JPH0528287B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は、特に急傾斜の法面をコンクリート版
によつて被覆して崩落を防止する法面用擁壁工法
に関する。

（従来の技術） 一般に法面を保護する工法には、棒状や十字状
あるいは井桁状をしたコンクリートブロツクを組
み合わせて格子状をした法枠を法面に設置する法
枠工法がある。また法面が急傾斜である場合に
は、法面の前面にはコンクリートブロツクを積み
上げ、その重量によつて法面の崩落を防止する工
法がある。

（発明が解決しようとする課題） しかし、従来の法枠工法では法面が急傾斜であ
る場合には土砂の流出を防止するために法枠内に
現場施工によつて、コンクリートを打設する必要
があり、また斜面に大重量の法枠や場所打コンク
リートを搬入しなければならず工事に多くの労力
を要し、しかも傾斜が一定以上の場合には施工で
きない等の問題があつた。

また重量式ブロツク積工法は、直立に近い傾斜
の法面に対しても施工可能であるが、施工に際し
一旦法面を削り取り、その前面にブロツクを積み
上げ、背面に流水層を形成しつつ裏込めするもの
であり、安定している法面に対しても法面の削り
取りが必要になるため、かえつて地山の不安定化
を招くという問題があり、更に広い法面に施工す
るには多量のブロツクが必要になり、しかも各ブ
ロツク毎の重量が大きいためコスト高となり、し
かも施工に多大の労力を要する等の問題があつ
た。

本発明は、このような従来の問題にかんがみ、
急傾斜で広面積の法面に対しても軽量のプレキヤ
スト部材を使用して安定な地山を崩すことなく、
少い労力で安定性の高い法面保護ができる法面用
擁壁工法の提供を目的としたものである。

（課題を達成するための手段） 上述の如き従来の問題を解決し、所期の目的を
達成する本発明の法面用擁壁工法の特徴は法面の
地山内に一定間隔毎にアンカー孔を削孔し、該ア
ンカー孔内にアンカーコンクリートを打設すると
ともに該コンクリートに引張材の先端部を埋設固
定させ、前記法面に多角形状をした平板部の表面
に補強リブが一体形成されるとともにその平板部
の幅方向にプレストレスが付与され、かつ中央部
分に表裏に貫通開口させた引張材挿通孔を有する
プレキヤストコンクリート版を多数並べ互いに連
結させて設置し、その各プレキヤストコンクリー
ト版の縦方向の連結部分の裏面には表面に縦向き
の通水管を通した通水マツトを、互いに隣り合う
プレキヤストコンクリート版下にまたがらせて敷
設し、該各プレキヤストコンクリート版の引張材
挿通孔に前記引張材の突出側端部を挿通させ、そ
の各引張材をプレキヤストコンクリート版の表面
側にて緊張し、該プレキヤストコンクリート版に
定着させることにある。

（作用） この工法はプレキヤストを付与したプレキヤス
トコンクリート版を使用するものであるため、薄
型に成型してもそれ自体が弾力を有し、これを多
数並べて敷設し、そのそれぞれをアンカー孔内に
端部を埋設固定した引張材により緊張して定着さ
せることにより、各プレキヤストコンクリート版
の底面により地山面が弾性的に押圧されることと
なり、しかも各プレキヤストコンクリート版相互
間が連結されているため、全面が一体となつた薄
いコンクリート版によつて覆う状態に擁壁が形成
される。

また縦方向の連結部分の裏面に通水マツトを敷
設することにより、プレキヤストコンクリート版
の裏面側の水分は、この通水マツトに集められ、
縦向きの通水管を通つて流下されることとなり、
プレキヤストコンクリート版裏面の土砂の流失が
なくなる。

（実施例） 次に本発明の実施の一例を図面について説明す
る。

まず、第１図〜第３図について本発明に使用す
るプレストレスを付与したプレキヤストコンクリ
ート版（以下PSC版と記す）１０について説明す
る。

このPSC版１０は平面が正方形状の平板部１１
を有し、その平板部１１の表面に十字状配置に補
強リブが一体成形されている。補強リブ１２は互
いに交差する中央部分が高くなるように傾斜して
おり、その互いに十字状に交差する中心位置に凹
陥部１３が形成され、その凹陥部１３の中央に裏
面に貫通開口された引張材挿通孔１４が形成され
ている。平板部１１はその四隅部１１ａの厚みが
最も薄く、補強リブ１２に近づくに従つて順に厚
くなるように四方に傾斜面１１ｂ，１１ｂ……が
形成されている。

補強リブ１２下には、平板部１１の一方縁から
他方縁しに向けてプレストレス鋼材（以下PC鋼
材と記す）１５が互いに十字状にクロスする配置
に挿通されており、その両端部を平板部１１の両
縁に緊張させた状態で定着させており、これによ
つて縦横にプレストレスが付与されている。

平板部１１の四方には、アンカーナツト１６，
１６が埋設され、これにボルト１７をねじ込んで
連結金具１８が固定されるようにしている。

次にこのように構成されるPSC版１０を使用し
て施工する工法を第４図以下の図面について説明
する。

まず施工しようとする法面の下縁部に場所打ち
により基礎コンクリート２０を打設するととも
に、ケージング（図示せず）を押し込みつつアン
カー孔２２を削孔する。このアンカー孔２２は、
後に敷設するPSC版１０の引張材挿通孔１４に対
応させた位置に削孔する。

次いでセメントミルクからなるグラウト２３を
注入した後、コルゲートシース２４を挿入し、ケ
ージングを一定長さだけ引き抜いた状態でグラウ
ト２３を更に注入し、その後ケージングを引き抜
き、コルゲートシース２４内にグラウト２３を注
入の後、引張材２５を挿入する。この引張材２５
は合成樹脂シース２５ａ内にPC鋼撚線２５ｂを
挿通し、先端の定着長部分のみを合成樹脂シース
２５ａから突出させ、テーピングにより合成樹脂
シース２５ａ内にはグラウト２３が侵入しないよ
うにして挿入する。

このようにしてアンカー孔２２内に打設したコ
ンクリート内に引張材２５の先端を定着させた
後、PSC版１０を法面の表面に目地間隔を隔てて
多数敷設し、各PSC版１０毎にその引張材挿通孔
１４に引張材２５の端部を挿通させる。一方、各
PSC版１０，１０間は互いに隣り合うもの同志の
連結金具１８，１８をボルト２６により連結す
る。また各PSC版１０，１０間の縦方向の連結部
分の裏面には、互いに隣り合うPSC版１０，１０
にまたがらせるとともに、法面の上下に連続させ
て通水マツト２７を敷設する。なお、この通水マ
ツト２７は表面に樋状の通水管２８が固着されて
いるものを使用し、その通水管２８をPSC版１
０，１０間の目地部分２９内に挿入させる。

このように各PSC版１０，１０……を互いに連
結して敷設した後、その各PSC版１０の中央部分
より突出している引張材２４の端部を油圧ジヤツ
キを使用して引張し、その状態を維持させて定着
具３０により端部をPSC版１０の凹陥部１３内に
定着させる。然る後、目地部分２９内に目地コン
クリート３１を充填して全体を一体化させた一枚
の擁壁となす。

なお擁壁の最上端部には必要に応じて第７図に
示すように短形状のプレキヤスト版３２を連結し
て敷設し、被覆コンクリート３３を打設する。

このようにして造成された擁壁はPSC版１０自
体に弾性があり、これを引張材２５によりアンカ
ーに緊張定着しているため法面を常に押圧してい
る状態となる。

（発明の効果） 上述の如く本発明の法面用擁壁工法は、PSC版
を互いに連結させて敷設し、その各PSC版を地中
アンカーに連結した引張材により緊張して定着さ
せるようにしたことにより、肉厚の小さいPSC版
により弾性をもたせて法面の地山を圧することと
なりしかも地山を削らないで施工できるため、地
山の安定度を損ねることがなく、より安定度の高
い法面保護がなされる。またPSC版は薄型で軽量
のものを使用することができ、従来工法に比べて
資材の搬入、設置が容易になり、作業性良く工事
を行うことができることとなつたものである。

また各PSC版の縦方向の連結部分の裏面には通
水マツトが敷設されているため、擁壁の裏面に染
め出る水分は通水マツトに集められ、通水管を通
つて排出されるため、擁壁裏面の土砂の流失がな
くなり、安定性の高い擁壁が構築される。

【図面の簡単な説明】

第１図はPSC版の平面図、第２図は同側面図、
第３図は第１図中の−線断面図、第４図擁壁
の縦断面図、第５図は同正面図、第６図は擁壁の
一部切り書き拡大正面図、第７図は第６図中の
−線断面図、第８図は同−線断面図であ
る。 １０……プレキヤストコンクリート版（PSC
版）、１１……平板部、１２……補強リブ、１３
……凹陥部、１４……引張材挿通孔、１５……
PC鋼材、１６……アンカーナツト、１８……連
結金具、２２……アンカー孔、２３……グラウ
ト、２４……コルゲートシース、２５……引張
材、２７……通水マツト、３０……定着具、３１
……目地コンクリート。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 法面の地山内に一定間隔毎にアンカー孔を削
   孔し、該アンカー孔内にアンカーコンクリートを
   打設するとともに該コンクリートに引張材の先端
   部を埋設固定させ、前記法面に多角形状をした平
   板部の表面に補強リブが一体成形されるとともに
   その平板部の幅方向にプレストレスが付与され、
   かつ中央部分に表裏に貫通開口させた引張材挿通
   孔を有するプレキヤストコンクリート版を多数並
   べ互いに連結させて設置し、その各プレキヤスト
   コンクリート版の縦方向の連結部分の裏面には表
   面に縦向きの通水管を通した通水マツトを、互い
   に隣り合うプレキヤストコンクリート版下にまた
   がらせて敷設し、該各プレキヤストコンクリート
   版の引張材挿通孔に前記引張材の突出側端部を挿
   通させ、その各引張材をプレキヤストコンクリー
   ト版の表面側にて緊張し、該プレキヤストコンク
   リート版に定着させることを特徴としてなる法面
   擁壁工法。