JPH05339681A

JPH05339681A - Ｆｅ−Ｎｉ系電子銃電極材料

Info

Publication number: JPH05339681A
Application number: JP15184092A
Authority: JP
Inventors: Kazu Sasaki; 計佐々木
Original assignee: Hitachi Metals Ltd
Current assignee: Proterial Ltd
Priority date: 1992-06-11
Filing date: 1992-06-11
Publication date: 1993-12-21

Abstract

(57)【要約】【目的】打抜性および高温焼鈍後の取扱いでスリ疵や
変形が少なく、かつ酸化着色の少ないＦｅ−Ｎｉ系電子
銃電極材料の提供。【構成】重量％でＮi:30〜55%、Ｓi:0.05〜1.0%、Ｍ
n:1.0%以下、Ｃ:0.05%以下、Ｔi,Ｎb,Ｗ,Ｖの少なくと
も１種を合計で0.5〜3%、およびＢ：0.0005〜0.03%を含
有し、残部が実質的にＦeおよび不可避的不純物よりな
る材料、ならびに上記合金にさらにＳ:0.003〜0.05%を
添加した材料。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、ＴＶ、ディスプレイ等
の電子管の管内部品、特に電子銃の電極材料として好適
なＦｅ−Ｎｉ系材料に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】ＴＶ受像管等の電子銃部品で陰極から放
射された熱電子を加速、集束させる電子レンズ等の電子
ビームの軌道を制御する電極材料として、低熱膨張で酸
化し難く、しかも打抜き、深絞り等の冷間加工可能な42
Ｎi-Ｆe(42合金)をはじめとするＦｅ−Ｎｉ系材料が広
く用いられている。一般にこれらの電極は、薄板材料を
所要形状に打抜き等のプレス加工後、バレル研磨等の処
理が施され、その後、表面純化、吸着ガス除去のため、
高温の還元性雰囲気中(950〜1050℃)で焼鈍して使用さ
れる。これらの電極部品は、その形状的精度が画面上の
電子ビームのスポット形状、位置を大きく左右し、ブラ
ウン管の性能(色ズレ、色純度)に直接影響するため、特
に精密プレス加工が行なわれている。

【０００３】しかるに最近、ＴＶ受像管あるいはコンピ
ュータやＯＡ機器のディスプレイの高精細化、高性能化
が急速に進み、電子銃部品の精度に対する要求度が一段
と厳しくなり、従来に比べ数段優れた打抜性を有する材
料が望まれている。しかしながら、従来の42合金は、上
記要求に対しては材料的に粘く、バリ(カエリ)の発生が
大きいため、カス詰まり、カス上りによる製品トラブ
ル、あるいは電界集中による２次電子放射や電子ビーム
の撹乱等大きな問題を有している。42合金の打抜性を改
善するものとして、従来ＩＣリードフレームや封着合金
の用途で、例えば特開昭60-255953号、特開昭60-255954
号、特開昭59-96245号などは快削性元素であるＳ，Ｃa
等の添加、あるいは結晶粒を微細化することを提案して
いる。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかし、前記提案の合
金は、金型寿命延長の点では優れるが、極めて精密な打
抜プレス加工でのバリ（カエリ）の発生については十分
とは言えず、また、高温焼鈍後の取扱いでスリ疵や変形
が生じ易く、最近の超高精細化に伴う高い要求に対して
は実用上問題を有していることがわかった。本発明の目
的は、前記従来の欠点である打抜加工時のバリ（カエ
リ）の発生が極めて少なく、かつ高温焼鈍後のスリ疵や
変形が少ないＦｅ−Ｎｉ系電子銃電極材料を提供するこ
とである。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、以上の知
見に基づいて、Ｆｅ−Ｎｉ系合金の打抜性、高温焼鈍後
のスリ疵や変形に対する抵抗性および酸化着色性等に及
ぼす各種添加元素の影響について研究した結果、特定の
元素の添加により、材料自身の硬さの上昇と適度の脆化
による顕著な打抜性向上効果および高温焼鈍後の硬さの
上昇によるスリ疵や変形の防止効果がもたらされるこ
と、ならびに上記特定元素の添加で、酸化着色しやすく
なることに対するＢの添加による酸化抑制作用により、
電子銃電極材料に要求される他の材料特性を低下するこ
となく、打抜性と高温焼鈍後のスリ疵や変形に対する抵
抗性が極めて優れた電子銃電極材料が得られることを見
出し本発明をなした。

【０００６】すなわち、本発明は、重量％でＮi:30〜55
%、Ｓi:0.05〜1.0%、Ｍn:1.0%以下、Ｃ:0.05%以下、Ｔ
i,Ｎb,Ｗ,Ｖの少なくとも１種を合計で0.5〜3%、および
Ｂ：0.0005〜0.03%を含有し、残部が実質的にＦeおよび
不可避的不純物よりなることを特徴とするＦｅ−Ｎｉ系
電子銃電極材料、ならびに打抜性の一層の向上を目的
に、上記合金元素に加え、さらにＳ:0.003〜0.05%を含
有することを特徴とするＦｅ−Ｎｉ系電子銃電極材料で
ある。

【０００７】以下、本発明の成分限定理由について述べ
る。Ｎiは本発明の基本成分であり、Ｎi量が30%未満ま
たは55%を越えると熱膨張係数が大きくなり、電子銃電
極材料としては実用上好ましくなく、Ｎiは30〜55%とし
た。Ｓiは通常42合金をはじめとするＦｅ−Ｎｉ系合金
では、脱酸を目的に微量含有されているが、マトリック
スを強化し、本発明が目的とする高温焼鈍後の硬さを高
める作用を有する。Ｓiは0.05%未満ではその効果が得ら
れず、一方1.0%を越えると打抜性を害すると同時に酸化
膜を固着するため、0.05〜1.0%とした。ＭnはＳiと同様
脱酸に必要な元素であると同時に、打抜性を付与するＭ
nＳの形成に必要である。しかし、真空中で蒸発し易く
1.0%を越えると実用上好ましくないため、上限を1.0%と
した。

【０００８】Ｃは0.05%を越えると炭化物や窒化物を形
成して打抜性を低下させるため0.05%以下とした。Ｔi,
Ｎb,Ｗ,Ｖは、材料自身の硬さ上昇と適度の脆化による
打抜での破断性向上により本発明が目的とするバリの発
生を極めて少なくして、打抜性の改善に大きな効果を与
え、また高温焼鈍後の硬さを高く保持して、スリ疵、変
形に対する抵抗性を与えるもので、少なくとも１種以上
を含有せしめる。しかし、添加量が総計で0.5%未満で
は、その効果が得られず、逆に3%を越えると打抜性を害
し、また、後述のようにＢを添加しても高温焼鈍で酸化
し（着色することでわかる）易くなるため、0.5〜3%と
した。

【０００９】本発明で打抜性向上、高温焼鈍後の硬さ上
昇を目的に添加するＴi,Ｎb,Ｗ,Ｖは非常に活性で、還
元性雰囲気焼鈍下でも雰囲気により表面酸化し易く安定
性上問題を含んでいる。Ｂは熱間加工性の改善と同時に
粒界に拡散し易く、上記活性元素表面酸化の抑制に大き
な効果を有するものである。Ｂは0.0005%未満ではその
効果が得られず、一方0.03%を越えるとその効果が飽和
するとともに、逆に熱間加工性を劣化させるため、0.00
05〜0.03%とした。本発明では、さらに一層優れた打抜
性を得る目的で、Ｓを含有せしめることが好ましく、こ
の場合、Ｓは少なくとも0.003%以上含有させる必要があ
るが、0.05%を越えると熱間加工性や薄板での冷間加工
性を著しく害するため、0.003〜0.05%とする。なお、本
発明合金は、工業的に用いられているＦｅ，Ｎｉ等の原
料に含まれる不純物（Ｐ，Ｎ，Ｏ等）の含有および熱間
加工性の改善に効果を有するＭgの微量含有は、実質的
に本発明の特性に影響を与えないが、深絞りやバーリン
グ加工等の冷間加工性の点からはできるだけ少ない方が
好ましい。

【００１０】

【実施例】以下、本発明を実施例により詳細に説明す
る。表１に示す化学組成のＦｅ−Ｎｉ系合金を真空溶解
炉で溶解し、鋳造後1050℃以上の温度で鍛造、熱間圧延
を行ない、厚さ 4mmの板を得た。なお、ここでＳ 0.002
%以下は不純物範囲である。さらに、冷間圧延と焼鈍を
繰り返し、板厚 0.4mmに仕上げ、水素中で800℃の軟化
焼鈍を施して試料を得、該試料について打抜性、高温焼
鈍後のスリ疵や変形に対する抵抗性および酸化着色性に
ついて、それぞれ評価、試験した。その結果を表２に示
す。

【００１１】

【表１】

【００１２】打抜性は、上記試料を10φmm×6mmφリン
グ金型(クリアランス:30μm)を用い、打抜き加工を行な
い、打抜面の破断面面積比率を測定して破断性、バリ発
生の指標とした。高温焼鈍後のスリ疵、変形に対する抵
抗性および酸化着色性は、上記試料を1050℃で10分間水
素雰囲気中(DP:-30℃)で焼鈍し、その硬さおよび着色の
有無でそれぞれ評価した。なお、表２には、上記打抜性
テストで得られたリングの打抜面（剪断面部）の硬さ測
定結果を試料状態の硬さと比較して硬さ変化として示し
た。なお、図１の（ａ）および（ｂ）に、それぞれ従来
材料である42合金Ｎo.13と本発明合金Ｎo.3の打抜面の
状況(スケッチ)を示す。

【００１３】

【表２】

【００１４】表２から、本発明合金Ｎo.1〜7では、Ｔi,
Ｎb,Ｗ,Ｖの適量の添加により、破断面比率が39%以上と
大きく破断性が向上し、図１で示すように、バリの発生
が極めて少なく、優れた打抜性が得られること、高温焼
鈍後の硬さがHV136以上と高く、スリ疵や変形が発生し
難いこと、また、Ｂの添加により、前記Ｔi〜Ｖの添加
にも関わらず表面酸化による着色が見られないことがわ
かる。これに対し、Ｔi等の元素を含まない従来合金で
ある42合金(Ｎo.13)および比較合金Ｎo.11は、破断面比
率がそれぞれ26,32%と小さく、また、これらはいずれも
高温焼鈍後の難さが117,118と低く、さらにＴiを含みな
がらＢを含有しない比較合金Ｎo.12は打抜性は良いが、
表面酸化し易くなっている。なお、打抜による硬さ変化
は、本発明材料、比較材料、従来材材料とも、ほぼHV10
0〜115程度であることがわかる。次に、本発明合金Ｎo.
3と従来の42合金について、電極形状にプレス成形後確
認したところ、本発明合金Ｎo.3ではカス詰まり、カス
上りもなく、バリの発生も従来の42合金より極めて少な
く、また表面の着色もなく高温焼鈍後の変形、スリ疵も
少なく良好であった。

【００１５】

【発明の効果】以上のごとく、本発明のＦｅ−Ｎｉ系材
料は、ＴＶやディスプレイの電子管の電子銃の電極材料
として、優れた打抜性高温焼鈍後のスリ疵や変形に対す
る抵抗性、耐酸化着色性を有し、最近、特に高度化する
高精細化あるいは高品位化に好適であり、工業上の効果
が極めて大きい。

【図面の簡単な説明】

【図１】打抜面の形態を示す図で、（ａ）は従来の42合
金、（ｂ）は本発明合金を示したものである。

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】重量％でＮi:30〜55%、Ｓi:0.05〜1.0
%、Ｍn:1.0%以下、Ｃ:0.05%以下、Ｔi,Ｎb,Ｗ,Ｖの少な
くとも１種を合計で0.5〜3%、およびＢ：0.0005〜0.03%
を含有し、残部が実質的にＦeおよび不可避的不純物よ
りなることを特徴とするＦｅ−Ｎｉ系電子銃電極材料。
【請求項２】重量％でＮi:30〜55%、Ｓi:0.05〜1.0
%、Ｍn:1.0%以下、Ｃ:0.05%以下、Ｔi,Ｎb,Ｗ,Ｖの少な
くとも１種を合計で0.5〜3%、Ｂ：0.0005〜0.03%、およ
びＳ:0.003〜0.05%を含有し、残部が実質的にＦeおよび
不可避的不純物よりなることを特徴とするＦｅ−Ｎｉ系
電子銃電極材料。