JPH05285374A - 再生天然ケラチンを壁材とするマイクロカプセル及びその製造方法 - Google Patents

再生天然ケラチンを壁材とするマイクロカプセル及びその製造方法

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JPH05285374A
JPH05285374A JP11681992A JP11681992A JPH05285374A JP H05285374 A JPH05285374 A JP H05285374A JP 11681992 A JP11681992 A JP 11681992A JP 11681992 A JP11681992 A JP 11681992A JP H05285374 A JPH05285374 A JP H05285374A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、ペプチド結合切断による短鎖化処
理その他の非可逆的化学修飾を伴わないケラチンを壁材
として含む、均一性、安定性及び生体適合性等に優れ且
つ含包量が大きい再生天然ケラチンを壁材とするマイク
ロカプセル及びその製造方法の提供を目的とする。 【構成】 ケラチン含有物質を液体媒体中にて還元剤に
より処理してケラチンを抽出し該抽出液より前記還元剤
を除去することにより得られる水溶性ケラチンを壁材と
して不溶化してなるマイクロカプセル及び、前記水溶性
ケラチンの水溶液を水に不溶性又は難溶性の有機溶媒と
混合しこれを超音波処理及び/又は激しく攪拌すること
を特徴とする、再生天然ケラチンを壁材とするマイクロ
カプセルの製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、再生天然ケラチンを壁
材として含有する、染料、香料、医薬品、農薬、酵素そ
の他の薬剤の包含に又は酵素等の固定化に好適なマイク
ロカプセル及びその製造方法に関する。本明細書におい
て「再生天然ケラチン」とは、天然のケラチンに対して
酵素等によるペプチド結合の加水分解処理を加えること
なく、かつその他の非可逆的化学処理をも加えることな
く、ジスルフィド結合を還元してチオール基としてケラ
チンを一旦可溶化した後、再度チオール基同士をジスル
フィド結合させることにより再度不溶化してなる、再生
した高分子をいう。
【0002】
【従来の技術】従来、医薬品等を含包させて安定性や放
出特性その他の種々の性質を改善する等の目的でマイク
ロカプセルが開発されている。
【0003】マイクロカプの壁材として使用される材料
物質には、簡単な装置と方法によりマイクロカプセルを
製造できる等取扱が容易であることや、得られるマイク
ロカプセルがカプセル自体の量に対する薬剤等の包含量
が大きいものであることが求められる。更に医薬品や農
薬等に使用するマイクロカプセルにおいては特に、生体
適合性に優れること、取り分け毒性上問題となる架橋剤
を使用せずに製造できるものであること、生分解性を有
すること等の特徴が求められる。このためには、医薬品
等に使用し得るマイクロカプセルの壁材原料としては生
体物質を天然の又はこれに極めて近い状態で用いること
が好ましい。
【0004】また、マイクロカプセルの製造には、マイ
クロカプセル壁材原料の性質等に応じて種々の方法が知
られているが、特に医薬品等に使用し得るマイクロカプ
セルを製造するためには、壁材原料の有する生体適合性
を損なわない方法である必要があり、従ってマイクロカ
プセル壁材原料もそのような方法を適用できる原料であ
ることが要求される。
【0005】一方、爪や毛髪、羊毛等の獣毛や羽毛中に
は構造タンパク質としてケラチンが存在するが、ケラチ
ンそのものを壁材とするマイクロカプセル化は検討され
ていない。わずかに関連技術として、ペプシン等のタン
パク質分解酵素によるペプチド鎖の加水分解処理を経た
ケラチン(以下「ケラチン加水分解物」という。)を用
いたマイクロカプセルが開示されている(特公昭59−
33017号)。しかし、該技術においては、タンパク
質分解酵素による処理で一旦分解されたペプチド鎖の修
復処理は何ら示されておらず、従って、該ケラチン加水
分解物が鎖断片間のジスルフィド結合による架橋形成に
よってポリマー化してカプセル壁を構成した後も、切断
された各ケラチン鎖は修復を受けないままであり、天然
のケラチンを再生したものではない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】かかる状況のもとで、
本発明は、ペプチド結合の切断による低分子量化処理そ
の他の非可逆的化学修飾を伴わない、再生天然ケラチン
を壁材とする、生体適合性、生分解性の点で好ましい且
つ薬剤等の含包量が大きいマイクロカプセル及びその製
造方法を提供せんとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題の達成のため、
本発明者は、ケラチン含有物質より、ペプチド結合の分
解処理を経ることなく天然のケラチンを抽出してマイク
ロカプセルを製造する方法について種々検討した。その
結果、ケラチン含有物質から、タンパク質分解酵素によ
る加水分解処理その他の非可逆的な変成を生ずる処理を
施すことなく後述の方法によりケラチンを抽出して処理
することにより、再生天然ケラチンよりなるマイクロカ
プセルを製造することに成功した。また、該方法によっ
て製造されるマイクロカプセルは、前述のケラチン加水
分解物を用いた公知のマイクロカプセルと比較して、格
段に優れた性質を有することが確認された。
【0008】以下本発明を、マイクロカプセルの壁材原
料として用いる水溶性ケラチンの製造段階〔I〕と、該
該水溶性ケラチンを用いてマイクロカプセルを製造する
段階〔II〕とに分けて順次説明する。 〔I.加水分解処理その他の非可逆的化学修飾を伴わな
いケラチン抽出方法及び結果〕本段階は、ケラチン含有
物質を液体媒体中において還元剤と共に攪拌することに
より還元して可溶化・抽出し、得られた抽出液より不溶
物を除去し、界面活性剤の存在下に透析その他の適当な
手段で還元剤を除去することを特徴とする。
【0009】上記ケラチン含有物質としては、人毛、羊
毛その他の獣毛、羽毛、ひづめ等、真正ケラチンを含有
する物質ならいずれも使用することができる。
【0010】上記液体媒体としては、例えば、還元に対
して安定であり且つケラチン含有物質に対し親和性のあ
る溶媒を使用することができ、例えば水又はアルコール
類若しくはアミド類等やこれらの混合物が好ましく用い
られる。該液体媒体の使用量は、ケラチン含有物質を浸
漬できる量であればよいが、ケラチン含有物質の使用量
の10乃至40重量倍であることが処理上好ましい。
【0011】上記液体媒体には、必須ではないが、特に
獣毛、毛髪、角、爪、ひづめ等の可溶化しにくい材料の
還元可溶化の効率を高める目的で所望により尿素、チオ
尿素等の水素結合切断剤、メタノール、エタノール、プ
ロパノール等のアルコール類、塩化亜鉛、ヨウ化ナトリ
ウム、臭化リチウム等の無機塩類、アンモニア、水酸化
ナトリウム等を溶解補助剤として加えることもできる。
これら溶解補助剤の添加量は適宜であるが、例えば尿素
の場合、ケラチン含有物質に対して通常3乃至15重量
倍、好ましくは5乃至12重量倍である。
【0012】上記還元にはケラチン含有物質中に存在す
るケラチンのジスルフィド結合をチオール基に還元し得
る還元剤なら一般に用いることができるが、例えばメル
カプトエタノール、チオグリコール酸、トルエン−ω−
チオール、ジチオスレイトール、ジチオエリスリトール
等のチオール系誘導体、トリフェニルホスフィン、トリ
プロピルホスフィン、トリブチルホスフィン等のリン含
有化合物、亜硫酸水素ナトリウム等の無機還元性化合物
などが好ましく用いられる。還元剤の使用量は、ケラチ
ン含有物質10gに対して0.01乃至0.50モルと
するのが好ましく、0.05乃至0.25モルとするの
が更に好ましい。
【0013】還元可溶化は、反応を促進するためにはア
ルカリ性側で行うのが好ましいが、その場合は通常pH
10乃至11の範囲とするのが特に好ましい。反応は所
望により加熱して行う。反応温度、反応時間はケラチン
含有物質の可溶化の難易に応じて適宜設定することがで
きるが、例えば室温乃至100℃にて1乃至24時間攪
拌することができる。
【0014】還元剤の除去の操作中に液体媒体中に存在
させる必要のある前記界面活性剤は、通常、ケラチン含
有物質を還元可溶化して得た溶液とした後であって、遠
心分離、濾過等により不溶物を除去して透析工程を開始
するまでの間に該溶液に加える。該界面活性剤として
は、例えば、(1)アニオン性界面活性剤として、ドデ
シル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、アルキル硫酸
エステル塩又は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル
硫酸塩等の硫酸エステル塩、脂肪酸アルコールリン酸エ
ステル塩、スルホコハク酸エステル塩又はナフタレンス
ルホン酸のホルマリン縮合物等、(2)両性界面活性剤
として、ベタイン系界面活性剤等、(3)非イオン性界
面活性剤として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル
型、脂肪酸エステル型、ポリエチレンイミン型、ポリグ
リセリンエーテル型、エステル型等、(4)カチオン性
界面活性剤として4級アンモニウム塩を使用することが
できる。これらのうち、特にアニオン性界面活性剤が好
ましい。界面活性剤の添加により、続く透析等による還
元剤除去に際し濁りや沈澱の生ずることが防止され、脱
塩精製されたケラチン溶液を得ることが可能となる。
【0015】上記界面活性剤の添加量は、ケラチン溶液
の濃度や原料としたケラチン含有物質の種類によって異
なり得るため、必ずしも限定されないが、通常例えば
0.01乃至5重量%、好ましくは0.1乃至2重量%
である。
【0016】還元剤の除去は、透析、電気透析、限外濾
過等の適宜の手段によって行い、過剰の界面活性剤が除
去されるまで行うことができる。透析外液は例えばイオ
ン交換水とすることができる。また透析外液に還元剤
(チオール基のジスルフィド結合への変換を防止できる
還元剤)を少量(例えば、2−メルカプトエタノールの
場合0.1乃至0.5%)加えておけば、透析中におけ
るケラチン鎖のチオール基の再酸化によるケラチン鎖の
再結合を防止することができる。従って、透析中に酸素
その他の酸化剤の共存が考えられる場合には、還元剤を
少量添加することが通常好ましい。
【0017】脱塩精製して得られたケラチン水溶液はそ
のまま、又は限外濾過等により適宜濃度を調整して、或
いは使用時まで凍結乾燥その他により一旦乾燥品として
保存した後に再度水に溶解して、続くマイクロカプセル
化の段階において使用することができる。該水溶性ケラ
チンは凍結乾燥その他により乾燥させた後も水溶性であ
り、アミノ酸100残基当たりシステイン1乃至5個、
シスチン0.5乃至3個を含み、平均分子量30000
乃至70000である。
【0018】また、上記において使用する界面活性剤
は、還元可溶化の後で添加する代わりに還元可溶化に際
して添加しておけば、還元可溶化を促進して収率及び抽
出速度の双方を高めることが見出された。従って、還元
可溶化を一層効率よく行うためには、界面活性剤の存在
下において還元可溶化を行うことがより好ましい。ま
た、これに用いる界面活性剤としては、ドデシル硫酸ナ
トリウム等の陰イオン性界面活性剤が特に好ましい。か
かる方法によれば、典型的には、還元可溶化の後で界面
活性剤を加える場合に比べて収率は約10乃至20%増
大し、抽出速度は約20乃至70%増大する。
【0019】この場合、液体媒体としては、上述のもの
のうち、例えば水性溶媒、例えば水又は水とメタノー
ル、エタノール等の水混和性の有機溶媒との混合物を使
用するのが特に好ましい。また、界面活性剤存在下での
還元可溶化では、反応は十分に促進されているため、通
常、反応液のpHをアルカリ性側に特に調整することな
く還元可溶化を行う。その他反応条件は界面活性剤を還
元可溶化の後に加える場合と同様でよい。
【0020】界面活性剤の存在下に還元可溶化して得ら
れる水溶性ケラチンについても分析を行い、アミノ酸分
析でアミノ酸100残基当たりシステインを通常4〜1
0個、シスチンを通常0.5〜2個を有すること、及
び、電気泳動分析で分子量15000〜130000の
タンパク質を主成分とすることが確認された。
【0021】なお、還元可溶化反応は超音波照射の下に
行うこともできる。超音波照射は、界面活性剤存在下で
の還元可溶化反応において高められたケラチン収率をも
更に高め(例えば、牛角で45%から55%へと高
め)、且つ、同等以上の収率を得るために要する反応時
間を短縮する(例えば牛角で24時間から8時間へと短
縮する)効果を有する。従って、還元可溶化に際し、超
音波照射下に行うことが更に有利である。超音波照射は
適宜の超音波照射装置を用いて行うことができ、出力は
適宜設定できるが、反応液1Lに対して例えば50乃至
200Wとすることができる。
【0022】以下に、水溶性ケラチンの製造例を記す。 〔水溶性ケラチン製造例1〕羊毛(化炭ノイル)20g
を0.8Mチオグリコール酸カリウム水溶液(pH1
0.5)300mLに浸漬し、5℃で36時間攪拌を行
った。反応物から不溶物を濾過により除去し、イオン交
換水で600mLに希釈した。この液にドデシル硫酸ナ
トリウム(SDS)10gを加えて溶解し、セロファン
チューブに入れてイオン交換水(10L)に対して2回
透析し、無色透明のケラチン水溶液(650mL)を得
た。
【0023】Lowry 法によりこの溶液のタンパク質定量
を行ったところ、ケラチン濃度は1.2%であった。ま
た、該水溶液を凍結乾燥して得たケラチン粉末のアミノ
酸分析を行ったところ、アミノ酸100残基当たりシス
テインが3.3個、シスチンが1.2個であった。ま
た、ポリアクリルアミド−SDS電気泳動法によれば、
分子量30000乃至70000のタンパク質が主成分
であった。
【0024】〔水溶性ケラチン製造例2〕脱脂羊毛(メ
リノ種)10g、ドデシル硫酸ナトリウム6.0g、亜
硫酸水素ナトリウム16g及び8モル濃度の尿素300
mLの混合液を密栓のうえ、50乃至55℃にて1時
間、浴槽型超音波装置にて処理した。不溶物を濾過して
除去し、濾液をセロファンチューブに入れ、外液として
0.2重量%亜硫酸水素ナトリウム水溶液(3L)を用
いて透析した。透析物より少量の不溶物を遠心により除
いて得られた無色透明の水溶液約330mLはケラチン
を1.4重量%含有していた(Lowry 法によるタンパク
質分析による)。またこのケラチンはアミノ酸分析によ
り、アミノ酸100残基当たりシステイン7.6個、シ
スチン0.8個を有しており、ポリアクリルアミド−S
DS電気泳動によれば、分子量約40000及び600
00のタンパク質(それぞれ3乃至4割、5乃至6割)
を主成分としていた。
【0025】〔II.本発明におけるマイクロカプセル
の製造方法及び得られるマイクロカプセルの特徴〕上記
で得られる水溶性ケラチンを用いて再生天然ケラチンを
壁材とするマイクロカプセルを製造する方法、及びそれ
によって得られるマイクロカプセルの特徴を以下に説明
する。上記で得られるケラチン水溶液をそのままで、又
は限外濾過等により濃度を適宜調整し、或いは凍結乾燥
等により一旦乾燥させたものを再度水溶液として、以下
の工程で使用することができる。
【0026】なお、上記で得られた水溶性ケラチンは、
タンパク質分解酵素等によるペプチド鎖切断処理を経て
いないため、ケラチン加水分解物に比して膜の形成能が
著しく高く(試験例1を参照)、マイクロカプセルの効
率的な製造には格段に有利である。しかも、上記で得ら
れる水溶性ケラチンより製造されるマイクロカプセル
は、ケラチン加水分解物から製造されるマイクロカプセ
ルに比して格段に優れた安定性を有する(比較例1を参
照)。
【0027】また、上記で得られた水溶性ケラチンより
マイクロカプセルを製造するためには、例えば、相分離
法、噴霧凝固造粒法その他マイクロカプセルの製造方法
として知られている種々の方法のいずれを用いることも
でき、いずれの方法でも、安定で生体適合性の点で好ま
しいマイクロカプセルが容易に製造できる。なお、とり
わけ微細かつ均一な粒径を有しカプセル壁が極めて薄く
且つ安定性が高い、という特段の特徴を備えたマイクロ
カプセルの製造を目的とする場合には、後述の超音波法
が、極めて簡便にこの目的の達成を可能にするから、特
に好ましい。
【0028】〔1.好ましい各方法の概要〕以下(1)
乃至(4)に本発明のマイクロカプセルの各種製造方法
のうち、好ましい主要なものの概要を示す。
【0029】(1)超音波照射法: ケラチン水溶液
と、水に不溶性又は難溶性の有機溶媒等(例えばトルエ
ン、ヘキサン等の有機溶媒又は油状の薬物等)との混合
物(ケラチン水溶液/有機溶媒等の体積比は当該マイク
ロカプセルの製造目的に応じて変化するが、通常0.1
乃至10)を、例えば0℃乃至50℃の温度範囲にて、
例えば10秒乃至10分間超音波照射する。ケラチンの
アミノ酸残基のうちシステイン残基が有するメルカプト
基がジスルフィド結合へと変化することによってケラチ
ン鎖間に架橋形成がなされる結果、水溶性のケラチンが
水に不溶の再生天然ケラチンとなって前記溶媒等の微細
な粒子表面上に極めて薄い安定な皮膜を形成し、当該溶
媒等を芯物質として効率的に閉じ込めてなる均一な粒径
のマイクロカプセルが得られる(実施例3及び4を参
照)。
【0030】(2)振動・攪拌法: 上記(1)の混合
物(ケラチン水溶液及び溶媒の)に過酸化水素、過ヨウ
素酸ナトリウムなどSH基を酸化してジスルフィド結合
に変換することのできる酸化剤を加えた後、ボルテック
スミキサーや攪拌モーターなどで激しく振動・攪拌す
る。超音波法と同様な簡便な操作で、再生天然ケラチン
を壁材とするマイクロカプセルが製造できる(実施例5
を参照)。
【0031】(3)上記二方法の変法: 上記(1)の
混合物を、窒素ガスなど酸化能力を欠くガス雰囲気下に
て、超音波照射装置、ボルテックスミキサーや攪拌モー
ターなどで激しく振動・攪拌して乳濁液とした上で、上
記(2)で述べた酸化剤を加えて攪拌する方法(実施例
6を参照)。
【0032】(4)他の壁材成分を加えた方法: ケラ
チン水溶液と他のタンパク質水溶液の混合物、又はケラ
チン水溶液と非タンパク質でSH基もしくはジスルフィ
ド結合を持つ化合物の水溶液との混合物を壁材原料とし
て用い、上記(1)乃至(3)に記載の方法で処理して
再生天然ケラチンを壁材として含むマイクロカプセルを
製造する(実施例7及び8)。混合する他成分に応じ
て、得られるマイクロカプセルの性質を変化させること
が可能となる。
【0033】上記(1)乃至(4)において、あらかじ
め有機溶媒等に染料、香料、医薬品などの物質を溶かし
たものを使用すれば、これらは芯物質として効率よくマ
イクロカプセル内に含包される(実施例8及び9)。
【0034】〔2.公知成分〕以下に本発明のマイクロ
カプセルの製造に用いる公知成分について詳細に説明す
る。 (i)ケラチン含有水溶液: 下記のケラチン水溶液
(i−a)単独、該ケラチン水溶液(i−a)に以下の
(i−b)若しくは(i−c)に記載の物質を加えた混
合物、又は該ケラチン水溶液(i−a)に(i−b)と
(i−c)とを加えた混合物である。
【0035】(i−a)ケラチン水溶液: ケラチン原
料として羊毛、人髪、鶏羽、犬毛、牛角などケラチンを
含むものを用いて上記の方法で製造したケラチンの水溶
液である。
【0036】(i−b)ケラチン水溶液と混合される他
のタンパク質またはペプチド:コラーゲン、ゼラチン、
フィブリノーゲン、シルク、卵白リゾチーム、インスリ
ンなどのメルカプト基やジスルフィド結合を有するタン
パク質;グリシル−グリシル−システイン(Gly-Gly-Cy
s)や(グリシル−グリシル−シスチン)2 〔(Gly-Gly-C
yt )2 〕などのペプチド。またはこれらに存在する複数
のジスルフィド結合の全部または一部が還元されてメル
カプト基となっているもの。
【0037】(i−c)非タンパク質でメルカプト基ま
たはジスルフィド基を持つもの:SH基を担持せしめた
ポリビニルアルコール(例:平均分子量2000に対し
てSH基が1乃至20個)などの高分子の水溶液、およ
びグルタチオン、2−メルカプトエタノールなど。
【0038】(ii)有機溶媒等:本発明に使用する有
機溶媒としては、水に難溶なトルエン、キシレン、ヘキ
サン、デカン、シクロヘキサンなどの炭化水素系溶媒が
最も好ましいが、ジエチルエーテルなどのエーテル型溶
媒やフルオロシクロヘキサン、フロン113などの含ハ
ロゲン炭化水素も使用できる。しかし、これらに限るも
のではなく、水に溶解性の低い溶媒であれば使用するこ
とができる。また、溶媒に限らず、水に不溶性又は難溶
性のその他の液状物質、例えばビタミンEアセテートそ
の他の油状の薬物等も使用することができる。
【0039】(iii)酸化剤:酸化剤を使用する場合
には、空気、酸素、過酸化水素、過ヨウ素酸ナトリウ
ム、過臭素酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、ヨウ素
酸カリウムなどの、メルカプト基をジスルフィド結合に
酸化し得るものを用いるのが好ましい。また、これら酸
化剤と共に、酸化促進剤または触媒として、例えば鉄イ
オン、を併用することもできる。
【0040】〔3.マイクロカプセル形成の具体的方法
例〕マイクロカプセルを形成させるための方法として
は、以下の通り、既知のマイクロカプセル製造方法が種
々使用できるが、粒径が微細且つ均一でありカプセル壁
が極めて薄く且つ安定性が高いマイクロカプセルを簡便
に製造することができるという点で、超音波法が特に好
ましい。
【0041】(3−i)超音波法: 超音波照射装置は
試料に超音波を照射することができる装置であればいず
れの装置でもよいが、マイクロカプセルの生成効率を高
めるには、チタンなど金属のプローブ先端より超音波を
発生させるプローブ型の装置が好ましい。超音波照射条
件は、試料の成分と体積により適宜調製するが、一般に
ケラチン含有水溶液と有機溶媒等の合計体積の10mL
に対し、30乃至50Wにて10秒間乃至5分間照射す
ればよい。
【0042】なお、含ハロゲン炭化水素などを有機溶媒
として用いると、マイクロカプセルの生成効率と含包効
率が低くなる場合があるが、その場合には、超音波処理
に先立って微量の過酸化水素などの酸化剤を添加してお
けば、マイクロカプセルの生成効率を増加させることが
できる。
【0043】また、窒素ガスなど酸化能力を欠く気体の
雰囲気下にて超音波処理し、生じた乳濁液の混合物に酸
化剤を加えてもよい。この手法は、芯物質が酸化されや
すい場合には、芯物質の酸化を防ぎつつマイクロカプセ
ル化する効果があり、特に有用である。酸化剤の使用料
はおおむね原料中のSH基1個に対し1乃至6倍の酸化
剤分子の個数に相当する量である。
【0044】ケラチンとケラチン以外の壁材原料〔上記
2.の(i−b)及び(i−c)〕の混合比は、ケラチン
に対して1乃至500重量%用いることができるが、例
えば、コラーゲンやゼラチン、フィブリノーゲンでは3
0乃至500重量%、シルクでは1乃至100重量%、
SH基担持ポリビニルアルコールでは10乃至200重
量%を用いる。有機溶媒量は、芯物質の溶解性に応じて
変わるが、ケラチンと上記壁材原料の水溶液全量に対し
て0.1乃至5倍体積、通常は0.5乃至2倍体積を使
用する。
【0045】(3−ii)攪拌法: 壁材原料は超音波
法と同様であるが、超音波操作の代わりにボルテックス
ミキサーで激しく振動させつつ攪拌するか、又は攪拌モ
ーターにより激しく攪拌する。なお、処理前に酸化剤を
微量(SH基1個に対し1乃至6倍の酸化剤分子個数)
加えておくか、攪拌して生じた乳濁状の混合物に酸化剤
を加え、その後、酸化剤がよく混ざるよう緩く攪拌して
もよい。
【0046】(3−iii)pH調製による方法: 芯
物質たる前記有機溶媒等をケラチン水溶液中に分散さ
せ、これにクエン酸、酢酸等の酸を加えてpHを4乃至
5付近に調整する。これにより、水溶性ケラチンは等電
点に達して該芯物質を核にして凝集沈着しこれを包囲し
てマイクロカプセルの原型が形成される。ついで空気、
酸素その他の酸化剤を導入・添加することにより、水溶
性ケラチンの各分子のメルカプト基同士が酸化されてジ
スルフィド結合を形成し高分子化して不溶性の被膜とな
り、マイクロカプセルが形成される。
【0047】(3−iv)噴霧乾燥法: 水溶性又は水
に不溶性の芯物質をケラチン水溶液中に溶解又は分散さ
せ、これをスプレードライヤーで噴霧し、熱風と接触さ
せ水分を蒸発させて乾燥させることにより、マイクロカ
プセルが形成される。該方法は、水溶性及び水不溶性の
いずれの物質をも芯物質としてマイクロカプセル化する
ことができ、カプセル壁の不溶化も容易に行われるとい
う利点を有する。
【0048】(3−v)コアセルベートの形成による方
法: pH5以上に調整したケラチン水溶液中にpHの
いかんによらず負に荷電しているポリアニオン、例えば
アラビアゴムの水溶液を添加して希釈水溶液とし、これ
に水に難溶性又は不溶性の芯物質を分散させる。この系
に酢酸、クエン酸等の酸を添加してpHを低下させるこ
とにより、ケラチン分子の荷電のみを負から正に変化さ
せ、芯物質を核にして水溶性ケラチンとポリアニオンと
の複合コアセルベートの膜を形成させる。次いで適宜酸
化処理を行うことにより、この膜が水に不溶性となりマ
イクロカプセルが形成される。かかる複合コアセルベー
トを形成し得るポリアニオンの他の例としては、アルギ
ン酸ナトリウム、寒天、カルボキシメチルセルロー
ス、、ポリビニルメチルエーテル無水マレイン酸共重合
体、ポリビニルベンゼンスルホン酸、ホルマリンとナフ
タレンスルホン酸との縮合物等、分子中に酸基を有する
ポリマーや界面活性剤等が挙げられる。
【0049】また、ケラチン水溶液に芯物質を分散さ
せ、これにアルコール等又は無機塩類を添加することに
よって、芯物質を核として単純コアセルベート又はソル
トコアセルベートの膜を形成させることができ、これを
適宜酸化処理して不溶化させることによりマイクロカプ
セルが形成される。
【0050】〔4.マイクロカプセルの単離〕上記(3
−i)乃至(3−iii)、及び(3−v)で得られた
マイクロカプセルの単離は次のようにして行うのが好ま
しい。 (4−i)処理液をそのまま濃縮するか乾燥(凍結乾燥
など)する。
【0051】(4−ii)処理液を遠心して、マイクロ
カプセルを分離分画する。このままではマイクロカプセ
ルの外部にマイクロカプセルの生成に与からなかった壁
材原料や酸化剤などが不純物として残る場合があるた
め、また、マイクロカプセルを更に改質するため、マイ
クロカプセル画分に水や緩衝液を加えて攪拌後遠心し、
再びマイクロカプセルを分離分画する。この操作を数回
繰り返した後、マイクロカプセル分散液をそのまま利用
するか、濃縮または乾燥(凍結乾燥など)する。
【0052】(4−iii)処理液を、セロファン膜な
どの半透膜を利用して水や緩衝液あるいは香料、染料、
生物活性薬物などを溶かした水溶液に対して、透析す
る。透析後の液をそのまま利用するか、濃縮または乾燥
(凍結乾燥などで)する。
【0053】以上により得られるマイクロカプセルの直
径は、ケラチン含有水溶液の種類、ケラチン含有水溶液
に対する有機溶媒の体積比、振動又は攪拌の与え方と時
間などにより変動し一概に規定できないが、例えば、
2.5重量%のケラチン水溶液とトルエンとの1:1体
積混合物(20mL)を室温にて3分間、50Wにて超
音波処理した場合は、1乃至3μmを主とした微小球で
あることが光散乱法により求められ、同サンプルを透過
型電子顕微鏡で観察したところ、壁厚は約0.02μm
の極めて薄い、紙風船様の形態であった。
【0054】
【実施例】次に実施例を挙げて更に詳しく説明するが、
本発明はこれらに限定されるものではない。 (実施例1)pH調節によるマイクロカプセル化: 製造例1で得たケラチン水溶液(ケラチン濃度1.2重
量%)500mL中に、ビタミンEアセテート5gを均
一に分散させ、攪拌しながらこれに5%クエン酸水溶液
を滴下して加えpH4にてケラチンを凝集させ、分散し
たビタミンEアセテートの周囲にマイクロカプセルの原
型を形成させた。これを遠心分離により分離し、空気を
吹き込んで乾燥しつつ空気酸化させ、更に減圧乾燥して
マイクロカプセルを完成させた。得られたマイクロカプ
セルは、pHのいかんに関わりなく20℃の水に不溶で
あった。
【0055】(実施例2)噴霧乾燥によるマイクロカプ
セル化: 製造例1で得たケラチン水溶液(ケラチン濃度1.2重
量%)500mLに、メチレンブルー2gを加えて分散
させ、これをスプレードライヤーで噴霧し、熱風を接触
させて水分を蒸発、乾燥させることにより、メチレンブ
ルーの周囲に水に不溶性のケラチンの被膜を形成させて
マイクロカプセル化を行った。
【0056】(実施例3)広口試験管に製造例1で得た
ケラチン水溶液(ケラチン濃度1.2重量%)10mL
とトルエン10mLを加え、マグネットバーで混合物を
間接的に攪拌しつつ、25℃にて50Wの出力で3分
間、超音波照射した。生じた白色懸濁液を3000回転
/分で15分間遠心し、白濁固形物質を分離し、水(2
0mL)を加え、攪拌後、同様に遠心した。同じ洗浄操
作を更に2回繰り返した後凍結乾燥した。得られた白色
粉末状物質(約0.10g)は、透過型電子顕微鏡観察
によれば比較的均一なマイクロカプセルであり、壁厚約
0.02μm、直径1.2乃至1.5μmであった。白
色粉末状物質の光散乱測定によってもほぼ同様の直径分
布が示された。
【0057】(比較例1)製造例1で得たケラチン水溶
液の代わりに、特公昭59−33017号記載の方法に
よるケラチン加水分解物(平均分子量2200)を用い
た以外は実施例3と同様にしてマイクロカプセル化を試
みた。しかしながら、該水溶性ケラチン加水分解物より
得られた粒状物質は極めてもろく、その水中分散体は室
温で放置するのみで崩壊し内部のトルエンを遊離してし
まった。
【0058】(実施例4)広口試験管に製造例2で得た
ケラチン水溶液(ケラチン濃度1.4重量%)(10m
L)とトルエン(10mL)を入れ、マグネットバーで
混合物を間接的に攪拌しつつ、25℃にて50Wの出力
で3分間、超音波照射した。生じた白色懸濁液を300
0回転/分で15分間遠心し、白濁固形物質を分離し、
水(20mL)を加え、攪拌後、同様に遠心した。同じ
洗浄操作を更に2回繰り返した後、凍結乾燥した。得ら
れた白色粉末状物質(約0.11g)は、透過型電子顕
微鏡観察によれば、比較的均一なマイクロカプセルであ
り、壁厚は約0.02μm、直径は1.2乃至1.5μ
mである。白色粉末状物質の光散乱測定もほぼ同様の直
径分布を示した。原料のケラチン水溶液を凍結乾燥して
得たケラチン粉末のアミノ酸分析では、アミノ酸100
残基当たりシステインが7.5個、シスチンが0.9個
であったが、マイクロカプセルではシスチン含量が約8
個に増加していた。他のアミノ酸残基は原料における値
とほぼ一致した。
【0059】(実施例5)広口試験管に製造例2で得た
ケラチン水溶液(ケラチン濃度1.4重量%)(10m
L)、30%過酸化水素水(0.05mL)とトルエン
(10mL)を入れ、ボルテックスミキサーで25℃で
5分間激しく振動攪拌した。生じた白色懸濁液を200
0回転/分で15分間遠心し、白濁固形物質を分離し、
水(20mL)を加え、攪拌後、同様に遠心した。同じ
洗浄操作を更に2回繰り返した後、凍結乾燥した。得ら
れた白色粉末状物質(約0.11g)の透過型電子顕微
鏡観察によれば、生じたマイクロカプセルの直径は、や
やばらつくものの、3乃至10μmである。
【0060】(実施例6)広口試験管に製造例2で得た
ケラチン水溶液(ケラチン濃度1.4重量%)(10m
L)とトルエン(10mL)を入れ、窒素ガス雰囲気
下、25℃で5分間超音波処理した。生じた白色懸濁液
に30%過酸化水素水(0.07mL)を加え、緩く振
盪後、15分放置した。次いでを2000回転/分で1
5分間遠心し、白濁固形物質を分離し、水(20mL)
を加え、攪拌後、同様に遠心した。同じ洗浄操作を更に
2回繰り返した後、すぐ凍結乾燥した。得られた白色粉
末状物質(約0.11g)の透過型電子顕微鏡観察によ
れば、生じたマイクロカプセルの直径は、ややばらつく
ものの、2乃至5μmである。
【0061】(実施例7)広口試験管にコラーゲン(タ
イプI)(0.5%、コーケン社製、I-PC)(10m
L)を入れ、28%アンモニア水で弱アルカリにした。
ついで製造例2で得たケラチン水溶液(ケラチン濃度
1.4重量%)(6mL)を加え、50℃にて10乃至
15分間振盪した。当初ゲル化した混合物が流動液とな
った後、トルエン(10mL)を入れ、マグネットバー
で混合物を間接的に攪拌しつつ、25℃にて35Wの出
力で3分間、超音波照射した。生じた白色懸濁液を20
00回転/分で15分間遠心し、白色固形物を分離し、
水(20mL)を加え、攪拌後、更に遠心した。同じ洗
浄操作を更に2回繰り返した後、白色懸濁液を凍結乾燥
した。得られた白色粉末状物質(約0.10g)は透過
型電子顕微鏡観察によれば、比較的均一なマイクロカプ
セルであり、壁厚は約0.02μm、直径1.5乃至3
μmである。この白色粉末状物質の光散乱測定もほぼ同
様の直径分布を示した。
【0062】(実施例8)広口試験管にメルカプト基を
担持したポリビニルアルコール(分子量2000、SH
基1乃至3個)の2.5%水溶液(3mL)をいれ、次
いで製造例2で得たケラチン水溶液(ケラチン濃度1.
4重量%)(20mL)を加え、充分に振動攪拌した。
次いでシリコン油(ALDRICH 社) を2重量%溶解した1
−フルオロシクロヘキサン(10mL)を入れ、マグネ
ットバーで混合物を間接的に攪拌しつつ、25℃にて5
0Wの出力で3分間、超音波処理した。生じた白色懸濁
液を2000回/分で15分間遠心し、白濁固形物を分
離し、純水(5mL)に分散保存した。同分散液を凍結
乾燥すると、約0.28gの粉末が得られた。分散液
は、電子顕微鏡観察によれば、比較的均一な粒子を含
み、光散乱測定によれば、2乃至8μmの主たる直径分
布を示した。上記遠心処理で分離した有機溶媒層が約1
乃至2mLと少ない上、その濃縮により得られた残渣の
シリコン量が使用量の5乃至20%であることから、シ
リコンがマイクロカプセルに含包されていることは明ら
かである。
【0063】(実施例9)実施例4のトルエンの代わり
にビタミンKの3重量%トルエン溶液(10mL)を用
いる他は、全く同じ操作でマイクロカプセルを得た
(0.30g)。マイクロカプセルのエタノール分散液
の紫外吸収スペクトル測定より、使用したビタミンKの
70%がマイクロカプセルに含包されていることが明ら
かとなった。
【0064】〔試験例1〕ケラチン膜からのケラチンの
剥離量: ガラス表面に、製造例2の方法で得たケラチン水溶液と
特公昭59−33017号記載の方法による水溶性ケラ
チン加水分解物(同濃度:平均分子量2200)とを用
いて、それぞれケラチン薄膜(厚さ約100μm)を調
製した。これをpH7.4のトリス塩酸緩衝液に浸し、
40℃にて振盪した。水溶液を一定量採取し、溶解した
タンパク質量をLowry 法で定量し、剥離量を産出した。
結果を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】なお、特公昭59−33017号に記載の
方法による平均分子量15000の水溶性ケラチン加水
分解物を用いてケラチン薄膜の調製をも試みたが、製膜
化は困難であった。
【0067】
【発明の効果】以上の通り、本発明によれば、天然ケラ
チンを壁材とし、壁厚が薄くしかも安定性が高い極めて
微細且つ均一な粒径の高い含包量を有するマイクロカプ
セルを容易に製造することができる。また本発明のマイ
クロカプセルは、ケラチン加水分解物を壁材とする公知
技術のマイクロカプセルと比較して、マイクロカプセル
の製造効率、安定性等において格段に優れる。更に、本
発明のマイクロカプセルは、天然のケラチン鎖間の架橋
を一旦切離し、再びこれを形成してなる再生天然ケラチ
ンを壁材とするものであって、ケラチン鎖自身の切断等
の非可逆的化学修飾を伴わないものであるため、生体適
合性の点で好ましく、既述の通り多方面での利用が可能
である。
フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 B01J 13/02 C08L 89/04 LSE 7415−4J

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】再生天然ケラチンを壁材とするマイクロカ
    プセル。
  2. 【請求項2】該再生天然ケラチンが、ケラチン含有物質
    を液体媒体中において還元剤で処理してケラチンを抽出
    することにより得られる水溶性ケラチンを、マイクロカ
    プセルの壁の形態に不溶化させてなるものである、請求
    項1に記載のマイクロカプセル。
  3. 【請求項3】マイクロカプセルの壁材が、ケラチン含有
    物質を液体媒体中において還元剤で処理してケラチンを
    抽出することにより得られる水溶性ケラチンと、メルカ
    プト基若しくはジスルフィド結合を有するタンパク質若
    しくはポリペプチド及び/又はメルカプト基若しくはジ
    スルフィド結合を担持したポリビニルアルコールとの混
    合物を、マイクロカプセルの壁の形態に不溶化させてな
    るものであることを特徴とするマイクロカプセル。
  4. 【請求項4】ケラチン含有物質を液体媒体中において還
    元剤で処理してケラチンを抽出することにより得られる
    水溶性ケラチンを、壁材原料として芯物質の周囲に被覆
    させて不溶化させることよりなる、再生天然ケラチンを
    壁材とするマイクロカプセルの製造方法。
  5. 【請求項5】ケラチン含有物質を液体媒体中において還
    元剤で処理してケラチンを抽出することにより得られる
    水溶性ケラチンと、メルカプト基若しくはジスルフィド
    結合を有するタンパク質若しくはポリペプチド及び/又
    はメルカプト基若しくはジスルフィド結合を担持したポ
    リビニルアルコールとの混合物を、壁材原料として芯物
    質の周囲に被覆させこれを不溶化させることよりなるマ
    イクロカプセルの製造方法。
  6. 【請求項6】該壁材原料を含む水溶液を水に不溶性又は
    難溶性の液状物質である芯物質と混合し、これを超音波
    処理及び/又は激しく攪拌することを特徴とする、請求
    項4又は5に記載の製造方法。
  7. 【請求項7】チオール基をジスルフィド結合に変換し得
    る酸化剤を前記超音波処理及び/又は激しい攪拌の前に
    添加し攪拌することを特徴とする、請求項6に記載の製
    造方法。
  8. 【請求項8】該超音波処理及び/又は激しい攪拌を酸化
    能力を欠くガス雰囲気下にて行った後、チオール基をジ
    スルフィド結合に変換し得る酸化剤を添加し攪拌するこ
    とを特徴とする、請求項6に記載の製造方法。
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