JPH0564565U - 内燃機関用ピストン - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 強度の向上と軽量化が同時に図れる内燃機関
用ピストンを提供する。 【構成】 ピストン本体のクラウン部１に結合されたピ
ンボス部４にスカート部２のスラスト側２Ａ及び反スラ
スト側２Ｂをパネル部５により連結し、該パネル部５に
おけるピンボス部４に対してスラスト側及び反スラスト
側に開孔部６Ａ、６Ｂを形成して、スカート部２の下側
部に、該スカート部２のスラスト側２Ａ及び反スラスト
側２Ｂを連結する支持リブ７を構成し、この支持リブ７
におけるピンボス部４の反スラスト側付根部７ｂを該ピ
ンボス部４のスラスト側付根部７ａより大きく形成し
た。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

この考案は、自動車等の内燃機関用ピストンに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】

従来、内燃機関用ピストンには例えば実開平３−１００５７号公報に記載され たものがある。

【０００３】 この内燃機関用ピストンでは、図４に示すように、ピストン本体がクラウン部 ２０とスカート部２１とで構成され、クラウン部２０に結合されたピンボス部２ ２にはパネル部２３によりスカート部２１のスラスト側（以下、スラスト側スカ ート部２１Ａという）及び反スラスト側（以下、反スラスト側スカート部２１Ｂ という）に連結され、前記パネル部２３におけるピンボス部２２に対してスラス ト側及び反スラスト側には開孔部２４Ａ、２４Ｂが形成されている。これにより 、スカート部２１の下側部には、スラスト方向に延在してスラスト側及び反スラ スト側のスカート部２１Ａ、２１Ｂを互いに連結する支持リブ２５が構成されて いる。

【０００４】 この支持リブ２５におけるピンボス部２２に対してスラスト側（以下、スラス ト側支持リブ２５Ａという）及び反スラスト側（以下、反スラスト側支持リブ２ ５Ｂという）は、ピンボス部２２に形成されたピストンピン孔２６の軸心Ｏに対 して対称に形成されており、スラスト側及び反スラスト側の開孔部２４Ａ、２４ Ｂを形成してスラスト方向に延在する支持リブ２５の部分イのピストン本体スト ローク方向肉厚Ｌ₁ 、Ｌ₂ は等しく、また、スラスト側及び反スラスト側の開孔 部２４Ａ、２４Ｂのクラウン部２０側とは反対側でかつピンボス部２２側に形成 された凹円弧部ロの曲率半径Ｒ₁ 、Ｒ₂ は等しく、従って、支持リブ２５におけ るピンボス部２２のスラスト側付根部２５ａと該ピンボス部２２の反スラスト側 付根部２５ｂとは等しい大きさで形成されている。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】

ところで、前記従来の内燃機関用ピストンにあっては、使用時、ピンボス部２ ２がピストンピン孔２６に装着した図示しないピストンピンとコネクティングロ ッドを介してクランクシャフトに支持されるため、クラウン部２０の冠面２０ａ に燃焼ガス圧力が作用した際、ピンボス部２２に対してクラウン部２０のスラス ト側と反スラスト側をピストン本体ストローク方向に押し下げる力が働き、スラ スト側では支持リブ２５Ａをピンボス部２２を中心として反時計周り方向に回転 させる回転モーメントが作用し、また反スラスト側では支持リブ２５Ｂをピンボ ス部２２を中心として時計周り方向に回転させる回転モーメントが作用する。こ のため、支持リブ２５におけるピンボス部２２のスラスト側付根部２５ａと該ピ ンボス部２２の反スラスト側付根部２５ｂにはいずれも引張応力（σ₁ ）が生じ る。一方、ピストンピン孔２６の軸心Ｏがピストン本体中心Ｃ（シリンダ中心） に対してスラスト側にオフセットされているため、クラウン部２０の冠面２０ａ に燃焼ガス圧力が作用した際、スラスト側ではスカート部２１Ａの下部がシリン ダの内壁と接触して、スラスト側支持リブ２５Ａをピンボス部２２を中心として 時計周り方向に回転させる回転モーメントが作用し、支持リブ２５におけるピン ボス部２２のスラスト側付根部２５ａには、前記引張応力（σ₁ ）を打ち消すよ うな圧縮応力（σ₂ ）が発生し、また反スラスト側ではスカート部２１Ｂの上部 がシリンダの内壁と接触して、反スラスト側支持リブ２５Ｂをピンボス部２２を 中心として時計周り方向に回転させる回転モーメントが作用し、支持リブ２５に おけるピンボス部２２の反スラスト側付根部２５ｂには、前記引張応力（σ₁ ） に加重するような引張応力（σ₃ ）が生じる。従って、支持リブ２５におけるピ ンボス部２２のスラスト側付根部２５ａに発生する応力をσ_A 、該ピンボス部２ ２の反スラスト側付根部２５ｂに発生する応力をσ_B とした場合、 σ_A ＝σ₁ ＋σ₂ σ_B ＝σ₁ ＋σ₃ でσ_A ＜σ_B となるから、支持リブ２５におけるピンボス部２２の反スラスト側 付根部２５ｂには該ピンボス部２２のスラスト側付根部２５ａよりも大きい十分 な強度を確保する必要がある。

【０００６】 しかしながら、前述したようにスラスト側及び反スラスト側の支持リブ２５Ａ 、２５Ｂは、ピンボス部２２に形成されたピストンピン孔２６の軸心Ｏに対して 対称に形成されており、支持リブ２５におけるピンボス部２２のスラスト側付根 部２５ａと該ピンボス部２２の反スラスト側付根部２５ｂは等しい大きさで形成 されているから、支持リブ２５におけるピンボス部２２の反スラスト側付根部２ ５ｂに十分な強度を確保すれば、該ピンボス部２２のスラスト側付根部２５ａに は必要以上の強度が与えられて無駄な肉が付くことになり、ピストンの軽量化の 障害となるし、反対に、支持リブ２５におけるピンボス部２２のスラスト側付根 部２５ａに必要最小限の強度を確保すれば、該ピンボス部２２の反スラスト側付 根部２５ｂの強度が不足するという欠点があった。

【０００７】 この考案は前記従来の課題を解決するためになしたもので、強度の向上と軽量 化が同時に図れる内燃機関用ピストンを提供することを目的とする。

【０００８】

【課題を解決するための手段】

上記の目的を達成するために、この考案に係る内燃機関用ピストンは、ピスト ン本体のクラウン部に結合されたピンボス部にスカート部のスラスト側及び反ス ラスト側をパネル部により連結し、該パネル部における前記ピンボス部に対して スラスト側及び反スラスト側に開孔部を形成して、前記スカート部の下側部にス カート部のスラスト側及び反スラスト側を連結する支持リブを構成し、この支持 リブにおける前記ピンボス部の反スラスト側付根部を該ピンボス部のスラスト側 付根部より大きく形成したものである。

【０００９】 この内燃機関用ピストンは、例えば、反スラスト側開孔部のクラウン部側とは 反対側でかつピンボス部側に形成された凹円弧部の曲率半径を、スラスト側開孔 部のクラウン部側とは反対側でかつピンボス部側に形成された凹円弧部の曲率半 径より大きくすること、又は、反スラスト側開孔部を形成してスラスト方向に延 在する支持リブ部分のピストン本体ストローク方向肉厚を、スラスト側開孔部を 形成してスラスト方向に延在する支持リブ部分のピストン本体ストローク方向肉 厚より大きくすることの少なくとも一方を行うことによって得られる。

【００１０】

【作用】

上記構成によれば、支持リブにおけるピンボス部の反スラスト側付根部に発生 する応力が低減し、この応力を、支持リブにおけるピンボス部のスラスト側付根 部に発生する応力と等しくすることが可能となる。

【００１１】

【実施例】

以下、この考案の実施例を図１〜図３により説明する。

【００１２】 図１はこの考案の一実施例である内燃機関用ピストンを示す縦断面図、図２は 図１の左側面図、図３はこの考案の他の実施例である内燃機関用ピストンを示す 縦断面図である。

【００１３】 このピストン本体はアルミニウム合金等の軽量合金を母材として製作されてお り、クラウン部１とスカート部２とで構成されている。

【００１４】 クラウン部１には、ピストン本体中心Ｃ（シリンダ中心）に対して軸心Ｏがス ラスト側にオフセットされたピストンピン孔３を有するピンボス部４が結合され 、このピンボス部４にはパネル部５によりスカート部２のスラスト側（以下、ス ラスト側スカート部２Ａという）及び反スラスト側（以下、反スラスト側スカー ト部２Ｂという）が連結され、パネル部５におけるピンボス部４に対してスラス ト側及び反スラスト側には開孔部６Ａ、６Ｂが形成されている。これにより、ス カート部２の下側部には、スラスト方向に延在してスラスト側及び反スラスト側 のスカート部２Ａ、２Ｂを互いに連結する支持リブ７が構成されている。

【００１５】 この支持リブ７におけるピンボス部４に対してスラスト側（以下、スラスト側 支持リブ７Ａという）及び反スラスト側（以下、反スラスト側支持リブ７Ｂとい う）は、ピンボス部４の反スラスト側付根部７ｂが該ピンボス部４のスラスト側 付根部７ａより大きく形成されて、ピンボス部４に形成されたピストンピン孔３ の軸心Ｏに対して非対称となっている。

【００１６】 このようなものとして、図１及び図２に示す内燃機関用ピストンでは、スラス ト側及び反スラスト側の開孔部６Ａ、６Ｂを形成してスラスト方向に延在する支 持リブ７の部分イのピストン本体ストローク方向肉厚Ｌ₁ 、Ｌ₂ は等しく、また 、スラスト側及び反スラスト側の開孔部６Ａ、６Ｂのクラウン部１側とは反対側 でかつピンボス部４側に形成された凹円弧部ロの曲率半径Ｒ₁ 、Ｒ₂ は図示斜線 部分だけＲ₁ ＜Ｒ₂ となるようにしており、これによって、支持リブ７における ピンボス部４の反スラスト側付根部７ｂは該ピンボス部４のスラスト側付根部７ ａより大きく形成されている。また、図３に示す内燃機関用ピストンでは、スラ スト側及び反スラスト側の開孔部６Ａ、６Ｂのクラウン部１側とは反対側でかつ ピンボス部４側に形成された凹円弧部ロの曲率半径Ｒ₁ 、Ｒ₂ は等しく、また、 スラスト側及び反スラスト側の開孔部６Ａ、６Ｂを形成してスラスト方向に延在 する支持リブ７の部分イのピストン本体ストローク方向肉厚Ｌ₁ 、Ｌ₂ は図示斜 線部分だけＬ₁ ＜Ｌ₂ となるようにしており、これによって、支持リブ７におけ るピンボス部４の反スラスト側付根部７ｂは該ピンボス部４のスラスト側付根部 ７ａより大きく形成されている。

【００１７】 尚、図示しないが、スラスト側及び反スラスト側の開孔部６Ａ、６Ｂを形成し てスラスト方向に延在する支持リブ７の部分イのピストン本体ストローク方向肉 厚Ｌ₁ 、Ｌ₂ をＬ₁ ＜Ｌ₂ とし、また、スラスト側及び反スラスト側の開孔部６ Ａ、６Ｂのクラウン部１側とは反対側でかつピンボス部４側に形成された凹円弧 部ロの曲率半径Ｒ₁ 、Ｒ₂ をＲ₁ ＜Ｒ₂ としても良いことは言うまでもない。

【００１８】 以上の構成において、使用時、ピンボス部４がピストンピン孔３に装着した図 示しないピストンピンとコネクティングロッドを介してクランクシャフトに支持 されるため、クラウン部１の冠面１ａに燃焼ガス圧力が作用した際、ピンボス部 ４に対してクラウン部１のスラスト側と反スラスト側をピストン本体ストローク 方向に押し下げる力が働き、スラスト側では支持リブ７Ａをピンボス部４を中心 として反時計周り方向に回転させる回転モーメントが作用し、また反スラスト側 では支持リブ７Ｂをピンボス部４を中心として時計周り方向に回転させる回転モ ーメントが作用する。このため、支持リブ７におけるピンボス部４のスラスト側 付根部７ａと該ピンボス部４の反スラスト側付根部７ｂにはいずれも引張応力（ σ_1P）が生じる。一方、ピストンピン孔３の軸心Ｏがピストン本体中心Ｃ（シリ ンダ中心）に対してスラスト側にオフセットされているため、クラウン部１の冠 面１ａに燃焼ガス圧力が作用した際、スラスト側ではスカート部２Ａの下部がシ リンダの内壁と接触して、スラスト側支持リブ７Ａをピンボス部４を中心として 時計周り方向に回転させる回転モーメントが作用し、支持リブ７におけるピンボ ス部４のスラスト側付根部７ａには、前記引張応力（σ_1P）を打ち消すような圧 縮応力（σ_2P）が発生し、また反スラスト側ではスカート部２Ｂの上部がシリン ダの内壁と接触して、反スラスト側支持リブ７Ｂをピンボス部４を中心として時 計周り方向に回転させる回転モーメントが作用し、支持リブ７におけるピンボス 部４の反スラスト側付根部７ｂには、前記引張応力（σ_1P）に加重するような引 張応力（σ_3P）が生じる。従って、支持リブ７におけるピンボス部４のスラスト 側付根部７ａに発生する応力をσ_AP、該ピンボス部４の反スラスト側付根部７ｂ に発生する応力をσ_BPとした場合、 σ_AP＝σ_1P＋σ_2P σ_BP＝σ_1P＋σ_3P で、σ_1Pとσ_2Pは打ち消し合い、σ_1Pとσ_3Pは加重し合うが、支持リブ７におけ るピンボス部４のスラスト側付根部７ａより該ピンボス部４の反スラスト側付根 部７ｂが大きくなっており、この付根部７ｂに発生する応力が低減するから、支 持リブ７におけるピンボス部４の反スラスト側付根部７ｂと該ピンボス部４のス ラスト側付根部７ａに発生する応力σ_AP，σ_BPとを等しくすることが可能となる 。

【００１９】

【考案の効果】

以上の通りこの考案は、ピストン本体のクラウン部に結合されたピンボス部に スカート部のスラスト側及び反スラスト側をパネル部により連結し、該パネル部 における前記ピンボス部に対してスラスト側及び反スラスト側に開孔部を形成し て、前記スカート部の下側部に、該スカート部のスラスト側及び反スラスト側を 連結する支持リブを構成した内燃機関用ピストンにおいて、反スラスト側開孔部 のクラウン部側とは反対側でかつピンボス部側に形成された凹円弧部の曲率半径 を、スラスト側開孔部のクラウン部側とは反対側でかつピンボス部側に形成され た凹円弧部の曲率半径より大きくしたり、又は、反スラスト側開孔部を形成して スラスト方向に延在する支持リブ部分のピストン本体ストローク方向肉厚を、ス ラスト側開孔部を形成してスラスト方向に延在する支持リブ部分のピストン本体 ストローク方向肉厚より大きくすることによって、支持リブにおけるピンボス部 の反スラスト側付根部を該ピンボス部のスラスト側付根部より大きく形成したか ら、支持リブにおけるピンボス部の反スラスト側付根部に発生する応力を低減さ せて該ピンボス部のスラスト側付根部に発生する応力と等しくすることが可能と なる。このため、反スラスト側支持リブ及びスラスト側支持リブに必要な強度を 確保しながらピストンの軽量化が図れる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この考案の一実施例である内燃機関用ピストン
を示す縦断面図である。

【図２】図１の左側面図である。

【図３】この考案の他の実施例である内燃機関用ピスト
ンを示す縦断面図である。

【図４】従来例である内燃機関用ピストンを示す縦断面
図である。

【符号の説明】

１ クラウン部 ２、２Ａ、２Ｂ スカート部 ４ ピンボス部 ５ パネル部 ６Ａ、６Ｂ 開孔部 ７、７Ａ、７Ｂ 支持リブ ７ａ ピンボス部のスラスト側付根部 ７ｂ ピンボス部の反スラスト側付根部 Ｌ₁ 、Ｌ₂ 支持リブ部分イの肉厚 Ｒ₁ 、Ｒ₂ 凹円弧部ロの曲率半径

Claims (3)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 ピストン本体のクラウン部に結合された
   ピンボス部にスカート部のスラスト側及び反スラスト側
   をパネル部により連結し、該パネル部における前記ピン
   ボス部に対してスラスト側及び反スラスト側に開孔部を
   形成して、前記スカート部の下側部にスカート部のスラ
   スト側及び反スラスト側を連結する支持リブを構成し、
   この支持リブにおける前記ピンボス部の反スラスト側付
   根部を該ピンボス部のスラスト側付根部より大きく形成
   したことを特徴とする内燃機関用ピストン。
2. 【請求項２】 請求項１の内燃機関用ピストンにおい
   て、反スラスト側開孔部のクラウン部側とは反対側でか
   つピンボス部側に形成された凹円弧部の曲率半径を、ス
   ラスト側開孔部のクラウン部側とは反対側でかつピンボ
   ス部側に形成された凹円弧部の曲率半径より大きくし
   て、支持リブのピンボス部の反スラスト側付根部を該ピ
   ンボス部のスラスト側付根部より大きく形成したことを
   特徴とする内燃機関用ピストン。
3. 【請求項３】 請求項１の内燃機関用ピストンにおい
   て、反スラスト側開孔部を形成してスラスト方向に延在
   する支持リブ部分のピストン本体ストローク方向肉厚
   を、スラスト側透孔を形成してスラスト方向に延在する
   支持リブ部分のピストン本体ストローク方向肉厚より大
   きくして、支持リブのピンボス部の反スラスト側付根部
   を該ピンボス部のスラスト側付根部より大きく形成した
   ことを特徴とする内燃機関用ピストン。