JPH0586272A - 熱可塑性ポリエステル組成物およびフイルム - Google Patents

熱可塑性ポリエステル組成物およびフイルム

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JPH0586272A
JPH0586272A JP25115891A JP25115891A JPH0586272A JP H0586272 A JPH0586272 A JP H0586272A JP 25115891 A JP25115891 A JP 25115891A JP 25115891 A JP25115891 A JP 25115891A JP H0586272 A JPH0586272 A JP H0586272A
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 動的光散乱法による測定粒子径(D1 mμ)
と窒素ガス吸着法による測定粒子径(D2 mμ)の比D
1 /D2 が2以上であって、D1 は60〜600mμで
あり、電子顕微鏡観察において41〜100 mμの範囲
の太さを持ち、直鎖または分岐の形状を有することを特
徴とするシリカ粒子、および柔らかい部分と硬い部分を
有する有機高分子微粒子を含有してなる熱可塑性ポリエ
ステル組成物。 【効果】 微細で直鎖または分岐の形状を有するシリカ
粒子、および柔らかい部分と硬い部分を有する有機高分
子微粒子を含有させることにより、フィルムや繊維に成
形した際、平坦性、滑り安定性、耐削れ性、耐スクラッ
チ性に優れた熱可塑性ポリエステル組成物を得ることが
できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は熱可塑性ポリエステル組
成物に関するものであり、さらに詳しくは微細で直鎖ま
たは分岐の形状を有するシリカ粒子、および柔らかい部
分と硬い部分を有する有機高分子粒子を熱可塑性ポリエ
ステル中に分散させることにより、滑り安定性、耐摩耗
性、耐スクラッチ性(傷がつきにくい性質のことをい
う)に優れたフィルムあるいは繊維を得るに適した熱可
塑性ポリエステル組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に熱可塑性ポリエステル、例えばポ
リエチレンテレフタレートは、優れた力学特性、化学特
性を有しており、フィルム、繊維などの成形品として広
く用いられている。
【0003】しかしながら、ポリエステルは成形品に加
工する際に、滑り性不足のため生産性が低下するという
問題があった。このような問題を改善する方法として、
従来よりポリエステル中に不活性粒子を分散せしめ、成
形品の表面に凹凸を付与する方法が行なわれている。例
えば、特開昭52−86471号公報では比表面積の規
定された無機粒子、特開昭59−171623号公報で
は0.1〜1μm の球形のシリカ粒子を用いる方法が提
案されている。これらの方法は滑り性の問題解決には有
効であるが、成形品とした場合には耐削れ性、耐スクラ
ッチ性を満足すべきレベルとすることができない。
【0004】成形品、例えば磁気テープ用フィルムの耐
削れ性が低い場合、磁気テープの製造工程中にフィルム
の摩耗粉が発生しやすくなり、磁性層を塗布する工程で
塗布抜けが生じ、その結果磁気記録の抜け(ドロップ・
アウト)などを引き起こす。また、磁気テープを使用す
る際は多くの場合、記録、再生機器などと接触しながら
走行させるため、接触時に生じる摩耗粉が磁性体上に付
着し、記録、再生時に磁気記録の抜け(ドロップ・アウ
ト)を生じる。
【0005】さらに、磁性層を塗布する工程でのカレン
ダー処理における削れ物の発生は、磁気記録フィルムを
製造する上で作業性を著しく悪化させる。
【0006】そして成形品、例えば磁気テープ用フィル
ムの耐スクラッチ性が低い場合、磁気テープの製造工程
中で異物が発生したときに容易にフィルム表面上に傷を
作り、その結果、磁気記録の抜け(ドロップ・アウト)
などを引き起こしたり、磁気テープ高速走行使用時にフ
ィルム表面に容易に傷を作る。
【0007】すなわち、磁気テープ用フィルムは、磁気
テープ製造工程中においても、また磁気テープとして使
用する場合においても、滑り性や耐削れ性、耐スクラッ
チ性を有することが必要である。耐削れ性を向上させる
ための手法として、微細な粒子を含有させる方法がある
が、例えば平均粒径0.01〜0.1μm 程度の微細な
球状シリカ粒子をポリエステル中に分散せしめる方法の
場合、フィルムの走行時に接触するローラーから受ける
強い力で脱落し、さらに脱落した粒子がフィルム表面に
傷をつけてしまうなどの欠点がある。
【0008】最近では有機高分子粒子を用いることによ
り、耐削れ性を改良している例はあるものの、耐スクラ
ッチ性が悪くなり、微細な粒子と有機高分子粒子を併用
しても耐削れ性、耐スクラッチ性を満足させることがで
きない。
【0009】一方、有機高分子微粒子においては、例え
ば特公昭63−45409公報、特開昭59−2177
55号公報、特開平2−189359号公報に有機高分
子微粒子が提案されているが、これらの方法を採用して
も耐削れ性はいずれも十分でない。また、特開平3−1
43929号公報では、フィルム中で変形する架橋高分
子粒子が提案されているが、粒子全体が変形するために
滑り性と耐削れ性のバランスを維持したフィルムを得る
ことは難しく、特に長時間走行させたときの滑り性の変
化が大きく、耐スクラッチ性が低い。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は前記し
た従来技術の欠点を解消することにあり、滑り安定性、
耐削れ性、耐スクラッチ性のすべてに優れたフィルム、
繊維を製造し得る熱可塑性ポリエステル組成物を得るこ
とにある。
【0011】
【課題を解決するため手段】前記した本発明の目的は、
動的光散乱法による測定粒子径(D1 mμ)と窒素ガス
吸着法による測定粒子径(D2 mμ)の比D1 /D2
2以上であって、D1 は60〜600 mμであり、電子
顕微鏡観察において41〜100 mμの範囲の太さを持
ち、直鎖または分岐の形状を有するシリカ粒子、および
柔らかい部分と硬い部分を有する有機高分子微粒子を含
有してなる熱可塑性ポリエステル組成物によって達成で
きる。
【0012】本発明において用いられるポリエステル
は、芳香族ジカルボン酸を主たる酸成分とするジカルボ
ン酸およびそのエステル形成性誘導体とグリコールから
製造される。本発明における芳香族ジカルボン酸として
は、例えばテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボ
ン酸、ジフェニルジカルボン酸、イソフタル酸などを挙
げることができる。本発明におけるグリコール成分とし
ては、例えばエチレングリコール、ブタンジオール、テ
トラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコールな
どの脂肪族グリコール、あるいはシクロヘキサンジメタ
ノールなどの脂環族ジオールなどを挙げることができ
る。本発明におけるポリエステルとしては、例えばアル
キレンテレフタレートまたはアルキレンナフタレートを
主たる構成成分とするものが好ましい。また、これらの
ポリエステルは、ホモポリエステルであってもコポリエ
ステルであってもよい。共重合成分の例としては、アジ
ピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサ
ヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの
脂環式ジカルボン酸、ポリエチレングリコール、ポリプ
ロピレングリコールなどが挙げられる。
【0013】本発明のシリカ粒子は、そのスラリー状態
において動的光散乱法による測定粒子径D1 として60
〜600 mμの大きさを有し、電子顕微鏡観察において
41〜100 mμの範囲内の一様な太さで伸長している
形状を有している。フィルム特性の点で好ましくはD1
として80〜500 mμ、粒子太さが41〜80 mμが
好ましい。この動的光散乱法による粒子径の測定法は、
Journal of ChemicalPhysics 第57巻第11号(19
72年12月)第4814頁に説明されており、例えば
市販の測定装置、米国 Coulter社製N4 により容易に粒
子径を測定することができる。D1 が60 mμ未満では
ポリエステル中での分散性が悪く好ましくない。またD
1 が600 mμを越えると、例えばフィルムの平坦性を
悪化させるので好ましくない。そして、該粒子のおよそ
の伸長度として窒素ガス吸着法(以下、BET法とい
う。)によって測定されるこの粒子の比表面積S m2/g
の値から、D2 =2720/Sの式によって与えられる
換算粒子径D2 mμと上記D1 mμとの比D1 /D2
値が2以上である特徴を有する。ここで、D1 /D2
値が2以上10未満、より好ましくは2以上7未満、特
に好ましくは2以上5未満である方がポリエステル中で
の粒子の分散性、ポリエステルの滑り安定性、耐削れ
性、耐スクラッチ性が良好である。
【0014】本発明におけるシリカ粒子の形状を図1に
示すモデル図で説明する。例えば、図1の1に示すよう
に線状または屈曲していてもよく(直鎖状シリカ粒
子)、さらには図1の2のように分岐点を持って伸長を
有していてもよい(分岐状シリカ粒子)。その形状を二
次凝集体や粒子同士の重なりと区別するのは難しいが、
安定なゾルの場合、適当な分散処理をしてコロジオン膜
に固定し、透過型電子顕微鏡で分散したところを観察す
ると、ほぼ一様な太さで明暗度が同じである直鎖状のシ
リカ粒子1または分岐状のシリカ粒子2が観察できる。
このときに観察される粒子太さは、例えば図1の粒子太
さ3のように定義される。これが二次凝集体でないとい
う判断は、二次凝集体では太さがほぼ一様なものとして
観察されないからである。粒子同士の重なりでないとい
う判断は、明暗度の異なる部分を基本的に有していない
からである。さらにこのことは、この粒子は基本的に同
一平面内のみの伸長を有していると考えられ、スラリー
の安定性が良好であることと結び付く。本発明における
直鎖または分岐の形状を有するシリカ粒子は晶質、非晶
質のどちらでもよいが、非晶質が好ましい。粒子は通常
安定なスラリー状態で保存される。
【0015】本発明における有機高分子微粒子は、柔ら
かい部分と硬い部分を持っている。その構造を確認する
手段としては、例えば粒子の圧縮挙動を測定する方法が
ある。図2に示す方法では、まず下部圧子11上に粒子
を分散させ、上部加圧圧子12と下部圧子11の間に微
粒子13を1個固定する。そして、一定の増加割合で負
荷力を与え、微粒子の変形量と負荷力を自動計測する。
このときに粒子が柔らかい部分と硬い部分を有している
と、例えば図3に示すように力と変形量をプロットした
カーブに点21のような不連続点を生じるようになる。
このようなことは粒子が破壊したときにも生じるが、そ
の際には一点破線のようなカーブをとることから破壊と
区別することができる。なお、図3中の点線は柔らかい
部分のみを有する場合のカーブである。また不連続点は
測定中に1回のみならず複数回発現してもよい。成形品
の耐削れ性、滑り安定性を特に良好にするには、粒子の
圧縮挙動を測定したときに、粒子が80%の変形を生じ
るまでにカーブに変曲点が表われた方がよく、好ましく
は60%の変形を生じるまでに変曲点が表われることが
望ましい。
【0016】本発明における有機高分子微粒子は、柔ら
かい部分と硬い分部を有していれば特に限定されず、例
えばポリスチレンもしくは架橋ポリスチレン粒子、スチ
レン・アクリル系およびアクリル系架橋粒子、スチレン
・メタクリル系およびメタクリル系架橋粒子などのビニ
ル系粒子、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド、シリ
コーン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニルエ
ステル、フェノール樹脂などの粒子が挙げられるが、粒
子を構成する部分のうち少なくとも一部がポリエステル
に対し不溶の有機高分子微粒子であればいかなる粒子で
もよい。好ましくは、一般に分子中にただ1個の脂肪族
の不飽和結合を有するモノビニル化合物(A)と、架橋
剤として分子中に2個以上の脂肪族の不飽和結合を有す
る化合物(B)との共重合体が挙げられる。
【0017】上記共重合体における化合物(A)の例と
しては、スチレン、α−メチルスチレン、フルオロスチ
レン、ビニルビリンなどの芳香族モノビニル化合物、ア
クリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビ
ニル化合物,メチルアクリレート、エチルアクリレー
ト、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、オク
チルアクリレート、ドデシルアクリレート、ヘキサデシ
ルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2
−ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレ
ート、N,N′−ジメチルアミノエチルアクリレートな
どのアクリル酸エステルモノマー、メチルメタクリレー
ト、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、
イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、
sec−ブチルメタクリレート、アリルメタクリレー
ト、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレー
ト、2−エチルヘキシルメタクリレート、2−ヒドロキ
シエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、
N,N′−ジメチルアミノエチルメタクリレートなどの
メタクリル酸エステルモノマー、アクリル酸、メタクリ
ル酸、マレイン酸、イタコン酸などのモノマー、または
ジカルボン酸およびジカルボン酸の酸無水物、アクリル
アミド、メタクリルアミドなどのアミド系モノマーを使
用することができる。
【0018】上記化合物(A)としては、下記化1の構
造式を有するものが望ましく、R2 の炭素数が4以上の
ものは柔軟なセグメントを付与するのに好ましい。特に
好ましくは、化合物(A)が単一成分で重合体の構造を
とった際、そのガラス転移温度が本発明で使用するポリ
エステルのガラス転移温度以下であることが望ましく、
さらにはそのガラス転移温度が50℃以下、好ましくは
20℃以下、さらに好ましくは0℃以下であるものが望
ましい。具体的には、ブチルアクリレート、オクチルア
クリレート、ドデシルアクリレート、ヘキサデシルアク
リレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどのアク
リル酸エステルモノマー、ブチルメタクリレート、se
c−ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、
ヘキサデシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタ
クリレートなどのメタクリル酸エステルモノマーなどが
好ましく用いられる。
【0019】一方、硬い構造を付与するには、化合物
(A)が単一成分で重合体の構造をとった際、そのガラ
ス転移温度が0℃より大きいことが望ましく、好ましく
は20℃より大きいものが望ましい。スチレン、メチル
アクリレート、メチルメタクリレートなどが好ましく用
いられる。
【0020】
【化1】
【0021】化合物(B)の例としては、ジビニルベン
ゼン化合物、あるいはトリメチロールプロパントリアク
リレート、トリメチロールプロパントリメタクリレー
ト、あるいはエチレングリコールジアクリレート、エチ
レングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコ
ールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタク
リレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレー
ト、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、ト
リメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロー
ルプロパントリメタクリレートなどの多価アクリレート
およびメタクリレートが挙げられる。一般に硬い構造を
与えるには化合物(B)の量を多くし、柔らかい構造を
与えるには化合物(B)の量を少なくするのが好まし
い。化合物(B)のうち、特にジビニルビンゼン、エチ
レングルコールジメタクリレートまたはトリメチロール
プロパントリメタクリレートを用いることが好ましい。
【0022】これらの化合物(A)、(B)はそれぞれ
2種以上を混合して用いると、柔らかい部分と硬い部分
を有する粒子を製造する上で好ましい。さらに、化合物
(A)、(B)以外の成分を添加してもよく、耐熱性、
分散性を向上させるために微量の無機物で被覆、親和性
を向上させるための表面処理などを実施してもよい。本
発明の有機高分子微粒子の組成として好ましいものを例
示すると、ブチルアクリレート−ジビニルベンゼン共重
合体、オクチルアクリレート−ジビニルベンゼン共重合
体、2−エチルヘキシルアクリレート−ジビニルベンゼ
ン共重合体、2−エチルヘキシルアクリレート−エチレ
ングリコールジメタクリレート共重合体、ヘキシルメタ
クリレート−ジビニルベンゼン共重合体、2−エチルヘ
キシルメタクリレート−ジビニルベンゼン共重合体など
の架橋高分子微粒子が挙げられる。また、スチレン−ブ
チルアクリレート−ジビニルベンゼン共重合体、スチレ
ン−ヘキシルメタクリレート−ジビニルベンゼン共重合
体などのように3成分系で微粒子を製造してもよい。
【0023】これらの有機高分子微粒子の平均粒径は、
成形品の滑り性、表面にできる突起の高さを適正化する
うえで0.001〜6μm 、好ましくは0.005〜4
μm、さらに好ましくは0.010〜2μm であること
が望ましい。
【0024】また、フィルム中での粒径比が1.1〜
5.0であると滑り安定性、耐削れ性が良好になる。特
に粒径比が1.2〜4.0であると好ましい。この粒径
比は、フィルムに成形する前の段階で形成されていても
よいが、延伸によって生成した方が親和性を良好とする
ので好ましい。ここで、粒径比とは粒子の最大径と最小
径から算出される比のことである。
【0025】本発明におけるシリカ粒子は、例えば次の
ようにして作られる。まずpHが6以下の活性珪酸のコ
ロイド水溶液に、水溶性のカルシウム塩またはマグネシ
ウム塩を含有する水溶液を適量加え混合する。次に、ア
ルカリ金属水酸化物、水溶性有機塩基またはそれらの水
溶性珪酸塩を適量加え混合し、これらの混合物を60℃
以上で適当な時間加熱する。この時、活性珪酸の水スラ
リーに3価の金属塩を添加することが好ましい。このよ
うにして製造されたシリカ粒子は直鎖または分岐形状を
有しており、初期のpH、カルシウム塩またはマグネシ
ウム塩を含有する水溶液の添加量、アルカリ金属水酸化
物、水溶性有機塩基またはそれらの水溶性珪酸塩の添加
量、混合の仕方、加熱温度および時間によってその形状
をコントロールすることができる。添加されるカルシウ
ム塩またはマグネシウム塩は、コロイド水溶液中のSi
2 に対して重量比300ppm〜1500ppm が好まし
く、500ppm 〜1200ppmがより好ましい。
【0026】本発明における微細な直鎖または分岐の形
状を有するシリカ粒子の添加方法は特に限定されない
が、一般的には安定なゾル状態であるスラリーを添加す
るのが好ましい。
【0027】本発明ではポリエステル中での粒子の分散
性を良好にするためにスラリー中のイオウ原子化合物が
シリカ粒子を構成するSiO2 に対してSO3 換算で重
量比50ppm 以上3000ppm 以下存在することが分散
性の面で好ましい。さらには100ppm 以上2500pp
m 以下が好ましい。S原子は、例えば硫酸塩として粒子
製造時に添加される。
【0028】スラリーの安定性を得るには、スラリー中
のNa量がシリカ粒子を構成するSiO2 に対して、N
2 O換算で重量比1000ppm 以上20000ppm 以
下である方がよい。好ましくは2000ppm 以上700
0ppm 以下である方がよい。Naは、例えばアルカリ金
属水酸化物として粒子製造時に添加される。
【0029】また、本発明で使用されるシリカ粒子スラ
リーは、他の成分を含有していてもよく、微量の陽イオ
ン、陰イオンなどを含有していてもよい。
【0030】本発明の有機高分子微粒子の製造方法を、
架橋高分子微粒子の製造方法を例として説明すると、例
えば化合物(A)、(B)を混合し、以下のような乳化
重合により製造する方法がある。 (a)ソープフリー重合法、すなわち乳化剤を使用しな
いか、あるいは極めて少量の乳化剤を使用して重合する
方法。 (b)乳化重合に先だって重合系内へ重合体粒子を添加
しておいて乳化重合させるシード重合法。 (c)単量体成分に一部を乳化重合させ、その重合系内
で残りの単量体を重合させるコアーシェル重合法。 (d)特開昭54−97582号公報および特開昭54
−126288号公報に示されているユーゲルスタット
などによる重合法。 この時に、途中で同一または異なる化合物(A)、
(B)をさらに添加してもよく、例えば、ある程度の均
一な構造を持つ粒子が生成してから、それとは異なる構
造を付与するために化合物(A)または(B)の系内の
濃度を変更してもよい。
【0031】本発明では一般に安定なシリカ粒子スラリ
ーおよび有機高分子微粒子スラリーを使用するために、
ポリエステルへ含有せしめるための添加方法、添加時期
は、従来の方法、時期でもよい。添加法において、特に
該ポリエステルの合成原料であるグリコールのスラリー
にして添加する方法が好ましい。各スラリー濃度として
は、粒子重量%として0.5〜40重量%、さらに好ま
しくは1〜20重量%がポリエステル中での粒子分散性
がよくなり望ましい。添加時期は任意でよいが、モノマ
ー時、重合時あるいはその前後に添加してもよい。ま
た、粒子スラリーはポリマ製造後、ベルト式成形機で添
加、分散させてもよい。
【0032】また、本発明のポリエステル組成物中のシ
リカ粒子および有機高分子微粒子の含有量は、それぞれ
0.001〜20重量%が平坦性、滑り性の面で好まし
い。より好ましくは0.005〜10重量%、さらに好
ましくは0.01〜5重量%である。
【0033】本発明のポリエステル中の微細で直鎖また
は分岐した形状を有するシリカ粒子は、他の球状シリカ
粒子に比べてポリエステルから脱落しにくいだけでな
く、ポリエステルの表面を均一に補強する効果を有し、
ポリエステル表面の削れ性を低減する役割を有するもの
と考えられる。
【0034】一方、柔らかい部分と硬い部分を有する有
機高分子微粒子をポリエステル中に添加すると、粒子の
脱落が起こりにくいだけでなく、フィルムにしたときに
高く安定した突起が得られる。つまり、フィルムにした
際に平坦性、耐削れ性、滑り安定性、耐スクラッチ性に
優れたポリエステル組成物を得ることができる。
【0035】さらに、本発明のポリエステルにはポリエ
ステルの製造時に通常使用されるリチウム、ナトリウ
ム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、亜鉛、アン
チモン、ゲルマニウム、チタンなどの化合物の金属化合
物触媒、着色防止剤としてのリン化合物、その他公知の
粒子などを含有していてもよい。
【0036】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明す
る。なお、得られたポリエステル組成物の各特性値測定
は次の方法に従って行なった。
【0037】A.シリカ粒子の特性 (a)動的光散乱法による測定粒子径(D1 mμ) 米国 Coulter社製N4 を用いて測定した。
【0038】(b)窒素ガス吸着法による測定粒子径
(D2 mμ) 通常のBET法によって測定された比表面積S m2 /gの
値から、D2 =2720/Sの式によって与えられる換
算粒子径を測定した。
【0039】(c)電子顕微鏡観察に置ける粒子の太さ
(D3 mμ) 粒子含有ポリエステル組成物を超薄膜作成装置によって
0.3μm 前後の超薄切片にした後、透過型電子顕微鏡
を用いて一次粒子を観察し、粒子の太さを測長した。こ
こで、ポリエステル中での一次粒子とは、スラリーをメ
タノールと水の混合溶媒で希釈し、粒子を分散さして透
過型電子顕微鏡を用いて一次粒子を観察し、その粒子と
同様なポリエステル中の粒子のことを言う。
【0040】(d)イオウ原子含有化合物量 スラリーをイオンクロマト法で測定した。
【0041】(e)Na量およびCa量 スラリーをイオンクロマト法で測定した。
【0042】B.有機高分子微粒子の特性 (a)平均粒径 粒子を電子顕微鏡で写真撮影後、粒子の直径を個々につ
いて測定し、50体積%にあたる粒子等価球直径を求
め、平均粒径とした。
【0043】(b)粒径比 フィルムを切断し、長手方向の断面を観察し、各粒子の
最大径と最小径を測定し、その比を算出した。さらに相
加平均を求め、粒径比とした。
【0044】(c)粒子の構造 島津製作所(株)製の微小圧縮試験機(MCTM−20
1型)を使用して、負荷速度:0.0145gf/s、0〜
1gfまでの負荷を加えて変形量を測定し、力と変形量を
プロットしたカーブに図3に見られる不連続点が生じた
ときは、柔らかい部分と硬い部分を有するものとした。
【0045】以下、柔らかい部分と硬い部分を有する粒
子の構造を複合構造と呼び、それ以外を単一構造と呼
ぶ。
【0046】C.ポリマの極限粘度 o−クロロフェノールを溶媒として25℃にて測定し
た。
【0047】D.フィルム特性 (a)表面粗さ:Ra(μm ) 触針式表面粗さ計により測定値で示した(カットオフ値
0.25mm、測定長4mm。ただし、JIS B−060
1に従った。)。
【0048】(b)フィルムの滑り安定性 フィルムを1/2インチにスリットし、テープ走行性試
験機TBT−300型〔(株)横浜システム研究所製〕
を使用し、25℃、50%RH雰囲気で走行させ、初期
のμk0と100回走行させたときのμk100を下式より求
めた。なお、ガイド径は4mmφであり、ガイド材質はS
US27(表面粗度0.2S)、巻き付け角は180
°、走行速度は4.5cm/秒である。 μk =0.733log (T1 /T2 ) T1 :出側張力 T2 :入側張力 上記μk0とμk100の差が0.05以下であるものは滑り
性良好であり、0.03以下は特に良好である。
【0049】(c)耐削れ性 フィルムの耐削れ性は、以下のガイドロール汚れとカレ
ンダー汚れの両者の特性から判断し、両者ともに良好な
場合を合格とした。
【0050】(1)ガイドロール汚れ〔耐削れ性
(1)〕 フィルムを1/2インチにスリットし、テープ走行性試
験機TBT−300型〔(株)横浜システム研究所
製)〕を使用し、25℃、50%RH雰囲気で2000
回繰り返し走行させた後、ガイドロール表面に発生する
白粉量を目視にて判定する。ここで、ガイド径は6mmφ
であり、ガイド材質はSUS27(表面粗度0.2
S)、巻き付け角は180°、走行速度は6.0cm/ 秒
である。次のようにランク付けした。 1級:白粉の発生が非常に少ない。 2級:白粉の発生が少ない。 3級:白粉の発生がやや多い。 4級:白粉の発生が非常に多い。
【0051】(2)カレンダー汚れ〔耐削れ性(2)〕 磁性層を塗布したテープを小型テストカレンダー装置
(スチールロール、ナイロンロール、5段式、ナイロン
ロールがベースフィルム面に接する)で、温度:70
℃、線圧:200kg/cm でカレンダー処理する。上記処
理を延べ20000mにわたって続けた後、この処理に
よって発生したナイロンロールに付着した白粉を観察
し、次のランクづけを行なう。 1級:白粉がほとんど付着していない。 2級:わずかに白粉が付着するが、加工工程上、製品性
能上のトラブルに至らない。 3級:白粉の付着が多く、加工工程上、製品性能上のト
ラブルになり使用不可となった。
【0052】(d)耐スクラッチ性 フィルムを幅1/2インチのテープ状にスリットしたも
のをテープ走行性試験機を使用して、ガイドピン(表面
粗さ:Raで0.1μm )上を走行させる(走行速度
1,000m/分、走行回数20パス、巻き付け角60
°、走行張力65g)。このときフィルムに入った傷を
顕微鏡で観察し、幅2.5μm 以上の傷がテープ幅あた
り2本未満は1級、2本以上3本未満は2級、3本以上
10本未満は3級、10本以上は4級とした。
【0053】実施例1 まず、動的光散乱法による測定粒子径D1 が163 m
μ、BET法による測定粒子径D2 が46 mμ、透過型
電子顕微鏡観察による粒子の太さが50 mμの非晶性シ
リカ粒子5重量部、エチレングリコール95重量部、S
iO2 に対してSO3 換算で1700ppm のイオウ原子
化合物、SiO2 に対してNa2 O換算で6500ppm
のNa、SiO2 に対してCaO換算で930ppm のC
aからなる100重量部のシリカ粒子スラリーを調製し
た。
【0054】次に、複合構造を有する平均粒径1.0μ
m のスチレン(30重量%)−ブチルアクリレート(4
0重量%)−ジビニルベンゼン(30重量%)共重合体
粒子10重量部、エチレングリコール90重量部からな
る100重量部の有機高分子微粒子スラリーを調製し
た。
【0055】次に、ジメチルテレフタレート100重量
部とエチレングリコール62重量部および0.06重量
部の酢酸マグネシウムを加えてエステル交換反応を行な
い、0.05重量部のトリメチルホスフェートを添加
し、さきに調製したシリカ粒子スラリー6重量部、有機
粒子スラリー1重量部と0.03重量部の酸化アンチモ
ンを加え重縮合反応を行ない、[η]0.625のポリ
エチレンテレフタレート組成物を得た。ここで得られた
ポリエチレンテレフタレート組成物を290℃で溶融押
し出しし、未延伸フィルムを得た。さらに、これを90
℃で縦および横方向へそれぞれ3.6倍、3.3倍延伸
して220℃で10秒間加熱処理し、厚さ15μm のフ
ィルムを得た。このときの有機粒子の粒径比は1.8で
あった。フィルムは、Ra0.013μm 、μk0/μ
k100は0.33/0.34、耐削れ性(1)/(2)と
もに1級、耐スクラッチ性1級となった。有機高分子微
粒子のモノビニル化合物成分が単独で重合体の構造をと
った際、そのガラス転移温度が0℃以下のものと20℃
以上のものを併用して製造したこと、およびその粒子の
圧縮挙動における変曲点は約38%の所で発現したため
に滑り安定性、耐削れ性、耐スクラッチ性は特に良好で
あった。
【0056】実施例2〜8 シリカ粒子の動的光散乱法による測定粒子径D1 、D1
/D2 、粒子の太さ、スラリー濃度、ポリエステルに対
する添加量、イオウ原子化合物含有量、Na含有量、C
a含有量および有機粒子の組成、粒径、添加量を変更し
て、実施例1と同様な方法でポリエステル組成物ならび
に二軸延伸フィルムを得た。表1ないし表3に示すよう
に、本発明のポリエステル組成物は平坦性、滑り安定
性、耐削れ性、耐スクラッチ性をそれぞれ満足すること
ができた。実施例2はD1 /D2 が5以上であり、実施
例5は、有機粒子のモノビニル化合物成分が単独でポリ
マとなった際にガラス転移温度が0℃以下の化合物を組
み合わせたためにフィルム特性が悪化した。実施例6〜
8は、シリカ粒子スラリー中のイオウ量、Na量、Ca
量が不適であるためにフィルム特性が悪化した。実施例
4は、ブチルアクリレートとジビニルベンゼンの組成比
を粒子製造途中で変更(BA/DVB:40/60→7
0/30)したために良好な複合構造をもつ有機高分子
微粒子が得られ、フィルム特性も良好であった。
【0057】比較例1 シリカ粒子のみを使用した以外は、ポリエステル組成物
を実施例1と同様にして重合し、フィルムを得た。表4
に示すように滑り安定性が悪化し、カレンダー汚れが悪
化した。
【0058】比較例2〜5 粒子、粒径、粒子の太さ、粒子の構造を表4および表5
に示すとおりに変更して、実施例1と同様にしてポリエ
ステル組成物、フィルムを得たが、本発明の範囲外であ
るために満足したフィルム特性が得られなかった。な
お、表中で用いた略号は以下の化合物の略称である。
【0059】 2−EHA:2−エチルヘキシルアクリレート DVB:ジビニルベンゼン BA:ブチルアクリレート ST:スチレン EDMA:エチレングリコールジメタクリレート MMA:メチルメタクリレート OA:オクチルアクリレート
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
【表4】
【0064】
【表5】
【0065】
【発明の効果】本発明の熱可塑性ポリエステル組成物
は、微細で直鎖または分岐した形状を有するシリカ粒子
を含有してなり、成形品表面に形成される突起の幅が大
きく、他の接触物から受ける衝撃が小さいだけでなく、
粒子の形状効果により粒子が脱落しにくく、さらに表層
を広い面積にわたって補強する効果を有しているだけで
なく、柔らかい部分と硬い部分を有する有機高分子微粒
子を含有しているので走行性に優れるだけでなく、ポリ
エステルの親和性に優れ、外力を受けた際に粒子が脱落
しにくい。従って、従来無機粒子を添加したときに問題
となっていた粒子の脱落による白粉の発生、滑り性の悪
化を防止することができ、フィルム、繊維などの製造時
の工程汚染の防止や、特に磁気テープなどの製品として
の好適な使用を可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明におけるシリカ粒子のモデル図である。
【図2】本発明における有機高分子微粒子の圧縮挙動の
測定方法を示す概略縦断面図である。
【図3】粒子の圧縮挙動の概略図である。
【符号の説明】
1:直鎖状のシリカ粒子 2:分岐状のシリカ粒子 3:粒子太さ 11:下部加圧圧子 12:上部加圧圧子 13:微粒子 21:変曲点

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 動的光散乱法による測定粒子径(D1 m
    μ)と窒素ガス吸着法による測定粒子径(D2 mμ)の
    比D1 /D2 が2以上であって、D1 は60〜600 m
    μであり、電子顕微鏡観察において41〜100 mμの
    範囲の太さを持ち、直鎖または分岐の形状を有するシリ
    カ粒子および、柔らかい部分と硬い部分を有する有機高
    分子微粒子を含有してなる熱可塑性ポリエステル組成
    物。
  2. 【請求項2】 請求項1のポリエステル組成物からな
    り、かつ該有機高分子微粒子はフィルム中で粒径比が
    1.1〜5.0であることを特徴とする熱可塑性ポリエ
    ステルフィルム。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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