JPH06102019B2 - ギ酸脱水素酵素及びその製造方法 - Google Patents

ギ酸脱水素酵素及びその製造方法

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JPH06102019B2
JPH06102019B2 JP1196775A JP19677589A JPH06102019B2 JP H06102019 B2 JPH06102019 B2 JP H06102019B2 JP 1196775 A JP1196775 A JP 1196775A JP 19677589 A JP19677589 A JP 19677589A JP H06102019 B2 JPH06102019 B2 JP H06102019B2
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邦昭 細野
英勝 前田
貢 飯田
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、微生物による新規なギ酸脱水素酵素及びその
製造方法に関し、更に詳しくは、パラコッカス属に属
し、ギ酸を唯一の炭素源として生育し得る微生物を培養
して、その代謝産物としてギ酸脱水素酵素を蓄積させて
得られる新規なギ酸脱水素酵素及びその製造方法に関す
るものであり、その目的とするところは産業上有益なギ
酸脱水素酵素を提供することにある。
〔従来の技術〕
ギ酸脱水素酵素については、メタノール酵母や高等植物
においてその存在が知られ、エンドウ豆やメタノール酵
母においてはその酵素が精製され、その性質が明らかに
されている。具体的にはエンドウ豆(Pisum sativum:J.
Biochem.vol.77,845(1975)参照)、キャンディダ・ボ
イディニ(Candida boidinii:Eur.J.Biochem.vol.62,15
1(1976)参照)、キャンディダ・メチリカ(Candida m
ethylica:Eur.J.Biochem.vol.52,657(1985)参照)、
キャンディダ・メタノリカ(Candida methanolica:FEMS
Microbiol.Lett.vol.48,139(1987)参照)、クロイッ
ケラ属酵母(Kloeckera sp.:Agric.Biol.Chem.vol.38,1
11(1974)参照)、ピキア・パストリス(Pichia pasto
ris:Agric.Biol.Chem.vol.47,2547(1983)参照)など
である。
しかしながら細菌においては、エシェリキア・コリ(Es
cherichia coli:J.Biol.Chem.vol.250,6693(1975)参
照)、クロストリジウム・パスツーリアナム(Clostrid
ium pasteurianum:J.Bacteriol.vol.159,375(1984)参
照、クロストリジウム・サーモアセティカム(Clostrid
ium thermoaceticum:J.Biol.Chem.vol.259,1826(198
3)参照)などがNADを電子受容体として利用できないギ
酸脱水素酵素(酵素番号[EC1.2.2.1])を持つことが
よく知られているが、NADを電子受容体として利用でき
るギ酸脱水素酵素(酵素番号[EC1.2.1.2])は、幾つ
かの細菌から精製されているに過ぎない。具体的には、
モラキセラ属細菌(Moraxella sp.:J.Bacteriol.vol.17
0,3189(1988)参照)やアクロモバクター・パーヴァラ
ス(Achromobacter parvulus:Eur.J.Biochem vol.99,56
9(1979)参照)、シュードモナス・オキザラティカス
(Pseudomonas oxalaticus:Eur.J.Biochem.vol.83,485
(1978)参照)などの酵素が知られている。しかしなが
ら、シュードモナス・オキザラティカスやアクロモバク
ター・パーヴァラスの酵素は安定性が悪く、安定剤無し
には数日でその活性を失うことが知られている。
先行発明としては、特開昭60−12974号にシュードモナ
ス・オキザラティカスからのギ酸脱水素酵素の製造法が
述べられている、上述したようにこの酵素は極めて酸素
耐性が低く、安定剤の存在なしには5日間でその活性を
失ってしまう。従って、このような酵素を工業的規模で
のNADH再生用酵素として用いることはあまり意味がな
い。また、特開昭60−241887号にはリポマイセス・メタ
ノシルビエンス(Lipomyces methanosilviensis)によ
るギ酸脱水素酵素の製造法が述べられている。この酵素
は特開昭60−12974号のように酸素耐性の低い酵素では
ないが、pH安定性、NADに対するKm値、精製酵素の比活
性等において十分なものといえない。
〔発明が解決しようとする課題〕
ギ酸脱水素酵素(酵素番号[EC1.2.1.2]は、ギ酸とNAD
より炭酸を副産物としてNADHを生成することから、NADH
を必要とする酵素反応系においてNADH再生用酵素として
有望視されており、またそのギ酸に対するKm値の低い酵
素は、ギ酸の特異的検出や微量定量にも有用である。特
にNADH再生用の酵素としては、反応生成物が炭酸である
ことから副産物が反応系に蓄積しない利点があり、工業
的規模でのNADH再生用酵素として注目されている。
これまでギ酸脱水素酵素を生産する菌株は上記のごとく
知られている。しかしながら、これらの菌株はギ酸脱水
素酵素の生産性が低く、そして得られるギ酸脱水素酵素
は、比活性が低いこと。ギ酸及びNADに対するギ酸
脱水素酵素のKm値が大きいこと。温度安定性やpH安定
性の範囲が狭いことなどから、工業的利用に適さないも
のであった。
本発明者らはギ酸を資化し、かつ高活性のギ酸脱水素酵
素生産細菌の分離を広範囲に行った結果、パラコッカス
属の微生物がギ酸を資化し、かつ高い比活性を有しギ酸
及びNADに対するKm値の小さいギ酸脱水素酵素を生産す
ることを見出し本発明を完成するに至った。同時にこの
酵素は、温度安定性やpH安定性の範囲が広く、菌株の酵
素生産性も高いことからその有用性が高いものである。
〔課題を解決するための手段〕
本発明は、下記の理化学的性質に特徴を有するギ酸脱水
素酵素である。
(1)作用適温の範囲 温度範囲:25〜70℃、至適温度:50〜60℃ (2)作用pHの範囲 pH範囲:5.0〜11、至適pH:5.5〜8.0 (3)分子量 約100,000 (4)ギ酸に対するKm値 5.0mM (5)NADに対するKm値 0.036mM (6)温度安定性 温度:50℃以下 (7)pH安定性 pH:4.0〜12.0 更に、本発明はパラコッカス属に属し、ギ酸脱水素酵素
生産能を有する微生物、好ましくはギ酸を唯一の炭素源
として生育し得る微生物を培地中に培養し培養物中にギ
酸脱水素酵素を蓄積せしめ、この培養物からギ酸脱水素
酵素を採取することを特徴とするギ酸脱水素酵素の製造
方法である。
本発明において使用するパラコッカス属に属する微生物
は以下に詳述する如く、ギ酸を唯一の炭素源としてこれ
を資化することが好ましいが、ギ酸脱水素酵素を生産す
るものであればいずれでもよい。これらの具体的菌株と
して、例えばパラコッカス属12−A株によって代表され
るが、この他にもギ酸を唯一の炭素源としてこれを資化
しギ酸脱水素酵素を有するパラコッカス属細菌であれば
何れでも使用できる。
尚、本研究者が分離、採取した前記パラコッカス属12−
A株は既に微工研菌寄第10835号(FERM P−10835)とし
て平成元年7月11日付で工業技術院微生物工業技術研究
所へ寄託されており、その菌学的性質は以下の通りであ
る。
I.形態 1)直径0.8μm×1.2μm程度の短桿菌。
2)グラム染色:陰性。
3)運動性:なし。
4)芽胞形成能:なし。
II.次の各培地における生育状態 1)肉汁寒天平板培養:光沢の無い白色の円形で平滑な
コロニーを形成する。
2)肉汁寒天斜面培地:糸状に生育する。
3)肉汁液体培養:表面に菌膜を生成し、培地に混濁を
生じる。
4)肉汁ゼラチン穿刺培養:ゼラチンを液化せず。
5)トリマス・ミルク:変化せず。
III.次の生理学的性質 1)硝酸塩の還元:還元する。
2)脱窒反応:陽性。
3)MRテスト:陰性。
4)VPテスト:陰性。
5)インドールの生成:生成せず。
6)硫化水素の生成:生成せず。
7)デンプンの加水分解:分解せず。
8)クエン酸の利用:Koserの培地およびChristensenの
培地でのクエン酸の利用は認められない。
9)無機窒素の利用 硝酸塩:利用する。
アンモニウム塩:利用する。
10)色素の生成:認められない。
11)ウレアーゼ:陰性。
12)オキシダーゼ:陽性。
13)カタラーゼ:陽性。
14)生育の範囲 ・温度:25〜30℃ ・pH:7.4〜8.5 15)酸素に対する態度の好気性。
16)O−Fテスト:グルコースを分解しない。
17)下記の糖類からの酸およびガスの生成。
イ)L−アラビノース:酸、ガスとも生成せず。
ロ)D−キシロース:酸、ガスとも生成せず。
ハ)D−グルコース:酸、ガスとも生成せず。
ニ)D−マンノース:酸、ガスとも生成せず。
ホ)D−フラクトース:酸、ガスとも生成せず。
ヘ)D−ガラクトース:酸、ガスとも生成せず。
ト)麦芽糖、酸、ガスとも生成せず。
チ)ショ糖:酸、ガスとも生成せず。
リ)乳糖:酸、ガスとも生成せず。
ヌ)トレハロース:酸、ガスとも生成せず。
ル)D−ソルビット:酸、ガスとも生成せず。
ヲ)D−マンニット:酸、ガスとも生成せず。
ワ)イノシット:酸、ガスとも生成せず。
カ)グリセリン:酸、ガスとも生成せず。
ヨ)デンプン:酸、ガスとも生成せず。
本発明の細菌によるギ酸脱水素酵素生産に使用する培地
としては、主炭素源としてのギ酸と窒素源、無機塩類を
各々適量に含有する培地ならば合成培地または天然培地
の何れでも使用できる。特にビタミン等の成長促進物質
を培地中に含有させる必要はないがこれを妨げるもので
はない。
本発明使用の細菌は、培地中のギ酸濃度が高くなると生
育速度が減少するため培地中のギ酸初濃度をできるだけ
低くしてギ酸の消費に合わせてギ酸を添加し、培養液中
のギ酸濃度を低く保ちながら培養する方法を取ることが
望ましい。窒素源としてはアンモニウム塩、尿素、コー
ン・スティープ・リカー、酵母エキス、ペプトンなどの
窒素化合物が用いられる。また、そのほかの無機塩とし
ては例えばリン酸塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、
カルシウム塩、カリウム塩、硫酸塩、鉄塩、塩素などが
挙げられ、必要に応じてビタミン類などの生育促進物質
を添加してもよい。
本発明使用の細菌の培養条件は、培養温度25〜30℃で生
育可能であるがギ酸脱水素酵素の生成などの点から28〜
30℃が特に好ましい。また、pH7.4〜8.5で生育可能であ
るが、pH7.4〜8.0が好ましい。また、培養方式は、回分
培養または連続培養のいずれでも良い。
かくして得られた培地中のギ酸脱水素酵素は菌体外にも
蓄積するがおもに菌体内に生成蓄積されている。従って
ギ酸脱水素酵素を分離精製するには、培養終了後に培養
液から遠心分離などの手段によって菌体を集め、超音波
細胞破砕機などの手段により菌体を破砕して、ギ酸脱水
素酵素を菌体から緩衝液中に抽出し、粗ギ酸脱水素酵素
液を得、この粗ギ酸脱水素酵素液を精製することにより
ギ酸脱水素酵素を得る。
次に本発明の新規なギ酸脱水素酵素の理化学的性質を説
明する。
(1)作用 ギ酸脱水素酵素は、ギ酸を酸化(脱水素)し炭酸を生成
する反応を触媒する。この反応の際同時に、NADを還元
しNADHを生成する。この反応は可逆反応であるが、中性
付近ではNADH生成側に平衡が偏っているため、NADH再生
用酵素として優れた性質を持っている。
(2)基質特異性 この酵素の基質特異性は厳密であって、正反応における
ギ酸もしくは逆反応における炭酸以外には作用しない。
(3)作用pH pH範囲:5.0〜11.0、至適pH:5.5〜8.0 (4)pH安定性 4.0〜12.0 (5)力価の測定法 ギ酸酵素活性の測定はNAD1mM、ギ酸ナトリウム24mM、メ
ルカペトエタノール30mM及びグリセリン0.5%を含む0.1
Mリン酸緩衝液(pH7.0)を用い、30℃でのNADH生成に伴
う340nmの吸光度の増加により行った。1分間に1μmol
eのNADHを生成する酵素量を1単位とした。
(6)作用温度の範囲 温度範囲:25〜70℃、至適温度:50〜60℃ (7)温度安定性 50℃以下 (8)pH、温度などによる失活の条件 60℃,1時間もしくは65℃,5分間で完全に失活した。ま
た、pH3.0及びpH12.0において4℃で24時間保存した後
でも、各々72%、91%の活性を保っており、完全に失活
させることはできなかった。
(9)阻害、活性化及び安定化 エチレンジアミン四酢酸(通常EDTAと略、1mM),α,
α′−ジピリヂル(1mM),o−フェナンスロリン(1mM)
などのキレート剤では阻害されなかった。硝酸銀(0.01
mM),塩化第二水銀(0.01mM),青酸カリ(0.1mM),
アジ化ナトリウム(0.1mM),p−クロロマーキュリベン
ゾエイド(通常PCMBと略、1mM)共存下で活性を測定し
たところ完全に酵素活性が阻害された。また、N−エチ
ルマレイミド(10mM),ヒドロキシルアミン(10mM),
モノヨード酢酸(1mM)では余り阻害を受けなかった。
従って、本酵素の活性発現には金属が関与せず、また特
にPCMBにより強く阻害されたことから、本酵素の活性発
現にはSH基が関与していることが示唆される。
また、本酵素の活性発現に関して活性化剤や安定化剤を
酵素溶液に添加する必要性はなく、そのような活性を持
つ物質も見つかっていない。一般に脱水素酵素類は酸素
で失活する場合が多く、メルカプトエタノールなどの還
元剤を酵素液に加える場合が多いが、本酵素については
特に添加する必要はない。
(10)精製方法 ギ酸脱水素酵素は塩析法、溶媒析出法、カラムクロマト
グラフィーなどによりギ酸脱水素酵素が精製されるが、
通常、細胞破砕後の粗酵素液に硫酸アンモニウムを35%
飽和濃度になるように加え生じた沈澱画分を集め、30mM
メルカプトエタノールを含有する10mMリン酸緩衝液(pH
7.0)に溶解後、同緩衝液に対して透析を行う。これを
同緩衝液で平衡化したDEAE-セルロースカラム(26mmφ
×600mm)に吸着させ、同緩衝液で洗浄し、次いで30mM
メルカプトエタノールを含有する100mMリン酸緩衝液(p
H7.0)で溶出してきたギ酸脱水素酵素活性画分を集め、
精製酵素を得ることができる。
尚、NADH再生用酵素として使用するならば精製途中の段
階のギ酸脱水素酵素を使用することも可能であるが、使
用しようとしている反応系の主反応を妨害するような別
な酵素活性が混在している場合はこれを除く必要があ
る。
(11)分子量 約100,000 本酵素の上記理化学的性質を従来公知のギ酸脱水素酵素
と比較し本酵素が新規なギ酸脱水素酵素であることを次
に説明する。
分子量による比較では、一般に酵母由来のギ酸脱水素酵
素は70,000〜84,000また、最近由来のではシュードモナ
ス・オキザラティカスの315,000以外は80,000〜98,000
である。本酵素は100,000であり、酵母由来の酵素とは
異なり、他の細菌由来の酵素と似た分子量を持ってい
る。特に、モラキセラ属細菌の酵素とよく似た分子量を
持っている。また、シュードモナス・オキザラティカス
以外の本酵素を含めた他の微生物由来のギ酸脱水素酵素
が同一の分子量のサブユニット2個から成るのに対し、
シュードモナス・オキザラティカスの酵素は分子量の異
なる2種類のサブユニット各2個ずつから成り、他の酵
素とは異なった構造をしている。実際、シュードモナス
・オキザラティカスのギ酸脱水素酵素は色素依存性のギ
酸脱水素酵素とNAD脱水素酵素の複合体であり、他の酵
素とは全く異なるものである。シュードモナス・オキザ
ラティカスの酵素はギ酸に対するKm値が非常に低く、ま
た比活性も非常に高いが〔従来の技術〕で述べたように
非常に酸素耐性が低く工業的には利用は難しい。
至適pHにおいては本酵素は他の酵素に比べ酸性側に活性
の至適が少し偏っており、酸性側での反応に有利であ
る。またpH安定性も他の酵素に比べて広い範囲で安定で
あり、工業的応用の際には広い条件で利用することがで
きる。至適温度も一番高いが、温度安定性は他の酵素と
変わらない。
比活性においては文献値ではシュードモナス・オキザラ
ティカス(42,25℃),キャンディダ・メチリカ(16,37
℃)についで3番目に高い比活性を本酵素(11.6,30
℃)は持っており、アクロモバクター・パーヴァラス
(11.0,37℃)とほぼ同じ値であるが、一般に失活が起
こらなければ測定温度が高いほど酵素の活性は高いので
37℃の値を至適温度を調べたグラフから計算すると19.3
になり2番目に高い比活性を持つことになる。更に、本
酵素以外のここに挙げた3種類の微生物由来の酵素は何
れも安定剤の存在なしには不安定な酵素であり、工業的
な利用は難しい。
ギ酸に対するKm値はシュードモナス・オキザラティカス
(0.135)は別格にして、キャンディダ・メタノリカ
(3.0),リポマイセス・メタノシルビエンス(3.64)
と本酵素(5.0)は同程度に他の酵素より一桁低い値を
持っている。これに対し、NADに対するKm値は本酵素
(0.036)がモラキセラ属細菌(0.068)やリポマイセス
・メタノシルビエンス(0.072)など他の酵素のKm値の
半分以下の値を持っている。このことから本酵素を酵素
分析などに用いるのに適した性質を持っている。
以上述べたように本酵素は従来公知のギ酸脱水素酵素と
は異なった性質を持ち、更にその性質の大部分が公知の
ギ酸脱水素酵素よりも優れたものであることが分かる。
次に実施例を示すことにより更に本発明のギ酸脱水素酵
素を詳細に説明する。
実施例1 菌株の培養には、ギ酸を唯一の炭素源とした以下の組成
の培地を用いた。すなわち、HCOOH1.0ml,KH2PO47.0g,(N
H4)2SO42.0g,FeSO4・7H2O2.0g,MgSO4・7H2O0.3g,CaCl
2・2H2O0.1g,NaCl0.1g,微量金属溶液1.0ml,蒸留水1000
mlを含有し、最終pHをpH7.4に調整した。なおここで用
いた微量金属溶液は、1リットル中にH3BO30.3g,MnCl2
・4H2O0.2g,ZnCl20.75g,CuSO4・5H2O0.2g,FeCl3・6H
2O2.5g,(NH4)6Mo7O24・4H2O0.1g,CoSO4・7H2O0.15gを
含有するものである。この培地10リットル容ジャーファ
ーメンターに、7リットルを入れ、これにパラコッカス
属12-A株(微工研菌寄第10835号)の種培養液1.2リット
ルを接種し、pH調整しながら30℃で30時間培養した。培
養終了後、遠心分離で集菌した後、菌体を超音波破砕
し、遠心上清にギ酸脱水素酵素約2000Uを含む菌体抽出
液を得、これを粗酵素液とした。この粗酵素液の蛋白質
1mg当たりの活性、即ち比活性は1.82U/mg蛋白質であっ
た。
この菌体抽出液から硫安塩析、イオン交換クロマトグラ
フィーによって、電気泳動的に単一なバンドとなったギ
酸脱水素酵素約900Uを精製酵素標品として得た。これは
粗酵素液中に含まれたギ酸脱水素酵素活性の約半分が効
率良く精製酵素として得られたことを示す。精製の結
果、ギ酸脱水素酵素は約6.4倍に精製され、その比活性
は11.6U/mg蛋白質であった。
本実施例の結果は、本酵素がパラコッカス属12-A株の菌
体内可溶性蛋白質の約15%という高濃度で存在すること
を意味し、このパラコッカス属12-A株の高い酵素生産性
を証明するものである。
実施例2 実施例1で得られた精製ギ酸脱水素酵素(以下本酵素と
呼ぶ)の活性測定を異なるpH値で行い各pHの本酵素の活
性を調べた。pH7.0での活性を100とした時の相対活性と
して表した。反応液のpH 相対活性 4.5 4 5.0 29 5.5 96 6.0 98 6.5 100 7.0 100 7.5 100 8.0 97 8.5 83 9.0 74 9.5 60 10.0 44 10.5 37 11.0 27 11.5 16 12.0 3 これらの結果により本酵素の反応至適pHは5.5〜8.0で作
用範囲はpH5.0〜11であることを示した。
実施例3 pH7.0での本酵素の反応至適温度を調べた。50℃での活
性を100としたときの相対活性として表した。反応温度(℃) 相対活性 20 18 25 24 30 32 35 48 40 66 45 84 50 100 55 100 60 99 65 83 70 28 75 3 本酵素至適温度は50〜60℃で作用範囲は25〜70℃であっ
た。
実施例4 本酵素のpH7.0の温度安定性を各温度で1時前処理した
酵素の残存活性を調べることにより検討した。前処理温度(℃) 残存活性(%) 無処理 100 25 100 30 100 35 100 40 100 45 100 50 100 55 11 60 0 本酵素は50℃までは非常に安定であった。
実施例5 本酵素のpH安定性を各pHで4℃24時間前処理した酵素の
残存活性を調べることにより検討した。前処理pH 残存活性(%) 3.5 72 4.0 94 4.5 90 5.0 94 5.5 94 6.0 100 6.5 100 7.0 100 7.5 100 8.0 100 8.5 100 9.0 100 9.5 99 10.0 98 10.5 96 11.0 94 11.5 95 12.0 91 本酵素はpH4.0〜12の範囲で安定であり、広いpH範囲で
の利用が可能になることを示していた。
実施例6 本酵素のギ酸及びNADに対するKm値をギ酸及びNADの濃度
と反応速度との関係から求めたところ、ギ酸に対しては
5.0mM、NADに対しては0.036mMと非常に低いKm値を持つ
ことが明らかになり、NADHの再生用酵素として用いる際
の優位性が示された。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 飯田 貢 千葉県野田市山崎東亀山2641 東京理科大 学理工学部応用生物科学科内 (72)発明者 木村 恵子 千葉県野田市山崎東亀山2641 東京理科大 学理工学部応用生物科学科内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記の理化学性質に特徴を有するギ酸脱水
    素酵素。 (1)作用温度の範囲 温度範囲:25〜70℃、至適温度:50〜60℃ (2)作用pHの範囲 pH範囲:5.0〜11、至適pH:5.5〜8.0 (3)分子量 約100,000 (4)ギ酸に対するKm値 5.0mM (5)NADに対するKm値 0.036mM (6)温度安定性 温度:50℃以下 (7)pH安定性 pH:4.0〜12.0
  2. 【請求項2】パラコッカス属に属し、請求項1記載のギ
    酸脱水素酵素生産能を有する微生物を培地に培養し、培
    養物中に前記ギ酸脱水素酵素を蓄積せしめ、これを採取
    することを特徴とする、請求項1記載のギ酸脱水素酵素
    の製造方法。
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