより低温割れ性も改善された経済的
な鋼であって、最近の鋼材に対して要求される材質特性
をも十分満足する鋼材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、シャルピー試験片の採取様子を示す説明図; 第2図(a)から(d)は、本発明例および比較例で得られる
鋼の顕微鏡金属組織を示す写真;および 第3図および第4図は、実施例1の結果を示すグラフで
ある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭57−140858(JP,A) 特開 昭59−13021(JP,A) 特開 昭60−204863(JP,A) 特開 昭60−245768(JP,A) 特開 昭61−238940(JP,A) 特開 昭62−20822(JP,A) 特開 平1−180948(JP,A)

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、 C : 0.20%超0.27%以下、Si: 0.01〜0.15%、 Mn: 0.4〜1.25%、 Ti: 0.004〜0.027 % N : 0.0015〜0.007 %、Al: 0.001〜0.015 % 0 : 0.005 %以下、 Feおよび不可避不純物 : 残部 より成る組成を有するとともに Ti/N = 1〜5、C +Si/30 +Mn/6≦0.44% なる関係を満足することを特徴とする、溶接熱影響部の
    低温靭性に優れた溶接用鋼。
  2. 【請求項2】前記鋼がさらに、重量%で、 Nb: 0.005 〜0.04%、 および/または B : 0.0003〜0.0013% をさらに含む、ことを特徴とする請求項(1)記載の溶接
    熱影響部の低温靭性に優れた溶接用鋼。
  3. 【請求項3】前記鋼がさらに、重量%で、 Cu: 0.7 %以下、 Ni: 1.0 %以下、 Cr: 1.0 %以下、 Mo: 0.5 %以下、および V : 0.07%以下 のうちの少なくとも1種または2種をさらに含むことを
    特徴とする、請求項(1)または(2)に記載の溶接熱影響部
    の低温靭性に優れた溶接用鋼。
  4. 【請求項4】下記(i)〜(iii)のいずれかに記載さ
    れた組成を有する鋼を、1280℃〜Ac3 点に加熱し、これ
    に圧延加工を施し、 850 〜680 ℃にて圧延を終了し、
    圧延終了温度から少なくとも500 ℃以下までを50℃/se
    c以下の冷却速度で冷却することを特徴とする、溶接熱
    影響部の低温靭性に優れた溶接用鋼の製造方法。 (i)重量%で、 C : 0.15〜0.27%、 Si: 0.01〜0.15%、 Mn: 0.4〜1.25%、 Ti: 0.004〜0.027 %、 N : 0.0015〜0.007 %、Al: 0.001〜0.015 %、 O : 0.005 %以下、 Feおよび不可避不純物 : 残部 より成る組成を有するとともに Ti/N =1〜5、C +Si/30 +Mn/6≦0.44% なる関係を満足する組成。 (ii) Nb: 0.005〜0.04%、および/または B : 0.0003 〜0.0013% をさらに含む(i)の組成。 (iii) Cu: 0.7%以下、 Ni: 1.0 %以下、 Cr: 1.0%以下、 Mo: 0.5 %以下、 および V : 0.07%以下 のうちの少なくとも1種または2種をさらに含む (i)または(ii)の組成。
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