JP2520229Y2 - 燃料噴射ポンプ - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本考案はディーゼルエンジンなどの内燃機関に用いら
れる可変プリストローク機構付きの燃料噴射ポンプにか
かわるもので、とくに高速・高圧の燃料の燃料溜り室へ
のスピルによるキャビテーションエロージョンを防止可
能であるとともに、燃料温度対策を施して信頼性を向上
させた燃料噴射ポンプに関するものである。

［従来の技術］ 従来より、燃料噴射ポンプには、そのプリストローク
を可変するためのプリストローク可変機構を設けたもの
があり、一般的には上下往復動するプランジャに外嵌し
ているタイミングスリーブとプランジャとの相対位置関
係を調節することによってプリストロークを可変として
いる。たとえば、実公昭62−8381号、特表昭63−503077
号などがある。

従来の燃料噴射ポンプ１について第３図にもとづき概
説する。

第３図は従来の燃料噴射ポンプ１の要部縦断面図であ
って、そのポンプハウジング２にはエンジンの気筒数に
対応した数の縦孔３を形成し、縦孔３内にプランジャバ
レル４を挿入固定する。上記プランジャバレル４には、
プランジャ５を回動かつ往復動自在に挿入してある。

上記プランジャバレル４の内部に燃料溜り室６を開口
形成する。この燃料溜り室６内にタイミングスリーブ７
を上下動可能に収容する。このタイミングスリーブ７は
プランジャ５とプランジャバレル４との間に位置するよ
うにプランジャ５を外嵌している。

上記燃料溜り室６には燃料供給パイプ８から供給孔
９、供給通路10およびタイミングスリーブ７の縦方向案
内溝11を介して燃料を供給可能とし、かつ燃料通路12
（第１の燃料通路）により各縦孔３を連通し、各縦孔３
内の燃料溜り室６にも常時燃料を供給するものとする。
なお、上記縦方向案内溝11内にタイミングスリーブ７の
案内用突出部7Aが上下方向に摺動自在に係合している。

上記プランジャ５の上方部のプランジャバレル４内に
はプランジャ室13（燃料圧室）を構成する。

プランジャ５の下端は、エンジンに連結したカム（と
もに図示せず）にこれを当接することによりエンジンの
回転駆動により、これを図中上下方向に往復動させるよ
うになっている。さらににプランジャ５をアクセルペダ
ル（図示せず）により回動可能としている。

上記タイミングスリーブ７には、上記縦方向案内溝11
とは反対側に横方向係合溝14を形成する。この横方向係
合溝14にはタイミングコントロールロッド15を挿入して
ある。

プランジャ５は、燃料溜り室６に開口する燃料吸入ポ
ートである半径方向の燃料吸排孔16と、この燃料吸排孔
16および燃料圧室13を連通するようにその中心軸方向に
形成した連通孔17と、その外面に傾斜して形成した制御
用リード溝18とを有している。

さらに、このプランジャ５に摺動自在に外嵌したタイ
ミングスリーブ７には、その半径方向にスピルポートで
あるカットオフ孔19を貫通形成してある。このカットオ
フ孔19は、プランジャ５の上下方向の動きに応じて制御
用リード溝18と連通可能な上下位置関係にあるように配
置するものとする。

さらに、プランジャ５を上記アクセルペダルを用いて
回動可能とすることにより制御用リード溝18とカットオ
フ孔19との係合位置を変え、燃料圧送の有効ストローク
を変化させることによって、燃料の噴射量を調節するこ
とができるようになっている。

また、横方向係合溝14に係合したタイミングコントロ
ールロッド15を操作することによりタイミンスリーブ７
を上下動させることによってプリストロークを調節す
る。つまりプランジャ５のプリストロークは、タイミン
グスリーブ７の下端縁部とプランジャ５の下死点におけ
る燃料吸排孔16の位置との間の寸法ないしはプランジャ
５の下死点からこの燃料吸排孔16が閉じられるまでの寸
法として定義され、燃料吸排孔16が閉じられるときが燃
料の噴射はじめとなる。

さらに、プランジャバレル４の摺動自在に挿入したプ
ランジャ５がエンジンの回転駆動力を受けることによ
り、プランジャバレル４内を往復動し、燃料溜り室６内
の燃料を燃料圧室13内に吸入し、この燃料圧室13内の燃
料を圧送するようになっている。

以上のような構成においては、第３図に図示のような
状態、つまり低プリストロークの状態では、タイミング
スリーブ７が下方に位置しているため、供給通路10に連
通する燃料通路を兼ねた縦方向案内溝11の下方部分がタ
イミングスリーブ７の案内用突出部7Aにより閉鎖され
る。

したがって、縦方向案内溝11を通過する燃料の通路面
積が狭くなり、燃料供給パイプ８から遠い縦孔３内ない
しは燃料溜り室６内の部分たとえば部分Ａの燃料温度が
上昇して噴射性能に悪影響を及ぼす。

さらに、同部分Ａでは制御用リード溝18とカットオフ
孔19との合致による燃料のカットオフ（スピル）時に燃
料溜り室６内に流入してくる噴流に含まれるキャビテー
ションによりポンプハウジング２の内壁ないしはタイミ
ングスリーブ７の表面にキャビテーションエロージョン
Ｅ（以下エロージョンＥという）が生じるという問題が
ある。

つまり、こうしたエロージョンＥの発生によりポンプ
ハウジング２およびプランジャバレル４の耐久性が低下
するという問題がある。

第４図は、タイミングスリーブ７の縦方向の案内を別
の機構により構成した他の従来の燃料噴射ポンプ20の要
部縦断面図であって、以下第３図と同様の部分には同一
符号を付しその詳述を省略して概説する。この燃料噴射
ポンプ20が第３図に図示した燃料噴射ポンプ１と異なる
構成はタイミングスリーブ７の案内機構である。

すなわちタイミングスリーブ７に、上記縦方向案内溝
11に、プランジャバレル４に設けた案内ピン21を係合す
ることにより、タイミングスリーブ７を縦方向に案内可
能としている。

こうした構成の燃料噴射ポンプ20においても、第４図
に図示の状態ではタイミングスリーブ７が高プリストロ
ーク状態にあり、燃料通路12から遠い燃料溜り室６内の
部分Ｂが燃料温度が上昇しやすく、またエロージョンＥ
も発生しやすいという問題がある。

要するに、いずれのタイプの燃料噴射ポンプ１、20に
おいても、タイミングスリーブ７の移動に影響されて燃
料の通路面積が変化し上述のような問題を生じているも
のである。

［考案が解決しようとする課題］ 本考案は以上のような問題にかんがみてなされたもの
で、プリストローク可変機構を有する燃料噴射ポンプに
おいて、とくにタイミングスリーブの操作位置に影響さ
れてプランジャバレルおよびポンプハウジングの内壁に
発生するエロージョンを防止するとともに燃料温度を適
正に維持し、プランジャバレルおよびポンプハウジング
の耐久性を向上させることが可能な信頼性のある燃料噴
射ポンプを提供することを課題とする。

［課題を解決するための手段］ すなわち本考案は、燃料圧室を有するプランジャバレ
ルと、このプランジャバレル内を往復動して燃料通路か
ら燃料溜り室を介して燃料を吸い込み、上記燃料圧室か
らこの燃料を圧送するプランジャと、このプランジャに
摺動自在に外嵌するように該プランジャと上記プランジ
ャバレルとの間に位置させるとともに、スピルポートを
形成したタイミングスリーブとを有する燃料噴射ポンプ
であって、上記タイミングスリーブの移動により通路面
積が変化しないように位置させて上記燃料通路とは別の
第２の燃料通路を形成するとともに、この第２の燃料通
路と上記燃料溜り室とを連通したことを特徴とする燃料
噴射ポンプである。

［作用］ 本考案における燃料噴射ポンプにおいては、プリスト
ロークを可変とするためのタイミングスリーブの移動に
より通路面積が変化しないように位置させて従来の燃料
通路とは別の第２の燃料通路を形成することによって、
つまりタイミングスリーブの移動に影響されない範囲に
第２の燃料通路を形成することによって、タイミングス
リーブの位置に関係なく燃料の円滑な供給を可能ととし
燃料温度を均一化可能であるとともに、この第２の燃料
通路と燃料溜り室とを連通したので、燃料溜り室、縦方
向案内溝ないしは従来からの燃料通路に加えて燃料を受
け入れる容量を充分に取ることが可能となるため、燃料
噴射終了時の燃料のスピルによる噴流を原因とするエロ
ージョンを防止することができる。

［実施例］ つぎに、本考案の第一の実施例による燃料噴射ポンプ
30を第１図にもとづき説明する。

第１図は燃料噴射ポンプ30の第３図と同様の要部縦断
面図であって、第３図に示した従来の燃料噴射ポンプ１
と異なる部分は、ポンプハウジング２に縦方向案内溝11
とは独立して第２の燃料通路31を形成するとともに、第
２の燃料通路31を燃料溜り室６と連通する供給連通孔32
をプランジャバレル４に形成したことである。したがっ
て第２の燃料通路31の通路面積はタイミングスリーブ７
の移動により変化することがない。

その他の構成については事実上燃料噴射ポンプ１と同
様であるので、その説明はこれを省略する。

図示のように、燃料供給パイプ８から第２の燃料通路
31および供給連通孔32を通って燃料溜り室６内に燃料が
供給されるとともに、充満した燃料は第２の燃料通路3
1、燃料溜り室６および燃料通路12を通って各縦孔３内
に至り、スピルする燃料を受け入れる容量を増加させる
ことができるとともに、燃料が滞留する部分を減少させ
ることができるので、スピルした燃料をより確実に拡散
させることが可能となる。

したがって、エロージョンの発生を防止可能であると
ともに、燃料溜り室６内の燃料温度も均一化が容易であ
る。

つぎに第２図は本考案の第二の実施例による燃料噴射
ポンプ40の要部縦断面図であって、第４図に示した従来
の燃料噴射ポンプ20と異なる部分は、ポンプハウジング
２に縦方向案内溝11とは独立して第２の燃料通路41を形
成するとともに、この第２の燃料通路41を燃料溜り室６
と連通する供給連通孔42をプランジャバレル４に形成し
たことである。したがって第２の燃料通路41の通路面積
はタイミングスリーブ７の移動により変化することがな
い。

その他の構成については事実上燃料噴射ポンプ20と同
様であるので、その説明はこれを省略する。

図示のように、第２の燃料通路41から供給された燃料
は供給連通孔42を通って燃料溜り室６内に燃料が供給さ
れるとともに、燃料通路12からも燃料が供給される。充
満した燃料は第２の燃料通路41、燃料溜り室６および燃
料通路12を通って各縦孔３内に至り、スピルする燃料を
受け入れる容量を増加させることができるとともに燃料
が滞留する部分を減少させることができるので、スピル
した燃料をより確実に拡散させることが可能となる。

したがってエロージョンの発生を防止可能であるとと
もに、燃料溜り室６内の燃料温度も均一化が容易であ
る。

［考案の効果］ 以上説明したように本考案によれば、タイミングスリ
ーブの移動範囲とは別につまり該移動により通路面積が
変化しないように第２の燃料通路を形成するとともに、
この第２の燃料通路とプランジャバレル内部とを連通す
るようにしたので、燃料溜り室内への燃料の供給を円滑
にしてエロージョンの発生を防止するとともに、燃料温
度の均一化を可能とし、プランジャバレルおよびポンプ
ハウジングの耐久性を増加させることが可能となる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の第一の実施例による燃料噴射ポンプ30
の要部縦断面図、 第２図は本考案の第二の実施例による燃料噴射ポンプ40
の要部縦断面図、 第３図は従来の燃料噴射ポンプ１の要部縦断面図、 第４図は従来の他の燃料噴射ポンプ20の要部縦断面図で
ある。 １……燃料噴射ポンプ ２……ポンプハウジング ３……縦孔 ４……プランジャバレル ５……プランジャ ６……燃料溜り室 ７……タイミングスリーブ 7A……タイミングスリーブ７の案内用突出部 ８……燃料供給パイプ ９……供給孔 10……供給通路 11……縦方向案内溝 12……燃料通路（第１の燃料通路） 13……プランジャ室（燃料圧室） 14……横方向係合溝 15……タイミングコントロールロッド 16……燃料吸排孔 17……連通孔 18……制御用リード溝 19……カットオフ孔（スピルポート） 20……燃料噴射ポンプ 21……案内ピン 30……燃料噴射ポンプ 31……第２の燃料通路 32……供給連通孔 40……燃料噴射ポンプ 41……第２の燃料通路 42……供給連通孔 Ｅ……キャビテーションエロージョン（エロージョン） Ａ、Ｂ……燃料が滞留しやすい燃料溜り室６内の部分

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】燃料通路を有するポンプハウジングと、 前記燃料通路に一方の壁面のみを開口させて燃料溜り室
   を形成するとともに、この燃料溜り室に連通可能な燃料
   圧室を有するプランジャバレルと、 このプランジャバレル内を往復動して前記燃料通路から
   前記燃料溜り室を介して燃料を吸い込み、前記燃料圧室
   からこの燃料を圧送するプランジャと、 このプランジャに摺動自在に外嵌するように該プランジ
   ャと前記プランジャバレルとの間の前記燃料溜り室に位
   置させ、前記プランジャバレルの他方の壁面に沿って前
   記プランジャの軸方向に案内可能とするとともに、スピ
   ルポートを形成したタイミングスリーブとを有する燃料
   噴射ポンプであって、 前記プランジャバレルの前記他方の壁面を隔てて前記燃
   料溜り室とは独立して前記燃料通路とは別の第２の燃料
   通路を形成するとともに、 この第２の燃料通路と前記燃料溜り室とを連通したこと
   を特徴とする燃料噴射ポンプ。