JPH0533301B2 - - Google Patents
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- JPH0533301B2 JPH0533301B2 JP21459483A JP21459483A JPH0533301B2 JP H0533301 B2 JPH0533301 B2 JP H0533301B2 JP 21459483 A JP21459483 A JP 21459483A JP 21459483 A JP21459483 A JP 21459483A JP H0533301 B2 JPH0533301 B2 JP H0533301B2
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Description
イ 産業上の利用分野
本発明は、高強度・高靭性球状黒鉛鋳鉄に関
し、詳しくは、球状黒鉛鋳鉄をオーステンパー処
理して、加工によりマルテンサイト変態を誘起す
る準安定オーステナイト組織を、基地中に、体積
比率で10〜70%含有させ、残部を、ベイナイト単
独組織、ないしは、ベイナイトとマルテンサイト
の混合組織とすることにより、優れた機械的性質
を付与した、高強度・高靭性球状黒鉛鋳鉄にかか
る。 ロ 従来技術 従来の鋳鉄においては、引張強さの観点からす
ると、JIS規格FCD70が最高級であつた。 しかし、このJIS規格FCD70が最高級であつて
も、部品の軽量化用および鋼の代替用鋳鉄材料と
しては、強度上十分でなかつた。 さらに、強度と靭性のバランスという観点から
みると、球状黒鉛鋳鉄の中でも伸びの高い鋳鉄、
たとえば、JIS規格FCD40があるが、引張強さ・
疲労強度が低いという欠点がある。 逆に、JIS規格FCD70は上述のように引張強さ
は優れているものの、伸びが極端に低いという欠
点がある。 また、球状黒鉛鋳鉄は、焼入・焼戻し処理、オ
ーステンパー処理等、種々の熱処理が実施されて
いるが、球状黒鉛鋳鉄をオーステンパー処理する
ことにより、強度と靭性を高める方法は既に公知
であり、その処理過程で意識的にオーステナイト
を残留させる方法もまた、公知の技術である。 前者は、焼入・焼戻し処理と比較すると、硬さ
が低く耐摩耗性に劣る欠点があり、後者は残留オ
ーステナイトが存在するため、強度・靭性が低い
という欠点がある。 一方、球状黒鉛鋳鉄は、焼入・焼戻しすると、
靭性が著しく低下するという欠点がある。 ハ 発明の目的 本発明は、球状黒鉛鋳鉄をオーステンパー処理
することにより、基地中に体積比率で10〜70%
の、加工によりマルテンサイト変態を誘起する、
準安定オーステナイトを残留させ、これに、切
削・研削加工、ロール加工、シヨツトピーニング
等の表面加工を施すことにより、加工誘起変態を
生ぜしめ、一部をマルテンサイト化し、圧縮残留
応力を高めるとともに、加工硬化させることによ
つて、著しく疲労強度を向上させることのでき
る、高強度・高靭性球状黒鉛鋳鉄を提供すること
を目的としている。 ニ 発明の構成 このような目的は、本発明によれば、オーステ
ンパー処理により強化した、高強度・高靭性球状
黒鉛鋳鉄であつて、 オーステンパー処理後において、加工によりマ
ルテンサイト変態を誘起する準安定オーステナイ
ト組織を、基地中に、体積比率で10〜70%含有
し、残部を、ベイナイト単独組織、ないしは、ベ
イナイトとマルテンサイトの混合組織としたこと
を特徴とする、高強度・高靭性球状黒鉛鋳鉄によ
つて達成される。 さらに、詳しくは、このような目的は、本発明
によれば、重量比率で、C;3.0〜4.5%、Si;1.5
〜3.0%、Mg;0.02〜0.10%、残部実質的にFeか
らなる組成を基本として、製品肉厚等からの必要
性に応じて、Mo;0.05〜1.0%、Ni;0.1〜0.7%、
Cu;0.1〜0.5%、Mn;0.2〜1.2%の、単独もしく
は複合添加された球状黒鉛鋳鉄を、800〜950℃の
オーステナイト化温度に0.5〜3時間加熱保持し
た後、350〜450℃に急冷して、20分以上恒温保持
するオーステンパー処理により強化した球状黒鉛
鋳鉄であつて、オーステンパー処理後において、
加工によりマルテンサイト変態を誘起する準安定
オーステナイト組織を、基地中に、体積比率で10
〜70%含有し、残部を、ベイナイト単独組織、な
いしは、ベイナイトとマルテンサイトとの混合組
織としたことを特徴とする、高強度・高靭性球状
黒鉛鋳鉄によつて達成されるものである。 ホ 発明の作用 上述のようにして得られた高強度・高靭性球状
黒鉛鋳鉄は、JIS規格FCD70に比較して、高い強
度と優れた伸び(靭性)を有するものとなる。 この後に、切削・研削加工、ロール加工、シヨ
ツトピーニング等の、表面加工を施すことによつ
て、JIS規格FCD70の1.5倍という、高い疲労強度
が得られるものである。 機械的性質の向上は、残留オーステナイトが50
〜70%の範囲で特に著しい。 また、発明者らの研究によれば、本発明材のこ
のような優れた性質は、残留準安定オーステナイ
トの体積比率で5〜50%が、加工よるマルテンサ
イト変態を誘起することによることを見出した。 以下、本発明の構成の限定理由について説明す
る。 なお、本発明材のC、Si、Mgの含有量につい
ては、一般に知られている球状黒鉛鋳鉄と同様の
範囲であり、範囲限定の理由も、よく知られた理
由に基づくものであることから、説明を省略す
る。 合金元素の添加は、製品が薄肉の場合には不要
であるが、φ25を越える場合には必要となる。 Moは微量でも、オーステンパー処理におい
て、パーライト変態を遅らせ、オーステンパー処
理を容易とする効果があるが、0.05%未満では、
その効果が十分でなく、一方、1.0%を越えると、
多量の遊離セメンタイトを晶出し、しかも、材料
コストを高騰させるので、Mo含有量を0.05〜1.0
%とした。 また、Cu、NiはMoと同様の効果を有するが、
Moに比してその効果が弱く、補助的に添加する
ものとして、おのおの、Ni;0.2〜0.7%Cu;0.1
〜0.5%とした。 Ni、Cu、Mnは、ともに、鋳放し状態でパーラ
イトを形成しやすく、オーステンパー処理を容易
とするが、Mnは多すぎると遊離セメンタイトを
晶出するため、0.2〜1.2%とした。 なお、これらの合金元素は、単独または複合添
加として用いられる。 上記組成からなる球状黒鉛鋳鉄を、オーステナ
イト化するための、必要かつ十分な条件である、
800〜950℃×0.5〜3時間保持した後、すみやか
に、350〜450℃の塩浴中に浸漬・急冷し、20分以
上保持して恒温変態させたのち、室温まで冷却す
る。 ここで、恒温変態温度を350〜450℃としたのは
上部ベイナイト組織となる範囲で、350℃以下で
は硬さが高くなり、被削性が悪化する。 一方、450℃以上では、オーステンパー処理後
の靭性が低下し、JIS規格FCD70と殆ど変わらな
いものとなる。 その後、必要に応じて、切削・研摩加工等によ
り仕上げられたものは、同じ硬さのJIS規格
FCD70、ないしは、焼入・焼戻し処理した球状
黒鉛鋳鉄に比べ、疲労強度が約10%向上する。 そして、さらに高負荷用部品に使用する場合に
は、ロール加工、シヨツトピーニング等の表面加
工により、疲労強度を25〜50%向上させることも
可能である。 このように、疲労強度が向上する理由は、基地
中の残留準安定オーステナイトが、加工によりマ
ルテンサイト変態を誘起し、圧縮残留応力および
加工硬化するためである。 残留準安定オーステナイト量を、体積比率で10
〜70%と限定した理由は、恒温変態保持時間20分
で最大値70%となり、20分より短時間では、未変
態のオーステナイトが変態して、多量のマルテン
サイトを形成し好ましくないからである。 また、残留準安定オーステナイトは、恒温変態
保持時間とともに減少するが、体積比率で10%未
満となると、強度向上効果が小さく、JIS規格
FCD70と同等レベルの強度となるばかりでなく、
恒温変態保持時間が長くなり、処理コストの上か
ら好ましくない。 そして、望ましい残留準安定オーステナイトの
量は、最も高い疲労強度を示す、体積比率で50〜
70%の範囲である。 上記範囲の残留準安定オーステナイト量に対
し、種々の表面加工によつて、上記残留準安定オ
ーステナイト量の5〜50%が、マルテンサイト変
態していることがわかつた。 このような性質により、本発明材が、引張強
さ・伸びに優れているものと考えられる。 ヘ 実施例 以下、添付図面に基づいて、本発明の実施例を
説明する。 実施例 1 重量比率で、C;3.65%、Si;2.40%、Mn;
0.31%、Mg;0.043%、残部実質的にFeからなる
主要組成に、Mo;0.43%、Ni;0.53%を添加し
た球状黒鉛鋳鉄を、900℃×1時間のオーステナ
イト化処理後、390℃で1、3、15時間保持する、
各オーステンパー処理条件にて処理した、本発明
材の、残留準安定オーステナイト量測定結果を、
第1図に示す。 第1図から明らかなように、走査型電子顕微鏡
にて測定した残留準安定オーステナイト量は、恒
温変態保持時間の増加に伴つて減少する。 また、疲労強度は、第2図に示すように、残留
準安定オーステナイト量の増加に伴つて向上し、
残留準安定オーステナイト量が、体積比率で50〜
70%の範囲で、疲労強度が最高となる。 なお、この時における加工表面のマルテンサイ
ト変態量は、残留準安定オーステナイト量の5〜
50%の範囲であつた。 また、残留準安定オーステナイト量が10%未満
では、同じ硬さのJIS規格FCD70と殆ど同じレベ
ルに近づき、強度向上の効果は殆ど認められな
い。 実施例 2 第1表は、R1の半円環状切欠をもつた小野式
回転曲げ疲労試験片を、オーステンパー処理した
球状黒鉛鋳鉄で製作し、表面ロール加工後、疲労
試験を実施した結果を比較したものである。
し、詳しくは、球状黒鉛鋳鉄をオーステンパー処
理して、加工によりマルテンサイト変態を誘起す
る準安定オーステナイト組織を、基地中に、体積
比率で10〜70%含有させ、残部を、ベイナイト単
独組織、ないしは、ベイナイトとマルテンサイト
の混合組織とすることにより、優れた機械的性質
を付与した、高強度・高靭性球状黒鉛鋳鉄にかか
る。 ロ 従来技術 従来の鋳鉄においては、引張強さの観点からす
ると、JIS規格FCD70が最高級であつた。 しかし、このJIS規格FCD70が最高級であつて
も、部品の軽量化用および鋼の代替用鋳鉄材料と
しては、強度上十分でなかつた。 さらに、強度と靭性のバランスという観点から
みると、球状黒鉛鋳鉄の中でも伸びの高い鋳鉄、
たとえば、JIS規格FCD40があるが、引張強さ・
疲労強度が低いという欠点がある。 逆に、JIS規格FCD70は上述のように引張強さ
は優れているものの、伸びが極端に低いという欠
点がある。 また、球状黒鉛鋳鉄は、焼入・焼戻し処理、オ
ーステンパー処理等、種々の熱処理が実施されて
いるが、球状黒鉛鋳鉄をオーステンパー処理する
ことにより、強度と靭性を高める方法は既に公知
であり、その処理過程で意識的にオーステナイト
を残留させる方法もまた、公知の技術である。 前者は、焼入・焼戻し処理と比較すると、硬さ
が低く耐摩耗性に劣る欠点があり、後者は残留オ
ーステナイトが存在するため、強度・靭性が低い
という欠点がある。 一方、球状黒鉛鋳鉄は、焼入・焼戻しすると、
靭性が著しく低下するという欠点がある。 ハ 発明の目的 本発明は、球状黒鉛鋳鉄をオーステンパー処理
することにより、基地中に体積比率で10〜70%
の、加工によりマルテンサイト変態を誘起する、
準安定オーステナイトを残留させ、これに、切
削・研削加工、ロール加工、シヨツトピーニング
等の表面加工を施すことにより、加工誘起変態を
生ぜしめ、一部をマルテンサイト化し、圧縮残留
応力を高めるとともに、加工硬化させることによ
つて、著しく疲労強度を向上させることのでき
る、高強度・高靭性球状黒鉛鋳鉄を提供すること
を目的としている。 ニ 発明の構成 このような目的は、本発明によれば、オーステ
ンパー処理により強化した、高強度・高靭性球状
黒鉛鋳鉄であつて、 オーステンパー処理後において、加工によりマ
ルテンサイト変態を誘起する準安定オーステナイ
ト組織を、基地中に、体積比率で10〜70%含有
し、残部を、ベイナイト単独組織、ないしは、ベ
イナイトとマルテンサイトの混合組織としたこと
を特徴とする、高強度・高靭性球状黒鉛鋳鉄によ
つて達成される。 さらに、詳しくは、このような目的は、本発明
によれば、重量比率で、C;3.0〜4.5%、Si;1.5
〜3.0%、Mg;0.02〜0.10%、残部実質的にFeか
らなる組成を基本として、製品肉厚等からの必要
性に応じて、Mo;0.05〜1.0%、Ni;0.1〜0.7%、
Cu;0.1〜0.5%、Mn;0.2〜1.2%の、単独もしく
は複合添加された球状黒鉛鋳鉄を、800〜950℃の
オーステナイト化温度に0.5〜3時間加熱保持し
た後、350〜450℃に急冷して、20分以上恒温保持
するオーステンパー処理により強化した球状黒鉛
鋳鉄であつて、オーステンパー処理後において、
加工によりマルテンサイト変態を誘起する準安定
オーステナイト組織を、基地中に、体積比率で10
〜70%含有し、残部を、ベイナイト単独組織、な
いしは、ベイナイトとマルテンサイトとの混合組
織としたことを特徴とする、高強度・高靭性球状
黒鉛鋳鉄によつて達成されるものである。 ホ 発明の作用 上述のようにして得られた高強度・高靭性球状
黒鉛鋳鉄は、JIS規格FCD70に比較して、高い強
度と優れた伸び(靭性)を有するものとなる。 この後に、切削・研削加工、ロール加工、シヨ
ツトピーニング等の、表面加工を施すことによつ
て、JIS規格FCD70の1.5倍という、高い疲労強度
が得られるものである。 機械的性質の向上は、残留オーステナイトが50
〜70%の範囲で特に著しい。 また、発明者らの研究によれば、本発明材のこ
のような優れた性質は、残留準安定オーステナイ
トの体積比率で5〜50%が、加工よるマルテンサ
イト変態を誘起することによることを見出した。 以下、本発明の構成の限定理由について説明す
る。 なお、本発明材のC、Si、Mgの含有量につい
ては、一般に知られている球状黒鉛鋳鉄と同様の
範囲であり、範囲限定の理由も、よく知られた理
由に基づくものであることから、説明を省略す
る。 合金元素の添加は、製品が薄肉の場合には不要
であるが、φ25を越える場合には必要となる。 Moは微量でも、オーステンパー処理におい
て、パーライト変態を遅らせ、オーステンパー処
理を容易とする効果があるが、0.05%未満では、
その効果が十分でなく、一方、1.0%を越えると、
多量の遊離セメンタイトを晶出し、しかも、材料
コストを高騰させるので、Mo含有量を0.05〜1.0
%とした。 また、Cu、NiはMoと同様の効果を有するが、
Moに比してその効果が弱く、補助的に添加する
ものとして、おのおの、Ni;0.2〜0.7%Cu;0.1
〜0.5%とした。 Ni、Cu、Mnは、ともに、鋳放し状態でパーラ
イトを形成しやすく、オーステンパー処理を容易
とするが、Mnは多すぎると遊離セメンタイトを
晶出するため、0.2〜1.2%とした。 なお、これらの合金元素は、単独または複合添
加として用いられる。 上記組成からなる球状黒鉛鋳鉄を、オーステナ
イト化するための、必要かつ十分な条件である、
800〜950℃×0.5〜3時間保持した後、すみやか
に、350〜450℃の塩浴中に浸漬・急冷し、20分以
上保持して恒温変態させたのち、室温まで冷却す
る。 ここで、恒温変態温度を350〜450℃としたのは
上部ベイナイト組織となる範囲で、350℃以下で
は硬さが高くなり、被削性が悪化する。 一方、450℃以上では、オーステンパー処理後
の靭性が低下し、JIS規格FCD70と殆ど変わらな
いものとなる。 その後、必要に応じて、切削・研摩加工等によ
り仕上げられたものは、同じ硬さのJIS規格
FCD70、ないしは、焼入・焼戻し処理した球状
黒鉛鋳鉄に比べ、疲労強度が約10%向上する。 そして、さらに高負荷用部品に使用する場合に
は、ロール加工、シヨツトピーニング等の表面加
工により、疲労強度を25〜50%向上させることも
可能である。 このように、疲労強度が向上する理由は、基地
中の残留準安定オーステナイトが、加工によりマ
ルテンサイト変態を誘起し、圧縮残留応力および
加工硬化するためである。 残留準安定オーステナイト量を、体積比率で10
〜70%と限定した理由は、恒温変態保持時間20分
で最大値70%となり、20分より短時間では、未変
態のオーステナイトが変態して、多量のマルテン
サイトを形成し好ましくないからである。 また、残留準安定オーステナイトは、恒温変態
保持時間とともに減少するが、体積比率で10%未
満となると、強度向上効果が小さく、JIS規格
FCD70と同等レベルの強度となるばかりでなく、
恒温変態保持時間が長くなり、処理コストの上か
ら好ましくない。 そして、望ましい残留準安定オーステナイトの
量は、最も高い疲労強度を示す、体積比率で50〜
70%の範囲である。 上記範囲の残留準安定オーステナイト量に対
し、種々の表面加工によつて、上記残留準安定オ
ーステナイト量の5〜50%が、マルテンサイト変
態していることがわかつた。 このような性質により、本発明材が、引張強
さ・伸びに優れているものと考えられる。 ヘ 実施例 以下、添付図面に基づいて、本発明の実施例を
説明する。 実施例 1 重量比率で、C;3.65%、Si;2.40%、Mn;
0.31%、Mg;0.043%、残部実質的にFeからなる
主要組成に、Mo;0.43%、Ni;0.53%を添加し
た球状黒鉛鋳鉄を、900℃×1時間のオーステナ
イト化処理後、390℃で1、3、15時間保持する、
各オーステンパー処理条件にて処理した、本発明
材の、残留準安定オーステナイト量測定結果を、
第1図に示す。 第1図から明らかなように、走査型電子顕微鏡
にて測定した残留準安定オーステナイト量は、恒
温変態保持時間の増加に伴つて減少する。 また、疲労強度は、第2図に示すように、残留
準安定オーステナイト量の増加に伴つて向上し、
残留準安定オーステナイト量が、体積比率で50〜
70%の範囲で、疲労強度が最高となる。 なお、この時における加工表面のマルテンサイ
ト変態量は、残留準安定オーステナイト量の5〜
50%の範囲であつた。 また、残留準安定オーステナイト量が10%未満
では、同じ硬さのJIS規格FCD70と殆ど同じレベ
ルに近づき、強度向上の効果は殆ど認められな
い。 実施例 2 第1表は、R1の半円環状切欠をもつた小野式
回転曲げ疲労試験片を、オーステンパー処理した
球状黒鉛鋳鉄で製作し、表面ロール加工後、疲労
試験を実施した結果を比較したものである。
【表】
表面ロール加工条件は、ローラ先端半径;
R0.9、ローラ半径;R20、ローラパス回数;20
回、加圧荷重;150Kg、接触応力;508Kg/mm2とし
た。 本発明のオーステンパー処理した球状黒鉛鋳鉄
の疲労強度は、表面ロール加工しない状態でも、
JIS規格FCD70に比べ10%以上高く、表面ロール
加工により、さらにその差が顕著となることが理
解される。 本発明の高強度・高靭性球状黒鉛鋳鉄の疲労強
度は、接触応力;508Kg/mm2にて表面ロール加工
すると、同一条件で表面ロール加工したJIS規格
FCD70の20〜50%向上し、表面ロール加工しな
い状態のJIS規格FCD70の、約2倍の高疲労強度
となる。 また、表面ロール加工の接触応力をさらに高め
れば、より高い疲労強度が得られることは、発明
者らの実験で明らかとなつている。 第1表においては、本発明材として、硬さ
HV260〜280の範囲のものを評価した結果を示し
ている、球状黒鉛鋳鉄の硬さと疲労強度の関係
は、ある程度の高さレベルまでは、比例的に上昇
することから、これに表面ロール加工したものに
おいても、同様に、硬さを上昇させれば、表面ロ
ール加工後の疲労強度も上昇することが、容易に
推定できる。 実施例 3 本発明の高強度・高靭性球状黒鉛鋳鉄の引張試
験結果を第2表に示す。
R0.9、ローラ半径;R20、ローラパス回数;20
回、加圧荷重;150Kg、接触応力;508Kg/mm2とし
た。 本発明のオーステンパー処理した球状黒鉛鋳鉄
の疲労強度は、表面ロール加工しない状態でも、
JIS規格FCD70に比べ10%以上高く、表面ロール
加工により、さらにその差が顕著となることが理
解される。 本発明の高強度・高靭性球状黒鉛鋳鉄の疲労強
度は、接触応力;508Kg/mm2にて表面ロール加工
すると、同一条件で表面ロール加工したJIS規格
FCD70の20〜50%向上し、表面ロール加工しな
い状態のJIS規格FCD70の、約2倍の高疲労強度
となる。 また、表面ロール加工の接触応力をさらに高め
れば、より高い疲労強度が得られることは、発明
者らの実験で明らかとなつている。 第1表においては、本発明材として、硬さ
HV260〜280の範囲のものを評価した結果を示し
ている、球状黒鉛鋳鉄の硬さと疲労強度の関係
は、ある程度の高さレベルまでは、比例的に上昇
することから、これに表面ロール加工したものに
おいても、同様に、硬さを上昇させれば、表面ロ
ール加工後の疲労強度も上昇することが、容易に
推定できる。 実施例 3 本発明の高強度・高靭性球状黒鉛鋳鉄の引張試
験結果を第2表に示す。
【表】
第2表において、試験片平行部における残留準
安定オーステナイトは、その50%がマルテンサイ
ト変態しており、そのために引張強さと伸びが著
しく高くなつていることが明らかとなつた。 以上のように、引張強さと硬さは、一般的には
比例するが、本発明材においては、同じレベルの
高さを有する比較材、、に比して、引張強
さが高く、伸びが著しく優れていることが理解さ
れる。 ト 発明の作用効果 以上により明らかなように、本発明にかかる球
状黒鉛鋳鉄をオーステンパー処理することにより
基地中に、体積比率で10〜70%の、加工によりマ
ルテンサイト変態を誘起する準安定オーステナイ
トを残留させ、これに、切削・研削加工、ロール
加工、シヨツトピーニング等の表面加工を施すこ
とにより、加工誘起変態を生ぜしめ、一部をマル
テンサイト化し、圧縮残留応力を高めるととも
に、加工硬化させることによつて、著しく疲労強
度を向上させることができる利点がある。
安定オーステナイトは、その50%がマルテンサイ
ト変態しており、そのために引張強さと伸びが著
しく高くなつていることが明らかとなつた。 以上のように、引張強さと硬さは、一般的には
比例するが、本発明材においては、同じレベルの
高さを有する比較材、、に比して、引張強
さが高く、伸びが著しく優れていることが理解さ
れる。 ト 発明の作用効果 以上により明らかなように、本発明にかかる球
状黒鉛鋳鉄をオーステンパー処理することにより
基地中に、体積比率で10〜70%の、加工によりマ
ルテンサイト変態を誘起する準安定オーステナイ
トを残留させ、これに、切削・研削加工、ロール
加工、シヨツトピーニング等の表面加工を施すこ
とにより、加工誘起変態を生ぜしめ、一部をマル
テンサイト化し、圧縮残留応力を高めるととも
に、加工硬化させることによつて、著しく疲労強
度を向上させることができる利点がある。
第1図は、オーステンパー処理による残留準安
定オーステナイトと、恒温変態保持時間との関係
を示す図、第2図は、オーステンパー処理による
残留オーステナイト量と、疲労強度との関係を示
す図である。
定オーステナイトと、恒温変態保持時間との関係
を示す図、第2図は、オーステンパー処理による
残留オーステナイト量と、疲労強度との関係を示
す図である。
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 1 オーステンパー処理により強化した、高強
度・高靭性球状黒鉛鋳鉄であつて、 オーステンパー処理後において、加工によりマ
ルテンサイト変態を誘起する準安定オーステナイ
ト組織を、基地中に、体積比率で10〜70%含有
し、残部を、ベイナイト単独組織、ないしは、ベ
イナイトとマルテンサイトの混合組織としたこと
を特徴とする、高強度・高靭性球状黒鉛鋳鉄。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP21459483A JPS60106944A (ja) | 1983-11-14 | 1983-11-14 | 高強度・高靭性球状黒鉛鋳鉄 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP21459483A JPS60106944A (ja) | 1983-11-14 | 1983-11-14 | 高強度・高靭性球状黒鉛鋳鉄 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPS60106944A JPS60106944A (ja) | 1985-06-12 |
JPH0533301B2 true JPH0533301B2 (ja) | 1993-05-19 |
Family
ID=16658298
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP21459483A Granted JPS60106944A (ja) | 1983-11-14 | 1983-11-14 | 高強度・高靭性球状黒鉛鋳鉄 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPS60106944A (ja) |
Families Citing this family (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS6227547A (ja) * | 1985-07-30 | 1987-02-05 | Hitachi Metals Ltd | コイルばねとその製造法 |
US4666533A (en) * | 1985-09-05 | 1987-05-19 | Ford Motor Company | Hardenable cast iron and the method of making cast iron |
JPS62253750A (ja) * | 1986-04-24 | 1987-11-05 | Nissan Motor Co Ltd | 高強度・高靭性鋳鉄 |
JPH07113125B2 (ja) * | 1986-05-28 | 1995-12-06 | 日立金属株式会社 | 高靭性球状黒鉛鋳鉄鋳物の製造方法 |
JPH024915A (ja) * | 1988-06-23 | 1990-01-09 | Mazda Motor Corp | 鋳造部材の製造方法 |
-
1983
- 1983-11-14 JP JP21459483A patent/JPS60106944A/ja active Granted
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPS60106944A (ja) | 1985-06-12 |
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