JPH05286Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 産業上の利用分野 本考案は、鋳造装置に係り、更に詳細には吸引
鋳造装置に係る。

従来の技術 例えばアルミニウム合金等よりよる鋳物の製造
に適した鋳造装置の一つとして、吸引鋳造装置が
従来より知られている。吸引鋳造装置は、一般
に、溶湯注入口を有する下型と、該下型と共働し
て製品キヤビテイを郭定する上型とを含み、製品
キヤビテイが減圧され、金属溶湯が注入口を経て
製品キヤビテイ内に導入されることにより鋳造が
行われるようになつている。

かかる吸引鋳造装置に於ては、特に鋳物の形状
が複雑である場合には、下型と上型との間を気密
的にシールすることが困難であるため、下型と共
働して減圧室を郭定し内部に上型を収納するチヤ
ンバー部材が上型の周りにて下型に固定され、チ
ヤンバー部材と下型との間がＯリングシール等に
てシールされ、製品キヤビテイが上型に設けられ
た狭小な通路及び減圧室を介して減圧されるよう
構成されている。

例えば第４図はかかる構造を有する従来の吸引
鋳造装置を示す縦断面図である。図に於て、５０
は溶湯注入口５２を郭定するストーク５４を有す
る下型を示している。下型５０には複数個のボル
ト５６により上型５８が固定されるようになつて
おり、上型５８は下型５０と共働して製品キヤビ
テイ６０を郭定するようになつている。図示の例
に於ては、上型５８は上型本体６２と上型蓋部材
６４とよりなつており、これらの部材は製品キヤ
ビテイ６０を上型の外部と連通する複数個の狭小
な通路６６を郭定している。

また下型５０には複数個のボルト６８により上
型の周りにてチヤンバー部材７０が固定されてい
る。チヤンバー部材７０は下型５０と共働して減
圧室７２を郭定しており、また内部に上型５８を
収容している。チヤンバー部材７０と下型５０と
の間はＯリングシール７４によりシールされてい
る。減圧室７２はフレキシブルホース７６により
図には示されていない真空ポンプの如き減圧装置
に接続されており、該減圧装置により減圧室７
２、通路６６を経て製品キヤビテイ６０内が減圧
され、これにより溶湯容器７８に貯容された金属
溶湯８０が製品キヤビテイ内へ吸引注入され、こ
れにより鋳造が行われるようになつている。

考案が解決しようとする問題点 しかしかかる構造を有する従来の吸引鋳造装置
に於ては、チヤンバー部材が設けられているた
め、鋳造に際しては先ずボルト５６により上型５
８を下型５０に組付け、しかる後ボルト６８によ
りチヤンバー部材を下型に組付けなければなら
ず、また製品キヤビテイを減圧するためには減圧
室をも減圧しなければならないため、金属溶湯の
注入に長時間を要し、更には鋳造完了時にも先ず
チヤンバー部材を下型より分解し、しかる後上型
を下型より分解しなければならず、従つて能率よ
く鋳造を行うことが困難であるという問題があ
る。

本考案は、従来の吸引鋳造装置に於ける上述の
如き問題に鑑み、チヤンバー部材を排除すること
により、能率よく鋳造を行うことを可能にするよ
う改良された簡便な吸引鋳造装置を提供すること
を目的としている。

問題点を解決するための手段 上述の如き目的は、本考案によれば、溶湯注入
口を有する下型と、前記下型と共働して製品キヤ
ビテイを郭定する上型と、前記製品キヤビテイの
周りにて前記下型と前記上型との間を気密的にシ
ールするシール手段と、前記上型に設けられ一端
にて前記製品キヤビテイと連通する排気孔と、前
記排気孔内に配置され前記排気孔の壁面と共働し
て複数個の狭小通路を郭定するプラグとを有する
吸引鋳造装置によつて達成される。

考案の作用及び効果 上述の如き構成によれば、チヤンバー部材が設
けられていないため、鋳造に際しては上型と下型
とを互いに組付ければよく、製品キヤビテイを減
圧するために減圧室をも減圧することは不要であ
り、また鋳造完了時にも上型と下型とを分解する
だけでよく、従つて従来の吸引鋳造装置の場合に
比して、特に小型で単純な形状の鋳物を能率よく
製造することができる。

また上述の如き構成によれば、製品キヤビテイ
と連通する排気孔には該排気孔の壁面と共働して
複数個の狭小通路を郭定するプラグが配置されて
おり、製品キヤビテイは複数個の狭小通路を経て
減圧され、従つて金属溶湯がその表面張力によつ
て狭小通路内へ侵入することが回避されるので、
排気孔に砂型やセラミツク粒子の焼結体の如きそ
れ自身複数個の非常に狭小な通路を有する多孔質
体が配置される場合の如く、金属溶湯が多孔質体
中に浸透することがなく、従つて狭小通路の栓塞
等の問題生じることなく多数の鋳物を連続的に製
造することができる。

尚狭小通路の断面形状及び断面積は、鋳造され
るべき鋳物の金属溶湯の粘性や表面張力等の性質
に応じて、鋳造時に狭小通路内へ溶湯が侵入する
ことを阻止する任意の形状及び断面積であつてよ
く、例えば断面形状はＶ形やＵ形等であつてよ
い。またこれらの狭小通路は排気孔の壁面、又は
プラグの外周面、又はそれらの両方に形成された
Ｖ溝等であつてよい。

以下に添付の図を参照しつつ、本考案を実施例
について詳細に説明する。

第１図は本考案による吸引鋳造装置の一つの実
施例を示す縦断面図、第２図は第１図の線−
に沿う拡大部分断面図、第３図は一つのＶ溝を拡
大して示す拡大部分断面図である。

これらの図に於て、１０は溶湯注入口１２を郭
定するストーク１４を有する下型を示している。
下型１０には複数個のボルト１６により上型１８
が固定されるようになつており、上型１８は下型
１０と共働して製品キヤビテイ２０を郭定するよ
うになつている。下型１０と上型１８との間は製
品キヤビテイ２０の周りにてＯリングシール２２
により気密的にシールされている。

上型１８には一端にて製品キヤビテイ２０の上
端と連通する排気孔２４が設けられている。排気
孔２４にはプラグ２６が配置されており、図示の
実施例に於てはプラグの下端は製品キヤビテイの
一部を郭定している。プラグ２６は軸線２８に沿
つて延在し且周方向に互いに均等に隔置された複
数個のＶ溝３０をその外周面３２に有しており、
Ｖ溝３０は排気孔２４の壁面と共働して複数個の
狭小通路を郭定している。プラグ２６は図示の実
施例に於ては、軸線２８に沿つて延在するステム
３４により円板状の支持部３６と一体に接続され
ている。

支持部３６は上型１８上に載置されており、ま
た複数個のボルト３８により上型１８に固定され
た蓋部材４０に設けられたキヤビテイ４２内に収
容されている。また支持部３６の下面には軸線２
８の周りに延在し排気孔２４と連通する環状溝４
４と、該環状溝とキヤビテイ４２とを連続接続す
る複数個の連通孔４６とが設けられている。キヤ
ビテイ４２はニツプル４８ａにより蓋部材４０に
固定されたフレキシブルホース４８により図には
示されていない真空ポンプの如き減圧装置に連通
接続されている。蓋部材４０と上型１８との間は
キヤビテイ４２の周りにてＯリングシール４０ａ
により気密的にシールされている。

尚蓋部材４０、上型１８、及びプラグ２６等は
分解保守時の如き場合を除き第１図の互いに組立
てられた状態に維持される。

上述の如く構成された本考案による吸引鋳造装
置を用いて鋳造を行う場合には、先ず下型１０に
ボルト１６によつて上型１８が組付けられ、次い
でストーク１４の先端部が溶湯容器７８に貯容さ
れた金属溶湯８０に浸漬され、その状態にて図に
は示されていない減圧装置によりフレキシブルホ
ース４８、キヤビテイ４２、連通孔４６、環状溝
４４、排気孔２４、Ｖ溝３０を経て製品キヤビテ
イ２０内が減圧され、これにより金属溶湯８０が
製品キヤビテイ内へ吸引注入され、製品キヤビテ
イ内に充填された金属溶湯が凝固するまでそのま
まの状態に維持され、しかる後ストーク１４が金
属溶湯より取出され、減圧装置による減圧が停止
され、上型１８が下型１０より分解されることに
より、製品キヤビテイ２０内にて凝固した鋳物が
取出される。

尚本願発明者等が行つた操業実績によれば、金
属溶湯を達成する金属がアルミニウム合金であつ
て、図示の如く複数個の狭小通路がＶ溝にて郭定
される場合には、第３図に示されている如く、Ｖ
溝の入口部の幅Ｗを0.3〜0.8mmに設定し、頂角θ
を20〜60°に設定すれば、鋳造時に金属溶湯がＶ
溝内へ差込むことが回避される。

以上に於ては本考案を特定の実施例について詳
細に説明したが、本考案はかかる実施例に限定さ
れるものではなく、本考案の範囲内にて他の種々
の実施例が可能であることは当業者にとつて明ら
かであろう。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案による吸引鋳造装置の一つの実
施例を示す縦断面図、第２図は第１図の線−
に沿う拡大部分断面図、第３図は第２図に示され
た一つのＶ溝を示す拡大部分断面図、第４図は従
来の吸引鋳造装置を示す縦断面図である。 １０……下型、１２……溶湯注入口、１４……
ストーク、１６……ボルト、１８……上型、２０
……製品キヤビテイ、２２……Ｏリングシール、
２４……排気孔、２６……プラグ、３０……Ｖ
溝、３２……外周面、３４……ステム、３６……
支持部、３８……ボルト、４０……蓋部材、４０
ａ……Ｏリングシール、４２……キヤビテイ、４
４……環状溝、４６……連通孔、４８……フレキ
シブルホース、４８ａ……ニツプル、５０……下
型、５２……溶湯注入口、５４……ストーク、５
６……ボルト、５８……上型、６０……製品キヤ
ビテイ、６２……上型本体、６４……上型蓋部
材、６６……通路、６８……ボルト、７０……チ
ヤンバー部材、７２……減圧室、７４……Ｏリン
グシール、７６……フレキシブルホース。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 溶湯注入口を有する下型と、前記下型と共働し
   て製品キヤビテイを郭定する上型と、前記製品キ
   ヤビテイの周りにて前記下型と前記上型との間を
   気密的にシールするシール手段と、前記上型に設
   けられ一端にて前記製品キヤビテイと連通する排
   気孔と、前記排気孔内に配置され前記排気孔の壁
   面と共働して複数個の狭小通路を郭定するプラグ
   とを有する吸引鋳造装置。