JPH06157887A - 熱硬化型ポリイミド樹脂組成物と熱硬化品およびその製造方法 - Google Patents

熱硬化型ポリイミド樹脂組成物と熱硬化品およびその製造方法

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JPH06157887A
JPH06157887A JP33805692A JP33805692A JPH06157887A JP H06157887 A JPH06157887 A JP H06157887A JP 33805692 A JP33805692 A JP 33805692A JP 33805692 A JP33805692 A JP 33805692A JP H06157887 A JPH06157887 A JP H06157887A
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JP
Japan
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thermosetting
resin composition
polyfunctional unsaturated
chemical
formula
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JP33805692A
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Hiroshi Yamamoto
広志 山本
Taro Fukui
太郎 福井
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Panasonic Electric Works Co Ltd
Original Assignee
Matsushita Electric Works Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 高耐熱性等の優れた特性を維持しながら、靱
性、可撓性、接着性等の機械的特性等にも優れた熱硬化
型ポリイミド樹脂組成物、その熱硬化品およびこの熱硬
化品の製造方法を提供する。 【構成】 組成物は、多官能不飽和イミドと、このイミ
ドとの相溶域を有するポリアリレートおよびポリカーボ
ネートのうちの少なくとも1種の熱可塑性樹脂と、OH
当量が5000g/eq以上の多官能不飽和化合物からな
る架橋剤とを必須成分として含むものであり、この組成
物を原料として用い、その多官能不飽和イミドと熱可塑
性樹脂とを相溶させた後、前記多官能不飽和イミドを熱
硬化させることにより、ポリイミドが主なる組成の相と
熱可塑性樹脂が主なる組成の相とに分離させ、これら両
分離相がともに連続して規則正しく絡み合った構造を形
成している熱硬化品を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、高耐熱性を有すると
ともに、靱性、可撓性、接着性等の機械的特性等に優
れ、構造材料、接着材料、成形材料、封止材料、フィル
ム、積層板等に利用される熱硬化型ポリイミド樹脂組成
物、その熱硬化品、および、この熱硬化品の製造方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ポリイミドは、耐熱性を要求され
る用途に広く使用されている。このポリイミドには、大
別して、前駆体であるポリアミド酸の段階で賦形し、そ
の後に熱処理して、イミド閉環を行わせることにより得
られた第1のタイプと、イミド環を持つオリゴマーを熱
架橋させることにより得られた第2のタイプとがある。
【0003】上記第1のタイプには、ベスペル、カプト
ン、ユーピレックス、Pyralin (いずれも登録商標)等
が属する。これらは、非常に高い耐熱性を持っている
が、成形途中で不溶不融になるため、成形等の取り扱い
が困難である。これに対して、熱可塑性を有するよう
に、分子構造を工夫したポリマーが種々提案されてい
る。しかし、このアプローチでは、成形品は、成形温度
以上では溶融状態となり、耐熱性が大きく低下するた
め、ポリイミド本来の耐熱性を生かした用途への適用は
制限される。
【0004】その点、イミド環を持つオリゴマーを熱架
橋させることにより得られた前記第2のタイプの熱硬化
型ポリイミドは、自由に成形でき、成形品は不溶不融で
あり、しかも高い耐熱性を有しているため、大型コンピ
ュータ用多層プリント基板や、自動車のエンジン内外の
機能部品、宇宙、航空用途の部品等、苛酷な環境下で高
い信頼性を要求される分野に多量に使用されている。
【0005】たとえば、下記一般式化6で表される多官
能不飽和イミドは、これを重合、架橋させることによっ
て、非常に架橋密度の高い硬化品を得ることができる。
【0006】
【化6】
【0007】(式中、Dは炭素−炭素間の二重結合を含
む2価の基を表し、R1 は2官能以上の有機基を表し、
1 は2以上の整数を表す。)この多官能不飽和イミド
の代表的なものは、下式化7で表されるビスマレイミド
である。
【0008】
【化7】
【0009】しかし、このビスマレイミドを用いた組成
物は、非常にもろいという欠点を有するため、靱性、加
工性、耐衝撃性に問題がある。そこで、耐熱性は多少劣
るが、このビスマレイミドモノマーを種々の架橋剤で変
性したものを使用している。その代表的なものとして
は、架橋剤としてジアミンを用いることにより得られた
ポリアミノビスマレイミド系樹脂が挙げられ、ケルイミ
ド、キネル(いずれも登録商標)等がこれに属する。こ
れらは、詳しくは、マイケル付加によるビスマレイミド
とジアミンとのオリゴマーを使用し、このオリゴマーを
加熱し、高分子量化と架橋を同時進行させることにより
得られたものである。その他の例としては、架橋剤とし
て前記ジアミンの代わりにポリシアン酸エステル化合物
を用いることにより得られたポリイミド等がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】ところが、ビスマレイ
ミドモノマーを種々の架橋剤で変性することにより得ら
れた上述のポリイミドは、いずれも、ビスマレイミド単
独の場合に比べて、靱性や可撓性が若干改良されてはい
るが、充分なレベルには至っていない。一般に、熱硬化
性樹脂の靱性や可撓性を改良するために、エラストマー
に代表される可撓性成分を熱硬化性樹脂組成物に添加す
る方法が検討されている。たとえば、両末端にカルボキ
シル基を有する液状ニトリルゴム〔Hycar CTBN(登
録商標)等〕をビスマレイミドに配合した組成物では、
ゴムの球状ドメイン(島)がイミドマトリックス(海)
中に分散した、いわゆる海−島状の相分離構造を形成し
ている。しかし、この手法では、靱性や可撓性は、あま
り改良されない。
【0011】熱硬化型ポリイミド樹脂組成物の靱性や可
撓性を改良する手法として、組成物中に熱可塑性樹脂を
導入する方法が提案されている(特開平2−58569
号および特開平2−305860号の各公報参照)。し
かし、前記特開平2−58569号公報に記載の熱硬化
型ポリイミド樹脂組成物に使用されている熱可塑性樹脂
はポリアリールスルホンであるため、機械加工性の点で
問題があり、また、前記特開平2−305860号公報
に記載の熱硬化型ポリイミド樹脂組成物に使用されてい
る熱可塑性樹脂は低分子量のシロキサンオリゴマーであ
るため、耐熱性が不充分であるという問題があった。
【0012】そこで、この発明は、高耐熱性等の優れた
特性を維持しながら、靱性、可撓性、接着性等の機械的
特性等にも優れた熱硬化型ポリイミド樹脂組成物、その
熱硬化品、および、この熱硬化品の製造方法を提供する
ことを課題とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、発明者らは種々検討を重ねた。その結果、熱硬化型
ポリイミド樹脂組成物中に導入する熱可塑性樹脂および
架橋剤として、それぞれ、下記特定のものを用いるよう
にすれば、高耐熱性等の優れた特性を維持しながら、靱
性、可撓性、接着性等の機械的特性等を充分なレベルま
で改良することが可能になることを実験で確認して、こ
の発明を完成した。
【0014】したがって、この発明にかかる熱硬化型ポ
リイミド樹脂組成物は、下記一般式化8で表される多官
能不飽和イミドと、熱可塑性樹脂と、架橋剤とを必須成
分として含む熱硬化型ポリイミド樹脂組成物において、
前記熱可塑性樹脂が前記多官能不飽和イミドとの相溶域
を有するポリアリレートおよびポリカーボネートのうち
の少なくとも1種であり、前記架橋剤が、下記一般式化
9および10で表され、かつ、OH当量が5000g/
eq以上である多官能不飽和化合物のうちの少なくとも1
種であることを特徴とするものである。
【0015】
【化8】
【0016】(式化8中、Dは炭素−炭素間の二重結合
を含む2価の基を表し、R1 は2官能以上の有機基を表
し、x1 は2以上の整数を表す。)
【0017】
【化9】
【0018】(式化9中、R2 はHまたはCH3 基を表
し、R3 は少なくとも1個の芳香環を有する2官能以上
の有機基を表し、x2 は2以上の整数を表す。)
【0019】
【化10】
【0020】(式化10中、R4 は−CH2 −基または
−CH2 −O−基を表し、R5 は少なくとも1個の芳香
環またはトリアジン環を有する2官能以上の有機基を表
し、x3 は2以上の整数を表す。)この発明にかかる熱
硬化品は、上記熱硬化型ポリイミド樹脂組成物の熱硬化
品であって、ポリイミドが主なる組成の相と、熱可塑性
樹脂が主なる組成の相に分離しており、これら両分離相
が、ともに連続して規則正しく絡み合った構造を形成し
ているものである。
【0021】この発明にかかる、熱硬化品の製造方法
は、上記熱硬化型ポリイミド樹脂組成物を原料として用
い、その多官能不飽和イミドと熱可塑性樹脂とを相溶さ
せた後、前記多官能不飽和イミドを熱硬化させることに
より、ポリイミドが主なる組成の相と熱可塑性樹脂が主
なる組成の相とに分離させ、これら両分離相が、ともに
連続して規則正しく絡み合った構造を形成している熱硬
化品を得るようにする方法である。
【0022】前記一般式化8で表される多官能不飽和イ
ミド(以下、これを単に「多官能不飽和イミド」と称す
る。)としては、特に限定はされないが、たとえば、マ
レイン酸N,N′−エチレン−ビス−イミド、マレイン
酸N,N′−ヘキサメチレン−ビス−イミド、マレイン
酸N,N′−メタフェニレン−ビス−イミド、マレイン
酸N,N′−パラフェニレン−ビス−イミド、マレイン
酸N,N′−4,4′−ジフェニルメタン−ビス−イミ
ド〔前記式化7で表されるもの、N,N′−メチレンビ
ス(N−フェニルマレイミド)とも言う。〕、マレイン
酸N,N′−4,4′−ジフェニルエーテル−ビス−イ
ミド、マレイン酸N,N′−4,4′−ジフェニルスル
フォン−ビス−イミド、マレイン酸N,N′−4,4′
−ジシクロヘキシルメタン−ビス−イミド、マレイン酸
N,N′−α,α′−4,4′−ジメチレンシクロヘキ
サン−ビス−イミド、マレイン酸N,N′−メタキシリ
レン−ビス−イミドおよびマレイン酸N,N′−ジフェ
ニルシクロヘキサン−ビス−イミド等が挙げられる。こ
れらは、無水マレイン酸と各種ジアミンとを反応させ
て、アミド酸を生成させた後、このアミド酸を脱水閉環
反応させることにより得られた多官能不飽和イミドであ
るが、無水マレイン酸の代わりに、他の酸無水物、たと
えば、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、テトラヒド
ロ無水フタル酸、無水ナジック酸、ならびに、これらの
ハロゲン置換体、アルキル置換体等を用いることにより
得られた多官能不飽和イミドであってもよい。その他の
多官能不飽和イミドの例としては、下式化11〜13で
表されるもの等が挙げられる。
【0023】
【化11】
【0024】
【化12】
【0025】
【化13】
【0026】(式化11〜13中、mおよびnはそれぞ
れ正の整数を表す。)多官能不飽和イミドは、1種のみ
を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。この発
明では、必要に応じて、多官能不飽和イミド以外の熱硬
化性樹脂を多官能不飽和イミドと併用してもよい。多官
能不飽和イミド以外の熱硬化性樹脂としては、この発明
の目的の達成を阻害しないものであれば、特に限定はさ
れないが、たとえば、エポキシ樹脂等を用いることがで
きる。多官能不飽和イミドの含有率は、熱硬化性樹脂成
分全体に対して35重量%以上であることが好ましい。
多官能不飽和イミドの含有率がこの範囲よりも低いと、
耐熱性が低下するからである。
【0027】この発明で用いられる熱可塑性樹脂は、ポ
リアリレートおよびポリカーボネートのうちの少なくと
も1種であって、多官能不飽和イミドとの相溶域を有す
るものである。ここで、熱可塑性樹脂が多官能不飽和イ
ミドとの相溶域を有するとは、温度および組成の選択に
より、多官能不飽和イミドと熱可塑性樹脂とを相溶化さ
せることが可能であることを意味する。使用できるポリ
アリレートおよびポリカーボネートの具体例としては、
それぞれ、下式化14で表されるポリアリレートおよび
下式化15で表されるポリカーボネートが挙げられる。
しかし、これらに限定されない。
【0028】
【化14】
【0029】
【化15】
【0030】上記式化14、15中、繰り返し数n1
2 は、それぞれ、正の整数であればよいが、多官能不
飽和イミドとの相溶性または熱硬化品の耐熱性をより良
くするためには、それぞれ、30〜1000であること
が好ましく、50〜300であることがより好ましい。
熱可塑性樹脂の配合比については、特に限定はされない
が、たとえば、多官能不飽和イミド100重量部に対し
て、熱可塑性樹脂が5〜100重量部であることが好ま
しく、10〜50重量部であることがより好ましい。も
しも、熱可塑性樹脂の配合比が上記の範囲を外れる場合
は、有効な相分離構造の制御が困難になるからである。
【0031】この発明で用いられる架橋剤は、前記一般
式化9および10で表され、かつ、OH当量が5000
g/eq以上である多官能不飽和化合物のうちの少なくと
も1種である。ただし、この明細書中、OH当量は、下
式により算出される値である。 OH当量=分子量/1分子中のOH基の数 上記架橋剤は、いずれも多官能不飽和イミド中の炭素−
炭素二重結合と反応することにより架橋するものであ
る。架橋剤は、OH当量が5000g/eq以上である限
りOH基を有するものでもよいが、OH基を全く有しな
いもの(OH当量が無限大のもの)が好ましい。
【0032】前記一般式化9で表され、かつ、OH当量
が5000g/eq以上である多官能不飽和化合物の具体
例としては、特に限定はされないが、たとえば、下式化
16〜21で表されるもの等が挙げられる。これらは、
1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよ
い。
【0033】
【化16】
【0034】
【化17】
【0035】
【化18】
【0036】
【化19】
【0037】
【化20】
【0038】
【化21】
【0039】(式化20〜21中、nは2以上の整数を
表す。)前記一般式化10で表され、かつ、OH当量が
5000g/eq以上である多官能不飽和化合物の具体例
としては、特に限定はされないが、たとえば、下式化2
2〜25で表されるものや、下式化26で表されるアリ
ルエーテル化ビスフェノールA、下式化27で表される
トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、下式化28
で表されるトリアリルトリメリレート(TAT)および
下式化29で表されるジアリルフタレート(DAP)等
が挙げられる。これらは、1種のみを用いてもよいし、
2種以上を併用してもよい。
【0040】
【化22】
【0041】
【化23】
【0042】
【化24】
【0043】
【化25】
【0044】
【化26】
【0045】
【化27】
【0046】
【化28】
【0047】
【化29】
【0048】架橋剤の配合比については、特に限定はさ
れないが、多官能不飽和イミド(r1:不飽和イミド基の
当量)と架橋剤(r2:多官能不飽和化合物中の不飽和基
の当量)との当量比(r1/r2)が0.1〜10の割合で
あることが好ましく、0.25〜1の割合であることが
より好ましい。もしも、その割合が0.1よりも少ない
と、架橋剤の添加効果が得られなくなり、10よりも多
いと、熱硬化品の耐熱性が低くなるからである。
【0049】この発明の熱硬化型ポリイミド樹脂組成物
は、必要に応じては、その硬化反応を促進させる目的
で、触媒を含んでいてもよい。この触媒としては、前述
のポリアリレートおよびポリカーボネートの分子中の−
COO−基を分解しないものが好ましい。触媒の具体例
としては、以下に列記するものが挙げられる。有機塩
基、たとえば、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジ
メチルトルイジン、N,N−ジメチル−p−アニシジ
ン、p−ハロゲノ−N,N−ジメチルアニリン、2−N
−エチルアニリノエタノール、トリ−n−ブチルアミ
ン、ピリジン、キノリン、N−メチルモルホリン、トリ
エタノールアミンや、2−ウンデシルイミダゾール、2
−エチル−4−メチルイミダゾール、ベンジルジメチル
アミンイミダゾール類、ベンツイミダゾール類等の第3
級アミン類およびそれらのアンモニウム塩;トリフェニ
ルホスフィン等のリン化合物;フェノ ール、クレゾー
ル、キシレノール、レゾルシン、フロログルシン等のフ
ェノール類;ナフテン酸鉛、ステアリン酸鉛、ナフテン
酸亜鉛、オレイン酸スズ、ジブチル錫マレエート、ナフ
テン酸マンガン、ナフテン酸コバルト等の有機金属塩;
SnCl2 、ZnCl2 、AlCl3 等の塩化物;アル
カリ金属化合物等のイオン触媒;アゾビスイソブチロニ
トリルや、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物等
のラジカル触媒;アセチルアセトナートおよびその遷移
金属塩;等の触媒である。これらの触媒の中でも、有機
過酸化物の使用が好ましい。
【0050】触媒の使用量については、使用する触媒の
種類、熱硬化品の用途、硬化条件等によっても著しく相
違し、一概に規定し得ないが、一般的な意味での触媒
量、たとえば、熱硬化性樹脂成分全体に対して、5重量
%以下の割合であることが好ましい。なお、硬化系と硬
化温度との組み合わせによっては、硬化速度が遅すぎる
ために、相分離が固定できずに、熱硬化品の相分離構造
が粗大化または不規則化してしまう場合があるが、その
場合は、硬化促進剤の使用が有効である。しかし、この
硬化促進剤の使用は、あくまで、相分離と硬化をバラン
ス良く行わせるための硬化速度の調節に用いる補助手段
であって、この発明の必須要件ではない。
【0051】この発明の熱硬化型ポリイミド樹脂組成物
は、必要に応じては、従来の樹脂組成物に通常用いられ
る離型剤、顔料等の各種添加剤、充填材(フィラー)等
を含んでいてもよい。また、溶剤に溶解したワニスの形
でガラスクロス等の基材に含浸させたプリプレグの形で
積層板、SMC、FRP等の用途のために成形してもよ
い。
【0052】次に、この発明の熱硬化品における相分離
構造の発現の原理およびこの相分離構造の確認手段につ
いて説明する。一般に、異なる2種類の有機物AとBを
混合した場合、これらの組成比および温度に対して「相
図」と呼ばれる図を描くことができる。実用的な全領域
について相溶する場合や、逆に全領域で相溶しない場合
があるが、ある領域で相溶し、別の領域で相分離状態と
なる場合もある。この現象は、相溶した場合の自由エネ
ルギーが、相溶しない2相における自由エネルギーの合
計に比べて低いかどうか、すなわち、ΔGmix がどのよ
うな組成依存性を持っているかで決定される。
【0053】相図の例を図6に示す。この相図は、LC
ST型と呼ばれるものであり、同一組成では、低温側で
相溶しやすくなる例である。しかし、これとは逆に、高
温側で相溶する例もあり、その場合は、UCST相図と
呼ばれている。このような非相溶領域と相溶領域を区別
する相図上の曲線は、バイノーダル曲線と呼ばれる(図
7参照)。図7にみる相図中で、もう一つ、∂ΔGmix
/∂φ2 =0の点を結び合わせると、頂点部がバイノー
ダル曲線と一致し、非相溶領域側に入り込んだスピノー
ダル曲線(図中、破線で示している。)を描くことがで
きる。スピノーダル曲線の内側では、∂ΔGmix /∂φ
2 <0であり、外側では、∂ΔGmix /∂φ2 >0とな
っている。
【0054】非相溶領域の中でも、スピノーダル曲線の
内側を不安定領域、スピノーダル曲線とバイノーダル曲
線に挟まれた領域を準安定領域と呼ぶことにする。詳細
な理論によれば、図8にみるように、一旦、温度T1
安定相溶領域で均一に相溶している混合系の温度をT2
まで急速に上げて不安定領域内にもってくると、共存組
成φ1 、φ2 に急速に相分離を開始する。その際、図9
にみるように、濃度は、一定の波長Λm (構造周期)を
持って、両分離相が共に連続して規則正しく絡み合った
構造が形成される。このような構造は「変調構造」と呼
ばれ、この変調構造の周期Λm は、相図上の位置(φ、
2 )によって、熱力学的に下式のように規定される。
【0055】 Λm ≒2πL〔3|TS −T2 |/TS -1/2 ここで、Lは、分子間の相互作用距離であり、通常、3
0nm前後の値をとる。このような構造を2次元的に顕微
鏡で観察すると、図10にみるような唐草模様が得られ
ることが、計算機シミュレーションにより明らかにされ
ている。実際にも、種々の系でこのような構造が確認さ
れている。
【0056】通常、この過程は、スピノーダル分解と呼
ばれる中の初期の現象であり、末期には、相似的な構造
肥大化が起こり、ついには、図10にみるような構造で
はなく、海島構造が検出されるようになる。スピノーダ
ル分解による相互連続構造を固定化するためには、急冷
等による短時間での一方または両方の成分の固定化が有
効であるが、再度、温度を上昇させると、海島構造に転
じて、実用的には、あまり意味のあるものではなかっ
た。
【0057】しかし、一方が熱硬化する成分である場
合、スピノーダル分解初期で、熱硬化相が反応によって
自由に運動できなくなることから、構造固定が永続的に
起こることが、最近、示されている。熱硬化性樹脂とし
てエポキシ樹脂を用い、熱可塑性樹脂との変調構造を固
定した例は、すでに知られている〔文献(1): K. Yamana
ka, et al., Polymer,30, 662 (1989); および文献(2):
山本ら著、第40回高分子年会予稿集II−11−05 (199
1) 等参照〕。
【0058】しかし、熱硬化性樹脂としてポリイミド樹
脂を用い、熱可塑性樹脂との変調構造を固定した例は、
学術文献上では、まだ報告されていない。一方、図7中
の準安定領域では、初期から海島構造が形成されてしま
うため、この発明の効果が得られない。前述したよう
に、この発明は、多官能不飽和イミドと特定の熱可塑性
樹脂および架橋剤とを必須成分とし、熱硬化時に、ポリ
イミドが主なる組成の相と熱可塑性樹脂が主なる組成の
相とに分離して、変調構造、すなわち、これら2つの分
離相が共に連続して規則正しく絡み合った構造を形成す
る組成物およびその熱硬化品である。このような構造を
確認するためには、下記およびの2点が重要であ
る。
【0059】規則的な周期構造が観測されること。こ
の項目は、通常、光学的な方法で達成される。光散乱測
定において、散乱極大が現れることが、ある周期を持っ
た規則正しい相分離構造を持つ証明であり、その周期Λ
m は、光散乱の照射光波長λ、硬化物の屈折率N、散乱
極大を与える散乱角θm を用いて、次式により計算する
ことができる。
【0060】Λm =(λ/2N)/ sin(θm /2) 通常、スピノーダル分解の変調構造を固定化できた場合
のΛm は、0.01〜10μmの範囲であり、10μm
を超えるものについては、海島構造にまで、構造が肥大
化していることが疑われる。 光学顕微鏡観察により、図10に示したような構造が
観察されること。
【0061】これに対して、海島構造では、一方の成分
が球状に分散した構造が観察される。さらに、上記お
よびのような直接確認の他、 組成物が、硬化前に、一旦、完全相溶していること、 熱硬化品を、熱可塑性樹脂が溶解する溶剤で表面エッ
チングした際に、残存するイミド相が入り組んだ珊瑚状
の構造が観察できること、等も確認に役立つ。
【0062】参考までに、エポキシ系での変調構造を記
載した前記文献(1) 中に示されているエポキシ硬化相
(熱可塑性樹脂を溶解する溶剤でエッチングした表面)
の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図11に、その立
体模式図を図12にそれぞれ示す。この発明にかかる熱
硬化型ポリイミド樹脂組成物およびその熱硬化品の硬化
過程や製造方法等については、特に制限を受けない。し
かし、前記発現機構で記述したように、前記変調構造を
有する熱硬化品を得るためには、その原料である樹脂組
成物を構成する成分を一旦相溶化させることが前提とな
っており、たとえば、上記成分を粉体混合した場合に
は、硬化しない程度の温度で、相溶するまで放置してお
くことが必要となる。しかし、上記成分を、一旦、共通
溶媒で均一に分子オーダーで混合し、溶媒を除去するキ
ャスティング法を採る場合には、相溶領域では、一瞬に
して均一に相溶するため、一切の製造条件限定は必要で
はない。また、硬化速度は、たとえば、硬化温度の調節
や、前述した硬化促進剤の使用の有無等により調節され
る。硬化速度の調節は、相分離の構造周期を制御する手
段となる。要は、この発明の範囲内で、ポリイミドを主
とする相と、熱可塑性樹脂を主とする相の両分離相が、
相互に連続した構造をとることができるような熱硬化品
作製条件をとればよいのである。熱硬化品作製条件の典
型的な例を以下に述べるが、この条件は、系の組成等に
よって異なり、限定されるものではない。
【0063】まず、塩化メチレン、ジメチルアセトアミ
ド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ジ
メチルホルムアミド、メチルセロソルブ等の極性溶剤を
1種または2種以上用いて、全成分を混合溶解し、濃度
5〜60重量%の溶液を調製する。得られた溶液をキャ
スティングフィルムの形にして、溶剤を除去する。
【0064】得られたフィルムを、140〜250℃の
条件で1分〜5時間、硬化させて、構造を固定化する。
さらに、高温200〜300℃で1〜3時間、後硬化さ
せる。もちろん、フィルム状の成形品を作製する場合に
は、未硬化キャスティングフィルムを粗粉砕して、成形
硬化させてもよいし、溶剤を用いずに、粉体混合し、相
溶する温度、たとえば、70〜150℃で放置して相溶
させた後に、成形温度に加熱するという方法を行っても
よい。
【0065】
【作用】多官能不飽和イミドと前記特定の熱可塑性樹脂
および架橋剤とを必須成分として含ませることにより組
成物を構成し、この組成物を原料として用い、その多官
能不飽和イミドと熱可塑性樹脂とを相溶させた後、前記
多官能不飽和イミドを熱硬化させると、ポリイミドが主
なる組成の相と熱可塑性樹脂が主なる組成の相とに分離
し、これら両分離相が、ともに連続して規則正しく絡み
合った構造を形成している熱硬化品が生成する。この熱
硬化品は、上記のような変調構造を持つため、ポリイミ
ドに由来する高耐熱性と、熱可塑性樹脂に由来する靱
性、可撓性、接着性等の機械的特性とを併せ持つものと
なる。
【0066】熱可塑性樹脂としてポリアリレートおよび
ポリカーボネートのうちの少なくとも1種を使用する
と、熱硬化品の伸びが向上する。ただし、これらポリア
リレートおよびポリカーボネートは、多官能不飽和イミ
ドとの相溶域を有するものに限定される。もしも、多官
能不飽和イミドとの相溶域を有しないものを用いた場
合、前述の変調構造を有する熱硬化品を得ることができ
なくなる。
【0067】架橋剤として用いられ、かつ、前記一般式
化9および10で表される多官能不飽和化合物は、OH
当量が5000g/eq以上のものに限定される。もし
も、OH当量が5000g/eq未満の多官能不飽和化合
物を架橋剤として用いた場合、この化合物の有するOH
基により、ポリアリレートおよびポリカーボネートの分
子中の−COO−基が分解されるため、所望の熱硬化品
が得られなくなる。
【0068】
【実施例】以下に、この発明の具体的な実施例および比
較例を示すが、この発明は、下記実施例に限定されな
い。 −実施例1− 前記式化7で表されるN,N′−メチレンビス(N−フ
ェニルマレイミド)〔三井東圧化学(株)製、BMI−
S〕100重量部、前記式化14で表されるポリアリレ
ート〔ユニチカ(株)製、Uポリマー(登録商標)、U
100〕30重量部、前記式化26で表されるアリルエ
ーテル化ビスフェノールA〔三井東圧化学(株)製、BP
A-AE〕75重量部およびジクミルパーオキサイド〔日本
油脂(株)製、パークミルD〕1.75重量部を配合
し、塩化メチレンの10重量%溶液とした。この溶液を
カバーガラス上にキャストし、室温で24時間、減圧下
で溶媒を除去して、薄膜(試料)を得た。
【0069】この薄膜を140℃で硬化させ、時間を追
って、光散乱の測定を行うとともに、光学顕微鏡による
観察を行った。なお、光散乱測定は、オプテック(株)
製のGP−5を用い、キャストフィルムの光散乱を30
秒毎に測定することによって行った(以下同じ)。光散
乱測定により、そのプロフィールには、散乱極大が現れ
た。これは、硬化試料が、ある周期を持った規則正しい
相分離構造を有することを示す(以下同じ)。
【0070】図1は、前記実施例1の試料を硬化させる
際、散乱極大を示す角度から求められる構造周期Λm
経時変化を観察した結果を示すグラフである。この図に
みるように、時間の経過に伴い、相分離構造が大きくな
り、ある時間が経過した後は、相分離構造が固定される
ことが確認された。図2は、実施例1の試料の最終硬化
物の相分離構造を光学顕微鏡により観察した結果を示
す。ただし、この図において、12mmの長さが実際には
20μmの長さ(倍率600)に相当する。この図にみ
るように、前記の光散乱の結果(図1参照)とよく対応
する周期構造が観察された。
【0071】−実施例2− 実施例1と同様にして得られた薄膜(試料)を145℃
で硬化させて、光散乱測定を行った。光散乱測定によ
り、そのプロフィールには、散乱極大が現れた。 −実施例3− 実施例1と同様にして得られた薄膜(試料)を160℃
で硬化させて、光散乱測定を行った。
【0072】光散乱測定により、そのプロフィールに
は、散乱極大が現れた。図3は、前記実施例2〜3の試
料を硬化させる際の構造周期Λm の経時変化を実施例1
と同様にして観察した結果を併せて示すグラフである。
ただし、各試料の硬化温度は、実施例2が145℃、実
施例3が160℃であった。この図にみるように、いず
れの試料も、時間の経過に伴い、相分離構造が大きくな
り、ある時間が経過した後は、相分離構造が固定される
ことが確認された。
【0073】図4は、実施例3の試料の最終硬化物の相
分離構造を光学顕微鏡により観察した結果を示す。ただ
し、この図において、12mmの長さが実際には20μm
の長さ(倍率600)に相当する。この図にみるよう
に、前記の光散乱の結果(図3参照)とよく対応する周
期構造が観察された。図5は、実施例1〜3の試料の最
終硬化物の構造周期Λm と硬化温度との関係を示すグラ
フである。この図にみるように、硬化温度が高い程、構
造周期が大きくなることが確認された。
【0074】−実施例4〜11− 実施例1において、下記の表1と2に示す通りに各成分
を配合して、塩化メチレンの10重量%溶液を調製した
以外は実施例1と同様にして、各実施例の薄膜(試料)
を得た。得られた各薄膜を150℃で硬化させて、光散
乱測定を行った。
【0075】光散乱測定により、それらのプロフィール
には、いずれも散乱極大が現れた。各試料の最終硬化物
を光学顕微鏡により観察した結果、いずれも構造周期を
有する相分離構造が確認された。各実施例の最終硬化物
の構造周期は、下記の表1と2に示した。 −比較例1〜14− 実施例1において、下記の表3と4に示す通りに各成分
を配合して、塩化メチレンの10重量%溶液を調製した
以外は実施例1と同様にして、各比較例の薄膜(試料)
を得た。
【0076】これらの薄膜を150℃で硬化させて、光
散乱測定を行ったところ、いずれの場合も、一旦、散乱
極大が現れたが、しばらくすると散乱極大が消失した。
また、光学顕微鏡による観察においても、相分離の初期
には相互連続構造が観察されたが、しばらくすると相分
離構造が粗大化することが観察された。これは、比較例
1〜10では使用した架橋剤の有するOH基により、比
較例11〜14では使用した2−メチルイミダゾール触
媒により、ポリアリレートおよびポリカーボネートの分
子中の−COO−基が分解されたためであると考えられ
る。これと同様の結果が、エポキシ樹脂とポリカーボネ
ートと4,4′−ジアミノジフェニルメタンとの混合系
でも観察されている。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】
【0080】
【表4】
【0081】なお、上記表1〜4中、「熱硬化型ポリイ
ミド樹脂組成物の配合」の欄の各物質の詳細は、下記の
通りである。 多官能不飽和イミドA:前記式化7で表されるN,N′
−メチレンビス(N−フェニルマレイミド)〔三井東圧
化学(株)製、BMI−S〕。 多官能不飽和イミドB:下式化30で表されるもの〔三
井東圧化学(株)製、BMI−DA〕。
【0082】
【化30】
【0083】多官能不飽和イミドC:下式化31で表さ
れるもの〔三井東圧化学(株)製、BMI−BAP
P〕。
【0084】
【化31】
【0085】多官能不飽和イミドD:前記式化11で表
されるもの〔三井東圧化学(株)製、BMI−M2
0〕。 架橋剤A:前記式化26で表されるアリルエーテル化ビ
スフェノールA〔三井東圧化学(株)製、BPA-AE〕。 架橋剤B:前記式化27で表されるトリアリルイソシア
ヌレート(TAIC)〔東京化成(株)製試薬〕。
【0086】架橋剤C:下式化32で表されるo,o′
−ジアリル−ビスフェノールA〔三井東圧化学(株)
製、BPA-CA、OH当量154g/eq〕。
【0087】
【化32】
【0088】架橋剤D:下式化33で表されるアリルエ
ーテル化o−クレゾールノボラック〔住友化学(株)
製、A-4L (Part A) 、m/n=5/5 、アリル当量270〜2
80g/eq、OH当量270〜280g/eq〕。
【0089】
【化33】
【0090】架橋剤E:下式化34で表されるアリルエ
ーテル化ノボラック〔住友化学(株)製、OH当量27
0〜280g/eq〕。
【0091】
【化34】
【0092】架橋剤F:下式化35で表されるアリル化
フェノールノボラック〔住友化学(株)製、OH当量2
70〜280g/eq〕。
【0093】
【化35】
【0094】架橋剤G:下式化36で表される多官能ア
リル化フェノール〔三菱油化(株)製、SH150AR 、アリ
ル当量110〜120g/eq、OH当量135〜145
g/eq、軟化点45〜55℃〕。
【0095】
【化36】
【0096】(式化36中、nは正の整数を表す。) ポリアリレート:前記式化14で表されるもの〔ユニチ
カ(株)製、Uポリマー(登録商標)、U100、粘度
平均分子量25000、重量平均分子量50000、重
量平均分子量/数平均分子量=2.0〕。 ポリカーボネート:前記式化15で表されるもの〔三菱
化成(株)製、ノバレックス7022A、粘度平均分子
量21000〕。
【0097】また、表1〜4の注釈は、下記の通りであ
る。 ※1:2MZは2−メチルイミダゾール〔東京化成
(株)製試薬〕を表し、DCPはジクミルパーオキサイ
ド〔日本油脂(株)製、パークミルD〕を表す。 ※2:各例における硬化は、この欄に示す温度で3時間
行った。 ※3:各例において、この欄に示す温度で2〜6時間、
後硬化を行った(この後硬化の間、いずれの実施例も相
分離構造の大きさは変わらなかった)。
【0098】※4:光学顕微鏡により、キャストフィル
ムを昇温しながら観察し、透明化する最低温度を記録し
た。
【0099】
【発明の効果】この発明にかかる熱硬化型ポリイミド樹
脂組成物の熱硬化品は、従来のポリイミド樹脂硬化品に
比べて、ポリイミドに由来する高耐熱性等の優れた特性
を維持しながら、熱可塑性樹脂成分に由来する靱性、可
撓性、接着性等の機械的特性等にも優れている。特に、
上記熱可塑性樹脂としてポリアリレートおよび/または
ポリカーボネートが用いられているため、伸びという点
でも優れている。そのため、この発明の熱硬化品は、構
造材料、接着材料、成形材料、封止材料、フィルム、積
層板等に利用した際、優れた性能を発揮することができ
る。
【0100】この発明にかかる熱硬化品の製造方法によ
れば、上記の優れた熱硬化品を容易に得ることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の試料を140℃で硬化させる際の構
造周期の経時変化を示すグラフである。
【図2】実施例1の試料を140℃で硬化させた場合の
最終硬化物の相分離構造(粒子構造)を示す光学顕微鏡
写真である。
【図3】実施例2の試料を145℃で、実施例3の試料
を160℃で、それぞれ硬化させる際の構造周期の経時
変化を併せて示すグラフである。
【図4】実施例3の試料を160℃で硬化させた場合の
最終硬化物の相分離構造(粒子構造)を示す光学顕微鏡
写真である。
【図5】実施例1〜3の試料の最終硬化物の構造周期Λ
m と硬化温度との関係を示すグラフである。
【図6】低温で均一な溶液を形成し(相溶し)、昇温す
ることにより2相に分離する系において、その組成と温
度との相関関係を表す低温溶解型相図(LCST型相
図)である。
【図7】上記の相図において、バイノーダル曲線とスピ
ノーダル曲線を示す図である。
【図8】上記の相図において、均一に相溶している混合
系の温度を急速に上げた時の相分離の過程を説明する図
である。
【図9】構造周期Λm を有する3次元変調構造と濃度ゆ
らぎを模式的に表す図である。
【図10】構造周期Λm を有する2次元変調構造を模式
的に表す図である。
【図11】変調構造を有する従来のエポキシ樹脂/熱可
塑性樹脂混合系の硬化物の表面を溶剤エッチングした後
の粒子構造を表す、文献(1) 記載の走査型電子顕微鏡
(SEM)写真である。
【図12】変調構造を有する従来のエポキシ樹脂/熱可
塑性樹脂混合系の硬化物の表面を溶剤エッチングした後
のエポキシ樹脂部の粒子構造を表す立体模式図である。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成5年2月19日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0053
【補正方法】変更
【補正内容】
【0053】相図の例を図6に示す。この相図は、LC
ST型と呼ばれるものであり、同一組成では、低温側で
相溶しやすくなる例である。しかし、これとは逆に、高
温側で相溶する例もあり、その場合は、UCST相図と
呼ばれている。このような非相溶領域と相溶領域を区別
する相図上の曲線は、バイノーダル曲線と呼ばれる(図
7参照)。図7にみる相図中で、もう一つ、∂_ΔG
mix/∂φ=0の点を結び合わせると、頂点部がバ
イノーダル曲線と一致し、非相溶領域側に入り込んだス
ピノーダル曲線(図中、破線で示している。)を描くこ
とができる。スピノーダル曲線の内側では、∂_ΔG
mix/∂φ<0であり、外側では、∂_ΔG
mix/∂φ>0となっている。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記一般式化1で表される多官能不飽和
    イミドと、熱可塑性樹脂と、架橋剤とを必須成分として
    含む熱硬化型ポリイミド樹脂組成物において、前記熱可
    塑性樹脂が前記多官能不飽和イミドとの相溶域を有する
    ポリアリレートおよびポリカーボネートのうちの少なく
    とも1種であり、前記架橋剤が、下記一般式化2および
    3で表され、かつ、OH当量が5000g/eq以上であ
    る多官能不飽和化合物のうちの少なくとも1種であるこ
    とを特徴とする熱硬化型ポリイミド樹脂組成物。 【化1】 (式化1中、Dは炭素−炭素間の二重結合を含む2価の
    基を表し、R1 は2官能以上の有機基を表し、x1 は2
    以上の整数を表す。) 【化2】 (式化2中、R2 はHまたはCH3 基を表し、R3 は少
    なくとも1個の芳香環を有する2官能以上の有機基を表
    し、x2 は2以上の整数を表す。) 【化3】 (式化3中、R4 は−CH2 −基または−CH2 −O−
    基を表し、R5 は少なくとも1個の芳香環またはトリア
    ジン環を有する2官能以上の有機基を表し、x3は2以
    上の整数を表す。)
  2. 【請求項2】 ポリアリレートが下式化4で表されるも
    のである請求項1記載の熱硬化型ポリイミド樹脂組成
    物。 【化4】 (式化4中、n1 は正の整数を表す。)
  3. 【請求項3】 ポリカーボネートが下式化5で表される
    ものである請求項1または2記載の熱硬化型ポリイミド
    樹脂組成物。 【化5】 (式化5中、n2 は正の整数を表す。)
  4. 【請求項4】 触媒として有機過酸化物が用いられてい
    る請求項1から3までのいずれかに記載の熱硬化型ポリ
    イミド樹脂組成物。
  5. 【請求項5】 請求項1から4までのいずれかに記載の
    熱硬化型ポリイミド樹脂組成物の熱硬化品であって、ポ
    リイミドが主なる組成の相と、熱可塑性樹脂が主なる組
    成の相に分離しており、これら両分離相が、ともに連続
    して規則正しく絡み合った構造を形成している熱硬化
    品。
  6. 【請求項6】 請求項1から4までのいずれかに記載の
    熱硬化型ポリイミド樹脂組成物を原料として用い、その
    多官能不飽和イミドと熱可塑性樹脂とを相溶させた後、
    前記多官能不飽和イミドを熱硬化させることにより、ポ
    リイミドが主なる組成の相と熱可塑性樹脂が主なる組成
    の相とに分離させ、これら両分離相が、ともに連続して
    規則正しく絡み合った構造を形成している熱硬化品を得
    るようにする熱硬化品の製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008539304A (ja) * 2005-04-28 2008-11-13 サイテク・テクノロジー・コーポレーシヨン 製造特性が向上したビスマレイミド樹脂系
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