JPH05338101A - 低移行性塩化ビニル系樹脂シート - Google Patents

低移行性塩化ビニル系樹脂シート

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JPH05338101A
JPH05338101A JP17190892A JP17190892A JPH05338101A JP H05338101 A JPH05338101 A JP H05338101A JP 17190892 A JP17190892 A JP 17190892A JP 17190892 A JP17190892 A JP 17190892A JP H05338101 A JPH05338101 A JP H05338101A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 塩化ビニル系樹脂(特にペースト)を原料と
して製造されるシートであって、該シートに配合される
可塑剤の移行や溶剤による抽出を抑制した、いわゆる低
移行性塩化ビニル系樹脂シートを提供する。 【構成】 可塑剤として、高分子量のポリエステル系可
塑剤と、化学構造が嵩高(バルキー)な3〜6のカルボ
キシル基を有する単核芳香族カルボン酸のカルボン酸エ
ステル系可塑剤とを、1:9〜9:1(重量比)の割合
で併用する。高分子量のポリエステル系可塑剤を単独使
用した場合の問題である塩ビペーストの粘度上昇と、バ
ルキーな上記単核芳香族カルボン酸のカルボン酸エステ
ル系可塑剤を単独使用した場合の問題である塩ビペース
トのゲル化特性の悪さを、両可塑剤の併用による相乗作
用により解消し、製造容易で、かつ良好な製品状態で、
低移行性の塩化ビニル系樹脂シートを得ることができ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、塩化ビニル系樹脂を原
料として製造されるシートに関し、特に塩化ビニル系樹
脂のペーストを原料として製造されるシート(以下、
「塩ビペーストシート」と記すこともある)に好適なも
のであり、詳しくは配合されている可塑剤の移行やアル
コール等の溶剤による抽出を抑制した上記シート、すな
わち低移行性塩化ビニル系樹脂シートに関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】塩化
ビニル系樹脂を原料とするシート(以下、「塩ビシー
ト」と記すこともある)は、一般に、カレンダーロール
によりシート化して製造する(以下、「カレンダー法」
と記す)ものと、ペーストを紙(最終工程等で除去する
離型紙を含む)や布等の基材上に各種の手段でコーティ
ングしシート化して製造する(以下、「ペースト法」と
記す)ものとに大別される。
【0003】ペースト法による塩ビシート(すなわち、
塩化ビニル系樹脂ペーストシート)としては、塩化ビニ
ル系樹脂単層からなるシートの他に、紙,織布,不織
布,編布,これらに合成樹脂を含浸させたもの,合成樹
脂シート,これらの複合材料等の基材上にペーストをコ
ーティングして得られるシート、あるいは上記の塩化ビ
ニル系樹脂単層からなるシートとこれらの基材とを積層
して得られるシートが挙げられ、これらのシートは、い
わゆる塩ビレザー、壁材、床材等として広く使用されて
いる。
【0004】このようなペースト法による塩ビシート
は、カレンダー法による塩ビシートでは得られない利
点、例えば、各種の基材が使用可能で、バラエティー
に富む製品が得られる、コーティングが複数回、しか
も各コーティング毎に樹脂原料の変更が可能であり、意
匠性に優れた複合製品が得られる、ソフトな風合いの
製品が得られる、製品シートの成形性が良く、熱成
形、真空成形が可能であり、しかも高周波ウエルダー等
による融着も可能である、基材の無い製品シートの場
合、他の材料へのラミネートが可能である、発泡倍率
を高くすることができる等を有している。このため、塩
ビペーストシートは、現在、カレンダー法によるシート
に比し、広い分野で使用されている。
【0005】ところで、塩ビペーストシートの原料であ
る塩ビペーストは、周知の通り、エマルジョン重合によ
り製造される塩化ビニル系樹脂に、ジオクチルフタレー
ト(DOP)を代表とするフタル酸系の可塑剤が配合さ
れて調製されたものが一般的である。このような塩ビペ
ーストを原料とする塩ビペーストシートにおいては、上
記のフタル酸系の可塑剤が徐々に移行したり、アルコー
ル等の溶剤によって抽出されるため、次のような問題を
生ずる。
【0006】上記の塩ビペーストシートは、例えば、ビ
デオカメラ、携帯用カセットデッキ等の弱電製品のボデ
ィーを保護するためのケースや付属品の表皮として使用
されるが、このボディーがポリスチレン、ABS樹脂、
ポリカーボネート等により形成されている場合、可塑剤
はボディー側に移行するため、ボディーの構成材料であ
る上記の樹脂を侵食(溶解)し、外観を著しく損ね、と
きにはボディー内部の機構にまで影響を及ぼすこともあ
る。
【0007】また、上記の塩ビペーストシートは、病
院、理容院、美容院等の椅子の表皮、あるいは壁材や床
材等の内装材としても使用されるが、この場合は、飛散
する消毒薬、整髪料等が、塩ビペーストシート表面に付
着して、該レザー中の可塑剤を抽出する。可塑剤が大量
に抽出されてしまうと、塩ビペーストシートは、ソフト
感を失って硬化し、ときにはヒビ割れすら生じ、外観の
みならず、椅子の使用感等をも著しく損ねる。
【0008】さらに、上記の塩ビペーストシートは、カ
バン類、家具類、事務用品、運動用品等の表皮として、
あるいは車の内装材等としても多用されているが、これ
らにおいても、上記のような特定の樹脂や薬剤等と接触
する機会が多い場合は、上記と同様に接触する相手材を
侵食したり、自身を固化させる等の事態を招く。
【0009】以上のような塩ビペーストシート中の可塑
剤の移行および抽出を抑制するためには、可塑剤とし
て、高分子量のものを使用するか、枝分かれが多い等の
ように分子の構造が嵩高(バルキー)なものを使用する
ことが考えられる。すなわち、高分子量の可塑剤、ある
いはバルキーな可塑剤であれば、塩ビペーストシートを
構成している塩ビの粒子間を移動することが極めて困難
となり、したがって、上記のような移行および抽出が抑
制されるものと考えられる。
【0010】しかし、本発明者の研究によれば、耐移行
性能、耐抽出性能に優れた高分子量の可塑剤を使用した
場合には、塩ビペーストのゾル粘度が高くなりすぎて、
加工性が悪化し、現在のシート製造技術では、良好な製
品を得ることが極めて困難ないしは不可能であることが
確認されている。一方、バルキーな可塑剤を使用した場
合には、塩化ビニル系樹脂との相溶性が悪く、ゲル化特
性に欠け、やはり良好な塩ビペーストシートを得ること
が極めて困難ないしは不可能であることが確認されてい
る。
【0011】そこで、本発明の目的は、カレンダー法に
よる塩ビシートに比して、数々の利点を有する塩ビペー
ストシートを、可塑剤の移行および抽出を抑え、しかも
上記のようなシート製造技術上の問題を生起することな
く、提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記目的を
達成するために研究を重ねた結果、(i)前述の高分子
量の可塑剤とバルキーな可塑剤とを併用することによ
り、これらの可塑剤をそれぞれ単独で使用する場合の前
述のようなシート製造上の種々の弊害が生じないばかり
か、これら各可塑剤の相乗作用により、塩ビぺートのゾ
ル粘度が予想以上に低下し、シート製造上極めて良好な
ペースト状態を呈すること、(ii)このときの高分子
量の可塑剤として、ジカルボン酸とジオールとの縮合重
合により得られるポリエステル系可塑剤が、バルキーな
可塑剤として、3〜6のカルボキシル基を有する単核芳
香族カルボン酸のカルボン酸エステル系可塑剤(以下、
「芳香族カルボン酸エステル系可塑剤」と記すことがあ
る)が、それぞれ適していること(すなわち、これらの
可塑剤であれば、塩ビペーストシートと上記のポリスチ
レン、ABS樹脂、ポリカーボネート等とが接触して
も、これらを侵食しないし、消毒薬等に使用される溶剤
に抽出されることも抑制され、また塩ビペーストのゾル
粘度の上昇やゲル化特性等の面において、さらにはコス
トの面等においても好ましいこと)、(iii)上記の
ポリエステル系可塑剤と芳香族カルボン酸エステル系可
塑剤は、塩ビペーストシートのみならず、カレンダー法
や押出法等のペースト法以外の製造方法によって得られ
る塩化ビニル系樹脂シートにも適用できること、の知見
を得た。
【0013】本発明は、上記の知見に基づいてなされた
もので、(1)可塑剤として、ポリエステル系可塑剤と
3〜6のカルボキシル基を有する単核芳香族カルボン酸
のカルボン酸エステル系可塑剤とを1:9〜9:1(重
量比)の割合で併用してなることを特徴とする低移行性
塩化ビニル系樹脂シート、および(2)基材上に、可塑
剤としてポリエステル系可塑剤と3〜6のカルボキシル
基を有する単核芳香族カルボン酸のカルボン酸エステル
系可塑剤とを1:9〜9:1(重量比)の割合で併用し
てなる塩化ビニル系樹脂層を少なくとも一層積層されて
なることを特徴とする低移行性塩化ビニル系樹脂シー
ト、を要旨とする。なお、本発明は、塩ビペーストシー
トに特に好適であるが、カレンダー法や押出法等のペー
スト法以外の製造方法によって得られる塩化ビニル系樹
脂シートにも適用できる。
【0014】本発明に使用されるポリエステル系可塑剤
は、化1の一般式に示すように、ジカルボン酸とジオー
ルの縮合重合により重合され、末端基としてカルボキシ
ル基あるいは水酸基を持つものであるが、一般には末端
のカルボキシル基および水酸基は、それぞれアルコー
ル、カルボン酸と縮合重合しているものである(化1に
は、両末端基が水酸基である場合を例示する)。該ポリ
エステル系可塑剤の分子量は、小さすぎると、前述した
従来のフタル酸系可塑剤と同様に移行および抽出が多
く、逆に大きすぎると、ゾル粘度が高くなりすぎて前述
したポリエステル系可塑剤単独使用の場合と同様の問題
が生じるため、本発明では分子量600〜4000、好
ましくは1000〜2500のものを使用する。
【0015】
【化1】
【0016】化1中のジカルボン酸としては、具体的に
は、フタル酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン
酸、セバシン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸等が
挙げられる。また、化1中のカルボン酸は、炭素数1〜
15の脂肪酸等のモノカルボン酸である。さらに、化1
中のジオールのR′は、炭素数が3〜6、好ましくは3
〜5のアルキレン基であり、特に化2の構造式のような
分枝の有るアルキレン基が可塑剤をバルキーなもの(す
なわち、移行や抽出を生じ難いもの)とするので好まし
い。
【0017】
【化2】
【0018】3〜6のカルボキシル基を有する単核芳香
族カルボン酸のカルボン酸エステル系可塑剤としては、
例えば、化3の一般式を有するトリメリット酸やピロメ
リット酸のような単核芳香族カルボン酸とアルコールの
縮合反応によって得られ、化4の一般式を有する化合物
が使用できるが、分子構造がよりバルキーなピロメリッ
ト酸から得られるものが特に好ましい。
【0019】
【化3】
【0020】
【化4】
【0021】化4中、R、R、R、Rは、炭素
数2〜13のアルキル基、シクロアルキル基、アルキレ
ン基、ポリメチレン基、アルキン基、アルコキシル基で
あり、一部がフェニル基等で置換されていてもよい。好
ましくは、エチル基、ブチル基、オクチル基、イソオク
チル基、イソデシル基、トリデシル基、ベンジル基、ア
リル基、カプリル基、ノニル基、シクロヘキシル基、ヘ
キシル基、メトキシエチル基、ブトキシエチル基、エチ
ルヘキシル基である。R、R、R、Rは、全て
が同じでも、それぞれ異なっていてもよく、また2つづ
つが同じであってもよいし、2つが同じで他の2つはそ
れぞれ異なっていてもよく、あるいは3つが同じであっ
てもよい。
【0022】以上のポリエステル系可塑剤と芳香族カル
ボン酸エステル系可塑剤との混合割合は、使用する塩化
ビニル系樹脂(種類、分子量、分子の粒径等)、あるい
はシート製造方法により、ポリエステル系可塑剤:芳香
族カルボン酸エステル系可塑剤=1:9〜9:1(重量
比)、好ましくは5:5〜9:1の範囲内から好適な混
合割合が適宜選択される。
【0023】すなわち、ポリエステル系可塑剤が多けれ
ば、前述したように、塩ビペーストのゾル粘度を上昇さ
せ、芳香族カルボン酸エステル系可塑剤が多ければ、ゲ
ル化特性に問題を生じさせることがある。ただし、シー
ト製造方法によっては、ゾル粘度がある程度高くても問
題ない場合もあり、また塩化ビニル系樹脂の種類によっ
ては、ゲル化特性がそれ程悪くならない場合もある。し
たがって、上記のように、使用する塩化ビニル系樹脂に
より、また採用するシート製造方法により、上記の範囲
内から最適の混合割合が適宜選択される。
【0024】このようなポリエステル系可塑剤と芳香族
カルボン酸エステル系可塑剤とが併用される塩化ビニル
系樹脂としては、塩化ビニル系樹脂シートに通常使用さ
れているものであれば、どのようなものも使用すること
ができる。具体的には、平均重合度が約800〜200
0、好ましくは約1000〜1500のポリ塩化ビニル
または塩化ビニルを主体とする共重合体(例えば、エチ
レン−塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル−塩化ビニル共
重合体、塩化ビニル−メタクリル酸エステル共重合体
等)、あるいはこれらのポリ塩化ビニルや塩化ビニルを
主体とする共重合体を主体とする他の相溶性の樹脂(例
えば、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹
脂、酢酸ビニル系樹脂、ウレタン樹脂、アクリロニトリ
ル−スチレン−ブタジエン共重合樹脂、部分ケン化ポリ
ビニルアルコール等)とのブレンド物等が挙げられる。
【0025】上記の塩化ビニル系樹脂に対する上記のポ
リエステル系可塑剤と芳香族カルボン酸エステル系可塑
剤との配合割合は、上記と同様に使用する塩化ビニル系
樹脂の種類や採用するシート製造方法等により異なり、
一概には決められないが、使用する塩化ビニル系樹脂が
採用するシート製造方法において最適の可塑性を示し得
るのに十分な量を配合すればよい。具体的には、従来の
フタル酸系の可塑剤の場合と同程度でよく、塩化ビニル
系樹脂100重量部に対し、ポリエステル系可塑剤と芳
香族カルボン酸エステル系可塑剤の上記範囲内の割合で
の混合体として、40〜150重量部、好ましくは50
〜90重量部が適している。
【0026】また、本発明においては、上記のポリエス
テル系可塑剤と芳香族カルボン酸エステル系可塑剤の他
に、塩化ビニル系樹脂シートを製造する際に通常使用さ
れる各種の添加剤、例えば、発泡剤、着色剤、安定剤、
充填剤等を配合することができる。これらの添加剤の種
類あるいは配合量は、前述した従来のフタル酸系の可塑
剤を使用する場合と同様の種類あるいは配合量でよく、
特別の種類や配合量にする必要はない。
【0027】以上の配合からなる本発明の塩ビペースト
シートは、通常の塩ビペーストシートの製造方法と全く
同様にして製造することができる。すなわち、先ず、主
にエマルジョン重合により製造されるペースト用塩化ビ
ニル系樹脂に、上記のポリエステル系可塑剤と芳香族カ
ルボン酸エステル系可塑剤とを上記した割合で配合し、
また必要に応じて上記の各種の添加剤を所定の割合で配
合し、これらを均一に分散させて塩ビペーストを調製す
る。このとき、ポリエステル系可塑剤と芳香族カルボン
酸エステル系可塑剤とは、予め所定の割合となるように
混合しておいたものを配合してもよいし、別々に所定の
量を配合することもできる。
【0028】次いで、この塩ビペーストを、紙(離型紙
を含む)、織布、不織布、編布、これらに合成樹脂を含
浸させたもの、合成樹脂シート、これらの複合材等の基
材上に、ドクターナイフ、コンマドクター、ロールコー
ター、グラビアコーター、ロータリースクリーンコータ
ー、オフセットコーター、フレキソコーター、リバース
ロールコーター、その他の適宜の手段によりコーティン
グする。このとき、コーティングを1回のみとしてもよ
いし、複数回行ってコーティング層を複数層としてもよ
く、複数層とする場合は各層毎に異なる塩化ビニル系樹
脂によるペーストを使用することもできる。なお、複数
回コーティングする場合は、前にコーティングした層を
乾燥(ゲル化)させた後に行う。また、上記の各種基材
(離型紙を除く)は、用途に応じて難燃性等の各種の特
性を付与したものであってもよい。
【0029】コーティングの後、塩ビペースト層は、加
熱されてゲル化され、続いて加熱されてキュアーされ
る。このときのゲル化条件およびキュアー条件は、塩ビ
ペーストの固形分濃度や塩ビペースト層の厚さ等によっ
て異なるが、従来のフタル酸系の可塑剤を使用している
場合と同様でよい。なお、この塩ビペーストの固形分濃
度や塩ビペースト層の厚さも従来のフタル酸系の可塑剤
を使用している場合と同様でよく、例えば、固形分濃度
は上記のコーティング手段の種類等により、塩ビペース
ト層の厚さは製品シートの用途に応じて、適宜選定可能
である。また、塩ビペーストが発泡剤を配合している場
合は、上記のゲル化あるいはキュアーを行う際に発泡も
同時に行わせる。
【0030】上記のキュアーの後、基材として離型紙を
使用している場合は、これを剥離する。これにより、基
材のない塩ビペーストシートを得ることができる。この
離型紙として、表面(塩ビペーストのコーティング面
側)に凹凸文様のあるものを使用すれば、製造されるシ
ート表面に該凹凸文様が転写されることも、従来のフタ
ル酸系の可塑剤を使用する場合と同様である。
【0031】また、必要に応じて、上記のキュアーの
後、表面側にプリントやエンボス等の二次加工を行った
り、あるいは表面層の保護や、表面感触を向上させる等
の目的で、ウレタン樹脂等の合成樹脂による上引層を設
けたり、紙、織布、不織布、編布、これらに合成樹脂を
含浸させたもの、合成樹脂シート、これらの複合材等の
基材上に、積層することもできる。このような二次加工
あるいは上引層の形成等も、従来のフタル酸系の可塑剤
を使用している塩ビペーストシートと同様の材料、方
法、条件等で行うことができる。
【0032】カレンダー法、押出法等のペースト法以外
の製造方法によって得られる塩化ビニル系樹脂シートに
ついても、塩ビペーストシートと同様に、通常のフフタ
ル酸系可塑剤を使用したものと同様の製造方法を採るこ
とができ、表面側に行うプリントやエンボス等の二次加
工や、上引層の形成等も、従来のフタル酸系の可塑剤を
使用している塩化ビニル系樹脂シートと同様の材料、方
法、条件等で行うことができる。
【0033】
【作用】本発明の塩化ビニル系樹脂シートに使用されて
いる高分子量のポリエステル系可塑剤は、互いに絡まり
合ってさらに大きな分子となって、樹脂粒子間の移動が
困難な形態をとり、またバルキーな芳香族カルボン酸エ
ステル系可塑剤は、それ自体で樹脂粒子間の移動が困難
な形態となっており、しかも高分子量の可塑剤とバルキ
ーな可塑剤とが絡まり合うこともあり、粒子間の移動が
一層困難な形態となると考えられる。このため、本発明
の塩化ビニル系樹脂シートにあっては、可塑剤の移行が
少なくなり、いわゆる低移行性の塩化ビニル系樹脂シー
トとなる。
【0034】しかも、本発明の塩化ビニル系樹脂シート
をペースト法にて製造する場合問題となる、高分子量の
ポリエステル系可塑剤による塩ビペーストのゾル粘度の
上昇と、バルキーな芳香族カルボン酸エステル系可塑剤
による塩ビペーストのゲル化特性の悪化とは、これら両
可塑剤の併用により相殺されて解消される。
【0035】このとき、塩ビペーストのゾル粘度の上昇
は、予想を上回って改良される。すなわち、塩ビペース
トのゾル粘度は、上記の両可塑剤を併用する場合、図1
のグラフに示すように、理論的には直線αのようになる
と予想されるが、実際には曲線βのようなゾル粘度を示
すことが本発明者により確認されている(なお、図1の
グラフは、後述する実施例で得られた結果である)。
【0036】以上の両可塑剤の相乗作用により、本発明
の塩化ビニル系樹脂シートでは、可塑剤の移行が低く抑
えられ、したがってポリスチレンやABS樹脂等と接触
する状態で使用しても、両可塑剤がこれらの樹脂を溶解
して表面状態を侵食することはないし、また消毒薬等が
飛散する場所で使用しても、両可塑剤が消毒薬等によっ
て抽出されて本発明の塩ビペーストレザーを硬化させる
ことも防止される。さらに、本発明の塩化ビニル系樹脂
シートをペースト法にて製造する場合、問題となるペー
ストのゾル粘度の上昇やゲル化特性の問題も、以上の両
可塑剤の相乗作用により、ことごとく解消される。
【0037】
【実施例】 実施例1 先ず、表1に示す配合の塩ビペーストを調製した。この
塩ビペーストのゾル粘度は、粘度計として東京計器
(株)製のBH型回転粘度計を使用し、室温にて測定し
たところ、7500cpsであり、各種のコーターで容
易にコーティングできる粘度であった。
【0038】
【表1】
【0039】次いで、表1に示す塩ビペーストを、離型
紙上にドクターナイフコーターにより、厚さが0.3m
mとなるようにコーティングし、140℃で90秒間ゲ
ル化のための加熱処理を行い、ついで190℃で2分間
キュアーのための加熱処理を行った後、離型紙を剥離し
た。このとき、ゲル化特性を調べるために表面状態を観
察し、また可塑剤の移行性試験、抽出性試験を行い、そ
の結果を表4に示す。なお、ゲル化特性の評価基準は表
2に示す通りとし、可塑剤の移行性試験および抽出性試
験は以下のようにして行った。以上の結果、離型紙にコ
ーティングされた塩ビペーストは良好にゲル化および発
泡しており、発泡倍率が約4倍の良好な製品状態の塩ビ
ペーストシートを得ることができた。
【0040】
【表2】
【0041】〈可塑剤の移行性試験〉以上のようにして
得られた塩ビペーストシートを、4.8cm×4.8c
mの大きさに切断してサンプルを多数枚調製した。これ
ら各サンプルの塩ビ側をポリスチレン、ABS樹脂の各
シートと接触させ、80kg/mの荷重を掛けて70
℃で24時間放置した後、ポリスチレン、ABS樹脂の
各シートの塩ビとの接触面側を目視により観察した。
【0042】〈可塑剤の抽出性試験〉また、上記の塩ビ
ペーストシートを5cm×5cmの大きさに切断したサ
ンプルを、エチルアルコール中に5時間浸漬した後、乾
燥させ、外観および触感を観察し、評価基準を表3の通
りとした。
【0043】
【表3】
【0044】実施例2〜4および比較例1〜2 ポリエステル系可塑剤と芳香族カルボン酸エステル系可
塑剤の混合割合を表4に示すように種々変化させる以外
は、実施例1と同様の組成で(すなわち、ポリエステル
系可塑剤とピロメリット酸系可塑剤との合量、これら可
塑剤の種類、その他は、実施例1と同様にして)塩ビペ
ーストを調製した。これらの塩ビペーストの粘度を、実
施例1と同様の測定条件で測定した結果を表4に合わせ
て示すとともに、実施例の塩ビペーストの粘度を含めて
図1にグラフ化して示した。なお、図1中、前述したよ
うに、直線αは予想粘度変化直線、曲線βは実際の粘度
変化曲線である。また、塩ビペーストのゲル化特性、塩
ビペーストシートの可塑剤の移行性および抽出性を実施
例1と同様にして調べ、この結果も合わせて表4に示
す。
【0045】比較例3 ポリエステル系可塑剤と芳香族カルボン酸エステル系可
塑剤(ピロメリット酸系)との混合可塑剤に代えて、ジ
オクチルフタレート(DOP)を使用する以外は、実施
例1と同様の組成で塩ビペーストシートを得た。このと
きの塩ビペーストのペースト粘度およびゲル化特性、塩
ビペーストシートの可塑剤の移行性および抽出性を実施
例1と同様にして調べ、この結果を表4に合わせて示
す。
【0046】
【表4】
【0047】実施例4 発泡剤を配合しない以外は、実施例1と同様の組成で塩
ビペーストシートを調製し、ペースト粘度、可塑剤の移
行性および抽出性について実施例1と同様にして調べ
た。その結果を、表5に示す。
【0048】比較例4 発泡剤を配合しない以外は、比較例3と同様の組成で塩
ビペーストシートを調製し、ペースト粘度、可塑剤の移
行性および抽出性について実施例1と同様にして調べ
た。その結果を、表5に示す。
【0049】
【表5】
【0050】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明の塩化ビニ
ル系樹脂シートによれば、可塑剤として分子量の大きい
ポリエステル系可塑剤と、化学構造がバルキーな3〜6
のカルボキシル基を有する単核芳香族カルボン酸のカル
ボン酸エステル系可塑剤とを使用しているため、これら
可塑剤の移行およびアルコール等の溶剤による抽出が極
めて低く抑えることができる。したがって、(1)本発
明のシートとポリスチレン、ABS樹脂、ポリカーボネ
ート等とが、長時間、しかも大荷重で接触しても、これ
らの樹脂を侵食することはなく、(2)本発明のシート
表面に整髪料や消毒薬等が飛散しても、これら薬剤中に
配合さているアルコール等の溶剤によって、本発明のシ
ート中の可塑剤が抽出されて、本発明のシートが硬化し
てしまうこともなく、長時間にわたって本発明のシート
製造当初のソフトな感触を維持することができ、(3)
本発明のシートを車輌用シートとして使用する場合に
は、可塑剤の揮発による車輌のガラスの曇り発生(フォ
ギング)を極めて少なくすることができる等の効果を奏
することができる。
【0051】特に、ペースト法にて製造される本発明の
シートにおいては、上記の高分子量のポリエステル系可
塑剤とバルキーな芳香族カルボン酸エステル系可塑剤と
の相乗作用により、該シート製造の原料である塩ビペー
ストの粘度が上昇しすぎて、シート製造が極めて困難な
いしは不可能となることがないのみならず、該ペースト
の基材上へのコーティング後のゲル化特性も悪化せず、
良好な製品状態で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明におけるポリエステル系可塑剤とピロメ
リット酸系可塑剤との混合割合に対する塩ビペーストの
ゾル粘度の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
α:予想粘度変化直線 β:実際の粘度変化曲線
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 //(C08L 27/06 67:00)

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 可塑剤として、ポリエステル系可塑剤と
    3〜6のカルボキシル基を有する単核芳香族カルボン酸
    のカルボン酸エステル系可塑剤とを1:9〜9:1(重
    量比)の割合で併用してなることを特徴とする低移行性
    塩化ビニル系樹脂シート。
  2. 【請求項2】 基材上に、可塑剤としてポリエステル系
    可塑剤と3〜6のカルボキシル基を有する単核芳香族カ
    ルボン酸のカルボン酸エステル系可塑剤とを1:9〜
    9:1(重量比)の割合で併用してなる塩化ビニル系樹
    脂層を少なくとも一層積層されてなることを特徴とする
    低移行性塩化ビニル系樹脂シート。
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