JPH0525225A - 熱可塑性エラストマーの製造方法 - Google Patents

熱可塑性エラストマーの製造方法

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JPH0525225A
JPH0525225A JP20540691A JP20540691A JPH0525225A JP H0525225 A JPH0525225 A JP H0525225A JP 20540691 A JP20540691 A JP 20540691A JP 20540691 A JP20540691 A JP 20540691A JP H0525225 A JPH0525225 A JP H0525225A
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polymerization
parts
thermoplastic elastomer
weight
ester
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JP20540691A
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Sadao Kitagawa
川 貞 雄 北
Takeshi Kyo
健 姜
Mitsushige Baba
場 光 重 馬
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Mitsubishi Petrochemical Co Ltd
Original Assignee
Mitsubishi Petrochemical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 重合中の凝集と重合速度の低下を防止し、再
現性よく架橋アクリルゴム及びメタクリル酸エステルと
マレイミド類との共重合体とから成る熱可塑性エラスト
マーを製造する。 【構成】 多官能性モノマーの共存下に、乳化重合法に
よりアクリル酸エステルを重合させて架橋アクリルゴム
ラテックスを形成させる工程(第1工程)と、該第1工
程によって得られた架橋アクリルゴムラテックスの存在
下にメタクリル酸エステルとマレイミド類との共重合を
行なう工程(第2工程)の少なくとも2つの重合工程か
ら成り、該第1工程の重合が下記の(1)〜(3)の条
件下で行なわれることを特徴とする熱可塑性エラストマ
ーの製造方法。 (1) 重合に用いられる開始剤が、水溶性の酸化性物
質と水溶性の還元性物質との組合せから成るレドックス
系開始剤であること。 (2) 該酸化性物質を、多官能性モノマーとアクリル
酸エステルとの混合物とは別個に重合系に供給するこ
と。 (3) 該還元性物質を、該酸化性物質並びに多官能性
モノマーとアクリル酸エステルとの混合物とは別個に重
合系に追加供給すること。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、架橋アクリルゴム成分
およびメタクリル酸エステルとマレイミド類との共重合
体成分とから成る熱可塑性エラストマーの改良された製
造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】熱可塑性エラストマーは、使用温度範囲
内ではゴム弾性を示すが、いわゆる加硫ゴムとは異な
り、高温においては溶融成形が可能な高分子素材であ
る。それ故、熱可塑性エラストマーは、加硫ゴムと熱可
塑性樹脂の双方の性質を備えており、その特徴を生かし
て近年著しく需要が増大したため大量に生産されるよう
になった。このような熱可塑性エラストマーとしては、
各種のものが市販されており、一般に、その化学構造も
しくは構成成分の組成に基づいて、オレフィン系、スチ
レン系、塩化ビニル系、ウレタン系、エステル系、アミ
ド系などに分類されている。該熱可塑性エラストマーは
加硫ゴムに比較して加硫工程が無く、トータルコストが
安価なことから、市場では高温でしかも油脂類と接触す
るおそれのある箇所に使用されてきた加硫ゴム製品等に
代えて使用しようとする需要がある。しかしながら、従
来の熱可塑性エラストマーは耐熱性をある程度備えてい
るが、耐油性に乏しかったり(例えば、オレフィン
系)、耐油性に優れているが耐熱性に乏しかったり(例
えば、塩化ビニル系、ウレタン系)、あるいは、硬い領
域では耐熱性および耐油性に優れているが、加硫ゴム的
な柔らかさの領域では耐油性や耐熱性が著しく低下する
(例えばエステル系、アミド系)などの問題があり、上
記需要に応えることができなかった。
【0003】一方、アクリル酸のアルキルエステルと、
加硫工程で架橋点を提供する少量のモノマー(例えば、
クロロエチルビニルエーテル、エチリデンノルボルネン
など)との共重合体は、一般にアクリルゴムとして公知
であり、これらはロール等を用いて架橋剤等と混練し、
架橋させてから実用に供されている。また、マレイミド
類をメタクリル酸メチルと共重合させることにより得ら
れた共重合体は、メタクリル酸メチルの単独重合体より
も耐熱性に優れていることが特公昭43−9753号公
報により公知である。さらに、このメタクリル酸メチル
とマレイミド類との共重合体の耐衝撃性を改良するため
に、該共重合体にアクリルゴムを配合した組成物もまた
公知である(例えば、特公昭43−9753号および特
開昭62−132911号各公報参照)。しかしなが
ら、これら公知の方法においてはアクリルゴムの含有量
が少ないこともあって、軟らかい領域のものでは耐熱性
と耐油性を兼ね備えたものが得られていない。
【0004】一方、特開昭62−132911号公報に
は、アクリルゴムの含量が50重量%を超えると、メタ
クリル酸メチルとマレイミド類とを共重合させることが
困難となり、しかもそれによって生成した重合体組成物
は耐熱性の劣ったものであることが記載されている。さ
らに、特開昭62−209113号公報には、メタクリ
ル酸メチル、N‐置換マレイミド、アクリル酸アルキル
エステルおよび二官能性モノマーからなる混合物を重合
させることにより、ポリアクリル酸アルキルエステルに
基づくガラス転移温度と、メタクリル酸メチルとN‐置
換マレイミドとの共重合体に基づくガラス転移温度とを
備えたインターポリマーが生成することが開示されてい
る。しかし、このインターポリマーのポリアクリル酸エ
ステル成分に相当する重合体部分は、GPCにより分子
量が測定でき、その値が15〜50万でなければならな
いと述べられていることから、このポリアクリル酸エス
テル成分は溶媒に可溶であって、架橋されていない重合
体であることが明白になっている。さらに、本発明者ら
の追試(後記比較例4参照)によれば、アクリル酸エス
テルが50%を超えた領域のものでは、該公報の記載に
従って一段階で共重合を実施したところ、図2に示すと
おり、その粘弾性試験法によるガラス転移温度がメタク
リル酸メチルとN‐置換マレイミドとの共重合体のガラ
ス転移温度(Tg)とポリアクリル酸エステルのTgの
中間に唯一つしか観測されず、熱可塑性エラストマーと
しての物性を示さないものしか得られなかった。従っ
て、前記従来技術においては、架橋アクリルゴム成分及
びメタクリル酸エステルとマレイミド類との共重合体成
分とからなる耐熱性および耐油性を兼ね備えた熱可塑性
エラストマーを何ら認識していないし、また、それを示
唆するものでもなかった。
【0005】一方、本発明者らは、先に、架橋アクリル
ゴム成分及びメタクリル酸エステルとマレイミド類との
共重合体成分とからなる熱可塑性エラストマー(特願平
2−42774号明細書)、並びに、架橋アクリルゴム
粒子製造工程と該粒子の存在下にメタクリル酸エステル
とマレイミド類との共重合体を製造することを骨子とす
る該熱可塑性エラストマーの製造法(特願平2−427
74号、同2−42775号、同2−102138号各
明細書)の発明について提案して来た。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
提案の発明においては、目的とする耐熱性と耐油性を兼
ね備えた熱可塑性エラストマーを製造することができる
ものの、重合中にポリマーが凝集することがあるなどの
ために、重合中の攪拌が著しく困難になったり、或い
は、重合が完結する前に重合速度が著しく低下すること
があったりして重合の再現性が良くないので、上記提案
された発明方法の改良が必要であった。かゝる状況か
ら、比較的硬い領域は勿論のこと、軟らかい加硫ゴムの
領域においても耐熱性と耐油性とを兼ね備えた架橋アク
リルゴム成分及びメタクリル酸エステルとマレイミド類
との共重合体成分とから成る熱可塑性エラストマーを製
造する際に、重合中の凝集と重合速度の低下を防止し、
再現性よく製造することが、本発明の重要な課題であっ
た。
【0007】
【課題を解決するための手段】
〔発明の概要〕本発明者らは上記課題に鑑みて、架橋ア
クリルゴム成分及びメタクリル酸エステルとマレイミド
類との共重合体成分とから成る熱可塑性エラストマーを
再現性よく製造する方法について鋭意検討した結果、意
外にも以下に詳述する特定の重合態様および重合条件を
採用すれば、ポリマーが凝集せず、しかも、重合中に重
合速度の低下が防止でき、前記課題である熱可塑性エラ
ストマーを再現性よく製造することができるとの知見を
得て本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の熱
可塑性エラストマーの製造方法は、ガラス転移温度が0
℃以下の架橋アクリルゴム55〜97重量部、及びガラ
ス転移温度が110℃以上であるメタクリル酸エステル
とマレイミド類との共重合体45〜3重量部とから成る
熱可塑性エラストマーを製造する方法において、分子中
にエチレン性不飽和結合を2個以上有する多官能性モノ
マーの共存下に、水を媒質とする乳化重合法によりアク
リル酸エステルを重合させて架橋アクリルゴムラテック
スを形成させる工程(第1工程)と、該第1工程によっ
て得られた架橋アクリルゴムラテックスの存在下にメタ
クリル酸エステルとマレイミド類との共重合を行なう工
程(第2工程)の少なくとも2つの重合工程から成り、
該第1工程の重合が下記の(1)〜(3)の条件下で行
なわれることを特徴とするものである。 (1) 重合に用いられる開始剤が、水溶性の酸化性物
質と水溶性の還元性物質との組合せから成るレドックス
系開始剤であること。 (2) 該酸化性物質を、多官能性モノマーとアクリル
酸エステルとの混合物とは別個に重合系に供給するこ
と。 (3) 該還元性物質を、該酸化性物質並びに多官能性
モノマーとアクリル酸エステルとの混合物とは別個に重
合系に追加供給すること。
【0008】〔発明の具体的説明〕 〔I〕原材料 (1)アクリル酸エステル 本発明の熱可塑性エラストマーの製造方法において、架
橋アクリルゴムラテックスの製造工程(第1工程)に用
いられるアクリル酸エステルは、アクリル酸と炭素数が
1〜15、好ましくは2〜10、特に好ましくは2〜8
のアルコール成分とのエステルである。このようなアク
リル酸エステルの好ましい具体例としては、アクリル酸
エチル、アクリル酸n‐プロピル、アクリル酸i‐プロ
ピル、アクリル酸n‐ブチル、アクリル酸i‐ブチル、
アクリル酸n‐アミル、アクリル酸n‐ヘキシル、アク
リル酸2‐エチルヘキシル、アクリル酸n‐オクチル、
アクリル酸n‐ドデシル、アクリル酸2‐メトキシエチ
ル、アクリル酸2‐エトキシエチル、アクリル酸2‐メ
トキシプロピル、アクリル酸3‐メトキシプロピル、ア
クリル酸2‐ヒドロキシエチル、アクリル酸2‐ヒドロ
キシプロピル、アクリル酸2‐クロロエチル、アクリル
酸2‐シアノエチル、アクリル酸グリシジル等を挙げる
ことができる。これらアクリル酸エステルの中で特に好
ましいものは、アクリル酸エチル、アクリル酸n‐プロ
ピル、アクリル酸n‐ブチル、アクリル酸n‐アミル、
アクリル酸2‐メトキシエチル、アクリル酸2‐エトキ
シエチル、アクリル酸2‐シアノエチルである。これら
は単独でも2種以上併用してもよい。また、これらアク
リル酸エステルと共重合可能な単量体、例えば、2‐ク
ロロエチルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテ
ル、エチリデンノルボルネン、アクリル酸、メタクリル
酸、マレイン酸、グリシジルメタクリレート等を本発明
の効果を著しく損なわない範囲、好適には10重量%以
下の量で併用してもよい。
【0009】(2)多官能性モノマー 前記アクリル酸エステルを重合する際に共存させて使用
される多官能性モノマーは、分子中にアクリル酸エステ
ルと共重合し得るエチレン性不飽和結合を2個以上有す
る化合物である。このような多官能性モノマーの具体例
としては、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジオ
ール類のジアクリル酸或いはジメタクリル酸エステル
(該ジオールの例としては、エチレングリコール、ジエ
チレングリコール、テトラエチレングリコール、1,4
‐ブタンジオール、1,6‐ヘキサンジオール、プロピ
レングリコール、1,4‐シクロヘキサンジオール、
1,4‐ジメチロールシクロヘキサンなどを挙げること
ができる。)、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリ
ル、ジカルボン酸のジアリルエステル(該ジカルボン酸
の例としては、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、アジ
ピン酸、コハク酸などを挙げることかできる。)等の二
官能性モノマー、或いは、トリビニルトルエン、トリオ
ールのトリアクリル酸或いはトリメタクリル酸エステル
(該トリオールの例としては、グリセリン、トリメチロ
ールプロパンなどを挙げることができる。)、ペンタエ
リスリトールトリアクリレート、トリアリルシアヌレー
ト、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリ
テートなどのトリカルボン酸のトリアリルエステル等の
三官能性モノマー、或いはテトラメチロールメタンなど
テトラオールのテトラアクリル酸又はテトラメタクリル
酸エステル、ピロメリット酸テトラアリル等のテトラカ
ルボン酸のテトラアリルエステル等の四官能性モノマ
ー、或いは、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレー
ト等の六官能性モノマー等を挙げることができる。これ
ら多官能性モノマーの中では三官能性モノマーおよび四
官能性モノマーが好ましく、特に三官能性モノマーが好
ましい。これらの多官能性モノマーは単独でも2種以上
併用してもよい。
【0010】(3)メタクリル酸エステル 本発明の熱可塑性エラストマーの製造方法において、メ
タクリル酸エステルとマレイミド類との共重合体の製造
工程(第2工程)に用いられるメタクリル酸エステル
は、メタクリル酸と炭素数が1〜15、好ましくは1〜
10、のアルコール成分とのエステルから選択される。
このようなメタクリル酸エステルの好ましい具体例とし
ては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタ
クリル酸イソボルニル、メタクリル酸シクロヘキシル、
メタクリル酸フェニチル、メタクリル酸ボルニル、メタ
クリル酸アダマンチル、メタクリル酸メンチルなどを挙
げることができる。これらの中ではメタクリル酸メチ
ル、メタクリル酸イソボルニルが好ましく、特にメタク
リル酸メチルが好ましい。これらは単独でも2種以上併
用してもよい。
【0011】(4)マレイミド類 前記メタアクリル酸エステルとの共重合に用いられるマ
レイミド類は、マレイミドおよびそのN‐置換体であ
る。その具体例としては、マレイミド、N‐メチルマレ
イミド、N‐フェニルマレイミド、N‐(2‐メチルフ
ェニル)マレイミド、N‐(2‐クロロフェニル)マレ
イミド、N‐(2,6‐ジメチルフェニル)マレイミ
ド、N‐(2,6‐ジエチルフェニル)マレイミド、N
‐(4‐ヒドロキシフェニル)マレイミド、N‐(4‐
カルボキシフェニル)マレイミド、N‐シクロヘキシル
マレイミド等を挙げることができる。これらマレイミド
類の中ではN‐フェニルマレイミドおよびN‐シクロヘ
キシルマレイミドが好ましく、特にN‐シクロヘキシル
マレイミドが好ましい。これらは単独でも2種以上併用
してもよい。
【0012】(5)任意単量体 メタクリル酸エステルとマレイミド類の他に、これらと
共重合可能な他の単量体、例えば前記アクリル酸エステ
ル、スチレン、メタクリル酸、アクリロニトリル等を本
発明の効果が著しく損なわれない範囲、好適には20重
量%以内の量で併用してもよい。
【0013】(6)レドックス系開始剤 本発明の第1工程で使用するレドックス系開始剤として
は、水溶性の酸化性物質と水溶性の還元性物質との組合
せから選ばれる。上記水溶性の酸化性物質としては、例
えば、過酸化水素、過硫酸塩(ナトリウム塩、カリウム
塩、アンモニウム塩など)などの無機過酸化物、t‐ブ
チルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、
ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキシドなどのヒド
ロパーオキシド、4価のセリウム塩などの酸化性金属塩
などを挙げることができる。これらの中では、過硫酸塩
およびヒドロパーオキシドが好んで用いられ、中でも過
硫酸塩が特に好んで用いられる。前記水溶性の還元性物
質としては、例えば、2価の鉄塩、1価の銅塩、3価の
クロム塩等の還元性金属塩、アンモニア、低級アミン
(メチルアミン、エチルアミン等の炭素数1〜6程度の
アミン)、ヒドロキシルアミン等のアミノ化合物、チオ
硫酸ナトリウム、ナトリウムハイドロサルファイト、亜
硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、ナトリウムホ
ルムアルデヒドスルホキシレート等の還元性硫黄化合
物、低級アルコール(炭素数1〜6程度)、アスコルビ
ン酸又はその塩、および低級アルデヒド(炭素数1〜6
程度)などを挙げることができる。これらの中では、還
元性金属塩および還元性硫黄化合物が好んで用いられ、
中でも還元性硫黄化合物が特に好んで用いられる。これ
らの水溶性酸化性物質および還元性物質は、それぞれ一
種ずつの組合せでもよく、いずれか一方または両方とも
が二種以上の組合せでもよい。
【0014】(7)連鎖移動剤 本発明の第1工程及び第2工程では、生成熱可塑性エラ
ストマーの成形性、熱安定性等の向上の為に、連鎖移動
剤を用いることがある。このような連鎖移動剤として
は、例えばジフェニルメタン、トルフェニルメタン等の
ベンジル位水素含有化合物;α‐メチルスチレンダイマ
ー;クロロホルム、四塩化炭素、四臭化炭素等のハロゲ
ン化炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、シクロ
ヘキサノン等のケトン類;酢酸等のカルボン酸類;酢酸
エチル等のエステル類;ジメチルアセトアミド、ジメチ
ルホルムアミド等のカルボン酸アミド類;n‐ブチルメ
ルカプタン、n‐デシルメルカプタン、n‐ドデシルメ
ルカプタン、t‐ドデシルメルカプタン、ヒドロキシエ
チルメルカプタン、チオグリコール酸等のメルカプタン
類等を挙げることができる。これらの中で好ましいのは
第1工程ではメルカプタン類であり、第2工程ではα‐
メチルスチレンダイマーである。これらの連鎖移動剤は
2種以上併用することも勿論可能である。
【0015】〔II〕製造条件 (1)重合工程 前記原材料を用いて耐熱性及び耐油性に優れた熱可塑性
エラストマーを製造するためには、以下に示す少なくと
も二工程の重合の態様を実施することが重要である。先
ず、第1工程で多官能性モノマーおよび必要に応じて連
鎖移動剤の共存下に、水を媒質とする乳化重合にて0〜
100℃の温度でアクリル酸エステルを重合させて、前
記アクリル酸エステルと多官能性モノマーの共重合を行
なうと共に、その生成重合体同志の架橋反応を行なっ
て、架橋アクリルゴムラテックスを生成させる。次い
で、第2工程では、第1工程で得られたラテックスにメ
タクリル酸エステルとマレイミド類および必要に応じて
連鎖移動剤を添加して、メタクリル酸エステルとマレイ
ミド類の共重合を行なって熱可塑性エラストマーを製造
する。
【0016】(a)第1工程(架橋アクリルゴムラテッ
クスの製造) 前記アクリル酸エステルの重合は、多官能性モノマーの
存在下にアクリル酸エステルをレドックス開始剤の存在
下に水性媒体中で乳化重合法により重合させることによ
って行なわれる。この第1工程においては、アクリル酸
エステル、多官能性モノマーおよび必要に応じて連鎖移
動剤からなる混合物(以下アクリレート混合物と略記す
る。)を、上記酸化性物質とは別個に乳化剤、上記還元
性物質などを含んだ水溶液に供給すること、並びに、上
記還元性物質を独立した供給ラインから追加供給するこ
とが重要である。アクリル酸エステルおよび多官能性モ
ノマーが、上記水溶液と接触して乳化する前に、該酸化
性物質と接触すると、第1工程および/または第2工程
の重合中に凝集することがあり、このために攪拌不良や
除熱不良になって重合の再現性が著しく乏しくなり、ま
た、還元性物質を追加供給しないと、アクリル酸エステ
ルの重合が著しく遅くなったり、途中で重合が停止する
ことがあって、安定した品質の熱可塑性エラストマーを
工業的に再現性よく製造することは難しい。
【0017】方法(手順) この第1工程において、アクリレート混合物の具体的な
添加方法(手順)の態様としては、 アクリレート混合物を還元性物質および乳化剤等を
含む水溶液に攪拌しながら添加してアクリレート混合物
の乳化液を調製した後、酸化性物質を好ましくは間歇的
あるいは連続的に添加する方法(以下に「アクリレート
乳化法」と略記する。)、 アクリレート混合物と酸化性物質をそれぞれ個別の
供給ラインから還元性物質および乳化剤等を含む水溶液
に好ましくは間歇的あるいは連続的に添加する方法(以
下に「個別フィード法」と略記する。)、 アクリレート混合物の乳化液と酸化性物質をそれぞ
れ個別の供給ラインから還元性物質等を含有する水溶液
に好ましくは間歇的あるいは連続的に添加する方法(以
下に「アクリレート乳化液添加法」と略記する。)、 これら〜の方法の組合せ等を挙げることができ
る。これらの方法の中ではアクリレート乳化法および個
別フィード法が好ましく、中でも個別フィード法が特に
好ましい。還元性物質の追加供給方法としては、 重合の開始と同時に独立した供給ラインから連続的
に供給する方法、 重合開始後、独立した供給ラインから間欠的に供給
する方法、 重合開始後、重合速度が低下してきたときに、連続
的に或いは一度に、若しくは2回以上に分割して、独立
した供給ラインから供給する方法、 等を挙げることができる。これらの中では還元性物質の
効率的使用という観点からの方法が好ましい。
【0018】量 比 前記多官能性モノマーの使用量は、アクリル酸エステル
100重量部に対して一般に0.01〜10重量部、好
ましくは0.1〜7重量部、特に好ましくは0.2〜5
重量部の範囲である。この使用量によって架橋アクリル
ゴムのゲル分率を調節したり、架橋アクリルゴムのゴム
弾性を調節したり、更には熱可塑性エラストマー自体の
成形性に変化を与えることができる。多官能性モノマー
の量が0.01重量部未満ではゲル分率を70%以上に
するのが困難であり、また10重量部を越えると生成重
合体のゴム弾性が乏しくなったり、熱可塑性エラストマ
ーの成形性が著しく低下するなどのため好ましくない。
連鎖移動剤を使用する場合には、アクリル酸エステル1
00重量部に対して通常0.001〜10重量部、好ま
しくは0.01〜5重量部である。0.001重量部未
満では連鎖移動剤を使用することによる成形性向上効果
が得られず、10重量部を越えると生成熱可塑性エラス
トマーのゴム弾性が乏しくなる為に好ましくない。水溶
性酸化性物質の使用量はアクリル酸エステル100重量
部に対して通常0.001〜5重量部、好ましくは0.
005〜1重量部である。また、水溶性の還元性物質の
使用量は上記水溶性の酸化性物質1当量に対して通常
0.5〜20当量、好ましくは1〜10当量である。重
合系に追加供給する還元性物質の量は酸化性物質1当量
に対して通常0.1〜20当量、好ましくは0.2〜1
0当量である。他の物質の使用量はアクリル酸エステル
100重量部に対して、水50〜500重量部、好まし
くは100〜300重量部、高級アルキル硫酸ナトリウ
ム、高級アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムなど公
知の乳化剤0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜1
0重量部、硫酸ナトリウムなどの助剤0〜5重量部など
である。
【0019】重合条件 重合温度は通常0〜100℃、好ましくは0〜70℃、
特に好ましくは0〜50℃である。重合時間は重合温度
が制御でき、モノマーの反応率が、合目的的である限り
特に制限は無く、通常1〜24時間、好ましくは2〜1
2時間程度である。この重合時間はアクリレート混合物
および/または酸化性物質の添加速度あるいは重合温度
によって調節することができる。
【0020】生成物 このような重合によって生成した架橋アクリルゴムは、
ガラス転移温度が0℃以下、好ましくは−5℃以下、特
に好ましくは−10℃以下のものである。こゝでガラス
転移温度とは、本発明においては粘弾性測定におけるta
n δピーク温度を意味する。また、このような架橋アク
リルゴムはゲル分率が70%以上、好ましくは80%以
上、特に好ましくは90%〜100%程度に架橋されて
いる。こゝで、ゲル分率とは本発明では沸騰メチルエチ
ルケトン不溶部の百分率を意味する。この第1工程で生
成する架橋アクリルゴムの量は、熱可塑性エラストマー
である最終重合体組成物を100重量部とした場合に、
55〜97重量部、好ましくは55〜95重量部、特に
好ましくは60〜90重量部に相当する量である。55
重量部未満では熱可塑性エラストマーとしての柔軟性が
乏しくなり、一方97重量部を越えると成形性が著しく
悪化するので好ましくない。このようにして生成した架
橋アクリルゴム成分はゴム的性質を備えていることか
ら、熱可塑性エラストマー全体からみるとソフトセグメ
ント部分を形成して、エラストマー的性質を付与させて
いる。また、上記還元性物質を、酸化性物質並びに多官
能性モノマーとアクリル酸エステルとの混合物とは別個
に重合系へ追加供給することによって、重合速度が途中
で低下したり、著しくは停止したりすることがあるのを
防止することができ、工業的に再現性よく熱可塑エラス
トマーを製造する事ができる。
【0021】(b)第2工程(メタクリル酸エステルと
マレイミド類との共重合) 前記第1工程において製造した架橋アクリルゴムラテッ
クスに、メタアクリル酸エステルとマレイミド類とを添
加し、ラジカル重合触媒の存在下に共重合させて、メタ
アクリル酸エステル・マレイミド類共重合体を生成させ
る。
【0022】量 比 前記のアクリル酸エステルの重合工程(第1工程)にお
いて、未反応モノマーが通常10重量%以下、好ましく
は5重量%以下になった時点で、メタクリル酸エステル
とマレイミド類および必要により前記連鎖移動剤をメタ
クリル酸エステルとマレイミド類の和100重量部に対
して0.001〜10重量部、好ましくは0.01〜5
重量部をそれぞれ加えて更に重合を続ける(第2工
程)。ここで、前記メタクリル酸エステルとマレイミド
類との量比は、生成する共重合体のガラス転移温度が1
10℃以上、好ましくは130℃以上、特に好ましくは
140℃以上となるように決められている。すなわち、
メタクリル酸エステルを一般に90〜5重量%、好まし
くは80〜20重量%であり、マレイミド類単位の含有
量が、一般に10〜95重量%、好ましくは20〜80
重量%の割合で使用する。該共重合体中のマレイミド類
単位の含有量が増すほどガラス転移温度が上昇する。従
ってマレイミド類が上記範囲未満では共重合体のガラス
転移温度および耐熱性の向上効果が少なく、一方、上記
範囲を越えると成形性が著しく悪化してくるので好まし
くない。この第2工程で生成する該共重合体の量は第1
工程で生成した架橋アクリルゴムの重量との和が100
重量部に相当する量である。この第2工程では、必要に
応じて水、乳化剤、ラジカル開始剤等を追加してもよ
い。またメタクリル酸エステル、マレイミド類、乳化
剤、ラジカル開始剤、連鎖移動剤ならびに水等は一括チ
ャージしてもよいし、分割あるいは連続してチャージし
てもよい。好ましい方法は、メタクリル酸エステルとマ
レイミド類および連鎖移動剤からなる混合物と、ラジカ
ル開始剤を個別に分割あるいは連続してチャージする方
法である。
【0023】重合条件 この第2工程の重合温度は通常30〜120℃、好まし
くは60〜100℃である。重合時間は通常1〜24時
間、好ましくは3〜10時間程度である。
【0024】生成物 ここで生成する「メタクリル酸エステル・マレイミド類
共重合体」というのは、メタクリ酸エステルとマレイミ
ド類との共重合体の他に、この重合方法で生成する架橋
アクリルゴムへグラフト重合したグラフト共重合体をも
包含するものである。このグラフト共重合体は好適には
熱可塑性エラストマー全体中の20重量%以下である。
なお、このようなグラフト共重合体を含むものの方が良
好な物性値を示す。このような生成物の回収方法として
は、この種重合法で通常使用される公知の方法を採用す
ることができる。例えば、第2工程の重合が終了した
後、この反応混合物を攪拌下、食塩、塩化カルシウム、
塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウ
ムなどの析出剤水溶液と混合して生成重合体組成物を主
として含有する組成物を凝集させる。これを濾過、洗浄
後、乾燥し目的の熱可塑性エラストマーを得る。このよ
うにして得られたメタクリル酸エステル・マレイミド類
共重合体成分は熱可塑性エラストマー全体からみるとハ
ードセグメント部分を形成して、成形性を付与するとと
もに、耐熱性および耐油性を向上させることができる。
【0025】〔III 〕生成熱可塑性エラストマー 本発明によって製造した熱可塑性エラストマーは、耐熱
性と耐油性が優れているので、高温でしかも油脂類と接
触するおそれのある所に使用されて来た加硫ゴム製品あ
るいは他の材料の代替品として、比較的硬い領域は勿論
のこと、柔かい加硫ゴムの領域においても使用すること
ができる。具体的には、押出成形品、ブロー成形品、射
出成形品などの各種成形品の形態であり、例えば、ラッ
クアンドピニオンブーツなどのブーツ類、シール材、ホ
ース・チューブ類など自動車の耐熱・耐油性機能部品、
各種耐熱・耐油性ケーブル被覆材、光ケーブル被覆材等
を挙げることができる。
【0026】付加的成分 前記の如くして製造された本発明の熱可塑性エラストマ
ーを実用に供するに際しては、本発明の効果を著しく損
わない範囲、例えば50重量%未満、好ましくは30重
量%以下の範囲内で、以下に示すような付加的成分を加
えることができる。このような付加的成分としては、例
えば、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニ
レンエーテル樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリカー
ボネート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、アクリ
ル樹脂、ABS樹脂、スチレン・マレイイミド樹脂等の
極性の大きい樹脂、無機フィラー、具体的にはシリカ、
アルミナ、チタニア、酸化亜鉛、酸化マグネシウムなど
の金属酸化物、炭酸カルシウム、カオリン、マイカ、タ
ルク、石綿、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム等の珪
酸塩、チタン酸カリウム、炭化ホウ素などの各種ウィス
カー、カーボンブラック等の各種顔料ないし着色剤、酸
化ないしは劣化防止剤等を挙げることができる。
【0027】
【実施例】以下に実施例および比較例によって本発明を
更に具体的に説明する。なお、これら実施例および比較
例中の「部」は重量部を意味する。また、ゲル分率およ
び物性の測定方法は次の通りである。ゲル分率 アクリルゴム約1グラム(精秤値をAグラムとする)に
メチルエチルケトン300mlを加え、メチルエチルケト
ンの沸点下で3時間加熱攪拌した後、遠心分離機を用い
て不溶部を分離、乾燥する。この不溶部の乾燥重量をB
グラムとすれば、ゲル分率は ゲル分率=(B/A)×100(%) として計算した。
【0028】物性測定用テストピースの成形 プレス成形機を用いて、200℃で成形した。硬 度 JIS−K6301−A法に従って測定した。圧縮永久歪 JIS−K6301に従い、100℃で22時間後の残
留歪を測定した。引張強度および伸び JIS−K6301に従って測定した。耐油性 JIS−K6301に従い、JIS−No. 3油に125
℃で72時間浸漬したときの体積膨潤率(ΔV)を測定
した。ガラス転移温度 粘弾性測定法により測定した。すなわち、レオメトリッ
クス社製メカニカルスペクトロメーターRMS605型
機を用い、周波数1Hz(2πrad/sec )、昇温速度1℃
/Min にて測定したtan δのピーク温度をガラス転移温
度とした。
【0029】実施例1第1工程(個別フィード法による架橋アクリルゴムラテ
ックスの製造) 窒素置換した反応器に、イオン交換水140部、還元性
物質としてのナトリウムハイドロサルファイト(Na2
2 4 )を0.02部、乳化剤としてのドデシルベン
ゼンスルホン酸ナトリウムを1.4部およびナフタレン
スルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物を0.7部、乳
化安定剤として硫酸ナトリウムを0.21部、重合促進
剤としてエチレンジアミンテトラ酢酸四ナトリウム塩を
0.014部、エチレンジアミンテトラ酢酸ナトリウム
第二鉄塩を0.00035部を加えた。更にこの系に、
アクリル酸エチル(EA)70部、トリアリルイソシア
ヌレート(TAIC)0.7部およびt‐ドデシルメル
カプタン(t‐DM)0.035部とからなる混合液
(アクリレート混合物)の十分の一の量を攪拌下に3℃
の温度で加えて乳化させた。次いで、この残りのアクリ
レート混合物と、酸化性物質として過硫酸カリウム(K
2 2 8 )0.03部とイオン交換水10部とからな
る水溶液とをそれぞれ個別の供給ラインから同時に上記
乳化液中に連続的に4時間かけて供給した。このときに
反応系内は攪拌下、冷却しながら温度を5℃に保った。
アクリレート混合物および過硫酸カリウム水溶液の供給
が終了した後も系内の温度を5℃に保ってさらに3時間
反応を続行した。この時のモノマーの反応率は81%で
あり、反応速度はかなり低下していて反応率を90%以
上にするには著しく長時間を要すると判断した。そこで
この時点でナトリウムハイドロサルファイト0.01部
を追加して温度を5℃に保って反応を更に2時間続行し
た。その後30℃に昇温させてから更に2時間反応させ
て架橋アクリルゴムのラテックスを得た。得られた反応
混合物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、モ
ノマーの反応率は99%であった。また、生成物のゲル
分率は94%であった。このラテックス中には、凝集物
が殆んど無く、ラテックス性状は良好であり、次の第2
工程の重合においても支障は全くなかった。
【0030】第2工程(メタクリル酸エステル・マレイ
ミド類共重合体の製造) 第1工程の反応で生成したラテックスに、イオン交換水
60部およびラウリル硫酸ナトリウム0.3部をそれぞ
れ追加した。次にこの系を70℃に昇温し、攪拌しなが
らメタクリル酸メチル(MMA)21部、N‐シクロヘ
キシルマレイミド(CMI)9部および連鎖移動剤とし
てα‐メチルスチレンダイマー(α‐MSD)0.6部
からなる混合液と、1%過硫酸カリウム水溶液12部と
をそれぞれの供給ラインによって同時に2時間かけて供
給して、架橋アクリルゴムラテックスの存在下にMMA
とCMIとの共重合を行った。前記原料および過硫酸カ
リウムの供給終了後、さらに6時間反応を続行した。こ
の時も重合系の反応温度を70℃に保った。第2工程の
モノマーの反応率は97%であった。得られた反応混合
液を20℃に冷却し、攪拌されている1.5%塩化カル
シウム水溶液に滴下して反応生成物を塩析した。凝集し
た生成物を濾過、水洗し、さらにメタノールで洗浄後、
75℃で真空乾燥した。得られた生成物を粘弾性測定機
によって弾性率(G′)ならびにtan δの温度依存性を
測定したところ図1に示すデータが得られた。この乾燥
生成物に酸化防止剤としてのイルガノックス1010
(商品名)1部を加えて二軸混練機を用いて180℃、
50rpm で5分間混練した後、プレス成形して物性を測
定した。その結果を表1に示す。
【0031】比較例1 第1工程において、ナトリウムハイドロサルファイトを
追加供給しない以外は実施例1と同様に行なった。その
結果を表1に示す。
【0032】比較例2 第1工程において、最初に仕込むナトリウムハイドロサ
ルファイトの量を0.03部に変更し、ナトリウムハイ
ドロサルファイトの追加供給しなかった以外は実施例1
と同様に行なった。その結果を表1に示す。
【0033】比較例3 第1工程において、追加供給するナトリウムハイドロサ
ルファイトを過硫酸カリウム0.01部に変更した以外
は実施例1と同様に行なった。その結果を表1に示す。
【0034】実施例2(アクリレート乳化液添加法) 実施例1の第1工程を以下の方法に代えて行なう以外は
実施例1と同様に行なった。その結果を表1に示す。第1工程 窒素置換した反応器に、イオン交換水70部、ナトリウ
ムハイドロサルファイト0.02部、エチレンジアミン
テトラ酢酸四ナトリウム塩0.014部およびエチレン
ジアミンテトラ酢酸ナトリウム第二鉄塩0.00035
部を加えた。この水溶液に、イオン交換水70部、ドデ
シルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.4部、ナフタレ
ンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物0.7部、硫
酸ナトリウム0.21部、アクリル酸エチル70部、ト
リメチロールプロパントリアクリレート(TPA)0.
7部およびt‐ドデシルメルカプタン0.035部とか
らなる乳化液(アクリレート乳化液)と、過硫酸カリウ
ム0.03部とイオン交換水10部とからなる水溶液、
及びナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(ロ
ンガリット)0.01部とイオン交換水10部とからな
る水溶液とをそれぞれ個別の供給ラインから同時に連続
的に4時間かけて供給した。このときに反応系内は攪拌
下、冷却しながら温度を5℃に保った。供給終了後5℃
で5時間反応を続行した後、30℃に昇温させてから2
時間反応させて架橋アクリルゴムの良好なラテックスを
得た。
【0035】実施例3 実施例1の第1工程において、アクリル酸エチルをアク
リル酸ブチル15部とアクリル酸2−メトキシエチル5
5部からなる混合物に変え、還元性物質の追加供給方法
としてナトリウムハイドロサルファイト0.02部とイ
オン交換水10部とからなる水溶液をアクリレート混合
物供給開始後、1時間、3時間及び5時間後にそれぞれ
3分の1量づつに分けて間欠的に供給する方法に変え、
更に第2工程のモノマーをメタクリル酸メチル15部と
N−フェニルマレイミド15部に変える以外は実施例1
と同様に行なった。その結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】なお、表1中の略号を以下に示す。 EA: アクリル酸エチル MEA: アクリル酸2‐メトキシエチル BA: アクリル酸n‐ブチル TAIC: トリアリルイソシアヌレート TPA: トリメチロールプロパントリアクリレート t‐DM: t‐ドデシルメルカプタン CMI: N‐シクロヘキシルマレイミド PMI: N‐フェニルマレイミド α‐MSD: α‐メチルスチレンダイマー
【0038】比較例4 反応を2工程に分けないで、全てのモノマー類を混合
し、反応を1工程で行う特開昭62−209113号公
報に記載される実施例1の方法に準じて実施した。すな
わち、イオン交換水300部に、ドデシルベンゼンスル
ホン酸ナトリウム2.6部、2%過硫酸カリウム水溶液
80部及び0.1%硫酸水素ナトリウム水溶液2部を加
えた。更にEAが140部、テトラエチレングリコール
ジアクリレートが(TDA)0.21部、MMAが42
部、PMIが18部からなる混合液を加えて、63.5
℃で4時間乳化重合した。得られた生成物を粘弾性測定
機によって弾性率(G′)ならびにtan δの温度依存性
を測定したところ図2に示すデータが得られた。該図2
においては−100℃〜200℃の領域でtan δのピー
ク(ガラス転移温度)は35℃に唯一つしか観測されな
く、これに対応して常温〜100℃の弾性率(G′)の
変化が著しい。従って、この生成物はこれらの粘弾性的
性質から熱可塑性エラストマーでない。
【0039】
【発明の効果】本発明の熱可塑性エラストマーの製造方
法は、重合中のポリマーの凝集を極めて少くすることが
でき、かつ、重合速度の低下を防止することができ、そ
の結果、架橋アクリルゴム成分及びメタクリル酸エステ
ルとマレイミド類との共重合体成分とから成る耐熱性と
耐油性の優れた熱可塑性エラストマーを従来の方法に比
較して著しく再現性よく製造することができ、工業的に
極めて有用な方法である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1によって得られた熱可塑性エ
ラストマーの粘弾性測定機によって画かれた弾性率
(G′)およびtan δの温度依存性を表わす図である。
【図2】比較例4によって得られた生成物の粘弾性測定
機によって画かれた弾性率(G′)およびtan δの温度
依存性を表わす図である。

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 【請求項1】ガラス転移温度が0℃以下の架橋アクリル
    ゴム55〜97重量部、及びガラス転移温度が110℃
    以上であるメタクリル酸エステルとマレイミド類との共
    重合体45〜3重量部とから成る熱可塑性エラストマー
    を製造する方法において、分子中にエチレン性不飽和結
    合を2個以上有する多官能性モノマーの共存下に、水を
    媒質とする乳化重合法によりアクリル酸エステルを重合
    させて架橋アクリルゴムラテックスを形成させる工程
    (第1工程)と、該第1工程によって得られた架橋アク
    リルゴムラテックスの存在下にメタクリル酸エステルと
    マレイミド類との共重合を行なう工程(第2工程)の少
    なくとも2つの重合工程から成り、該第1工程の重合が
    下記の(1)〜(3)の条件下で行なわれることを特徴
    とする熱可塑性エラストマーの製造方法。 (1) 重合に用いられる開始剤が、水溶性の酸化性物
    質と水溶性の還元性物質との組合せから成るレドックス
    系開始剤であること。 (2) 該酸化性物質を、多官能性モノマーとアクリル
    酸エステルとの混合物とは別個に重合系に供給するこ
    と。 (3) 該還元性物質を、該酸化性物質並びに多官能性
    モノマーとアクリル酸エステルとの混合物とは別個に重
    合系に追加供給すること。
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