JPH0535436B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［発明の技術分野］ この発明は、押鍵初期に重く、押鍵終了時に軽
くなるピアノのタツチ感に近似したタツチ感を得
るようにした電子楽器の鍵盤装置に関する。

［従来の技術］ 従来、電子オルガン等の電子楽器における鍵盤
装置は、鍵を弾く時の感触、すなわち鍵のタツチ
感が自然楽器としてのピアノにおけるタツチ感と
著しく相違するため、電子オルガンで演奏練習を
行つていた場合、ピアノになじみずらくピアノへ
のスムーズな移行が困難であつた。これは、電子
楽器においては鍵を単にばねの力に抗して押鍵操
作し、鍵に設けたアクチユエータでキースイツチ
を動作させるように構成されているため、ピアノ
におけるアクシヨン機構を備えず、そのためピア
ノとは逆に鍵を押し下げるにつれてばねの反力が
増大することに起因するものであり、ピアノのよ
うに演奏者の感情を伝達するタツチレスポンス機
能を備えず、弾き難いという欠点があつた。

そこで、従来からタツチ感をピアノのタツチ感
に近似させる手段として、例えば第１図〜第３図
に示す鍵盤装置が提案実施されている。

すなわち、第１図は鍵１の後端部下面に重錘２
を固定し、鍵１の慣性力を増大させるようにした
もの、第２図は鍵１と鍵盤フレーム３の間に略Ｕ
字状に屈曲形成されたばね４を介在させたもの、
そして第３図は同じく鍵１と鍵盤フレーム３の間
に板状のばね５を座屈変形させた状態で組み込ん
だものである。なお、第２図および第３図におい
て、６はストツパ、７はキースイツチ、８はアク
チユエータである。

しかしながら、重錘２を取付けた鍵１にあたつ
ては、鍵１を速く動作させた時のタツチ感、すな
わち動的タツチ感は押鍵初期において重く、それ
以後は慣性により軽くなるためピアノのタツチ感
と類似しているが、ゆつくりと静かに押し下げた
時のタツチ感、すなわち静的タツチ感は、押鍵初
期から終了まで殆ど変わらず、ピアノのタツチ感
（ピアノはジヤツクの脱進後軽くなる）と似てい
ない。一方、Ｕ字状ばね４を備えた鍵１は、重錘
２とは逆に静的タツチ感がややピアノに似ている
が、動的タツチ感は似ていない。また、板ばね５
を用いた鍵はＵ字状ばねに比べて良好な静的タツ
チ感を得ることができるものの、動的タツチ感は
不十分でピアノのタツチ感に近似するまでには至
つていない。

［発明の概要］ この発明は上記したような点に鑑みてなされた
もので、鍵に復帰習性を付与する復帰用部材と、
鍵の復帰位置においては鍵の復帰力に対して作用
しないかもしくは復帰力と反対方向に作用し、鍵
を押し下げるにつれて徐々に増大し鍵の復帰力を
減少させる復帰力減少用ばねとを前記鍵に組み込
むことにより、ピアノに近似したタツチ感を得る
ようにした電子楽器の鍵盤装置を提供するもので
ある。

［実施例］ 以下、この発明を図面に示す実施例に基づいて
詳細に説明する。

第４図ａ，ｂはこの発明に係る鍵盤装置を白鍵
に適用した場合の一実施例を示す平面図及び縦断
面図、第５図はばね保持部の斜視図、第６図は鍵
盤フレームの鍵支持部の斜視図である。これらの
図において、１０は白鍵、１３は白鍵１０が上下
方向に揺動自在に配設される鍵盤フレームであ
る。鍵盤フレーム１３は平板状で、前後方向中間
部に鍵支持部５０が設けられている。鍵支持部５
０は、鍵盤フレーム１３にその後端側が前端側よ
り高くなるよう屈曲形成された段差部からなり、
第６図に示すように各鍵に対応して複数個の挿通
孔１４と圧縮ばね係止部２３を有している。挿通
孔１４は、段差部段差面５１より後方側のフレー
ム部分に設けられてその前縁が白鍵１０を回動自
在に支持する鍵支点０を形成している。圧縮ばね
係止部２３は、例えばプレス加工によつて形成さ
れた凹部からなり、段差部段差面５１に設けられ
ている。

前記白鍵１０は合成樹脂で一体に形成された細
長い角棒体をなし、下面部をくり抜くような状態
で形成されることにより断面形状が略コ字状を呈
し、中央よりやや後方寄りの内側天井面には突起
１１が一体に垂設され、その下端部前面には鍵盤
フレーム１３に穿設された挿通孔１４の前端縁、
すなわち、前記鍵支点０に係合する係合凹部１２
が形成されている。白鍵１０の後端部内側面には
この白鍵１０に第４図ｂにおいて時計方向の復帰
習性を付与する復帰用部材としての重錘１５が固
定されている。また、白鍵１０はその前端部下面
に垂設され下端部が後方に向かつてほぼ水平に折
曲された略鉤形のストツパ１６を有し、このスト
ツパ１６の折曲部１６ａは前記鍵盤フレーム１３
の前端側垂直部１３Ａに穿設された透孔１７に上
下移動自在に係合入されている。したがつて、白
鍵１０は透孔１７の範囲で小角度上下方向の回動
を許容されているが、通常は重錘１５による復帰
習性により前記折曲部１６ａが透孔１７の上縁に
当接することにより初期位置に係止され、押鍵操
作されると、前記回動支点０を中心として前端部
１０ａが回動降下し、これに伴つて白鍵１０に一
体に設けられたアクチユエータ１８が鍵盤フレー
ム１３の下面に取付けられているキースイツチ１
９を動作させるように構成されている。

前記白鍵１０の内底面のほぼ中央部には下端部
が前記係合凹部１２方向に延在してばね保持部２
０Ａを構成する略鉤形の折曲片２０が一体に垂設
されている。前記ばね保持部２０Ａは第５図に示
すようにその上面中央に形成され長手方向全長に
わたつて延在するばね端係止用溝２１を有し、こ
のばね保持部２０Ａに復帰力減少用ばね２２が嵌
装されている。このばね２２は白鍵１０が初期位
置にあるときは重錘１５による白鍵１０の復帰力
に対して何ら作用せず、白鍵１０を押し下げるに
つれて白鍵１０の復帰力を減少させる如く作用す
るもので、その一端が前記ばね端係止用溝２１の
終端まで挿入されて前記折曲片２０の下端背面に
当接係止され、他端が前記鍵盤フレーム１３に設
けられた圧縮ばね係止部２３に挿入されている。

この場合、ばね２２は前記折曲片２０の下端背
面と圧縮ばね係止部２３間に圧縮状態で組み込ま
れることにより、白鍵１０を前方に付勢して係合
凹部１２と挿通孔１４の前端縁との係合を確実に
し、常に鍵の支点部（係合凹部１２）を鍵盤フレ
ーム１３の鍵支持部５０の鍵支点（挿通孔１４の
前端縁）０に圧接させるようにしている。また、
ばね保持部２０Ａの先端部両側面にはばね仮係止
用の突起２５が突設されており、これによつて白
鍵１０が鍵盤フレーム１３に装着される前は前記
ばね２２のフレーム側端部（コイル部）が仮係止
され、装着後この仮係止状態を解除される。

なお、第４図ｂにおいて２６は白鍵１０の左右
方向の回動を規制するキーガイド、２７，２８，
２９はゴム、フエルト等の緩衝部材、３０は金型
抜き孔である。

このような構成からなる鍵盤装置によれば、ピ
アノに近似したタツチ感を得ることができる。す
なわち、第７図に示すように白鍵１０の復帰位置
においては、鍵支点０とばね２２の係止点A₁，
Ｑとが同一直線上に位置する。したがつて、この
状態においてはばね２２の初期圧P₁の作用線が
前記鍵支点０を通るため、分力が生じず、白鍵１
０の復帰力に何ら作用しない。この状態におい
て、白鍵１０の先端部を押し下げると、白鍵１０
は鍵支点０を中心として反時計方向に回動し、こ
れに伴つてばね２２も点Ｑを中心として同方向に
回動し、係止点A₁がA₂位置に移動する。すると、
ばね２２は白鍵１０の鍵支点０とばね２２の回動
支点ＱとのずれによりΔdだけ伸長し、ばね力P₂
が初期圧P₁より小さく（P₁＞P₂）なり、同時に
鍵支点０と点Ａとを結ぶ方向およびそれと直交す
る方向の分力Pa，Pbが生じる。分力Pbは太いば
ねを用いて初期圧を大きくするのではなく比較的
細いばねを用いて圧縮率を高くしてばね２２の初
期圧を大きく設定しておけば、白鍵１０が押し下
げられるにしたがつて非押鍵位置から最押鍵位置
の回転範囲内では徐々に大きくなり、白鍵１０に
対する押下力を減少させるように作用する。ここ
で／（ｎ＝１，２，…）が大（但し１
より小）であれば、太いばねを用いて初期圧を大
きく設定しても上記と同様の作用をすることは勿
論である。この結果、押し初めにおいて重く、押
し込むにしたがつて徐々に軽くなり、動的、静的
タツチ感共に一般のピアノにより近似したタツチ
感を得ることができる。また白鍵１０の復帰位置
においては初期圧P₁の分力Pbが生じないため、
初期圧P₁の設定を考慮する必要がなく、設計が
容易である。さらに、白鍵１０の鍵盤フレーム１
３への取付けに際しては、ばね２２を予めばね保
持部２０Ａに装着して突起２５で仮係止してお
き、しかる後白鍵１０を前下がりに傾斜させた状
態でストツパ１６の折曲部１６ａを透孔１７に差
し込んで白鍵１０の後端部を下げていつて突起１
１を挿通孔１４に挿入し、係合凹部１２を挿通孔
１４の前端縁に係合させ、次いで前記ばね２２を
突起２５から解放、その解放端を圧縮ばね係止部
２３に係入させればよいので、取付け作業も簡単
かつ容易である。

第８図はこの発明を黒鍵に適用した場合の他の
実施例を示す断面図である。この実施例は復帰用
部材として引張コイルばね４０を用いた点が上記
実施例と異なるだけで、他は略同一である。この
場合、引張コイルばね４０はその一端が金型抜き
孔３０の内側面に、他端が鍵盤フレーム１３の後
端に一体に設けられ上方に折曲された折曲部４１
の上端にそれぞれ係止されて黒鍵４２の後端部上
方に配置されている。

このような構成においても黒鍵４２を押し込む
につれて復帰力減少用ばね２２が働きばね４０の
ばね力を減殺するので、上記実施例と同様の効果
が得られることは明らかであろう。

なお、上記実施例はいずれも復帰力減少用ばね
２２として圧縮コイルばねを用いた場合について
説明したが、この発明においては、ばねの形状は
コイルばねに限らず、例えばΩ、〓形など適宜な
ばねを使用してもよい。

また、上記実施例はいずれも復帰力減少用ばね
２２を鍵の復帰位置においては作用しないように
組み込んだ場合について説明したが、復帰位置に
おいても復帰力を減少させる如く作用させてもよ
い。その場合、第７図に示したばねの係止点A₁
とＱを結ぶ線と点Ｑと鍵支点０を結ぶ線との交差
角度αが180°以下となるようにばね２２を組み込
み、初期圧P₁の分力を発生させるようにすれば
よい。

［発明の効果］ 以上説明したようにこの発明に係る電子楽器の
鍵盤装置は、鍵に復帰習性を付与する復帰用部材
と、復帰位置においては鍵の復帰力に対して作用
しないかもしくは復帰力と反対方向に作用し押鍵
操作するにしたがつて鍵の復帰力を減少させる如
く作用する押圧力減少用ばねを配設して構成した
ので、押鍵初期においては重く、押し込むにつれ
て軽くなり、一般のピアノに近似したタツチ感を
得ることができる。

特に、鍵支点より後方に鍵復帰用部材として重
錘を設けた実施例にあつては、慣性により押鍵時
の鍵のたわみの反動感による動的タツチ感と鍵押
圧力減少用ばねによる静的タツチ感とが相俟つて
ピアノにきわめて類似したタツチ感が得られると
いう効果は著しい。また、本発明においては復帰
力減少用弾性部材によつて鍵を鍵支点に常に圧接
しているので、鍵支点と鍵との係合が確実とな
り、なおかつこれら両者間の摩擦力が大きく、
「静摩擦係数＞動摩擦係数」という自然法則があ
るので鍵の押下初期において重く、動き始める
と、“スコン”と抜けるようなタツチ感が得られ
る。このタツチ感はモーメント解析からも発生す
るもので、復帰力減少用弾性部材により鍵タツチ
感の減少と相俟つて２重のスコン感を得ることが
できる。

【図面の簡単な説明】

第１図〜第３図はそれぞれ従来の鍵盤装置を示
す断面図、第４図ａ，ｂはこの発明を白鍵に適用
した場合の平面図および縦断面図、第５図はばね
保持部の斜視図、第６図は鍵盤フレームの鍵支持
部の斜視図、第７図はこの発明の効果を説明する
ための図、第８図はこの発明の他の実施例を示す
断面図である。 ０……鍵支点部、１０……白鍵、１３……鍵盤
フレーム、１５……重錘、２２……復帰力減少用
ばね、２３……圧縮ばね係止部、４０……復帰用
弾性部材（引張コイルばね）、５０……鍵支持部。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 鍵支点と圧縮ばね係止部とを鍵長手方向に接
   近配置した鍵支持部を有する鍵盤フレームと、前
   記鍵支点を回動支点として上下方向に揺動自在に
   配設された鍵と、この鍵に復帰習性を付与する復
   帰用部材と、前記圧縮ばね係止部と前記鍵との間
   に介在され、鍵の復帰位置においては鍵の復帰力
   に対して作用しないかもしくは復帰力と反対方向
   に作用し、鍵を押下げるにつれて徐々に復帰力と
   反対方向の分力が大きくなり鍵の復帰力を減少さ
   せる圧縮ばねとを備え、前記鍵支点と圧縮ばねの
   両端が鍵復帰位置において略一直線上に位置する
   ことを特徴とする電子楽器の鍵盤装置。 ２ 復帰用部材が重錘であることを特徴とする特
   許請求の範囲第１項記載の電子楽器の鍵盤装置。 ３ 復帰用部材がばねであることを特徴とする特
   許請求の範囲第１項記載の電子楽器の鍵盤装置。