JPH0586085A - 新規化合物トラキスプ酸 - Google Patents

新規化合物トラキスプ酸

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JPH0586085A
JPH0586085A JP3249341A JP24934191A JPH0586085A JP H0586085 A JPH0586085 A JP H0586085A JP 3249341 A JP3249341 A JP 3249341A JP 24934191 A JP24934191 A JP 24934191A JP H0586085 A JPH0586085 A JP H0586085A
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acid
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methanol
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magnetic resonance
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JP3249341A
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English (en)
Inventor
Hideyuki Shiozawa
秀幸 塩澤
Toshio Takatsu
敏夫 高津
Hideji Takahashi
秀次 高橋
Masaaki Takahashi
正明 高橋
Kazuhiko Tanzawa
和比古 丹沢
Takeshi Hosoya
剛 細矢
Kohei Furuya
航平 古谷
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Sankyo Co Ltd
Original Assignee
Sankyo Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【構成】下記の理化学的性状を有するトラキスプ酸。 1)物質の性状:酸性脂溶性白色粉末 2)分子式:C20289 3)分子量: 412(FAB −MS法により測定) 4)元素分析値:(%) 実測値 C 56.21 、 H 7.18 計算値 C 58.25 、 H 6.79 5)赤外線吸収スペクトル:νmax cm-1 臭化カリウム(KBr )錠剤法で測定した赤外線吸収スペ
クトルは、次に示す通りである。 3083、2956、2926、2855、2640、1723、1607、1401、12
05、1138、1074、1058 【効果】ヘパラナ−ゼ阻害活性を示し、癌転移抑制剤と
しての用途に有用。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はヘパラナーゼに対する阻
害活性作用を有する新規化合物トラキスプ酸(trachysp
ic acid )およびその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、タラロマイセス トラキスペルマ
スの代謝物として、界面活性剤の性質を持つデシルクエ
ン酸(decylcitric acid)(S.Gatenbeck ら、Acta Che
m. Scand. 、22巻、2613頁(1968年))、スピクリスポ
ル酸(spiculisporic acid)(P.W.Clutterbuck ら、Tr
ans. Roy. Soc. London 、Ser.B 、220 巻、301 頁(19
31年))が報告されている。しかしながら、その詳しい
作用は知られていない。ヘパラナーゼは、基底膜の主要
構成成分の一つであるヘパラン硫酸を分解する酵素であ
る。ヘパラナーゼは癌が生育する際の血管新生、癌の浸
潤および転移に関与することが報告されている(M.Naka
jimaら、J. Cellular Biochem.、36巻、157 頁(1988
年))。従って、ヘパラナーゼ阻害剤は癌転移の予防・
治療に有用と思われる。
【0003】そして、ヘパラナーゼ阻害作用を示す物質
としてはヘパリンとその誘導体(T.Irimura ら、Bioche
mistory 、25巻、5322頁(1986年))、キチンの硫酸化
誘導体(I.Saiki ら、Cancer Res. 、50巻、3631頁(19
90年))、およびsuramin (M.Nakajimaら、J. Biol. C
hem.、266 巻、9661頁(1991年))が知られている。こ
れらの化合物は、主にマウスを用いた癌転移モデルにお
いて癌細胞の浸潤あるいは転移を抑制する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、鹿児島
県名瀬市の土壌より分離したタラロマイセス(Talaromy
ces )属に属する SANK12191 株の培養物から、ヘパラ
ナーゼ阻害活性を有する新規化合物トラキスプ酸が生産
されることを見出して本発明を完成した。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明のトラキスプ酸は
下記の理化学的性状を有する。 1)物質の性状:酸性脂溶性白色粉末 2)分子式:C20289 3)分子量: 412(FAB −MS法により測定) 4)高分解能質量分析:メタニトロベンジルアルコール
をマトリックスとして測定した高分解能陰イオンマス
は、次に示す通りである。
【0006】実測値 411.16505 計算値 411.16551 5)元素分析値:(%) 実測値 C 56.21 、 H 7.18 計算値 C 58.25 、 H 6.79 6)比旋光度:[α]D 25 +3.1 °(c 1.0 、メタ
ノール) 7)紫外線吸収スペクトル:λmax nm(ε) メタノール中および酸性メタノール中で測定した紫外線
吸収スペクトルは、次に示す通りである。
【0007】202 (1100)、280 (2600) アルカリ性メタノール中で測定した紫外線吸収スペクト
ルは、次に示す通りである。
【0008】205 (5000)、284 (1900) 8)赤外線吸収スペクトル:νmax cm-1 臭化カリウム(KBr )錠剤法で測定した赤外線吸収スペ
クトルは、次に示す通りである。
【0009】3083、2956、2926、2855、2640、1723、16
07、1401、1205、1138、1074、1058 9) 1H−核磁気共鳴スペクトル:(δ:ppm ) 重アセトン中、内部基準にテトラメチルシランを使用し
て測定した核磁気共鳴スペクトル(360 MHz)は、次に
示す通りである。
【0010】0.88(3 H ,t , J=6.8 Hz )、1.29
(12 H ,m )、1.48(2 H ,m )、2.12(2 H ,t ,
J=7.6 Hz )、2.46(1 H ,dd, J=7.3 および 13.
4 Hz)、2.61(1 H ,t )、2.99(1 H ,d , J=16.9
Hz )、3.14(1 H ,d , J=16.9 Hz )、3.88(1 H
,dd, J=7.3 および 12.6 Hz)、8.24(1 H ,s ) 10)13C−核磁気共鳴スペクトル:(δ:ppm ) 重ジメチルスルホキシド中、内部基準にテトラメチルシ
ランを使用して測定した核磁気共鳴スペクトル(90 MH
z)は、次に示す通りである。 13.8(q )、20.4(t )、22.0(t )、27.4(t )、2
8.5(t )、28.6(t )、28.8(t )、31.2(t )、37.
4(t )、38.7(t )、48.4(d )、86.5(s )、108.0
(s )、116.7 (s )、170.0 (s )、170.5 (s
)、171.2 (s )、174.3 (d )、198.1(s ) 11)溶解性:メタノール、エタノール、ブタノール等
のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、クロ
ロホルム、ジクロロメタン、酢酸エチル、ジメチルスル
ホキシド、ジメチルホルムアミド、中性およびアルカリ
性の水に可溶、酸性の水に不溶。
【0011】12)呈色反応:硫酸、ヨードに陽性。
【0012】13)薄層クロマトグラフィー: Rf値; 0.59 吸着剤;シリカゲルプレート Art.5715(メルク社製) 展開溶剤; 1−ブタノール:酢酸:水=4 :2 :1 14)高速液体クロマトグラフィー: 分離カラム;センシューパック ODS H −2151(カラム
サイズ、φ6 ×150 mm、センシュー科学(株)製) 溶媒; 55 %アセトニトリル−0.1 %トリフルオロ酢酸
−水 流速; 1.5 ml /分 波長; 210 nm および 280 nm 保持時間; 7.5 分。
【0013】本発明のトラキスプ酸は、常法に従って塩
とすることができる。そのような塩としては例えばリチ
ウム、ナトリウム、カリウムのようなアルカリ金属の
塩;カルシウム、バリウムのようなアルカリ土類金属の
塩;アルミニウム塩;リジン、アルギニンのような塩基
性アミノ酸の塩;アンモニア、メチルアミン、ジメチル
アミンのようなアミン塩;等をあげることができる。好
適には薬理上許容される塩である。
【0014】なお、本発明のトラキスプ酸は、種々の異
性体を有する。従って、本発明においてはこれらの異性
体およびこれらの異性体の混合物をもすべて含むもので
ある。
【0015】本発明の、トラキスプ酸を生産する上記 S
ANK 12191株は鹿児島県名瀬市の土壌から常法に従って
採集し分離したものである。
【0016】トラキスプ酸の生産菌である SANK 12191
株の菌学的性状は次の通りである。CYA培地上の成長
は 25 ℃, 7日で 21 mm に達する。表面は綿毛状で中
央部に厚く、密な菌糸のマットを形成する。ほぼ全面で
白色、分生子の形成に伴い表面は鈍緑色(dull green)(2
5 D 3)となる。但し分生子の形成は極めて疎である。ま
た、裏面は褐橙色 (brownish orange)(5 C4)を呈し、
縁辺部は浅く、菌糸は疎に集合する。子嚢果は 7 日目
では形成されない。
【0017】MEA培地上の成長は 25 ℃、7 日で 25
mm に達し、厚く密な菌糸のマットを形成し、全面で綿
毛状である。表面は白色で、裏面は灰黄色(greyish yel
low)(4 B 4 )を呈す。分生子の形成は疎で、子嚢果は
7 日目では形成されない。G25N培地上では、分生
子の発芽はみられない。分生子は 5 ℃では発芽しな
い。
【0018】37 ℃での成長はCYA培地上、7 日で 3
0 mm に達する。コロニーの性状は25℃のそれに似る
が、中央部の菌糸はより密で、いく分盛り上がる。
【0019】不完全時代は、Penicillium 型だが、観察
される数は少ない。分生子柄は培地上の菌糸または単一
か数本が束になった気中菌糸より生じ、きわめて短く、
壁は平滑である。ペニシリは通常一回分枝だが、一部に
は不規則な分枝、または不完全な形態の分生子柄も観察
される。フィアライドは頚部が長い針型で、大きさ11〜
13×1.5 μm である。分生子は、径 3〜4 μm の楕円形
で、壁は平滑であり、フィアライド上に連鎖して生じ
る。
【0020】また、後述の組成のWSH培地上で培養を
約 1 ヶ月以上続けることによって、子嚢果が形成され
ることがある。子嚢果は閉子嚢殻である。子嚢果の形態
は球状で直径 300〜500 μm、淡黄色を呈する。子嚢は
8 胞子性で直径約 8 μmの球状から亜球形である。
子嚢胞子は楕円形、表面は微小な突起を有し、直径3.5
〜4.5 μm である。 WSH培地 オートミール 10 g KH2 PO4 1 g MgSO4 ・7H 2O 1 g NaNO3 1 g 寒天 20 g 水 1000 ml ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ pH 無調整。
【0021】以上の諸形質から既知菌株のそれらと比較
検討したところ、J.I.Pitt著「Thegenus Penicillium a
nd its teleomorphic states, Eupenicillium and Tala
romyces. 」(1979 年、Academic press 発行) お
よび J.I.Pitt「A laboratory guide to common Penici
llium species」(2nd.ed.) (1988 年、CSIRO. Divisio
n of Food Processing, North Ryde NEW, Australia 発
行)に記載されているタラロマイセス トラキスペルマ
ス シェアー ストーク アンドサムソンとよく一致し
た。従って本菌を公知菌タラロマイセス トラキスペル
マス シェアー ストーク アンド サムソン(Talaro
myces trachyspermus(Shear)Stolk& Samson)と同定
し、保存番号として SANK 12191 (寄託機関、工業技術
院微生物工業技術研究所;寄託番号、微工研条寄第 355
0 号、FERMBP-3550 ;寄託日、1991 年 9月 6 日)を
付与した。なお、色の表示は A.Kornerup と J.H.Wansc
her 著「Methuen handbook of colour」第 3 版、1978
年、Eyre Methuen,London発行に従って行なった。
【0022】以上、トラキスプ酸の生産菌について説明
したが、カビの諸性質は一定したものではなく、自然
的、人工的に容易に変化することは周知の通りであり、
本発明で使用し得る菌株は、タラロマイセス属に属する
トラキスプ酸を生産するすべての菌株を包含するもので
ある。
【0023】本発明の新規化合物トラキスプ酸を得るた
め、これらの微生物の培養は他の醗酵生成物を生産する
ために用いられるような培地中で行われる。このような
培地中には、微生物が資化出来る炭素源、窒素源および
無機塩を含有する。
【0024】一般に、炭素源として、グルコース、フラ
クトース、マルトース、シュークロース、マンニトー
ル、グリセロール、デキストリン、オート麦、ライ麦、
トウモロコシデンプン、ジャガイモ、トウモロコシ粉、
大豆粉、綿実油、糖蜜、クエン酸、酒石酸などを単一
に、あるいは併用して用いる事が出来る。一般には、培
地量の 1−10 重量%で変量する。
【0025】窒素源としては、一般に蛋白質を含有する
物質を発酵工程に用いる。適当な窒素源としては、大豆
粉、フスマ、落花生粉、綿実油、綿実粉、カゼイン加水
分解物、ファーマミン、魚粉、コーンスチープリカー、
ペプトン、肉エキス、イースト、イーストエキス、マル
トエキス、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、硫酸ア
ンモニウム等である。窒素源は、単一または併用して培
地量の 0.2−6 重量%の範囲で用いる。
【0026】培地中に取り入れる栄養無機塩は、ナトリ
ウム、アンモニウム、カルシウム、フォスフェート、サ
ルフェート、クロライド、カーボネート等のイオンを得
ることの出来る通常の塩類である。また、カリウム、カ
ルシウム、コバルト、マンガン、鉄、マグネシウム等の
微量の金属も含む。
【0027】液体培養に際しては消泡剤としてシリコン
油、植物油、界面活性剤等が使用される。
【0028】タラロマイセス トラキスペルマス(Tala
romyces trachyspermus )SANK 12191 株を培養しトラ
キスプ酸を生産する培地の pH は、5.0 −7.0 に変化さ
せることが出来る。
【0029】菌の生育温度は 15 ℃から 37 ℃までであ
るが22 ℃から 35 ℃の範囲が生育良好であり、更にト
ラキスプ酸の生産には、22 ℃から 28 ℃が好適であ
る。
【0030】トラキスプ酸は、好気的に培養して得られ
るが、通常用いられる好気的培養法、例えば固体培養
法、振とう培養法、通気攪拌培養法等が用いられる。
【0031】小規模な培養においては、26 ℃で数日間
振とう培養を行うのが良好である。培養は、バッフル
(水流調節壁)のついた三角フラスコ中で、 1−2 段階
の種の発育工程により開始する。種発育段階の培地は、
炭素源および窒素源を併用出来る。種フラスコは定温イ
ンキュベーター中で26 ℃、7 日間振とうするか、また
は充分に成長するまで振とうする。成長した種は第二の
種培地、または生産培地に接種するのに用いる。中間の
発育工程を用いる場合には、本質的に同様の方法で成長
させ、生産培地に接種するためにそれを部分的に用い
る。接種したフラスコを一定温度で数日間振とうし、イ
ンキュベーションが終わったらフラスコの含有物を遠心
分離またはろ過する。
【0032】大量培養の場合には、攪拌機、通気装置を
付けた適当なタンクで培養するのが好ましい。この方法
によれば、栄養培地をタンクの中で作成出来る。栄養培
地を125 ℃まで加熱して滅菌し、冷却後滅菌培地にあら
かじめ成長させてあった種を接種する。培養は 26 ℃で
通気攪拌して行う。この方法は、多量の化合物を得るの
に適している。
【0033】培養の経過に伴って生産されるトラキスプ
酸の量の経時変化は、高速液体クロマトグラフィーを用
いて測定することが出来る。通常は、72 時間から 150
時間の培養でトラキスプ酸の生産量は最高値に達す
る。
【0034】培養終了後、培養液中の液体部分および菌
体内に存在するトラキスプ酸は、菌体、その他の固形部
分を、珪藻土をろ過助剤とするろ過操作または遠心分離
によって分別し、そのろ液または上清中および菌体中に
存在するトラキスプ酸を、その物理化学的性状を利用し
抽出精製することにより得られる。
【0035】例えば、ろ液または上清中に存在するトラ
キスプ酸は、酸性 pH 条件下で水と混和しない有機溶
剤、例えば酢酸エチル、クロロホルム、塩化エチレン、
塩化メチレンなどの単独またはそれらの組み合わせによ
り抽出精製することができる。あるいは吸着剤として、
例えば活性炭または吸着用樹脂であるアンバーライトXA
D −2 、XAD −4 (ローム・アンド・ハース社製)等
や、ダイアイオン HP −10、HP−20、CHP −20、HP−50
(三菱化成(株)製)等が使用される。トラキスプ酸を
含む液を上記のごとき吸着剤の層を通過させて不純物を
吸着させて取り除くか、またはトラキスプ酸を吸着させ
た後、メタノール水、アセトン水、1 −ブタノール水な
どを用いて溶出させることにより得られる。
【0036】また、菌体内に存在するトラキスプ酸は、
50−90 %の含水アセトンまたは含水メタノールにより
抽出し有機溶剤を除去した後、ろ液と同様な抽出精製操
作を行うことにより得られる。
【0037】このようにして得られたトラキスプ酸は、
更にシリカゲル、マグネシウム−シリカゲル系のフロリ
ジルのような担体を用いた吸着カラムクロマトグラフィ
ー、セファデックス LH −20(ファルマシア社製)など
を用いた分配カラムクロマトグラフィー、および順相、
逆相カラムを用いた高速液体クロマトグラフィー等で精
製することが出来る。
【0038】以上の分離、精製の手段を単独または適宜
組み合わせ反復して用いることによりトラキスプ酸を分
離精製することが出来る。
【0039】
【作用】本発明のトラキスプ酸は、文献未載の新規化合
物であり、動物(例、ヒト、イヌ、ネコ、ウサギ等)に
おいて、ヘパラナーゼに対し阻害活性を示し、癌転移抑
制剤として有用である。
【0040】本発明のトラキスプ酸を医薬として用いる
場合、常法に従ってそれ自体または適宜の薬学的に許容
される担体、賦形剤、希釈剤と混合し、粉末、顆粒、錠
剤、カプセル剤、注射剤などの形態で経口的または非経
口的に安全に投与することが出来る。投与量は対象疾
患、投与経路および投与回数などにより異なるが、例え
ば成人に対しては 1 日 10 mg から 2000 mg を、症
状に応じて 1 回または数回にわけて投与することが好
ましい。
【0041】
【実施例】次に実施例および試験例をあげて本発明を更
に具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるもの
ではない。
【0042】実施例 1. A)培養 タラロマイセス トラキスペルマス SANK 12191 株を、
無菌的に、滅菌した後述の組成の培地 100 ml を含むバ
ッフル付き 500 ml 容三角フラスコ 2 本に一白金耳接
種し、26 ℃で、200 rpm (7 cm の回転半径)のロー
タリー振とう培養機で 5 日間培養した。
【0043】このようにして得られた培養液を種培養液
として、同じ組成の培地 100 ml を含むバッフル付き 5
00 ml 容三角フラスコ 20 本に 2 %の種培養液を植菌
して、26 ℃で、200 rpm (7 cm の回転半径)のロー
タリー振とう機で6 日間培養した。
【0044】 培地組成 グリセリン 50 g 生ジャガイモ 50 g イースト・エキス 5 g 麦芽エキス 5 g 脱イオン水 1000 ml ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ pH 無調整。
【0045】B)単離 得られた培養液 1.6 リットルにアセトン 1.6 リット
ルを加え、30 分間攪拌することにより菌体を破壊し
た。これにろ過助剤としてセライト 545(米国ジョーン
ズ・マンビル・プロジェクト・コーポレーション製)12
0 g を加えてろ過を行い、ろ液 3 リットルを得た。得
られたろ液は塩酸で pH 2.0 に調整した後、酢酸エチル
2 リットルで 2 回抽出した。得られた酢酸エチル層
は、塩酸でpH 2.0 に調整した水で洗浄し、ロータリー
エバポレーターで減圧下、400 mlまで濃縮した。
【0046】この濃縮液を、50 mM の炭酸水素ナトリウ
ム溶液 200 ml で 2 回逆抽出した。得られた水層は塩
酸を加えて pH 2.0 に調整した後、再度酢酸エチル 200
mlで 2 回抽出した。得られた酢酸エチル層は、塩酸
で pH 2.0 に調整した飽和食塩水で洗浄し、さらに無水
硫酸ナトリウムで乾燥した後、ロータリーエバポレータ
ーで減圧下、濃縮乾固して 2.8 g の油状物を得た。
【0047】得られた油状物を、 150 g のセファデッ
クス LH −20 を用いてジクロロメタン−酢酸エチル−
メタノール(9:9 :1 )で平衡化したカラムに充填
し、同溶剤を用いて展開した。トラキスプ酸を含むフラ
クションを集め減圧下、濃縮乾固して粗粉末 750 mg
を得た。
【0048】得られた粗粉末は、高速液体クロマトグラ
フィーでさらに精製した。センシューパック ODS H −
5121(カラムサイズ、φ20×250 mm、センシュー科学
(株)製)を分離カラムとして、60 %アセトニトリル
−0.1 %トリフルオロ酢酸−水で、流速 15 ml/分で展
開した。1 回の分離には粗粉末 80 mg までを用い、22
0 nm の紫外線吸収でモニターしながらトラキスプ酸を
含む画分を集めた。ロータリーエバポレーターで減圧下
アセトニトリルを留去、濃縮し、凍結乾燥するとトラキ
スプ酸の純品 370 mg が得られた。
【0049】 (実施例の効果) 試験例 1. ヘパラナーゼ阻害活性 ヘパラナーゼ阻害活性は、Nakajimaらの方法(Anal. Bi
ochem.、157 巻、162頁(1986年))に基づいて行っ
た。すなわちヘパラナーゼはマウスメラノーマ細胞の細
胞抽出液より調製した。また、ヘパラン硫酸(生化学工
業(株)製)を3H −無水酢酸で標識し、アフィニティ
ークロマト用担体に固定し基質として用いた。
【0050】この酵素液、基質液およびトラキスプ酸を
20 mM D-糖酸(saccharic acid)−1 、4 −ラクトン
(シグマ社製)および 0.1 M 酢酸ナトリウム緩衝液
(pH5.0 )の混合液に添加し、最終液量を 400 μl と
して37 ℃で 3 時間反応させた。トリクロロ酢酸を終
濃度 5 %となるよう加えて反応を停止させ、4 ℃、1
2,000 rpm で 5 分間遠心した。この上清の一定量に
ピコフロー(パッカード社製) 5 ml を加えて放射活性
を測定した。
【0051】その結果、トラキスプ酸のヘパラナーゼ阻
害活性は IC50 が 150 μg/mlであった。
【0052】
【発明の効果】以上から、本発明の新規化合物トラキス
プ酸は癌転移抑制剤として有用である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高橋 正明 東京都品川区広町1丁目2番58号 三共株 式会社内 (72)発明者 丹沢 和比古 東京都品川区広町1丁目2番58号 三共株 式会社内 (72)発明者 細矢 剛 茨城県つくば市御幸ケ丘33 三共株式会社 内 (72)発明者 古谷 航平 茨城県つくば市御幸ケ丘33 三共株式会社 内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記の理化学的性状を有するトラキスプ
    酸。 1)物質の性状:酸性脂溶性白色粉末 2)分子式:C20289 3)分子量: 412(FAB −MS法により測定) 4)高分解能質量分析:メタニトロベンジルアルコール
    をマトリックスとして測定した高分解能陰イオンマス
    は、次に示す通りである。 実測値 411.16505 計算値 411.16551 5)元素分析値:(%) 実測値 C 56.21 、 H 7.18 計算値 C 58.25 、 H 6.79 6)比旋光度:[α]D 25 +3.1 °(c 1.0 、メタ
    ノール) 7)紫外線吸収スペクトル:λmax nm(ε) メタノール中および酸性メタノール中で測定した紫外線
    吸収スペクトルは、次に示す通りである。 202 (1100)、280 (2600) アルカリ性メタノール中で測定した紫外線吸収スペクト
    ルは、次に示す通りである。 205 (5000)、284 (1900) 8)赤外線吸収スペクトル:νmax cm-1 臭化カリウム(KBr )錠剤法で測定した赤外線吸収スペ
    クトルは、次に示す通りである。 3083、2956、2926、2855、2640、1723、1607、1401、12
    05、1138、1074、1058 9) 1H−核磁気共鳴スペクトル:(δ:ppm ) 重アセトン中、内部基準にテトラメチルシランを使用し
    て測定した核磁気共鳴スペクトル(360 MHz)は、次に
    示す通りである。 0.88(3 H ,t , J=6.8 Hz )、1.29(12 H ,m
    )、1.48(2 H ,m )、2.12(2 H ,t , J=7.6 Hz
    )、2.46(1 H ,dd, J=7.3 および 13.4 Hz)、2.6
    1(1 H ,t )、2.99(1 H ,d , J=16.9 Hz )、3.1
    4(1 H ,d , J=16.9 Hz )、3.88(1 H ,dd, J=
    7.3 および 12.6 Hz)、8.24(1 H ,s ) 10)13C−核磁気共鳴スペクトル:(δ:ppm ) 重ジメチルスルホキシド中、内部基準にテトラメチルシ
    ランを使用して測定した核磁気共鳴スペクトル(90 MH
    z)は、次に示す通りである。 13.8(q )、20.4(t )、22.0(t )、27.4(t )、2
    8.5(t )、28.6(t )、28.8(t )、31.2(t )、37.
    4(t )、38.7(t )、48.4(d )、86.5(s )、108.0
    (s )、116.7 (s )、170.0 (s )、170.5 (s
    )、171.2 (s )、174.3 (d )、198.1(s ) 11)溶解性:メタノール、エタノール、ブタノール等
    のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、クロ
    ロホルム、ジクロロメタン、酢酸エチル、 ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、中性お
    よびアルカリ性の水に可溶、酸性の水に不溶。 12)呈色反応:硫酸、ヨードに陽性。 13)薄層クロマトグラフィー: Rf値; 0.59 吸着剤;シリカゲルプレート Art.5715(メルク社製) 展開溶剤; 1−ブタノール:酢酸:水=4 :2 :1 14)高速液体クロマトグラフィー: 分離カラム;センシューパック ODS H −2151 (カラムサイズ、φ6 ×150 mm、センシュー科学(株)
    製) 溶媒; 55 %アセトニトリル−0.1 %トリフルオロ酢酸
    −水 流速; 1.5 ml /分 波長; 210 nm および 280 nm 保持時間; 7.5 分
  2. 【請求項2】タラロマイセス属に属するトラキスプ酸生
    産菌を培養し、その培養物よりトラキスプ酸を採取する
    ことからなるトラキスプ酸の製造法。
  3. 【請求項3】[請求項2]において、タラロマイセス属
    に属するトラキスプ酸生産菌がタラロマイセス トラキ
    スペルマス SANK 12191 株(微工研条寄第 3550
    号)である製造法。
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