JPH0591834A - チーズ類及びその製造方法 - Google Patents

チーズ類及びその製造方法

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JPH0591834A
JPH0591834A JP3252417A JP25241791A JPH0591834A JP H0591834 A JPH0591834 A JP H0591834A JP 3252417 A JP3252417 A JP 3252417A JP 25241791 A JP25241791 A JP 25241791A JP H0591834 A JPH0591834 A JP H0591834A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 曳糸性に優れたブロック状のプロセスチーズ
タイプのチーズ類を提供する。 【構成】 溶融塩としてクエン酸ナトリウム及び/又は
モノリン酸ナトリウム、乳化剤としてHLB5以下の乳
化剤を添加する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ナチュラルチーズの特
徴である調理加熱時に適度なオイルオフが生じて均一に
溶け、曳糸性を有するプロセスチーズタイプのチーズ類
およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、曳糸性を有するプロセスチーズ類
は知られているが、それらはいずれもスライスタイプに
限られていた。その主な理由は、曳糸性を発揮させるに
はチーズの加熱溶融性等が前提となるが、適度な加熱溶
融性を保持するにはチーズ組織の乳化が過度に進行しな
いことが必要で、乳化を促進させ得る加熱殺菌後の冷却
工程をできるだけ短縮化すべくスライス状にし冷却効率
の向上を図るためである。
【0003】従って、速やかな冷却が困難なブロック状
のプロセスチーズでは冷却工程中にチーズ組織の乳化が
進行し、このため適度な加熱溶融性やオイルオフを付与
することが困難となる。又、従来のブロック状のプロセ
スチーズでは通常、溶融塩を添加し、組織のクリーミン
グ作用を促進するとともに安定なエマルジョンを形成さ
せるため、尚更、加熱溶融性やオイルオフを生じにくく
なる。
【0004】このように、ブロックタイプのプロセスチ
ーズは、いずれも、調理加熱時にナチュラルチーズ特有
の適度なオイルオフを生ぜずチーズ表面に油膜を生じる
ことがなく表面の蛋白質が乾燥状態を呈し、いわゆる
“皮”を生成し、加熱溶融性やその時の広がりやすさが
劣り、又良好な曳糸性もないという性質を有していた。
なお、ここに「ブロック状」もしくは「ブロックタイ
プ」とは、瞬間的に冷却できがたい「かたまり状」にな
ったものをいう。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上述したごと
き状況に鑑みなされたものであって、スライスかブロッ
クか等の形状に関係なく、調理加熱時にナチュラルチー
ズと同様の適度なオイルオフと均一な加熱溶融性及び曳
糸性の良好なプロセスチーズタイプのチーズ類及びそれ
を製造するための方法を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】かかる課題は、次の手段
により解決される。即ち、本発明は、溶融塩及びW/O
型の乳化に適した乳化剤を用いて製造されたプロセスチ
ーズタイプのチーズ類であって、加熱調理時にオイルオ
フ、加熱溶融性及び優れた曳糸性を呈することを特徴と
するチーズ類であり、又、該チーズ類を製造する方法で
あって、主原料に溶融塩及びW/O型の乳化に適した乳
化剤を添加し、これを撹拌下に、加熱、溶融、乳化後、
成型、冷却する工程を包含するチーズ類の製造方法であ
る。本発明によれば、チーズ類の形状に関係なく加熱調
理時に、良好なオイルオフ、均一な加熱溶融性及び充分
な曳糸性を有するプロセスチーズタイプのチーズ類を簡
単なプロセスで提供することができる。
【0007】まず、本発明の理解を容易にするため、プ
ロセスチーズタイプの属性に伴うチーズ組織上の問題点
について説明する。本発明のチーズ類はプロセスチーズ
タイプのものである。プロセスチーズタイプとは、広
く、加熱・溶融、冷却工程を製造工程中に包含し、保存
性を高めたものであって、組織上は、ポリペプチド鎖と
脂肪の乳化した網目構造が水分と脂肪球から成る乳化相
(通常O/W型の乳化状態を呈する)を包み込んでいる
コロイド的組成を有するものをいう。ナチュラルチーズ
も類似の組織を有するが、加熱・溶融工程及び冷却工程
を行なわないため、微生物や酵素の影響を受け品質が変
化し易いが、組織の乳化が進行しておらずCaを介した
パラカゼイネートの架橋構造が自然な形で保持され、結
果として、ゴーダチーズやチェダーチーズ等の硬質チー
ズでは適度なオイルオフ、加熱溶融性、更に曳糸性を示
すことになる。一方、プロセスチーズタイプでは加熱・
溶融、冷却過程で組織の乳化が進行するため上記特性の
ナチュラルチーズのそれに比し著しく劣化する。
【0008】ここで曳糸性とは、一般に、ピザのトッピ
ングなどに用いられるチーズのようにチーズを加熱、溶
融させ、引き伸ばした時、糸をひく特性をいう。又、加
熱溶融性(メルトダウンという)とは加熱により溶融状
態を呈する特性をいい、曳糸性を示すための前提条件と
なるものであり、加熱溶融性が均一で、ある程度以上、
向上しないと良好な曳糸性は得られない。オイルオフと
は、加熱によりチーズ組織から油脂が遊離し表面へでて
くる特性をいい、加熱時に表面に“皮”を生成しないた
めに必要な性質である。
【0009】チーズ組織と上記3つの特性即ち、曳糸
性、メルトダウン、オイルオフとの関係は完全に解明さ
れているわけではなく、それぞれのメカニズムも不明な
点が多い。概略すれば、曳糸性はカゼイネートと脂肪の
乳化した網目構造の緻密性に関連し、メルトダウンは主
にパラカゼイネートに影響を与えるイオン性カルシウム
量に関連し、又オイルオフは網目構造中に包み込まれ分
散している水と脂肪球から成るO/W型の乳化相の乳化
状態に関連していると考えられる。それぞれの特性は基
本的には別個に発現し得るので、例えば、メルトダウン
しても曳糸性が不充分なもの、メルトダウンしてもオイ
ルオフの少ないもの、オイルオフをしても曳糸性が不充
分なもの等の場合がある(但し、メルトダウンしないも
のは曳糸性は当然に発現しない。)。
【0010】従って曳糸性、メルトダウン、オイルオフ
の各特性に優れたプロセスチーズタイプのチーズ類を得
るには、カルシウムイオンの解離に関連するpHを調整し
つつ蛋白質−脂肪の網目構造を緻密にし、分散するO/
W型の乳化相の乳化を抑え、組織全体を均一にする必要
がある。しかし、加熱、溶融、乳化、冷却の工程を介す
るプロセスチーズタイプのチーズ類では、製法上からの
制約があり、前記3つの特性を付与することは次の理由
により極めて困難である。
【0011】加熱〜冷却工程を介するため、冷却中に
脂肪分離等を生じ不均一化しやすい。これを防止するた
め冷却前に剪断力の作用等により組織の均一化、乳化を
図ることが不可欠であるが、冷却前に均一化、乳化した
組織は冷却中に外部からの力が作用しなくとも組織上静
的に乳化が進行する。この結果、特にブロックタイプで
はオイルオフ等の少ない組織となり易い。
【0012】冷却工程において、特にブロックタイプ
では、中心温度と表面温度の変化速度が相違するため、
組織の不均一化が進みやすい。これを防止するためと
同様、冷却前に充分な均一化、乳化処理を施しておく必
要がある。この結果と同様、オイルオフ等の特性は劣
化する。
【0013】加熱・溶融工程を介するため、蛋白質が
凝集し易く分離、不均一化を起し易い。これを防止する
ため乳化処理を施すとともに、溶融塩を添加して蛋白質
を解膠させ蛋白質−脂肪の網目構造を膨張させるが、こ
の結果組織の乳化がさらに促進されるため、オイルオフ
等の特性は劣化する。
【0014】換言すれば、オイルオフ等の特性を向上さ
せようと、乳化程度を低減すれば、組織は不均一化し易
く(メルトダウンも当然に不均一化する)、又蛋白質の
凝集が生ずれば曳糸性は劣化する。このように、プロセ
スチーズタイプのチーズ類ではナチュラルチーズにはみ
られない製造方法からの制限があり、曳糸性、メルトダ
ウン、オイルオフのいずれの特性にも優れたチーズ類を
実現することは極めて困難であった。
【0015】本発明者らは、それら特性とチーズ組織の
乳化状態について鋭意研究の結果、クリーミング作用の
弱い溶融塩及びW/O型の乳化に適した乳化剤を併用す
ることで、前記3つの特性を具備したチーズ類を製造で
きることを見出し本発明に至った。
【0016】以下、本発明を詳述する。まず、本発明の
対象であるチーズ類とはプロセスチーズ、チーズフー
ド、イミテーションチーズ、チーズ様食品等基本的にチ
ーズとしての風味、テクスチャー、物性等、感覚的にチ
ーズと認識しうる食品をいう。ここに、プロセスチーズ
は1種以上のナチュラルチーズを加熱、溶融、乳化後、
成型、冷却したものであり、又、チーズを主成分として
含有する食品はチーズフード(チーズ51%以上含
有)、更に本来的にチーズではないが食感、風味、物性
等がチーズと同等であるものを便宜上イミテーションチ
ーズ又はチーズ様食品と称する。プロセスチーズに限ら
ず、イミテーションチーズ、チーズ様食品でも、蛋白質
を含有しているので、その基本的構造はポリペプチド鎖
と脂肪の乳化した網状構造が水分と脂肪球を包み込んで
いる形であり、製造過程で加熱、乳化等の作用を受けて
構築されるので、この意味でプロセスチーズタイプのチ
ーズ類と本発明では定義している。
【0017】プロセスチーズの原料としては通常用いら
れうるナチュラルチーズはすべて用いることができ、特
に制限はないが、加熱調理時の曳糸性、加熱溶融性、オ
イルオフの観点からは、ゴーダチーズ、チェダーチー
ズ、エダムチーズ等の一般に曳糸性を有する硬質系のチ
ーズがよい。又、一般的には熟度の進んでいないチーズ
を用いるとよいといえる。この理由は明らかではない
が、熟度が進み、蛋白質の低分子化が進みすぎると組織
が構造的に軟化し、クリーミング効果が大きく組織の乳
化が進行するためと考えられる。原料チーズの熟度をS
TN/TN値(チーズ中の全窒素に含まれる酸可溶性窒
素の割合を示す)で表せば25%以下、好ましくは18
%以下程度の熟度の原料チーズを用いるとよい。
【0018】本発明のチーズ類の主原料としては次の混
合物(原料ミックスという)が代表的である。即ちナチ
ュラルチーズ単独;ナチュラルチーズ・ガゼイン・油脂
・水の混合物;またはカゼイン・油脂・水の混合物であ
る。この他乳酸、重曹、炭酸カルシウム等のpH調整剤が
含有されていてもよい。脂肪としては牛乳由来の各種ト
リグリセライドの他、チーズ様食品やイミテーションチ
ーズでは大豆硬化油、ヤシ硬化油等の油脂を含有しても
よい。更に、必要により着色剤、着香剤、調味料等を添
加し、特にチーズフードやチーズ様食品では、副原料と
してグアガム、キサンタンガム等の増粘剤、コーンスタ
ーチ等の保水剤、その他の食品等を加えてもよい。但
し、本発明においては、オイルオフ、メルトダウン、曳
糸性を向上させる目的でアラビアガム等の安定剤等を添
加する必要がない。通常、チーズ類は、蛋白質8〜45
wt%、脂肪4〜35wt%、水分15〜80wt%、灰分
0.5〜8wt%程度を含有しているが、これらは目的と
するチーズ類の物性、風味等により適宜設定すればよ
い。例えば、水分では、特別硬質チーズで15wt%以
上、硬質チーズで40wt%以下、半硬質チーズで40wt
%前後、軟質チーズで50〜70wt%である。
【0019】次に、本発明で用いる溶融塩は、溶融状態
にある原料チーズ中の蛋白質の形態を不溶性のカルシウ
ムパラカゼイネートから水溶性のナトリウムパラカゼイ
ネートにするイオン交換力を有するが、いわゆるクリー
ミング作用の弱いものがよい。クリーミング作用とは、
蛋白質の膨潤・吸水性を起す作用をいう。即ち、本発明
では溶融塩の本質的作用・効果であるイオン交換力があ
り曳糸性及びメルトダウンを向上させるが、蛋白質の膨
潤・吸水性が低くオイルオフの低減を抑えるものを用い
る。これにより、チーズ類の曳糸性、メルトダウンを向
上させ、かつ、オイルオフの低減を抑える組織の構築が
可能となる。
【0020】現時点ではクリーミング作用の現象は科学
的に説明されていないが、経験的にはクリーミング作用
が進行するとチーズ中の蛋白質は多量の水分を吸収す
る。そして蛋白質−脂肪の網目構造(ネットワーク)が
大きく膨潤し、安定したエマルジョンを形成する。その
結果プロセスチーズの組織は緻密で均一な製品となる。
これに対しクリーミング作用の弱い溶融塩を使用すると
柔らかく緩い組織のチーズとなる。従って、適当なオイ
ルオフの生成のためにはクリーミング作用は弱い方がよ
い。
【0021】イオン交換力があり、クリーミング作用の
弱い溶融塩としては、モノリン酸塩、クエン酸塩等を例
示し得る。これらの塩としてはナトリウム塩が一般的で
あるが、カリウム塩等も用い得る。具体的には、リン酸
一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウ
ム、リン酸二カリウム、リン酸三カリウム、クエン酸三
ナトリウム等を挙げることができる。これらは単独であ
るいは2種以上の混合塩として用いることができる。特
に、モノリン酸ナトリウムとクエン酸ナトリウムの単独
又は組み合せは前記3つの特性上、好ましく、モノリン
酸ナトリウムではリン酸二ナトリウム、クエン酸ナトリ
ウムではクエン酸三ナトリウムがよい。又原料ミックス
にナチュラルチーズ以外の原料を用いるチーズフードや
イミテーションチーズでは乳化が比較的起りにくいた
め、クリーミング性はプロセスチーズの場合よりも強く
ともよい。一方、イオン交換力がありクリーミング作用
の強い溶融塩の代表例は、ポリリン酸塩であるが、ここ
に、ポリリン酸塩等の溶融塩に比べクリーミング作用が
弱いものは「弱い」という。
【0022】次に、W/O型の乳化に適した乳化剤と
は、一般にはHLBが10以下の乳化剤である。プロセ
スチーズでは、溶融塩の作用で水和したカゼインが作用
しO/W型の均一な組織(乳化相)を形成している。オ
イルオフの生成のためには該乳化相の乳化が過度に進行
しないことが重要であるが、乳化相の乳化状態とは反対
のW/O型に適した乳化剤を用いることで、過度の乳化
を防止することが可能となる。これはO/W型の乳化相
中の脂肪球を微細化するのをW/O型乳化剤が抑制し得
るからである。又、この乳化剤は蛋白質−脂肪の網目構
造へも影響を及ぼし、曳糸性の能力を助長する効果もあ
ると考えられる。該網目構造も複雑な乳化状態を呈して
おり、乳化剤により伸展性等の向上を図ることが可能だ
からである。上述の効果はHLB5以下の乳化剤によ
り、更に向上する、又原料ミックスの種類によっても適
正HLBは変わる。例えばチーズフードやイミテーショ
ンチーズ等ナチュラルチーズ以外のものを用いた場合
は、別に油脂を添加するため、HLBは比較的低いもの
の方がよい。
【0023】W/O型に適したHLBの低い乳化剤とし
ては、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステ
ル、ソルビタン脂肪酸エステル又はプロピレングリコー
ル酸エステルのような乳化剤を用い得る。又、乳化剤の
HLBは加算的であるため、種々の乳化剤を組み合わせ
て所定のHLBに調整するのは有効である。例えば同じ
HLB5でも、低いHLBと高いHLBの混合物と単一
物とでは作用効果が異なる。従って目的とするチーズ類
の物性等により適宜、調整するとよい。
【0024】なお、上述とは逆にO/W型の乳化に適し
たHLBの高い乳化剤を用いれば乳化相の乳化が促進さ
れ、特に、ブロックタイプのチーズ類においては、その
傾向が著しく、オイルオフ、メルトダウンが大幅に劣化
する(メルトダウンしなければ曳糸性は発現しな
い。)。そこで、溶融塩を用いず組織の緻密化を抑制す
れば、HLBの高い乳化剤を用いてもオイルオフ、メル
トダウンはそれ程劣化しないとも考えられるが、加熱溶
融中の脂肪分離を防ぐため安定剤の添加が不可欠とな
り、又、曳糸性の改良効果も小さい。特にブロックタイ
プでは、HLBの高い乳化剤を用いる限りオイルオフ、
メルトダウン、曳糸性の劣化は防止できない。次に、本
発明のチーズ類の製造方法について説明する。プロセス
チーズタイプのチーズ類の製造においては、共通に加
熱、溶融、乳化後、成型、冷却する工程を包含する。例
えば、原料ミックスを密閉式乳化釜に導入し、これに前
述の溶融塩及び乳化剤を添加し、ついで、上記乳化釜に
直接蒸気を注入し加熱しながら、撹拌して乳化を行う。
【0025】溶融塩の添加量は原料ミックスに対し0.
2〜2重量%、好ましくは0.3〜1.5重量%程度が
よいが、各工程の製造条件及び目的とするチーズ類の品
質により適宜調整する。溶融塩の添加量が不足又は過多
の場合は、全体が凝集し脂肪分離等を生じ崩壊する場合
がある。又そこまで至らなくとも添加量が少なければ組
織の不均一化を生じ充分な効果が得られず、多ければ乳
化が進行し充分な効果が得られない。
【0026】乳化剤の添加量は、原料ミックスに対し
0.05〜1.2重量%、好ましくは0.15〜0.8
重量%程度がよいが、各工程の製造条件等により適宜調
整する。乳化剤の添加量が不足すれば効果が充分でな
く、過多であればエマルジョンが過度に進行しオイルオ
フ等の特性が劣化する。
【0027】次に原料ミックスに溶融塩及び乳化剤を加
えて乳化する乳化釜では、低速〜中速撹拌を原則とし、
エマルジョン形成を促進させない構造のものが好まし
い。なぜなら撹拌速度が速いと剪断乳化的現象で高度に
乳化が進行しクリーミング作用の弱い溶融塩を用いてい
てもチーズ組織中でクリーミング作用が促進され、結果
的に、組織が比較的緻密でオイルオフ等の起こりにくい
チーズ類となり易いからである。但し、原料ミックスの
種類等によって撹拌程度は調整する。例えばチーズフー
ド、イミテーションチーズ等、ナチュラルチーズ以外の
ものを用いた場合は比較的強く撹拌しても乳化は過度と
なりにくい傾向にある。
【0028】好ましい乳化釜としてはケトルタイプ、カ
ッタータイプあるいはクッカータイプ等の乳化釜を例示
できる。低速〜中速撹拌とは概ね50〜1000rpm、
好ましくは60〜900rpm程度をいう。ケトルタイプ
を用いた場合は最高200rpm程度が普通であるが、他
のタイプを用いた場合も前記範囲内の回転数で適宜調整
すればよい。
【0029】乳化後は成型、冷却を行う。ところで、一
般的には曳糸性をもつチーズを製造するには、チーズに
かかる剪断力を抑えるために乳化釜の撹拌速度を低く
(回転数を低く)し、乳化を抑えるためにスライスチー
ズのように、加熱後に速やかに冷却を行っている。しか
し、本発明では上述のように、加熱〜冷却過程で乳化を
促進させない乳化剤及び溶融塩を用いることから、乳化
釜の撹拌速度は従来より高く、また冷却速度についても
必ずしも速やかにする必要がなく、したがってブロック
タイプのチーズにおいてもナチュラルチーズと同等のオ
イルオフ加熱溶融性及び曳糸性を有する製品を提供でき
る。
【0030】尚、加熱温度は75〜85℃程度でよく、
冷却手段としては特別な設備を必要とせず、例えば0〜
10℃に設定された保冷庫、5〜10℃に設定された水
槽等を採用できる。前述のように本発明においては冷却
速度を従来に比べ著しく遅くしても乳化ができるため成
型の形状も比較的任意に選定できる。スライスタイプ
(L90mm×W90mm×H2mm)はもちろんであるが、
従来製造が困難であったブロックタイプ(L40cm×W
25cm×H10cm:10kg)、カルトンタイプ(L11
cm×W6cm×H4cm:225g)等、所望により厚み等
を設計できる。冷却中の過度の乳化及び中心部と表面の
温度差等を生じさせない好ましい冷却速度としては、ブ
ロックタイプではその中心部の品温が15℃に達するの
に0.25〜15時間、好ましくは0.25〜10時間
程度を要するような速度とするとよい。15℃を基準と
するのは、この程度の冷却で乳化状態は安定するからで
ある。この様にして製造されたチーズ類は、加熱調理時
に均一なメルトダウンを生じ優れた曳糸性を示し、か
つ、適度なオイルオフを生じ表面に皮の生成もない。例
えば好ましい態様により得られたチーズ類の曳糸性はブ
ロックタイプのものでも少なくとも40cm以上であり、
通常55cm以上にも達する。曳糸性は次のように定義さ
れる。 (曳糸性)試料チーズを20g シャーレに採取しこれを
約90℃で1分間加熱溶融させ、次にこのチーズを糸ひ
き性測定器によって10cm/sの速度で引ぱり上げたとき
切断するまでのチーズの糸ひきの長さ(cm)。尚、引き
上げ速度を特定せず試料70gを用いて最大何cmまで
伸びるかを測定し、これを曳糸性と定義する方法(最大
曳糸性)では、前記曳糸性40cm以上は概ね、最大曳
糸性60cm以上となる。
【0031】
【実施例】以下、本発明の実施例を説明する。
【0032】実施例1 粉砕した未熟成ゴーダチーズ(STN/TN=10)14kgと
チェダーチーズ(STN/TN=25)6kgをケトルタイプの
乳化釜に入れ、これに溶融塩としてリン酸二ナトリウム
260g 、HLB4のプロピレングリコール脂肪酸エス
テル60g をそれぞれ添加した後、撹拌速度90rpm で
82℃まで加熱した。加熱したチーズは、長さ40cm×
幅25cm×厚さ10cmの段ボールに10kgづつ充填し
た。チーズを充填した段ボールは5℃の保冷庫内で冷却
して、製品とした。中心温度が15℃になるまでに約9
時間を要した。
【0033】得られた製品を3cm×1cm×2mm程度の角
型に裁断して食パンの上に乗せて電気オーブントースタ
ーで加熱したところ、メルトダウン、オイルオフともに
優れ、速やかに溶融した。オーブンより取り出して食パ
ン上のチーズの曳糸性を調べたところ良好であり、ナチ
ュラルチーズ様の物性、風味等を有していた。曳糸性等
の評価結果を表1に示す。
【0034】実施例2 粉砕した未熟成ゴーダチーズ(STN/TN=8)6.1kg、
チェダーチーズ(STN/TN=18)6.1kg、レンネット
カゼイン2.6kg、大豆硬化油2.2kg、水3kgをカッ
タータイプの乳化釜に入れ、これに溶融塩としてクエン
酸ナトリウム100g 、HLB1のショ糖脂肪酸エステ
ル160g をそれぞれ添加した後、撹拌速度750rpm
で80℃まで加熱した。加熱したチーズは、長さ30cm
×幅26cm×高さ4cmの段ボールに3.2kgづつ充填し
た。チーズを充填した段ボールは0℃の保冷庫内で冷却
して製品とした。中心温度が15℃になるまでに約3時
間を要した。得られた製品の曳糸性等は実施例1と同様
良好であった。曳糸性の評価結果は表1に示す。
【0035】実施例3 レンネットカゼイン2.6kg、酸カゼイン0.6kg、大
豆硬化油2.7kg、水4.1kgをクッカータイプの乳化
釜に入れ、これに溶融塩としてクエン酸ナトリウム60
g とリン酸一ナトリウム60g 、HLB2のソルビタン
脂肪酸エステル10g をそれぞれ添加した後、撹拌速度
200rpm で80℃まで加熱した。加熱したチーズは、
1kg詰のカートンに充填した。チーズを充填したカート
ンは10℃の保冷庫内で冷却した。中心温度が15℃に
なるまでに約3時間を要した。得られた製品の曳糸性等
は実施例1と同様良好であった。
【0036】比較例1 実施例1の配合からショ糖脂肪酸エステルを抜いた以外
は同様にして製造し製品とした。得られた製品は調理時
にメルトダウンはしたが、オイルオフはなく表面に皮が
生成し、曳糸性も不十分なものであった。
【0037】比較例2 実施例1の配合で溶融塩をポリリン酸ナトリウム360
g で置換した以外は同様にして製造し製品とした。得ら
れた製品は調理時のメルトダウン、オイルオフはともに
なく、曳糸性もなかった。
【0038】
【表1】 *曳糸性−チーズ類の切れるまでの距離 5点−70cm以上 4点−55cm以上〜70cm未満 3点−40cm以上〜55cm未満 2点−25cm以上〜40cm未満 1点−10cm以上〜25cm未満 0点−10cm未満 *加熱調理時の溶け具合 ◎−ナチュラルチーズのような適度なオイルオフがあり
均一に溶ける ○−メルトダウンはするが、チーズの表面に“皮”の生
成がある ×−溶けない
【0039】
【発明の効果】以上説明したように、原料ミックスに特
定の溶融塩及び乳化剤を添加することにより、加熱殺菌
し乳化しているにもかかわらず、加熱調理時に適度なオ
イルオフ及び均一なメルトダウンを呈し特に曳糸性に優
れたチーズ類を製造できる。該チーズ類は風味、外観、
性状等がナチュラルチーズ風であるが、保存性に優れた
新規なチーズ類として需要性が大きい。又、形状はスラ
イスタイプに限定されることはなく、ブロックタイプ等
所望の形状を選定し得るため、チーズ類のバリエーショ
ン化を図ることができる。又該チーズ類の製造条件は比
較的緩やかで、乳化工程、冷却工程等において特別な操
作を要しないため製造上も有益である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 丸井 公男 埼玉県飯能市中山382−1 B−403

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 溶融塩及びW/O型の乳化に適した乳化
    剤を用いて製造されたプロセスチーズタイプのチーズ類
    であって、加熱調理時にオイルオフ、加熱溶融性及び優
    れた曳糸性を呈することを特徴とするチーズ類。
  2. 【請求項2】 曳糸性が40cm以上(チーズが切れるま
    での長さ)である請求項1に記載のチーズ類。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載のチーズ類を製造する方
    法であって、主原料に溶融塩及びW/O型の乳化に適し
    た乳化剤を添加し、これを撹拌下に、加熱、溶融、乳化
    後、成型、冷却する工程を包含するチーズ類の製造方
    法。
  4. 【請求項4】 溶融塩が、クエン酸ナトリウム及び/又
    はモノリン酸ナトリウムである請求項3に記載の製造方
    法。
  5. 【請求項5】 乳化剤が、HLB5以下のものである請
    求項3に記載の製造方法。
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