JPH0525576A

JPH0525576A - 耐孔食性にすぐれたＡｌ熱交換器用高強度Ａｌ合金管材

Info

Publication number: JPH0525576A
Application number: JP3201318A
Authority: JP
Inventors: Ken Toma; 建当摩
Original assignee: Mitsubishi Aluminum Co Ltd
Current assignee: MA Aluminum Corp
Priority date: 1991-07-16
Filing date: 1991-07-16
Publication date: 1993-02-02

Abstract

(57)【要約】【目的】Ａｌ熱交換器用高強度Ａｌ合金管材の耐孔食
性を向上させる。【構成】Ａｌ熱交換器用高強度Ａｌ合金管材を構成す
る、重量％で、Ｆｅ：０．２〜１．５％、Ｓｉ：０．０５〜１．２
％、を含有し、さらに必要に応じて、Ｚｒ：０．０５〜０．１５％、Ｍｎ：０．１〜１．２
％、Ｔｉ：０．０２〜０．２％、Ｍｇ：０．０５〜０．３
％、のうちの１種または２種以上、を含有し、残りがＡｌと不可避不純物からなる組成を有
するＡｌ合金に、全体に占める割合で、Ｚｎ：０．０５〜０．５％と、Ｇａ，Ｃｄ，Ｉｎ，Ｓｎ，Ｔｌ，およびＰｂのうちの１
種または２種以上：１〜１００ppm 、を合金成分として
含有させる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、Ａｌ熱交換器のろう
付け組立てに管材として用いた場合に、すぐれた耐孔食
性を発揮する高強度Ａｌ合金管材に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、例えば自動車やオートバイなどの
ラジエータ、さらにはエバポレータなどのＡｌ熱交換器
が、外側面にＡｌ合金ろう材をクラッドしたＡｌ合金管
材とＡｌ合金フィン材、あるいはＡｌ合金管材と片面ま
たは両面にＡｌ合金ろう材をクラッドしたＡｌ合金フィ
ン材とを、組立てろう付けすることにより製造され、か
つ上記Ａｌ合金ろう材として、重量％で（以下％は重量
％を示す）、Ｓｉ：７〜１２％、を含有し、さらに必要に応じて、Ｍｇ：０．１〜２％、Ｂｉ：０．０２〜０．２
％、のうちの１種または２種、を含有し、残りがＡｌと不可
避不純物からなる組成を有するＡｌ合金が用いられるこ
とも知られている。

【０００３】また、近年のＡｌ熱交換器の高性能化、小
型化、および軽量化に対応する目的で、薄肉化が可能な
高強度を有するＡｌ合金、例えばＡＳＴＭ８０１１に記
載される通りの、Ｆｅ：０．６〜１．０％、Ｓｉ：０．５〜０．９％、を含有し、残りがＡｌと不可避不純物からなる組成を有
する高強度Ａｌ合金が管材として用いられていることも
知られている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかし、上記の従来高
強度Ａｌ合金管材においては、これを構成するＡｌ合金
が高強度、特に高温強度をもつので、薄肉化してもろう
付け時に熱変形することはほとんどないが、材質的に孔
食が発生し易く、薄肉であることと相まって貫通孔にま
で発展し、比較的短時間で使用寿命に至るという問題が
ある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】そこで、本発明者等は、
上述のような観点から、薄肉化が可能な高強度を有する
と共に、すぐれた耐孔食性を具備したＡｌ合金管材を開
発すべく、上記の従来高強度Ａｌ合金管材に着目し研究
を行なった結果、上記従来高強度Ａｌ合金管材を構成す
るＡｌ合金に、合金成分として少量のＺｎと共に、微量
のＧａ，Ｃｄ，Ｉｎ，Ｓｎ，Ｔｌ，およびＰｂのうちの
１種または２種以上を共存含有させると、これらの合金
成分はＡｌ熱交換器のろう付け組立て時に管材の内側面
部および外側面部に拡散移動して凝集するようになり、
しかもこの凝集作用はＺｎの存在によって一段と促進さ
れ、このように前記合金成分が凝集した管材の内側面部
および外側面部は電気化学的に著しく卑になり、腐食が
全面腐食型になるので孔食の発生が著しく抑制されるよ
うになり、一方、管材の内部は、上記合金成分の内側面
部および外側面部への拡散移動によって、これら合金成
分がほとんど存在しない状態になっているので、管材自
体は上記の従来高強度Ａｌ合金管材と同等の高強度、特
にろう付け時に熱変形し難いというすぐれた高温強度を
保持するという研究結果を得たのである。

【０００６】この発明は、上記の研究結果にもとづいて
なされたものであって、Ｆｅ：０．２〜１．５％、Ｓｉ：０．０５〜１．２
％、を含有し、Ｚｎ：０．０５〜０．５％と、Ｇａ，Ｃｄ，Ｉｎ，Ｓｎ，Ｔｌ，およびＰｂのうちの１
種または２種以上：１〜１００ppm 、を含有し、さらに必要に応じて、Ｚｒ：０．０５〜０．１５％、Ｍｎ：０．１〜１．２
％、Ｔｉ：０．０２〜０．２％、Ｍｇ：０．０５〜０．３
％、のうちの１種または２種以上、を含有し、残りがＡｌと不可避不純物からなる組成を有
するＡｌ合金で構成してなる耐孔食性にすぐれたＡｌ熱
交換器用高強度Ａｌ合金管材に特徴を有するものであ
る。

【０００７】つぎに、この発明の高強度Ａｌ合金管材に
おいて、これを構成するＡｌ合金の組成を上記の通り限
定した理由を説明する。

【０００８】（ａ）ＦｅおよびＳｉこれらの成分には、Ａｌと結合して素地中に微細均一に
分散する各種の化合物を形成し、もつて高温強度（耐熱
変形性）を向上させる作用があるが、その含有量がＦ
ｅ：０．２％未満であっても、Ｓｉ：０．０５％未満で
あっても所望の高温強度を確保することができず、一方
その含有量がＦｅ：１．５％およびＳｉ：１．２％をそ
れぞれ越えると、これら成分の素地への固溶割合が多く
なり、この結果耐食性や加工性が低下するようになるこ
とから、その含有量をＦｅ：０．２〜１．５％、Ｓｉ：
０．０５〜１．２％と定めた。

【０００９】（ｂ）Ｇａ，Ｃｄ，Ｉｎ，Ｓｎ，Ｔｌ，お
よびＰｂこれらの成分には、上記の通りろう付け時に管材の内側
面部および外側面部に拡散移動して凝集する性能があ
り、これによって管材の内側面部および外側面部は相対
的に電気化学的に著しく卑となり、この結果管材の内側
面部および外側面部の腐食形態が全面腐食型となること
から、孔食の発生が皆無となる作用があるが、その含有
量が１ppm 未満では前記作用に所望の効果が得られず、
一方その含有量が１００ppm を越えると、ろう付け後に
管材内部に残留するようになり、所望のすぐれた高温強
度を確保するのが困難になることから、その含有量を１
〜１００ppm と定めた。

【００１０】（ｃ）ＺｎＺｎ成分には、上記の通りＧａ，Ｃｄ，Ｉｎ，Ｓｎ，Ｔ
ｌ，およびＰｂ成分の凝集を促進すると共に、自身もこ
れらの成分と一緒に管材の内側面部および外側面部に拡
散移動して管材の耐孔食性を向上させる作用があるが、
その含有量が０．０５％未満では前記作用に所望の効果
が得られず、一方その含有量が０．５％を越えると全面
腐食が急激に進行するようになることから、その含有量
を０．０５〜０．５％と定めた。

【００１１】（ｄ）Ｚｒ，Ｍｎ，およびＴｉこれらの成分には、各種の化合物を形成して、ろう付け
時に熱変形しないようにする高温強度と、室温強度をよ
り一段と向上させる作用があるので、必要に応じて含有
されるがその含有量がそれぞれＺｒ：０．０５％未満、
Ｍｎ：０．１％未満、およびＴｉ：０．０２％未満では
前記作用に所望の向上効果が得られず、一方その含有量
がそれぞれＺｒ：０．１５％、Ｍｎ：１．２％、および
Ｔｉ：０．２％を越えると、形成される化合物が粗大化
するようになって、圧延加工性が低下することから、そ
の含有量をＺｒ：０．０５〜０．１５％、Ｍｎ：０．１
〜１．２％、およびＴｉ：０．０２〜０．２％とそれぞ
れ定めた。

【００１２】（ｅ）ＭｇＭｇ成分には、素地に固溶して室温強度をより一段と向
上させる作用があるので、必要に応じて含有されるが、
その含有量が０．０５％未満では所望の室温強度向上効
果が得られず、一方その含有量が０．３％を越えると、
高温強度が低下するようになることから、その含有量を
０．０５〜０．３％と定めた。

【００１３】つぎに、この発明の高強度Ａｌ合金管材を
実施例により具体的に説明する。通常の溶解法によりそ
れぞれ表１〜３に示される成分組成をもったＡｌ合金を
溶製し、以下いずれも通常の条件で、幅：１４５０mm×
長さ：２８００mm×厚さ：４００mmの寸法をもったスラ
ブに鋳造し、このスラブに均質化処理を施した後、厚
さ：９mmの熱延板に熱間圧延し、ついで中間焼鈍を加え
ながら冷間圧延（最終冷間圧延率：３０％）を繰り返し
施して厚さ：０．２mmの冷延板とし、この冷延板から高
温強度を評価する目的で、幅：３０mm×長さ：１４０mm
の寸法をもった耐垂下性試験用試片を切出すと共に、外
面寸法で幅：１５mm×厚さ：３mmの偏平状電縫管からな
る本発明高強度Ａｌ合金管材１〜１９、および構成成分
のうちのＺｎ並びにＧａ，Ｃｄ，Ｉｎ，Ｓｎ，Ｔｌ，お
よびＰｂを含有しない組成を有する比較高強度Ａｌ合金
管材１〜９をそれぞれ製造した。

【００１４】

【表１】

【００１５】

【表２】

【００１６】なお、耐垂下性試験は、上記試片の長さ方
向３０mmを水平保持し、１１０mmの長さを水平に突き出
した状態で、真空ろう付けに相当する条件、すなわち約
１０^-4torrの真空中、温度：６００℃に５分間保持の条
件で行ない、試験後の試片の突出先端部の垂下高さを測
定した。

【００１７】また、上記の本発明高強度Ａｌ合金管材１
〜１９および比較高強度Ａｌ合金管材１〜９について
は、これに同じく真空ろう付けに相当する条件、すなわ
ち約１０^-4torrの真空中、温度：６００℃に５分間保持
の条件で加熱処理を施した状態で、（ａ）Ｃｕ²⁺イオンを１ppm 含有し、温度が４０℃の水
道水中に３０日間浸漬の水道水浸漬試験、（ｂ）Ｃｌ^-
イオン：１００ppm 、ＳＯ₄ ^2-イオン：１００ppm 、Ｈ
ＣＯ₃ ^-イオン：１００ppm 、Ｃｕ²⁺イオン：１ppm を
含有し、温度が４０℃の水溶液中に３０日間浸漬の水溶
液浸漬試験、を行ない、内面における４０cm²当りの孔
食数と最大孔食深さを測定した。これらの結果を表３，
４に示した。

【００１８】

【表３】

【００１９】

【表４】

【００２０】

【発明の効果】表１〜４に示される結果から、本発明高
強度Ａｌ合金管材１〜１９は、いずれもろう付け加熱に
よってＺｎ、並びにＧａ，Ｃｄ，Ｉｎ，Ｓｎ，Ｔｌ，お
よびＰｂのうちの１種以上が管材の内側面部（および外
側面部）に拡散移動して凝集し、管材内部にはこれらの
合金成分が存在しない状態になっているので、これらの
合金成分を含有しない比較高強度Ａｌ合金管材１〜９と
同時の高温強度を有し、かつ上記の移動成分の管材にお
ける内側面部への拡散凝集によって電気化学的に卑にな
り、全面腐食型になっているので、上記微量合金成分を
含有しない比較高強度Ａｌ合金管材１〜９に比して一段
とすぐれた耐孔食性を示すことが明らかである。

【００２１】上述のように、この発明の高強度Ａｌ合金
管材は、高強度を有するので、薄肉化してもろう付け時
に熱変形することがなく、また上記の通り合金成分とし
て含有させたＺｎ、並びにＧａ，Ｃｄ，Ｉｎ，Ｓｎ，Ｔ
ｌ，およびＰｂのうちの１種以上がＡｌ熱交換器のろう
付け組立て時に管材の内側面部および外側面部へ拡散移
動して前記内側面部および外側面部を電気化学的に卑に
変化せしめ、これによって管材の内側面部および外側面
部に孔食発生がなくなり、この結果Ａｌ熱交換器は著し
く長期に亘ってすぐれた性能を発揮するようになるなど
工業上有用な特性を有するのである。

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】重量％で、Ｆｅ：０．２〜１．５％、Ｓｉ：０．０５〜１．２
％、を含有し、さらに、Ｚｎ：０．０５〜０．５％と、Ｇａ，Ｃｄ，Ｉｎ，Ｓｎ，Ｔｌ，およびＰｂのうちの１
種または２種以上：１〜１００ppm 、を含有し、残りがＡｌと不可避不純物からなる組成を有
するＡｌ合金で構成したことを特徴とする耐孔食性にす
ぐれたＡｌ熱交換器用高強度Ａｌ合金管材。
【請求項２】重量％で、Ｆｅ：０．２〜１．５％、Ｓｉ：０．０５〜１．２
％、を含有し、Ｚｒ：０．０５〜０．１５％、Ｍｎ：０．１〜１．２
％、Ｔｉ：０．０２〜０．２％、のうちの１種または２種以上、を含有し、さらに、Ｚｎ：０．０５〜０．５％と、Ｇａ，Ｃｄ，Ｉｎ，Ｓｎ，Ｔｌ，およびＰｂのうちの１
種または２種以上：１〜１００ppm 、を含有し、残りがＡｌと不可避不純物からなる組成を有
するＡｌ合金で構成したことを特徴とする耐孔食性にす
ぐれたＡｌ熱交換器用高強度Ａｌ合金管材。
【請求項３】重量％で、Ｆｅ：０．２〜１．５％、Ｓｉ：０．０５〜１．２
％、を含有し、Ｍｇ：０．０５〜０．３％、を含有し、さらに、Ｚｎ：０．０５〜０．５％と、Ｇａ，Ｃｄ，Ｉｎ，Ｓｎ，Ｔｌ，およびＰｂのうちの１
種または２種以上：１〜１００ppm 、を含有し、残りがＡｌと不可避不純物からなる組成を有
するＡｌ合金で構成したことを特徴とする耐孔食性にす
ぐれたＡｌ熱交換器用高強度Ａｌ合金管材。
【請求項４】重量％で、Ｆｅ：０．２〜１．５％、Ｓｉ：０．０５〜１．２
％、を含有し、Ｚｒ：０．０５〜０．１５％、Ｍｎ：０．１〜１．２
％、Ｔｉ：０．０２〜０．２％、のうちの１種または２種以上と、Ｍｇ：０．０５〜０．３％、を含有し、さらに、Ｚｎ：０．０５〜０．５％と、Ｇａ，Ｃｄ，Ｉｎ，Ｓｎ，Ｔｌ，およびＰｂのうちの１
種または２種以上：１〜１００ppm 、を含有し、残りがＡｌと不可避不純物からなる組成（以
上重量％）を有するＡｌ合金で構成したことを特徴とす
る耐孔食性にすぐれたＡｌ熱交換器用高強度Ａｌ合金管
材。