JPH05961U - 燃料噴射ポンプ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 プランジャ５に外嵌するとともにスピルポ
ート１２を形成したコントロールスリーブ１１の機械的
強度ないしは耐久性を損なうことがないとともに、燃料
の噴射タイミングに影響を与えることもない状態で、噴
射の高圧化にともなって燃料の噴射切れを改善可能な燃
料噴射ポンプを提供すること。 【構成】 傾斜リード１０を高ラック方向に延長可能
とすることに着目したもので、プランジャ５の傾斜リー
ド１０とコントロールスリーブ１１のスピルポート１２
との相対位置を制御することにより燃料噴射の有効スト
ロークを調節するようにした燃料噴射ポンプであって、
プランジャ５の長さ方向において燃料吸排ポート７より
下方に突出しない範囲において、傾斜リード１０の先端
部に連通して補助傾斜リード２１を形成した。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は燃料噴射ポンプにかかるもので、とくに燃料の噴射終了時の噴射切 れ（スピル速度）を改良した燃料噴射ポンプに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】

一般に、ディーゼルエンジンに装備する燃料噴射ポンプとくに列型燃料噴射 ポンプ（たとえば特開昭６３−１８３２６４号）においては、燃料噴射量ないし その有効ストローク制御のために、らせん状の溝から形成した傾斜リードをプラ ンジャに形成するとともに、この傾斜リードの部位に対応したコントロールスリ ーブの部位にスピルポートを形成する構成が一般的である。

【０００３】 図３ないし図５により説明する。 図３は、従来からの燃料噴射ポンプ１の燃料噴射開始時の一部断面要部側面 図、図４は同、燃料噴射終了時の一部断面要部断面図であって、燃料噴射ポンプ １はデリバリバルブハウジングないしはポンプハウジング２と、このポンプハウ ジング２内に設けたプランジャバレル３とを有し、内部に燃料溜り室４を形成し てある。

【０００４】 このポンプハウジング２とプランジャバレル３とにかけてプランジャ５を回 転および往復動可能に配置する。プランジャ５の上方部には高圧の燃料圧室ない しはプランジャ室６を形成し、デリバリバルブ（図示せず）に連通させてある。

【０００５】 プランジャ５には燃料吸排ポート７と、燃料吸排ポート７に連通してプラン ジャ室６に至る中央燃料通路８と、燃料吸排ポート７に連通する周面上の縦溝９ と、この縦溝９に連通する同じく周面上の傾斜リード１０とを形成してある。

【０００６】 プランジャ５に外嵌してコントロールスリーブ１１を設ける。このコントロ ールスリーブ１１はコントロールロッド（図示せず）によりプランジャ５との相 対位置を変化させるように上下動可能とすることによってプリストロークを可変 としている。

【０００７】 コントロールスリーブ１１には、その半径方向にスピルポート１２を形成す る。なお、スピルポート１２は傾斜リード１０と軸方向上で一致する部位にこれ を形成する。

【０００８】 こうした構成の燃料噴射ポンプ１において、プランジャ５の下降により燃料 溜り室４内の燃料を燃料吸排ポート７から吸入し、プランジャ５の上昇により燃 料吸排ポート７がコントロールスリーブ１１の下端部１１Ａによって閉鎖されて から、燃料の圧縮が開始される（図３）。

【０００９】 なお、燃料吸排ポート７、傾斜リード１０、およびスピルポート１２部分の 要部を拡大して図５に示すように、燃料の圧縮、噴射のタイミングは燃料吸排ポ ート７の最下端部７Ａによりこれを設定するものであるから、傾斜リード１０の 最下端部１０Ａはこの最下端部７Ａより下方にこれを位置させてはならないもの である。

【００１０】 とくに図４および図５に示すように、プランジャ５がさらに上昇して、傾斜 リード１０の上端縁１０Ｂがスピルポート１２に一致すると、プランジャ室６と 燃料溜り室４とが、中央燃料通路８、燃料吸排ポート７、縦溝９および傾斜リー ド１０を介して連通するので、所定量の燃料がスピルポート１２から燃料溜り室 ４内にスピルすることにより燃料噴射終了（燃料スピルのタイミング）となる。

【００１１】 なお燃料の噴射量の制御は、コントロールラック（図示せず）によりプラン ジャ５をその軸心のまわりに回動させることによって、傾斜リード１０とスピル ポート１２との係合位置を変化させ、燃料吐出の有効ストロークＳ（図３）を調 整することによりこれを行う。

【００１２】 また、コントロールスリーブ１１を上下に操作してプリストロークを調節す ることにより燃料噴射のタイミングを進角あるいは遅角させることができる。

【００１３】 従来から、こうした燃料の吸入、圧縮、吐出さらにスピルの工程を有する燃 料噴射ポンプ１においては、最後のスピル工程時にその燃料噴射終わりの切れを 良くすることにより、つまり所定単位ポンプ回転角あたりの燃料のスピル量を大 きくすることにより、スピル速度を増加させ、排出ガス性能を向上させることが できることがわかっている。

【００１４】 スピル速度を増加させるために、たとえば特開昭６３−１８３２６４号のよ うに、コントロールスリーブ１１に形成するスピルポート１２の直径を大きくす ることにより対応している。

【００１５】 しかしながら、スピルポート１２の直径を大きくすることは、コントロール スリーブ１１の強度の低減、およびこれにともなう変形が大きくなる等の問題が あるとともに、こうした構成によってはプランジャ５のリフトによるスピルポー ト１２の面積開口速度にも限界がある。

【００１６】 しかも、燃料噴射の高圧化にともなって上記有効ストロークＳが増加する傾 向にあり、従来からのプランジャ５の傾斜リード１０の形状では、とくに図５に 示すように、有効ストロークＳを大きくする高ラック位置（実線）における燃料 噴射終了の開口面積が、低ラック位置（仮想線）のそれと比較して著しく狭いた めに、スピル性能が低下するという問題がある。

【００１７】 すなわち、スピルポート１２が傾斜リード１０の先端部に近い、いわゆる高 ラック位置にあるときのスピルポート１２の開口面積は、傾斜リード１０の最長 先端部１０Ｃより縦溝９側（図中左側）の部分（斜線）に規定されてしまうとい う問題がある。

【００１８】 なお、高ラック位置においても十分な開口面積を維持するためには、スピル ポート１２をさらに延長させればよいことになるが、最下端部１０Ａが燃料吸排 ポート７の最下端部７Ａより下方に位置すると、噴射開始のタイミングがずれて しまうという問題がある。

【００１９】

【考案が解決しようとする課題】

本考案は以上のような諸問題にかんがみなされたもので、コントロールスリ ーブの機械的強度ないしは耐久性を損なうことがないとともに、燃料の噴射タイ ミングに影響を与えることもない状態で、噴射の高圧化にともなって燃料の噴射 切れを改善可能な燃料噴射ポンプを提供することを課題とする。

【００２０】

【課題を解決するための手段】

すなわち本考案は、傾斜リードを高ラック方向に延長可能とすることに着目 したもので、高圧のプランジャ室内を往復動して燃料を吸入吐出するプランジャ と、このプランジャに外嵌するとともにスピルポートを形成したコントロールス リーブとを有するとともに、上記プランジャに燃料吸排ポートおよびこの燃料吸 排ポートに連通する傾斜リードを形成し、この傾斜リードと上記スピルポートと の相対位置を制御することにより燃料噴射の有効ストロークを調節するようにし た燃料噴射ポンプであって、上記プランジャの長さ方向において上記燃料吸排ポ ートより下方に突出しない範囲において、上記傾斜リードの先端部に連通して補 助傾斜リードを形成したことを特徴とする燃料噴射ポンプである。

【００２１】 当該補助傾斜リードの一般的な形状としては、従来からの傾斜リードに比較 してその幅を小さく設定するか、あるいはテーパー状にこれを形成することが考 えられる。

【００２２】

【作用】

本考案による燃料噴射ポンプでは、プランジャの長さ方向において燃料吸排 ポートより下方に突出しない範囲において、傾斜リードの先端部分にさらに突出 して補助傾斜リードを形成したので、高ラック位置においてもコントロールスリ ーブのスピルポートは従来よりも幅広い範囲で傾斜リードと連通が可能となり、 スピル用の開口面積を増加させることが可能となる結果、プランジャの上昇にと もなって、スピルポートのより広い部分がこの傾斜リードに一気に連通状態とな るため、燃料のスピル速度を向上させることができる。

【００２３】

【実施例】

つぎに本考案の一実施例による燃料噴射ポンプを図１および図２にもとづき 説明する。ただし、図３ないし図５と同様の部分については同一符号を付し、そ の詳述はこれを省略する。

【００２４】 図１は上記燃料噴射ポンプ２０の要部を示す図５と同様の要部拡大図であっ て、前記傾斜リード１０の先端部に、この傾斜リード１０と連通させて補助傾斜 リード２１を形成することにより、傾斜リード部分を段付き構成としてある。

【００２５】 補助傾斜リード２１の最下端部２１Ａは、傾斜リード１０の最下端部１０Ａ とほぼ水平位置にあるものとし、燃料吸排ポート７の最下端部７Ａより下方に位 置させないものとする。

【００２６】 補助傾斜リード２１の上端縁２１Ｂは、スピルポート１２側の上端縁１０Ｂ を延長してもので、上端縁１０Ｂと一直線上にある。

【００２７】 したがって、補助傾斜リード２１の最長先端部２１Ｃは、傾斜リード１０の 最長先端部１０Ｃよりさらに高ラック位置（図中右側）に位置している。

【００２８】 こうした構成の燃料噴射ポンプ２０において、燃料の吸入、圧縮、吐出は従 来と同様にこれを行う。

【００２９】 プランジャ５が図中左方向に回動して、スピルポート１２が傾斜リード１０ の先端部分にまで相対的に移行して有効ストロークを大きくする高ラック位置に きても、スピルポート１２は燃料のスピル時に、補助傾斜リード２１の最長先端 部２１Ｃまで連通可能であり、スピルの開口面積（斜線）が従来の場合に比較し て大きくなるものである。

【００３０】 図２は有効ストロークに対する開口面積の関係を示したグラフで、補助傾斜 リード２１を形成していない従来の場合に比較して、補助傾斜リード２１を形成 した本考案のものは、有効ストロークが増加しても、その開口面積はあまり変化 がなく、高ラック位置でのスピル性能を向上可能であることがわかる。

【００３１】 しかも、補助傾斜リード２１の最下端部２１Ａは燃料吸排ポート７の最下端 部７Ａより下方には位置させていないので、この燃料吸排ポート７がコントロー ルスリーブ１１の下端部１１Ａにより閉鎖される噴射開始のタイミングに影響す ることはない。

【００３２】 なお本考案においては、補助傾斜リードの形状は、従来の傾斜リードより幅 が狭いものはもちろん、先端部に向かってテーパー状などの任意の形状を取るこ とができる。

【００３３】

【考案の効果】

以上のように本考案によれば、補助傾斜リードを傾斜リードに連通して形成 することとしたので、高ラック位置でも燃料噴射終了の開口面積が狭くなること がなく、ラピッドスピルを全噴射領域において実現することができ、高圧噴射に 対応可能である。

【００３４】

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の一実施例による燃料噴射ポンプ２０の
要部拡大説明図である。

【図２】同、有効ストロークに対するスピルポート１２
の開口面積の関係を示したグラフである。

【図３】従来からの燃料噴射ポンプ１の燃料噴射開始時
の一部断面要部側面図である。

【図４】同、燃料噴射終了時の一部断面要部断面図であ
る。

【図５】同、要部拡大説明図である。

【符号の説明】 １ 燃料噴射ポンプ ２ デリバリバルブないしポンプハウジング ３ プランジャバレル ４ 燃料溜り室 ５ プランジャ ６ プランジャ室 ７ 燃料吸排ポート ７Ａ 燃料吸排ポート７の最下端部 ８ 中央燃料通路 ９ 縦溝 １０ 傾斜リード １０Ａ 傾斜リード１０の最下端部 １０Ｂ 傾斜リード１０の上端縁 １０Ｃ 傾斜リード１０の最長先端部 １１ コントロールスリーブ １１Ａ コントロールスリーブ１１の下端部 １２ スピルポート ２０ 燃料噴射ポンプ ２１ 補助傾斜リード ２１Ａ 補助傾斜リード２１の最下端部 ２１Ｂ 補助傾斜リード２１の上端縁 ２１Ｃ 補助傾斜リード２１の最長先端部 Ｓ 有効ストローク

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 【請求項１】 高圧のプランジャ室内を往復動して燃
   料を吸入吐出するプランジャと、このプランジャに外嵌
   するとともにスピルポートを形成したコントロールスリ
   ーブとを有するとともに、前記プランジャに燃料吸排ポ
   ートおよびこの燃料吸排ポートに連通する傾斜リードを
   形成し、この傾斜リードと前記スピルポートとの相対位
   置を制御することにより燃料噴射の有効ストロークを調
   節するようにした燃料噴射ポンプであって、前記プラン
   ジャの長さ方向において前記燃料吸排ポートより下方に
   突出しない範囲において、前記傾斜リードの先端部に連
   通して補助傾斜リードを形成したことを特徴とする燃料
   噴射ポンプ。