JPH05339778A - 電鋳成形型及びその製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 大きな型に適しており、電鋳シェルとバッキ
ング材との剥離を防いで成形品の品質を維持することが
できる電鋳成形型及びその製造方法を提供する。 【構成】 電鋳加工により形成された電鋳シェル１と、
該電鋳シェル１の裏面側を補強する熱硬化性樹脂又は低
融点合金のバッキング材４とを備えてなる電鋳成形型に
おいて、前記電鋳シェル１の裏面に、前記バッキング材
４に向かって末広がりとなる断面の剥離防止部３ａを電
鋳加工により一体的に形成し、該剥離防止部３ａ内に熱
硬化性樹脂又は低融点合金の補強材を充填することによ
り大きな型に適しており、電鋳シェルとバッキング材と
の剥離を防いで成形品の品質を維持することができるよ
うにした。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、プラスチックの射出成
形、中空成形等に用いる電鋳成形型及びその製造方法に
係わり、特に、大きな型に適しており、電鋳シェルとバ
ッキング材との剥離を防いで成形品の品質を維持するこ
とができるものに関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、この種の電鋳成形型としては図７
に示すものがある。図７において、この電鋳成形型は、
電鋳加工によりニッケル、銅等の金属を所定厚さに析出
させて形成した電鋳シェル５１を、熱硬化性樹脂又は低
融点合金のバッキング材５２で裏打ちして補強したもの
であり、バッキング材５２には加熱・冷却流体の流路と
なるステンレスパイプ５３が内設されている。ステンレ
スパイプ５３は型内を走行しており、このステンレスパ
イプ５３内に加熱・冷却流体を流通させて電鋳シェル５
１との間で熱交換を行わせ、電鋳シェル５１の加熱と冷
却を行うことによって、電鋳シェル５１の表面５１ａ上
に注入されたプラスチック材料を成形するようになって
いる。なお、５５は型枠であり、また、図では電鋳成形
型の内のキャビティを示しているが、コアについても同
様の構成となっている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】従来の技術で述べた電
鋳成形型は、電鋳加工により電鋳シェル５１を形成し、
電鋳シェル５１の裏面側にバッキング材５２を流し込ん
で固化させることによって製造するのであるが、電鋳シ
ェル５１とバッキング材５２には係止部分がないため、
電鋳シェル５１の加熱と冷却が繰り返されると、電鋳シ
ェル５１とバッキング材５２との膨張係数が異なること
に起因して電鋳シェル５１とバッキング材とが剥離し、
特に型が大きくなるとこの傾向も大きくなって、成形精
度の低下を来すこととなる。その結果、成形品の品質を
維持することができないという問題点を有している。

【０００４】本発明は、従来の技術の有するこのような
問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とすると
ころは、電鋳シェルとバッキング材との剥離を防ぎ、成
形品の品質を維持することができる電鋳成形型及びその
製造方法を提供しようとするものである。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記目的を解決するため
に、本発明の電鋳成形型は、電鋳加工により形成された
電鋳シェルと、該電鋳シェルの裏面側を補強する熱硬化
性樹脂又は低融点合金のバッキング材とを備えてなる電
鋳成形型において、前記電鋳シェルの裏面に、前記バッ
キング材に向かって末広がりとなる断面の剥離防止部を
電鋳加工により一体的に形成し、該剥離防止部内に熱硬
化性樹脂又は低融点合金の補強材を充填したものであ
る。

【０００６】また、この電鋳成形型は、電鋳加工により
第一電鋳層を形成する工程と、第一電鋳層上に剥離防止
部に相当する低融点部材の走行体を敷設する工程と、電
鋳加工により第一電鋳層と走行体上に第二電鋳層を形成
する工程と、第二電鋳層上に熱硬化性樹脂又は低融点部
材より融点の高い低融点合金を流し込んで固化させる工
程と、全体を加熱して走行体を形成する低融点部材を融
解排出する工程と、低融点部材を融解排出して形成され
た空洞内に熱硬化性樹脂又は低融点合金を流し込んで固
化させる工程とにより製造することもできる。

【０００７】

【作用】電鋳シェルの裏面に電鋳加工により一体的に形
成され補強材が充填されて補強された剥離防止部は、バ
ッキング材に向かって末広がりとなる断面を有している
ためアンカー効果を奏し、電鋳シェルとバッキング材と
の剥離は防止される。

【０００８】また、この剥離防止部は、第一電鋳層上に
低融点部材の走行体を敷設し、第一電鋳層と走行体上に
第二電鋳層を形成することによって形成され、低融点部
材の走行体を融解排出し、これによって形成される空洞
内に補強材を充填することによって補強される。

【０００９】

【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ説
明する。図１は本発明の電鋳成形型の断面図、図２は図
１のＡ−Ａ断面図、図３乃至図６は本発明の電鋳成形型
の製造方法を示す図である。

【００１０】図１及び図２において、この電鋳成形型
は、電鋳加工によりニッケル、銅等の金属を所定厚さに
析出させて形成した第一電鋳層２と、電鋳加工により第
一電鋳層２の裏面２ｂ上に形成され後述するバッキング
材４に向かって末広がりとなる断面の剥離防止部３ａを
有する第二電鋳層３とからなる電鋳シェル１を、エポキ
シ樹脂等の熱硬化性樹脂又はすずとビスマスの合金、す
ずと亜鉛の合金等の低融点合金のバッキング材４で裏打
ちして補強したものであり、剥離防止部３ａ内には熱硬
化性樹脂又は低融点合金の補強材５が充填されている。
また、バッキング材４には加熱・冷却流体の流路となる
ステンレスパイプ６が内設されており、可塑化されたプ
ラスチック材料を成形面となる電鋳シェル１の第一電鋳
層２の表面２ａ上に注入して成形するときには、このス
テンレスパイプ６内に加熱・冷却流体を流通させて電鋳
シェル１との間で熱交換を行わせ、電鋳シェル１の加熱
と冷却を行うようになっている。なお、７は型枠であ
る。

【００１１】つぎに、上述した電鋳成形型の製造方法を
図３乃至図６に基づいて説明する。図３（ａ）に示すよ
うに、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂等により成形品
と同一形状の電鋳マスター１１（電鋳成形型の逆模型）
を製作し、電鋳マスター１１の表面に銀鏡処理による銀
膜等によって第一導電層１２を付設する。そして、図３
（ｂ）に示すように、この電鋳マスター１１を、ニッケ
ル、銅等の金属１３がプラス極に接続された電鋳槽１４
の電解液１５中に漬け込む。そして、第一導電層１２を
マイナス極に接続して通電し、電鋳マスター１１に電鋳
加工を施す。これにより、電鋳マスター１１表面の第一
導電層１２上にはニッケル、銅等の金属が析出し、第一
電鋳層２が形成される。そして、第一電鋳層２が所定の
厚さｔ₁（２〜３ｍｍ）になると電鋳マスター１１を電
解液１５中から取り出す。

【００１２】そして、図４（ａ）及び図４（ｂ）（図４
（ａ）のＢ矢視図）に示すように、電鋳マスター１１表
面に形成された第一電鋳層２上にワックス、パラフィ
ン、低融点合金（例えば、ビスマスと鉛の合金）等の低
融点部材を貼着することにより、第一電鋳層２上に外方
に向かって末広がりとなる断面（図では断面が逆台形で
あるものを示している）の帯状の複数の走行体１８を敷
設し、この低融点部材の走行体１８の表面に第二導電層
１９を付設する。そして、図４（ｃ）に示すように、こ
の電鋳マスター１１を電鋳槽１４の電解液１５中に再度
漬け込み、電鋳マスター１１に電鋳加工を施す。これに
より、第一電鋳層２と走行体１８表面の第二導電層１９
上には金属が析出し、剥離防止部３ａを有する第二電鋳
層３が形成される。そして、第二電鋳層３が所定の厚さ
ｔ₂ （１〜２ｍｍ）になると電鋳マスター１１を電解液
１５中から取り出す。

【００１３】さらに、図５（ａ）に示すように、第二電
鋳層３の裏面側を型枠７によって取り囲み、加熱・冷却
流体の流路となるステンレスパイプ６を配置する。そし
て、型枠７内に流動状態のエポキシ樹脂等の熱硬化性樹
脂又はすずとビスマスの合金、すずと亜鉛の合金等の低
融点合金のバッキング材４を注入し、バッキング材４を
時間経過により固化させる。そして、図５（ｂ）に示す
ように、電鋳マスター１１表面に第一電鋳層２と剥離防
止部３ａを有する第二電鋳層３とからなる電鋳シェル１
が形成され、電鋳シェル１の裏面側をバッキング材４で
裏打ちして一体となった電鋳体２５を加熱オーブン２６
内で加熱し（バッキング材４が低融点合金である場合に
は、低融点部材の融点よりも高く、バッキング材４の融
点よりも低い温度に加熱する）、低融点部材の走行体１
８を融解させて排出する。そして、低融点部材が全て排
出され、剥離防止部３ａ内に空洞２８が形成されると、
電鋳体２５を加熱オーブン２６内から取り出す。

【００１４】そして、図６（ａ）に示すように、剥離防
止部３ａ内の空洞２８に熱硬化性樹脂又は低融点合金の
補強材５を流し込み、補強材５を時間経過により固化さ
せる。そして、図６（ｂ）に示すように、第一電鋳層２
から電鋳マスター１１を抜き取る。これにより、第一電
鋳層２と剥離防止部３ａを有する電鋳リブ３とからなる
電鋳シェル１がバッキング材４で裏打ちして補強され、
加熱・冷却流体の流路となるステンレスパイプ６を内設
した電鋳成形型が製造される。このように、電鋳シェル
１の裏面に電鋳加工により一体的に形成され補強材５が
充填されて補強された剥離防止部３ａは、バッキング材
４に向かって末広がりとなる断面を有しているためアン
カー効果（投錨効果）を奏し、電鋳シェル１の加熱と冷
却が繰り返されても電鋳シェル１とバッキング材４との
剥離は防止される。その結果、成形精度が確保されて成
形品の品質を維持することができるようになり、大きな
型を電鋳加工で製造することが可能となる。なお、図で
は電鋳成形型の内のキャビティを示しているが、コアに
ついても同様の構成とすることができ、同様の製造方法
によって製造することができる。

【００１５】

【発明の効果】本発明は、上述のとおり構成されている
ので以下に記載する効果を奏する。電鋳シェルの裏面に
電鋳加工により一体的に形成され補強材が充填されて補
強された剥離防止部は、バッキング材に向かって末広が
りとなる断面を有しているためアンカー効果を奏し、電
鋳シェルとバッキング材との剥離は防止される。その結
果、成形精度が確保されて成形品の品質を維持すること
ができるようになり、大きな型を電鋳加工で製造するこ
とが可能となる。

【００１６】また、この剥離防止部は、第一電鋳層上に
低融点部材の走行体を敷設し、第一電鋳層と走行体上に
第二電鋳層を形成することによって形成され、低融点部
材の走行体を融解排出し、これによって形成される空洞
内に補強材を充填することによって補強されるので、簡
単な工程で所望の剥離防止部を有する型を製造すること
ができるようになる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の電鋳成形型の断面図である。

【図２】図１のＡ−Ａ断面図である。

【図３】本発明の電鋳成形型の製造方法を示した図であ
る。

【図４】本発明の電鋳成形型の製造方法を示した図であ
る。

【図５】本発明の電鋳成形型の製造方法を示した図であ
る。

【図６】本発明の電鋳成形型の製造方法を示した図であ
る。

【図７】従来の電鋳成形型の断面図である。

【符号の説明】 １ 電鋳シェル ２ 第一電鋳層 ３ 第二電鋳層 ３ａ 剥離防止部 ４ バッキング材 ５ 補強材 ６ ステンレスパイプ １１ 電鋳マスター １２ 第一導電層 １８ 走行体 １９ 第二導電層

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 横山 周市 兵庫県神戸市灘区水車新田字宮坂111−１ −406 (72)発明者 長田 関治 愛知県西尾市法光寺町宮前48−２ オサダ 精工株式会社内

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 電鋳加工により形成された電鋳シェル
   と、該電鋳シェルの裏面側を補強する熱硬化性樹脂又は
   低融点合金のバッキング材とを備えてなる電鋳成形型に
   おいて、前記電鋳シェルの裏面には、前記バッキング材
   に向かって末広がりとなる断面の剥離防止部が電鋳加工
   により一体的に形成されており、該剥離防止部内には熱
   硬化性樹脂又は低融点合金の補強材が充填されているこ
   とを特徴とする電鋳成形型。
2. 【請求項２】 電鋳加工により第一電鋳層を形成する工
   程と、第一電鋳層上に剥離防止部に相当する低融点部材
   の走行体を敷設する工程と、電鋳加工により第一電鋳層
   と走行体上に第二電鋳層を形成する工程と、第二電鋳層
   上に熱硬化性樹脂又は低融点部材より融点の高い低融点
   合金を流し込んで固化させる工程と、全体を加熱して走
   行体を形成する低融点部材を融解排出する工程と、低融
   点部材を融解排出して形成された空洞内に熱硬化性樹脂
   又は低融点合金を流し込んで固化させる工程とを含んで
   なる請求項１記載の電鋳成形型の製造方法。