JPWO2002046427A1 - 新規ギ酸脱水素酵素及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、ギ酸脱水素酵素活性を有する新規なポリペプチド、その遺伝子、及び、当該ポリペプチドを生産する能力を有する微生物あるいは形質転換体を用いたギ酸脱水素酵素の製造方法に関するものである。
背景技術
ギ酸脱水素酵素(酵素番号[EC1.2.1.2])は、ギ酸と酸化型ニコチンアデニンジヌクレオチド(以下、NAD)より、二酸化炭素と還元型ニコチンアデニンジヌクレオチド(以下、NADH)を生成する反応を触媒することから、NADH依存型の酵素反応における補酵素再生に利用でき、この場合、安価なギ酸を利用できること、副産物が二酸化炭素であり系内に蓄積しないことなどの利点をもつ有用な酵素である。さらに、ギ酸、NADに対するKm値が小さい酵素は低基質濃度で有効に作用し、また、ギ酸の特異的な微量定量へも利用可能である等、産業上有用な酵素である。
ギ酸脱水素酵素は、高等植物、メタノール資化性酵母、細菌等においてその存在が知られている。酵素が精製され性質が調べられているものとしては、高等植物であるエンドウ豆由来の酵素(Pisum sativum:J.Biochem.,vol.77,845,1975)や、メタノール資化性酵母であるキャンディダ・ボイディニ(Candida boidinii:Eur.J.Biochem.,vol.62,151,1976)、キャンディダ・メチリカ(Candida methylica:Eur.J.Biochem.,vol.152,657,1985)、キャンディダ・メタノリカ(Candida methanolica:FEMS Microbiol.Lett.,vol.48,139,1987)、クロイッケラ・スピーシーズ(Kloeckera sp.:Agric.Biol.Chem.,vol.38,111,1974)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris:vol.47,2547,1983)、リポマイセス・メタノシルビエンシス(Lipomyces methanosilviensis:特開昭60−241887号公報)などに由来する酵素を挙げることができるが、これらの酵素はいずれも、比活性が低い、ギ酸あるいはNADに対するKm値が大きい、あるいは作用pH域が狭いなどから工業的な利用には問題を有していた。
細菌由来で精製されて性質が明らかにされている酵素もいくつか存在するが、それぞれ工業上の利用には問題点を有している。例えば、シュードモナス・スピーシーズ 101(Pseudomonas sp.101;Eur.J.Biochem.,vol.99,569,1979参照)、及び、シュードモナス・オキザラティカス(Pseudomonas oxalaticus:Eur.J.Biochem.,vol.83,485,1978)由来の酵素は、比活性は比較的高いが、安定剤非存在下では不安定である。モラキセラ・スピーシーズ(Moraxella sp.:J.Bacteriol.,vol.170,3189,1988,特開昭63−313580号公報)由来の酵素は、比活性が低くギ酸に対するKm値が大きい。ハイホマイクロビウム・スピーシーズ(Hyphomicrobium sp.:特開2000−78970号公報、1999年農芸化学会大会発表、1999年農芸化学会大会講演要旨234ページ)由来の酵素は、比活性が低く作用pH域が狭い。また、パラコッカス・スピーシーズ(Paracoccus sp.;特開平3−61481号公報参照)はギ酸に対するKm値が大きい。
なお、細菌由来のギ酸脱水素酵素としては、NADを電子受容体としないもの(酵素番号[EC1.2.2.1])、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli:J.Biol.Chem.,vol.250,6693,1975)、クロストリジウム・パスツーリアナム(Clostridium pasteurianum:J.Bacteriol.,vol.159,375,1984)、クロストリジウム・サーモアセティカム(Clostridium thermoaceticum:J.Biol.Chem.,vol.259,1826,1983)などに由来する酵素も知られているが、これらは補酵素NADHの再生目的には利用できない。
細菌由来のNAD依存型ギ酸脱水素酵素遺伝子の形質転換体での発現に関しては、シュードモナス・スピーシーズ 101(Pseudomonas sp.101:Biotechnol.Appl.Biochem.,vol.18,201,1993)、マイコバクテリウム・バッカエ(Mycobacterium vaccae:Appl.Microbiol.Biotechnol.,vol.44,479,1995,特開平10−23896号公報)、パイロコッカスKOD1(Pyrococcus KOD1:特開2000−69971号公報)、ハイホマイクロビウム・スピーシーズ(Hyphomicrobium sp.:特開2000−78970号公報,1999年農芸化学会大会発表、1999年農芸化学会大会講演要旨234ページ)由来の遺伝子について知られているが、アンシロバクター(Ancylobacter)属由来のギ酸脱水素酵素遺伝子については知られていない。
アンシロバクター(Ancylobacter)属の細菌に関しては、完全菌体の状態でギ酸脱水素酵素活性があることは知られているものの(J.Gen.Appl.Microbiol.,27,381(1981))、酵素を精製、単離した報告や性質を明らかにした報告はこれまでになく、また、遺伝子の単離についても知られていない。
発明の要約
本発明は、上記のような従来知られているギ酸脱水素酵素の問題点、即ち、酵素の生産性が低い、比活性が低い、ギ酸及びNADに対するKm値が大きい、温度安定性やpH安定性の範囲が狭い、作用pHの範囲が狭い等の問題を解決し、工業的に利用可能な優れた性質をあわせもつギ酸脱水素酵素及びその製造方法を提供するものである。
本発明者らは上記課題に鑑み、広く土壌よりギ酸脱水素酵素活性を有する微生物を探索した結果、優れた性質を有するギ酸脱水素酵素を高生産するアンシロバクター(Ancylobacter)属細菌を新たに分離した。当該微生物からギ酸脱水素酵素を単離、精製し、さらにギ酸脱水素酵素遺伝子の単離、ならびに宿主微生物での発現を達成し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の理化学的性質を有するポリペプチドである:
(1)作用:NADを補酵素として、ギ酸を酸化し二酸化炭素を生成する、
(2)分子量:約1.0×106、
(3)ギ酸に対するKm値:2.4mM、
(4)NADに対するKm値:0.057mM、
(5)作用温度の範囲:20℃〜60℃、至適温度45℃〜55℃、
(6)作用pHの範囲:5.0〜11.0、至適pH5.5〜9.5、
(7)温度安定性:50℃以下、
(8)pH安定性:4.5〜9.5。
本発明の提供する上記酵素は、高い比活性を有し、ギ酸及びNADに対するKm値が小さく、温度安定性やpH安定性の範囲が広く、作用pH、温度の範囲が広い工業的利用に適した性質をあわせ持つ酵素である。
また、本発明は、以下の(a)から(c)のいずれかのポリペプチドである:
(a)配列表配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド:
(b)配列表配列番号1に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、挿入、欠失および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつギ酸脱水素酵素活性を有するポリペプチド:
(c)配列表配列番号1に示されるアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、ギ酸脱水素酵素活性を有するポリペプチド。
本発明はまた、上記のポリペプチドをコードするDNAである。
本発明はまた、以下の(d)から(f)のいずれかのDNAである:
(d)配列表配列番号2に示される塩基配列からなるDNA:
(e)配列表配列番号2に示される塩基配列において1若しくは数個の塩基が置換、挿入、欠失および/または付加された塩基配列を有し、かつギ酸脱水素酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA:
(f)配列表配列番号2に示される塩基配列と90%以上の相同性を示す塩基配列を有し、かつ、ギ酸脱水素酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA。
本発明はまた、以下の(g)から(i)のいずれかのDNAである:
(g)配列表配列番号3に示される塩基配列からなるDNA:
(h)配列表配列番号3に示される塩基配列において1若しくは数個の塩基が置換、挿入、欠失および/または付加された塩基配列を有し、かつギ酸脱水素酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA:
(i)配列表配列番号3に示される塩基配列と90%以上の相同性を示す塩基配列を有し、かつ、ギ酸脱水素酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA。
また、本発明は、上記のDNAを含む組換えプラスミドである。
また、本発明は上記のDNAまたは組換えプラスミドで宿主微生物を形質転換して得られる形質転換体である。
さらに本発明は、上記のポリペプチドを生産する能力を有する微生物、または上記形質転換体を培養し、培養物中に該ポリペプチドを蓄積せしめ、これを採取することからなるギ酸脱水素酵素の製造方法でもある。
発明の詳細な開示
まず、本発明のポリペプチドについて説明する。本発明のポリペプチドは、ギ酸脱水素酵素活性を有するポリペプチドであって、以下のような理化学的性質を有することを特徴とする。
(1)作用:NADを補酵素として、ギ酸を酸化し二酸化炭素を生成する、
(2)分子量:約1.0×106、
(3)ギ酸に対するKm値:2.4mM、
(4)NADに対するKm値:0.057mM、
(5)作用温度の範囲:20℃〜60℃、至適温度45℃〜55℃、
(6)作用pHの範囲:5.0〜11.0、至適pH5.5〜9.5、
(7)温度安定性:50℃以下、
(8)pH安定性:4.5〜9.5。
本発明において、ポリペプチドのギ酸脱水素酵素活性は、ギ酸ナトリウム500mM、NAD 5mMを含む0.1Mリン酸バッファー(pH7)中で、30℃あるいは40℃でのNADHの生成にともなう340nmの吸光度の増加を測定することにより行う。
作用温度、作用pHは、上記の活性測定条件の温度またはpHを変えて活性を測定することにより決定する。また、温度安定性は、該ポリペプチドを各温度で10分間処理した後の残活性を測定することによって、pH安定性は、該ポリペプチドを6℃で20時間、各pHで処理した後の残活性を測定することによって決定する。また、分子量はゲルろ過クロマトグラフィー法により決定する。
本発明のポリペプチドは、ギ酸脱水素酵素活性を有する微生物から取得できる。従って、本発明のポリペプチドの起源となる微生物としては、メタノール資化性菌あるいはギ酸資化性菌等が好適であり、特に限定されないが、例えばアンシロバクター(Ancylobacter)属に属する微生物が挙げられ、なかでもアンシロバクター アクアティカス(Ancylobacter aquaticus)が好ましく、より好ましくはアンシロバクター アクアティカス(Ancylobacter aquaticus)KNK607M株である。
上記のアンシロバクター アクアティカス(Ancylobacter aquaticus)KNK607M株は、本発明において発明者らが分離、取得した菌株であり、平成12年10月20日に受託番号FERM BP−7335として独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(郵便番号305−8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)にブタペスト条約に基づき寄託されている。以下に、アンシロバクター アクアティカス(Ancylobacter aquaticus)KNK607M株の菌学的性質を示す。
1.形態
1)直径1μmx3μm程度の湾曲桿菌
2)グラム染色:陰性。
運動性:なし。
4)胞子の有無:なし。
5)肉汁寒天平板培地培養でのコロニー形態:円形、全円なめらか、凸状、光沢、淡黄色
2.培養的性質
1)肉汁液体培養:懸濁
2)リトマスミルク:−
3.生理学的性質
1)カタラーゼ:+
2)オキシダーゼ:+
3)オルニチンデカルボキシラーセ:+
4)アルギニンジヒドロラーゼ:−
5)ウレアーゼ:+
6)β−ガラクトシダーゼ:±
7)澱粉加水分解:−
8)エクスリン加水分解:+
9)ゼラチン加水分解:−
10)O/F試験:−
11)硝酸塩還元:−
12)インドール産生:−
13)ブドウ糖酸性化:−
14)脱窒反応:+
15)MRテスト:−
16)VPテスト:−
17)硫化水素の生成:+
18)無機窒素源の利用:+
19)生育性pH6:+
20)嫌気培養:−
21)基質資化能
ブドウ糖:−
L−アラビノース:+
D−マンノース:−
D−マンニトール:+
N−アセチル−D−グルコサミン:−
マルトース:−
グルコン酸カリウム:−
n−カプリン酸:−
アジピン酸:−
dl−リンゴ酸:−
クエン酸ナトリウム:−
酢酸フェニル:−
22)酸産生
グリセリン:+
マンニトール:+
リボース:+
ソルビトール:+
本発明のポリペプチドを生産する微生物を培養する培地としては、主炭素源としてのメタノールと窒素源、無機塩類などの栄養素を含む水性媒体が用いられる。さらに、ビタミン、アミノ酸などの有機微量栄養素を添加すると、好ましい結果が得られる場合が多い。窒素源としては、アンモニウム塩、アンモニア水、アンモニアガス、尿素、酵母エキス、ペプトン、コーンス・ティープ・リカーなどが用いられる。無機塩類としてはリン酸塩、マグネシウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、鉄塩、硫酸塩、塩素などが用いられる。
培養は、通常温度範囲20℃から40℃で行えるが、25℃から37℃が好ましい。また、pHは5.5から9.5で培養できるが7から9が好ましい。また、回分式、連続式のいずれの培養方法でもよい。
培養物からの分離精製は、培養終了後に培養液から遠心分離などにより菌体を集め、超音波破砕などの手段により菌体を破砕して粗酵素液を得る。この粗酵素液を、塩析法、カラムクロマトグラフィー法などにより精製することで、本発明のポリペプチドを得ることができる。
本発明のポリペプチドは、上記のように微生物から取得される天然酵素であってもよいし、遺伝子組換え技術を利用して生産される組換え酵素であってもよい。天然酵素としては、配列表の配列番号1に示されるポリペプチドをあげることができる。
また、本発明のポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、挿入、欠失および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつギ酸脱水素酵素活性を有するポリペプチドであってもよい。
また、本発明のポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、ギ酸脱水素酵素活性を有するポリペプチドであってもよい。
「1若しくは数個のアミノ酸が置換、挿入、欠失および/または付加されたアミノ酸配列」は、部分特異的突然変異誘発法など当業者に周知の方法により、アミノ酸を置換、挿入、欠失および/または付加することにより取得可能である。具体的には、Nucleic Acid Res.10,6487(1982)、Methods in Enzymology 100,448(1983)等の文献に記載されている。
また、「ギ酸脱水素酵素活性を有するポリペプチド」とは、上記の活性測定条件において、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを用いた場合の10%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは80%以上の活性を示すポリペプチドのことをいう。
次に、本発明のDNAについて説明する。本発明のDNAは上記のポリペプチドをコードするDNAであればよい。配列表の配列番号2または配列番号3で示されるDNAであっても良いし、配列番号2または配列番号3で示される塩基配列において1若しくは数個の塩基が置換、挿入、欠失および/または付加された塩基配列を有するDNAであっても良い。また、配列番号2または配列番号3で示される塩基配列と90%以上、好ましくは95%以上の相同性を示す塩基配列を有するDNAであってもよい。
ここで、「1若しくは数個の塩基が置換、挿入、欠失および/または付加された塩基配列」とは、蛋白核酸酵素 増刊 遺伝子増幅PCR法 TAKKAJ 35(17),2951−3178(1990)又はHenry A.Erlich編 加藤郁之進鑑訳 PCRテクノロジー(1990)等に記載の当業者に周知の方法により置換、挿入、欠失および/または付加できる程度の数の塩基が置換、挿入、欠失および/または付加されてなる塩基配列を意味する。
なお、アミノ酸配列及び塩基配列の相同性は、ソフトウェアーディベロップメント(Software Development)社製のソフトウェアーであるジェネティクス(GENETYX)を用いて配列を比較することで計算できる。
本発明のDNA(ギ酸脱水素酵素遺伝子)は、前述したようなギ酸脱水素酵素活性を有する微生物から取得することができる。目的のDNAを取得するには、例えば以下の方法によることができる。
まず、ギ酸脱水素酵素活性を有する微生物より精製されたギ酸脱水素酵素のアミノ末端のアミノ酸配列を、気相プロテイン・シークエンサーなどで決定する。このアミノ酸配列にもとづいて設計したDNAプライマーと、既知のギ酸脱水素酵素遺伝子の塩基配列中で相同性の高い部分の配列にもとづいて設計したDNAプライマーを合成する。
次に、ギ酸脱水素酵素の起源となる微生物より、染色体DNAを単離する。染色体のDNAは、培養された細胞をリゾチーム,界面活性剤等で溶解後、抽出されたDNAをエタノールで析出し、ガラス棒へ付着させ、適当な緩衝液へ溶解させることを数回繰り返して精製することで得られる(例えばJ.Mol.Biol.,3,208(1961)記載のMarmur法を参照)。
この染色体DNAを鋳型に、上記のプライマーを用いてPCRを行うことで、目的の遺伝子の一部を取得できる。次に、目的遺伝子の全長を取得するために、BamHI、PstIなどの適当な制限酵素で先に得た染色体DNAを分解したものをアガロースゲル電気泳動して、PCRで得たギ酸脱水素酵素遺伝子の一部のDNA断片をプローブとしてサザンハイブリダイゼージョンを行い、ギ酸脱水素酵素遺伝子が含まれ、かつ、ギ酸脱水素酵素遺伝子内で上記制限酵素により切断されないDNA断片をゲル上で検出する。
このDNA断片をゲルより取得した後、T4 DNAリガーゼなどを用いて環化させて得たDNAを鋳型に、前にPCRで得た部分ギ酸脱水素酵素遺伝子の酵素のN末端側、C末端側それぞれの部分に相当する塩基配列にもとづき、かつ、酵素遺伝子の外側方向へ向けたDNAプライマーを合成し、これらプライマーを用いてPCRを行うことで既に取得した部分遺伝子のさらにN末側とC末側をコードするDNA断片が取得できる。このDNA断片の塩基配列を決定後、酵素のN末端をコードするDNAよりも上流、C末端をコードするDNAより下流と推定されるDNAの塩基配列にもとづきDNAプライマーを作成して、この配列の間のDNAをPCRにより増幅することでギ酸脱水素酵素遺伝子の全長を含むDNA断片を取得できる。取得したDNA断片は、分子量測定と一部の塩基配列の解析により、目的のギ酸脱水素酵素遺伝子の全長が含まれていることを確認する。
次いで、得られたギ酸脱水素酵素遺伝子を含むDNA断片をベクターDNAとT4 DNAリガーゼなどを用いて結合させることにより組換えプラスミドを得ることができる。このプラスミドを用いて、ベクターに挿入したギ酸脱水素酵素遺伝子を含むDNA断片部分の塩基配列を解析し、ギ酸脱水素酵素のN末端アミノ酸配列をコードする塩基があることを確認し、また、これより翻訳開始部位を決定し、終止コドンまでをオープンリーディングフレームとして、この塩基配列が既知ギ酸脱水素酵素遺伝子と相同であること、コードされるタンパク質が電気泳動によるタンパク質分子量と一致することなどから目的遺伝子であることを確認する。
このようにして取得したDNA、または該DNAをベクターに組み込んで得られる組換えプラスミドを用いることにより、宿主微生物を形質転換し形質転換体を得ることができる。
宿主、ベクターとしては、「組換えDNA実験指針」(科学技術庁研究開発局ライフサイエンス課編:平成8年3月22日改定)に記載の宿主−ベクター系を用いることができる。例えば、宿主としては、エシェリヒア(Escherichia)属、シュウドモナス(Pseudomonas)属、フラボバクテリウム(Flavobacterium)属、バチルス(Bacillus)属、セラチア(Serratia)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属、アセトバクター(Acetobacter)属、グルコノバクター(Gluconobacter)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属またはストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物を用いることができ、ベクターは上記の宿主内で自律複製できる微生物由来のプラスミド、ファージまたはその誘導体が使用できる。なかでも、宿主微生物としてエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)、ベクターとして当該微生物中で自律複製できるベクターを用いるのが好ましい。
一例として、上記のようにして取得したDNAをpUC19ベクターに組み込んだ組換えプラスミドpFA001を用いてエシェリヒア コリ(Escherichia coli)HB101を形質転換し、形質転換体エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)HB101(pFA001)を得ることができる。
本発明で得られた形質転換体エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)HB101(pFA001)は平成12年(2000)10月20日に受託番号FERM BP−7334として独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(郵便番号305−8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)にブタペスト条約に基づき寄託されている。
また、酵素の生産量を上昇させるために強力な構造プロモーターをもつように改質したベクターを使用することもできる。
なお、本発明で用いた組換えDNA技術は当該分野において周知であり、例えば、Molecular Cloning 2nd Edition(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)、Current Protocols in Molecular Biology(Greene Publishing Associates and Wiley−Interscience)に記載されている。
本発明で得られた形質転換体によるギ酸脱水素酵素の生産は、通常の培地を用いて培養を行えば良い。培養に使用する培地としては、炭素源、窒素源および無機塩類などの栄養素を含む通常の培地でよい。これに、ビタミン、アミノ酸などの有機微量栄養素を添加すると、好ましい結果が得られる場合が多い。炭素源としては、グルコースやシュークロースのような炭水化物、酢酸のような有機酸、アルコール類などが適宜使用される。窒素源としては、アンモニウム塩、アンモニア水、アンモニアガス、尿素、酵母エキス、ペプトン、コーンス・ティープ・リカーなどが用いられる。無機塩類としてはリン酸塩、マグネシウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、鉄塩、硫酸塩、塩素などが用いられる。
培養は温度範囲25℃から40℃で行えるが、25℃から37℃が特に好ましい。また、pHは4から8で培養できるが5から7.5が好ましい。また、回分式、連続式のいずれの培養方法でもよい。
必要に応じてメタノール、ギ酸、イソプロピル−1−チオ−β−D−ガラクトサイド(IPTG)、ラクトースなどの添加などの酵素誘導のための処理を行うこともできる。
発明を実施するための最良の形態
以下に本発明の具体的な実施例を示す。しかし、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
(実施例1)アンシロバクター アクアティカス KNK607M株の取得
本発明の、ギ酸脱水素酵素を高生産するアンシロバクター アクアティカス(Ancylobacter aquaticus)KNK607M株は以下のようにして分離した。各地より採取した土壌サンプルを0.9%食塩水に懸濁し、その上清を、メタノールを単一炭素源とする表1の組成の液体培地10mlに1%植菌して30℃で好気的に振とう培養した。
水を加えて1LとしてpH7に調整、オートクレーブ殺菌して使用。ただし、メタノールは殺菌後に添加した。
菌の生育が認められた培養液について、600nmの吸光度で菌濃度を測定した。この培養液1.5mlを遠心分離して得た菌体を、基質溶液0.5ml(0.1M リン酸バッファー、0.5M ギ酸ナトリウム、1mM NAD、1% Triton X−100、pH7)に懸濁し、30℃で20時間振とうして菌体反応を行った後、遠心して得た上清のNADHの生成量を340nmで測定した。この値を菌濃度で割った値が高いものを、ギ酸脱水素酵素高活性菌として選択した。次に、選択した菌の培養液7mlを遠心分離して得た菌体を0.7mlの0.1M リン酸バッファー(pH7)に懸濁、超音波破砕、遠心分離して上清を粗酵素液として得た。粗酵素液のギ酸脱水素酵素活性の測定は、ギ酸ナトリウム 500mM、NAD 5mMを含む0.1Mリン酸バッファー(pH7)中で、30℃でのNADHの生成にともなう340nmの吸光度の増加を測定することにより行った。また、タンパク質の定量はBSAを標準タンパク質としてBradford法(Anal.Biochem.,vol.72,248,1976参照)により行った。次に、粗酵素液の比活性が高いものについて培養液よりモノコロニー法でギ酸脱水素酵素活性菌株を純化し、得られた純化菌株を用いて上述と同様に培養して粗酵素液を調製後、ギ酸脱水素酵素活性、タンパク質濃度を測定した。そして、各菌株の粗酵素液比活性を比較し、高比活性菌株としてアンシロバクター アクアティカス(Ancylobacter aquaticus)KNK607M株(FERM BP−7334)を得た。
(実施例2)ギ酸脱水素酵素の単離・精製
アンシロバクター アクアティカス(Ancylobacter aquaticus)KNK607M株のコロニーを、表2の組成からギ酸を除いた組成の培地10mlに植菌して30℃で3日間、好気的に振とう培養した。この培養液をフラスコあたり100mlの表2の本培養培地に培地液量の1%植菌して30℃で4日間、好気的に振とう培養した。
水を加えて1LとしてpH7に調整、オートクレーブ殺菌して使用。ただし、メタノールとギ酸は殺菌後に添加した。
培養終了後、遠心分離で菌体を集菌して、1mMのジチオスレイトール(DTT)とEDTAを含む0.1Mリン酸バッファー(pH6.2)に菌体を懸濁後、超音波により菌体を破砕し、これを遠心した。上清に硫安30〜60%飽和で塩析する沈殿を遠心で取得した。この画分を1mMのDTTとEDTAを含む0.01Mリン酸バッファー(pH6.5)に溶解、同バッファーで透析後、DEAE−Sepharose(ファルマシア社製)カラムクロマトグラフィーを行い、同バッファーで洗浄後、1mMのDTTとEDTAを含む0.1Mリン酸バッファー(pH6.2)で溶出して、活性のあるフラクションを集めた。これに25%飽和となるように硫安を加えた後、TSKgel Phenylトヨパール650M(東ソー社製)にアプライしてカラムクロマトグラフィーを行い、1mMのDTTとEDTAを含む0.1Mリン酸バッファー(pH6.2)で25〜0%飽和の硫安のグラジエントをかけて溶出した。得られた活性画分に60%飽和となるように硫安を添加して、遠心により得た沈殿を1mMのDTTとEDTAを含む0.1Mリン酸バッファー(pH6.2)に溶解して、同バッファーで透析を行った。これを、SDS−ポリアクリルアミド電気泳動によって分析したところ、ギ酸脱水素酵素は単一バンドとして検出され、酵素の純粋性が確認できた。
(実施例3)酵素の性質
実施例2で得られた精製ギ酸脱水素酵素の性質を以下のように調べた。
[比活性]
得られたギ酸脱水素酵素の活性測定はギ酸ナトリウム500mM、NAD 5mMを含む0.1Mリン酸バッファー(pH7)中で、30℃あるいは40℃でのNADHの生成にともなう340nmの吸光度の増加を測定することにより行った。このとき1分間に1μmolのNADHを生成する酵素量を1unitと定義した。また、タンパク質の定量は、BSAを標準タンパク質としてLowry法で行った。精製したギ酸脱水素酵素の比活性は9.5u/mgタンパク質(30℃)、17.5u/mgタンパク質(40℃)であった。
[Km値の測定]
ギ酸及びNADに対するKm値を上記比活性の測定条件下(30℃)で調べた。なお、ギ酸のKm値測定にあたってはNAD 5mMの条件下、ギ酸ナトリウム濃度を変化させて活性を測定した。NADのKm値測定にあたってはギ酸ナトリウム500mMの条件下、NAD濃度を変化させて活性を測定した。図2に示す結果から、ギ酸に対するKm値は2.42mM、図3からNADに対するKm値は0.057mMであった。
[作用温度の範囲・至適温度]
作用温度の範囲と至適温度を上記比活性の測定条件下で調べた。30℃での活性を100%とした場合の各温度での相対活性を図4に示した。本酵素は検討した20〜60℃の範囲で50%以上の相対活性を示し、特に45〜55℃の範囲で200%以上の相対活性を示した。このことから、作用温度を20〜60℃、至適温度を45〜55℃とした。
[作用pHの範囲]
作用pHの範囲と至適pHを上記比活性の測定条件下(30℃)で調べた。pH6.3での活性を100%とした場合の各pHでの相対活性を図5に示した。本酵素はpH5〜11の範囲で3%以上の相対活性を示し、特にpH5.5〜9.5の範囲で80%以上の相対活性を示した。このことから、作用pHを5〜11、至適pHは5.5〜9.5とした。
[温度安定性]
本酵素の温度安定性を、本酵素を0.1Mリン酸バッファー(pH7)中、各温度で10分間保持した後の残活性を測定することで調べた。この結果、図6に示すように50℃以下で80%以上の残活性を示し、安定であった。
[pH安定性]
pH安定性については以下の方法で調べた。本酵素を、pH4.0〜5.5は0.05M酢酸バッファー、pH5.1〜7.9は0.1Mリン酸バッファー、pH7.5〜9.5は0.1MトリスHClバッファー、pH9.7〜11.1は0.1M炭酸バッファー中で6℃、20時間保持した後の残活性を測定した。処理前の活性と比べ活性低下のないpH6.5での残活性を100%としてpH安定性を示したのが図7である。本酵素はpH4.5〜9.5の間で70%以上の残活性を示し、比較的安定であった。
[分子量の測定]
ゲルろ過クロマトグラフィー法により分子量を決定したところ約1.0×106であった。
(実施例4)ギ酸脱水素酵素遺伝子の単離
まず、実施例1と同様の方法でアンシロバクター アクアティカス(Ancylobacter aquaticus)KNK607M株を培養して得た菌体をMarmur法に従い、リゾチーム,界面活性剤等で溶解後、抽出されたDNAをエタノールで析出し、ガラス棒へ付着させ、適当な緩衝液へ溶解させることを数回繰り返して精製して、染色体DNAを調製した。目的のギ酸脱水素酵素遺伝子を取得するには、まず、精製されたギ酸脱水素酵素のアミノ末端のアミノ酸配列を気相プロテイン・シークエンサーなどで決定して、このアミノ酸配列にもとづいて設計した配列表の配列番号4に示すDNAプライマー(Primer−1)と、既知のギ酸脱水素酵素遺伝子の塩基配列中で相同性の高い部分の配列にもとづいて設計した配列表の配列番号5に示すDNAプライマー(Primer−2)を用いて、先に得た染色体DNAを鋳型にPCRを行った。この結果、目的のギ酸脱水素酵素遺伝子の一部を取得した。
次に、目的遺伝子の全長を取得するために、制限酵素SacI、XbaI、HindIII、ClaI、BamHI、PstI、EcoRIで先に得た染色体DNAを分解したものをアガロースゲル電気泳動して、PCRで得たギ酸脱水素酵素遺伝子の一部のDNA断片をプローブとしてサザンハイブリダイゼーションを行った。この結果、用いた制限酵素でギ酸脱水素酵素遺伝子が切断されず、かつ、ギ酸脱水素酵素遺伝子を含むDNA断片が小さいのは、BamHI、PstIで分解した場合に検出されたギ酸脱水素酵素遺伝子を含むバンドであった。これらのDNA断片をゲルより取得した後、T4 DNAリガーゼを用いて環化させて得た、BamHI、PstI分解物由来のDNAを鋳型に、前にPCRで得た部分ギ酸脱水素酵素遺伝子の酵素のN末端側、C末端側それぞれの部分に相当する塩基配列にもとづき、酵素遺伝子の外側方向へ向けた配列表の配列番号6及び7に示すDNAプライマー(Primer−3、Primer−4)を合成し、インバースPCRを行った。これにより、既に取得した酵素の部分遺伝子にはなかったさらに外側の遺伝子部分を含むDNA断片を取得した。このDNA断片の塩基配列を決定後、配列表配列番号8に示す酵素のN末端をコードするDNAよりも上流と推定される塩基配列に制限酵素SphIの切断部位を結合させた配列をもつDNAプライマー(Primer−5)と、配列表配列番号9に示すC末端をコードするDNAより下流と推定される塩基配列に制限酵素EcoRI切断部位を結合させた配列をもつDNAプライマー(Primer−6)を用いて、この配列の間のDNAをPCRにより増幅することでギ酸脱水素酵素遺伝子の全長を含むDNA断片(配列表配列番号2)を取得した。得られたDNA断片の分子量と一部の塩基配列の解析から、ギ酸脱水素酵素遺伝子の全長(配列表配列番号3)が含まれていることを確認した。
(実施例5)ギ酸脱水素酵素遺伝子を含む組換えプラスミドの作成と遺伝子の解析
実施例4で得られたギ酸脱水素酵素遺伝子を含むDNA断片を制限酵素SphIとEcoRIで切断し、同酵素で切断したベクタープラスミドpUC19とT4 DNAリガーゼを用いて結合することで、図1の制限酵素地図で表され、ギ酸脱水素酵素遺伝子を含むプラスミドpFA001を取得した。なお、図中のFDH遺伝子とは、本発明のギ酸脱水素酵素遺伝子を表す。
取得したプラスミドpFA001を用いて、SphIとEcoRIの切断部位にはさまれたDNA断片の塩基配列を解析した。この結果、精製したギ酸脱水素酵素を用いて決定したN末端アミノ酸配列をコードする塩基があることを確認し、また、これより翻訳開始部位を決定し、終止コドンまでをオープンリーディングフレームとして、この塩基配列が既知ギ酸脱水素酵素遺伝子と相同であること、コードされるタンパク質が電気泳動によるタンパク質分子量と一致することを確認した。このようにして得られた、ギ酸脱水素酵素遺伝子全長を含むDNA断片の塩基配列を配列表配列番号2に、オープンリーディングフレームの塩基配列を配列表配列番号3に、塩基配列より推定されるアミノ酸配列を配列表配列番号1に示した。
(実施例6)ギ酸脱水素酵素の遺伝子を含む組換え体DNAを用いた形質転換体の作成
実施例5で得られたプラスミドpFA001とエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)HB101株のコンピテントセルを混合することで形質転換を行い、表3に示す寒天培地にプレーティングして、ギ酸脱水素酵素の遺伝子を含む組換え体DNAを含有する形質転換体をコロニーとして取得した。
脱イオン水を加えて1LとしてpH7に調製、オートクレーブして殺菌。ただし、アンピシリンは殺菌後に添加した。
得られた形質転換体のコロニーを、表4に示す液体培地10mlに植菌後、37℃で20時間、振とうして好気的に培養した。
脱イオン水を加えて1LとしてpH7に調製。オートクレーブして殺菌。ただし、アンピシリンは殺菌後に添加した。
得られた培養液から遠心分離により菌体を集菌し、0.1Mリン酸バッファー(pH7)に懸濁して超音波により菌体を破砕した後、遠心分離により菌体由来の不溶物を除去して、形質転換体のFDH酵素液を取得した。得られた酵素液0.1mlを、1Mギ酸Na(0.1Mリン酸バッファー中でpH7)1.5ml、0.1M NAD 0.15ml、0.1Mリン酸バッファー(pH7)1.25mlと混合して,30℃で340nmの吸光度変化をみたところ、NADHの生成による吸光度の増加が認められ、形質転換体にギ酸脱水素酵素活性があることが確認された。
産業上の利用の可能性
本発明は、上述の構成よりなるので、高い比活性を有し、ギ酸及びNADに対するKm値が小さく、温度安定性やpH安定性の範囲が広く、作用pH、温度の範囲が広い工業的利用に適したギ酸脱水素酵素とその製造方法を提供することができる。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の1態様であるギ酸脱水素酵素遺伝子を含む組換えプラスミドpFA001の制限酵素地図を示す。
図2は、本発明の1態様であるギ酸脱水素酵素のギ酸に対するKm値を示すグラフである。
図3は、本発明の1態様であるギ酸脱水素酵素のNADに対するKm値を示すグラフである。
図4は、本発明の1態様であるギ酸脱水素酵素の作用温度の範囲と至適温度を示すグラフである。
図5は、本発明の1態様であるギ酸脱水素酵素の作用pHの範囲と至適pHを示すグラフである。
図6は、本発明の1態様であるギ酸脱水素酵素の温度安定性を示すグラフである。
図7は、本発明の1態様であるギ酸脱水素酵素のpH安定性を示すグラフである。
Claims (19)
- 以下の理化学的性質を有することを特徴とするポリペプチド:
(1)作用:NADを補酵素として、ギ酸を酸化し二酸化炭素を生成する、
(2)分子量:約1.0×106、
(3)ギ酸に対するKm値:2.4mM、
(4)NADに対するKm値:0.057mM、
(5)作用温度の範囲:20℃〜60℃、至適温度45℃〜55℃、
(6)作用pHの範囲:5.0〜11.0、至適pH5.5〜9.5、
(7)温度安定性:50℃以下、
(8)pH安定性:4.5〜9.5。 - 以下の(a)から(c)のいずれかのポリペプチド:
(a)配列表配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド:
(b)配列表配列番号1に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、挿入、欠失および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつギ酸脱水素酵素活性を有するポリペプチド:
(c)配列表配列番号1に示されるアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、ギ酸脱水素酵素活性を有するポリペプチド。 - アンシロバクター(Ancylobacter)属に属する微生物に由来する請求項1または2に記載のポリペプチド。
- 微生物が、アンシロバクター アクアティカス(Ancylobacter aquaticus)KNK607M株(FERM BP−7335)である請求項3に記載のポリペプチド。
- 請求項1から4のいずれかに記載のポリペプチドをコードするDNA。
- 以下の(d)から(f)のいずれかのDNA:
(d)配列表配列番号2に示される塩基配列からなるDNA:
(e)配列表配列番号2に示される塩基配列において1若しくは数個の塩基が置換、挿入、欠失および/または付加された塩基配列を有し、かつギ酸脱水素酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA:
(f)配列表配列番号2に示される塩基配列と90%以上の相同性を示す塩基配列を有し、かつ、ギ酸脱水素酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA。 - 以下の(g)から(i)のいずれかのDNA:
(g)配列表配列番号3に示される塩基配列からなるDNA:
(h)配列表配列番号3に示される塩基配列において1若しくは数個の塩基が置換、挿入、欠失および/または付加された塩基配列を有し、かつギ酸脱水素酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA:
(i)配列表配列番号3に示される塩基配列と90%以上の相同性を示す塩基配列を有し、かつ、ギ酸脱水素酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA。 - 請求項5のDNAを含む組換えプラスミド。
- 請求項6のDNAを含む組換えプラスミド。
- 請求項7のDNAを含む組換えプラスミド。
- pFA001である請求項8〜10のいずれかに記載の組換えプラスミド。
- 請求項8〜11のいずれかに記載の組換えプラスミドで宿主微生物を形質転換して得られる形質転換体。
- 宿主微生物がエシェリヒア(Escherichia)属、シュウドモナス(Pseudomonas)属、フラボバクテリウム(Flavobacterium)属、バチルス(Bacillus)属、セラチア(Serratia)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属、アセトバクター(Acetobacter)属、グルコノバクター(Gluconobacter)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属及びストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物から選ばれた微生物である請求項12記載の形質転換体。
- 宿主微生物がエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)HB101である請求項12又は13記載の形質転換体。
- 形質転換体がエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)HB101(pFA001)(FERM BP−7334)である請求項12〜14のいずれかに記載の形質転換体。
- 請求項1記載のポリペプチドを生産する能力を有する微生物を培養し、培養物中に該ポリペプチドを蓄積せしめ、これを採取することを特徴とするギ酸脱水素酵素の製造方法。
- 微生物がアンシロバクター(Ancylobacter)属に属する微生物である請求項16記載の製造方法。
- 微生物がアンシロバクター アクアティカス(Ancylobacter aquaticus)KNK607M株(FERM BP−7335)である請求項17記載の製造方法。
- 請求項12〜15のいずれかに記載の形質転換体を培養し、培養物中にギ酸脱水素酵素を蓄積せしめ、これを採取することを特徴とするギ酸脱水素酵素の製造方法。
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