JP3218406B2 - カンチレバー型変位素子、及びこれを用いたカンチレバー型プローブ、及びこのカンチレバー型プローブを用いた走査型トンネル顕微鏡、情報処理装置 - Google Patents

カンチレバー型変位素子、及びこれを用いたカンチレバー型プローブ、及びこのカンチレバー型プローブを用いた走査型トンネル顕微鏡、情報処理装置

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JP3218406B2
JP3218406B2 JP12933692A JP12933692A JP3218406B2 JP 3218406 B2 JP3218406 B2 JP 3218406B2 JP 12933692 A JP12933692 A JP 12933692A JP 12933692 A JP12933692 A JP 12933692A JP 3218406 B2 JP3218406 B2 JP 3218406B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、トンネル電流検出装置
や走査型トンネル顕微鏡等に用いられるカンチレバー
(片持ちばり)状変位素子、及びこれを用いたカンチレ
バー型プローブに関する。
【0002】さらには、上記カンチレバー型プローブを
備えた走査型トンネル顕微鏡、及び走査型トンネル顕微
鏡の手法により情報の記録、再生、消去等を行なう情報
処理装置に関する。
【0003】
【従来の技術】走査型トンネル顕微鏡(以下STMと略
す)は、先鋭な導電性プローブを試料表面に数nm以下
に接近させた時に、その間の障壁を通り抜けて電流が流
れるトンネル効果を利用したものである。[G.Bin
nig et al.,Helvetica Phys
ica Acta,55,726(1982)、米国特
許第4343993号]このSTMの原理を応用して、
高密度な情報処理(記録再生)を行なう装置が、特開昭
63−161552号公報、特開昭63−161553
号公報等に提案されている。これはSTMと同様のプロ
ーブを用いて、プローブと記録媒体間にかかる電圧を変
化させて記録を行なうものである。
【0004】従来、これらの記録再生装置に用いられた
プローブの形成手法としては、半導体製造プロセスの技
術を使い一つの基板上に微細な構造を作る加工技術
[K.E.Peterson“Silicon as
a Mechanichal Material”,P
roceeding of the IEEE,70
(5),420−457(1982)]が知られてい
た。このような手法により構成したSTMが、特開昭6
1−206148号公報に提案されている。
【0005】これは、単結晶シリコンを基板として、微
細加工によりXY方向に微動できる平行バネを形成し、
さらにその可動部にプローブを形成したカンチレバー部
を設け、カンチレバー部と底面部に電界を与えて静電力
により基板平面と直角な方向(Z方向とする)に変位す
るように構成されている。
【0006】また、カンチレバー部を圧電体バイモルフ
構造としたものも提案されている。図22はマイクロマ
シーニング技術により、Si基板上に圧電体バイモルフ
からなるカンチレバー型変位素子を形成した例である。
図22(b)は図22(a)の破線A−Aにおける断面
図である。図に示すように2層の圧電体3,5が左右に
分割された3層の電極2L,2R,4L,4R,6L,
6Rにはさまれたバイモルフ構造を形成したものであ
る。素子の変位は、前記圧電体3,5に各電極より所定
の電圧を印加し、圧電体に生ずるd31の圧電効果により
カンチレバー部を屈曲させることによって行なわれる。
【0007】圧電体3,5の材料としては、スパッタ蒸
着法で成膜されたZnOが多く用いられており、その他
AlN,PZT,PLZT,Ta25 ,LiNbO3
等も提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】図22のようなカンチ
レバー型変位素子を形成した場合、圧電体膜は結晶粒か
らなる柱状組織を持ち、特にスパッタ蒸着法を用いて形
成した場合には図22に示すように、上記柱状組織は結
晶粒界が基板面に対して垂直に並ぶ構造となることが多
く、また従来、各層の電極は図22に示すように端部が
膜厚方向で同一直線上に一致するような構成となってい
た。このため、電圧を加え圧電体3,5を伸長または収
縮させたとき、隣接する電界の加わらない部分とに発生
する歪みが厚み方向で累積し、全体が変形した場合の応
力集中も図22(c)の直線10の位置で起りやすい。
【0009】また各薄膜層を積層していった際、段差
(ステップ)が厚み方向で重なりその部分の機械的強度
が低下するとともに、柱状組織の結晶粒界に沿って粒界
破壊が起りやすく、図22(c)に示すように直線10
上に亀裂(クラック)11が発生しやすかった。
【0010】さらには、図22に示した装置の作製にお
いてはたくさんの層の電極及び圧電体の積層を行なうた
め各々の層の厚み及び応力を十分に制御しなければなら
ない。というのも、Si基板をエッチング除去して作製
するカンチレバーは各々の層の膜厚、応力に依存して電
極と圧電体の界面における膜はがれや、カンチレバー部
の反りが発生することがあったためである。特に圧電体
薄膜は窒化物、酸化物で構成されており、電極として主
に使用される金属との界面は、まったく異種の材料の接
合となり、そこで非常に大きな応力を発生し、特に薄膜
化した場合には、その界面で発生した応力はバルクのよ
うな厚いものの場合と異なり全体に対して無視できる値
ではなくなってしまう。さらにこのようなカンチレバー
はフォトリソグラフィー工程により作製されるため、作
製途中でフォトレジストが塗布され、そこから大きな応
力が加わり、圧電体膜と電極の間のはがれが発生するこ
ともあった。またさらにこのようなカンチレバーは、動
作として屈曲変位を行なうため、動作時にも上記界面に
大きな力が加わりはがれが発生することがあった。
【0011】このような応力は、特に薄膜形成の初期段
階で、それぞれの下地との結晶格子定数や熱膨張係数の
違いによるひずみにより発生し、またそれぞれが非常に
固い物質よりなるために界面付近に蓄積されて残留す
る。
【0012】更にこのような圧電変位素子においては、
電極間に非常に薄い圧電体膜を挟んで積層するため、圧
電体膜の膜質によってはリーク電流が発生したり、抵抗
率が低下するという問題が生じていた。
【0013】上述した、これらの理由により、多数の素
子を作製した場合、歩留りが低下するとともに、変位素
子を駆動した後の耐久性や素子寿命を低下させていた。
【0014】以上のような従来例の問題点に鑑み、本発
明の目的とするところは、上記亀裂や圧電体膜と電極と
の界面のはがれや、先端の反りがなく、繰り返し耐久性
が高い、集積化可能なカンチレバー状変位素子を歩留り
良く提供することにある。
【0015】また、本発明の目的は、上記カンチレバー
状変位素子を用いた信頼性の高いカンチレバー型プロー
ブ及びこれを用いた走査型トンネル顕微鏡、情報処理装
置を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段及び作用】上記目的は以下
の構成により達成される。
【0017】即ち、本発明は、圧電体膜と、該圧電体膜
を逆圧電効果により変位させるための電極とを基板上に
積層してなるカンチレバー型変位素子において、該電極
と該圧電体膜及び該基板との層間のうち、少なくとも1
つの層間に応力緩和層を設けたことを特徴とするカンチ
レバー型変位素子であり、また上記応力緩和層が有機物
質、好ましくは有機単分子累積膜よりなることを特徴と
するカンチレバー型変位素子である。
【0018】本発明のカンチレバー型変位素子によれ
ば、圧電体膜と電極との界面のはがれ、反りがなく、集
積化可能なカンチレバー型変位素子となる。
【0019】本発明のカンチレバー型変位素子の圧電体
膜と電極の間の界面において発生する応力をどのように
して緩和、低減しているかを説明する。応力は、特に薄
膜形成の初期段階で、それぞれの下地との結晶格子定数
や熱膨張係数の違いによるひずみにより発生し、またそ
れぞれが非常に固い物質よりなるために界面付近に蓄積
されて残留するが、本発明によれば、圧電体膜と電極の
間に有機単分子累積膜(LB膜)などの比較的柔らかい
材料よりなる応力緩和層を設けることで、形成初期に薄
膜に加わるひずみを緩和し、応力が蓄積されないように
するものである。
【0020】本発明のカンチレバー型変位素子の概略及
び作製方法の一例を図7を用いて説明する。
【0021】本発明のカンチレバー型変位素子は、図7
(a)に示すように基板1上にまず第一の応力緩和層7
1を形成した後、下部電極2を形成する。次に図7
(b)に示すように第二の応力緩和層72を形成した
後、第一の圧電体膜3を形成する。それに続いて同様に
して第三の応力緩和層73、中間電極4、第四の応力緩
和層74、第二の圧電体膜5、第五の応力緩和層75、
上部電極6の順に積層して堆積する。また、各層を堆積
する時、あるいは積層して堆積した後でパターニングを
行ない、所望のカンチレバーの形状に加工する。その後
に図7(d)に示したように素子の片端部を除いて素子
下部の基板を除去して作製される。
【0022】本発明のカンチレバー型変位素子の圧電体
膜と電極の間の応力緩和層は、使用する圧電体膜と電極
に用いる材料よりも柔らかな材料であれば良く、特に有
機物質が好ましく、形成方法としては膜厚の精密制御が
可能で、均一性の高い膜形成が可能な有機単分子累積膜
(LB膜)として形成されるのが好ましい。
【0023】また、前記圧電体膜の材料としては、Al
N,ZnO,Ta25 ,PbTiO3 ,Bi4 Ti3
12,BaTiO3 ,LiNbO3 など、圧電性を持つ
材料であれが特に材料に限定されることはない。また、
前記電極膜の材料としては貴金属が好ましく、Au,P
t,Pdなどが用いられる。また、圧電体膜の材料が比
較的低い基板温度で成膜できるAlNなどである場合は
Alなどの材料も用いられる。また適当な合金、あるい
はITOなどの酸化物導電体を用いることもできる。ま
た密着性を上げるため、電極材料によって異なるが主に
Cr,Tiなどの密着層を使用することもできる。
【0024】前記圧電体膜、電極膜の成膜に用いる方法
としては、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタリ
ング法、イオンビーム蒸着法、イオンビームスパッタ
法、CVD法などが用いられる。ただし、応力緩和層と
して有機物質を用いる場合は好ましくは前記圧電体膜を
低温で形成することが可能なイオンビーム蒸着法、特に
クラスター・イオンビーム蒸着法などを用いるなどし
て、該応力緩和層が損傷を受けないような低い基板温度
で膜形成を行なう必要がある。
【0025】本発明の目的は以下の構成を特徴とするカ
ンチレバー型変位素子によっても達 成することができ
る。即ち、圧電体膜と、該圧電体膜を逆圧電効果により
変位させるための電極とを積層してなるカンチレバー型
変位素子において、少なくとも一層の圧電体膜では結晶
粒よりなる柱状組織を、膜厚方向に対して傾斜させたこ
とを特徴とするカンチレバー型変位素子であり、また上
記同一層の圧電体膜内において、柱状組織の傾斜方向
を、膜厚方向で変化させたことを特徴とするカンチレバ
ー型変位素子である。
【0026】上記圧電体膜の材料としてはZnO,Al
N,Ta25 ,PbTiO3 ,Bi4 Ti312,L
iNbO3 ,TaNbO3 ,PZT,PLZTなどがあ
るが、これらを一般的にPVD(物理的気相成膜)法で
作製した場合、該圧電体膜は柱状の組織を持つことが多
い。
【0027】この柱状組織は、結晶粒子が基板面に対し
て垂直方向に細長く配列したものであり、特にスパッタ
蒸着法において顕著となる。
【0028】一般に結晶粒界は結晶の内部に比べ破壊強
度が低く、衝撃や応力により粒界破壊を生じやすい。柱
状組織においては、粒界の大部分が基板面に垂直に配向
しているため基板に垂直な方向の破壊強度が著しく低下
する。
【0029】この柱状組織の方向は、蒸着源あるいはス
パッタターゲットに対する基板の角度を変えることによ
り調節することができる。この柱状組織の基板面に対す
る角度の調節方法はスパッタ蒸着法において詳しく研究
されており、蒸着源であるターゲットに対して基板を平
行位置よりも傾けることにより実現できる。
【0030】薄膜を積層して構成されるような極めて薄
い構造体においては、膜面に垂直な方向が強度的に最も
弱く、上記のように膜厚方向と結晶粒界の方向を一致さ
せないことにより機械的強度を高めることができ、耐久
性を向上させることができる。
【0031】図1は、上記のカンチレバー型変位素子の
特徴を最も良く表わす構成図であり、図1(b)は図1
(a)中のA−A面における断面図である。
【0032】本図において、1はシリコン単結晶基板上
に形成された絶縁層、2L,2Rは左右に分割された下
部電極、3は下部の圧電体膜であり、傾斜した柱状組織
8からなる結晶構造を有している。4L,4Rは左右に
分割された中間電極、5は上部の圧電体膜であり傾斜し
た柱状組織の結晶構造を有している。6L,6Rは左右
に分割された上部電極であり、その間に引きし電極7を
設けてある。
【0033】上記の構造体は片側を基板に固定された片
持ち梁構造をなし、電圧印加により変位可能なカンチレ
バー部9を形成している。
【0034】以下上記カンチレバー型変位素子の駆動方
法について説明する。図1のZ軸方向への変位は、圧電
体3に対して圧電体5を相対的に伸長あるいは収縮させ
ることにより発生させることができる。これは例えば中
間電極4L,4Rを接地し下部電極2L,2R,上部電
極6L,6Rにプラスの電圧を印加した場合、圧電体5
はd31で規定される圧電効果によりXY方向で伸長し、
圧電体3は収縮する。この上下層での伸長と収縮により
カンチレバー部9はZ軸方向で屈曲変位する。
【0035】Y方向への変位は、中間電極4Lを接地
し、下電極2Lにマイナス、上電極6Lにプラスの電圧
を印加し、圧電体3,5の左側の部分を伸長させ、右側
の下電極2R、上電極6Rに左側とは逆方向の電圧を印
加することにより圧電体3,5の右半分を収縮させるこ
とによりカンチレバー部9はY方向へ屈曲変位する。
【0036】X方向への変位は、圧電体3の左右両方と
圧電体5の左右両方を同時に伸長させることによって発
生させることができる。
【0037】圧電体3,5の柱状組織8の傾斜様式は、
図1(b)だけではなく、図2のように圧電体3と圧電
体5において傾きの方向を逆にすることもできる。
【0038】更に図3に示すように圧電体3の中に2つ
以上の異なる傾斜方向を有する柱状組織を形成すること
も可能である。
【0039】また、上記柱状組織の傾斜はZnO,Al
N,Ta25 ,PZT,PLZT等多くの圧電体膜に
おいて可能であり、特に材料が限定されることはない。
また成膜方法は、一般にPVD法と呼ばれるスパッタリ
ング蒸着、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、イオンビー
ム蒸着等において条件を適切に選べば実現することがで
き、方法が限定されるものではない。その他、基板の材
質や電極の構成材料等も特に限定されない。
【0040】また本発明の目的は以下の構成を特徴とす
るカンチレバー型変位素子によっても達成することがで
きる。即ち、圧電体膜と、該圧電体膜を逆圧電効果によ
り変位させるための電極とを積層してなるカンチレバー
型変位素子において、各層の電極端部が、膜厚方向で同
一直線上に重ならない構成とし、好ましくは各層の電極
の大きさを、最下層のものを最大とし、上層のものほど
小さくしたことを特徴とするカンチレバー型変位素子で
あり、また、少なくとも3層以上の電極が厚さ方向に積
層され、かつ各層の電極が同一層内で少なくとも2つ以
上の構成部に分割されていることを特徴とする上記カン
チレバー型変位素子である。
【0041】上記構成によれば電極と圧電体膜とが交互
に積層されたカンチレバー型変位素子において、例えば
最下層の電極を最も大きくし、中層、上層と順に電極を
小さくすることにより、各層の積層の際に生ずる段差の
厚み方向での累積を無くし、その部分での機械的強度の
低下を少なくできる。
【0042】また電極端部が厚さ方向で同一直線上にな
いため、カンチレバー部を変位させた時に生じる応力
が、同一直線上に集中することがなくなるため、最大変
位量を大きくすることができ、素子寿命も延びる。
【0043】図4は上記のカンチレバー型変位素子の特
徴を最も良く表す構成図であり、図4(b)は図4
(a)のA−A面における断面図である。
【0044】本図において1は基板上に成膜された絶縁
膜である。2L,2Rは左右に分割された下部電極、3
は下部の圧電体薄膜、4L,4Rは左右に分割された中
間電極であり、下部電極2L,2Rよりも小さく、端部
が厚さ方向で重ならないように配置される。5は上部の
圧電体膜である。6L,6Rは左右に分割された上部電
極であり、中間電極4L,4Rよりも小さく、端部が厚
さ方向で中間電極4L,4R、下部電極2L,2Rのい
ずれとも重ならない位置に配置される。7は引き出し電
極である。
【0045】上記の構造体は片側を基板に固定された片
持ち梁構造をなし、電圧印加により変位可能なカンチレ
バー部9を形成する。上記カンチレバー型変位素子の駆
動方法は、図1乃至図3のカンチレバー型変位素子のそ
れと同じである。
【0046】上記構成において用いられる圧電体膜の材
料としては、ZnO,AlN,Ta25 ,PZT,P
LZT,PVDFなどがあり、特に材料が限定されるこ
とはない。
【0047】また電極として、Au,Al,Pt,A
g,Cuなど単体の金属、Au/Cr,Pt/Tiなど
の複層の電極合金、導電性化合物等、可能であり、材料
は限定されない。
【0048】さらに薄膜圧電体、薄膜電極の作製方法は
スパッタ蒸着、抵抗加熱真空蒸着の他、電子ビーム蒸
着、イオンビーム蒸着、イオンビームスパッタ法、CV
D法等で作製でき、方法は限定されるものではない。
【0049】また本発明の目的は以下の構成を特徴とす
るカンチレバー型変位素子によっても達成することがで
きる。即ち、圧電体膜と、該圧電体膜を逆圧電効果によ
り変位させるための電極とを積層してなるカンチレバー
型変位素子において、該圧電体膜と該電極との界面に密
着性の高い部分と密着性の低い部分とを設けたことを特
徴とするカンチレバー型変位素子である。
【0050】上記のカンチレバー型変位素子によれば、
圧電体膜と電極との界面でのはがれの発生による破壊が
少なく、繰り返し動作に対する耐久性が高い、集積化可
能なカンチレバー型変位素子となる。
【0051】上記のカンチレバー型変位素子の圧電体膜
と電極の間の界面において、どのようにしてはがれが防
止できるかについて以下に述べる。従来のほぼ均一な密
着性の分布を持つ圧電体膜と電極の間の界面に応力等に
よるはがれの力が加わった場合、このような界面におい
てはどこか一か所ではがれが発生すると、そのはがれが
連続的に広がり、結果として広い面積に広がってしま
う。これに対して、上記のカンチレバー型変位素子の圧
電体膜と電極の間の界面に同様のはがれの力が加わった
場合、このような界面においては密着性の弱い部分がわ
ずかに変形しブリッジ状となりその力を吸収するためは
がれに至りにくい。また、一部にはがれが生じるような
大きな力が加わった場合でも、密着している部分が分割
されているため連続的に広い面積がはがれて、素子が破
壊されるようなことにはならない。
【0052】上記のカンチレバー型変位素子の概略及び
作製方法の一例を、図5を用いて説明する。
【0053】上記のカンチレバー型変位素子は、図5
(a)〜(e)に示すように基板1上に下部電極2、第
1の圧電体膜3、圧電体膜3との間に密着性の異なる界
面51aと51bとを持つ中間電極4、第2の圧電体膜
5、圧電体膜5との間に密着性の異なる界面52aと5
2bとを持つ上部電極6の順で堆積、パターニングさ
れ、更に素子の片端部を除いて素子下部の基板を除去し
て作製される。
【0054】次に、密着性の異なる界面51aと52b
の作製方法の例について概略を図6(a)〜(c)に作
製工程順に示す。まず、図6(a)に示したように圧電
体膜3上に、圧電体膜との密着性の低い電極材料の薄膜
51aを形成し、それを図6(b)に示したように所望
の形にパターニングする。その後、図6(c)に示すよ
うに圧電体膜との密着性の高い電極材料の薄膜51bを
形成し、電極4とする。52a、52bに関しても同様
である。ただし、これらの界面の作製方法に関しては、
必ずしもこの方法に限ったものではなく、おおむね以下
のように形成されるのが好ましい。 (1)圧電体膜上の一部に、密着性の低い電極膜を形成
後に、密着性の高い電極膜を所望の全面に重ねて堆積す
る。 (2)圧電体膜上の一部に、密着性の高い電極膜を形成
後に、密着性の低い電極膜を所望の全面に重ねて堆積す
る。 (3)圧電体膜上の一部に、密着層を形成後に、電極膜
を所望の全面に重ねて堆積する。 (4)圧電体膜上の一部に、表面処理を施した後に、電
極膜を所望の全面に重ねて堆積する。
【0055】また前記の電極膜の密着性の高低は、電極
膜の材料や、密着性を増やすための密着層の有無、成膜
に用いる方法、成膜条件などで制御できる。また前記表
面処理としては、Ar等のイオンビーム照射、プラズマ
処理、有機物質等のコーティングなどである。
【0056】前記圧電体膜の材料としては、AlN,Z
nO,Ta25 ,PbTiO3 ,Bi4 Ti312
BaTiO3 ,LiNbO3 など、圧電性を持つ材料で
あれば特に材料に限定されることはない。また、前記電
極膜の材料としては貴金属が好ましく、Au,Pt,P
dなどが用いられる。また、圧電体膜の材料が比較的低
い基板温度で成膜できるAlNなどである場合はAlな
どの材料も用いられる。また適当な合金、あるいはIT
Oなどの酸化物導電体を用いることもできる。また前記
の密着層としては電極材料によって異なるが、主にC
r,Tiなどが用いられる。
【0057】前記圧電体膜、電極膜の成膜に用いる方法
としては、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタリ
ング法、イオンビーム蒸着法、イオンビームスパッタ
法、CVD法などが用いられる。このなかで、抵抗加熱
蒸着、電子ビーム蒸着等で成膜した場合は比較的密着性
の低い膜となり、スパッタリング法、イオンビーム蒸着
法、イオンビームスパッタ法等を用いると比較的密着性
の高い膜を得ることができる。ただしこれは成膜条件で
大きく変化するので、必ずしもこのとおりでない場合も
ある。
【0058】また本発明の目的は以下の構成を特徴とす
るカンチレバー型変位素子によっても達成することがで
きる。即ち、圧電体膜と、該圧電体膜を逆圧電効果によ
り変位させるための電極とを積層してなるカンチレバー
型変位素子において、該電極の少なくとも一部に加熱に
より引張り応力を発生する金属を用いたことを特徴とす
るカンチレバー型変位素子であり、好ましくは上記の加
熱により引張り応力を発生する金属電極がスネークパタ
ーン状の構成をなすことを特徴とする上記カンチレバー
型変位素子であり、また上記スネークパターン状の電極
の片側の折返し位置に、個別に接続する電極を設けたこ
とを特徴とする上記カンチレバー型変位素子である。
【0059】上記のカンチレバー型変位素子によれば電
極の少なくとも一部に加熱により引張り応力を発生する
性質を有する金属で形成し、好ましくはその形状をスネ
ークパターン状とし、このスネークパターン状電極に電
流を流した時の自己発熱により電極を構成する金属薄膜
が引張り応力を発生し、カンチレバーの反り量を補正す
ることが可能となる。
【0060】また反り量の補正が終了した後、スネーク
パターン状電極の片側の折り返し位置に並列に駆動電極
を加えることにより低抵抗で駆動することができる。
【0061】図8は、上記のカンチレバー型変位素子の
特徴を最も良く表わす構成図であり、図8(b)は図8
(a)中のA−A面における断面図である。本図にお
て、1はSi単結晶基板、81はSi34 よりなる弾
性体、82は金属薄膜からなる平板電極、3はZnOよ
りなる圧電体膜である。83は本カンチレバー型変位素
の主たる構成である金属薄膜であり、本図に示すよう
にスネークパターン状に形成されている。このスネーク
パターン状の電極83の基板側の折り返し位置に電極8
4a,84b,85a,85b,85c,85dが接続
されている。
【0062】弾性体81、平板電極82、圧電体3、ス
ネークパターン状電極83は片方が基板1に固定された
片持ち梁構造をなし上下方向へ変形可能なカンチレバー
部9を形成する。
【0063】このような構成で平板電極82と、スネー
クパターン状の電極83に電圧を印加すると圧電体3は
電界の方向に応じて伸長あるいは短縮し、カンチレバー
部9は下方あるいは上方へ屈曲変位する。
【0064】次に図9を用いてカンチレバー部の反り補
正方法について説明する。上記構成によるカンチレバー
型変位素子を作製した後、カンチレバー部9に下向きの
反りが存在する場合、スネークパターン状電極83の両
端に接続された電極84a,84bに電源91とスイッ
チ92より直流電流あるいはパルス状の電流を流す。こ
の時スイッチ93が全て開いていると電流はスネークパ
ターン状電極83の中を流れ、投入された電力に応じて
発熱する。
【0065】電極83として加熱により引張り応力を発
生する材料を用いた場合、発熱量に応じて引張り応力が
生じカンチレバー部9を上方へ反らせる力となる。カン
チレバー部9の反りの状態を観測しながら電流を適切に
調節することでカンチレバー部9の反りを補正すること
が可能となる。
【0066】カンチレバー部9の反りの補正が完了した
後はスイッチ92を開き、スイッチ93を全て閉じ電極
85a,85b,85c,85dよりスネークパターン
状電極83と平板電極82に圧電体駆動用電源94よ
り、駆動電圧を印加する。これにより圧電体3に電界が
加わりカンチレバー部9は屈曲変位する。図9より明ら
かなように電極85a,85b,85c,85dを通し
て接続した場合反り補正の場合とは異なる経路で電流が
流れ、電極83の電気抵抗が低くなり効率よく圧電体を
変位させることが可能となる。
【0067】図9では電極84a,84bを別に設けて
あるがこれは電極85a,85dと共通とすることがで
きる。
【0068】以下、上記構成のカンチレバー型変位素子
に用いられる加熱により引張り応力を発生する電極膜の
形成方法と特性について説明する。通常真空蒸着法によ
り金属薄膜を室温付近に保たれた基板上に成膜すると形
成された金属膜には多数の空孔やボイドが存在しその金
属種の理論上の密度よりも小さな値をとることが多い。
このような膜は、後の加熱により結晶化が進み、空孔や
ボイドが消滅することにより体積の収縮が起こり基板面
に対して引張り応力を発生する。
【0069】またスパッタリング法によって形成された
金属膜は、一般的なスパッタガスであるArが膜中に混
入しやすく、また高エネルギー粒子の膜内への突入によ
るpeening効果等により、初期は基板面に対して
圧縮応力を持ち易い。この様な膜を加熱していくと圧縮
応力は緩和されていき、やがて引張り応力を発生する。
【0070】このような金属薄膜の性質を利用すること
によりカンチレバー等の反りの発生し易い構造体の反り
を加熱により補正することができる。
【0071】上記の様な性質を有する金属薄膜の加熱に
よる膜応力の変化を図10を用いて説明する。
【0072】図10(a)は真空蒸着法で形成したAu
/Cr膜でありCrの膜厚は10Å、Auの膜厚は10
00Åである。図から分かるように成膜時にほとんど応
力を有さない膜が200℃程度の加熱により400×1
6 Pa程度の引張り応力を発生する。
【0073】図10(b)はスパッタリング法により作
製したPt膜であり膜厚は1000Åである。初期に4
00×106 Pa程度の大きな圧縮応力を示す膜が加熱
により大きな引張り応力に変わることが分かる。
【0074】上記構成において用いられる圧電体膜の材
料としてはAlN,ZnO,Ta25 ,PZT,Bi4
Ti312,LiNbO3 などがあり、特に材料が限
定されることはない。
【0075】これらの作製方法としては、スパッタ蒸着
法が多く用いられているがイオンビーム蒸着、イオンビ
ームスパッタ蒸着、電子ビーム蒸着、CVD等、特に方
法が限定されるものではない。
【0076】スネークパターン電極の構成材料として
は、Au,Ptの他の材料でも加熱により引張り応力を
発生する性質があれば他の物質でもかまわず特に限定さ
れるものではない。
【0077】その他の電極は素子作製上支障がなければ
特に限定されず導電性の物質であれば良い。
【0078】薄膜電極の作製方法としては真空蒸着、ス
パッタ蒸着が多く用いられるが、他の方法においても可
能であり方法は限定されるものではない。
【0079】また本発明は、先述した本発明のカンチレ
バー型変位素子の自由端部に、情報入出力用探針を設け
たことを特徴とするカンチレバー型プローブである。
【0080】また本発明は、上記本発明のカンチレバー
型プローブを、同一基板上に複数配置したことを特徴と
する集積化カンチレバー型プローブである。
【0081】また本発明は、上記本発明のカンチレバー
型プローブ又は集積化カンチレバー型プローブを用いた
ことを特徴とする走査型トンネル顕微鏡である。
【0082】また本発明は、トンネル電流を用いて記録
媒体に対して情報の記録、再生、消去を行なう情報処理
装置において、上記本発明のカンチレバー型プローブ
は集積化カンチレバー型プローブを用いたことを特徴と
する情報処理装置である。
【0083】
【実施例】次に実施例を用いて本発明を具体的に説明す
る。尚、実施例7,8,9以外の実施例は参考例であ
る。
【0084】実施例1 本実施例は、図1乃至図3に示したようなカンチレバー
型変位素子に関連するものである。本実施例のカンチレ
バー型変位素子の作製方法を図11を用いて説明する。
【0085】まずSi単結晶基板1の上に絶縁層111
としてSi34 を減圧CVD法により1000Å形成
した(図11(a)参照)。
【0086】次にこの上に真空蒸着法によりAu/Cr
膜を1000Å成膜しフォトリソグラフによりパターニ
ングし、下部電極2を形成した(図11(b)参照)。
【0087】この後、スパッタ蒸着法により圧電体3a
としてZnOを2000Å成膜し、この時スパッタター
ゲット表面に対して基板1を平行よりも傾けて斜め蒸着
を行ない、圧電体3aの柱状組織8aのように結晶成長
させた(図11(c)参照)。
【0088】次に基板1の傾ける方向を反転させ柱状組
織8bを前記柱状組織8aとは逆向きに傾斜して成長さ
せた(図11(d)参照)。
【0089】この圧電体3bの上に真空蒸着法によりA
uを1000Å成膜し、フォトリソグラフによりパター
ニングを行ない中間電極4を形成する(図11(e)参
照)。
【0090】この上に先の下部圧電体3a,3bと同様
にZnOをスパッタ蒸着法により形成し、上部圧電体5
a,5bを形成する。この後更に真空蒸着法によりAu
を1000Å成膜し、上部電極6を形成する(図11
(f)参照)。
【0091】次にSi単結晶の結晶方位によりエッチン
グ速度が大きく異なる性質を利用した異方性エッチング
により、基板1の裏面より絶縁層111の位置までSi
を除去し、次に反応性イオンエッチングにより絶縁層1
11を除去しカンチレバー部9を形成した(図11
(g)参照)。
【0092】ここで、フォトリソグラフに用いたエッチ
ング液は、Auに対してはKI:I水溶液、Crに対し
ては(NH42 Ce(NO36 ;HClO4 水溶
液、ZnOに対してはCH3 COOH水溶液を用いた。
Siの異方性エッチングにはKOH水溶液を用い、Si
34 除去にはCF4 ガスを用いた。
【0093】以下に、本実施例で作製したカンチレバー
型変位素子の主要部の寸法並びに駆動特性の一例を示
す。 ・カンチレバー部9の長さ 500μm、幅50μm ・圧電体3,5への印加電圧 ±4V ・駆動周波数 1KHz ・カンチレバー9の先端部の振幅(Z方向) ±5μm ・107 サイクル駆動後のクラック発生率 1/100 また、柱状組織8a,8bを従来の方法で形成した素子
の上記107 サイクル駆動後のクラック発生率は15/
100であった。
【0094】以上のように、本実施例のカンチレバー型
変位素子ではクラックの発生率を非常に小さくすること
が可能となった。
【0095】次に上述のように作製したカンチレバー型
変位素子のカンチレバー部9に引出し電極と接するよう
に導電性の探針を設けてカンチレバー型プローブを作製
した。図12にこのカンチレバー型プローブを示す。図
12(b)は図12(a)の破線A−Aにおける断面図
である。
【0096】この探針121は上部電極6L,6R,引
出し電極7を形成の後フォトレジストを厚く(5μm)
塗布し、探針121を形成する位置のレジストを除去
し、斜め方向よりの蒸着と基板回転を組み合わせたリフ
トオフ法により形成する。この方法はアスペクト比の高
い微小構造物を形成する方法として知られている。
【0097】また、探針の形成方法は、上記方法に限定
されるものではなく、例えば、Pt,Rh,Wなどの金
属片を接着もしくは金属膜を堆積、加工して針状に形成
してもよい。
【0098】このように、導電性の探針121を先端部
に設けることにより、走査型トンネル顕微鏡のプローブ
として用いることができる。
【0099】次に上記カンチレバー型プローブを同一の
シリコン基板の上に複数個作製し、集積化カンチレバー
型プローブを作製した。図13にこの模式図を示す。
【0100】かかる集積化カンチレバー型プローブ13
0は、先に説明した作製方法においてフォトリソグラフ
のパターンを拡張するだけで同時に作製することがで
き、組立て作業は必要ない。このように同一の基板上へ
複数のカンチレバーを一括して形成しているため、寸法
精度が非常に高く、各カンチレバー間のばらつきも非常
に小さく抑えることができる。
【0101】また基板としてSi単結晶を用いることに
より、トランジスタやダイオード等の半導体素子も同一
基板上へ集積化することも可能となり、トンネル電流の
増幅やカンチレバー駆動用のアンプを一体化することが
できる。
【0102】以下に本実施例で作製した集積化カンチレ
バー型プローブの寸法の一例を示す。
【0103】 集積化カンチレバー型プローブ130の外径 40×40×1mm カンチレバーの本数 90本 各カンチレバーの長さ 500μm 各カンチレバーの幅 50μm 探針121の高さ 3μm 次に上記集積化カンチレバー型プローブを用いてSTM
装置を作製した例について述べる。図14にこの装置の
ブロック図を示す。本装置では集積化カンチレバー型プ
ローブ130にて試料141に探針121を近づけたの
ち(図のZ方向)、試料141面内のx方向、y方向を
x−yステージ142にて走査し、探針121と試料1
41にバイアス電圧印加回路143より電圧を加え、そ
のとき観察されるトンネル電流をトンネル電流検出回路
144で読み出し、像観察を行なう。試料141と探針
121の間隔制御とx−yステージ142の駆動制御は
駆動制御回路145にて行なう。これら回路のシーケン
ス制御はCPU146にて行なう。
【0104】具体的には、探針121を試料141の表
面へ接近させたとき、この表面が導電性を持つ場合、探
針121と試料141との距離が数nm程度まで近づく
と探針121と試料141との間にトンネル電流が流れ
る。このトンネル電流は、探針121の先端と試料12
1との距離により指数関数的に変化するため、このトン
ネル電流をトンネル電流検出回路144で取出して増幅
を行ないカンチレバー部の駆動電圧にフィードバックを
かけることにより、探針121の先端と試料141の表
面までの距離を一定に保つことができる。この様な状態
でカンチレバー部をx,y方向に微小に変位させること
により、フィードバック電圧の変化により極微小表面の
凹凸を観察することが可能である。
【0105】また、図には示していないが、x−yステ
ージ142による走査の機構としては、円筒型ピエゾア
クチュエータ、平行バネ、作動マイクロメータ、ボイス
コイル、インチウォームなどの制御機構を用いて行な
う。
【0106】この装置にて、試料141にHOPG(グ
ラファイト)板を用いて表面観察を行なった。バイアス
電圧印加回路143にて200mVの直流電圧を探針1
21と試料141の間に加えた。この状態で試料141
に沿って探針121を走査してトンネル電流検出回路1
44を用いて検出される信号より表面観察を行なった。
スキャンエリアを0.05μm×0.05μmとして観
察したところ、良好な原子像を得ることができた。この
ようにSTMの原理による動作が確認され表面観察動作
が確認された。
【0107】また、図15に先の集積化カンチレバー型
プローブを用いた、情報の記録・再生等を行なえる情報
処理装置の模式図を示す。
【0108】同図において、150は電圧印加により抵
抗値が変化する記録層、151は金属電極層、152は
記録媒体基板である。142はXYステージ、130は
本実施例で作製した集積化カンチレバー型プローブ、1
53は集積化カンチレバー型プローブ130の支持体、
154は集積化カンチレバー型プローブ130をZ方向
へ粗動するためのリニアアクチュエータ、155,15
6はXYステージ142をそれぞれX,Y方向へ駆動す
るリニアアクチュエータ、157は記録再生用のバイア
ス回路である。144はトンネル電流検出回路、158
は集積化カンチレバー型プローブ130をZ方向に移動
させるためのサーボ回路であり、159はアクチュエー
タ154を駆動するためのサーボ回路である。160は
個々のカンチレバーを微小変位させるための駆動回路で
あり、161はXYステージ142の位置制御を行なう
駆動回路である。146はこれらの操作を制御するCP
Uである。
【0109】このようなシステムを用い上述のSTMと
同様の動作を行なうことにより、nmオーダーの記録密
度の大容量・高密度な記録、再生、消去を行なうことが
可能となり、またプローブを多数集積化し、それらを同
時に走査するため、高速度の記録再生を行なうことがで
きた。
【0110】実施例2 本実施例は、図4に示したようなカンチレバー型変位素
子に関連するものである。
【0111】本実施例のカンチレバー型変位素子の作製
方法を図16を用いて説明する。
【0112】まずSi単結晶基板1の上に絶縁層111
としてSi34 を減圧CVD法により1000Å形成
した(図16(a)参照)。
【0113】次にこの上に真空蒸着法によりAu/Cr
膜を1000Å成膜しフォトリソグラフによりパターニ
ングを行ない下部電極2を形成した(図16(b)参
照)。
【0114】この次にスパッタ蒸着法により圧電体3と
してZnO膜を4000Å成膜する(図16(c)参
照)。
【0115】更に圧電体3の上に真空蒸着法によりAu
膜を1000Å形成しフォトリソグラフによりパターニ
ングを行ない中間電極4を形成する(図16(d)参
照)。
【0116】次にスパッタ蒸着法によりZnO膜を40
00Å形成し圧電体5を形成し、この上にAu膜を10
00Å蒸着しパターニングを行ない上部電極6を形成す
る。
【0117】この後ZnO膜のフォトリソグラフを行な
い圧電体3,5の不要部を除去する(図16(e)参
照)。
【0118】次に基板1であるSi単結晶の異方性エッ
チングを行ない裏面より絶縁層111の位置までSiを
除去する。更に裏面より反応性イオンエッチングを行な
い絶縁層111であるSi34 を除去しカンチレバー
部9を形成する(図16(f)参照)。
【0119】以上の工程により本実施例のカンチレバー
型変位素子を作製することができる。
【0120】上記の製造工程において、フォトリソグラ
フに用いたエッチング液は、Auに対してはKI:I水
溶液、Crに対しては(NH42 Ce(NO36
HClO4 水溶液、ZnOに対してはCH3 COOH水
溶液を用いた。またSiの異方性エッチングにはKOH
水溶液を用いた。
【0121】以下に、本実施例で作製したカンチレバー
型変位素子の主要部の寸法並びに駆動特性の一例を示
す。 ・カンチレバー部9の長さ 500μm、幅50μm ・圧電体3,5への印加電圧 ±4V ・駆動周波数 1KHz ・カンチレバー9の先端部の振幅(Z方向) ±5μm ・107 サイクル駆動後のクラック発生率 2/100 また各層の電極2,4,6を従来のように形成し、各層
の電極端部が膜厚方向でほぼ一直線上に重なる構成とし
た素子の上記107 サイクル駆動後のクラック発生率は
15/100であった。
【0122】以上のように、本実施例のカンチレバー型
変位素子では、クラックの発生率を非常に小さくするこ
とが可能となった。
【0123】次に上述のようにして作製したカンチレバ
ー型変位素子のカンチレバー部9に引出し電極7と接す
るように導電性の探針121を設けてカンチレバー型プ
ローブを作製した。図17にこのカンチレバー型プロー
ブを示す。図17(b)は図17(a)の破線A−Aに
おける断面図である。この探針121の形成方法は実施
例1と同様である。
【0124】次に上記カンチレバー型プローブを実施例
1と同様に同一のシリコン基板上に複数個作製し、集積
化カンチレバー型プローブを作製した。
【0125】以下に本実施例で作製した集積化カンチレ
バー型プローブの寸法の一例を示す。
【0126】 集積化カンチレバー型プローブの外径 40×40×1mm カンチレバーの本数 90本 各カンチレバーの長さ 500μm 各カンチレバーの幅 50μm 探針121の高さ 3μm 次に、実施例1と同様に図14に示すような上記集積化
カンチレバー型プローブを用いたSTM装置で、試料1
41にHOPG(グラファイト)板を用いて表面観察を
行なったところ、実施例1と同様に良好な原子像を得る
ことができた。
【0127】また、実施例1と同様に図15に示すよう
な、本実施例で作製した集積化カンチレバー型プローブ
を用いた情報処理装置においても、実施例1と同様の効
果が得られた。
【0128】実施例3 本実施例は、図5に示したようなカンチレバー型変位素
子に関連するものである。
【0129】本実施例のカンチレバー型変位素子の概略
図とその作製方法を図5を用いて説明する。
【0130】まず、図5(a)に示したように、基板1
上に下部電極2を形成した。基板としては、Si単結晶
上に後述する異方性エッチングのマスク層として、Si
34 を0.2μm堆積したものを用いた。また、下部
電極2はイオンビームスパッタ法でAuを0.1μm堆
積して形成した。続いて図5(b)に示したように、下
部電極2上に第一の圧電体膜3を形成した。圧電材料と
してはZnOを用い、高周波マグネトロンスパッタ法を
用いて成膜を行なった。成膜条件はターゲットにZnO
燒結体を用い、ArとO2 を1:1.5の比で混合した
ガスの雰囲気中で、基板温度200℃、成膜速度0.3
nm/secとしてスパッタリングを行ない、0.2μ
m堆積した。
【0131】次に、図5(c)に示したように、圧電体
膜3との間に2種類の密着性の異なる界面51a,51
bを持つ中間電極4を形成した。この形成方法について
は、図6(a)〜(c)に詳細に示す。まず図6
(a)、(b)に示したように、第一の圧電体膜3上
に、通常の抵抗加熱蒸着でAuを0.02μm堆積した
後ストライプ状にパターニングして、密着性の低い部分
となる51aを形成した。さらにその上に中間電極4
を、イオンビームスパッタ法を用いてAuを0.1μm
堆積して形成した。図6(c)に示したように、ここで
抵抗加熱蒸着で堆積したAuを除去した部分が密着性の
高い部分51bとなる。
【0132】さらに図5(d)に示したように、第二の
圧電体膜5を、第一の圧電体膜3を形成したのとまった
く同様にして形成し、さらに圧電体膜5との間に2種類
の密着性の異なる界面52a,52bを持つ上部電極6
を、密着性の異なる界面51a,51bを持つ中間電極
4を形成したのとまったく同様にして形成した。
【0133】さらにその後、通常のフォトリソグラフィ
ーにより、不要部分を除去した後、水酸化カリウム水溶
液を用いて基板の異方性エッチングにより素子の片端部
を除いて素子下部の基板を除去して、図5(e)に示し
たようにカンチレバー素子を作製した。
【0134】本実施例で作製したカンチレバー型変位素
子の形状は、長さ500μm、幅50μmである。
【0135】このようにして作製したカンチレバー型変
位素子の下部電極2と中間電極4の間、あるいは中間電
極4と上部電極6の間に±3Vの電圧を印加した場合
に、カンチレバーの先端部は図5の上下方向に±3μm
変位した。
【0136】カンチレバー形成後の、素子に用いた膜中
のクラック、膜はがれはまったく観察されなかったとと
もに、素子を駆動した場合にも発生せず、それによる動
作不良も一切観察されなかった。
【0137】次に図18に示すように上記カンチレバー
型変位素子の自由端部に導電性の探針121を設けてカ
ンチレバー型プローブを作製した。この探針121の形
成方法は実施例1と同様である。
【0138】次に上記カンチレバー型プローブを実施例
1と同様に同一のシリコン基板上に複数作製し、集積化
カンチレバー型プローブを作製した。
【0139】次に、実施例1と同様に図14に示すよう
な上記集積化カンチレバー型プローブを用いたSTM装
置で、試料141にHOPG(グラファイト)板を用い
て表面観察を行なったところ、実施例1と同様に良好な
原子像を得ることができた。
【0140】また、実施例1と同様に図15に示すよう
な、本実施例で作製した集積化カンチレバー型プローブ
を用いた情報処理装置においても、実施例1と同様の効
果が得られた。
【0141】実施例4 本実施例は、図5に示したようなカンチレバー型変位素
子に関連し、実施例3の他の態様を示すものである。本
実施例のカンチレバー型変位素子の概略図とその作製方
法を図5を用いて説明する。
【0142】まず、図5(a)に示したように、基板1
上に下部電極2を形成した。基板としては、実施例3と
同様に、Si単結晶基板上に後述する異方性エッチング
のマスク層として、Si34 を0.2μm堆積したも
のを用いた。また、下部電極2は通常の抵抗加熱蒸着法
でCrを0.005μm、Auを0.1μm連続的に堆
積して形成した。続いて図5(b)に示したように、下
部電極2上に第一の圧電体膜3を形成した。圧電材料と
してはAlNを用い、抵抗加熱蒸着法により成膜を行な
った。成膜条件は蒸着物質としてAlを用い、NH3
スを10ml/min.基板付近に吹きつけながら、基
板温度300℃、成膜速度0.3nm/secとして、
0.2μm堆積した。
【0143】次に、図5(c)に示したように、圧電体
膜3との間に2種類の密着性の異なる界面51a,51
bを持つ中間電極4を形成した。この形成方法は、ま
ず、図6(a)、(b)に示したように、第一の圧電体
膜3上に、通常の抵抗加熱蒸着で、Crを0.005μ
m、Auを0.02μm連続的に堆積した後通常のフォ
トリソグラフィーでストライプ状にパターニングして、
密着性の高い部分となる51aを形成した。さらにその
上に中間電極4を、同様の抵抗加熱蒸着法を用いてAu
のみを0.1μm堆積して形成した。図6(c)に示し
たように、ここで前述のCr/Au膜を除去した部分が
密着性の低い部分51bとなる。
【0144】さらに図5(d)に示したように、第二の
圧電体膜5を、第一の圧電体膜3を形成したのとまった
く同様にして形成し、さらに圧電体膜5との間に2種類
の密着性の異なる界面52a,52bを持つ上部電極6
を、密着性の異なる界面51a,51bを持つ中間電極
4を形成したのとまったく同様にして形成した。
【0145】さらにその後、通常のフォトリソグラフィ
ーにより、不要部分を除去した後、水酸化カリウム水溶
液を用いて基板の異方性エッチングにより素子の片端部
を除いて素子下部の基板を除去して、図5(e)に示し
たようにカンチレバー素子を作製した。
【0146】本実施例で作製したカンチレバー型変位素
子の形状は、長さ500μm、幅50μmである。
【0147】このようにして作製したカンチレバー型変
位素子の下部電極2と中間電極4の間、あるいは中間電
極4と上部電極6の間に±3Vの電圧を印加した場合
に、カンチレバーの先端部は図5の上下方向に±2μm
変位した。
【0148】また実施例3と同様に、カンチレバー形成
後の素子に用いた膜中のクラック、膜はがれはまったく
観察されなかったとともに、素子を駆動した場合にも発
生せず、それによる動作不良も一切観察されなかった。
【0149】次に図18に示すように上記カンチレバー
型変位素子の自由端部に導電性の探針121を設けてカ
ンチレバー型プローブを作製した。この探針121の形
成方法は実施例1と同様である。
【0150】次に上記カンチレバー型プローブを実施例
1と同様に同一のシリコン基板上に複数作製し、集積化
カンチレバー型プローブを作製した。
【0151】次に、実施例1と同様に図14に示すよう
な上記集積化カンチレバー型プローブを用いたSTM装
置で、試料141にHOPG(グラファイト)板を用い
て表面観察を行なったところ、実施例1と同様に良好な
原子像を得ることができた。
【0152】また、実施例1と同様に図15に示すよう
な、本実施例で作製した集積化カンチレバー型プローブ
を用いた情報処理装置においても、実施例1と同様の効
果が得られた。
【0153】実施例5 本実施例は図5に示したようなカンチレバー型変位素子
に関連し、実施例3、4の他の態様を示すものである。
【0154】本実施例のカンチレバー型変位素子の概略
図とその作製方法を図5を用いて説明する。
【0155】まず、図5(a)に示したように、基板1
上に下部電極2を形成した。基板としては、実施例3と
同様に、Si単結晶上に後述する異方性エッチングのマ
スク層として、Si34 を0.2μm堆積したものを
用いた。また、下部電極2は通常の高周波スパッタリン
グ法でTiを0.005μm、Ptを0.1μm連続的
に堆積して形成した。続いて図5(b)に示したよう
に、下部電極2上に第一の圧電体膜3を形成した。圧電
材料としてはPbTiO3 を用い、電子ビーム蒸着法に
より成膜を行なった。成膜条件は蒸着物質としてPb
O、Tiを用いて、2つの蒸発源から同時に蒸発させ、
2 ガスを10ml/min.で基板付近に吹きつけな
がら、基板温度450℃、成膜速度0.3nm/sec
として、0.1μm堆積した。
【0156】次に、図5(c)に示したように、圧電体
膜3との間に2種類の密着性の異なる界面51a,51
bを持つ中間電極4を形成した。この形成方法は、ま
ず、図6(b)に示したように、第一の圧電体膜3上
に、密着層となるTiを0.005μm、金属製の蒸着
マスクを用いてストライプ状に堆積した。次に、ロード
ロックシステムを用いて真空を破らないようにして蒸着
マスクを取り去り、同一真空中でPtを0.1μm堆積
した。ここでTiを蒸着した部分が密着性の高い部分5
1aとなり、蒸着マスクで覆ってTiを蒸着しなかった
部分が密着性の低い部分51bとなる。
【0157】さらに図5(d)に示したように、第二の
圧電体膜5を、第一の圧電体膜3を形成したのとまった
く同様にして形成し、さらに圧電体膜5との間に2種類
の密着性の異なる界面51a,51bを持つ上部電極6
を、密着性の異なる界面51a,51bを持つ中間電極
4を形成したのとまったく同様にして形成した。
【0158】さらにその後、通常のフォトリソグラフィ
ーにより、不要部分を除去した後、水酸化カリウム水溶
液を用いて基板の異方性エッチングにより素子の片端部
を除いて素子下部の基板を除去して、図5(e)に示し
たようにカンチレバー素子を作製した。
【0159】本実施例で作製したカンチレバー型変位素
子の形状は、長さ1.5mm、幅250μmである。
【0160】このようにして作製したカンチレバー型変
位素子の下部電極2と中間電極4の間、あるいは中間電
極4と上部電極6の間に±3Vの電圧を印加した場合
に、カンチレバーの先端部は図5の上下方向に±15μ
m変位した。
【0161】また実施例3と同様に、カンチレバー形成
後の素子に用いた膜中のクラック、膜はがれはまったく
観察されなかったとともに、素子を駆動した場合にも発
生せず、それによる動作不良も一切観察されなかった。
【0162】次に図18に示すように上記カンチレバー
型変位素子の自由端部に導電性の探針121を設けてカ
ンチレバー型プローブを作製した。この探針121の形
成方法は実施例1と同様である。
【0163】次に上記カンチレバー型プローブを実施例
1と同様に同一のシリコン基板上に複数作製し、集積化
カンチレバー型プローブを作製した。
【0164】次に、実施例1と同様に図14に示すよう
な上記集積化カンチレバー型プローブを用いたSTM装
置で、試料141にHOPG(グラファイト)板を用い
て表面観察を行なったところ、実施例1と同様に良好な
原子像を得ることができた。
【0165】また、実施例1と同様に図15に示すよう
な、本実施例で作製した集積化カンチレバー型プローブ
を用いた情報処理装置においても、実施例1と同様の効
果が得られた。
【0166】実施例6 本実施例は図5に示したようなカンチレバー型変位素子
に関連し、実施例3、4、5の他の態様を示すものであ
る。
【0167】本実施例のカンチレバー型変位素子の概略
図とその作製方法を図5を用いて説明する。
【0168】まず、図5(a)に示したように、基板1
上に下部電極2を形成した。基板としては、実施例3と
同様に、Si単結晶上に後述する異方性エッチングのマ
スク層として、Si34 を0.2μm堆積したものを
用いた。また、下部電極2は通常の高周波スパッタリン
グ法でTiを0.005μm、Ptを0.1μm連続的
に堆積して形成した。続いて図5(b)に示したよう
に、下部電極2上に第一の圧電体膜3を形成した。圧電
材料としては実施例3と同様にZnOを用い、実施例3
とまったく同様にして下部電極2上に第一の圧電体膜3
を形成した。膜厚は0.2μmとした。
【0169】次に、この第一の圧電体膜3上にフォトレ
ジストを塗布し、通常のフォトリソグラフィー工程によ
りストライプ状にレジストを除去してフォトレジストに
よるマスク層を形成した後、Arイオンビームを照射し
て、レジストを除去した部分の圧電体膜3の表面の処理
を行なった。このようにすることで、Arイオンビーム
を照射した部分は表面の凹凸が大きくなり、その上に通
常のスパッタリングを用いてPtを0.1μm堆積し
て、図5(c)に示したような、圧電体膜3との間に2
種類の密着性の異なる界面51a,51bを持つ中間電
極4を形成した。ここでArイオンビームによる処理を
行なった部分が密着性の高い部分51aとなり、レジス
トで保護して処理を行なわなかった部分が密着性の高い
部分51bとなる。
【0170】さらに図5(d)に示したように、第二の
圧電体膜5を、第一の圧電体膜3を形成したのとまった
く同様にして形成し、さらに圧電体膜5との間に2種類
の密着性の異なる界面51a,51bを持つ上部電極6
を、密着性の異なる界面51a,51bを持つ中間電極
4を形成したのとまったく同様にして形成した。さらに
その後、通常のフォトリソグラフィーにより、不要部分
を除去した後、水酸化カリウム水溶液を用いて基板の異
方性エッチングにより素子の片端部を除いて素子下部の
基板を除去して、図5(e)に示したようにカンチレバ
ー素子を作製した。
【0171】本実施例で作製したカンチレバー型変位素
子の形状は、長さ500μm、幅50μmである。
【0172】このようにして作製したカンチレバー型変
位素子の下部電極2と中間電極4の間、あるいは中間電
極4と上部電極6の間に±3Vの電圧を印加した場合
に、カンチレバーの先端部は図5の上下方向に±3μm
変位した。
【0173】また実施例3と同様に、カンチレバー形成
後の素子に用いた膜中のクラック、膜はがれはまったく
観察されなかったとともに、素子を駆動した場合にも発
生せず、それによる動作不良も一切観察されなかった。
【0174】次に図18に示すように上記カンチレバー
型変位素子の自由端部に導電性の探針121を設けてカ
ンチレバー型プローブを作製した。この探針121の形
成方法は実施例1と同様である。
【0175】次に上記カンチレバー型プローブを実施例
1と同様に同一のシリコン基板上に複数作製し、集積化
カンチレバー型プローブを作製した。
【0176】次に、実施例1と同様に図14に示すよう
な上記集積化カンチレバー型プローブを用いたSTM装
置で、試料141にHOPG(グラファイト)板を用い
て表面観察を行なったところ、実施例1と同様に良好な
原子像を得ることができた。
【0177】また、実施例1と同様に図15に示すよう
な、本実施例で作製した集積化カンチレバー型プローブ
を用いた情報処理装置においても、実施例1と同様の効
果が得られた。
【0178】実施例7 本実施例は図7に示したような本発明のカンチレバー型
変位素子に関連するものである。
【0179】本実施例のカンチレバー型変位素子の概略
図とその作製方法を図7を用いて説明する。
【0180】まず、図7(a)に示したように、基板1
上に第一の応力緩和層71を形成した。基板としては、
Si単結晶上に後述する異方性エッチングのマスク層と
して、Si34 を0.2μm堆積したものを用いた。
第一の応力緩和層71の形成を以下のようにして行なっ
た。まずベンゼン/n−ヘキサン(10/1)混合溶媒
を用い、ポリイソブチルメタクリレートの1×10-3
(重量/重量)の溶液を調整した。これをスピンコート
により基板1上に塗布し、溶媒を蒸散させ、膜厚0.0
1μmに形成した。それに続いて、下部電極2をイオン
ビームスパッタ法でAuを0.1μm堆積して形成し
た。
【0181】続いて図7(b)に示したように、その上
に第二の応力緩和層72を第一の応力緩和層71とまっ
たく同様にして形成したのに続いて、第一の圧電体膜3
を形成した。第一の圧電体膜3は、圧電材料としてはZ
nOを用い、高周波マグネトロンスパッタ法を用いて成
膜を行なった。成膜条件はターゲットにZnO燒結体を
用い、ArとO2 を1:1.5の比で混合したガスの雰
囲気中で、基板温度150℃、成膜速度0.3nm/s
ecとしてスパッタリングを行ない、0.2μm堆積し
た。
【0182】さらに図7(c)に示したように、その上
に第三の応力緩和層73、中間電極4、第四の応力緩和
層74、第二の圧電体膜5、第五の応力緩和層75、上
部電極6の順に連続的に堆積して形成した。各応力緩和
層は第一の応力緩和層と、各電極は下部電極4と、第二
の圧電体膜は第一の圧電体膜と、それぞれまったく同様
にして形成し、カンチレバーの形状にパターニングを行
なった。
【0183】さらにその後、図7(d)に示したよう
に、通常のフォトリソグラフィーにより、不要部分を除
去した後、水酸化カリウム水溶液を用いて基板の異方性
エッチングにより素子の片端部を除いて素子下部の基板
を除去して、カンチレバー素子を作製した。
【0184】本実施例で作製したカンチレバー型変位素
子の形状は、長さ500μm、幅50μmである。
【0185】このようにして作製したカンチレバー型変
位素子の下部電極2と中間電極4の間、あるいは中間電
極4と上部電極6の間に±3Vの電圧を印加した場合
に、カンチレバーの先端部は図7の上下方向に±3μm
変位した。
【0186】カンチレバー形成後の素子に用いた膜中の
クラック、膜はがれはまったく観察されなかったととも
に、素子を駆動した場合にも発生せず、それによる動作
不良も一切観察されなかった。また先端部の反りは0.
1μm以下であり、非常に反りが小さかった。
【0187】次に図19に示すように上記カンチレバー
型変位素子の自由端部に導電性の探針121を設けてカ
ンチレバー型プローブを作製した。この探針121の形
成方法は実施例1と同様である。
【0188】次に上記カンチレバー型プローブを実施例
1と同様に同一のシリコン基板上に複数作製し、集積化
カンチレバー型プローブを作製した。
【0189】次に、実施例1と同様に図14に示すよう
な上記集積化カンチレバー型プローブを用いたSTM装
置で、試料141にHOPG(グラファイト)板を用い
て表面観察を行なったところ、実施例1と同様に良好な
原子像を得ることができた。
【0190】また、実施例1と同様に図15に示すよう
な、本実施例で作製した集積化カンチレバー型プローブ
を用いた情報処理装置においても、実施例1と同様の効
果が得られた。
【0191】実施例8 本実施例は本発明のカンチレバー型変位素子に関連し、
実施例7の他の態様を示すものである。
【0192】本実施例のカンチレバー型変位素子の概略
図とその作製方法を図7を用いて説明する。
【0193】まず、図7(a)に示したように、基板1
上に第一の応力緩和層71を形成した。基板としては、
Si単結晶上に後述する異方性エッチングのマスク層と
して、Si34 を0.2μm堆積したものを用いた。
第一の応力緩和層71の形成は以下のようにして行なっ
た。まず、ベンゼン/n−ヘキサン(10/1)混合溶
媒を用い、ポリイソブチルメタクリレートの1×10-3
%(重量/重量)の溶液を調整した。これを純水、水温
20℃の水相上に展開し、表面圧を10mN/mまで高
め水面上に単分子膜を形成した。次に前述の基板1を用
いて、表面圧を一定に保ちながら基板1を水面を横切る
方向に5mm/minで浸漬、引き上げを行なった。こ
の動作を繰り返すことにより0.01μmの厚さで単分
子累積膜を形成した。それに続いて、下部電極2をイオ
ンビームスパッタ法でAuを0.1μm堆積して形成し
た。
【0194】続いて図7(b)に示したように、その上
に第二の応力緩和層72を第一の応力緩和層71とまっ
たく同様にして形成したのに続いて、第一の圧電体膜3
を形成した。第一の圧電体膜3は、圧電材料としてはP
bTiO3 を用い、クラスター・イオンビーム蒸着法を
用いて成膜を行なった。成膜条件は蒸着物質としてPb
O、Tiを用いて、2つの蒸発源から同時に蒸発させ、
Tiのみを100mA/4kVの条件でイオン化し、O
2 ガスを10ml/min.で基板付近に吹きつけなが
ら、基板温度150℃、成膜速度0.3nm/secと
して、0.2μm堆積した。
【0195】さらに図7(c)に示したように、その上
に第三の応力緩和層73、中間電極4、第四の応力緩和
層74、第二の圧電体膜5、第五の応力緩和層75、上
部電極6の順に連続的に堆積して形成した。各応力緩和
層は第一の応力緩和層と、各電極は下部電極4と、第二
の圧電体膜は第一の圧電体膜と、それぞれまったく同様
にして形成し、カンチレバーの形状にパターニングを行
なった。
【0196】さらにその後、図7(d)に示したよう
に、通常のフォトリソグラフィーにより、不要部分を除
去した後、水酸化カリウム水溶液を用いて基板の異方性
エッチングにより素子の片端部を除いて素子下部の基板
を除去して、カンチレバー素子を作製した。
【0197】本実施例で作製したカンチレバー型変位素
子の形状は、長さ500μm、幅50μmである。
【0198】このようにして作製したカンチレバー型変
位素子の下部電極2と中間電極4の間、あるいは中間電
極4と上部電極6の間に±3Vの電圧を印加した場合
に、カンチレバーの先端部は図7の上下方向に±5μm
変位した。
【0199】カンチレバー形成後の、素子に用いた膜中
のクラック、膜はがれはまったく観察されなかったとと
もに、素子を駆動した場合にも発生せず、それによる動
作不良も一切観察されなかった。また先端部の反りは
0.1μm以下であり、非常に反りが小さかった。
【0200】次に図19に示すように上記カンチレバー
型変位素子の自由端部に導電性の探針121を設けてカ
ンチレバー型プローブを作製した。この探針121の形
成方法は実施例1と同様である。
【0201】次に上記カンチレバー型プローブを実施例
1と同様に同一のシリコン基板上に複数作製し、集積化
カンチレバー型プローブを作製した。
【0202】次に、実施例1と同様に図14に示すよう
な上記集積化カンチレバー型プローブを用いたSTM装
置で、試料141にHOPG(グラファイト)板を用い
て表面観察を行なったところ、実施例1と同様に良好な
原子像を得ることができた。
【0203】また、実施例1と同様に図15に示すよう
な、本実施例で作製した集積化カンチレバー型プローブ
を用いた情報処理装置においても、実施例1と同様の効
果が得られた。
【0204】実施例9 本実施例は本発明のカンチレバー型変位素子に関連し、
実施例7、8の他の態様を示すものである。
【0205】本実施例のカンチレバー型変位素子の概略
図とその作製方法を図7を用いて説明する。
【0206】まず、図7(a)に示したように、基板1
上に第一の応力緩和層71を形成した。基板としては、
Si単結晶上に後述する異方性エッチングのマスク層と
して、Si34 を0.2μm堆積したものを用いた。
第一の応力緩和層71の形成は以下のようにして行なっ
た。まず、N,N−ジメチルアセトアミド溶媒を用い、
ポリアミック酸の1×10-3%(重量/重量)の溶液を
調整した。これを別途調整したN,N−ジメチルオクタ
デシルアミンの周溶媒による1×10-3%(重量/重
量)の溶液と、体積比で1:2に混合してポリアミック
酸オクタデシルアミン塩溶液を調整した。これを純水、
水温20℃の水相上に展開し、溶媒除去後表面圧を25
mN/mまで高め水面上に単分子膜を形成した。次に前
述の基板1を用いて、表面圧を一定に保ちながら基板1
を水面を横切る方向に5mm/minで浸漬、引き上げ
を行なった。この動作を繰り返すことにより0.01μ
mの厚さで単分子累積膜を形成した。その後これを30
0℃で10分間熱処理してポリアミック酸オクタデシル
アミン塩をイミド化し、ポリイミド単分子累積膜を得
た。それに続いて、下部電極2を高周波スパッタ法でT
iを0.005μm、Ptを0.1μm連続的に堆積し
て形成した。
【0207】続いて図7(b)に示したように、その上
に第二の応力緩和層72を第一の応力緩和層71とまっ
たく同様にして形成したのに続いて、第一の圧電体膜3
を形成した。第一の圧電体膜3は、圧電材料としてはP
bTiO3 を用い、クラスター・イオンビーム蒸着法を
用いて成膜を行なった。成膜条件は蒸着物質としてPb
O、Tiを用いて、2つの蒸発源から同時に蒸発させ、
Tiのみを100mA/4kVの条件でイオン化し、O
2 ガスを10ml/min.で基板付近に吹きつけなが
ら、基板温度250℃、成膜速度0.3nm/secと
して、0.2μm堆積した。
【0208】さらに図7(c)に示したように、その上
に第三の応力緩和層73、中間電極4、第四の応力緩和
層74、第二の圧電体膜5、第五の応力緩和層75、上
部電極6の順に連続的に堆積して形成した。各応力緩和
層は第一の応力緩和層と、各電極は下部電極4と、第二
の圧電体膜は第一の圧電体膜と、それぞれまったく同様
にして形成し、カンチレバーの形状にパターニングを行
なった。
【0209】さらにその後、図7(d)に示したよう
に、通常のフォトリソグラフィーにより、不要部分を除
去した後、水酸化カリウム水溶液を用いて基板の異方性
エッチングにより素子の片端部を除いて素子下部の基板
を除去して、カンチレバー素子を作製した。
【0210】本実施例で作製したカンチレバー型変位素
子の形状は、長さ500μm、幅50μmである。
【0211】このようにして作製したカンチレバー型変
位素子の下部電極2と中間電極4の間、あるいは中間電
極4と上部電極6の間に±3Vの電圧を印加した場合
に、カンチレバーの先端部は図7の上下方向に±7μm
変位した。
【0212】カンチレバー形成後の、素子に用いた膜中
のクラック、膜はがれはまったく観察されなかったとと
もに、素子を駆動した場合にも発生せず、それによる動
作不良も一切観察されなかった。また先端部の反りは
0.1μm以下であり、非常に反りが小さかった。
【0213】次に図19に示すように上記カンチレバー
型変位素子の自由端部に導電性の探針121を設けてカ
ンチレバー型プローブを作製した。この探針121の形
成方法は実施例1と同様である。
【0214】次に上記カンチレバー型プローブを実施例
1と同様に同一のシリコン基板上に複数作製し、集積化
カンチレバー型プローブを作製した。
【0215】次に、実施例1と同様に図14に示すよう
な上記集積化カンチレバー型プローブを用いたSTM装
置で、試料141にHOPG(グラファイト)板を用い
て表面観察を行なったところ、実施例1と同様に良好な
原子像を得ることができた。
【0216】また、実施例1と同様に図15に示すよう
な、本実施例で作製した集積化カンチレバー型プローブ
を用いた情報処理装置においても、実施例1と同様の効
果が得られた。
【0217】実施例10 本実施例は図8に示したようなカンチレバー型変位素子
に関連するものである。
【0218】本実施例のカンチレバー型変位素子の概略
図とその作製方法を図20を用いて説明する。
【0219】まず、面方位(100)の単結晶シリコン
基板1上に弾性体層81としてSiONを形成する(図
20(b)参照)。
【0220】弾性体層81の上へ密着性確保のためCr
を5〜10Å真空蒸着した後、Auを1000Å蒸着
し、フォトリソグラフにより不要部分のAu/Crを除
去し平板電極82を形成する(図20(c)参照)。
【0221】次に、スパッタ蒸着法により、ZnOを3
000Å形成する。この時スパッタ蒸着の条件を選び、
結晶のC軸が基板1に対して垂直に配向するよう成膜を
行ない、フォトリソグラフにより不要部分を除去し圧電
体3を形成する(図20(d)参照)。
【0222】次に再び真空蒸着法によりCrを5〜10
Å、Auを2000Å蒸着しフォトリソグラフにより不
要部分を除去し、スネークパターン状電極83とそれに
接続する電極85a,85b,85c,85d等をパタ
ーン形成する(図20(e)参照)。
【0223】次にSi単結晶基板1の裏面よりSi単結
晶のエッチング速度の面方位による差を利用して異方性
エッチングを行なってSiを除去し、カンチレバー部9
を形成する(図20(f)参照)。
【0224】以上の工程により本実施例のカンチレバー
型変位素子を作製した。また弾性体81は図20(f)
の後、裏面より反応性イオンエッチング等により除去す
ることも可能である。この場合でもカンチレバー部が厚
み方向で非対称構造となっているため、圧電体3の伸縮
によりカンチレバー部9は屈曲変位する。
【0225】尚、フォトリソグラフの際に使用したエッ
チング液はAuはKI;I2 水溶液、Crは(NH4
2 Ce(NO36 ;HClO4 水溶液、ZnOは酢酸
水溶液を用い、Si基板1の異方性エッチングにはKO
H水溶液を用いた。本実施例により作製したカンチレバ
ー型変位素子の主要部の寸法並びに駆動特性の一例を以
下に示す。
【0226】 カンチレバー部9の長さ 500μm、幅50μm スネークパターン状電極83の線幅 9μm スネークパターン状電極83の線間隔 1μm 反りの最大補正量 15μm(先端部変位) 駆動電圧 ±3V 先端部振幅 ±3μm本実施例の カンチレバー型変位素子はカンチレバー形成
後の反りの補正を行なうことで、先端部の反りのバラツ
キを±0.5μm以内にすることが可能となった。
【0227】本実施例においては、スネークパターン電
極83は最上層に形成したがこれは最下層に形成しても
良く、また上下電極両方をスネークパターン電極とする
ことも可能である。
【0228】本実施例においては、スネークパターン電
極としてAu/Crを用いたが材料は限定されるもので
はなく、加熱により引張り応力を発生する材料であれば
他のものでもかまわない。また、圧電体3として用いた
ZnOもAlNやPZTなど他の圧電材料を用いること
ができる。製造方法自体もこれに限定されるものではな
く、他の方法で作製することも可能である。
【0229】実施例11 本実施例は図8に示したようなカンチレバー型変位素子
に関連し、実施例10の他の態様を示すものである。
【0230】図21に本実施例で作製したカンチレバー
型変位素子を用いたカンチレバー型プローブを示す。図
21(b)は、図21(a)中のB−B面よりの断面図
である。
【0231】本実施例では実施例10の構成に加えて、
圧電体を3a,3bからなる2層で構成し、その間に平
板電極82L,82Rを設けた。また下部の平板電極も
2L,2Rとに分割し、更に上部のスネークパターン電
極も83L,83Rとに分割して、左右対称のバイモル
フ構造とした。このように電極を左右に分割することに
より実施例10で示した上下方向への変位に加えて、カ
ンチレバー面と平行方向の変位を発生させることができ
る。
【0232】かかる変位素子の製造は、実施例10で示
した作製法において、平板電極82L,82Rと圧電体
3bの成膜パターニング工程を付加し、フォトリソグラ
フのマスクパターンの変更により作製する。
【0233】本実施例では更に圧電体3b上のスネーク
パターン電極83L,83Rの間に引出し電極7を設
け、カンチレバーの先端部に引出し電極7と接するよう
に探針121を形成した。この探針121は、高さが3
μmであり、これはスネークパターン電極83L,83
R、探針121を形成の後、フォトレジストを5μm程
度塗布し、探針121を形成する位置のみレジストを除
去し、斜め方向より蒸着と基板回転を組み合せた方法に
より形成した。
【0234】次に上記カンチレバー型プローブを実施例
1と同様に同一のシリコン基板上に複数作製し、集積化
カンチレバー型プローブを作製した。
【0235】以下に本実施例で作製した集積化カンチレ
バー型プローブの寸法の一例を示す。
【0236】 集積化カンチレバー型プローブの外径 20×20×1mm カンチレバーの本数 100本 各カンチレバーの寸法 500×500μm 探針121の高さ 3μm このように同一の基板上へ複数のカンチレバーを同時に
形成する場合、個々の反り量のバラツキが小さいことが
望ましい。本実施例によるスネークパターン電極83
L,83Rへの通電加熱により反りを個々に補正するこ
とにより、各カンチレバー間の反り量のバラツキを非常
に小さく抑えることができる。
【0237】次に、実施例1と同様に図14に示すよう
な上記集積化カンチレバー型プローブを用いたSTM装
置で、試料141にHOPG(グラファイト)板を用い
て表面観察を行なったところ、実施例1と同様に良好な
原子像を得ることができた。
【0238】また、実施例1と同様に図15に示すよう
な、本実施例で作製した集積化カンチレバー型プローブ
を用いた情報処理装置においても、実施例1と同様の効
果が得られ、さらには個々のプローブの反りのバラツキ
を極めて小さくすることができるため、記録再生時のト
ラッキング性能が向上し、書込み、読取り時のエラーの
発生率を小さくすることができる。
【0239】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のカンチレ
バー型変位素子では、以下の効果を有する。
【0240】板あるいは圧電体膜と、電極との層間に
有機単分子膜等の比較的柔らかい材料よりなる応力緩和
層を設けることにより、素子形成時の内部応力あるいは
素子駆動時に発生する応力を緩和し、層間界面のはがれ
や、発端の反りをなくすることができる。
【0241】さらには、上記有機単分子膜等の均一で高
密度な膜を層間に挟むことにより、リーク電流や抵抗率
の低下を抑制し、素子の歩留を向上させることができ
る。
【0242】また上記本発明によるカンチレバー型変位
素子に探針を設けたカンチレバー型プローブあるいは、
上記プローブを同一基板上に集積してなる、集積化カン
チレバー型プローブを用いた本発明の走査型トンネル顕
微鏡では、高速かつ信頼性の高い像観察が可能となる。
【0243】さらには、上記カンチレバー型プローブ、
集積化カンチレバー型プローブを用いた本発明の情報処
理装置では、nmオーダーの記録密度をもつ大容量・高
密度の装置となり、かつ、高速で記録再生等を行なうこ
とができるとともに、エラーの発生率を小さくすること
ができ信頼性の高い装置となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の参考用カンチレバー型変位素子の構成図
の一例である。
【図2】第1の参考用カンチレバー型変位素子の構成図
の他の例である。
【図3】第1の参考用カンチレバー型変位素子の構成図
の他の例である。
【図4】第2の参考用カンチレバー型変位素子の構成図
の一例である。
【図5】第3の参考用カンチレバー型変位素子の概略図
及び作製方法の一例を説明するための図である。
【図6】密着性の異なる界面の作製方法を説明するため
の図である。
【図7】本発明のカンチレバー型変位素子の概略図及び
作製方法の一例を説明するための図である。
【図8】第4の参考用カンチレバー型変位素子の構成図
の一例である。
【図9】カンチレバー部の反りの補正方法を説明するた
めの図である。
【図10】金属薄膜の加熱による膜応力の変化を説明す
るための図である。
【図11】実施例1のカンチレバー型変位素子の作製方
法を説明するための図である。
【図12】実施例1のカンチレバー型プローブの構成図
である。
【図13】実施例1の集積化カンチレバー型プローブを
模式的に示した図である。
【図14】実施例1のSTM装置のブロック図である。
【図15】実施例1の情報処理装置を模式的に示した図
である。
【図16】実施例2のカンチレバー型変位素子の作製方
法を説明するための図である。
【図17】実施例2のカンチレバー型プローブの構成図
である。
【図18】実施例3のカンチレバー型プローブの構成図
である。
【図19】実施例7のカンチレバー型プローブの構成図
である。
【図20】実施例10のカンチレバー型変位素子の作製
方法を説明するための図である。
【図21】実施例11のカンチレバー型プローブの構成
図である。
【図22】従来のカンチレバー型変位素子の例である。
【符号の説明】
1 シリコン基板 2,2L,2R 下部電極 3,3a,3b 圧電体膜 4,4L,4R 中間電極 5,5a,5b 圧電体膜 6,6L,6R 上部電極 7 引出し電極 8,8a,8b 柱状組織 9 カンチレバー部 10 クラックの発生しやすい方向 11 クラック 51a,51b,52a,52b 密着性の異なる界面 71 第一の応力緩和層 72 第二の応力緩和層 73 第三の応力緩和層 74 第四の応力緩和層 75 第五の応力緩和層 81 弾性体 82,82L,82R 平板電極 83,83L,83R スネークパターン状電極 84a,84b 電極 85a〜85d 電極 91 電源 92 スイッチ 93 スイッチ 94 圧電体駆動用電源 111 絶縁層 121 探針 130 集積化カンチレバー型プローブ 141 試料 142 X−Yステージ 143 バイアス電圧印加回路 144 トンネル電流検出回路 145 駆動制御回路 143 CPU 150 記録層 151 金属電極層 152 記録媒体基板 153 カンチレバー型プローブの支持体 154 Z方向粗動リニアアクチュエータ 155 X方向駆動リニアアクチュエータ 156 Y方向駆動リニアアクチュエータ 157 記録再生用バイアス回路 158,159 サーボ回路 160 Z方向微小駆動回路 161 位置制御用駆動回路
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI H01L 41/09 H01L 41/08 U (56)参考文献 特開 昭63−194378(JP,A) 特開 平1−157581(JP,A) 特開 平1−226186(JP,A) 特表 平3−503463(JP,A) 特表 平3−503586(JP,A) 特表 平3−504762(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 13/10 - 13/24 G12B 21/00 - 21/24 G01B 7/34 H01J 37/28 G11B 9/00 H01L 41/09 JICSTファイル(JOIS)

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 圧電体膜と、該圧電体膜を逆圧電効果に
    より変位させるための電極とを基板上に積層してなるカ
    ンチレバー型変位素子において、該電極と該圧電体膜及
    び該基板との層間のうち、少なくとも1つの層間に応力
    緩和層を設けたことを特徴とするカンチレバー型変位素
    子。
  2. 【請求項2】 応力緩和層が有機物質よりなることを特
    徴とする請求項記載のカンチレバー型変位素子。
  3. 【請求項3】 応力緩和層が有機単分子累積膜よりなる
    ことを特徴とする請求項記載のカンチレバー型変位素
    子。
  4. 【請求項4】 請求項1〜いずれかに記載のカンチレ
    バー型変位素子の自由端部に、情報入出力用探針を設け
    たことを特徴とするカンチレバー型プローブ。
  5. 【請求項5】 請求項に記載のカンチレバー型プロー
    ブを、同一基板上に複数配置したことを特徴とする集積
    化カンチレバー型プローブ。
  6. 【請求項6】 請求項又はに記載のカンチレバー型
    プローブを用いたことを特徴とする走査型トンネル顕微
    鏡。
  7. 【請求項7】 トンネル電流を用いて記録媒体に対して
    情報の記録、再生、消去を行なう情報処理装置におい
    て、請求項又はに記載のカンチレバー型プローブを
    用いたことを特徴とする情報処理装置。
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