JPH0587514A - カンチレバー状変位素子、カンチレバー型プローブ及びそれを用いた情報処理装置と走査型トンネル顕微鏡 - Google Patents

カンチレバー状変位素子、カンチレバー型プローブ及びそれを用いた情報処理装置と走査型トンネル顕微鏡

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JPH0587514A
JPH0587514A JP3276331A JP27633191A JPH0587514A JP H0587514 A JPH0587514 A JP H0587514A JP 3276331 A JP3276331 A JP 3276331A JP 27633191 A JP27633191 A JP 27633191A JP H0587514 A JPH0587514 A JP H0587514A
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Takehiko Kawasaki
岳彦 川崎
Yoshio Suzuki
義勇 鈴木
Keisuke Yamamoto
敬介 山本
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 逆圧電効果を利用したカンチレバー状変位素
子において、大きな変位量を確保しつつ、耐久性、製造
の簡易化、集積化等を達成することにある。 【構成】 圧電体薄膜5の上下面に、該圧電体薄膜5を
圧電効果により変位させるための電極2,6を設けてな
る薄膜カンチレバー状変位素子において、該圧電体薄膜
が膜厚方向に分極軸の分極方向が異なって積層されてい
る複数の層3,4よりなる構成を持つカンチレバー状変
位素子、を特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、圧電体に電圧を印加し
て、その逆圧電効果により生じる変位を利用したカンチ
レバー(片持ちばり)状変位素子、及びそれを用いたカ
ンチレバー型プローブ及びそれを用いた情報処理装置、
走査型トンネル顕微鏡に関する。
【0002】
【従来の技術】近年において、導体の表面原子の電子構
造を直接観測できる走査型トンネル顕微鏡(以下STM
と略す)が開発され(G.Binnig et.a
l.,Phys.Rev.Lett.49(1982)
57)、単結晶、非晶質を問わず実空間像を著しく高い
分解能(ナノメートル以下)で測定できるようになっ
た。更に現在、STMの手法を用いて半導体、あるいは
高分子材料等の原子オーダー、分子オーダーの観察評
価、微細加工(E.E,Ehrichs,4th.In
ternational Conference on
Scanning Tunnering Micro
scopy/Spectroscopy,’89,S1
3−3)、及び記録再生装置等のさまざまな分野への応
用が研究されている。
【0003】なかでも、コンピューターの計算情報等で
は大容量を有する記録装置の要求がますます高まってお
り、半導体プロセス技術の進展により、マイクロプロセ
ッサが小型化し、計算能力が向上したために記録装置の
小型化が望まれている。これらの要求を満たす目的で、
記録媒体との間隔が微調可能な駆動手段上に存在するト
ンネル電流発生用プローブからなる変換器から電圧印加
することによって記録媒体表面の仕事関数を変化させる
ことにより記録書き込みし、仕事関数の変化によるトン
ネル電流の変化を検知することにより情報の読み出しを
行い、最小記録面積が10nm平方となる記録再生装置
が提案されている。
【0004】かかる装置においては、試料を探針で数n
m〜数μmの範囲で走査する必要があり、その際の移動
機構として圧電体素子が用いられる。この例としては、
3本の圧電体素子を、X、Y、Z方向に沿って互いに直
交するような組み合わせ、その交点に探針を配置したト
ライポッドや、円筒型の圧電体素子の外周面の電極を分
割して一端を固定し、他端に探針を取り付け、各々の分
割電極に対応させて円筒を変形させて走査する円筒型等
のタイプがある。
【0005】さらに最近では、半導体加工技術を利用し
たマイクロマシーニング技術(K.E.Peterso
n,IEEE Trans.on Electron
Devices,Vol.ED−25,No.10,
pl241,1978)を用いて探針駆動機構を微細に
形成する試みがなされている。図7はマイクロマシーニ
ング技術により、Si基板上に圧電体バイモルフからな
るカンチレバーを形成した例である(T.R.Albr
echt,”Microfabrication of
Integrated Scanning Tunn
elingMicroscope”,Proceedi
ng of 4th International C
onference on Scanning Tun
nering Microscopy/Spectro
scopy,’89,S10−2)。
【0006】また、図8は図7のカンチレバー長手方向
の断面図である。Si基板上に2分割電極2a,2b、
Zn0圧電体5a、中間電極16、Zn0圧電体56、
2分割電極6a,6bを積層したカンチレバーを作り、
その下のSi基板の一部を異方性エッチングにより除去
してSi基板の端部から片持ちで支持されるように形成
されている。
【0007】かかる圧電体バイモルフからなるカンチレ
バーの先端には金属の探針7が接着等により取りつけら
れ、引き出し電極17を介してトンネル電流を検知す
る。このカンチレバーは、バイモルフ構成を持つため、
とりわけ上下方向に大きな変位量を得ることができると
いう優れた特性を持つ。
【0008】また、このようなマイクロマシーニング技
術により形成される探針駆動機構は微細にでき、記録再
生装置の情報の書き込み、読み出しの速度を向上させる
に要求されるプローブの複数化を容易にすることが可能
となる。
【0009】更に、この方法は、圧電体材料の薄膜技術
を利用している点で、Si半導体を主流とするICプロ
セスにそのまま組み込むことができ、優れた方法といえ
る。
【0010】一方、このようなバイモルフ構成のカンチ
レバー型アクチュエータには、上記のようなものの他
に、図9に示すような、厚み方向に分極処理を施した2
枚のPZTの板を、分極方向を逆向きにしてエポキシ樹
脂を用いて貼り合せた、シリーズ型が知られている。こ
れは焼結体を用いるもので、図9において、18a及び
18bはPZT焼結板、19a及び19bは該PZT焼
結板の分極方向、2及び6は電極である。
【0011】このようなシリーズ型アクチュエータの動
作は、素子の片端を固定した後電極2と電極6の間にあ
る一方向に電解を印加すると、上下のPZT板18a、
及び18bは分極方向が異なるために板の面内方向にお
いて各々逆向きの伸び、または縮みの変位を示し、結果
として素子の自由端部が上または下方向に変位するもの
である。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、図7に
示した装置においてはたくさんの層の電極及び圧電体の
積層を行うため各々の層の厚み及び応力を十分に制御し
なければならない。というのも、Si基板をエッチング
除去して作製するカンチレバーは各々の層の膜厚、応力
に依存して、膜中のクラックや電極と圧電体の界面にお
ける膜はがれが発生することがあったためである。特に
圧電体薄膜は窒化物、酸化物で構成されており、電極と
して使用する金属との界面は、まったく異種の材料との
接合となり、そこで非常に大きな応力を発生し、特に薄
膜化した場合には、その界面で発生した応力は、バルク
のような厚いものの場合と異なり無視できる値ではなく
なってしまう。また、全部で5層の薄膜の積層を要する
ため、素子の作製工程が多かった。
【0013】また、図9に示した装置においては、分極
処理を施した後の2枚のPZT板を張り合わせるといっ
た作製方法をとる必要があるため、厚さとしては数+μ
m〜数mmの厚いPZT板が用いられており、微細化が
困難であり、複数化、集積化が困難であるという問題点
があった。また、この装置においては張り合わせた面を
持つためにくり返し変位を行った場合の耐久性が低いと
いう問題点があった。
【0014】以上のような従来例の問題点に鑑み、本発
明の目的とするところは、従来例の圧電体バイモルフか
らなるカンチレバーの、大きな変位量といった優れた特
長を生かしながら、積層した各々の層の応力制御を容易
とし、膜中のクラック、膜はがれのない、簡易な作製工
程で作製できる、複数化、集積化可能な薄膜カンチレバ
ー(片持ちばり)状変位素子及びそれを用いた情報処理
装置等を安定して提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段及び作用】上記課題は、以
下に述べる本発明によって解決される。
【0016】第1に、圧電体薄膜の上下面に、該圧電体
薄膜を圧電効果により変位させるための電極を設けてな
る薄膜カンチレバー(片持ちばり)状変位素子におい
て、該圧電体薄膜が、膜厚方向に分極軸の分極方向が異
なって積層されている複数の層よりなることを特徴とす
るカンチレバー状変位素子である。
【0017】第2に、該圧電体薄膜が、薄膜堆積時にお
いて自発分極の方向が異なるように堆積された層が複数
層積層されたものよりなることを特徴とする、前記第1
記載のカンチレバー状変位素子である。
【0018】第3に、前記第1記載のカンチレバー状変
位素子の上面自由端部に、情報入出力用プローブを設け
たことを特徴とするカンチレバー型プローブである。
【0019】第4に、前記第3記載のカンチレバー型プ
ローブを有することを特徴とする走査型トンネル顕微鏡
である。
【0020】第5に、トンネル電流を用いて記録媒体に
情報の記録再生等を行う情報処理装置において、少なく
とも前記第3に記載のカンチレバー型プローブを有する
ことを特徴とする情報処理装置である。
【0021】次に、本発明のカンチレバー状変位素子の
動作原理を簡単に説明する。例えば、図2を用いて説明
すると、下部電極2と上部電極6の間に電界を印加した
場合、第1の圧電体薄膜層3、及び第2の圧電体薄膜層
4では分極の方向が異なるため、同一の印加電界に対し
て、第1の圧電体薄膜層3と第2の圧電体薄膜層4のう
ち片方は伸び側に変位し、もう片方は縮み側に変位する
現象が起こる。このため、カンチレバー(片持ちばり)
状変位素子の自由端部は大きく上、または下側に変位す
ることになる。
【0022】かかる構成とすることにより、中間電極が
存在しないことになり、電極と圧電体の界面における応
力が発生する部分を減らすことができる。また分極方向
の異なる圧電体薄膜の分極方向の異なる2層の界面にお
いても、2層とも同じ結晶格子を持ち、かつ熱膨張係数
もほぼ同一であるので、この界面においてはほとんど応
力は発生しない。このように、界面に存在する内部応力
を極力減少することができる。更に圧電体の張りあわせ
面を持たないため、くり返し変位に対する耐久性も高
い。
【0023】すなわち、本発明によるカンチレバー状変
位素子によれば、従来例の圧電体バイモルフからなるカ
ンチレバーにおける中間電極をなくすことができるた
め、圧電体薄膜の層間の応力制御が簡易に行えるように
なり、界面における膜はがれの問題が解決されるととも
に、圧電体膜の膜中のクラックの発生を抑制することが
できるようになり、複数化、集積化可能なくり返し変位
に対する耐久性の高い薄膜カンチレバー(片持ちばり)
状変位素子、及びそれを用いたカンチレバー型プローブ
を簡易な作製工程で安定して提供することが可能となっ
た。
【0024】ここで、本発明の詳細を説明するために、
まず本発明に至る研究の過程について以下に述べる。
【0025】(実験):分極方向の異なる層の積層形
成、及び圧電変位素子の作成 分極方向の異なる2層よりなる圧電体薄膜を連続的に積
層し、更にその積層した圧電体薄膜を用いて、本発明の
薄膜カンチレバー(片持ちばり)状変位素子を作製した
実験例について述べる。
【0026】まず、図1(a)に示すように、基板1上
に下部電極2を形成した。基板1にはSiを用い、下部
電極2はCr/Auの積層膜を用い、通常の抵抗加熱蒸
着により形成した。
【0027】次に、図1(b)に示すように、圧電体薄
膜5を、第1の圧電体薄膜層3及び第2の圧電体薄膜層
4を連続的に積層して、堆積し形成した。その際、図3
に示したイオンビーム蒸着装置を用い、蒸着源9に薄膜
の原料物質を充填し加熱により蒸発させた。更にガス噴
出口15から反応ガスを導入して基板面に吹きつけなが
ら、第1の圧電体薄膜層3と第2の圧電体薄膜層4では
イオン化電流と加速電圧を変化させて成膜した。
【0028】まず、第1の層3を、上記の成膜条件でイ
オン化電流、加速電圧を適当な値を選んで堆積し、次に
蒸着を続けながら瞬間的にイオン化電流を増やし、加速
電圧を極性を逆転してそのまま成膜を続け、第2の層4
を堆積した。
【0029】続いて、図1(c)に示すように、上部電
極6を通常の抵抗加熱蒸着によりAuを蒸着して形成し
た。
【0030】このようにして、下部電極2、圧電体薄膜
5、上部電極6を積層した後、図1(d)に示すよう
に、カンチレバー型にパターニングして変位素子の作製
を行った。パターニングにはフォトレジストを用い反応
性イオンエッチング装置によりドライエッチングし、そ
の後レジストを剥離した。その後、水酸化カリウム水溶
液を用いて基板の異方性エッチングを行い、素子の片端
部を除いて素子下部の基板を除去し素子を作製した。
【0031】このようにして作製したカンチレバー状変
位素子の下部電極2を接地した後上部電極6に+の電界
を印加したところ素子の自由端部は上方に変位し、また
−の同じ大きさの電界を印加した場合は下方に同じ大き
さだけ変位した。
【0032】以上述べたように、本発明のカンチレバー
状変位素子は、図1に示すように基板1上に下部電極
2、分極の方向が異なる複数の層、第1の層3、及び第
2の層4よりなる圧電体薄膜5、上部電極6の順で堆
積、パターニングされ、更に素子の片端部を除いて素子
下部の基板を除去して作製される。素子部のパターニン
グは通常のフォトレジストを用いたフォトリソグラフィ
ーと、反応性イオンエッチング等によるドライエッチン
グや、酸、あるいはアルカリ等のエッチング液を用いた
ウェットエッチングを組み合わせて行う。
【0033】又、電極等において適当なエッチング方法
のない場合は、リフトオフプロセスを用いる。素子下部
の基板の除去には、基板の異方性エッチングを用いて行
う。通常用いるSiの場合は、代表的な方法としてSi
3 4 をマスク層とし、このマスク層をパターニングし
た後、水酸化カリウム水溶液をエッチング液として用い
る方法がある。
【0034】また、かかる変位素子を用いたカンチレバ
ー型プローブは、図2に示すように、素子の自由端部に
情報入出力用の探針7を設けることで作製される。又、
該カンチレバー型プローブを用いた情報処理装置はST
Mの原理を利用し、記録媒体との間に流れるトンネル電
流により記録、再生を行う。代表的な装置のブロック図
を図4に示す。またまったく同様の原理、方法でSTM
により表面観察を行うことができる。
【0035】ここで、前記圧電体薄膜5に用いられる薄
膜材料としては、A1N、ZnO、Ta2 3 、PbT
iO3 、Bi4 Ti3 12、BaTiO3 、LiNbO
3 など、圧電性を持ち、かつ自発分極を行う材料であれ
ば特に材料に限定されることはない。
【0036】また、前記圧電体薄膜5の作製方法として
は特に限定されないが、前述のイオンビーム蒸着法を含
む蒸着法、スパッタ法、CVD法、ゾル・ゲル法などが
用いられる。更にこれらの成膜方法に、プラズマ、活性
ガス、光照射などのアシストを組み合わせて用いること
もできる。
【0037】また、圧電体薄膜堆積時の薄膜の分極方向
制御の方法としては、薄膜の作製方法によるが、それぞ
れの方法に対して概ね次のような手段が用いられる。 (1)蒸着法(イオンビーム蒸着法を含む) ・イオン化電流、加速電圧の制御(イオン化電流は0〜
500mA、加速電圧は−10kV〜+10kV程度の
範囲で、適当な値を選ぶ) ・蒸発物質の交換(金属←→化合物) (2)スパッタ法 ・ターゲット物質の交換(金属←→化合物) (3)CVD法 ・原料ガスの種類 等である。
【0038】また、多くの薄膜作製方法に共通の、薄膜
の分極方向制御の方法としては概ね次のようなものがあ
る。
【0039】・基板温度の変更 ・圧電体薄膜への、異種元素のドーピング ・アシスト条件の制御(プラズマ、活性ガス、光照射な
ど) ・基板に対するバイアス電界の印加 ・各層の下地の状態の制御 上記のよう分極方向の制御方法は単独に用いられるだけ
でなく、いくつかの方法を組み合わせて用いることもで
きる。また、圧電体薄膜堆積の全工程に連続的に用いら
れるだけではなく、各層間、あるいは成膜後に一時的に
用いることもできる。つまり、たとえば図1(b)にお
いて第1の層3を堆積した後、一時的にプラズマを照射
して第1層3のある一定厚さの結晶状態を変化させ、次
に第1の層3と同じ条件で第2の層4を堆積すること
で、結果的に第2の層4の形成初期の分極方向を第1の
層3と逆向きにし、そのまま第2の層4全体の分極方向
を第1の層3と逆向きに形成するといったこともでき
る。
【0040】また、下部電極2、上部電極6に用いる材
料としては、貴金属が好ましくAu、Pt、Pdなどが
用いられる。また、圧電体薄膜5に用いる材料として比
較的低い基板温度で成膜できるA1N、ZnOなどを用
いた場合は、A1などの材料も用いることができる。ま
た、ITOなどの導電性酸化物を用いることもできる。
いずれの材料を用いた場合でも、基板1、圧電体薄膜5
との密着性を向上させるため、適当な密着層を用いるこ
ともできる。これは、前述の実験で下部電極2に用いた
Cr/Au積層膜におけるCrなどである。
【0041】
【実施例】以下に実施例を用いて本発明を具体的に詳述
する。
【0042】(実施例1)図1(a)〜(e)に本実施
例のカンチレバー状変位素子及びそれを用いたカンチレ
バー型プローブの作製方法の概略を示す。また、図2は
カンチレバー状変位素子の上面自由端部に、情報入出力
用探針を設けたカンチレバー型プローブの斜視図であ
る。
【0043】図1及び図2において、1は基板、2は下
部電極、5は積層して形成された圧電体薄膜で、分極の
方向が異なる複数の層、第1の圧電体薄膜層3、及び第
2の圧電体薄膜層4よりなる。6は上部電極、7は情報
入出力用の探針である。
【0044】図3に、本実施例の素子における圧電体薄
膜5の積層に用いたイオンビーム蒸着装置の概略図の例
を示す。本図において、1は基板、8は真空容器、9は
るつぼと加熱装置を具備する蒸発源、10は基板ホルダ
ー、11はイオン化のための電子放出源、12は加速電
極、13は加速のための電源で、図中では基板側が負に
なっているが極性を反転して使用することもできる。1
4は噴出した蒸気のイオンビーム、15はガス噴出口で
ある。
【0045】尚、真空容器8は不図示の装置により排気
することができ、基板1の温度、蒸発源9の温度、電子
放出源11におけるイオン化電流、ガス噴出口15にお
けるガス流量は、不図示の装置により、それぞれ独立に
制御することができる。
【0046】次に、本実施例のカンチレバー状変位素子
の製造方法について述べる。
【0047】まず、図1(a)に示すように、基板1上
に下部電極2を形成する。基板1には面方位(100)
のSi単結晶基板の両面に、後述の基板の異方性エッチ
ングのためのマスク層としてSi34 を0.2μm堆
積したものを用いた。下部電極2はPt膜を用い、通常
の高周波スパッタリングにより0.1μmの厚さに蒸着
した後、通常のフォトリソグラフィーによるリフトオフ
プロセスで不要部分を除去して形成した。
【0048】次に、図1(b)に示すように、2層から
なる圧電体薄膜5を連続的に成膜した。成膜には図3に
示したイオンビーム蒸着装置を用いた。また、本実施例
においては、上記圧電体薄膜5の材料として、代表的な
圧電性材料のひとつであるZnOを用いた。尚、圧電体
薄膜5の第1の層3及び第2の層4は、共にイオン化電
流及び加速電圧以外は、同一の成膜条件で成膜した。
【0049】真空容器8を5×10-5Pa以下の圧力ま
で排気し、蒸発源9に薄膜の原料物質であるZnを充填
し加熱により蒸発させた。更にガス噴出口15からO2
ガスを12ml/min.で導入して基板面に吹きつけ
ながら成膜した。基板温度は200℃とした。
【0050】まず、圧電体薄膜5の第1の層3を上記の
成膜条件でイオン化電流を50mA、加速電圧を0.5
kVとし、膜厚を0.3μmとして成膜し、続いて連続
的に第2の層4を上記の成膜条件でイオン化電流を10
0mA、加速電圧を極性を逆転して−0.5kVとし、
膜厚を0.3μmとして積層して成膜した。
【0051】圧電体薄膜5を成膜したのち、上部電極6
を図1(c)に示すように、通常の高周波スパッタリン
グを用いてPtを0.1μm蒸着して形成した後、図1
(d)に示すように、通常のフォトリソグラフィーによ
り、圧電体薄膜5及び上部電極6の不要部分を除去した
後、水酸化カリウム水溶液を用いて基板の異方性エッチ
ングにより素子の片端部を除いて素子下部の基板を除去
して作製した。
【0052】本実施例で作製したカンチレバー状変位素
子の形状は、長さ500μm、幅50μmである。
【0053】このようにして作製した薄膜カンチレバー
状変位素子の下部電極2と上部電極6の間に±3Vの電
圧を印加した場合に、カンチレバーの先端部は図1の上
下方向に±5μm変位した。
【0054】カンチレバー形成後の、電圧を印加しない
状態でのカンチレバー部の反りは、先端部で0.5μm
以下であった。また、電圧を印加しない状態で周辺温度
を変化させた時発生するカンチレバー部の反りの変動は
非常に小さく、0℃〜100℃の範囲内で最大0.1μ
mであった。更に、素子に用いた膜中のクラック、膜は
がれはまったく観察されず、それによる動作不良も一切
観察されなかった。
【0055】次に、図1(e)に示すように、このよう
にして作製したカンチレバー状変位素子を用いたカンチ
レバー型プローブを、該素子の自由端部に情報入出力用
の探針7を設けることで作製した。探針7はPt、R
h、Wなどの金属片を接着して形成した。
【0056】本実施例のカンチレバー型プローブを用い
てSTMによる情報処理装置を作製した例について述べ
る。図4に装置のブロック図を示す。本実施例で作製し
たカンチレバー型プローブ21にて試料20に探針7を
近づけたのち(図上下方向)、試料20面内のX方向、
Y方向をX−Yステージ22にて走査し、探針7と試料
20にバイアス電圧印加回路26より電圧を加え、その
とき観察されるトンネル電流をトンネル電流増幅回路2
4で読み出し像観察を行う。試料20と探針7の間隔制
御とX−Yステージの駆動制御は駆動制御回路23にて
行う。これら回路のシーケンス制御はCPU25にて行
う。図には示していないが、X−Yステージ22による
走査の機構としては、円筒型ピエゾアクチュエータ、平
行バネ、作動マイクロメータ、ボイスコイル、インチウ
ォームなどの制御機構を用いて行う。
【0057】この装置にて、試料20にHOPG(グラ
ファイト)板を用いて表面観察を行った。バイアス電圧
印加回路26にて200mVの直流電圧を探針7と試料
20の間に加えた。この状態で試料20に沿って探針7
を走査してトンネル電流検出回路24を用いて検出され
る信号より表面観察を行った。スキャンエリアを0.0
5μm×0.05μmとして観察したところ、良好な原
子像を得ることができた。
【0058】このように、STMの原理による動作が確
認され、情報の記録再生並びに表面観察動作が確認され
た。
【0059】(実施例2)本実施例では、実施例1と同
様の素子において、圧電体薄膜5の材料としてZnOを
用い、堆積をスパッタ法によって行い、第1の層3と第
2の層4における分極方向の反転を、スパッタターゲッ
ト種をZnとZnOで変えて行った場合について述べ
る。
【0060】実施例1と同様に、まず図1(a)に示す
ように、基板1上に下部電極2を形成する。基板1には
面方位(100)のSi単結晶基板の両面に、後述の異
方性エッチングのためのマスク層としてSi34
0.2μm堆積したものを用いた。下部電極2は、Pt
膜を用い、通常の高周波スパッタリングにより0.1μ
mの厚さに蒸着した後、通常のフォトリソグラフィーに
よるリフトオフプロセスで不要部分を除去して形成し
た。
【0061】次に、図1(b)に示すように、2層から
なる圧電体薄膜5を連続的に成膜した。成膜条件は、い
ずれのターゲットを用いたときも、基板温度が200
℃、スパッタリングガスとしてはArとO2 を1:1で
混合したものを用い、ガス圧は0.5Paとし、スパッ
タ時のプラズマパワーを200Wとした。
【0062】まず、圧電体薄膜5の第1の層3を上記の
成膜条件でZnターゲットを用いて、膜厚を0.3μm
として成膜し、続いて連続的に第2の層4を上記の成膜
条件でZnOターゲットを用いて、膜厚を0.3μmと
して積層して成膜した。
【0063】圧電体薄膜5を成膜したのち、上部電極6
を図1(c)に示すように、下部電極2と同様に通常の
高周波スパッタリングによりPtを0.1μm蒸着して
形成した後、図1(d)に示すように、通常のフォトリ
ソグラフィーによるリフトオフプロセスより、圧電体薄
膜5及び上部電極6の不要部分を除去した後、水酸化カ
リウム水溶液を用いて基板の異方性エッチングにより素
子の片端部を除いて素子下部の基板を除去して作製し
た。
【0064】本実施例で作製したカンチレバー状変位素
子の形状は、長さ500μm、幅50μmである。
【0065】このようにして作製した薄膜カンチレバー
状変位素子の下部電極2と上部電極6の間に±3Vの電
圧を印加した場合に、カンチレバーの先端部は図1の上
下方向に±5μm変位した。
【0066】また、実施例1と同様にして上記のように
して作製したカンチレバー状変位素子の自由端部に情報
入出力用の探針7を設けカンチレバー型プローブを形成
し、これを用いてSTM並びにSTMを用いた情報処理
装置を作製したところ、実施例1と同様の良好な動作を
行った。
【0067】(実施例3)本実施例では、実施例1と同
様の素子において、圧電体薄膜5の第1の層3と第2の
層4における分極方向の反転を、層間にAlをドープし
た部分を設けることで行った場合について述べる。
【0068】実施例1とまったく同様にして、図1
(a)に示すように、Si(100)基板1上にPtの
下部電極2を形成した後、図1(b)に示すようにZn
Oを材料とし、実施例1と同様のイオンビーム蒸着法を
用いて圧電体薄膜5の第1の層3を形成した。成膜条
件、膜厚も同様である。
【0069】次に、基板温度を200℃に保ったまま、
同一真空内でAlを0.002μm蒸着した。このAl
は、ZnO圧電体薄膜5の第1の層3の上部表面に拡散
し、表面部分のみを導電性とするとともに、結晶性を変
化させる。それに続いて圧電体薄膜5の第2の層4を、
第1の層3を成膜したのと全く同じ成膜条件、膜厚で成
膜した。
【0070】圧電体薄膜5を成膜したのち、上部電極6
を図1(c)に示すように、通常の高周波スパッタリン
グを用いてPtを0.1μm蒸着して形成した後、図1
(d)に示すように、通常のフォトリソグラフィーによ
り、圧電体薄膜5及び上部電極6の不要部分を除去した
後、水酸化カリウム水溶液を用いて基板の異方性エッチ
ングにより素子の片端部を除いて素子下部の基板を除去
して作製した。
【0071】本実施例で作製したカンチレバー状変位素
子の形状は、長さ500μm、幅50μmである。
【0072】このようにして作製した薄膜カンチレバー
状変位素子の下部電極2と上部電極6の間に±3Vの電
圧を印加した場合に、カンチレバーの先端部は図1の上
下方向に±5μm変位した。このように、実施例1と全
く同様の性能を持つカンチレバー状変位素子が作製でき
た。
【0073】また、実施例1と同様にして、上記のよう
にして作製したカンチレバー状変位素子の自由端部に情
報入出力用の探針7を設けカンチレバー型プローブを形
成し、これを用いてSTM並びにSTMを用いた情報処
理装置を作製したところ、実施例1と同様の良好な動作
を行った。
【0074】(実施例4)本実施例では、実施例1と同
様の素子において、圧電体薄膜5の第1の層3と第2の
層4における分極方向の反転を、層間にFなどのハロゲ
ンガスをドープした部分を設けることで行った場合につ
いて述べる。
【0075】実施例1とまったく同様にして、図1
(a)に示すように、Si(100)基板1上にPtの
下部電極2を形成した後、図1(b)に示すようにZn
Oを材料とし、実施例1と全く同様のイオンビーム蒸着
法を用いて圧電体薄膜5の第1の層3を形成した。成膜
条件も同様で、膜厚は同様に0.1μmとした。この
際、第1の層3の最も上部の0.05μmを形成すると
き、すなわち、この層を堆積した最後の部分のみ、吹き
つけていた酸素ガス中にFを50%混入し、この部分の
みFをドーピングし、薄膜の状態を変化させた。それに
続いて圧電体薄膜5の第2の層4を第1の層3を成膜し
たのと全く同じ成膜条件、膜厚で成膜した。
【0076】圧電体薄膜5を成膜したのち、上部電極6
を図1(c)に示すように、通常の高周波スパッタリン
グを用いてPtを0.1μm蒸着して形成した後、図1
(d)に示すように、通常のフォトリソグラフィーによ
り、圧電体薄膜5及び上部電極6の不要部分を除去した
後、水酸化カリウム水溶液を用いて基板の異方性エッチ
ングにより素子の片端部を除いて素子下部の基板を除去
して作製した。
【0077】本実施例で作製したカンチレバー状変位素
子の形状は、長さ500μm、幅50μmである。
【0078】このようにして作製した薄膜カンチレバー
状変位素子の下部電極2と上部電極6の間に±3Vの電
圧を印加した場合に、カンチレバーの先端部は図1の上
下方向に±5μm変位した。このように、実施例1と全
く同様の性能を持つカンチレバー状変位素子が作製でき
た。
【0079】また、実施例1と同様にして、上記のよう
にして作製したカンチレバー状変位素子の自由端部に情
報入出力用の探針7を設けカンチレバー型プローブを形
成し、これを用いてSTM並びにSTMを用いた情報処
理装置を作製したところ、実施例1と同様の良好な動作
を行った。
【0080】(実施例5)本実施例では、実施例1と同
様の素子において、圧電体薄膜5の材料として強誘電体
であるPbTiO3 を用い、第1の層3と第2の層4に
おける分極方向の反転を、第1の層堆積後に第1層の表
面をArプラズマで照射して改質し、その上に堆積する
第2の層の結晶状態を変えることで行った例について述
べる。
【0081】実施例1とまったく同様にして、図1
(a)に示すように、Si(100)基板1上にPtの
下部電極2を形成した後、図1(b)に示すようにPb
TiO3を材料とし、高周波スパッタリングを用いて圧
電体薄膜5の第1の層3を形成した。成膜条件はターゲ
ットとしてはPbTiO3 焼結体を用い、基板温度は6
00℃、スパッタリングガスとしてはArとO2 を1:
1で混合したものを用い、ガス圧は0.5Paとし、ス
パッタ時のプラズマパワーを200Wとした。
【0082】このようにして第1の層3を形成した後、
同一真空槽内で連続的にこの層の表面をArのプラズマ
で照射した。この時の条件は、ガス圧は0.5Pa、高
周波パワーを200Wとし、約2分間プラズマにさらに
した。このようにして第1の層3の表面を改質した後、
それに続いて圧電体薄膜5の第2の層4を、第1の層3
を成膜したのと全く同じ成膜条件、膜厚で成膜した。
【0083】圧電体薄膜5を成膜したのち、上部電極6
を図1(c)に示すように、通常の高周波スパッタリン
グを用いてPtを0.1μm蒸着して形成した後、図1
(d)に示すように、通常のフォトリソグラフィーによ
り、圧電体薄膜5及び上部電極6の不要部分を除去した
後、水酸化カリウム水溶液を用いて基板の異方性エッチ
ングにより素子の片端部を除いて素子下部の基板を除去
して作製した。
【0084】本実施例で作製したカンチレバー状変位素
子の形状は、長さ500μm、幅50μmである。
【0085】このようにして作製した薄膜カンチレバー
状変位素子の下部電極2と上部電極6の間に±3Vの電
圧を印加した場合に、カンチレバーの先端部は図1の上
下方向に±8μm変位した。
【0086】また、実施例1と同様にして、上記のよう
にして作製したカンチレバー状変位素子の自由端部に情
報入出力用の探針7を設けカンチレバー型プローブを形
成し、これを用いてSTM並びにSTMを用いた情報処
理装置を作製したところ、実施例1と同様の良好な動作
を行った。
【0087】(実施例6)本実施例では、実施例1と同
様の素子において、圧電体薄膜5の材料として強誘電体
であるPbTiO3 を用い、第1の層3と第2の層4に
おける分極方向の反転を、第1の層堆積後に第1の層の
表面をO2 プラズマで照射して改質し、その上に堆積す
る第2の層の結晶状態を変えることで行った例について
述べる。
【0088】実施例1とまったく同様にして、図1
(a)に示すように、Si(100)基板1上にPtの
下部電極2を形成した後、図1(b)に示すようにPb
TiO3を材料とし、イオンビーム蒸着を用いて圧電体
薄膜5の第1の層3を形成した。成膜には図3に示した
イオンビーム蒸着装置において、9のるつぼと加熱装置
を具備する蒸発源、11のイオン化のための電子放出
源、12の加速電極、13の加速のための電源からなる
イオンガン部分を2基設けたものを用いた。真空容器8
を5×10-5Pa以下の圧力まで排気し、2つの蒸着源
に薄膜の原料物質であるPbOとTiをそれぞれ充填し
いずれも加熱により蒸発させた。更にガス噴出口15か
らO2 ガスを12ml/min.で導入して基板面に吹
きつけながら成膜した。PbO、Tiともにイオン化電
流は100mA、加速電圧は0.5kVとした。基板温
度は500℃とした。膜厚は実施例1と同様とした。
【0089】このようにして第1の層3を形成した後、
同一真空槽内で連続的にこの層の表面をO2 とArの混
合ガスのプラズマで照射した。この時の条件は、O2
Arの比を2:1、ガス圧は0.5Pa、高周波パワー
を200Wとし、約2分間プラズマにさらにした。この
ようにして第1の層3の表面を改質した後、それに続い
て圧電体薄膜5の第2の層4を、第1の層3を成膜した
のと全く同じ成膜条件、膜厚で成膜した。
【0090】圧電体薄膜5を成膜したのち、上部電極6
を図1(c)に示すように、通常の高周波スパッタリン
グを用いてPtを0.1μm蒸着して形成した後、図1
(d)に示すように、通常のフォトリソグラフィーによ
り、圧電体薄膜5及び上部電極6の不要部分を除去した
後、水酸化カリウム水溶液を用いて基板の異方性エッチ
ングにより素子の片端部を除いて素子下部の基板を除去
して作製した。
【0091】本実施例で作製したカンチレバー状変位素
子の形状は、長さ500μm、幅50μmである。
【0092】このようにして作製した薄膜カンチレバー
状変位素子の下部電極2と上部電極6の間に±3Vの電
圧を印加した場合に、カンチレバーの先端部は図1の上
下方向に±8μm変位した。
【0093】また、実施例1と同様にして、上記のよう
にして作製したカンチレバー状変位素子の自由端部に情
報入出力用の探針7を設けカンチレバー型プローブを形
成し、これを用いてSTM並びにSTMを用いた情報処
理装置を作製したところ、実施例1と同様の良好な動作
を行った。
【0094】(実施例7)本実施例では、実施例1と同
様の素子において、圧電体薄膜5の材料として強誘電体
であるPbTiO3 を用い、第1の層3と第2の層4に
おける分極方向の反転を、薄膜堆積時の基板温度を変え
ることで行った例について述べる。
【0095】実施例1とまったく同様にして、図1
(a)に示すように、Si(100)基板1上にPtの
下部電極2を形成した後、図1(b)に示すようにPb
TiO3を材料とし、ゾル・ゲル法を用いて圧電体薄膜
5の第1の層3を以下の方法で形成した。
【0096】まず、薄膜の原料物質であるPbとTiの
それぞれのアルコキシド化合物を混合し、アルコール中
に溶解して適当な濃度に調整し、原料液を調製した。次
に、下部電極2を形成した基板1を400℃に加熱した
上に、上記原料液を滴下し、3000回転/分の速度で
回転し、スピンコーティングをした。この1回の工程
で、薄膜は0.1μm堆積されたので、この工程を3回
くり返して第1層3を0.3μmの厚さに形成した。こ
れに続いて基板の温度を300℃まで下げて、第1の層
3を形成したのと同様のスピンコーティングを行い、第
2の層4を形成した。ただし、この際1回のスピンコー
ティング工程で堆積される薄膜の厚さが0.075μm
となったので、スピンコーティング工程を4回くり返し
て第2の層4の厚さを0.3μmとなるように形成し
た。更に以上の工程が終了した後、電気炉を用いて酸素
雰囲気中で600℃、1時間の熱処理を行って、圧電体
薄膜5を形成した。
【0097】圧電体薄膜5を成膜したのち、上部電極6
を図1(c)に示すように、通常の高周波スパッタリン
グを用いてPtを0.1μm蒸着して形成した後、図1
(d)に示すように、通常のフォトリソグラフィーによ
り、圧電体薄膜5及び上部電極6の不要部分を除去した
後、水酸化カリウム水溶液を用いて基板の異方性エッチ
ングにより素子の片端部を除いて素子下部の基板を除去
して作製した。
【0098】本実施例で作製したカンチレバー状変位素
子の形状は、長さ500μm、幅50μmである。
【0099】このようにして作製した薄膜カンチレバー
状変位素子の下部電極2と上部電極6の間に±3Vの電
圧を印加した場合に、カンチレバーの先端部は図1の上
下方向に±8μm変位した。
【0100】また、実施例1と同様にして、上記のよう
にして作製したカンチレバー状変位素子の自由端部に情
報入出力用の探針7を設けカンチレバー型プローブを形
成し、これを用いてSTM並びにSTMを用いた情報処
理装置を作製したところ、実施例1と同様の良好な動作
を行った。
【0101】
【発明の効果】本発明によるカンチレバー状変位素子に
よれば、従来例の圧電体バイモルフからなるカンチレバ
ーにおける中間電極をなくすことができるため、圧電体
薄膜の層間の応力制御が簡易に行えるようになり、界面
における膜はがれの問題が解決されるとともに、圧電体
膜の膜中のクラックの発生を抑制することができるよう
になり、複数化、集積化可能なくり返し変位に対する耐
久性の高い薄膜カンチレバー(片持ちばり)状変位素
子、及びそれを用いたカンチレバー型プローブを、簡易
な作製工程で安定して提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のカンチレバー状変位素子、及びカンチ
レバー型プローブの製造工程図である。
【図2】本発明のカンチレバー型プローブの斜視構成図
である。
【図3】本発明に係る圧電体薄膜の成膜に使用したイオ
ンビーム蒸着装置の概略図である。
【図4】本発明のカンチレバー型プローブを用いたST
M装置のブロック図である。
【図5】実験−1において薄膜の評価を行うために作成
したユニモルフ型カンチレバー素子の断面図である。
【図6】実験−1における素子の変位量と、成膜時の加
速電圧、及びイオン化電流の関係を示すグラフである。
【図7】従来例の圧電体バイモルフからなるカンチレバ
ー型プローブを示す図である。
【図8】図7に示すカンチレバー型プローブの軸方向断
面図である。
【図9】従来例のPZT板を貼り合わせたシリーズ型バ
イモルフアクチュエータの断面図である。
【符号の説明】 1 基板 2,2a,2b 下部電極 3 第1の圧電体薄膜層 4 第2の圧電体薄膜層 5,5a,5b 圧電体薄膜 6,6a,6b 上部電極 7 情報入出力用の探針 8 真空容器 9 るつぼと加熱装置を具備する蒸発源 10 基板ホルダー 11 イオン化のための電子放出源 12 加速電極 13 加速のための電源 14 噴出した蒸気のイオンビーム 15 ガス噴出口 16 中間電極 17 引き出し電極 18a,18b PZT板 19a,19b PZT板の分極方向 20 STM観察を行った試料 21 カンチレバー型プローブ 22 X−Yステージ 23 駆動制御回路 24 トンネル電流検出回路 25 CPU 26 バイアス電圧印加回路

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 圧電体薄膜の上下面に、該圧電体薄膜を
    圧電効果により変位させるための電極を設けてなる薄膜
    カンチレバー状変位素子において、該圧電体薄膜が膜厚
    方向に分極軸の分極方向が異なって積層されている複数
    の層よりなる構成を持つことを特徴とするカンチレバー
    状変位素子。
  2. 【請求項2】 圧電体薄膜が、薄膜堆積時において自発
    分極の方向が異なるように堆積された層が複数層積層さ
    れたものよりなることを特徴とする請求項1記載のカン
    チレバー状変位素子。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2記載のカンチレバー状変
    位素子の上面自由端部に、情報入出力用探針を設けたこ
    とを特徴とするカンチレバー型プローブ。
  4. 【請求項4】 請求項3記載のカンチレバー型プローブ
    を有することを特徴とする走査型トンネル顕微鏡。
  5. 【請求項5】 トンネル電流を用いて記録媒体に情報の
    記録再生等を行う情報処理装置において、少なくとも請
    求項3に記載のカンチレバー型プローブを有することを
    特徴とする情報処理装置。
JP3276331A 1991-09-30 1991-09-30 カンチレバー状変位素子、カンチレバー型プローブ及びそれを用いた情報処理装置と走査型トンネル顕微鏡 Pending JPH0587514A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO1997035308A1 (fr) * 1996-03-15 1997-09-25 Hitachi, Ltd. Appareil d'enregistrement
JP2003230288A (ja) * 2002-01-31 2003-08-15 Matsushita Electric Works Ltd 電歪アクチュエータ

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WO1997035308A1 (fr) * 1996-03-15 1997-09-25 Hitachi, Ltd. Appareil d'enregistrement
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