JPH06345931A - 熱可塑性エラストマーの製造法 - Google Patents

熱可塑性エラストマーの製造法

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JPH06345931A
JPH06345931A JP13753593A JP13753593A JPH06345931A JP H06345931 A JPH06345931 A JP H06345931A JP 13753593 A JP13753593 A JP 13753593A JP 13753593 A JP13753593 A JP 13753593A JP H06345931 A JPH06345931 A JP H06345931A
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thermoplastic elastomer
acrylic rubber
acrylate
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JP13753593A
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Takeshi Kyo
健 姜
Mitsushige Baba
場 光 重 馬
Sadao Kitagawa
川 貞 雄 北
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 耐熱性と耐油性を兼ね備え、かつ圧縮永久歪
と流動性についても改良した熱可塑性エラストマーの製
造法の提供。 【構成】 ガラス転移温度が0℃以下の架橋アクリルゴ
ム55〜97重量部、およびガラス転移温度が 110℃以上で
あるメタクリル酸エステルとマレイミド類との共重合体
45〜 3重量部、とからなる熱可塑性エラストマー(両成
分の合計量を 100重量部とする)を製造する方法におい
て、(1)分子中にエチレン性不飽和結合を2個以上有
する多官能性モノマーの共存下に、水を媒質とする乳化
重合法によりアクリル酸エステルを重合させて架橋アク
リルゴムラテックスを形成させる工程(第1工程)、
と、(2)第1工程によってえられた架橋アクリルゴム
ラテックスの存在下にメタクリル酸エステルとマレイミ
ド類との共重合を行う工程(第2工程)、の少なくとも
2つの重合工程からなり、(3)第1工程において、可
塑剤の存在下で架橋アクリルゴムラテックスを製造する
ことを特徴とする、熱可塑性エラストマーの製造法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、架橋アクリルゴム成分
およびメタクリル酸エステルとマレイミド類との共重合
体樹脂成分からなる、耐熱性と耐油性に優れ、かつ圧縮
永久歪と流動性にも優れた、新規な熱可塑性エラストマ
ーの製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】熱可塑性エラストマーは、使用温度範囲
内ではゴム弾性を示すが、いわゆる加硫ゴムとは異っ
て、高温においては溶融成形が可能な高分子素材であ
る。すなわち、熱可塑性エラストマーは、加硫ゴムと熱
可塑性樹脂の双方の性質を備えており、その特徴を生か
して近年著しく需要が増大したため大量に生産されるよ
うになった。
【0003】このような熱可塑性エラストマーは、各種
のものが市販されており、一般にその化学構造もしくは
構成成分に基づいて、オレフィン系、スチレン系、塩化
ビニル系、ウレタン系、エステル系およびアミド系など
に分類されている。
【0004】このような熱可塑性エラストマーは加硫ゴ
ムに比較してトータルコストが安価なことから、高温で
しかも油脂類と接触する恐れのあるところに従来使用さ
れてきた加硫ゴム製品等に代えて使用したいという要請
がある。
【0005】しかしながら、従来の熱可塑性エラストマ
ーは耐熱性はある程度備えているが、耐油性に乏しかっ
たり(例えばオレフィン系)、耐油性に優れているが耐
熱性に乏しかったり(例えば、塩化ビニル系、ウレタン
系)、あるいは、硬い性質を示す組成の領域のものは耐
油性および耐熱性に優れているが、加硫ゴム的な柔らか
さを示す組成の領域のものは耐油性や耐熱性が著しく低
下してしまう(例えばエステル系やアミド系)などの問
題があって、上記要請に応えることができなかった。
【0006】一方、アクリル酸のアルキルエステルと、
加硫工程で架橋点を提供する少量のモノマー(例えばク
ロロエチルビニルエーテル、エチリデンノルボネンな
ど)との共重合体はアクリルゴムとして公知であり、こ
れらはロール等を用いて架橋剤と混練し、架橋させて実
用に供されている。
【0007】また、マレイミド類をメタクリル酸メチル
と共重合させることにより得られた共重合体は、メタク
リル酸メチルの単独重合体よりも耐熱性に優れているこ
とも特公昭43- 9753号公報により公知である。
【0008】さらに、メタクリル酸メチルとマレイミド
類との共重合体の耐衝撃性を改良するために、該共重合
体にアクリルゴムを配合した組成物もまた公知である
(例えば特公昭43- 9753号および特開昭62- 132911号各
公報)。
【0009】しかしながら、本発明者らの知る限りで
は、これら公知の方法においてはアクリルゴムの含有量
が少ないこともあって、柔らかい性質を示す組成の領域
のものでは耐熱性と耐油性を兼ね備えたものが得られて
いない。
【0010】また、特開昭62- 132911号公報には、アク
リルゴムの含有量が50% を超えると、メタクリル酸メチ
ルとマレイミド類とを共重合させることが困難となり、
しかもそれによって生成した重合体組成物は耐熱性の劣
ったものであることが記載されている。
【0011】さらに、特開昭62- 209113号公報には、メ
タクリル酸メチル、N-置換マレイミド、アクリル酸アル
キルエステルおよび二官能性モノマーからなる混合物を
重合させることにより、ポリアクリル酸アルキルエステ
ルに基づくガラス転移温度と、メタクリル酸メチルとN-
置換マレイミドとの共重合体に基づくガラス転移温度と
を備えたインターポリマーが生成することが開示されて
いる。このインターポリマーのポリアクリル酸エステル
成分に相当する重合体部分は、ゲル浸透クロマトグラフ
ィー(GPC)により分子量が測定でき、その値が15〜
50万でなければならないと述べられていることから、こ
のポリアクリル酸エステル成分は溶媒に可溶であって、
架橋されていない重合体であることが明白である。
【0012】従って、前記従来技術においては、架橋ア
クリルゴム成分およびメタクリル酸エステルとマレイミ
ド類との共重合体成分からなる耐熱性および耐油性を兼
ね備えた熱可塑性エラストマーを何ら認識していない
し、また、それを示唆するものでもなかった。
【0013】一方、本発明者らは、架橋アクリルゴム成
分およびメタクリル酸エステルとマレイミド類との共重
合体成分とからなる熱可塑性エラストマー(特開平3-24
4609号公報)、並びに架橋アクリルゴム粒子製造工程と
該粒子の存在下にメタクリル酸エステルとマレイミド類
との共重合体を製造することを骨子とする該熱可塑性エ
ラストマーの製造法(特開平3-244609号、同3-244610号
および同4-1217号各公報)について提案してきた。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
の提案においては、目的とする耐熱性と耐油性を兼ね備
えた熱可塑性エラストマーを製造することはできるもの
の、圧縮永久歪と流動性についてはまだ改良の余地があ
った。
【0015】このような状況から、油脂類と接触するお
それがある所に使用されてきた加硫ゴム製品の代替え品
として、耐熱性と耐油性を保ちながら、圧縮永久歪と流
動性の良好な新しい熱可塑性エラストマーの製造法が提
供されることが望まれていた。
【0016】
【課題を解決するための手段】
[発明の概要]本発明者らは、上記課題に鑑みてアクリ
ルゴムが有する高い耐熱老化温度と良好な耐油性、およ
びメタクリル酸エステルとマレイミド類との共重合体が
有する高い耐熱老化温度および優れた耐油性を保持しつ
つ、圧縮永久歪と流動性を改善する方法につき、架橋ア
クリルゴムラテックスの製造時に可塑剤を共存させるこ
とによって前記本発明の課題を解決することができる熱
可塑性エラストマーが得られるとの知見を得て本発明を
完成するに至った。
【0017】<要旨>すなわち、本発明による熱可塑性
エラストマーの製造法は、ガラス転移温度が0℃以下の
架橋アクリルゴム55〜97重量部、およびガラス転移温度
が 110℃以上であるメタクリル酸エステルとマレイミド
類との共重合体45〜 3重量部、からなる熱可塑性エラス
トマー(ただし、両成分の合計量を 100重量部とする)
を製造する方法において、(1)分子中にエチレン性不
飽和結合を複数個有する多官能性モノマーの共存下に、
水を媒質とする乳化重合法によりアクリル酸エステルを
重合させて架橋アクリルゴムラテックスを形成させる工
程、と、(2)工程(1)によってえられた架橋アクリ
ルゴムラテックスの存在下にメタクリル酸エステルとマ
レイミド類との共重合を行う工程、の少なくとも二つの
重合工程からなり、(3)工程(1)での、架橋アクリ
ルゴムラテックスの製造を可塑剤の存在下で行うこと、
を特徴とするものである。
【0018】<効果>可塑剤は通常、樹脂、ゴム等の溶
融混練時に添加して、溶融流動性を改善して成形効率を
向上させる目的で使用されている。従って、架橋アクリ
ルゴムラテックス製造工程(第1工程)と、該ラテック
ス存在下にメタクリル酸エステルとマレイミド類とを共
重合させる工程(第2工程)とからなる熱可塑性エラス
トマーの製造において、第1工程で単量体を重合させる
際に可塑剤を共存させることにより、最終生成物である
熱可塑性エラストマーの流動性が改善されることは予測
されるとしても、圧縮永久歪まで改善されることなど思
いもよらず、従って本発明によって優れた耐熱性と耐油
性に加え、圧縮永久歪と流動性をも兼ね備えた熱可塑性
エラストマーが得られたことは、まさに思いがけないこ
とと言わざるを得ない。
【0019】[発明の具体的説明] [I]原材料 (1)アクリル酸エステル 本発明の熱可塑性エラストマーの製造法において、ガラ
ス転移温度が0℃以下の架橋アクリルゴムラテックスの
製造工程(第1工程)に用いられるアクリル酸エステル
は、具体的にはアクリル酸と炭素数が 1〜16、好ましく
は 2〜10、特に好ましくは 2〜 8、のアルコール成分と
のエステルである。本発明の第1工程でいう、この「ア
ルコール」は、アクリル酸と結合してエステル結合を形
成するヒドロキシル基の他に、さらにヒドロキシル基、
エーテル基、低級アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原
子、その他の置換基を有するものを包含するものとす
る。
【0020】このようなアクリル酸エステルの好ましい
具体例としては、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロ
ピル、アクリル酸i-プロピル、アクリル酸n-ブチル、ア
クリル酸i-ブチル、アクリル酸n-アミル、アクリル酸n-
ヘキシル、アクリル酸2 ーエチルヘキシル、アクリル酸
n-オクチル、アクリル酸n-ドデシル、アクリル酸2 ーメ
トキシエチル、アクリル酸2 ーエトキシエチル、アクリ
ル酸2 ーメトキシプロピル、アクリル酸3 ーメトキシプ
ロピル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-
ヒドロキシプロピル、アクリル酸2-クロロエチル、アク
リル酸2-シアノエチルおよびアクリル酸グリシジル、な
どを挙げることができる。これらアクリル酸エステルの
中で特に好ましいものは、アクリル酸エチル、アクリル
酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸n-アミ
ル、アクリル酸2 ーメトキシエチル、アクリル酸2 ーエ
トキシエチル、およびアクリル酸2-シアノエチル、であ
る。これらは単独で用いても、2種以上併用してもよ
い。
【0021】本発明の第1工程でいうこの「アクリル酸
エステル」は、所定の架橋アクリルゴムを与える限り、
それと共重合可能な共単量体を併用する場合を包含する
ものとする。
【0022】従って、また、これらのアクリル酸エステ
ルと共重合可能な単量体、例えば、2-クロロエチルビニ
ルエーテル、アリルグリシジルエーテル、エチリデンノ
ルボルネン、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、
グリシジルメタクリレートなどを本発明の効果を著しく
損なわない範囲、好ましくは10重量%以下の量、で用い
てもよい。
【0023】(2)多官能性モノマー 上記アクリル酸エステルを重合する際に共存させて使用
する多官能性モノマーは、分子中にアクリル酸エステル
と共重合し得るエチレン性不飽和結合を複数個有する化
合物である。
【0024】このような多官能性モノマーの具体例とし
ては、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジオール
類のジアクリル酸あるいはジメタクリル酸エステル(該
ジオールの例としては、エチレングリコール、ジエチレ
ングリコール、テトラエチレングリコール、1,4-ブタン
ジオール、1,6-ヘキサンジオール、プロピレングリコー
ル、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-ジメチロールシ
クロヘキサンなどを挙げることができる。)、アクリル
酸アリル、メタクリル酸アリル、ジカルボン酸のジアリ
ルエステル(該ジカルボン酸の例としては、マレイン
酸、フマル酸、フタル酸、アジピン酸、コハク酸、など
を挙げることができる。)などの二官能性モノマー、あ
るいは、トリビニルトルエン、トリオールのトリアクリ
ル酸あるいはトリメタクリル酸エステル(該トリオール
の例としては、グリセリン、トリメチロールプロパンな
どを挙げることができる。)、ペンタエリスリトールト
リアクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリル
イソシアヌレート、トリアリルトリメリテートなどのト
リカルボン酸のトリアリルエステルなどの三官能性モノ
マー、あるいは、テトラメチロールメタンなどのテトラ
オールのテトラアクリル酸あるいはテトラメタクリル酸
エステル、ピロメリット酸テトラアリルなどのテトラカ
ルボン酸のテトラアリルエステルなどの四官能性モノマ
ー、あるいは、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレ
ートなどの六官能性モノマーなどを挙げることができ
る。これら多官能性モノマーのなかでは二官能性モノマ
ーおよび三官能性モノマーが好ましい。これらの多官能
性モノマーは、単独で用いても、2種以上併用してもよ
い。
【0025】(3)メタクリル酸エステル 本発明の熱可塑性エラストマーの製造法において、メタ
クリル酸エステルとマレイミド類との共重合体の製造工
程(第2工程)に用いられるメタクリル酸エステルは、
メタクリル酸と炭素数が 1〜16、好ましくは 1〜10、の
アルコール成分とのエステルから選択したものが好まし
い。
【0026】このようなメタクリル酸エステルの好まし
い具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸
エチル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸シク
ロヘキシル、メタクリル酸フェネチル、メタクリル酸ボ
ルニル、メタクリル酸アダマンチルおよびメタクリル酸
メンチル、などを挙げることができる。
【0027】これらの中では、メタクリル酸メチルおよ
びメタクリル酸イソボルニルが好ましく、特にメタクリ
ル酸メチルが好ましい。これらは、単独で用いても、2
種以上併用してもよい。
【0028】(4)マレイミド類 前記メタクリル酸エステルとの共重合に用いられるマレ
イミド類は、マレイミドおよびそのN-置換体である。N-
置換基は、例えば、(イ)脂肪族炭化水素、好ましくは
低級アルキル基、(ロ)芳香族炭化水素、好ましくはフ
ェニル基または低級アルキルおよび(または)ハロゲン
および(または)カルボキシル置換フェニル基、(ハ)
脂環族炭化水素、好ましくはシクロヘキシル基、(ニ)
その他、である。
【0029】このようなマレイミド類の具体例として
は、マレイミド、N-メチルマレイミド、N-フェニルマレ
イミド、N-(2-メチルフェニル)マレイミド、N-(2-ク
ロロフェニル)マレイミド、N-(2,6-ジメチルフェニ
ル)マレイミド、N-(2,6-ジエチルフェニル)マレイミ
ド、N-(4-ヒドロキシフェニル)マレイミド、N-(4-カ
ルボキシフェニル)マレイミド、N-シクロヘキシルマレ
イミドなどを挙げることができる。これらマレイミド類
の中ではN-フェニルマレイミドおよびN-シクロヘキシル
マレイミドが好ましく、特にN-シクロヘキシルマレイミ
ドが好ましい。これらは、単独で用いても、2種以上併
用してもよい。
【0030】(5)任意単量体 本発明の第2工程でいう「メタクリル酸エステル」およ
び「マレイミド類」、これらの特定の単量体を、これら
と共重合可能なほかの単量体、たとえば前記アクリル酸
エステル、スチレン、メタクリル酸、アクリロニトリル
などを本発明の効果が著しく損なわれない範囲、好まし
くは20重量%以下の量、で併用する場合を包含するもの
である。
【0031】(6)開始剤 本発明による熱可塑性エラストマーの製造に用いられる
開始剤は、第1工程および第2工程とも、通常のラジカ
ル重合に用いられる水溶性あるいは油溶性ラジカル開始
剤でよい。そのようなラジカル重合剤の具体例として
は、下記のものを挙げることができる。(イ)無機過酸
化物、たとえば過酸化水素、過硫酸ナトリウム、過硫酸
カリウムおよび過硫酸アンモニウムなど、(ロ)有機過
酸化物、たとえば過酸化ベンゾイル、t-ブチルヒドロペ
ルオキシドおよびクメンヒドロペルオキシドなど、
(ハ)アゾ化合物、たとえばアゾビスイソブチロニトリ
ルおよびジメチルアゾビスイソブチロニトリルなど、お
よび(ニ)前記の過酸化物、あるいはアゾ化合物並びに
第二鉄塩などの酸化性物質と、アンモニア、アミン類、
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、ナトリ
ウムハイドロサルファイト、亜硫酸水素ナトリウム、ア
スコルビン酸などの還元性物質とを組み合わせた、いわ
ゆるレドックス開始剤、などを挙げることができる。こ
れらのうち好ましい開始剤の例としては、過酸化ベンゾ
イル、過硫酸カリウム、過硫酸カリウムとナトリウムホ
ルムアルデヒドスルホキシレート、ナトリウムハイドロ
サルファイトあるいは亜硫酸水素ナトリウムとの組み合
わせからなるレドックス開始剤、を挙げることができ
る。
【0032】(7)連鎖移動剤 本発明の第1工程および第2工程では、生成熱可塑性エ
ラストマーの成形性、熱安定性などの向上の為に、連鎖
移動剤を用いることがある。このような連鎖移動剤とし
ては、(イ)ベンジル位水素含有化合物、たとえばジフ
ェニルメタンおよびトリフェニルメタンなど、(ロ)α
- メチルスチレンダイマー、(ハ)ハロゲン化炭化水
素、たとえばクロロホルム、四塩化炭素および四臭化炭
素など、(ニ)ケトン類、たとえばアセトン、メチルエ
チルケトンおよびシクロヘキサノン、(ホ)カルボン
酸、たとえば酢酸、(ヘ)エステル類、たとえば酢酸エ
チル、(ト)カルボン酸アミド、たとえばジメチルアセ
トアミドおよびジメチルホルムアミドなど、(チ)メル
カプタン類、たとえばn-ブチルメルカプタン、n-デシル
メルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメ
ルカプタン、ヒドロキシエチルメルカプタン、チオグリ
コール酸など、を挙げることができる。これらの中で好
ましいのはメルカプタン類およびα- メチルスチレンダ
イマーである。これらの連鎖移動剤は、2種以上併用す
ることも勿論可能である。
【0033】(8)可塑剤 本発明による熱可塑性エラストマーの製造において、本
発明に従って架橋アクリルゴムラテックスを形成させる
第1行程に用いる可塑剤は、高分子加工に用いる一般の
可塑剤でよい。
【0034】このような好ましい可塑剤の具体的な例と
しては、(イ)リン酸エステル、例えばリン酸トリブチ
ル、リン酸トリ-2- エチルヘキシル、リン酸トリフェニ
ルおよびリン酸トリクレジルなど、(ロ)フタル酸エス
テル、例えばフタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フ
タル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ-n-
オクチル、フタル酸ジ-n- エチルヘキシル、フタル酸ジ
イソノニル、フタル酸オクチルデシル、フタル酸ジイソ
デシル、フタル酸ブチルベンジルおよびフタル酸ブチル
ラウリルなど、(ハ)脂肪酸エステル、例えばオレイン
酸ブチル、グリセリンモノオレイン酸エステル、アジピ
ン酸ブチル、アジピン酸ジ-n- ヘキシル、アジピン酸ジ
オクチル、アジピン酸ジ-2- エチルヘキシル、アゼライ
ン酸ジ-2- エチルヘキシル、アゼライン酸ジオクチル、
セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジオクチル、セバシン
酸ジ-n- エチルヘキシル、アセチルリシノール酸メチ
ル、アセチルリシノール酸ブチルおよびアセチルクエン
酸トリブチルなど、(ニ)エポキシ含有エステル、例え
ばアルキルエポキシステアレート、エポキシ化大豆油お
よび4,5-エポキシテトラヒドロフタル酸ジイソデシルな
ど、(ホ)2価アルコールエステル、例えばジエチレン
グリコールベンゾエートおよびトリエチレングリコール
ジ-2- エチルブチラートなど、(ヘ)ポリオールエステ
ル、(ト)ポリエステル、である。
【0035】これらの可塑剤は、単独で用いても、2種
以上併用してもよい。
【0036】[II]熱可塑性エラストマーの製造法 前記原材料を用いて、耐熱性及び耐油性に優れ、かつ圧
縮永久歪と流動性が良好な熱可塑性エラストマーを本発
明に従い製造するためには、以下に示す少なくとも2工
程の重合を実施することが必要である。 (a)第1工程(アクリルゴムラテックスの形成)
【0037】工程概要 先ず、第1工程で多官能性モノマーおよびアクリル酸エ
ステルを、水を媒質とする乳化重合法にて、例えば 0〜
100℃の温度で重合させて、架橋アクリルゴムラテック
スを生成させる。本発明では、この工程を前記可塑剤の
存在下に実施する。
【0038】可塑剤の使用方法としては、例えば(1)
多官能性モノマーとアクリル酸エステルとの混合物(以
下「アクリレート混合物」と呼ぶ)に可塑剤を溶解ない
し分散させた後、重合系に供給する方法、(2)アクリ
レート混合物を反応系に供給する前に可塑剤を先に導入
して乳化させる方法、(3)上記アクリレート混合物と
同時に可塑剤を別個ラインにより反応系に供給して重合
させる方法、(4)上記アクリレート混合物を反応系に
供給終了後、可塑剤を反応系に供給してさらに重合させ
る方法、などを挙げることができる。これらの中では、
(1)または(2)の方法が(圧縮永久歪と流動性の改
良効果がより大きく)好ましい。
【0039】量比 第1工程で用いる前記多官能性モノマーの使用量は、ア
クリル酸エステル 100重量部に対して一般に0.01〜20重
量部、好ましくは 0.1〜10重量部、特に好ましくは 0.2
〜 5重量部、の範囲である。この使用量によって架橋ア
クリルゴムのゲル分率を調節したり、架橋アクリルゴム
のゴム弾性を調節したり、さらには熱可塑性エラストマ
ー自体の成形性に変化を与えることができる。多官能性
モノマーの量が0.01重量部未満ではゲル分率を70%以上
にするのが困難であり、また20重量部を越えると生成重
合体のゴム弾性が乏しくなったり、熱可塑性エラストマ
ーの成形性が著しく低下する、などの問題が生じるので
好ましくない。
【0040】前記可塑剤の使用量は、アクリル酸エステ
ル 100重量部に対して一般に 1〜 100重量部、好ましく
は 1〜50重量部、特に好ましくは 3〜30重量部、の範囲
である。可塑剤の使用量が 1重量部未満であれば、可塑
剤の添加効果がまったく現れず、また 100重量部を越え
ると、熱可塑性エラストマーの引張強度が著しく低下す
る、などの問題が生じるため好ましくない。
【0041】開始剤の使用量は、アクリル酸エステル 1
00重量部に対して一般に 0.001〜 5重量部、好ましくは
0.005〜 2重量部、である。
【0042】連鎖移動剤を使用する場合には、アクリル
酸エステル 100重量部に対して通常0.001〜10重量部、
好ましくは0.01〜 5重量部、である。 0.001重量部未満
では連鎖移動剤を使用することによる成形性向上効果が
得られず、10重量部を越えると生成熱可塑性エラストマ
ーのゴム弾性が乏しくなるため、好ましくない。
【0043】他の物質の使用量はアクリル酸エステル 1
00重量部に対して、水50〜 500重量部、ラテックスの安
定性より、好ましくは 100〜 300重量部、高級アルキル
硫酸ナトリウム、高級アルキルベンゼンスルホン酸ナト
リウムなど公知の乳化剤 0.1〜20重量部、ラテックスの
安定性より好ましくは 0.5〜10重量部、硫酸ナトリウム
などの助剤 0〜 5重量部、などである。
【0044】重合条件 重合温度は通常 0〜 100℃、好ましくは、水の沸点以下
でポリマーの付着の少ない 5〜95℃、特に好ましくは10
〜90℃、である。
【0045】重合時間は重合温度で制御でき、モノマー
の反応率が合目的的であるかぎり特に制限は無く、通常
1〜24時間、モノマーの反応率より好ましくは 2〜12時
間程度、である。この重合時間はアクリレート混合物の
添加速度および(または)開始剤の追加回数あるいは重
合温度によって調節することができる。
【0046】生成物 このような重合によって生成した架橋アクリルゴムは、
ガラス転移温度が 0℃以下、好ましくは-5℃以下、特に
好ましくは -10℃以下、のものである。ここでガラス転
移温度とは、本発明における粘弾性測定における tanδ
ピーク温度を意味する。
【0047】また、このような架橋アクリルゴムは、ゲ
ル分率が70%以上、好ましくは80%以上、特に好ましく
は90〜 100%程度、架橋されている。ここで、ゲル分率
とは沸騰メチルエチルケトン不溶部の百分率を意味す
る。
【0048】この第1工程で生成する架橋アクリルゴム
の量は、架橋アクリルゴムと第2工程で生成するメタク
リル酸エステルとマレイミド類との共重合体の重量の和
を 100重量部とした場合に、55〜97重量部、好ましくは
55〜95重量部、特に好ましくは60〜90重量部、に相当す
る量である。55重量部未満では熱可塑性エラストマーと
しての柔軟性が乏しくなり、一方97重量部を越えると成
形性が著しく悪化するので好ましくない。
【0049】このように生成した架橋アクリルゴム成分
はゴム的性質を備えていることから、熱可塑性エラスト
マー全体からみるとソフトセグメント部分を形成して、
エラストマー的性質を付与している。 (b)第2工程(メタクリル酸エステルとマレイミド類
との共重合)
【0050】工程概要 次いで第2工程では、第1工程で得られた架橋アクリル
ゴムラテックスにメタクリル酸エステルとマレイミド類
および必要に応じて他の共重合し得る単量体および(ま
たは)連鎖移動剤を添加して、メタクリル酸エステルと
マレイミド類の共重合体を生成させて、本発明の熱可塑
性エラストマーを製造する。第2工程の開始は、前記の
アクリル酸エステルの重合工程(第1工程)において、
未反応モノマーが通常10重量%以下、好ましくは 5重量
%以下、特に好ましくは 1重量%以下、になった時点が
適当である。未反応モノマーが10重量%以上では、第2
工程で得られるメタクリル酸エステルとマレイミド類と
の共重合体のガラス転移温度が 110℃以上とならないな
どの問題が生じるため好ましくない。
【0051】量比 第2工程では、メタクリル酸エステルとマレイミド類お
よび必要に応じて前記連鎖移動剤を、メタクリル酸エス
テルとマレイミド類の合計量 100重量部およびそれに対
して 0.001〜10重量部、好ましくは0.01〜 5重量部、を
それぞれ加えてさらに重合を続ける。0.001 重量部以下
では成形性の改良効果がなく、また10重量部以上では強
度が著しく低下するので好ましくない。
【0052】ここで、前記メタクリル酸エステルとマレ
イミド類との量比は、生成する共重合体のガラス転移温
度が 110℃以上、好ましくは 130℃以上、特に好ましく
は 140℃以上、となるように決める。
【0053】すなわち、そのための量比は、一般に、メ
タクリル酸エステルが90〜 5重量%、好ましくは80〜20
重量%、であり、マレイミド類単位が10〜95重量%、好
ましくは20〜80重量%、である。
【0054】メタクリル酸エステル−マレイミド類共重
合体中のマレイミド類単位の含有量を増すほど、ガラス
転移温度が上昇する。従って、マレイミド類が上記範囲
未満では共重合体のガラス転移温度および耐熱性の向上
効果がなく、一方、上記範囲を越えると成形性が著しく
悪化するので好ましくない。
【0055】この第2工程では第1工程の継続として、
すなわち単に第2工程用単量体などを添加することによ
って、実施することができるが、必要に応じて水、乳化
剤、ラジカル重合開始剤などを追加してもよい。また、
メタクリル酸エステル、マレイミド類、乳化剤、ラジカ
ル重合開始剤、連鎖移動剤ならびに水は一括チャージし
てもよいし、分割あるいは連続してチャージしてもよ
い。好ましい方法は、メタクリル酸エステルとマレイミ
ド類および連鎖移動剤からなる混合物と、ラジカル重合
開始剤とを、個別に分割あるいは連続してチャージする
方法である。
【0056】重合条件 第2工程の重合温度は通常30〜 120℃、好ましくは60〜
100℃、である。30℃以下では重合時間が長くなり過
ぎ、 120℃以上では生成ポリマーの強度が小さくなり、
いずれも好ましくない。重合時間は、通常 1〜24時間、
モノマー反応率より好ましくは 3〜10時間、である。
【0057】生成物 ここで生成する「メタクリル酸エステル−マレイミド類
共重合体」というのは、メタクリル酸エステルとマレイ
ミド類(+必要に応じて共単量体)との共重合体の他
に、この重合系で生成する架橋アクリルゴムへこれらの
単量体がグラフト重合してなる、グラフト共重合体をも
包含するものである。このグラフト共重合体は、好適に
は熱可塑性エラストマー全体中の20重量%以下である。
なお、このようなグラフト共重合体をも含むものの方が
良好な物性値を示す。
【0058】最終生成物の回収方法としては、この種の
重合法で通常使用される公知の方法を採用することがで
きる。例えば、第2工程の重合が終了した後、この反応
混合物を撹拌下、食塩、塩化カルシウム、塩化マグネシ
ウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、などの析
出剤水溶液と混合して生成重合体組成物を主として含有
する組成物を凝集させる。これを濾過、洗浄後、乾燥し
て目的の熱可塑性エラストマーを得る。
【0059】このようにして得られたメタクリル酸エス
テル−マレイミド類共重合体成分は熱可塑性エラストマ
ー全体からみるとハードセグメント部分を形成して、成
形性を付与するとともに、耐熱性および耐油性を向上さ
せることができる。
【0060】(c)第3工程(必要に応じて行う工程) 第1工程の範疇にはいる架橋アクリルゴムラテックスを
形成させる工程および(または)第2の工程の範疇には
いるメタクリル酸エステル−マレイミド類共重合体形成
工程を第3工程(および必要に応じて第4工程など)と
して実施してもよい。
【0061】[III]生成熱可塑性エラストマーの用
途分野 本発明によって製造した熱可塑性エラストマーは、耐熱
性と耐油性に優れているので、高温でしかも油脂類と接
触するおそれのあるところに使用されてきた加硫ゴム製
品あるいは他の材料の代替え品として、比較的硬い性質
を示す組成の領域のものは勿論のこと、柔らかい性質を
示す組成の領域のものも使用することができる。具体的
には、押出成形品、ブロー成形品、射出成形品まどの各
種成形品の形態であり、例えば、ラックアンドピニオン
ブーツなどのブーツ類、シール材、ホース・チューブ類
などの自動車の耐熱・耐油性機能部品、各種耐熱・耐油
性ケーブル被覆材および光ケーブル被覆材などを挙げる
ことができる。
【0062】付加的成分 前記のようにして製造された本発明による熱可塑性エラ
ストマーは、それ自身が上記のように有用であって、そ
れ自身を上記の用途に使用することができるが、必要に
応じて、本発明の効果を著しく損なわない範囲、例えば
50重量%未満、好ましくは30重量%以下、の範囲内で、
以下に示すような付加的成分を加えることができる。
【0063】このような付加的成分の具体例としては、
(イ)極性の大きい樹脂、たとえばポリアミド樹脂、ポ
リエステル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリオ
キシメチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニ
レンスルフィド樹脂、アクリル樹脂、ABS樹脂、スチ
レン・マレイミド樹脂など、(ロ)無機フィラー、具体
的には、シリカ、アルミナ、チタニア、酸化亜鉛、酸化
マグネシウムなどの金属酸化物、カオリン、マイカ、タ
ルク、石綿、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムな
どのケイ酸塩、および炭酸カルシウムなど、(ハ)ウィ
スカー、たとえば、チタン酸カリウムおよび炭化ホウ素
など、(ニ)各種顔料ないし着色剤、たとえばカーボン
ブラックなど、(ホ)酸化ないしは劣化防止剤、などを
挙げることができる。
【0064】
【実施例】以下の実施例および比較例は本発明をさらに
具体的に説明するためのものである。
【0065】なお、これら実施例および比較例中の
「部」は重量部を意味する。また、ゲル分率および各物
性値の測定方法は次の通りである。
【0066】ゲル分率 第1工程で生成したラテックスを少量取り出し、塩析・
乾燥したもの約 1グラム(精秤値を Aグラムとする)に
メチルエチルケトン 300mlを加え、メチルエチルケトン
の沸点において 3時間加熱撹拌した後、遠心分離機を用
いて不溶部を分離、乾燥する。この不溶部の乾燥重量を
Bグラムとすれば、ゲル分率は ゲル分率(%)=[B{1+(P/100)}/A]×
100 として算出した。ただし、ここでPは第1工程で添加し
た可塑剤の単量体に対する重量パーセントである。
【0067】物性測定用テストピースの成形 神藤金属工業所製F−37プレス成形機を用いて、 200
℃、150kg/cm2 (G) でプレスシート(18cm×18cm× 2m
m)を成形し、JIS-K6301 に従って打ち抜き型で、ダン
ベルおよびリング状テストピースを作成した。
【0068】硬度 JIS-K6301-A 法に従って測定した。
【0069】圧縮永久歪 JIS-K6301 に従い、 100℃で22時間後の残留歪を測定し
た。
【0070】引張強度および伸び JIS-K6301 に従って測定した。
【0071】耐油性 JIS-K6301 に従い、JIS-No.3油に 125℃で72時間浸漬し
たときの体積膨潤率(ΔV)を測定した。
【0072】ガラス転移温度 粘弾性測定法により測定した。すなわち、レオメトリッ
クス社製メカニカルスペクトロメーターRMS605型機を用
い、周波数 1Hz(2πrad/sec)、昇温速度 1℃/minにて測
定した tanδのピーク温度をガラス転移温度とした。
【0073】流動性 JIS-K7210-A 法に従い、 230℃において荷重10kgで測定
した。
【0074】実施例1 (1)第1工程(架橋アクリルゴムラテックスの製造) イオン交換水 140部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナト
リウム 1.4部、ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマ
リン縮合体 0.7部、および硫酸ナトリウム0.21部を、温
度計と還流冷却器を備え、窒素置換した反応器に順次加
え、室温下で撹拌して十分に溶解させた。
【0075】この系にアクリル酸ブチル(BA)35部、アク
リル酸2-メトキシエチル(MEA) 35部、エチレングリコー
ルジメタクリレート(EGDM) 3.0部、アリルメタクリレー
ト(AMA)0.3部、およびポリオールエステル系可塑剤「ア
デカサイザーRS-700 」(旭電化社製商品名。以下「RS
-700 」と呼ぶ。)14部からなる混合液(以下、単に
「アクリレート混合物」と呼ぶ。)の1/10の量を室
温で撹拌しながら加えて乳化させた。
【0076】次いで、上記反応器にラジカル重合開始剤
の過硫酸カリウム(KPS) 0.14部を添加し、80℃まで加熱
して、重合を開始させた。
【0077】上記反応系に、残りのアクリレート混合物
を2時間かけて連続的に供給した。この時、反応系を撹
拌しながら80℃に保った。上記アクリレート混合物の供
給が終了してから1時間後に過酸化ベンゾイル(BPO) 0.
14部を反応系に導入して、反応系温度を80℃に保ちなが
ら反応を継続させた。
【0078】アクリレート混合物の供給が終了してから
3時間後にもう一度過酸化ベンゾイル(BPO) 0.14部を反
応系に導入し、反応系の温度を80℃に保ちながらさらに
5時間反応を継続させた。
【0079】その後、反応系内の温度を室温まで冷却し
た。凝集物がほとんど無い、安定な架橋アクリルゴムの
ラテックスを得た。
【0080】得られた上記架橋アクリルゴムのラテック
スをガスクロマトグラフィーで分析したところ、アクリ
ル酸エステルの転化率はほぼ 100%であった。また、生
成物のゲル分率は99.8%であった。
【0081】(2)第2工程(メタクリル酸エステル−
マレイミド類の共重合体の製造) 第1工程の反応で製造した架橋アクリルゴムラテックス
を80℃に昇温し、撹拌しながらメタクリル酸メチル(MM
A) 21部、N-シクロヘキシルマレイミド(CHMI) 9部、お
よび過硫酸カリウム 0.1部を一括添加し、架橋アクリル
ゴムラテックスの存在下に MMAとCHMIとの共重合を80℃
で 8時間行った。
【0082】上記第2工程のモノマーの転化率は、約 1
00%であった。得られた反応物を20℃に冷却し、撹拌さ
れている 1.5%塩化カルシウム水溶液中に滴下して反応
生成物を析出させた。析出した生成物を濾過、水洗し、
さらにメタノールで洗浄後、75℃で真空乾燥した。
【0083】この乾燥した生成物に酸化防止剤としての
チバガイギー社製「イルガノックス1010」(商品名)
0.1部を加え、二軸混練機を用いて 180℃/50 rpmで 5
分間混練した後、プレス成形して、物性を測定した。得
られた結果は表1に示す通りであった。
【0084】実施例2 (1)第1工程 イオン交換水 140部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナト
リウム 1.4部、ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマ
リン縮合体 0.7部、および硫酸ナトリウム0.21部を、温
度計と還流冷却器を備え、窒素置換した反応器に順次加
え、室温下で撹拌して十分に溶解させた。
【0085】この系にRS-700 8.2部を加え、室温で撹拌
して乳化させたのち、アクリル酸ブチル(BA)41.2部、ア
クリル酸2-メトキシエチル(MEA) 41.2部、エチレングリ
コールジメタクリレート(EGDM) 3.3部、アリルメタクリ
レート(AMA) 0.35部からなるアクリレート混合物の1/
10の量を室温で撹拌しながら加えて乳化させた。
【0086】次いで、上記反応器にラジカル重合開始剤
の過硫酸カリウム(KPS) 0.14部を添加し、80℃まで加熱
して、重合を開始させた。
【0087】上記反応系に、残りのアクリレート混合物
を2時間かけて連続的に供給した。この時、反応系を撹
拌しながら80℃に保った。上記アクリレート混合物の供
給が終了してから1時間後に過酸化ベンゾイル(BPO) 0.
14部を反応系に導入して、反応系温度を80℃に保ちなが
ら反応を継続させた。
【0088】アクリレート混合物の供給が終了してから
3時間後にもう一度過酸化ベンゾイル(BPO) 0.14部を反
応系に導入し、反応系の温度を80℃に保ちながらさらに
5時間反応を継続させた。得られた上記架橋アクリルゴ
ムのラテックスをガスクロマトグラフィーで分析したと
ころ、アクリル酸エステルの転化率はほぼ 100%であっ
た。また、生成物のゲル分率は99.5%であった。
【0089】(2)第2工程 メタクリル酸メチル(MMA) およびN-シクロヘキシルマレ
イミド(CHMI)の量をそれぞれ12.3部および 5.3部に変え
て、実施例1の第2工程を繰り返した。得られた結果は
表1に示す通りであった。
【0090】実施例3 第1工程の架橋アクリルゴムラテックスの製造におい
て、重合の前に添加するRS-700 を 4部に変えるほかは
実施例2と同じ操作を繰り返した。得られた結果は表1
に示す通りであった。
【0091】実施例4 第1工程の架橋アクリルゴムラテックスの製造におい
て、アクリレート混合物の組成は実施例2と同じである
が、可塑剤 RS-700 の添加方法を考えて、すなわちRS-7
00をアクリレート混合物と同時に別個ラインにより反応
系に 2時間かけて連続供給したほかは、実施例2と同じ
操作を繰り返した。得られた結果を表1に示す。
【0092】実施例5 第1工程の架橋アクリルゴムラテックスゴムの製造にお
いて、アクリレート混合物の組成は実施例2と同じであ
るが、可塑剤RS-700の添加方法を変えて、すなわちアク
リレート混合物を 2時間かけて反応系に連続供給し終わ
ったあと、可塑剤 RS-700 を反応系に一括供給して反応
を続けたほかは、実施例2と同じ操作を繰り返した。得
られた結果は表1に示す通りであった。
【0093】実施例6 第1工程のアクリレート混合物としてアクリル酸エチル
(EA)60部、エチレングリコールジメタクリレート(EGDM)
2.5部、アリルメタクリレート(AMA) 0.25部および可塑
剤 RS-700 30部からなる混合物を用い、第2工程のメタ
クリル酸メチル(MMA) を25部およびN-シクロヘキシルマ
レイミドの代わりにN-フェニルマレイミド(PMI) を15部
用いるほかは、実施例1と同じ操作を繰り返した。得ら
れた結果は表1に示す通りであった。
【0094】比較例1 第1工程の架橋アクリルゴムラテックスの製造におい
て、可塑剤を添加しないほかは実施例1と同じ操作を繰
り返した。得られた結果は表1に示す通りであった。
【0095】比較例2 比較例1で得た熱可塑性エラストマー 100部に対して、
可塑剤 RS-700 13.5部(この量は、実施例1で用いた量
に相当する)を混練時に添加した。得られた結果は表1
に示す通りであった。
【0096】比較例3 可塑剤RS-700を、第1工程で添加せずに、第2工程でモ
ノマー(MMA) に溶解して添加するほかは実施例1と同じ
操作を繰り返した。得られた結果は表1に示す通りであ
った。
【0097】実施例7 可塑剤としてポリエーテル系の可塑剤「チオコールTP75
9 」(モートン社製商品名)を 7部用いるほかは実施例
1と同じ操作を繰り返した。得られた結果は表1に示す
通りであった。
【0098】実施例8 可塑剤としてアジピン酸類のポリエステル系可塑剤「ポ
リサイザーW320」(大日本インキ社製商品名)を14部用
いるほかは実施例1と同じ操作を繰り返した。得られた
結果を表1に示す。
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】
【0101】表1中の略号は以下に示す通りである。 BA :アクリル酸n-ブチル EA :アクリル酸エチル MEA :アクリル酸2-メトキシエチル EGDM :エチレングリコールジメタクリレート AMA :メタクリル酸アリル RS-700:商品名「アデカサイザーRS-700」(旭電化社製
ポリオールエステル系可塑剤) TP759 :商品名「チオコール TP759」(モートン社製ポ
リエーテル系可塑剤) W320 :商品名「ポリサイザーW320」(大日本インキ社
製アジピン酸類のポリエステル系可塑剤) MMA :メタクリル酸メチル CHMI :N-シクロヘキシルマレイミド PMI :N-フェニルマレイミド KPS :過硫酸カリウム BPO :過酸化ベンゾイル
【0102】実験結果のまとめ 重合時に可塑剤を使用しないと(比較例1)、圧縮永久
歪(小さい値ほど優れている)および流動性MFR (大き
いほど優れている)はどの実施例よりも劣っている。
【0103】可塑剤を重合時ではなく、混練時に添加す
ると(比較例2)、MFR はかなり改善されるが、圧縮永
久歪はほとんど改善されない(実施例1との比較)。
【0104】さらに、可塑剤を第1工程でなく第2工程
で添加しても(比較例3)、圧縮永久歪およびMFR の改
善効果は小さい(実施例1との比較)。このように、可
塑剤を第1工程で添加する方法によってのみ(本発
明)、圧縮永久歪と流動性が同時に改善される。
【0105】
【発明の効果】本発明の方法により耐熱性と耐油性を兼
ね備え、かつ圧縮永久歪と流動性についても改良した熱
可塑性エラストマーが得られることは[発明の概要]の
項に前記したところである。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ガラス転移温度が0℃以下の架橋アクリル
    ゴム55〜97重量部、およびガラス転移温度が 110℃以上
    であるメタクリル酸エステルとマレイミド類との共重合
    体45〜 3重量部(ただし、両成分の合計量を 100重量部
    とする)、からなる熱可塑性エラストマーを製造する方
    法において、(1)分子中にエチレン性不飽和結合を複
    数個有する多官能性モノマーの共存下に、水を媒質とす
    る乳化重合法によりアクリル酸エステルを重合させて架
    橋アクリルゴムラテックスを形成させる工程、と、
    (2)工程(1)によってえられた架橋アクリルゴムラ
    テックスの存在下にメタクリル酸エステルとマレイミド
    類との共重合を行う工程、の少なくとも二つの重合工程
    からなり、(3)工程(1)での、架橋アクリルゴムラ
    テックスの製造を可塑剤の存在下で行うこと、を特徴と
    する、熱可塑性エラストマーの製造法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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