JPH0747649B2 - 二軸配向ポリエステルフイルム - Google Patents

二軸配向ポリエステルフイルム

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JPH0747649B2
JPH0747649B2 JP62281976A JP28197687A JPH0747649B2 JP H0747649 B2 JPH0747649 B2 JP H0747649B2 JP 62281976 A JP62281976 A JP 62281976A JP 28197687 A JP28197687 A JP 28197687A JP H0747649 B2 JPH0747649 B2 JP H0747649B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は二軸配向ポリエステルフイルムに関し、更に詳
しくは球状架橋アクリル微粒子と他の不活性微粒子を含
有し、平坦で滑り性及び耐削れ性に優れた二軸配向ポリ
エステルフイルムに関する。
ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル
は、その優れた物理的および化学的特性の故に、磁気テ
ープ用,写真用,コンデンサー用,包装用などのフイル
ムとして広く用いられている。これらフイルムにおいて
は、その滑り性および耐削れ性はフイルムの製造工程お
よび各用途における加工工程の作業性の良否、さらには
その製品品質の良否を左右する大きな要因となってい
る。特にポリエステルフイルム表面に磁性層塗布時にお
けるコーティングロールとフイルム表面との摩擦および
摩耗が極めて激しく、フイルム表面へのしわおよび擦り
傷が発生しやすい。また磁性層塗布後のフイルムをスリ
ットしてオーディオ,ビデオまたはコンピューター用テ
ープ等に加工した後でも、リールやカセット等からの引
き出し、巻き上げその他の操作の際に、多くのガイド
部,再生ヘッド等との間で摩耗が著しく生じ、擦り傷,
歪の発生、さらにはポリエステルフイルム表面の削れ等
による白粉状物質を析出させる結果、磁気記録信号の欠
落、即ちドロップアウトの大きな原因となることが多
い。
一般にフイルムの滑り性および耐削れ性の改良には、フ
イルム表面に凹凸を付与することによりガイドロール等
との間の接触面積を減少せしめる方法が採用されてお
り、大別して(i)フイルム原料に用いるポリエステル
の触媒残渣から不活性の粒子を析出せしめる方法と、
(ii)不活性の無機粒子を添加せしめる方法が用いられ
ている。これら原料ポリエステル中の微粒子は、その大
きさが大きい程、滑り性の改良効果が大であるのが一般
的であるが、磁気テープ、特にビデオ用のごとき精密用
途には、その粒子が大きいこと自体がドロップアウト等
の欠点発生の原因ともなり得るため、フイルム表面の凹
凸は出来るだけ微細である必要があり、相反する特性を
同時に満足すべき要求がなされているのが現状である。
従来、フイルムの易滑性を向上させる方法として、フイ
ルム基質であるポリエステルに酸化ケイ素,二酸化チタ
ン,炭酸カルシウム,タルク,クレイ,焼成カオリン等
の無機質粒子を添加する方法(例えば特開昭54−57562
号公報参照)又はポリエステルを製造する重合系内で、
カルシウム,リチウムあるいはリンを含む微粒子を析出
せしめる方法が提案されている(特公昭52−32914号公
報参照)。フイルム化した際、ポリエステルに不活性の
上記微粒子はフイルム表面に突起を生成し、この突起は
フイルムの滑り性を向上させる。
しかしながら、微粒子による突起によって、フイルムの
滑り性を改善する方法は、突起が一方ではフイルム表面
の平坦性を阻害することとなる本質的な問題点を孕んで
いる。
これらの相反する平坦性と易滑性とを解決せんとする試
みとして、比較的大粒径の微粒子と比較的小粒径の微粒
子との複合微粒子系を利用する手段が提案されている。
米国特許第3,821,156号明細書は0.5〜30μmの炭酸カル
シウム微粒子0.02〜0.1重量%と0.01〜1.0μmのシリカ
又は水和アルミナシリケート0.01〜0.5重量%との組合
せを開示している。
米国特許第3,884,870号明細書は約0.5〜30μmの炭酸カ
ルシウム,焼成ケイ酸アルミニウム,水和ケイ酸アルミ
ニウム,ケイ酸マグネシウム,ケイ酸カルシウム,リン
酸カルシウム,シリカ,アルミナ,硫酸バリウム,マイ
カ,ケイソウ土等の不活性微粒子約0.002〜0.018重量%
を、約0.01〜約1.0μmのシリカ,炭酸カルシウム,焼
成ケイ酸カルシウム,水和ケイ酸カルシウム,リン酸カ
ルシウム,アルミナ,硫酸バリウム,硫酸マグネシウ
ム,ケイソウ土等の不活性微粒子約0.3〜2.5重量%との
併用を開示している。
米国特許第3,980,611号明細書は粒径1.0μm以下、1〜
2.5μmおよび2.5μm以上の3種の粒径グレードのリン
酸カルシウム微粒子を組合せて全量5000ppm以下でポリ
エステルに添加することを開示している。
特公昭55−41648号公報(特開昭53−71154号公報)は1.
2〜2.5μmの微粒子0.22〜1.0重量%と1.8〜10μmの微
粒子0.003〜0.25重量%との組合せであって、該微粒子
が周期律表の第II,IIIおよびIV族の元素の酸化物又は無
機塩であることを提案している。
特公昭55−40929号公報(特開昭52−11908号公報)は、
3〜6μmの不活性無機微粒子0.01〜0.08重量%と1〜
2.5μmの不活性無機微粒子0.08〜0.3重量%との組合せ
であって、粒径の異なるこれらの微粒子の全量が0.1〜
0.4重量%であり且つ小さい粒径の微粒子に対する大き
い粒径の微粒子の割合が0.1〜0.7である混合粒子を開示
している。
特開昭52−78953号公報は10〜1,000μmの不活性粒子0.
01〜0.5重量%と0.5〜15μmの炭酸カルシウム0.11〜0.
5重量%とを含有する二軸配向ポリエステルフイルムを
開示している。特開昭52−78953号公報には10〜1000mμ
の不活性粒子として炭酸カルシウム以外の種々の無機質
物質が一般記載の中に列記されている。しかしながら、
この公報には通常10〜1000mμの微粒子として入手でき
るシリカあるいはクレーを無機質物質として用いた具体
例が開示されているにすぎない。
[発明の目的] 本発明の目的は表面平坦性,易滑性及び耐削れ性に極め
て優れた二軸配向ポリエステルフイルムを提供すること
にある。
本発明の他の目的は、フイルム表面に球状架橋アクリル
微粒子と他の不活性微粒子に由来する多数の微細な突起
を有し且つ表面平坦性,易滑性及び耐削れ性に極めて優
れた二軸配向ポリエステルフイルムを提供することにあ
る。
本発明のさらに他の目的及び利点は以下の説明から明ら
かとなろう。
[発明の構成,効果] 本発明によれば、本発明の上記目的及び利点は第1に、 (I)芳香族ポリエステル、 (II)(a)最大径と最小径の比で定義される粒径比が
1.0〜1.2であり、 (b)二軸配向処理で変形しない硬度を有し、そして (c)0.01〜4μmの平均粒径を有する 球状架橋アクリル微粒子0.005〜4重量%(芳香族ポリ
エステルに対し)、及び (III)0.01〜4μmの平均粒径を有する他の不活性微
粒子0.005〜4重量%(芳香族ポリエステルに対し) から成る緊密な混合物から形成された、フイルム表面の
突起の周りにくぼみのない二軸配向ポリエステルフイル
ムによって達成される。
ここで、球状架橋アクリル微粒子の最大径(長径),最
小径(短径),面積円相当径は粒子表面に金薄膜層を蒸
着したのち、捜査型電子顕微鏡にて例えば1万〜3万倍
に拡大した像から求め、平均粒型,粒径比を次式で求め
る。
平均粒径=測定粒子の面積円相当径の総和/測定粒子数 粒径比=測定粒子の平均長径/該粒子の平均短径 本発明における芳香族ポリエステルとは芳香族ジカルボ
ン酸を主たる酸成分とし、脂肪族グリコールを主たるグ
リコール成分とするポリエステルである。かかるポリエ
ステルは実質的に線状であり、そしてフイルム形成性特
に溶触成形によるフイルム形成性を有する。芳香族ジカ
ルボン酸とは、例えばテレフタル酸,ナフタレンジカル
ボン酸,イソフタル酸,ジフェノキシエタンジカルボン
酸,ジフェニルジカルボン酸,ジフェニルエーテルジカ
ルボン酸,ジフェニルスルホンジカルボン酸,ジフェニ
ルケトンジカルボン酸,アンスラセンジカルボン酸等で
ある。脂肪族グリコールとは、例えばエチレングリコー
ル,トリメチレングリコール,テトラメチレングリコー
ル,ペンタメチレングリコール,ヘキサメチレングコー
ル,デカメチレングリコール等の如き炭素数2〜10のア
ルキレングリコール、あるいはシクロヘキサンジメタノ
ールの如き脂環族ジオール等である。
本発明において、ポリエステルとしては例えばアルキレ
ンテレフタレート及び/又はアルキレンナフタレートを
主たる構成成分とするものが好ましく用いられる。
かかるポリエステルのうちでも、例えばポリエチレンテ
レフタレート,ポリエチレンナフタレートはもちろんの
こと、例えば全ジカルボン酸成分の80モル%がテレフタ
ル酸及び/又はナフタレンジカルボン酸であり、全グリ
コール成分の80モル%以上がエチレングリコールである
共重合体が特に好ましい。
その際、全酸成分の20モル%以下のジカルボン酸はテレ
フタル酸及び/又はナフタレンジカルボン酸以外の上記
芳香族ジカルボン酸であることができ、また例えばアジ
ピン酸,セバチン酸等の如き脂肪族ジカルボン酸;シク
ロヘキサン−1,4−ジカルボン酸の如き脂環族ジカルボ
ン酸等であることができる。また、全グリコール成分の
20モル%以下はエチレングリコール以外の上記グリコー
ルであることができ、あるいは例えばハイドロキノン,
レゾルシン,2,2′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プ
ロパン等の如き芳香族ジオール;1,4−ジヒドロキシメチ
ルベンゼンの如き芳香環を有する脂肪族ジオール;ポリ
エチレングリコール,ポリプロピレングリコール,ポリ
テトラメチレングリコール等の如きポリアルキレングリ
コール(ポリオキシアルキレングコール)等であること
もできる。
また、本発明における芳香族ポリエステルには、例えば
ヒドロキシ安息香酸の如き芳香族オキシ酸;ω−ヒドロ
キシカプロン酸の如き脂肪族オキシ酸等のオキシカルボ
ン酸に由来する成分を、ジカルボン酸成分およびオキシ
カルボン酸成分の総量に対し20モル%以下で含有するも
のも包含される。さらに、本発明における芳香族ポリエ
ステルには実質的に線状である範囲の量、例えば全酸成
分に対し2モル%以下の量で、3官能以上のポリカルボ
ン酸又はポリヒドロキシ化合物、例えばトリメリット
酸,ペンタエリストール等を共重合したものをも包含さ
れる。
上記芳香族ポリエステルは、それ自体公知であり、且つ
それ自体公知の方法で製造することができる。
上記芳香族ポリエステルとしては、o−クロロフェノー
ル中の溶液として35℃で測定して求めた固有粘度が約0.
4〜約1.0のものが好ましい。
本発明の二軸配向ポリエステルフイルムはそのフイルム
表面に多数の微細な突起を有している。
それらの多数の微細な突起は本発明によれば芳香族ポリ
エステル中に分散して含有される多数の球状架橋アクリ
ル微粒子及び他の不活性微粒子に由来する。
第1成分としての球状架橋アクリル微粒子及び第2成分
としての他の不活性微粒子を分散含有する芳香族ポリエ
ステルは、通常芳香族ポリエステルを形成するための反
応時、例えばエステル交換法による場合のエステル交換
反応中あるいは重縮合反応中の任意の時期、また直接重
合法による場合の任意の時期に、球状架橋アクリル微粒
子(好ましくはグリコール中のスラリーとして)及び他
の不活性微粒子(好ましくはグリコール中のスラリーと
して)を反応系中に添加することにより製造することが
できる。好ましくは、重縮合反応の初期例えば固有粘度
が約0.3に至るまでの間に、球状架橋アクリル微粒子及
び他の不活性微粒子を反応系中に添加するのが好まし
い。
本発明において芳香族ポリエステル中に分散含有させる
第1成分としての球状架橋アクリル微粒子は平均粒径が
0.001〜4μmであり、そして粒径比(最大径/最小
径)が1.0〜1.2である架橋アクリル微粒子である。この
球状架橋アクリル微粒子は個々の形状が極めて真球に近
い球状であって、狭い粘度分布,芳香族ポリエステルに
対する良好な親和性を示す点に特徴がある。
球状架橋アクリル微粒子の平均粒径は、0.01〜4μm、
好ましくは0.05〜2μmである。この平均粒径が0.01μ
m未満では、滑り性や耐削れ性の向上効果が不充分であ
り、好ましくない。また、平均粒径が4μmを超える
と、フイルム表面が粗れすぎて好ましくない。また球状
架橋アクリル微粒子の粒径比は1.0〜1.2、好ましくは1.
0〜1.1、更に好ましくは1.0〜1.05である。
また球状架橋アクリル微粒子は粘度分布がシャープであ
ることが好ましく、分布の急峻度を表わす相対標準偏差
が0.5以下、更に好ましくは0.4以下、特に0.12以下であ
ることが好ましい。
この相対標準偏差は次式で表わされる。
ここで、Di:個々の粒子の面積円相当径(μm) :面積円相当径の平均値 n:粒子の測定個数 を表わす。
相対標準偏差が0.5以下の球状架橋アクリル微粒子を用
いると、該粒子が球状で且つ粘度分布が極めて急峻であ
ることから、フイルム表面突起の高さが極めて均一とな
る。更にフイルム表面の個々の突起は、滑剤周辺のボイ
ドが小さいために突起形状が非常にシャープであり、従
って同じ突起の数であっても滑り性が極めて良好とな
る。
球状架橋アクリル微粒子は、上述の条件を満たせば、そ
の製法,その他の何ら限定されるものではない。
例えば、球状架橋アクリル微粒子は、(メタ)クリル酸
エステル(例えばメチルメタクリレート,ブチルアクリ
レート等)の様な不飽和非イオン性モノマー,マレイン
酸ジアルキルエステルの様な不飽和ジカルボン酸エステ
ル、スチレンの様な不飽和ビニル化合物、アクリロニト
リルの様な不飽和ニトリル、不飽和カルボン酸の様な官
能性モノマー,ヒドロキシエチルメタクリレートの様な
ヒドロキシルを有するモノマー,グリシジルメタクリレ
ートの様なエポキシド基を有するモノマー、不飽和スル
ホン酸等から選ばれる1種もしくは2種以上のモノマー
と、重合体粒子を三次元構造にするための架橋剤とし
て、多官能ビニル化合物、例えばジビニルベンゼン、エ
チレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプ
ロパントリアクレート,ジアリルフタレート等とを、水
溶性高分子が保護コロイドとして溶存した水性媒体中で
乳化重合させて重合体粒子のエマルジョンを調整し、こ
のエマルジョンから重合体粒子を回収して乾燥し、しか
る後これをジェットミルにて解砕し、次いで分級するこ
とによって得られる。
本発明で用いる球状架橋アクリル微粒子は、二軸配向処
理で変形しない硬度を有し、ポリエステルの重合時に溶
解又は溶融することはなく、かつフイルム成形時のポリ
マーを溶融させる際に溶融することはない。
球状架橋アクリル微粒子の添加量は、芳香族ポリエステ
ルに対して0.005〜4重量%とする必要があり、好まし
くは0.01〜2重量%、更に好ましくは0.05〜1重量%で
ある。添加量が0.005重量%未満では、滑り性や耐削れ
性の向上効果が不充分となり、一方4重量%を越えると
表面平坦性が低下し、好ましくない。
本発明における第2成分としての他の不活性微粒子は、
前記球状架橋アクリル微粒子と異なる組成,形状のもの
であって、平均粒径が0.01〜4μmであれば特に限定さ
れない。この他の不活性微粒子としては、カオリン,ベ
ントナイト,酸化チタン,炭酸カルシウム,多孔質シリ
カ等を例示することができる。これらは1種または2種
以上を用いることができる。かかる他の不活性微粒子の
平均粒径は0.05〜2μm、更には0.1〜1.0μmであるこ
とが好ましい。所定の平均粒径の粒子を得るためには従
来から知られている粒子調製法を用いることができ、例
えば粉砕処理,分級操作等を施して所定の平均粒径,粒
度分布にすることが好ましい。
本発明において第2成分としての不活性微粒子の含有量
は、芳香族ポリエステルに対して0.005〜4重量%の割
合とする必要があり、好ましくは0.01〜2重量%、更に
好ましくは0.05〜1重量%である。この含有量が4重量
%を越えると表面平坦性が低下し、好ましくない。
本発明の二軸配向ポリエステルフイルムは従来から蓄積
された二軸配向フイルムの製造法に準じて製造できる。
例えば、球状架橋アクリル微粒子及び他の不活性微粒子
を含有する芳香族ポリエステルを溶融製膜して非晶質の
未延伸フイルムとし、次いで該未延伸フイルムを二軸方
向に延伸し、熱固定し、必要であれば弛緩熱処理するこ
とによって製造できる。その際、フイルム表面特性は、
球状架橋アクリル微粒子及び不活性微粒子の粒径,量等
によって、また延伸条件によって変化するので従来の延
伸条件から適宜選択する。また密度,熱収縮率等も延
伸,熱処理時の温度,倍率,速度等によって変化するの
で、これらの特性を同時に満足する条件を定める。例え
ば、延伸温度は1段目延伸温度(例えば縦方向延伸温
度:T1)が(Tg−10)〜(Tg+45)℃の範囲(但し、Tg:
ポリエステルのガラス転移温度)から、2段目延伸温度
(例えば横方向延伸温度:T2)が(T1+15)〜(T1+4
0)℃の範囲から選択するとよい。また、延伸倍率は一
軸方向の延伸倍率が2.5以上、特に3倍以上でかつ面積
倍率が8倍以上、特に10倍以上となる範囲から選択する
とよい。更にまた、熱固定温度は180〜250℃、更には20
0〜230℃の範囲から選択するとよい。スイルムの厚みは
1〜100μが好ましい。
本発明における二軸配向ポリエステルフイルムは従来の
ものに比してボイドが極めて小さいフイルムであるが、
このボイドが小さい理由は、球状架橋アクリル微粒子の
ポリエステルへの親和性の良さと、更に粒子そのものが
極めて真球に近いことから、延伸において粒子周辺の応
力が均等に伝播し、ポリエステルと滑剤の界面の一部に
応力が集中しないことによると推測される。
本発明の二軸配向ポリエステルフイルムは、均一な凹凸
表面特性、すぐれた滑り性及び耐削れ性を有し、きりき
ず,白粉等の発生量が著しく少ないという特徴を有す
る。この二軸配向ポリエステルフイルムはこれらの特性
を活かして各種の用途に広く用いることができる。例え
ば、磁気記録用例えばビデオ用,オーディオ用,コンピ
ューター用などのベースフイルムとして用いると、優れ
た電磁変換特性,滑り性,走行耐久性等が得られる。ま
たコンデンサー用途に用いると、低い摩擦係数,優れた
巻回性,低いつぶれ荷重,高い透明性等が得られる。上
述のように、この二軸配向ポリエステルフイルムは磁気
記録媒体のベースフイルム、特に磁気テープのベースフ
イルムに用いるのが好ましいが、これに限定されるもの
でなく、電気用途,包装用途および蒸着用フイルム等の
他の分野へも広く適用することが出来る。
[実施例] 以下、実施例を掲げて本発明を更に説明する。なお本発
明における種々の物性値および特性は以下の如く測定さ
れたものである。
(1)粒子の粒径等 (1−1)架橋アクリル微粒子の場合 粒子粒径の測定には次の状態がある。
1)架橋アクリル粉体から、平均粒径,粒径比等を求め
る場合。
2)フイルム中の架橋アクリル微粒子の平均粒径,粒径
比等を求める場合。
1)架橋アクリル粉体からの場合: 電顕試料台上に架橋アクリル粉体を個々の粒子ができる
だけ重ならないように散在せしめ、金スパッター装置に
よりこの表面に金薄膜蒸着層を厚み200Å〜300Åで形成
せしめ、走査型電子顕微鏡にて10000〜30000倍で観察
し、日本レギュレーター(株)製ルーゼックス500に
て、少くとも100個の粒子の長径(Dli),短径(Dsi)
及び面積円相当径(Di)を求める。そして、これらの次
式で表わされる数平均値をもって、架橋アクリル粒子の
長径(Dl),短径(Ds),平均粒径()を表わす。
2)フイルム中の架橋アクリル微粒子の場合: 試料フイルム小片を走査型電子顕微鏡用試料台に固定
し、日本電子(株)製スパッターリング装置(JFC−110
0型イオンスパッターリング装置)を用いてフイルム表
面に下記条件にてイオンエッチング処理し、約10-3Torr
の真空状態まで真空度を上げ、電圧0.25KV,電流12.5mA
にて約10分間イオンエッチングを実施する。更に同装置
にてフイルム表面に金スパッターを施し、走査型電子顕
微鏡にて10000〜30000倍で観察し、日本レギュレーター
(株)製ルーゼックス500にて少くとも100個の粒子の長
径(Dli),短径(Dsi)及び面積円相当径(Di)を求め
る。以下、上記1)と同様に行なう。
(1−2)架橋アクリル微粒子以外の不活性微粒子の場
合 1) 粒子の平均粒径(DP) 島津製作所製CP−50型セントリフュグル パーティクル
サイズ アナライザー(Centrifugal Particle Size
Analyser)を用いて測定する。得られる遠心沈降曲線を
基に算出した各粒径の粒子とその存在量との積算曲線か
ら、50マスパーセントに相当する粒径を読み取り、この
値を上記平均粒径とする(Book「粒度測定技術」日刊工
業新聞社発行,1975年,頁242〜247参照)。
2) 粒径比 フイルム小片をエポキシ樹脂にて固定成形し、ミクロト
ームにて約600Åの厚みの超薄切片(フイルムの流れ方
向に平行に切断する)を作成する。この試料を透過型電
子顕微鏡(日立製作所製:H−800型)にてフイルム中の
滑剤の断面形状を観察し、滑剤の長径と短径の比で表わ
す。
3) 相対標準偏差 1)項の積算曲線より差分粒度分布を求め、次の相対標
準偏差の定義式にもとづいて相対標準偏差を算出する。
ここでDi;1)項で求めた各々の粒径 ;1)項で求めた平均径 n;1)項での積算曲線を求めたときの分割数 φi;各粒径の粒子の存在確率(マスパーセント) を表わす。
(2)フイルム表面粗さ(Ra) 中心線平均粗さ(Ra)としてJIS−B0601で定義される値
であり、本発明では(株)小坂研究所の触針式表面粗さ
計(SURFCORDER SE−30C)を用いて測定する。測定条件
等は次の通りである。
(a)触針先端半径:2μm (b)測定圧力:30mg (c)カットオフ:0.25mm (d)測定長:2.5mm (e)データーのまとめ方 同一試料について5回繰返し測定し、最も大きい値を1
つ除き、残り4つのデーターの平均値の小数点以下4桁
目を四捨五入し、小数点以下3桁目まで表示する。
(3)ボイド比 上記(1−1)−2)の方法に従ってフイルム中(表
面)の滑剤周辺を暴露し、少くとも50個の固体微粒子の
長径とボイドの長径を測定し、次式 で求めるボイド比の数平均値で表わす。
(4)フイルムの摩擦係数(μk) 温度20℃,湿度60%の環境で、幅1/2インチに裁断した
フイルムを固定棒(表面粗さ0.3μm)に角度θ=(152
/180)πラジアン(152゜)で接触させて毎分200cmの速
さで移動(摩擦)させる。入り口テンションT1が35gと
なるようにテンションコントローラーを調整した時の出
口テンション(T2:g)をフイルムが90m走行したのちに
出口テンション検出機で検出し、次式で走行摩擦係数μ
kを算出する。
μk=(2.303/θ)log(T2/T1) =0.868log(T2/35) (5)削れ性 フイルムの走行面の削れ性を5段のミニスーパーカレン
ダーを使用して評価する。カレンダーはナイロンロール
とスチールロールの5段カレンダーであり、処理温度は
80℃、フイルムにかかる線圧は200Kg/cm,フイルムスピ
ードは50m/分で走行させる。走行フイルムを全長2000m
走行させた時点で、カレンダーのトップローラーに付着
する汚れでベースフイルムの削れ性を評価する。
<4段階判定> ◎ ナイロンロールの汚れ全くなし ○ ナイロンロールの汚れほとんどなし × ナイロンロールが汚れる ×× ナイロンロールがひどく汚れる (6)ヘーズ(曇り度) JIS−K674に準じ、日本精密光学社製、積分球式HTRメー
ターによりフイルムのヘーズを求める。
比較例1 ジメチルテレフタレートとエチレングリコールを、酢酸
マンガン(エステル交換触媒),三酸化アンチモン(重
合触媒),亜燐酸(安定剤)および平均粒径1.2μ,粒
径比10のカオリンの存在下、エステル交換および重縮合
を行ない、固有粘度([η];オルソクロロフェノー
ル,35℃)0.65のポリエチレンテレフタレートを得た。
なお、上記滑剤はエチレングリコールに添加し、超音波
分散処理して得られたグリコール分散液として添加し
た。
このポリエチレンテレフタレートのペレットを170℃で
乾燥し、280℃で溶融押出し、40℃に保持したキャステ
ィングドラム上で急冷固化せしめて厚さ200μmの未延
伸フイルムを得た。
このようにして得られた未延伸フイルムを75℃にて予熱
し、更に低速,高速のロール間で15mm上方より900℃の
表面温度のIRヒーター1本にて加熱して3,6倍に延伸
し、急冷し、続いてステンターに供給し105℃にて横方
向に3.7倍に延伸した。得られた二軸延伸フイルムを205
℃の温度で5秒間熱固定し、厚み15μmの熱固定二軸配
向フイルムを得た。
得られたフイルムは、カレンダーでの白粉発生量は少な
いものの、走行抵抗が高く不満足なものであった。この
フイルムの特性を第1表に示す。
比較例2 カオリンの代りに平均粒径0.8μm,粒径比0.5の炭酸カル
シウムを用いる以外は比較例1と同様にして、ポリエチ
レンテレフタレートのペレットを得た。
このペレットを用いて、比較例1と同様にして厚み15μ
mの二軸延伸フイルムを得た。このフイルムはボイド比
2.5であり、走行性は良いものの、カレンダー工程にて
白粉が発生し、不満足なものであった。このフイルムの
特性を第1表に示す。
比較例3〜6 カオリンの代りに第1表に示す粒子を用いる以外は比較
例1と同様に行なってポリエチレンテレフタレートのペ
レットを得た。
このペレットを用いる以外は比較例1と同様に行なっ
て、厚み15μmの熱固定二軸配向フイルムを得た。この
フイルムの特性は第1表に示す。
いずれのフイルムも、削れ性もしくは走行性に劣り、不
満足なものであった。
実施例1 カオリンの代りに第1表に記載の球状架橋アクリル微粒
子及び不活性粒子を用いる以外は比較例1と同様に行な
ってポリエチレンテレフタレートのペレットを得た。該
ペレットを用いる以外は比較例1と同様に行なって、厚
み15μmの熱固定二軸配向フイルムを得た。このフイル
ムの特性を第1表に示す。
このフイルムは、球状架橋アクリル微粒子の添加により
走行抵抗が小さくなり且つ該粒子の良好なる親和性に起
因してカレンダーでの白粉発生量も少なく、満足出来る
ものであった。
実施例2〜5 カオリンの代りに第1表に記載の球状架橋アクリル微粒
子及び不活性粒子を用いる以外は比較例1と同様に行な
ってポリエチレンテレフタレートのペレットを得た。該
ペレットを用いる以外は比較例1と同様に行なって、厚
み15μmの熱固定二軸配向フイルムを得た。このフイル
ムの特性を第1表に示す。
これらのフイルムは、いずれも走行抵抗が低く且つカレ
ンダーによる白粉の発生量も少なく満足出来るものであ
った。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C08L 67:00 (72)発明者 加藤 秀雄 神奈川県相模原市小山3丁目37番19号 帝 人株式会社プラスチック研究所内 (56)参考文献 特開 昭61−217229(JP,A)

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(I)芳香族ポリエステル、 (II)(a)最大径と最小径の比で定義される粒径比が
    1.0〜1.2であり、 (b)二軸配向処理で変形しない硬度を有し、そして (c)0.01〜4μmの平均粒径を有する 球状架橋アクリル微粒子0.005〜4重量%(芳香族ポリ
    エステルに対し)、及び (III)0.01〜4μmの平均粒径を有する他の不活性微
    粒子0.005〜4重量%(芳香族ポリエステルに対し) から成る緊密な混合物から形成された、フイルム表面の
    突起の周りにくぼみのない二軸配向ポリエステルフイル
    ム。
  2. 【請求項2】球状架橋アクリル微粒子の下記式で表わさ
    れる相対標準偏差が0.5以下である特許請求の範囲第1
    項記載の二軸配向ポリエステルフイルム。 ここで、 Di:個々の粒子の面積円相当径(μm) :粒子の面積円相当径の平均値 n:粒子の個数 である。
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