JPH06212180A - 潤滑膜及びその製造方法 - Google Patents

潤滑膜及びその製造方法

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JPH06212180A
JPH06212180A JP18365193A JP18365193A JPH06212180A JP H06212180 A JPH06212180 A JP H06212180A JP 18365193 A JP18365193 A JP 18365193A JP 18365193 A JP18365193 A JP 18365193A JP H06212180 A JPH06212180 A JP H06212180A
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chemical adsorption
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規央 美濃
Kazufumi Ogawa
小川  一文
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 潤滑膜を必要とする基体の少なくとも一方の
表面に、長鎖状分子をシロキサン結合などで化学結合さ
せた化学吸着膜2を形成し、さらにその上に化学吸着膜
の累積膜3,4を設けることにより、滑走耐久性、走行
性、耐摩耗性に優れ、それを長期間維持することができ
る潤滑膜を得る。 【構成】 基体1の表面の活性水素基を利用し、例えば
ジメチルシリル基を有するシラン系化学吸着剤と反応さ
せる。脱塩化水素反応により、前記化学吸着剤が共有結
合(SiO−)を介して化学吸着膜2が形成される。次
に酸化処理、アルカリ処理、エネルギー線照射処理など
をしてジメチルシリル基を水酸基、イミノ基などの活性
水素基に変え、再度前記化学吸着剤を接触させ累積膜
3,4とする。その上に長鎖炭化水素化合物を物理吸着
させても良い。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、潤滑性を必要とする基
体表面の潤滑表面形成に関するものであり、特に、自己
潤滑性を有する潤滑膜に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、潤滑性を付与した部材の利用が盛
んである。機構部品内の摺動部材(シャフト、ベアリン
グ、クランクなど)、記録部材(磁気テープ、磁気ディ
スク、光磁気ディスクなど)がその一例である。ここで
は、潤滑性を付与する従来技術として磁気記録媒体の例
を用いて説明する。ポリエステルフィルム等にフェライ
ト粉末等の磁気材料を溶剤と共に塗布する磁気テープ等
の塗布型磁気記録媒体に代わって、メッキ法、スパッタ
リング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等の方
法によって、強磁性金属薄膜を非磁性支持体上に設けた
磁気記録媒体が、高密度磁気記録媒体として研究されて
いる。
【0003】しかしながら、前記した方法で作られた強
磁性金属薄膜を用いた磁気記録媒体は、その耐摩耗性及
びその走行性に問題がある。すなわち、磁気記録媒体は
磁気信号の記録、再生の過程において、磁気ヘッドとの
高速相対運動の下におかれる。このとき、磁気記録媒体
の走行が円滑でかつ安定な状態で行われなければならな
い。しかしながら、前記方法で作られる強磁性金属薄膜
は、磁気記録、再生の過程の過酷な条件に耐えることが
できず、磁気ヘッド等の摩擦によって走行が不安定にな
ったり、長時間走行させた場合には摩耗したり、破損し
たり、摩耗粉の発生によって著しく出力が低下すること
があった。そのため、潤滑剤を磁気記録媒体表面に形成
する必要があった。また、高記録密度化を図るため、表
面はいっそう平滑であることが望まれている。ビデオテ
ープの磁性層の表面荒さは、現在中心線平均荒さで約
0.02ミクロンメーターであるが、さらに高密度記録
行うためには、一桁下げる努力が行われている。表面性
が良くなるほどヘッドとの実効的な接触面積が増加し摩
擦係数が上昇する。そのため、より良い潤滑剤が求めら
れている。
【0004】潤滑剤は、テープの摩擦係数を下げ、走行
性を良くする目的で使用され、潤滑剤とバインダーとの
相溶性、塗膜中での移行性を考慮して選択される。潤滑
剤としては、長鎖炭化水素化合物が主として用いられ、
その中に各種の潤滑剤が混合されることもある(株式会
社リアライズ社発行「電気材料のトライポロジー」第1
85頁)。以上が、磁気記録媒体を例にした従来の潤滑
に関する技術である。その他セラミック、金属、樹脂、
木材、繊維、紙、無機物なの潤滑に関する技術も上記と
同様である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
固体潤滑剤は均一に塗布することが困難で、使用されな
くなってきている。また液体潤滑剤は、スピンコートや
ディッピングによって潤滑膜を形成するが、その膜厚は
薄くても5ナノメーター程度あり、高密度化、高容量化
するため、磁気ヘッドにより接近させる場合は、この液
体潤滑膜では限界がある。また、液体潤滑剤であるため
に磁気記録媒体表面に付与した微細な凹凸のうち、凹部
に潤滑液がたまり易く、ヘッドと磁気記録媒体の接触に
よる摩耗を潤滑膜によって低減すべき凸部に潤滑膜がほ
とんどない状態となっていた。また、液体潤滑剤は、供
給量の正確な制御が困難で、供給量が多いと液体が飛散
し、記録の読み書きに欠落を生じる問題があった。した
がって、潤滑膜としての要求が満たされていなかった。
【0006】本発明は、前記従来技術を解決するため
に、膜厚がナノメーター程度の薄い均一な潤滑膜を化学
結合を介して累積形成することによって、滑性耐久性、
走行性、耐摩耗性に優れ、かつ自己潤滑性を有する潤滑
膜及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するた
め、本発明の第1番目の潤滑膜は、基体の少なくとも一
方の表面に、炭素鎖有機分子を含む化学吸着膜が基体表
面と共有結合によって形成され、その表面に単官能Z−
結合(ただし、ZはSi,Ti,Snから選ばれる少な
くとも一つの元素)を介して炭素鎖有機分子を含む化学
吸着膜が累積形成されているという構成を備えたもので
ある。
【0008】次に本発明の第2番目の潤滑膜は、基体の
少なくとも一方の表面に、シロキサン結合を含むシロキ
サン系化学吸着膜が基体表面と共有結合によって形成さ
れ、その表面に炭素鎖有機分子を含む化学吸着膜が基体
表面と共有結合によって形成され、その表面に単官能S
i−結合を介して炭素鎖有機分子を含む化学吸着膜が累
積形成されているという構成を備えたものである。
【0009】前記構成においては、累積形成された化学
吸着膜の最外層に炭素鎖を含む有機化合物が物理吸着さ
れていると、潤滑性をさらに向上できる。また前記構成
においては、化学吸着膜の化学結合が、前記(化1),
(化2),(化3)から選ばれる少なくとも一つの結合
であると、安定な共有結合を形成できる。
【0010】また前記構成においては、化学吸着膜の累
積膜の少なくとも表面を構成する長鎖有機分子が、フッ
化炭素基を含むと、潤滑性をさらに向上できるほか、撥
水性なども向上する。
【0011】また前記構成においては、化学吸着膜を構
成する炭素鎖有機分子の炭素数が、8以上30以下であ
ると、基体と実質的に垂直方向に配向できるので好まし
い。また前記構成においては、基体がセラミック、金
属、樹脂、木材、繊維、紙、無機物、情報記録媒体層で
あると、化学吸着膜を形成しやすいので好ましい。
【0012】また前記構成においては、化学吸着膜を構
成する炭素鎖有機分子が、側鎖を有していると、化学吸
着分子の配向性が向上できる。また前記構成において
は、化学吸着膜を構成する炭素鎖有機分子の前記長鎖有
機分子が、2種類以上の分子の混合物であると、潤滑性
がさらに向上する。
【0013】また前記構成においては、物理吸着させた
有機化合物が、長鎖炭化水素、長鎖炭化水素系脂肪酸、
脂肪酸エステル、シリコン誘導体、脂肪酸塩、脂肪酸ア
ミド、フッ素化炭素誘導体から選ばれる少なくとも1種
類であると、潤滑性がさらに向上できる。
【0014】次に本発明の第1番目の潤滑膜の製造方法
は、基体上に潤滑膜を製造する方法であって、基体の少
なくとも一方の表面に炭素鎖有機分子を含む化学吸着化
合物を接触させて基体表面と低分子脱離反応を起こさせ
化学吸着膜を形成し、次に前記化学吸着膜の表面に活性
水素基を導入し、次に分子末端が単官能Z−X化合物
(ただし、ZはSi,Ti,Snから選ばれる少なくと
も一つの元素、Xはハロゲン元素)を接触させて前記活
性水素基と低分子脱離反応を起こさせ化学吸着累積膜を
少なくとも1層形成することを特徴とする。
【0015】次に本発明の第2番目の潤滑膜の製造方法
は、基体上に潤滑膜を製造する方法であって、基体の少
なくとも一方の表面にシロキサン結合を含むシロキサン
系化学吸着化合物を接触させて基体表面と低分子脱離反
応を起こさせシロキサン系化学吸着膜を形成し、前記シ
ロキサン系化学吸着膜の表面に炭素鎖有機分子を含む化
学吸着化合物を接触させてと低分子脱離反応を起こさせ
化学吸着膜を形成し、次に前記化学吸着膜の表面に活性
水素基を導入し、次に分子末端が単官能Z−X化合物
(ただし、ZはSi,Ti,Snから選ばれる少なくと
も一つの元素、Xはハロゲン元素)を接触させて前記活
性水素基と低分子脱離反応を起こさせ化学吸着累積膜を
少なくとも1層形成することを特徴とする。
【0016】前記構成においては、活性水素基を導入す
る手段が、エネルギー照射、酸化処理、アルカリ処理か
ら選ばれる少なくとも一つの手段であると、効率よく活
性水素基を導入できる。
【0017】また前記構成においては、シロキサン系化
学吸着膜、その表層の化学吸着膜、または化学吸着累積
膜のいずれかを形成する際、低分子脱離反応の工程の
後、非水系有機溶液を用いて未反応化学吸着剤を除去
し、単分子化学吸着膜を形成すると、膜の厚さが均一な
化学吸着膜を形成できる。
【0018】また前記構成においては、累積形成された
化学吸着膜の最外層に炭素鎖を含む有機化合物をコーテ
ィングして物理吸着させこ、潤滑性をさらに向上でき
る。また前記構成においては、シロキサン系化学吸着化
合物がテトラクロロシラン、トリクロロシラン、SiC
3 −(O−SiCl2 n −O−SiCl3 (nは0
及び正の整数)から選ばれる少なくとも1種類である
と、活性水素基を効率よく、かつ増加させて形成でき、
化学吸着膜を高密度に形成できる。
【0019】また前記構成においては、シロキサン系化
学吸着膜、その表層の化学吸着膜、または化学吸着累積
膜のいずれかを形成する工程が、化学吸着化合物の溶液
に浸漬する工程、またはその蒸気中に接触させる工程で
あると、効率よく化学吸着膜を形成できる。
【0020】また前記構成においては、シロキサン系化
学吸着膜、その表層の化学吸着膜、または化学吸着累積
膜のいずれかを形成する工程が、相対湿度35%以下で
あると、化学吸着分子の加水分解を防ぐことができて好
ましい。とくに好ましい相対湿度は5%以下である。
【0021】また前記構成においては、活性水素基が、
水酸基、アミノ基の水素、イミノ基の水素、カルボキシ
ル基の水素、チオール基の水素、カルボニル基のアルフ
ァ位の水素、シアノ基のアルファ位の水素、ニトロ基の
アルファ位の水素、2重結合のアルファ位の水素、ベン
ジル位の水素、スルフォン酸基の水素、スルフィン酸基
の水素、リン酸基の水素であることが好ましい。
【0022】また前記構成においては、エネルギー照射
に用いるエネルギー線がX線、電子線、ガンマ線から選
ばれる少なくとも一つであることが好ましい。
【0023】
【作用】前記本発明の第1番目の潤滑膜の構成によれ
ば、基体の少なくとも一方の表面に、炭素鎖有機分子を
含む化学吸着膜が累積形成されているので、膜厚がナノ
メーター程度の薄い均一な潤滑膜とすることができる。
また、滑性耐久性、走行性、耐摩耗性に優れ、かつ自己
潤滑性を有する潤滑膜とすることができる。
【0024】次に本発明の第2番目の潤滑膜の構成によ
れば、基体の表面の化学吸着累積膜の密度を高め、より
緻密化した化学吸着膜を累積形成できる。さらに本発明
の好ましい構成によれば、累積形成された化学吸着膜の
最外層に炭素鎖を含む有機化合物が物理吸着されている
ので、さらに自己潤滑性に優れる。一例として、磁気記
録媒体の少なくとも一方の表面に酸素原子、硫黄原子、
窒素原子を介して化学結合した化学吸着膜の累積膜を形
成し、その表面に有機分子の物理吸着膜を形成した場合
は、摺動部(例えば磁気記録媒体では、磁気ヘッド)や
走行中に接触する各種部材等との摩擦によって、前記化
学吸着膜が削り落とされることなく、滑性耐久性、走行
性、耐摩耗性の優れた潤滑膜が得られる。また、膜厚が
ナノメーターレベルのきわめて薄い膜であるから、本来
の部材の機能を損なうことがない。
【0025】
【実施例】化学吸着膜は、基体表面の水酸基、アミノ
基、イミノ基、カルボキシル基、チオール基、カルボニ
ル基のアルファ位、シアノ基のアルファ位、ニトロ基の
アルファ位、2重結合のアルファ位、ベンジル位、スル
フォン酸基、スルフィン酸基、リン酸基の活性な水素と
化学吸着分子のハロゲン化シラン基、ハロゲン化チタ
ン、ハロゲン化スタニルのハロゲンとの脱ハロゲン酸反
応によって、または、基体表面の金属原子と化学吸着分
子のシラノール基との配位結合によって生じる。この化
学吸着膜は、単分子膜を形成するため、その膜厚は極め
て一様で、化学吸着膜を形成している炭化水素基の数を
変えることによってコントロールできる。炭化水素基数
が20の時、その膜厚は、約2.5ナノメートルとなる
ことがエリプソメトリー及びX線光電子分析法(XP
S)によって測定された。化学吸着膜の分子の配向性
は、接触角計によって測定から推測できる。末端トリフ
ッ化炭素基を末端に有する化学吸着膜の場合、膜の表面
エネルギーは、15ミリニュートン/メートルと非常に
低い値となった。この結果は、膜表面にトリフッ化炭素
基が一様に露出していることを示唆しており、このこと
から膜の配向性が良いことが分かった。
【0026】累積膜形成は、例えば−SiXnYm基
(ただしXはハロゲン基、Yは炭素数1〜6の低級アル
キル基、n,mは1〜3から選ばれる正の整数でn+m
=3)で表される官能基をもつ化学吸着膜を形成し、ア
ルカリ処理または酸化処理することによって上記官能基
を水酸基に変化することができる。また、不飽和結合基
を有する化学吸着膜は、エネルギー線、たとえば、電子
線によって上記不飽和結合基をイミノ基、アミノ基など
に変化することができる。また、エステル結合基を有す
る化学吸着膜は酸化処理によって水酸基に変化させるこ
とができる。上記の水酸基、イミノ基、アミノ基などは
新たな化学吸着膜形成が可能であり、累積膜の形成がで
きる。
【0027】基体としては、セラミック、金属、樹脂、
木材、及び繊維、無機物、蒸気録媒体層など活性な水素
もしくは配位できる金属が露出しているもので有れば良
い。浸漬反応処理あるいは気相反応処理を行うため、そ
の形状は問わない。また、表面に形成した化学吸着膜
は、透明であるため、基体表面の光沢、色調、材質感を
損なうこともない。
【0028】化学吸着膜表面に塗布する有機化学分子
は、長鎖炭化水素系脂肪酸及び脂肪酸エステル、シリコ
ン誘導体、脂肪酸塩、脂肪酸アミド、フッ素化炭素誘導
体のうち少なくとも1種類であることが好ましい。
【0029】また、基体表面に露出する活性な水素の数
を増すために、実施例2,10〜17,21に示すよう
に、テトラクロロシラン、トリクロロシラン、SiCl
3 −(O−SiCl2 n −O−SiCl3 (nは0及
び正の整数)などSiCl基を3個以上有する分子であ
らかじめ基体表面を処理することによって水酸基の数を
増すことができ、活性な水素を増やすことができる。
【0030】なお本発明において、低分子脱離反応と
は、例えば脱塩化水素反応、脱水反応などをいう。以下
に本発明の具体的実施例を示す。 実施例1 まず、基体1として酸化鉄の粉体を高分子バインダーの
中に充填し、ベースフィルムであるポリエチレンテレフ
タレートフィルムの上に塗布し、乾燥し、圧縮処理して
高密度化した。次にディスク状に成形し、その表面にシ
リコン酸化物の薄膜を形成した。この薄膜表面には、水
酸基が露出しており、薄膜表面に活性な水素が数多く存
在している。
【0031】つぎに、化学吸着膜作成用溶液を調製し
た。化学吸着膜を構成する分子として長鎖アルキル基の
末端にジメチルシリル基を有し、他端にトリクロロシリ
ル基を有する化学吸着剤:H(CH3 2 Si(C
2 18SiCl3 を用いた。前記化学吸着剤の溶媒と
してフレオン−113の非水系溶媒を調製し、前記化学
吸着剤分子の濃度が1ミリモル/リットルとなるように
化学吸着溶液を調製した。これらの調製は、乾燥雰囲気
で行った。グローブボックス中で操作を行い、ガスは窒
素ガスを用い、グローブボックス内の乾燥度は湿度計で
5%以下であった。
【0032】つぎに、前記基体1を前記溶液中に浸漬し
た。浸漬処理は、同じく乾燥雰囲気で行い、溶液温度は
23℃で、浸漬時間は1時間行った。この処理において
化学吸着分子は基体表面の水酸基と脱塩酸反応をして
(化4)に示すようになり、化学吸着膜2が形成でき
る。
【0033】
【化4】
【0034】つぎに、前記処理を終えた基体を流水洗浄
した。この処理において(化4)に示す−SiCl基は
加水分解して−SiOH基になる。この流水洗浄は、1
5分間実施し、超純水を用いて行なった。次に乾燥する
と−SiOH基は隣の−SiOH基との間で脱水反応し
−Si−O−Si−結合が形成される。
【0035】つぎに、酸化処理液を調製した。反応促進
剤のフッ化カリウム140mgをメタノール50mLに
溶かし、また、炭酸水素カリウム250mgをテトラヒ
ドロフラン50mLに溶かし、さらに、30容量%過酸
化水素水25mLを加えて作成した。過酸化水素酸化
は、以下の手続きで行った。室温中で十分に撹拌溶解
後、2つの溶液を混合して、過酸化水素反応液を作成
し、この溶液中に上記化学吸着膜が形成された基板1を
室温中、10時間浸漬した。この浸漬処理によって、化
学吸着膜2を形成する長鎖炭化水素分子末端のジメチル
シリル基のC−Si結合は切断され、化学吸着膜2の長
鎖炭化水素分子末端に水酸基が形成された。
【0036】つぎに、長鎖炭化水素分子末端が−OH基
化処理された基板1を再度、化学吸着剤:H(CH3
2 Si(CH2 18(CH3 2 SiClの非水溶液に
浸漬して2層目の化学吸着膜3を形成した。なお、この
化学吸着溶液の溶媒及び作成条件は前記と同じである。
この処理おいて(化5)に示す化学吸着累積膜が形成さ
れた。
【0037】
【化5】
【0038】つぎに、上述と同じ過酸化水素酸化を行
い、分子末端を水酸基に変化させ、さらに、化学式CF
3 (CH2 18(CH3 2 SiClで示される化学吸
着溶液に前記処理を終えた基体1を浸漬して3層目の化
学吸着膜4を形成した。
【0039】以上の潤滑膜の構成の断面図を図1に示
す。前記処理済基体を用いて摺動試験を行なった。荷重
は、100グラム重とし、鋼体球を用いて、10センチ
メートルの範囲で摺動した。図2に測定結果を示す。縦
軸は動摩擦係数を示す。摺動数が増加しても動摩擦係数
は初期の値と変わらず一様であり、耐久性のある潤滑膜
が形成できた。磁気記録ディスク表面に本発明の累積構
造の潤滑膜を形成してCSSテスト(磁気ディスク上に
ヘッドを置いて、回転スタートとストップを繰り返す試
験)を行い、20万回の走行テストをクリアした。
【0040】実施例2 基体は実施例1のものを用いた。つぎに化学吸着膜作成
用溶液を調製した。化学吸着膜を構成する分子として長
鎖アルキル基の末端にジメチルシリル基を有し、他端に
トリクロロシリル基を有する化学吸着剤:H(CH3
2 Si(CH218SiCl3 を用いた。前記分子の溶
媒としてヘキサデカン80重量%、四塩化炭素12重量
%、クロロホルム8重量%の混合溶媒を調製し、前記分
子の濃度が1ミリモル/リットルとなるように化学吸着
溶液を調製した。これらの調製は、乾燥雰囲気で行っ
た。グローブボックス中で操作を行い、ガスは窒素ガス
を用い、グローブボックス内の乾燥度は湿度計で5%以
下であった。
【0041】つぎに、前記基体を前記溶液中に浸漬し
た。浸漬処理は、同じく乾燥雰囲気で行い、溶液温度は
23℃で、浸漬時間は1時間行った。この処理において
化学吸着分子は基体表面の水酸基と脱塩酸反応をして
(化6)に示すようになり、化学吸着膜が形成できる。
【0042】
【化6】
【0043】つぎに、前記処理を終えた基体を流水洗浄
した。この処理において(化6)に示す−SiCl基は
加水分解して−SiOH基になる。この流水洗浄は、1
5分間実施し、超純水を用いて行なった。次に乾燥する
と−SiOH基は隣の−SiOH基との間で脱水反応し
−Si−O−Si−結合が形成される。
【0044】つぎに、アルカリ処理液を調製した。1重
量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液を100m
L作成した。処理反応は、室温で10分間浸漬した。こ
の操作により、化学吸着膜を構成している長鎖炭化水素
化合物の分子末端のジメチルシリル基の−SiH結合は
切断され、直鎖炭化水素分子末端に水酸基が形成され
た。
【0045】つぎに、長鎖炭化水素分子末端がOH基化
処理された基板を再度、化学吸着剤:H(CH3 2
i(CH2 18(CH3 2 SiClの化学吸着溶液に
浸漬して2層目の化学吸着膜を形成した。なお、化学吸
着溶液の溶媒及び作成条件は前記と同じである。この処
理おいて(化7)に示す化学吸着累積膜が形成された。
【0046】
【化7】
【0047】つぎに、上述と同じ過酸化水素酸化を行
い、分子末端を水酸基に変化させ、さらに、化学吸着
剤:CF3 (CH2 18(CH3 2 SiClで示され
る化学吸着溶液に前記処理を終えた基体を浸漬して3層
目の化学吸着膜を形成した。
【0048】以上の潤滑膜の構成の断面図は図1と同様
である。前記処理済基体を用いて摺動試験を行なった。
荷重は、100グラム重とし、鋼体球を用いて、10セ
ンチメートルの範囲で摺動した。摺動数が増加しても動
摩擦係数は初期の値と変わらず一様であり、耐久性のあ
る潤滑膜が形成できた。磁気記録ディスク表面に本発明
の累積構造の潤滑膜を形成してCSSテストを行い、2
0万回の走行テストをクリアした。
【0049】実施例3 まず、基体として酸化鉄の粉体を高分子バインダーの中
に充填し、ディスク状に成形し、その表面にシリコン酸
化物の薄膜を形成した。この薄膜表面には、水酸基が露
出しており、薄膜表面に活性な水素が数多く存在してい
る。
【0050】つぎに、化学吸着膜作成用溶液を調製し
た。化学吸着膜を構成する分子として長鎖アルキル基の
末端にビニル基を有し、他端にトリクロロシリル基を有
する化学吸着剤:CH2 =CH(CH2 18SiCl3
を用いた。前記分子の溶媒としてヘキサデカン80重量
%、四塩化炭素12重量%、クロロホルム8重量%の混
合溶媒を調製し、前記分子の濃度が1ミリモル/リット
ルとなるように化学吸着溶液を調製した。これらの調製
は、乾燥雰囲気で行った。グローブボックス中で操作を
行い、ガスは窒素ガスを用い、グローブボックス内の乾
燥度は湿度計で5%以下であった。
【0051】つぎに、前記基体を前記溶液中に浸漬し
た。浸漬処理は、同じく乾燥雰囲気で行い、溶液温度は
23℃で、浸漬時間は1時間行った。この処理において
化学吸着分子は基体表面の水酸基と脱塩酸反応をして
(化8)に示すようになり、化学吸着膜ができる。
【0052】
【化8】
【0053】つぎに、前記処理を終えた基体を流水洗浄
した。この処理において(化8)に示す−SiCl基は
加水分解して−SiOH基になる。この流水洗浄は、1
5分間実施し、超純水を用いて行なった。次に乾燥する
と−SiOH基は隣の−SiOH基との間で脱水反応し
−Si−O−Si−結合が形成される。
【0054】つぎに、エネルギー線照射を行った。この
実施例では電子線照射を実施した。ステンレス鋼(SU
S)製ホルダーの上面をアルミホイルでカバーし、窒素
ガスを導入できるようにした。照射用冶具を作成した。
加速電圧300keV、電子電流50マイクロアンペ
ア、ガス圧1気圧、温度室温、照射スピード(吸収線量
率)0.02Mrad/sec、照射時間100秒の条
件で上記処理済み基体に電子線照射を行った。この処理
によって、化学吸着膜を形成する長鎖炭化水素分子末端
の不飽和基(この実施例ではビニル基)はイミノ基及び
/またはアミノ基に変化された。
【0055】つぎに、長鎖炭化水素分子末端がイミノ基
及び/またはアミノ基を導入処理された基板を再度、化
学式CH2 =CH(CH2 18(CH3 2 SiClの
化学吸着溶液に浸漬して2層目の化学吸着膜を形成し
た。なお、化学吸着溶液の溶媒及び作成条件は前記と同
じである。この処理おいて(化9)に示す化学吸着累積
膜が形成された。
【0056】
【化9】
【0057】つぎに、上述と同じ電子線照射を行い、分
子末端をイミノ基及び/またはアミノ基に変化させ、さ
らに、化学式CF3 (CH2 18(CH3 2 SiCl
で示される化学吸着溶液に前記処理を終えた基体を浸漬
して3層目の化学吸着膜を形成した。
【0058】以上の潤滑膜の構成の断面図は図1と同様
である。前記処理済基体を用いて摺動試験を行なった。
荷重は、100グラム重とし、鋼体球を用いて、10セ
ンチメートルの範囲で摺動した。摺動数が増加しても動
摩擦係数は初期の値と変わらず一様であり、耐久性のあ
る潤滑膜が形成できた。磁気記録ディスク表面に本発明
の累積構造の潤滑膜を形成してCSSテストを行い、2
0万回の走行テストをクリアした。
【0059】実施例4 まず、基体として酸化鉄の粉体を高分子バインダーの中
に充填し、ディスク状に成形し、その表面にシリコン酸
化物の薄膜を形成した。この薄膜表面には、水酸基が露
出しており、薄膜表面に活性な水素が数多く存在してい
る。
【0060】つぎに、化学吸着膜作成用溶液を調製し
た。化学吸着膜を構成する分子として長鎖アルキル基の
末端にジメチルシリル基を有し、他端にトリクロロシリ
ル基を有する化学吸着剤:H(CH3 2 Si(C
2 18SiCl3 を用いた。前記分子の溶媒としてヘ
キサデカン80重量%、四塩化炭素12重量%、クロロ
ホルム8重量%の混合溶媒を調製し、前記分子の濃度が
1ミリモル/リットルとなるように化学吸着溶液を調製
した。これらの調製は、乾燥雰囲気で行った。グローブ
ボックス中で操作を行い、ガスは窒素ガスを用い、グロ
ーブボックス内の乾燥度は湿度計で5%以下であった。
【0061】つぎに、前記基体を前記溶液中に浸漬し
た。浸漬処理は、同じく乾燥雰囲気で行い、溶液温度は
23℃で、浸漬時間は1時間行った。この処理において
化学吸着分子は基体表面の水酸基と脱塩酸反応をして、
化学吸着膜ができる。
【0062】つぎに、基体表面の水酸基と化学反応して
おらず物理吸着している化学吸着分子を取り除くためク
ロロホルムで洗浄を行った。化学吸着膜作成と同じ雰囲
気内で15分間の撹拌洗浄を2回行った。この処理よっ
て、実施例1及び実施例2及び実施例3で形成される化
学吸着膜より一層配向の整った化学吸着膜が形成される
ことになる。このクロロホルム洗浄は、基体の凹凸や潤
滑性を有する部材の性質や種類によって洗浄の使用の有
無を決定して良い。以下の実施例で示されるクロロホル
ム洗浄も同様である。
【0063】つぎに、前記処理を終えた基体を流水洗浄
した。この処理においてSiCl基は、隣の吸着分子の
SiCl基と反応する。この流水洗浄は、15分間実施
し、超純水を用いて行なった。
【0064】つぎに、酸化処理液を調製した。反応促進
剤のフッ化カリウム140mgをメタノール50mLに
溶かし、また、炭化水素カリウム250mgをテトラヒ
ドロフラン50mLに溶かし、さらに、30%過酸化水
素水25mLを加えて作成した。過酸化水素酸化は、以
下の手続きで行った。室温中で十分に撹拌溶解後、2つ
の溶液を混合して、過酸化水素反応液を作成し、この溶
液中に上記化学吸着膜が形成された基板を室温中、10
時間浸漬した。この浸漬処理によって、化学吸着膜を形
成する長鎖炭化水素分子末端のジメチルシリル基のC−
Si結合は切断され、化学吸着膜の長鎖炭化水素分子末
端に水酸基が形成された。
【0065】つぎに、長鎖炭化水素分子末端がOH基化
処理された基板を再度、化学式H(CH3 2 Si(C
2 18(CH3 2 SiClの化学吸着溶液に浸漬
し、クロロホルム洗浄、流水処理をして2層目の化学吸
着膜を形成した。なお、化学吸着溶液の溶媒及び処理条
件は前記と同じである。この処理おいて化学吸着累積膜
が形成された。
【0066】つぎに、上述と同じ過酸化水素酸化を行
い、分子末端を水酸基に変化させ、さらに、化学式CF
3 (CH2 18(CH3 2 SiClで示される化学吸
着溶液に前記処理を終えた基体を浸漬し、クロロホルム
洗浄、流水処理をして3層目の化学吸着膜を形成した。
【0067】以上の潤滑膜の構成の断面図は図1と同様
である。前記処理済基体を用いて摺動試験を行なった。
荷重は、100グラム重とし、鋼体球を用いて、10セ
ンチメートルの範囲で摺動した。摺動数が増加しても動
摩擦係数は初期の値と変わらず一様であり、耐久性のあ
る潤滑膜が形成できた。磁気記録ディスク表面に本発明
の累積構造の潤滑膜を形成してCSSテストを行い、2
0万回の走行テストをクリアした。
【0068】実施例5 まず、基体として酸化鉄の粉体を高分子バインダーの中
に充填し、ディスク状に成形し、その表面にシリコン酸
化物の薄膜を形成した。この薄膜表面には、水酸基が露
出しており、薄膜表面に活性な水素が数多く存在してい
る。
【0069】つぎに、化学吸着膜作成用溶液を調製し
た。化学吸着膜を構成する分子として長鎖アルキル基の
末端にビニル基を有し、他端にトリクロロシリル基を有
するCH2 =CH(CH2 18SiCl3 を用いた。前
記分子の溶媒としてヘキサデカン80重量%、四塩化炭
素12重量%、クロロホルム8重量%の混合溶媒を調製
し、前記分子の濃度が1ミリモル/リットルとなるよう
に化学吸着溶液を調製した。これらの調製は、乾燥雰囲
気で行った。グローブボックス中で操作を行い、ガスは
窒素ガスを用い、グローブボックス内の乾燥度は湿度計
で5%以下であった。
【0070】つぎに、前記基体を前記溶液中に浸漬し
た。浸漬処理は、同じく乾燥雰囲気で行い、溶液温度は
23℃で、浸漬時間は1時間行った。この処理において
化学吸着分子は基体表面の水酸基と脱塩酸反応をして、
化学吸着膜ができる。
【0071】つぎに、基体表面の水酸基と化学反応して
おらず物理吸着している化学吸着分子を取り除くためク
ロロホルムで洗浄を行った。化学吸着膜作成と同じ雰囲
気内で15分間の撹拌洗浄を2回行った。
【0072】つぎに、前記処理を終えた基体を流水洗浄
した。この処理においてSiCl基は、隣の吸着分子の
SiCl基と反応する。この流水洗浄は、15分間実施
し、超純水を用いて行なった。
【0073】つぎに、エネルギー線照射を行った。この
実施例では電子線照射を実施した。SUS製ホルダーの
上面をアルミホイルでカバーし、窒素ガスを導入できる
ようにした。照射用冶具を作成した。加速電圧300k
eV、電子電流50マイクロアンペア、ガス圧1気圧、
温度室温、照射スピード(吸収線量率)0.02Mra
d/sec、照射時間100秒の条件で上記処理済み基
体に電子線照射を行った。この処理によって、化学吸着
膜を形成する長鎖炭化水素分子末端の不飽和基(この実
施例ではアルカン基)はイミノ基及び/またはアミノ基
に変化された。
【0074】つぎに、長鎖炭化水素分子末端がイミノ基
及び/またはアミノ基化処理された基板を再度、化学式
CH2 =CH(CH2 18(CH3 2 SiClの化学
吸着溶液に浸漬し、クロロホルム洗浄、流水処理をして
2層目の化学吸着膜を形成した。なお、化学吸着溶液の
溶媒及び作成条件は前記と同じである。この処理おいて
化学吸着累積膜が形成された。
【0075】つぎに、上述と同じ電子線照射を行い、分
子末端をイミノ基及び/またはアミノ基に変化させ、さ
らに、化学式CF3 (CH2 18(CH3 2 SiCl
で示される化学吸着溶液に前記処理を終えた基体を浸漬
し、クロロホルム洗浄、流水処理をして3層目の化学吸
着膜を形成した。
【0076】以上の潤滑膜の構成の断面図は図1と同様
である。前記処理済基体を用いて摺動試験を行なった。
荷重は、100グラム重とし、鋼体球を用いて、10セ
ンチメートルの範囲で摺動した。摺動数が増加しても動
摩擦係数は初期の値と変わらず一様であり、耐久性のあ
る潤滑膜が形成できた。磁気記録ディスク表面に本発明
の累積構造の潤滑膜を形成してCSSテストを行い、2
0万回の走行テストをクリアした。
【0077】実施例6 まず、基体11として酸化鉄の粉体を高分子バインダー
の中に充填し、ディスク状に成形し、その表面にシリコ
ン酸化物の薄膜を形成した。この薄膜表面には、水酸基
が露出しており、薄膜表面に活性な水素が数多く存在し
ている。
【0078】つぎに、化学吸着膜作成用溶液を調製し
た。化学吸着膜を構成する分子として長鎖アルキル基の
末端にジメチルシリル基を有し、他端にトリクロロシリ
ル基を有するH(CH3 2 Si(CH2 18SiCl
3 を用いた。前記分子の溶媒としてヘキサデカン80重
量%、四塩化炭素12重量%、クロロホルム8重量%の
混合溶媒を調製し、前記分子の濃度が1ミリモル/リッ
トルとなるように化学吸着溶液を調製した。これらの調
製は、乾燥雰囲気で行った。グローブボックス中で操作
を行い、ガスは窒素ガスを用い、グローブボックス内の
乾燥度は湿度計で5%以下であった。
【0079】つぎに、前記基体11を前記溶液中に浸漬
した。浸漬処理は、同じく乾燥雰囲気で行い、溶液温度
は23℃で、浸漬時間は1時間行った。この処理におい
て化学吸着分子は基体表面の水酸基と脱塩酸反応をし
て、化学吸着膜12ができる。
【0080】つぎに、前記処理を終えた基体を流水洗浄
した。この処理においてSiCl基は、隣の吸着分子の
SiCl基と反応する。この流水洗浄は、15分間実施
し、超純水を用いて行なった。
【0081】つぎに、酸化処理液を調製した。反応促進
剤のフッ化カリウム140mgをメタノール50mLに
溶かし、また、炭酸水素カリウム250mgをテトラヒ
ドロフラン50mLに溶かし、さらに、30容量%過酸
化水素水25mLを加えて作成した。過酸化水素酸化
は、以下の手続きで行った。室温中で十分に撹拌溶解
後、2つの溶液を混合して、過酸化水素反応液を作成
し、この溶液中に上記化学吸着膜が形成された基板11
を室温中、10時間浸漬した。この浸漬処理によって、
化学吸着膜12を形成する長鎖炭化水素分子末端のジメ
チルシリル基のC−Si結合は切断され、化学吸着膜1
2の長鎖炭化水素分子末端に水酸基が形成された。
【0082】つぎに、長鎖炭化水素分子末端がOH基化
処理された基板11を再度、化学式H(CH3 2 Si
(CH2 18(CH3 2 SiClの化学吸着溶液に浸
漬して2層目の化学吸着膜13を形成した。なお、化学
吸着溶液の溶媒及び作成条件は前記と同じである。この
処理おいて化学吸着累積膜が形成された。
【0083】つぎに、上述と同じ過酸化水素酸化を行
い、分子末端を水酸基に変化させ、さらに、化学式CF
3 (CH2 18(CH3 2 SiClで示される化学吸
着溶液に前記処理を終えた基体11を浸漬して3層目の
化学吸着膜14を形成した。
【0084】つぎに、前記基体上の化学吸着膜表面に長
鎖炭化水素としてCH3 (CF2 17CH3 のクロロホ
ルム溶液を作成し、そこに前記処理済基体を浸漬した。
このときの溶液濃度は1.0グラム/リットルで、浸漬
スピード、引き上げスピード1.5mm/秒で行った。
形成はクリーンルーム雰囲気下でおこなった。この操作
により化学吸着表面に長鎖炭化水素の薄膜15(約1ナ
ノメーター)が形成された。
【0085】以上の潤滑膜の構成の断面図を図3に示
す。前記処理済基体を用いて摺動試験を行なった。荷重
は、100グラム重とし、鋼体球を用いて、10センチ
メートルの範囲で摺動した。摺動数が増加しても動摩擦
係数は初期の値と変わらず一様であり、耐久性のある潤
滑膜が形成できた。磁気記録ディスク表面に本発明の累
積構造の潤滑膜を形成してCSSテストを行い、20万
回の走行テストをクリアした。
【0086】実施例7 まず、基体として酸化鉄の粉体を高分子バインダーの中
に充填し、ディスク状に成形し、その表面にシリコン酸
化物の薄膜を形成した。この薄膜表面には、水酸基が露
出しており、薄膜表面に活性な水素が数多く存在してい
る。
【0087】つぎに、化学吸着膜作成用溶液を調製し
た。化学吸着膜を構成する分子として長鎖アルキル基の
末端にビニル基を有し、他端にトリクロロシリル基を有
するCH2 =CH(CH2 18SiCl3 を用いた。前
記分子の溶媒としてヘキサデカン80重量%、四塩化炭
素12重量%、クロロホルム8重量%の混合溶媒を調製
し、前記分子の濃度が1ミリモル/リットルとなるよう
に化学吸着溶液を調製した。これらの調製は、乾燥雰囲
気で行った。グローブボックス中で操作を行い、ガスは
窒素ガスを用い、グローブボックス内の乾燥度は湿度計
で5%以下であった。
【0088】つぎに、前記基体を前記溶液中に浸漬し
た。浸漬処理は、同じく乾燥雰囲気で行い、溶液温度は
23℃で、浸漬時間は1時間行った。この処理において
化学吸着分子は基体表面の水酸基と脱塩酸反応をして、
化学吸着膜ができる。
【0089】つぎに、前記処理を終えた基体を流水洗浄
した。この処理において、SiCl基は、隣の吸着分子
のSiCl基と反応する。この流水洗浄は、15分間実
施し、超純水を用いて行なった。
【0090】つぎに、エネルギー線照射を行った。この
実施例では電子線照射を実施した。SUS製ホルダーの
上面をアルミホイルでカバーし、窒素ガスを導入できる
ようにした。照射用冶具を作成した。加速電圧300k
eV、電子電流50マイクロアンペア、ガス圧1気圧、
温度室温、照射スピード(吸収線量率)0.02Mra
d/sec、照射時間100秒の条件で上記処理済み基
体に電子線照射を行った。この処理によって、化学吸着
膜を形成する長鎖炭化水素分子末端の不飽和基(この実
施例ではビニル基)はイミノ基及び/またはアミノ基に
変化された。
【0091】つぎに、長鎖炭化水素分子末端がイミノ基
及び/またはアミノ基化処理された基板を再度、化学式
CH2 =CH(CH2 18(CH3 2 SiClの化学
吸着溶液に浸漬して2層目の化学吸着膜を形成した。な
お、化学吸着溶液の溶媒及び作成条件は前記と同じであ
る。この処理おいて化学吸着累積膜が形成された。
【0092】つぎに、上述と同じ電子線照射を行い、分
子末端をイミノ基及び/またはアミノ基に変化させ、さ
らに、化学式CF3 (CH2 18(CH3 2 SiCl
で示される化学吸着溶液に前記処理を終えた基体を浸漬
して3層目の化学吸着膜を形成した。
【0093】つぎに、前記基体上の化学吸着膜表面に長
鎖炭化水素としてCH3 (CF2 17CH3 のクロロホ
ルム溶液を作成し、そこに前記処理済基体を浸漬した。
このときの溶液濃度は1.0グラム/リットルで、浸漬
スピード、引き上げスピード1.5mm/秒で行った。
形成はクリーンルーム雰囲気下でおこなった。この操作
により化学吸着表面に長鎖炭化水素の薄膜(約1ナノメ
ーター)が形成された。
【0094】以上の潤滑膜の構成の断面図は図3と同様
である。前記処理済基体を用いて摺動試験を行なった。
荷重は、100グラム重とし、鋼体球を用いて、10セ
ンチメートルの範囲で摺動した。摺動数が増加しても動
摩擦係数は初期の値と変わらず一様であり、耐久性のあ
る潤滑膜が形成できた。磁気記録ディスク表面に本発明
の累積構造の潤滑膜を形成してCSSテストを行い、2
0万回の走行テストをクリアした。
【0095】実施例8 まず、基体として酸化鉄の粉体を高分子バインダーの中
に充填し、ディスク状に成形し、その表面にシリコン酸
化物の薄膜を形成した。この薄膜表面には、水酸基が露
出しており、薄膜表面に活性な水素が数多く存在してい
る。
【0096】つぎに、化学吸着膜作成用溶液を調製し
た。化学吸着膜を構成する分子として長鎖アルキル基の
末端にジメチルシリル基を有し、他端にトリクロロシリ
ル基を有するH(CH3 2 Si(CH2 18SiCl
3 を用いた。前記分子の溶媒としてヘキサデカン80重
量%、四塩化炭素12重量%、クロロホルム8重量%の
混合溶媒を調製し、前記分子の濃度が1ミリモル/リッ
トルとなるように化学吸着溶液を調製した。これらの調
製は、乾燥雰囲気で行った。グローブボックス中で操作
を行い、ガスは窒素ガスを用い、グローブボックス内の
乾燥度は湿度計で5%以下であった。
【0097】つぎに、前記基体を前記溶液中に浸漬し
た。浸漬処理は、同じく乾燥雰囲気で行い、溶液温度は
23℃で、浸漬時間は1時間行った。この処理において
化学吸着分子は基体表面の水酸基と脱塩酸反応をして、
化学吸着膜ができる。
【0098】つぎに、基体表面の水酸基と化学反応して
おらず物理吸着している化学吸着分子を取り除くためク
ロロホルムで洗浄を行った。化学吸着膜作成と同じ雰囲
気内で15分間の撹拌洗浄を2回行った。
【0099】つぎに、前記処理を終えた基体を流水洗浄
した。この処理においてSiCl基は、隣の吸着分子の
SiCl基と反応する。この流水洗浄は、15分間実施
し、超純水を用いて行なった。
【0100】つぎに、酸化処理液を調製した。反応促進
剤のフッ化カリウム140mgをメタノール50mLに
溶かし、また、炭酸水素カリウム250mgをテトラヒ
ドロフラン50mLに溶かし、さらに、30容量%過酸
化水素水25mLを加えて作成した。過酸化水素酸化
は、以下の手続きで行った。室温中で十分に撹拌溶解
後、2つの溶液を混合して、過酸化水素反応液を作成
し、この溶液中に上記化学吸着膜が形成された基板を室
温中、10時間浸漬した。この浸漬処理によって、化学
吸着膜を形成する長鎖炭化水素分子末端のジメチルシリ
ル基のC−Si結合は切断され、化学吸着膜の長鎖炭化
水素分子末端に水酸基が形成された。
【0101】つぎに、長鎖炭化水素分子末端がOH基化
処理された基板を再度、化学式H(CH3 2 Si(C
2 18(CH3 2 SiClの化学吸着溶液に浸漬
し、クロロホルム洗浄、流水処理をして2層目の化学吸
着膜を形成した。なお、化学吸着溶液の溶媒及び処理条
件は前記と同じである。この処理おいて化学吸着累積膜
が形成された。
【0102】つぎに、上述と同じ過酸化水素酸化を行
い、分子末端を水酸基に変化させ、さらに、化学式CF
3 (CH2 18(CH3 2 SiClで示される化学吸
着溶液に前記処理を終えた基体を浸漬し、クロロホルム
洗浄、流水処理をして3層目の化学吸着膜を形成した。
【0103】つぎに、前記基体上の化学吸着膜表面に長
鎖炭化水素としてCH3 (CF2 17CH3 のクロロホ
ルム溶液を作成し、そこに前記処理済基体を浸漬した。
このときの溶液濃度は1.0グラム/リットルで、浸漬
スピード、引き上げスピード1.5mm/秒で行った。
形成はクリーンルーム雰囲気下でおこなった。この操作
により化学吸着表面に長鎖炭化水素の薄膜(約1ナノメ
ーター)が形成された。
【0104】以上の潤滑膜の構成の断面図は図3と同様
である。前記処理済基体を用いて摺動試験を行なった。
荷重は、100グラム重とし、鋼体球を用いて、10セ
ンチメートルの範囲で摺動した。摺動数が増加しても動
摩擦係数は初期の値と変わらず一様であり、耐久性のあ
る潤滑膜が形成できた。磁気記録ディスク表面に本発明
の累積構造の潤滑膜を形成してCSSテストを行い、2
0万回の走行テストをクリアした。
【0105】実施例9 まず、基体として酸化鉄の粉体を高分子バインダーの中
に充填し、ディスク状に成形し、その表面にシリコン酸
化物の薄膜を形成した。この薄膜表面には、水酸基が露
出しており、薄膜表面に活性な水素が数多く存在してい
る。
【0106】つぎに、化学吸着膜作成用溶液を調製し
た。化学吸着膜を構成する分子として長鎖アルキル基の
末端にビニル基を有し、他端にトリクロロシリル基を有
するCH2 =CH(CH2 18SiCl3 を用いた。前
記分子の溶媒としてヘキサデカン80重量%、四塩化炭
素12重量%、クロロホルム8重量%の混合溶媒を調製
し、前記分子の濃度が1ミリモル/リットルとなるよう
に化学吸着溶液を調製した。これらの調製は、乾燥雰囲
気で行った。グローブボックス中で操作を行い、ガスは
窒素ガスを用い、グローブボックス内の乾燥度は湿度計
で5%以下であった。
【0107】つぎに、前記基体を前記溶液中に浸漬し
た。浸漬処理は、同じく乾燥雰囲気で行い、溶液温度は
23℃で、浸漬時間は1時間行った。この処理において
化学吸着分子は基体表面の水酸基と脱塩酸反応をして、
化学吸着膜ができる。
【0108】つぎに、基体表面の水酸基と化学反応して
おらず物理吸着している化学吸着分子を取り除くためク
ロロホルムで洗浄を行った。化学吸着膜作成と同じ雰囲
気内で15分間の撹拌洗浄を2回行った。
【0109】つぎに、前記処理を終えた基体を流水洗浄
した。この処理においてSiCl基は、隣の吸着分子の
SiCl基と反応する。この流水洗浄は、15分間実施
し、超純水を用いて行なった。
【0110】つぎに、エネルギー線照射を行った。この
実施例では電子線照射を実施した。SUS製ホルダーの
上面をアルミホイルでカバーし、窒素ガスを導入できる
ようにした。照射用冶具を作成した。加速電圧300k
eV、電子電流50マイクロアンペア、ガス圧1気圧、
温度室温、照射スピード(吸収線量率)0.02Mra
d/sec、照射時間100秒の条件で上記処理済み基
体に電子線照射を行った。この処理によって、化学吸着
膜を形成する長鎖炭化水素分子末端の不飽和基(この実
施例ではアルカン基)はイミノ基及び/またはアミノ基
に変化された。
【0111】つぎに、長鎖炭化水素分子末端がイミノ基
及び/またはアミノ基化処理された基板を再度、化学式
CH2 =CH(CH2 18(CH3 2 SiClの化学
吸着溶液に浸漬し、クロロホルム洗浄、流水処理をして
2層目の化学吸着膜を形成した。なお、化学吸着溶液の
溶媒及び作成条件は前記と同じである。この処理おいて
化学吸着累積膜が形成された。
【0112】つぎに、上述と同じ電子線照射を行い、分
子末端をイミノ基及び/またはアミノ基に変化させ、さ
らに、化学式CF3 (CH2 18(CH3 2 SiCl
で示される化学吸着溶液に前記処理を終えた基体を浸漬
し、クロロホルム洗浄、流水処理をして3層目の化学吸
着膜を形成した。
【0113】つぎに、前記基体上の化学吸着膜表面に長
鎖炭化水素としてCH3 (CF2 17CH3 のクロロホ
ルム溶液を作成し、そこに前記処理済基体を浸漬した。
このときの溶液濃度は1.0グラム/リットルで、浸漬
スピード、引き上げスピード1.5mm/秒で行った。
形成はクリーンルーム雰囲気下でおこなった。この操作
により化学吸着表面に長鎖炭化水素の薄膜(約1ナノメ
ーター)が形成された。
【0114】以上の潤滑膜の構成の断面図は図3と同様
である。前記処理済基体を用いて摺動試験を行なった。
荷重は、100グラム重とし、鋼体球を用いて、10セ
ンチメートルの範囲で摺動した。摺動数が増加しても動
摩擦係数は初期の値と変わらず一様であり、耐久性のあ
る潤滑膜が形成できた。磁気記録ディスク表面に本発明
の累積構造の潤滑膜を形成してCSSテストを行い、2
0万回の走行テストをクリアした。
【0115】実施例10 まず、基体21として酸化鉄の粉体を高分子バインダー
の中に充填し、ディスク状に成形した。この薄膜表面に
は、水酸基が露出は乏しく、薄膜表面に活性な水素は少
数である。
【0116】つぎに、低分子化学吸着剤用溶液を調製し
た。低分子化学吸着剤を構成する分子としてテトラクロ
ロシラン(SiCl4 )を用いた。その分子の溶媒とし
てヘキサデカン80重量%、四塩化炭素12重量%、ク
ロロホルム8重量%の混合溶媒を調製し、前記分子の濃
度が1ミリモル/リットルとなるように化学吸着溶液を
調製した。これらの調製は、乾燥雰囲気で行った。グロ
ーブボックス中で操作を行い、ガスは窒素ガスを用い、
グローブボックス内の乾燥度は湿度計で5%以下であっ
た。
【0117】つぎに、前記基体21を前記溶液中に浸漬
した。浸漬処理は、同じく乾燥雰囲気で行い、溶液温度
は23℃で、浸漬時間は1時間行った。この処理におい
て化学吸着分子は基体表面の水酸基と脱塩酸反応をして
(化10)に示すようになり、低分子化学吸着層22が
形成できる。
【0118】
【化10】
【0119】つぎに、基体表面の水酸基と化学反応して
おらず物理吸着している低分子化学吸着剤を取り除くた
めクロロホルムで洗浄を行った。前記処理と同じ雰囲気
内で15分間の撹拌洗浄を2回行った。
【0120】つぎに、前記処理を終えた基体を流水洗浄
した。この処理において(化10)に示すSiCl基
は、SiOH基となる。この流水洗浄は、15分間実施
し、超純水を用いて行なった。
【0121】つぎに、化学吸着膜作成用溶液を調製し
た。化学吸着膜を構成する分子として長鎖アルキル基の
末端にジメチルシリル基を有し、他端にトリクロロシリ
ル基を有するH(CH3 2 Si(CH2 18SiCl
3 を用いた。前記分子の溶媒としてヘキサデカン80重
量%、四塩化炭素12重量%、クロロホルム8重量%の
混合溶媒を調製し、前記分子の濃度が1ミリモル/リッ
トルとなるように化学吸着溶液を調製した。これらの調
製は、乾燥雰囲気で行った。グローブボックス中で操作
を行い、ガスは窒素ガスを用い、グローブボックス内の
乾燥度は湿度計で5%以下であった。
【0122】つぎに、前記処理を終えた基体21を前記
溶液中に浸漬した。浸漬処理は、同じく乾燥雰囲気で行
い、溶液温度は23℃で、浸漬時間は1時間行った。こ
の処理において化学吸着分子は基体表面の水酸基と脱塩
酸反応をして(化11)に示すようになり、化学吸着膜
23が形成できる。
【0123】
【化11】
【0124】つぎに、前記処理を終えた基体を流水洗浄
した。この処理において(化11)に示すSiCl基
は、隣の吸着分子のSiCl基と反応する。この流水洗
浄は、15分間実施し、超純水を用いて行なった。
【0125】つぎに、酸化処理液を調製した。反応促進
剤のフッ化カリウム140mgをメタノール50mLに
溶かし、また、炭酸水素カリウム250mgをテトラヒ
ドロフラン50mLに溶かし、さらに、30容量%過酸
化水素水25mLを加えて作成した。過酸化水素酸化
は、以下の手続きで行った。室温中で十分に撹拌溶解
後、2つの溶液を混合して、過酸化水素反応液を作成
し、この溶液中に上記化学吸着膜が形成された基板21
を室温中、10時間浸漬した。この浸漬処理によって、
化学吸着膜23を形成する長鎖炭化水素分子末端のジメ
チルシリル基のC−Si結合は切断され、化学吸着膜2
3の長鎖炭化水素分子末端に水酸基が形成された。
【0126】つぎに、長鎖炭化水素分子末端がOH基化
処理された基板21を再度、化学式H(CH3 2 Si
(CH2 18(CH3 2 SiClの化学吸着溶液に浸
漬して2層目の化学吸着膜24を形成した。なお、化学
吸着溶液の溶媒及び作成条件は前記と同じである。この
処理おいて、化学吸着累積膜が形成された。
【0127】つぎに、上述と同じ過酸化水素酸化を行
い、分子末端を水酸基に変化させ、さらに、化学式CF
3 (CH2 18(CH3 2 SiClで示される化学吸
着溶液に前記処理を終えた基体21を浸漬して3層目の
化学吸着膜25を形成した。
【0128】以上の潤滑膜の構成の断面図を図4に示
す。前記処理済基体を用いて摺動試験を行なった。荷重
は、100グラム重とし、鋼体球を用いて、10センチ
メートルの範囲で摺動した。摺動数が増加しても動摩擦
係数は初期の値と変わらず一様であり、耐久性のある潤
滑膜が形成できた。磁気記録ディスク表面に本発明の累
積構造の潤滑膜を形成してCSSテストを行い、20万
回の走行テストをクリアした。
【0129】実施例11 まず、基体として酸化鉄の粉体を高分子バインダーの中
に充填し、ディスク状に成形した。この薄膜表面には、
水酸基が露出は乏しく、薄膜表面に活性な水素は少数で
ある。
【0130】つぎに、低分子化学吸着剤用溶液を調製し
た。低分子化学吸着剤を構成する分子としてSiCl4
を用いた。その分子の溶媒としてヘキサデカン80重量
%、四塩化炭素12重量%、クロロホルム8重量%の混
合溶媒を調製し、前記分子の濃度が1ミリモル/リット
ルとなるように化学吸着溶液を調製した。これらの調製
は、乾燥雰囲気で行った。グローブボックス中で操作を
行い、ガスは窒素ガスを用い、グローブボックス内の乾
燥度は湿度計で5%以下であった。
【0131】つぎに、前記基体を前記溶液中に浸漬し
た。浸漬処理は、同じく乾燥雰囲気で行い、溶液温度は
23℃で、浸漬時間は1時間行った。この処理において
化学吸着分子は基体表面の水酸基と脱塩酸反応をして
(化12)に示すようになり、低分子化学吸着層が形成
できる。
【0132】
【化12】
【0133】つぎに、前記処理を終えた基体を流水洗浄
した。この処理において(化12)に示すSiCl基
は、SiOH基となる。この流水洗浄は、15分間実施
し、超純水を用いて行なった。
【0134】つぎに、化学吸着膜作成用溶液を調製し
た。化学吸着膜を構成する分子として長鎖アルキル基の
末端にビニル基を有し、他端にトリクロロシリル基を有
するCH2 =CH(CH2 18SiCl3 を用いた。前
記分子の溶媒としてヘキサデカン80重量%、四塩化炭
素12重量%、クロロホルム8重量%の混合溶媒を調製
し、前記分子の濃度が1ミリモル/リットルとなるよう
に化学吸着溶液を調製した。これらの調製は、乾燥雰囲
気で行った。グローブボックス中で操作を行い、ガスは
窒素ガスを用い、グローブボックス内の乾燥度は湿度計
で5%以下であった。
【0135】つぎに、前記基体を前記溶液中に浸漬し
た。浸漬処理は、同じく乾燥雰囲気で行い、溶液温度は
23℃で、浸漬時間は1時間行った。この処理において
化学吸着分子は基体表面の水酸基と脱塩酸反応をして
(化13)に示すようになり、化学吸着膜ができる。
【0136】
【化13】
【0137】つぎに、前記処理を終えた基体を流水洗浄
した。この処理において(化13)に示すSiCl基
は、隣の吸着分子のSiCl基と反応する。この流水洗
浄は、15分間実施し、超純水を用いて行なった。
【0138】つぎに、エネルギー線照射を行った。この
実施例では電子線照射を実施した。SUS製ホルダーの
上面をアルミホイルでカバーし、窒素ガスを導入できる
ようにした。照射用冶具を作成した。加速電圧300k
eV、電子電流50マイクロアンペア、ガス圧1気圧、
温度室温、照射スピード(吸収線量率)0.02Mra
d/sec、照射時間100秒の条件で上記処理済み基
体に電子線照射を行った。この処理によって、化学吸着
膜を形成する長鎖炭化水素分子末端の不飽和基(この実
施例ではビニル基)はイミノ基及び/またはアミノ基に
変化された。
【0139】つぎに、長鎖炭化水素分子末端がイミノ基
及び/またはアミノ基化処理された基板を再度、化学式
CH2 =CH(CH2 18(CH3 2 SiClの化学
吸着溶液に浸漬して2層目の化学吸着膜を形成した。な
お、化学吸着溶液の溶媒及び作成条件は前記と同じであ
る。この処理おいて化学吸着累積膜が形成された。
【0140】つぎに、上述と同じ電子線照射を行い、分
子末端をイミノ基及び/またはアミノ基に変化させ、さ
らに、化学式CF3 (CH2 18(CH3 2 SiCl
で示される化学吸着溶液に前記処理を終えた基体を浸漬
して3層目の化学吸着膜を形成した。
【0141】以上の潤滑膜の構成の断面図は図4と同様
である。前記処理済基体を用いて摺動試験を行なった。
荷重は、100グラム重とし、鋼体球を用いて、10セ
ンチメートルの範囲で摺動した。図2に測定結果を示
す。縦軸は動摩擦係数を示す。摺動数が増加しても動摩
擦係数は初期の値と変わらず一様であり、耐久性のある
潤滑膜が形成できた。磁気記録ディスク表面に本発明の
累積構造の潤滑膜を形成してCSSテストを行い、20
万回の走行テストをクリアした。
【0142】実施例12 まず、基体として酸化鉄の粉体を高分子バインダーの中
に充填し、ディスク状に成形した。この薄膜表面には、
水酸基が露出は乏しく、薄膜表面に活性な水素は少数で
ある。
【0143】つぎに、低分子化学吸着剤用溶液を調製し
た。低分子化学吸着剤を構成する分子としてSiCl4
を用いた。その分子の溶媒としてヘキサデカン80重量
%、四塩化炭素12重量%、クロロホルム8重量%の混
合溶媒を調製し、前記分子の濃度が1ミリモル/リット
ルとなるように化学吸着溶液を調製した。これらの調製
は、乾燥雰囲気で行った。グローブボックス中で操作を
行い、ガスは窒素ガスを用い、グローブボックス内の乾
燥度は湿度計で5%以下であった。
【0144】つぎに、前記基体を前記溶液中に浸漬し
た。浸漬処理は、同じく乾燥雰囲気で行い、溶液温度は
23℃で、浸漬時間は1時間行った。この処理において
化学吸着分子は基体表面の水酸基と脱塩酸反応をして、
低分子化学吸着層ができる。
【0145】つぎに、前記処理を終えた基体を流水洗浄
した。この処理において、SiCl基は、SiOH基と
なる。この流水洗浄は、15分間実施し、超純水を用い
て行なった。
【0146】つぎに、化学吸着膜作成用溶液を調製し
た。化学吸着膜を構成する分子として長鎖アルキル基の
末端にジメチルシリル基を有し、他端にトリクロロシリ
ル基を有するH(CH3 2 Si(CH2 18SiCl
3 を用いた。前記分子の溶媒としてヘキサデカン80重
量%、四塩化炭素12重量%、クロロホルム8重量%の
混合溶媒を調製し、前記分子の濃度が1ミリモル/リッ
トルとなるように化学吸着溶液を調製した。これらの調
製は、乾燥雰囲気で行った。グローブボックス中で操作
を行い、ガスは窒素ガスを用い、グローブボックス内の
乾燥度は湿度計で5%以下であった。
【0147】つぎに、前記処理を終えた基体を前記溶液
中に浸漬した。浸漬処理は、同じく乾燥雰囲気で行い、
溶液温度は23℃で、浸漬時間は1時間行った。この処
理において化学吸着分子は基体表面の水酸基と脱塩酸反
応をして、化学吸着膜ができる。
【0148】つぎに、基体表面の水酸基と化学反応して
おらず物理吸着している低分子化学吸着剤を取り除くた
めクロロホルムで洗浄を行った。前記処理と同じ雰囲気
内で15分間の撹拌洗浄を2回行った。
【0149】つぎに、前記処理を終えた基体を流水洗浄
した。この処理において、SiCl基は、隣の吸着分子
のSiCl基と反応する。この流水洗浄は、15分間実
施し、超純水を用いて行なった。
【0150】つぎに、酸化処理液を調製した。反応促進
剤のフッ化カリウム140mgをメタノール50mLに
溶かし、また、炭酸水素カリウム250mgをテトラヒ
ドロフラン50mLに溶かし、さらに、30容量%過酸
化水素水25mLを加えて作成した。過酸化水素酸化
は、以下の手続きで行った。室温中で十分に撹拌溶解
後、2つの溶液を混合して、過酸化水素反応液を作成
し、この溶液中に上記化学吸着膜が形成された基板を室
温中、10時間浸漬した。この浸漬処理によって、化学
吸着膜を形成する長鎖炭化水素分子末端のジメチルシリ
ル基のC−Si結合は切断され、化学吸着膜の長鎖炭化
水素分子末端に水酸基が形成された。
【0151】つぎに、長鎖炭化水素分子末端がOH基化
処理された基板を再度、化学式H(CH3 2 Si(C
2 18(CH3 2 SiClの化学吸着溶液に浸漬し
て2層目の化学吸着膜を形成した。なお、化学吸着溶液
の溶媒及び作成条件は前記と同じである。この処理おい
て、化学吸着累積膜が形成された。
【0152】つぎに、上述と同じ過酸化水素酸化を行
い、分子末端を水酸基に変化させ、さらに、化学式CF
3 (CH2 18(CH3 2 SiClで示される化学吸
着溶液に前記処理を終えた基体を浸漬して3層目の化学
吸着膜を形成した。
【0153】以上の潤滑膜の構成の断面図を図4に示す
と同様になった。前記処理済基体を用いて摺動試験を行
なった。荷重は、100グラム重とし、鋼体球を用い
て、10センチメートルの範囲で摺動した。摺動数が増
加しても動摩擦係数は初期の値と変わらず一様であり、
耐久性のある潤滑膜が形成できた。磁気記録ディスク表
面に本発明の累積構造の潤滑膜を形成してCSSテスト
を行い、20万回の走行テストをクリアした。
【0154】実施例13 まず、基体として酸化鉄の粉体を高分子バインダーの中
に充填し、ディスク状に成形した。この薄膜表面には、
水酸基が露出は乏しく、薄膜表面に活性な水素は少数で
ある。
【0155】つぎに、低分子化学吸着剤用溶液を調製し
た。低分子化学吸着剤層を構成する分子としてSiCl
4 を用いた。その分子の溶媒としてヘキサデカン80重
量%、四塩化炭素12重量%、クロロホルム8重量%の
混合溶媒を調製し、前記分子の濃度が1ミリモル/リッ
トルとなるように化学吸着溶液を調製した。これらの調
製は、乾燥雰囲気で行った。グローブボックス中で操作
を行い、ガスは窒素ガスを用い、グローブボックス内の
乾燥度は湿度計で5%以下であった。
【0156】つぎに、前記基体を前記溶液中に浸漬し
た。浸漬処理は、同じく乾燥雰囲気で行い、溶液温度は
23℃で、浸漬時間は1時間行った。この処理において
化学吸着分子は基体表面の水酸基と脱塩酸反応をして、
低分子化学吸着層ができる。
【0157】つぎに、基体表面の水酸基と化学反応して
おらず物理吸着している低分子化学吸着剤を取り除くた
めクロロホルムで洗浄を行った。前記処理と同じ雰囲気
内で15分間の撹拌洗浄を2回行った。
【0158】つぎに、前記処理を終えた基体を流水洗浄
した。この処理において、SiCl基は、SiOH基と
なる。この流水洗浄は、15分間実施し、超純水を用い
て行なった。
【0159】つぎに、化学吸着膜作成用溶液を調製し
た。化学吸着膜を構成する分子として長鎖アルキル基の
末端にビニル基を有し、他端にトリクロロシリル基を有
するCH2 =CH(CH2 18SiCl3 を用いた。前
記分子の溶媒としてヘキサデカン80重量%、四塩化炭
素12重量%、クロロホルム8重量%の混合溶媒を調製
し、前記分子の濃度が1ミリモル/リットルとなるよう
に化学吸着溶液を調製した。これらの調製は、乾燥雰囲
気で行った。グローブボックス中で操作を行い、ガスは
窒素ガスを用い、グローブボックス内の乾燥度は湿度計
で5%以下であった。
【0160】つぎに、前記基体を前記溶液中に浸漬し
た。浸漬処理は、同じく乾燥雰囲気で行い、溶液温度は
23℃で、浸漬時間は1時間行った。この処理において
化学吸着分子は基体表面の水酸基と脱塩酸反応をして、
化学吸着膜ができる。
【0161】つぎに、基体表面の水酸基と化学反応して
おらず物理吸着している化学吸着分子を取り除くためク
ロロホルムで洗浄を行った。化学吸着膜作成と同じ雰囲
気内で15分間の撹拌洗浄を2回行った。
【0162】つぎに、前記処理を終えた基体を流水洗浄
した。この処理において、SiCl基は、隣の吸着分子
のSiCl基と反応する。この流水洗浄は、15分間実
施し、超純水を用いて行なった。
【0163】つぎに、エネルギー線照射を行った。この
実施例では電子線照射を実施した。SUS製ホルダーの
上面をアルミホイルでカバーし、窒素ガスを導入できる
ようにした。照射用冶具を作成した。加速電圧300k
eV、電子電流50マイクロアンペア、ガス圧1気圧、
温度室温、照射スピード(吸収線量率)0.02Mra
d/sec、照射時間100秒の条件で上記処理済み基
体に電子線照射を行った。この処理によって、化学吸着
膜を形成する長鎖炭化水素分子末端の不飽和基(この実
施例ではアルカン基)はイミノ基及び/またはアミノ基
に変化された。
【0164】つぎに、長鎖炭化水素分子末端がイミノ基
及び/またはアミノ基化処理された基板を再度、化学式
CH2 =CH(CH2 18(CH3 2 SiClの化学
吸着溶液に浸漬して2層目の化学吸着膜を形成した。な
お、化学吸着溶液の溶媒及び作成条件は前記と同じであ
る。この処理おいて化学吸着累積膜が形成された。
【0165】つぎに、上述と同じ電子線照射を行い、分
子末端をイミノ基及び/またはアミノ基に変化させ、さ
らに、化学式CF3 (CH2 18(CH3 2 SiCl
で示される化学吸着溶液に前記処理を終えた基体を浸漬
して3層目の化学吸着膜を形成した。
【0166】以上の潤滑膜の構成の断面図は図4と同様
である。前記処理済基体を用いて摺動試験を行なった。
荷重は、100グラム重とし、鋼体球を用いて、10セ
ンチメートルの範囲で摺動した。摺動数が増加しても動
摩擦係数は初期の値と変わらず一様であり、耐久性のあ
る潤滑膜が形成できた。磁気記録ディスク表面に本発明
の累積構造の潤滑膜を形成してCSSテストを行い、2
0万回の走行テストをクリアした。
【0167】実施例14 まず、基体31として酸化鉄の粉体を高分子バインダー
の中に充填し、ディスク状に成形した。この薄膜表面に
は、水酸基が露出は乏しく、薄膜表面に活性な水素は少
数である。
【0168】つぎに、低分子化学吸着剤用溶液を調製し
た。低分子化学吸着層を構成する分子としてSiCl4
を用いた。その分子の溶媒としてヘキサデカン80重量
%、四塩化炭素12重量%、クロロホルム8重量%の混
合溶媒を調製し、前記分子の濃度が1ミリモル/リット
ルとなるように化学吸着溶液を調製した。これらの調製
は、乾燥雰囲気で行った。グローブボックス中で操作を
行い、ガスは窒素ガスを用い、グローブボックス内の乾
燥度は湿度計で5%以下であった。
【0169】つぎに、前記基体を前記溶液中に浸漬し
た。浸漬処理は、同じく乾燥雰囲気で行い、溶液温度は
23℃で、浸漬時間は1時間行った。この処理において
化学吸着分子は基体表面の水酸基と脱塩酸反応をして、
低分子化学吸着層32ができる。
【0170】つぎに、前記処理を終えた基体を流水洗浄
した。この処理において、SiCl基は、SiOH基と
なる。この流水洗浄は、15分間実施し、超純水を用い
て行なった。
【0171】つぎに、化学吸着膜作成用溶液を調製し
た。化学吸着膜を構成する分子として長鎖アルキル基の
末端にジメチルシリル基を有し、他端にトリクロロシリ
ル基を有するH(CH3 2 Si(CH2 18SiCl
3 を用いた。前記分子の溶媒としてヘキサデカン80重
量%、四塩化炭素12重量%、クロロホルム8重量%の
混合溶媒を調製し、前記分子の濃度が1ミリモル/リッ
トルとなるように化学吸着溶液を調製した。これらの調
製は、乾燥雰囲気で行った。グローブボックス中で操作
を行い、ガスは窒素ガスを用い、グローブボックス内の
乾燥度は湿度計で5%以下であった。
【0172】つぎに、前記処理を終えた基体を前記溶液
中に浸漬した。浸漬処理は、同じく乾燥雰囲気で行い、
溶液温度は23℃で、浸漬時間は1時間行った。この処
理において化学吸着分子は基体表面の水酸基と脱塩酸反
応をして、化学吸着膜33ができる。
【0173】つぎに、前記処理を終えた基体を流水洗浄
した。この処理において、SiCl基は、隣の吸着分子
のSiCl基と反応する。この流水洗浄は、15分間実
施し、超純水を用いて行なった。
【0174】つぎに、酸化処理液を調製した。反応促進
剤のフッ化カリウム140mgをメタノール50mLに
溶かし、また、炭酸水素カリウム250mgをテトラヒ
ドロフラン50mLに溶かし、さらに、30容量%過酸
化水素水25mLを加えて作成した。過酸化水素酸化
は、以下の手続きで行った。室温中で十分に撹拌溶解
後、2つの溶液を混合して、過酸化水素反応液を作成
し、この溶液中に上記化学吸着膜が形成された基板31
を室温中、10時間浸漬した。この浸漬処理によって、
化学吸着膜を形成する長鎖炭化水素分子末端のジメチル
シリル基のC−Si結合は切断され、化学吸着膜33の
長鎖炭化水素分子末端に水酸基が形成された。
【0175】つぎに、長鎖炭化水素分子末端がOH基化
処理された基板を再度、化学式H(CH3 2 Si(C
2 18(CH3 2 SiClの化学吸着溶液に浸漬し
て2層目の化学吸着膜34を形成した。なお、化学吸着
溶液の溶媒及び作成条件は前記と同じである。
【0176】つぎに、上述と同じ過酸化水素酸化を行
い、分子末端を水酸基に変化させ、さらに、化学式CF
3 (CH2 18(CH3 2 SiClで示される化学吸
着溶液に前記処理を終えた基体を浸漬して3層目の化学
吸着膜35を形成した。
【0177】つぎに、前記基体上の化学吸着膜表面に長
鎖炭化水素としてCH3 (CF2 17CH3 のクロロホ
ルム溶液を作成し、そこに前記処理済基体を浸漬した。
このときの溶液濃度は1.0グラム/リットルで、浸漬
スピード、引き上げスピード1.5mm/秒で行った。
形成はクリーンルーム雰囲気下でおこなった。この操作
により化学吸着表面に長鎖炭化水素の薄膜36(約1ナ
ノメーター)が形成された。
【0178】以上の潤滑膜の構成の断面図を図5に示
す。前記処理済基体を用いて摺動試験を行なった。荷重
は、100グラム重とし、鋼体球を用いて、10センチ
メートルの範囲で摺動した。摺動数が増加しても動摩擦
係数は初期の値と変わらず一様であり、耐久性のある潤
滑膜が形成できた。磁気記録ディスク表面に本発明の累
積構造の潤滑膜を形成してCSSテストを行い、20万
回の走行テストをクリアした。
【0179】実施例15 まず、基体として酸化鉄の粉体を高分子バインダーの中
に充填し、ディスク状に成形した。この薄膜表面には、
水酸基が露出は乏しく、薄膜表面に活性な水素は少数で
ある。
【0180】つぎに、低分子化学吸着剤用溶液を調製し
た。低分子化学吸着剤を構成する分子としてSiCl4
を用いた。その分子の溶媒としてヘキサデカン80重量
%、四塩化炭素12重量%、クロロホルム8重量%の混
合溶媒を調製し、前記分子の濃度が1ミリモル/リット
ルとなるように化学吸着溶液を調製した。これらの調製
は、乾燥雰囲気で行った。グローブボックス中で操作を
行い、ガスは窒素ガスを用い、グローブボックス内の乾
燥度は湿度計で5%以下であった。
【0181】つぎに、前記基体を前記溶液中に浸漬し
た。浸漬処理は、同じく乾燥雰囲気で行い、溶液温度は
23℃で、浸漬時間は1時間行った。この処理において
化学吸着分子は基体表面の水酸基と脱塩酸反応をして、
低分子化学吸着層ができる。
【0182】つぎに、前記処理を終えた基体を流水洗浄
した。この処理において、SiCl基は、SiOH基と
なる。この流水洗浄は、15分間実施し、超純水を用い
て行なった。
【0183】つぎに、化学吸着膜作成用溶液を調製し
た。化学吸着剤を構成する分子として長鎖アルキル基の
末端にビニル基を有し、他端にトリクロロシリル基を有
するCH2 =CH(CH2 18SiCl3 を用いた。前
記分子の溶媒としてヘキサデカン80重量%、四塩化炭
素12重量%、クロロホルム8重量%の混合溶媒を調製
し、前記分子の濃度が1ミリモル/リットルとなるよう
に化学吸着溶液を調製した。これらの調製は、乾燥雰囲
気で行った。グローブボックス中で操作を行い、ガスは
窒素ガスを用い、グローブボックス内の乾燥度は湿度計
で5%以下であった。
【0184】つぎに、前記基体を前記溶液中に浸漬し
た。浸漬処理は、同じく乾燥雰囲気で行い、溶液温度は
23℃で、浸漬時間は1時間行った。この処理において
化学吸着分子は基体表面の水酸基と脱塩酸反応をして、
化学吸着膜が形成できる。
【0185】つぎに、基体表面の水酸基と化学反応して
おらず物理吸着している化学吸着分子を取り除くためク
ロロホルムで洗浄を行った。化学吸着膜作成と同じ雰囲
気内で15分間の撹拌洗浄を2回行った。
【0186】つぎに、前記処理を終えた基体を流水洗浄
した。この処理において、SiCl基は、隣の吸着分子
のSiCl基と反応する。この流水洗浄は、15分間実
施し、超純水を用いて行なった。
【0187】つぎに、エネルギー線照射を行った。この
実施例では電子線照射を実施した。SUS製ホルダーの
上面をアルミホイルでカバーし、窒素ガスを導入できる
ようにした。照射用冶具を作成した。加速電圧300k
eV、電子電流50マイクロアンペア、ガス圧1気圧、
温度室温、照射スピード(吸収線量率)0.02Mra
d/sec、照射時間100秒の条件で上記処理済み基
体に電子線照射を行った。この処理によって、化学吸着
膜を形成する長鎖炭化水素分子末端の不飽和基(この実
施例ではアルカン基)はイミノ基及び/またはアミノ基
に変化された。
【0188】つぎに、長鎖炭化水素分子末端がイミノ基
及び/またはアミノ基化処理された基板を再度、化学式
CH2 =CH(CH2 18(CH3 2 SiClの化学
吸着溶液に浸漬して2層目の化学吸着膜を形成した。な
お、化学吸着溶液の溶媒及び作成条件は前記と同じであ
る。この処理おいて化学吸着累積膜が形成された。
【0189】つぎに、上述と同じ電子線照射を行い、分
子末端をイミノ基及び/またはアミノ基に変化させ、さ
らに、化学式CF3 (CH2 18(CH3 2 SiCl
で示される化学吸着溶液に前記処理を終えた基体を浸漬
して3層目の化学吸着膜を形成した。
【0190】つぎに、前記基体上の化学吸着膜表面に長
鎖炭化水素としてCH3 (CF2 17CH3 のクロロホ
ルム溶液を作成し、そこに前記処理済基体を浸漬した。
このときの溶液濃度は1.0グラム/リットルで、浸漬
スピード、引き上げスピード1.5mm/秒で行った。
形成はクリーンルーム雰囲気下でおこなった。この操作
により化学吸着表面に長鎖炭化水素の薄膜(約1ナノメ
ーター)が形成された。
【0191】以上の潤滑膜の構成の断面図は図5と同様
である。前記処理済基体を用いて摺動試験を行なった。
荷重は、100グラム重とし、鋼体球を用いて、10セ
ンチメートルの範囲で摺動した。摺動数が増加しても動
摩擦係数は初期の値と変わらず一様であり、耐久性のあ
る潤滑膜が形成できた。磁気記録ディスク表面に本発明
の累積構造の潤滑膜を形成してCSSテストを行い、2
0万回の走行テストをクリアした。
【0192】実施例16 まず、基体として酸化鉄の粉体を高分子バインダーの中
に充填し、ディスク状に成形した。この薄膜表面には、
水酸基が露出は乏しく、薄膜表面に活性な水素は少数で
ある。
【0193】つぎに、低分子化学吸着剤用溶液を調製し
た。低分子化学吸着剤を構成する分子としてSiCl4
を用いた。その分子の溶媒としてヘキサデカン80重量
%、四塩化炭素12重量%、クロロホルム8重量%の混
合溶媒を調製し、前記分子の濃度が1ミリモル/リット
ルとなるように化学吸着溶液を調製した。これらの調製
は、乾燥雰囲気で行った。グローブボックス中で操作を
行い、ガスは窒素ガスを用い、グローブボックス内の乾
燥度は湿度計で5%以下であった。
【0194】つぎに、前記基体を前記溶液中に浸漬し
た。浸漬処理は、同じく乾燥雰囲気で行い、溶液温度は
23℃で、浸漬時間は1時間行った。この処理において
化学吸着分子は基体表面の水酸基と脱塩酸反応をして、
低分子化学吸着層ができる。
【0195】つぎに、前記処理を終えた基体を流水洗浄
した。この処理において、SiCl基は、SiOH基と
なる。この流水洗浄は、15分間実施し、超純水を用い
て行なった。
【0196】つぎに、化学吸着膜作成用溶液を調製し
た。化学吸着膜を構成する分子として長鎖アルキル基の
末端にジメチルシリル基を有し、他端にトリクロロシリ
ル基を有するH(CH3 2 Si(CH2 18SiCl
3 を用いた。前記分子の溶媒としてヘキサデカン80重
量%、四塩化炭素12重量%、クロロホルム8重量%の
混合溶媒を調製し、前記分子の濃度が1ミリモル/リッ
トルとなるように化学吸着溶液を調製した。これらの調
製は、乾燥雰囲気で行った。グローブボックス中で操作
を行い、ガスは窒素ガスを用い、グローブボックス内の
乾燥度は湿度計で5%以下であった。
【0197】つぎに、前記処理を終えた基体を前記溶液
中に浸漬した。浸漬処理は、同じく乾燥雰囲気で行い、
溶液温度は23℃で、浸漬時間は1時間行った。この処
理において化学吸着分子は基体表面の水酸基と脱塩酸反
応をして、化学吸着膜ができる。
【0198】つぎに、基体表面の水酸基と化学反応して
おらず物理吸着している低分子化学吸着剤を取り除くた
めクロロホルムで洗浄を行った。前記処理と同じ雰囲気
内で15分間の撹拌洗浄を2回行った。
【0199】つぎに、前記処理を終えた基体を流水洗浄
した。この処理において、SiCl基は、隣の吸着分子
のSiCl基と反応する。この流水洗浄は、15分間実
施し、超純水を用いて行なった。
【0200】つぎに、酸化処理液を調製した。反応促進
剤のフッ化カリウム140mgをメタノール50mLに
溶かし、また、炭酸水素カリウム250mgをテトラヒ
ドロフラン50mLに溶かし、さらに、30容量%過酸
化水素水25mLを加えて作成した。過酸化水素酸化
は、以下の手続きで行った。室温中で十分に撹拌溶解
後、2つの溶液を混合して、過酸化水素反応液を作成
し、この溶液中に上記化学吸着膜が形成された基板を室
温中、10時間浸漬した。この浸漬処理によって、化学
吸着膜を形成する長鎖炭化水素分子末端のジメチルシリ
ル基のC−Si結合は切断され、化学吸着膜の長鎖炭化
水素分子末端に水酸基が形成された。
【0201】つぎに、長鎖炭化水素分子末端がOH基化
処理された基板を再度、化学式H(CH3 2 Si(C
2 18(CH3 2 SiClの化学吸着溶液に浸漬し
て2層目の化学吸着膜を形成した。なお、化学吸着溶液
の溶媒及び作成条件は前記と同じである。
【0202】つぎに、上述と同じ過酸化水素酸化を行
い、分子末端を水酸基に変化させ、さらに、化学式CF
3 (CH2 18(CH3 2 SiClで示される化学吸
着溶液に前記処理を終えた基体を浸漬して3層目の化学
吸着膜を形成した。
【0203】つぎに、前記基体上の化学吸着膜表面に長
鎖炭化水素としてCH3 (CF2 17CH3 のクロロホ
ルム溶液を作成し、そこに前記処理済基体を浸漬した。
このときの溶液濃度は1.0グラム/リットルで、浸漬
スピード、引き上げスピード1.5mm/秒で行った。
形成はクリーンルーム雰囲気下でおこなった。この操作
により化学吸着表面に長鎖炭化水素の薄膜(約1ナノメ
ーター)が形成された。
【0204】以上の潤滑膜の構成の断面図を図5に示す
と同様になった。前記処理済基体を用いて摺動試験を行
なった。荷重は、100グラム重とし、鋼体球を用い
て、10センチメートルの範囲で摺動した。摺動数が増
加しても動摩擦係数は初期の値と変わらず一様であり、
耐久性のある潤滑膜が形成できた。磁気記録ディスク表
面に本発明の累積構造の潤滑膜を形成してCSSテスト
を行い、20万回の走行テストをクリアした。
【0205】実施例17 まず、基体として酸化鉄の粉体を高分子バインダーの中
に充填し、ディスク状に成形した。この薄膜表面には、
水酸基が露出は乏しく、薄膜表面に活性な水素は少数で
ある。
【0206】つぎに、低分子化学吸着剤用溶液を調製し
た。低分子化学吸着剤を構成する分子としてSiCl4
という4つのトリクロロシリル基を有する化学吸着剤を
用いた。その分子の溶媒としてヘキサデカン80重量
%、四塩化炭素12重量%、クロロホルム8重量%の混
合溶媒を調製し、前記分子の濃度が1ミリモル/リット
ルとなるように化学吸着溶液を調製した。これらの調製
は、乾燥雰囲気で行った。グローブボックス中で操作を
行い、ガスは窒素ガスを用い、グローブボックス内の乾
燥度は湿度計で5%以下であった。
【0207】つぎに、前記基体を前記溶液中に浸漬し
た。浸漬処理は、同じく乾燥雰囲気で行い、溶液温度は
23℃で、浸漬時間は1時間行った。この処理において
化学吸着分子は基体表面の水酸基と脱塩酸反応をして、
低分子化学吸着層ができる。
【0208】つぎに、基体表面の水酸基と化学反応して
おらず物理吸着している低分子化学吸着剤を取り除くた
めクロロホルムで洗浄を行った。前記処理と同じ雰囲気
内で15分間の撹拌洗浄を2回行った。
【0209】つぎに、前記処理を終えた基体を流水洗浄
した。この処理において、SiCl基は、SiOH基と
なる。この流水洗浄は、15分間実施し、超純水を用い
て行なった。
【0210】つぎに、化学吸着膜作成用溶液を調製し
た。化学吸着膜を構成する分子として長鎖アルキル基の
末端にビニル基を有し、他端にトリクロロシリル基を有
するCH2 =CH(CH2 18SiCl3 を用いた。前
記分子の溶媒としてヘキサデカン80重量%、四塩化炭
素12重量%、クロロホルム8重量%の混合溶媒を調製
し、前記分子の濃度が1ミリモル/リットルとなるよう
に化学吸着溶液を調製した。これらの調製は、乾燥雰囲
気で行った。グローブボックス中で操作を行い、ガスは
窒素ガスを用い、グローブボックス内の乾燥度は湿度計
で5%以下であった。
【0211】つぎに、前記基体を前記溶液中に浸漬し
た。浸漬処理は、同じく乾燥雰囲気で行い、溶液温度は
23℃で、浸漬時間は1時間行った。この処理において
化学吸着分子は基体表面の水酸基と脱塩酸反応をして、
化学吸着膜ができる。
【0212】つぎに、基体表面の水酸基と化学反応して
おらず物理吸着している化学吸着分子を取り除くためク
ロロホルムで洗浄を行った。化学吸着膜作成と同じ雰囲
気内で15分間の撹拌洗浄を2回行った。
【0213】つぎに、前記処理を終えた基体を流水洗浄
した。この処理において、SiCl基は、隣の吸着分子
のSiCl基と反応する。この流水洗浄は、15分間実
施し、超純水を用いて行なった。
【0214】つぎに、エネルギー線照射を行った。この
実施例では電子線照射を実施した。SUS製ホルダーの
上面をアルミホイルでカバーし、窒素ガスを導入できる
ようにした。照射用冶具を作成した。加速電圧300k
eV、電子電流50マイクロアンペア、ガス圧1気圧、
温度室温、照射スピード(吸収線量率)0.02Mra
d/sec、照射時間100秒の条件で上記処理済み基
体に電子線照射を行った。この処理によって、化学吸着
膜を形成する長鎖炭化水素分子末端の不飽和基(この実
施例ではビニル基)はイミノ基及び/またはアミノ基に
変化された。
【0215】つぎに、長鎖炭化水素分子末端がイミノ基
及び/またはアミノ基化処理された基板を再度、化学式
CH2 =CH(CH2 18(CH3 2 SiClの化学
吸着溶液に浸漬して2層目の化学吸着膜を形成した。な
お、化学吸着溶液の溶媒及び作成条件は前記と同じであ
る。この処理おいて化学吸着累積膜が形成された。
【0216】つぎに、上述と同じ電子線照射を行い、分
子末端をイミノ基及び/またはアミノ基に変化させ、さ
らに、化学式CF3 (CH2 18(CH3 2 SiCl
で示される化学吸着溶液に前記処理を終えた基体を浸漬
して3層目の化学吸着膜を形成した。
【0217】つぎに、前記基体上の化学吸着膜表面に長
鎖炭化水素としてCH3 (CF2 17CH3 のクロロホ
ルム溶液を作成し、そこに前記処理済基体を浸漬した。
このときの溶液濃度は1.0グラム/リットルで、浸漬
スピード、引き上げスピード1.5mm/秒で行った。
形成はクリーンルーム雰囲気下でおこなった。この操作
により化学吸着表面に長鎖炭化水素の薄膜(約1ナノメ
ーター)が形成された。
【0218】以上の潤滑膜の構成の断面図は図5と同様
である。前記処理済基体を用いて摺動試験を行なった。
荷重は、100グラム重とし、鋼体球を用いて、10セ
ンチメートルの範囲で摺動した。摺動数が増加しても動
摩擦係数は初期の値と変わらず一様であり、耐久性のあ
る潤滑膜が形成できた。磁気記録ディスク表面に本発明
の累積構造の潤滑膜を形成してCSSテストを行い、2
0万回の走行テストをクリアした。
【0219】実施例18 まず、基体41としてガラスを用い、そのガラス表面の
有機洗浄をアセトンを用いて行った。この薄膜表面に
は、水酸基が多数露出している。
【0220】つぎに、化学吸着膜作成用溶液を調製し
た。化学吸着膜を構成する分子として長鎖アルキル基の
末端にジメチルシリル基を有し、他端にトリクロロシリ
ル基を有するH(CH3 2 Si(CH2 18SiCl
3 を用いた。前記分子の溶媒としてヘキサデカン80重
量%、四塩化炭素12重量%、クロロホルム8重量%の
混合溶媒を調製し、前記分子の濃度が1ミリモル/リッ
トルとなるように化学吸着溶液を調製した。これらの調
製は、乾燥雰囲気で行った。グローブボックス中で操作
を行い、ガスは窒素ガスを用い、グローブボックス内の
乾燥度は湿度計で5%以下であった。
【0221】つぎに、前記基体41を前記溶液中に浸漬
した。浸漬処理は、同じく乾燥雰囲気で行い、溶液温度
は23℃で、浸漬時間は1時間行った。この処理におい
て化学吸着分子は基体表面の水酸基と脱塩酸反応をし
て、化学吸着膜42ができる。
【0222】つぎに、前記処理を終えた基体を流水洗浄
した。この処理において、SiCl基は、隣の吸着分子
のSiCl基と反応する。この流水洗浄は、15分間実
施し、超純水を用いて行なった。
【0223】つぎに、酸化処理液を調製した。反応促進
剤のフッ化カリウム140mgをメタノール50mLに
溶かし、また、炭酸水素カリウム250mgをテトラヒ
ドロフラン50mLに溶かし、さらに、30容量%過酸
化水素水25mLを加えて作成した。過酸化水素酸化
は、以下の手続きで行った。室温中で十分に撹拌溶解
後、2つの溶液を混合して、過酸化水素反応液を作成
し、この溶液中に上記化学吸着膜が形成された基板41
を室温中、10時間浸漬した。この浸漬処理によって、
化学吸着膜42を形成する長鎖炭化水素分子末端のジメ
チルシリル基のC−Si結合は切断され、化学吸着膜4
2の長鎖炭化水素分子末端に水酸基が形成された。
【0224】つぎに、長鎖炭化水素分子末端がOH基化
処理された基板41を再度、化学式H(CH3 2 Si
(CH2 18(CH3 2 SiClの化学吸着溶液に浸
漬して2層目の化学吸着膜43を形成した。なお、化学
吸着溶液の溶媒及び作成条件は前記と同じである。
【0225】つぎに、上述と同じ過酸化水素酸化を行
い、分子末端を水酸基に変化させ、さらに、化学式CF
3 (CH4 18(CH3 2 SiClで示される化学吸
着溶液に前記処理を終えた基体41を浸漬して3層目の
化学吸着膜44を形成した。
【0226】次に、上記処理を終えた基体41表面に長
鎖炭化水素の薄膜45を形成して、潤滑膜とした。以上
の潤滑膜の構成の断面図を図6に示す。5000回の摺
動試験で0.1以下の動摩擦係数が得られた。
【0227】実施例19 まず、基体51として酸化鉄の粉体を高分子バインダー
の中に充填し、ディスク状に成形し、その表面にシリコ
ン酸化物の薄膜を形成した。この薄膜表面には、水酸基
が露出しており、薄膜表面に活性な水素が数多く存在し
ている。
【0228】つぎに、化学吸着膜作成用溶液を調製し
た。化学吸着膜を構成する分子として長鎖アルキル基の
末端にビニル基を有し、他端にトリクロロシリル基を有
するCH2 =CH(CH2 18SiCl3 を用いた。前
記分子の溶媒としてヘキサデカン80重量%、四塩化炭
素12重量%、クロロホルム8重量%の混合溶媒を調製
し、前記分子の濃度が1ミリモル/リットルとなるよう
に化学吸着溶液を調製した。これらの調製は、乾燥雰囲
気で行った。グローブボックス中で操作を行い、ガスは
窒素ガスを用い、グローブボックス内の乾燥度は湿度計
で5%以下であった。
【0229】つぎに、前記基体51を前記溶液中に浸漬
した。浸漬処理は、同じく乾燥雰囲気で行い、溶液温度
は23℃で、浸漬時間は1時間行った。この処理におい
て化学吸着分子は基体表面の水酸基と脱塩酸反応をし
て、化学吸着膜52が形成できる。
【0230】つぎに、基体表面の水酸基と化学反応して
おらず物理吸着している化学吸着分子を取り除くためク
ロロホルムで洗浄を行った。化学吸着膜作成と同じ雰囲
気内で15分間の撹拌洗浄を2回行った。
【0231】つぎに、前記処理を終えた基体を流水洗浄
した。この処理において、SiCl基は、隣の吸着分子
のSiCl基と反応する。この流水洗浄は、15分間実
施し、超純水を用いて行なった。
【0232】つぎに、エネルギー線照射を行った。この
実施例では電子線照射を実施した。SUS製ホルダーの
上面をアルミホイルでカバーし、窒素ガスを導入できる
ようにした。照射用冶具を作成した。加速電圧300k
eV、電子電流50マイクロアンペア、ガス圧1気圧、
温度室温、照射スピード(吸収線量率)0.02Mra
d/sec、照射時間100秒の条件で上記処理済み基
体に電子線照射を行った。この処理によって、化学吸着
膜を形成する長鎖炭化水素分子末端の不飽和基(この実
施例ではアルカン基)はイミノ基及び/またはアミノ基
に変化した。
【0233】つぎに、化学吸着膜作成用溶液を調製し
た。化学吸着膜を構成する分子として長鎖アルキル基の
末端に複数のフッ化炭素基を有し、他端にモノクロロシ
リル基を有するCF3 (CF2 6 (CH2 3 (CH
3 2 SiClと末端にメチル基を有し、他端にモノク
ロロシリル基を有するCH3 (CH2 18(CH3 2
SiClを用いた。前記分子の溶媒としてヘキサデカン
80重量%、四塩化炭素12重量%、クロロホルム8重
量%の混合溶媒を調製し、前記両分子の濃度が1ミリモ
ル/リットルとなるように化学吸着溶液を調製した。こ
れらの調製は、乾燥雰囲気で行った。グローブボックス
中で操作を行い、ガスは窒素ガスを用い、グローブボッ
クス内の乾燥度は湿度計で5%以下であった。
【0234】つぎに、前記化学吸着膜52が形成された
基体51を前記溶液中に浸漬した。浸漬処理は、同じく
乾燥雰囲気で行い、溶液温度は23℃で、浸漬時間は1
時間行った。この処理において化学吸着分子は、化学吸
着膜52表面のイミノ基と脱塩酸反応をして(化14)
及び(化15)に示すように2種類の化学吸着分子が均
等に吸着した化学吸着膜53を形成した。
【0235】
【化14】
【0236】
【化15】
【0237】つぎに、反応していない分子を基体上から
取り除くため、クロロホルムで洗浄した。この処理も乾
燥雰囲気で行なった。洗浄操作は、20分間の浸漬を2
回行なった。その後、乾燥雰囲気中でクロロホルムを蒸
発させ、乾燥雰囲気外へ取り出した。
【0238】つぎに、前記処理を終えた基体を流水洗浄
した。この流水洗浄は、15分間実施し、超純水を用い
て行なった。つぎに、前記基体上の化学吸着膜表面に長
鎖炭化水素としてCH3 (CF2 17CH3 のクロロホ
ルム溶液を作成し、そこに前記処理済基体を浸漬した。
このときの溶液濃度は1.0グラム/リットルで、浸漬
スピード、引き上げスピード1.5mm/秒で行った。
形成はクリーンルーム雰囲気下でおこなった。この操作
により化学吸着表面に長鎖炭化水素の薄膜54(約1ナ
ノメーター)が形成された。以上の潤滑膜の構成の断面
図を図7に示すと同様になった。
【0239】磁気記録ディスク表面に本発明の潤滑膜を
形成してCSSテストを行い、20万回の走行テストを
クリアした。 実施例20 まず、基体61として酸化鉄の粉体を高分子バインダー
の中に充填し、ディスク状に成形し、その表面にシリコ
ン酸化物の薄膜を形成した。この薄膜表面には、水酸基
が露出しており、薄膜表面に活性な水素が数多く存在し
ている。
【0240】つぎに、化学吸着膜作成用溶液を調製し
た。化学吸着膜を構成する分子として長鎖アルキル基の
末端にビニル基を有し、他端にトリクロロシリル基を有
するCH2 =CH(CH2 18SiCl3 を用いた。前
記分子の溶媒としてヘキサデカン80重量%、四塩化炭
素12重量%、クロロホルム8重量%の混合溶媒を調製
し、前記分子の濃度が1ミリモル/リットルとなるよう
に化学吸着溶液を調製した。これらの調製は、乾燥雰囲
気で行った。グローブボックス中で操作を行い、ガスは
窒素ガスを用い、グローブボックス内の乾燥度は湿度計
で5%以下であった。
【0241】つぎに、前記基体61を前記溶液中に浸漬
した。浸漬処理は、同じく乾燥雰囲気で行い、溶液温度
は23℃で、浸漬時間は1時間行った。この処理におい
て化学吸着分子は基体表面の水酸基と脱塩酸反応をし
て、化学吸着膜62が形成できる。
【0242】つぎに、基体表面の水酸基と化学反応して
おらず物理吸着している化学吸着分子を取り除くためク
ロロホルムで洗浄を行った。化学吸着膜作成と同じ雰囲
気内で15分間の撹拌洗浄を2回行った。
【0243】つぎに、前記処理を終えた基体を流水洗浄
した。この処理において、SiCl基は、隣の吸着分子
のSiCl基と反応する。この流水洗浄は、15分間実
施し、超純水を用いて行なった。
【0244】つぎに、エネルギー線照射を行った。この
実施例では電子線照射を実施した。SUS製ホルダーの
上面をアルミホイルでカバーし、窒素ガスを導入できる
ようにした。照射用冶具を作成した。加速電圧300k
eV、電子電流50マイクロアンペア、ガス圧1気圧、
温度室温、照射スピード(吸収線量率)0.02Mra
d/sec、照射時間100秒の条件で上記処理済み基
体に電子線照射を行った。この処理によって、化学吸着
膜を形成する長鎖炭化水素分子末端の不飽和基(この実
施例ではアルカン基)はイミノ基及び/またはアミノ基
に変化した。
【0245】つぎに、化学吸着膜作成用溶液を調製し
た。化学吸着膜を構成する分子として長鎖アルキル基の
末端に複数のフッ化炭素基を有し、かつ、側鎖の末端に
メチル基を有し、他端にトリクロロシリル基を有する
(化16)に示すものを用いた。
【0246】
【化16】
【0247】前記分子の溶媒としてヘキサデカン80重
量%、四塩化炭素12重量%、クロロホルム8重量%の
混合溶媒を調製し、前記両分子の濃度が1ミリモル/リ
ットルとなるように化学吸着溶液を調製した。これらの
調製は、乾燥雰囲気で行った。グローブボックス中で操
作を行い、ガスは窒素ガスを用い、グローブボックス内
の乾燥度は湿度計で5%以下であった。
【0248】つぎに、前記化学吸着膜62を形成した基
体61を前記溶液中に浸漬した。浸漬処理は、同じく乾
燥雰囲気で行い、溶液温度は23℃で、浸漬時間は1時
間行った。この処理において化学吸着分子は化学吸着膜
62表面のイミノ基と脱塩酸反応をして(化17)に示
すように化学吸着膜63が形成した。
【0249】
【化17】
【0250】つぎに、反応していない分子を基体上から
取り除くため、クロロホルムで洗浄した。この処理も乾
燥雰囲気で行なった。洗浄操作は、20分間の浸漬を2
回行なった。その後、乾燥雰囲気中でクロロホルムを蒸
発させ、乾燥雰囲気外へ取り出した。
【0251】つぎに、前記処理を終えた基体を流水洗浄
した。この流水洗浄は、15分間実施し、超純水を用い
て行なった。つぎに、前記基体上の化学吸着膜表面に長
鎖炭化水素としてCH3 (CF2 17CH3 のクロロホ
ルム溶液を作成し、そこに前記処理済基体を浸漬した。
このときの溶液濃度は1.0グラム/リットルで、浸漬
スピード、引き上げスピード1.5mm/秒で行った。
形成はクリーンルーム雰囲気下でおこなった。この操作
により化学吸着表面に長鎖炭化水素の薄膜64(約1ナ
ノメーター)が形成された。以上の潤滑膜の構成の断面
図を図8に示すと同様になった。。
【0252】磁気記録ディスク表面に本発明の潤滑膜を
形成してCSSテストを行い、20万回の走行テストを
クリアした。 実施例21 まず、基体としてSUS基体71の水酸基数の増加を行
った。低分子化学吸着剤用溶液を調製した。低分子化学
吸着剤層を構成する分子としてSiCl4 という4つの
トリクロロシリル基を有する化学吸着剤を用いた。その
分子の溶媒としてヘキサデカン80重量%、四塩化炭素
12重量%、クロロホルム8重量%の混合溶媒を調製
し、前記分子の濃度が1ミリモル/リットルとなるよう
に化学吸着溶液を調製した。これらの調製は、乾燥雰囲
気で行った。グローブボックス中で操作を行い、ガスは
窒素ガスを用い、グローブボックス内の乾燥度は湿度計
で5%以下であった。
【0253】つぎに、前記基体を前記溶液中に浸漬し
た。浸漬処理は、同じく乾燥雰囲気で行い、溶液温度は
23℃で、浸漬時間は1時間行った。この処理において
化学吸着分子は基体表面の水酸基と脱塩酸反応をして、
低分子化学吸着剤層72ができる。
【0254】つぎに、基体表面の水酸基と化学反応して
おらず物理吸着している低分子化学吸着剤を取り除くた
めクロロホルムで洗浄を行った。前記処理と同じ雰囲気
内で15分間の撹拌洗浄を2回行った。
【0255】つぎに、前記処理を終えた基体を流水洗浄
した。この処理において、SiCl基は、SiOH基と
なる。この流水洗浄は、15分間実施し、超純水を用い
て行なった。
【0256】つぎに、化学吸着膜作成用溶液を調製し
た。化学吸着膜を構成する分子として長鎖アルキル基の
末端にビニル基を有し、他端にトリクロロシリル基を有
するCH2 =CH(CH2 18SiCl3 を用いた。前
記分子の溶媒としてヘキサデカン80重量%、四塩化炭
素12重量%、クロロホルム8重量%の混合溶媒を調製
し、前記分子の濃度が1ミリモル/リットルとなるよう
に化学吸着溶液を調製した。これらの調製は、乾燥雰囲
気で行った。グローブボックス中で操作を行い、ガスは
窒素ガスを用い、グローブボックス内の乾燥度は湿度計
で5%以下であった。
【0257】つぎに、前記基体を前記溶液中に浸漬し
た。浸漬処理は、同じく乾燥雰囲気で行い、溶液温度は
23℃で、浸漬時間は1時間行った。この処理において
化学吸着分子は基体表面の水酸基と脱塩酸反応をして、
化学吸着膜73ができる。
【0258】つぎに、基体表面の水酸基と化学反応して
おらず物理吸着している化学吸着分子を取り除くためク
ロロホルムで洗浄を行った。化学吸着膜作成と同じ雰囲
気内で15分間の撹拌洗浄を2回行った。
【0259】つぎに、前記処理を終えた基体を流水洗浄
した。この処理において、SiCl基は、隣の吸着分子
のSiCl基と反応する。この流水洗浄は、15分間実
施し、超純水を用いて行なった。
【0260】つぎに、エネルギー線照射を行った。この
実施例では電子線照射を実施した。SUS製ホルダーの
上面をアルミホイルでカバーし、窒素ガスを導入できる
ようにした。照射用冶具を作成した。加速電圧300k
eV、電子電流50マイクロアンペア、ガス圧1気圧、
温度室温、照射スピード(吸収線量率)0.02Mra
d/sec、照射時間100秒の条件で上記処理済み基
体に電子線照射を行った。この処理によって、化学吸着
膜を形成する長鎖炭化水素分子末端の不飽和基(この実
施例ではアルカン基)はイミノ基及び/またはアミノ基
に変化された。
【0261】つぎに、長鎖炭化水素分子末端がイミノ基
及び/またはアミノ基化処理された基板を再度、化学式
CH2 =CH(CH2 18(CH3 2 SiClの化学
吸着溶液に浸漬して2層目の化学吸着膜を形成した。な
お、化学吸着溶液の溶媒及び作成条件は前記と同じであ
る。この処理おいて化学吸着累積膜74が形成された。
【0262】つぎに、上述と同じ電子線照射を行い、分
子末端をイミノ基及び/またはアミノ基に変化させ、さ
らに、化学式CF3 (CH2 18(CH3 2 SiCl
で示される化学吸着溶液に前記処理を終えた基体を浸漬
して3層目の化学吸着膜75を形成した。
【0263】つぎに、前記基体上の化学吸着膜表面に長
鎖炭化水素としてCH3 (CF2 17CH3 のクロロホ
ルム溶液を作成し、そこに前記処理済基体を浸漬した。
このときの溶液濃度は1.0グラム/リットルで、浸漬
スピード、引き上げスピード1.5mm/秒で行った。
形成はクリーンルーム雰囲気下でおこなった。この操作
により化学吸着表面に長鎖炭化水素の薄膜76(約1ナ
ノメーター)が形成された。
【0264】以上の潤滑膜の構成の断面図は図9と同様
である。前記処理済基体を用いて摺動試験を行なった。
荷重は、100グラム重とし、鋼体球を用いて、10セ
ンチメートルの範囲で摺動した。摺動数が増加しても動
摩擦係数は初期の値と変わらず一様であり、耐久性のあ
る潤滑膜が形成できた。5000回の摺動試験で0.1
の動摩擦係数が得られた。
【0265】実施例22 半導体プロセスを駆使して、シリコン基体表面上にミク
ロンレベルの歯車を形成した。上記歯車表面に実施例1
に示す方法によって潤滑膜を形成した。本発明により歯
車と軸との摺動ならびに歯車同志の摺動が潤滑になり、
回転にむらが生じず、また、プロセスのばらつきをカバ
ーできるようになった。
【0266】なお、化学吸着単分子膜表面に塗布する有
機分子が長鎖炭化水素系脂肪酸及び脂肪酸エステル、シ
リコン誘導体、脂肪酸塩、脂肪酸アミド、フッ素化炭素
誘導体のうち少なくとも1種類であればよい。
【0267】実施例23 まず、基体として酸化鉄の粉体を高分子バインダーの中
に充填し、ディスク状に成形し、その表面にシリコン酸
化物の薄膜を形成した。この薄膜表面には、水酸基が露
出しており、薄膜表面に活性な水素が数多く存在してい
る。
【0268】つぎに、化学吸着膜作成用溶液を調製し
た。化学吸着膜を構成する分子として長鎖アルキル基の
末端にジメチルシリル基を有し、他端にトリクロロシリ
ル基を有するH(CH3 2 Si(CH2 18SiCl
3 を用いた。前記分子の濃度が1ミリモル/リットルと
なるように前記化学吸着分子のクロロホルム溶液を調製
した。これらの調製は、乾燥雰囲気で行った。グローブ
ボックス中で操作を行い、ガスは窒素ガスを用い、グロ
ーブボックス内の乾燥度は湿度計で5%以下であった。
【0269】つぎに、前記クロロホルム溶液を加温し、
かつ、超音波振動を与えて前記化学吸着分子が飛散し易
い条件を作り、乾燥雰囲気で前記基体の暴露を行った。
暴露時間は1時間行った。この処理において化学吸着分
子は基体表面の水酸基と脱塩酸反応をして、化学吸着膜
ができた。
【0270】つぎに、前記処理を終えた基体を流水洗浄
した。この処理において、SiCl基は、隣の吸着分子
のSiCl基と反応する。この流水洗浄は、15分間実
施し、超純水を用いて行なった。
【0271】つぎに、酸化処理液を調製した。反応促進
剤のフッ化カリウム140mgをメタノール50mLに
溶かし、また、炭酸水素カリウム250mgをテトラヒ
ドロフラン50mLに溶かし、さらに、30容量%過酸
化水素水25mLを加えて作成した。過酸化水素酸化
は、以下の手続きで行った。室温中で十分に撹拌溶解
後、2つの溶液を混合して、過酸化水素反応液を作成
し、この溶液中に上記化学吸着膜が形成された基板を室
温中、10時間浸漬した。この浸漬処理によって、化学
吸着膜を形成する長鎖炭化水素分子末端のジメチルシリ
ル基のC−Si結合は切断され、化学吸着膜の長鎖炭化
水素分子末端に水酸基が形成された。
【0272】つぎに、長鎖炭化水素分子末端がOH基化
処理された基板を再度、化学式H(CH3 2 Si(C
2 18(CH3 2 SiClの化学吸着溶液に浸漬し
て2層目の化学吸着膜を形成した。なお、化学吸着溶液
の溶媒及び作成条件は前記と同じである。
【0273】つぎに、上述と同じ過酸化水素酸化を行
い、分子末端を水酸基に変化させ、さらに、化学式CF
3 (CH2 18(CH3 2 SiClで示される化学吸
着溶液に前記処理を終えた基体を浸漬して3層目の化学
吸着膜を形成した。
【0274】以上の潤滑膜の構成の断面図を図1と同様
になった。なお、以上の実施例では、おもに記録媒体の
潤滑剤について示したが、ハードディスクのほか、磁気
テープ、磁気カード、光磁気記録ディスク、メモリーカ
ード、また、クランク、シャフト、ベアリング、マイク
ロメカニクスの摺動部にも有効に使用できることは勿論
である。
【0275】
【発明の効果】以上説明した通り本発明によれば、潤滑
膜を必要とする基体の少なくとも一方の表面に、長鎖状
分子を化学結合させた化学吸着膜を形成し、さらにその
上に化学吸着膜の累積膜を形成することにより、例え
ば、磁気ヘッドや磁気テープなどの磁気記録媒体の走行
時に接触する各種部材などとの摩擦によって、前記化学
吸着膜が柔軟性を備えることにより、削り落とされるこ
となく、滑走耐久性、走行性、耐摩耗性に優れ、それを
長期間維持することができる。この効果は、記録媒体だ
けでなくあらゆる摺動部材に応用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1,2,3,4,5,23の潤
滑膜の断面図
【図2】本発明の一実施例の摺動試験結果
【図3】本発明の実施例6,7,8,9の潤滑膜の断面
【図4】本発明の実施例10,11,12,13の潤滑
膜の断面図
【図5】本発明の実施例14,15,16,17の潤滑
膜の断面図
【図6】本発明の実施例18の潤滑膜の断面図
【図7】本発明の実施例19の潤滑膜の断面図
【図8】本発明の実施例20の潤滑膜の断面図
【図9】本発明の実施例21の潤滑膜の断面図
【符号の説明】
1,11,21,31,51,61:酸化鉄の粉体を高
分子バインダーの中に充填し、ディスク状に成形し、そ
の表面にシリコン酸化物の薄膜を形成した基体 2,3,4,12,13,14,23,24,25,3
3,34,35,42,43,44,52,62,6
3,73,74:化学吸着膜 15,36,45,54,64,75:長鎖炭化水素の
薄膜 22,32,72:低分子化学吸着剤層 41:ガラス基体 53:異なる2分子からなる化学吸着膜 63:側鎖を持つ化学吸着膜 71:ステンレス鋼(SUS)基体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C10N 40:02 40:18 50:08 70:00

Claims (20)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基体の少なくとも一方の表面に、炭素鎖
    有機分子を含む化学吸着膜が基体表面と共有結合によっ
    て形成され、その表面に単官能Z−結合(ただし、Zは
    Si,Ti,Snから選ばれる少なくとも一つの元素)
    を介して炭素鎖有機分子を含む化学吸着膜が累積形成さ
    れている潤滑膜。
  2. 【請求項2】 基体の少なくとも一方の表面に、シロキ
    サン結合を含むシロキサン系化学吸着膜が基体表面と共
    有結合によって形成され、その表面に炭素鎖有機分子を
    含む化学吸着膜が基体表面と共有結合によって形成さ
    れ、その表面に単官能Si−結合を介して炭素鎖有機分
    子を含む化学吸着膜が累積形成されている潤滑膜。
  3. 【請求項3】 累積形成された化学吸着膜の最外層に炭
    素鎖を含む有機化合物が物理吸着されている請求項1ま
    たは2に記載の潤滑膜。
  4. 【請求項4】 化学吸着膜の化学結合が、(化1),
    (化2),(化3)から選ばれる少なくとも一つの結合
    である請求項1または2に記載の潤滑膜。 【化1】 【化2】 【化3】
  5. 【請求項5】 化学吸着膜の累積膜の少なくとも表面を
    構成する長鎖有機分子が、フッ化炭素基を含む請求項1
    または請求項2に記載の潤滑膜。
  6. 【請求項6】 化学吸着膜を構成する炭素鎖有機分子の
    炭素数が、8以上30以下である請求項1または請求項
    2に記載の潤滑膜。
  7. 【請求項7】 基体が、セラミック、金属、樹脂、木
    材、繊維、紙、無機物、情報記録媒体層である請求項1
    または請求項2に記載の潤滑膜。
  8. 【請求項8】 化学吸着膜を構成する炭素鎖有機分子
    が、側鎖を有している請求項1または請求項2に記載の
    潤滑膜。
  9. 【請求項9】 化学吸着膜を構成する炭素鎖有機分子の
    前記長鎖有機分子が、2種類以上の分子の混合物である
    請求項1または請求項2に記載の潤滑膜。
  10. 【請求項10】 物理吸着させた有機化合物が、長鎖炭
    化水素、長鎖炭化水素系脂肪酸、脂肪酸エステル、シリ
    コン誘導体、脂肪酸塩、脂肪酸アミド、フッ素化炭素誘
    導体から選ばれる少なくとも1種類である請求項3に記
    載の潤滑膜。
  11. 【請求項11】 基体上に潤滑膜を製造する方法であっ
    て、基体の少なくとも一方の表面に炭素鎖有機分子を含
    む化学吸着化合物を接触させて基体表面と低分子脱離反
    応を起こさせ化学吸着膜を形成し、次に前記化学吸着膜
    の表面に活性水素基を導入し、次に分子末端が単官能Z
    −X化合物(ただし、ZはSi,Ti,Snから選ばれ
    る少なくとも一つの元素、Xはハロゲン元素)を接触さ
    せて前記活性水素基と低分子脱離反応を起こさせ化学吸
    着累積膜を少なくとも1層形成することを特徴とする潤
    滑膜の製造方法。
  12. 【請求項12】 基体上に潤滑膜を製造する方法であっ
    て、基体の少なくとも一方の表面にシロキサン結合を含
    むシロキサン系化学吸着化合物を接触させて基体表面と
    低分子脱離反応を起こさせシロキサン系化学吸着膜を形
    成し、前記シロキサン系化学吸着膜の表面に炭素鎖有機
    分子を含む化学吸着化合物を接触させてと低分子脱離反
    応を起こさせ化学吸着膜を形成し、次に前記化学吸着膜
    の表面に活性水素基を導入し、次に分子末端が単官能Z
    −X化合物(ただし、ZはSi,Ti,Snから選ばれ
    る少なくとも一つの元素、Xはハロゲン元素)を接触さ
    せて前記活性水素基と低分子脱離反応を起こさせ化学吸
    着累積膜を少なくとも1層形成することを特徴とする潤
    滑膜の製造方法。
  13. 【請求項13】 活性水素基を導入する手段が、エネル
    ギー照射、酸化処理、アルカリ処理から選ばれる少なく
    とも一つの手段である請求項11または12に記載の潤
    滑膜の製造方法。
  14. 【請求項14】 シロキサン系化学吸着膜、その表層の
    化学吸着膜、または化学吸着累積膜のいずれかを形成す
    る際、低分子脱離反応の工程の後、非水系有機溶液を用
    いて未反応化学吸着剤を除去し、単分子化学吸着膜を形
    成する請求項11または12に記載の潤滑膜の製造方
    法。
  15. 【請求項15】 累積形成された化学吸着膜の最外層に
    炭素鎖を含む有機化合物をコーティングして物理吸着さ
    せた請求項11または12に記載の潤滑膜。
  16. 【請求項16】 シロキサン系化学吸着化合物が、テト
    ラクロロシラン、トリクロロシラン、SiCl3 −(O
    −SiCl2 n −O−SiCl3 (nは0及び正の整
    数)から選ばれる少なくとも1種類である請求項12に
    記載の潤滑膜の製造方法。
  17. 【請求項17】 シロキサン系化学吸着膜、その表層の
    化学吸着膜、または化学吸着累積膜のいずれかを形成す
    る工程が、化学吸着化合物の溶液に浸漬する工程、また
    は化学吸着化合物の蒸気中に接触させる工程である請求
    項11または12に記載の潤滑膜の製造方法。
  18. 【請求項18】 シロキサン系化学吸着膜、その表層の
    化学吸着膜、または化学吸着累積膜のいずれかを形成す
    る工程が、相対湿度35%以下である請求項11または
    12に記載の潤滑膜の製造方法。
  19. 【請求項19】 活性水素基が、水酸基、アミノ基の水
    素、イミノ基の水素、カルボキシル基の水素、チオール
    基の水素、カルボニル基のアルファ位の水素、シアノ基
    のアルファ位の水素、ニトロ基のアルファ位の水素、2
    重結合のアルファ位の水素、ベンジル位の水素、スルフ
    ォン酸基の水素、スルフィン酸基の水素、リン酸基の水
    素である請求項11または12に記載の潤滑膜の製造方
    法。
  20. 【請求項20】 エネルギー照射に用いるエネルギー線
    がX線、電子線、ガンマ線から選ばれる少なくとも一つ
    である請求項13に記載の潤滑膜の製造方法。
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