JPH06108972A - 真空乾燥方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 真空乾燥時の蒸発潜熱で被乾燥物に付着した
水滴が自己凍結するのを極力防止して、十分な乾燥を行
う。 【構成】 水系洗浄後の被乾燥物１をスピンバスケット
２に入れ、同スピンバスケット２を真空チャンバー３内
で高速回転させて被乾燥物１の水切りを行った後、前記
真空チャンバー３内を真空にして真空乾燥する。さらに
この真空乾燥完了後に真空チャンバー３の真空を開放
し、その状態で真空チャンバー３内の被乾燥物１を温風
乾燥する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明の真空乾燥方法は、アルカ
リ溶液や純水等により水系洗浄されたプリント基板、光
学・ガラス基板、精密機械部品等を乾燥する際に利用さ
れるものである。

【０００２】

【従来の技術】一般的に、プリント基板、光学・ガラス
基板、精密機械部品等の工業製品においては、その製造
工程で付着したゴミや油脂等を除去するために洗浄を行
っている。従来、このような洗浄には脱脂効果や取扱の
良さからフロンが使用されてきたが、近年、フロンガス
がオゾン層破壊の原因になっているという問題から、フ
ロンに代わって同様の脱脂効果を有するアルカリ溶液、
或は純水を使用した水系洗浄が行われるようになってき
ている。

【０００３】しかし、この水系洗浄で使用されるアルカ
リ溶液や純水はフロンと異なり常温では蒸発しにくく、
そのままでは洗浄した工業製品（被乾燥物）が乾燥する
までに大変な時間がかかるため、従来は、図５に示すよ
うに水系洗浄した被乾燥物Ａに熱を加えたり温風を吹き
かけたりして乾燥させたり、図６に示すように水系洗浄
した被乾燥物Ａを真空チャンバーに入れて真空引きし、
その真空中で水滴を蒸発させて乾燥させたりしていた。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】ところが、従来の乾燥
方法には下記のような問題があった。 図５の加熱・温風による乾燥では、乾燥までに時間
がかかり作業効率が悪い。また、被乾燥物Ａが熱に弱い
ものの場合、同被乾燥物Ａが長時間熱にさらされると特
性が劣化したり、損傷したりするという問題があった。 図６の真空乾燥では、洗浄直後の被乾燥物Ａに大量
に付着している水滴が真空中で急激に蒸発させられる
が、そのとき同水滴は蒸発潜熱により急激に熱が奪われ
て冷却されるようになり、同水滴の一部は蒸発する前に
凍結して氷となってしまう。この結果、被乾燥物Ａには
凍結した氷がそのまま残り、真空チャンバーから取り出
された後、この氷が室温で溶けると水になるため、十分
な乾燥ができなかった。

【０００５】本発明の真空乾燥方法は、真空乾燥時の蒸
発潜熱で被乾燥物に付着した水滴が自己凍結するのを極
力防止して、十分な乾燥が行えるようにすることを目的
とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明のうち請求項１の
真空乾燥方法は、図１に示すように水系洗浄後の被乾燥
物１をスピンバスケット２に入れ、同スピンバスケット
２を真空チャンバー３内で高速回転させて被乾燥物１の
水切りを行った後、前記真空チャンバー３内を真空にし
て真空乾燥することを特徴とするものである。

【０００７】本発明のうち請求項２の真空乾燥方法は、
請求項１の真空乾燥完了後に、真空チャンバー３内を真
空開放し、その状態で真空チャンバー３内の被乾燥物１
を温風乾燥することを特徴とするものである。

【０００８】

【作用】本発明のうち請求項１の真空乾燥方法では、真
空チャンバー３内でスピンバスケット２を高速回転させ
るので、図２に示すように被乾燥物１に大量に付着して
いる大きな水滴がスピンバスケット２の回転で発生する
遠心力により飛散して減少すると共に粒径が小さくな
る。その後、真空チャンバー３内を真空にするので被乾
燥物１に付着している小さな水滴は蒸発潜熱による冷却
効果で自己凍結する前に完全に蒸発してしてなくなる。

【０００９】本発明のうち請求項２の真空乾燥方法で
は、請求項１の真空乾燥完了後に、真空チャンバー３内
を真空開放し、その状態で同真空チャンバー３内の被乾
燥物１を温風乾燥するので、万が一、真空乾燥時の蒸発
潜熱により小さな氷が残っていても、その氷は短時間の
温風乾燥で除去することができ、従って熱に弱い被乾燥
物１の乾燥にも適する。

【００１０】

【実施例】本発明の真空乾燥方法を実施するための真空
乾燥装置の一実施例を図１に示す。この真空乾燥装置に
は、真空チャンバー３と同真空チャンバー３より気体を
外部に排気して真空にする排気ユニット１１、及びそれ
らを制御するための操作部（図示されていない）等から
構成されている。

【００１１】前記真空チャンバー３は円筒状に形成され
ており、同真空チャンバー３の上部にはチャンバー３内
に品物を出し入れするためのドア１６が設けられてお
り、同ドア１６はチャンバードアー開閉シャフト１５に
取付けられて、同図に示されるように上下方向に移動し
て真空チャンバー３を開閉できるようになっている。

【００１２】一方、前記真空チャンバー３の内部には、
被乾燥物１を入れて水切りを行わせるためのスピンバス
ケット２が収容できるようになっている。このスピンバ
スケット２は金属ネット等で円筒形に形成されており、
その底部中央にはピン１７が突設されている。このピン
１７を真空チャンバー３の下部中央に設けられた回転軸
受１８に挿入するようにしてスピンバスケット２を真空
チャンバー３内に入れると、前記ピン１７が回転軸受１
８と連結される。なお、この回転軸受１８はモータ１９
より回転駆動される。

【００１３】前記モータ１９は操作部により回転数やそ
の時間がコントロールされるようになっており、同操作
部を操作することでスピンバスケット２を毎分１００〜
１０００回転の間で所望時間回転させることができるよ
うになっている。

【００１４】前記スピンバスケット２は上に引き上げる
と回転軸受１８よりピン１７が抜けるので、用途や被乾
燥物１に合わせて色々な形状のスピンバスケット２を使
用することができる。例えば、図３に示すような吊り下
げ式のスピンバスケット２を使用すれば、高速回転時に
遠心力でバスケットが立上り、収納されている被乾燥物
１がバスケット内で片寄って摩擦で傷を受けたりするこ
とがなくなるので安全である。

【００１５】前記真空チャンバー３の内壁２０には前記
スピンバスケット２を取り囲むように蒸発用ヒータ２１
が取付けられている。この蒸発用ヒータ２１は前記スピ
ンバスケット２を高速回転させたときに被乾燥物１から
飛散した水滴を蒸発させたり、或は真空開放後の温風乾
燥時に真空チャンバー３内の空気を加熱して暖めたりす
るためのものである。なお、水切りスピンの時に発生し
た蒸気は以下に説明する排気ユニット１１によって真空
チャンバー３内から排気されるようにしてある。なお、
この蒸発用ヒータ２１の温度や加熱時間は操作部によっ
て任意にセットすることができる。

【００１６】前記排気ユニット１１は、コールド・トラ
ップ３０、ブースターポンプ３１、水封ポンプ３２から
構成されている。

【００１７】前記コールド・トラップ３０は冷凍機より
供給される低温の冷媒をその管路３３に通して真空チャ
ンバー３から排気される気体を冷却してその中に含まれ
ている蒸気を水に変えて取り除く装置である。ちなみ
に、前記冷凍機としては、本件発明者が先に開発した三
元式冷凍機（「マッククライオ」：株式会社マックの商
品名）が使用される。

【００１８】この三元式冷凍機は図４に示されるよう
に、一元冷凍機４２ａを備えた高温側冷凍回路４１ａ
と、二元冷凍機４２ｂを備えた低温側冷凍回路４１ｂと
が二次熱交換機４３ｂを介して接続され、同低温側冷凍
回路４１ｂと、三元冷凍機４２ｃを備えた極低温側冷凍
回路４１ｃとが三次熱交換機４３ｃを介して接続された
ものである。夫々の冷凍回路４１ａ〜４１ｃは各熱交換
機１３ｂ、１３ｃによって各回路４１内の冷媒を低温高
圧にし、更に膨張弁４４によってこの冷媒を膨張させて
極低温低圧にするものである。この三元式冷凍機は外部
の冷却水に接続された一次熱交換機４３ａによって高温
側冷凍回路４１ａ内の冷媒が冷却され、前記二次熱交換
機４３ｂによって低温側冷凍回路４１ｃ内の冷媒が冷却
され且つ膨張弁４４によって極低温化され、最終的に同
極低温側冷却回路４１ｃから前記コールド・トラップ３
０の管路に流れる冷媒が約−１４０℃程度の極低温にな
るようにしたものである。

【００１９】前記ブースターポンプ３１は真空チャンバ
ー３の初期段階での排気に有効に作用する排気ポンプ
で、排気速度と排気量が大きなものである。水封ポンプ
３２は前記ブースターポンプ３１による排気能力が限界
に達した後有効に機能する排気ポンプで、特に水分の排
気性能に適したポンプである。本実施例ではこれらの組
み合わせにより真空チャンバー３内を１０ｔｏｒｒ以下
の高真空に保つことができるようにしてある。なお、こ
の排気ユニット１１も前記操作部によって真空度やその
時間をセットすることができるようになっている。

【００２０】以上説明した真空乾燥装置による乾燥手順
を順番に説明する。先ず、前記スピンバスケット２に被
乾燥物１を収納し、そのスピンバスケット２を真空チャ
ンバー３内に入れドア１６を閉じる。次に操作部を操作
して前記蒸発用ヒータ２１を作動させた後、前記スピン
バスケット２を高速回転させて被乾燥物１の水切りを行
い、大体被乾燥物１にある水分の約５０％をなくし、そ
の後排気ユニット１１を作動させて真空チャンバー３内
の気体を排気して真空にする。２、３分後に真空チャン
バー３の真空を開放すると共に、真空開放によって生ず
る霜を前記蒸発用ヒータ２１により除去し、真空チャン
バー３のドア１６を開放してスピンバスケット２後と被
乾燥物１を取り出して完了する。

【００２１】なお、前記真空乾燥により十分な乾燥がで
きない場合には、前記真空チャンバー３の真空開放後に
スピンバスケット２を回転させ、同時に蒸発用ヒータ２
１によって暖めた空気をスピンバスケット２の回転によ
り循環させて温風乾燥を行う。

【００２２】

【発明の効果】本発明の真空乾燥方法によれば、真空乾
燥時に被乾燥物１に付着している水滴が凍りつくことな
く完全に蒸発させることができるようになる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の真空乾燥方法の一実施例を示す説明
図。

【図２】本発明の真空乾燥方法による水滴の蒸発状態を
示した説明図。

【図３】図１の真空乾燥方法に使用するスピンバスケッ
トの他の例。

【図４】図１の真空乾燥方法に使用する冷凍機の回路
図。

【図５】従来の加熱・温風乾燥における水滴の蒸発状態
を示した説明図。

【図６】従来の真空乾燥における水滴の蒸発状態を示し
た説明図。

【符号の説明】 １ 被乾燥物 ２ スピンバスケット ３ 真空チャンバー

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 水系洗浄後の被乾燥物１をスピンバスケ
   ット２に入れ、同スピンバスケット２を真空チャンバー
   ３内で高速回転させて被乾燥物１の水切りを行った後、
   前記真空チャンバー３内を真空にして真空乾燥すること
   を特徴とする真空乾燥方法。
2. 【請求項２】 請求項１の真空乾燥完了後に、真空チャ
   ンバー３内を真空開放し、その状態で真空チャンバー３
   内の被乾燥物１を温風乾燥することを特徴とする真空乾
   燥方法。