JPH05214614A - アクリル系炭素繊維およびその製造方法 - Google Patents

アクリル系炭素繊維およびその製造方法

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JPH05214614A
JPH05214614A JP4019219A JP1921992A JPH05214614A JP H05214614 A JPH05214614 A JP H05214614A JP 4019219 A JP4019219 A JP 4019219A JP 1921992 A JP1921992 A JP 1921992A JP H05214614 A JPH05214614 A JP H05214614A
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JP
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fiber
carbon fiber
compressive strength
acrylic
acrylic carbon
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JP4019219A
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Makoto Kobayashi
真 木林
Shunsaku Noda
俊作 野田
Hideo Saruyama
秀夫 猿山
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Toray Industries Inc
Original Assignee
Toray Industries Inc
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Abstract

(57)【要約】 【構成】広角X線回折により求めた炭素網面の結晶サイ
ズLcが15〜75オングストロームであり、ループ法による
単繊維圧縮強度σcf (GPa)がσcf≧10.78-0.1176×Lcを
満たすアクリル系炭素繊維において、繊維中心部に対し
て結晶性が同等もしくは高い表層部を有することを特徴
とするアクリル系炭素繊維。引張強度2GPa以上のアクリ
ル系炭素繊維に照射エネルギー100keV〜10 MeV、照射量
300Mrad以上の放射線を照射することを特徴とする炭素
繊維の製造方法。 【効果】従来技術では得られなかった高圧縮強度を有す
る高性能アクリル系炭素繊維が効率よく得られ、結晶サ
イズLcが大きい領域(弾性率の高い黒鉛化糸の領域)に
おいても単繊維圧縮強度レベルが約7GPaと弾性率240GPa
前後の炭化糸並の圧縮強度を付与することが可能とな
り、弾性率および圧縮強度のいずれもが高い炭素繊維を
工業的に生産する方法を提供できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はアクリル系炭素繊維およ
びその製造方法に関するものである。さらに詳細には、
圧縮強度に優れたアクリル系炭素繊維およびその製造方
法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年炭素繊維の用途展開が拡大するとと
もに、炭素繊維に対する要求性能がますます高くなって
いる。従来は引張特性に対する向上要求が中心であり、
その要求に応えて炭素繊維の引張強度は近年大幅に向上
した。しかし、圧縮強度は殆ど向上せず、曲げ強度など
の実用特性が圧縮強度のために頭打ちになるという問題
が顕在化してきた。さらに、焼成温度の高い、すなわち
結晶サイズLcの大きい弾性率390GPa以上の黒鉛
化糸では、単繊維圧縮強度レベルが弾性率245GPa
前後の炭化糸の約7GPaレベルに対して、約3.5G
Paと半分程度まで低下してしまうために、航空機の一
次構造材など曲げ強度が要求される分野ではより大きな
問題となっている。
【0003】従来、引張特性の向上技術については数多
くの提案がなされているが、圧縮強度の向上技術につい
てはほとんど提案されていないのが現状である。わずか
に、製糸および焼成条件を特定化することによる圧縮強
度の高い黒鉛化糸(特開昭63−211326号公報)
や、炭素繊維へイオン注入することにより炭素繊維表層
を非晶化して圧縮強度を向上させるという技術(特開平
3−180514号公報)が提案されているにとどまっ
ている。
【0004】しかし、前者は向上幅が非常に小さく、後
者については向上幅は大きいものの、高真空を必要と
し、さらに処理の均一性から開繊して糸条厚みを非常に
薄くする必要があるため、工業的生産手段とはなり得な
い。また、イオン注入においては黒鉛結晶の非晶化は達
成するものの、同時に黒鉛結晶の過度の破壊、配向低下
による弾性率の低下をともなうおそれがある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、上記
従来の技術では達成し得なかった、圧縮強度の高い炭素
繊維およびそれを工業的に製造しうる方法を提供するこ
とにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
本発明のアクリル系炭素繊維は次の構成を有する。すな
わち、広角X線回折により求めた炭素網面の結晶サイズ
Lcが15〜75オングストロームであり、ループ法に
よる単繊維圧縮強度σcf(GPa)がσcf≧10.78
−0.1176×Lcを満たすアクリル系炭素繊維にお
いて、繊維中心部に対して結晶性が同等もしくは高い表
層部を有することを特徴とするアクリル系炭素繊維であ
る。
【0007】また、本発明のアクリル系炭素繊維の製造
方法は次の構成を有する。すなわち、引張強度2GPa
以上のアクリル系炭素繊維に照射エネルギー100 keV
〜10 MeV、照射量300Mrad以上の放射線を照射する
ことを特徴とする炭素繊維の製造方法である。
【0008】以下、本発明のアクリル系炭素繊維および
その製造方法について詳細に説明する。本発明のアクリ
ル系炭素繊維は、広角X線回折により求めた炭素網面の
結晶サイズLcが15〜75オングストロームとするも
のである。かかる炭素網面の結晶サイズLcが15オン
グストロームに満たない場合には、圧縮強度向上が望め
ない問題があり、一方、Lcが75オングストロームを
越えるアクリル系炭素繊維を得るのは一般に困難であ
る。
【0009】本発明のアクリル系炭素繊維は、ループ法
による単繊維圧縮強度σcf(GPa)がσcf≧10.7
8−0.1176×Lcを満たすものである。この関係
を満足しない場合には高弾性率と高圧縮強度とを兼備え
た炭素繊維が得られないという問題がある。
【0010】本発明のアクリル系炭素繊維は、繊維中心
部に対して結晶性が同等もしくは高い表層部を有するも
のである。一般に、アクリル系炭素繊維は繊維中心部に
対して結晶性が同等もしくは高い表層部を有しており、
この内部構造は後述する本発明の方法である放射線照射
処理後においても相対的にそのまま継承されているもの
である。一方、高圧縮強度を達成するアクリル系炭素繊
維として、繊維中心部に対して結晶性が低い表層部を有
する炭素繊維が前記した特開平3−180514号公報
に開示されている。しかし、かかる構造の繊維を得るた
めには、繊維束に対して均一に、しかも表層部のみ結晶
性を低下させる処理をする必要があり、現在のところイ
オン注入という工業化するには制約の大きい手段しか知
られれていないのは前記したとおりである。なお、この
ような構造を有するアクリル系炭素繊維を得るための方
法については後述する。
【0011】本発明の方法に供すべきアクリル系炭素繊
維の引張強度は2GPa以上、好ましくは3GPa以
上、より好ましくは4GPa以上とするものである。引
張強度が2GPa未満であると、破壊の開始点となる欠
陥が多すぎて本発明の方法によっても圧縮強度の向上が
望めない。
【0012】また、本発明の方法に供すべきアクリル系
炭素繊維は、黒鉛結晶の発達した、換言すれば高弾性率
糸において顕著な圧縮強度向上効果が得られるため、弾
性率は260GPa以上、さらには300GPa以上で
あることが好ましい。
【0013】さらに、本発明の方法に供すべきアクリル
系炭素繊維は上記と同様、黒鉛結晶の発達した炭素繊維
において顕著な圧縮強度向上効果が得られる観点から、
広角X線回折により求めた炭素網面の結晶サイズLc
(オングストローム)は15〜75オングストロームと
するのが好ましい。このような本発明の方法に供すべき
アクリル系炭素繊維の製造方法の例については後述す
る。
【0014】本発明においては、かかるアクリル系炭素
繊維へ放射線を照射するものである。かかる手段によら
なければ圧縮強度の高い炭素繊維を工業的に製造するこ
とは極めて困難である。放射線照射はアクリル系炭素繊
維の表面処理工程やサイジング工程などに先だっておこ
なってもよいし、また、その後におこなってもよい。さ
らに、熱処理中に放射線を照射することもできる。ただ
し、黒鉛結晶の成長を抑制する観点から、放射線照射後
においては500℃以上の温度で熱処理をしないことが
好ましい。
【0015】放射線の照射量としては、300Mrad
以上、好ましくは700Mrad以上、より好ましくは
1000Mrad以上、さらに好ましくは3000Mr
ad以上とするものである。300Mrad未満では非
晶化程度を高くすることができない。
【0016】放射線の照射エネルギーとしては、100
keV 〜10MeV 、好ましくは150keV 〜5MeV 、より
好ましくは200keV 〜1MeV とするものである。照射
エネルギーが100keV 未満であると透過力が小さいた
め処理の均一性が不足し、一方、照射エネルギーを10
MeV 以上とするのは一般に困難である。
【0017】また、放射線を照射する雰囲気については
特に限定されないが、照射にともなって過度の表面官能
基が生成することを防止する観点からは、酸化性雰囲気
より窒素、アルゴン等不活性雰囲気下での照射の方が好
ましい。
【0018】照射時における炭素繊維の形態としては、
単繊維状に開繊された状態でも束状に集束された状態で
もよいが、電子線、中性子線などは透過力が高いため、
束状に集束し、高密度で処理するのが経済性からみて好
ましい。
【0019】集束される場合の繊維束のフィラメント数
は、上記した観点から、500フィラメント以上である
ことが好ましく、1000フィラメント以上であること
がより好ましく、3000フィラメント以上であること
がさらに好ましい。高照射量が必要な場合には、例え
ば、ネルソンローラーなどの手段により滞留時間を増す
こともできる。また、ボビン等に巻き取られた形状でバ
ッチ式に処理してもよいし、また、焼成工程中において
緊張、もしくは無緊張の状態で連続的に処理してもよ
い。
【0020】このように放射線処理された炭素繊維は、
照射前に比較して単繊維圧縮強度、ねじり弾性率をそれ
ぞれ1.1倍以上に向上することができる。それにとも
なってコンポジット圧縮強度も照射前に比較して改善す
ることができる。
【0021】放射線の種類としては特に限定されない
が、黒鉛の結晶構造を過度に破壊せず、しかも透過力に
すぐれた質量の小さい粒子線、すなわち、中性子線、電
子線などが好ましく、その中でも電子線がより好まし
い。また、放射線を得る方法としては、原子炉、放射性
同位体、加速器等がある。
【0022】本発明において、単繊維中心部とは、単繊
維中心より0.3μm以内の領域であり、表層部とは繊
維表面から0.3μm以下の領域である。また、表層部
の結晶性が中心部に対して同等もしくは高いとは、単繊
維断面のレーザーラマンスペクトルの、表層部の強度比
1350/I1580が、中心部において求めた強度比I13 50
/I1580の値以下であることを意味する。
【0023】一般に炭素繊維の単繊維中心部あるいは単
繊維表層部のレーザーラマンスペクトルの強度比I1350
/I1580は、黒鉛結晶の非晶化が進行するにつれて大き
くなるため、本発明においては、この強度比が照射前に
比較して1.1倍以上となるような条件で放射線を照射
することが好ましく、より好ましくは1.3倍以上、さ
らに好ましくは1.6倍以上、特に好ましくは2.0倍
以上である。
【0024】本発明のアクリル系炭素繊維の製造方法に
供すべきアクリル系炭素繊維のプリカーサーを構成する
ポリアクリロニトリルとしては、アクリロニトリル85
%以上、アクリロニトリルと共重合可能な重合性不飽和
単量体を15%以下含む重合体であることが好ましい。
重合性不飽和単量体としては、アクリル酸、メタクリル
酸、イタコン酸およびそれらのアルカリ金属塩、アンモ
ニウム塩およびアルキルエステル類、アクリルアミド、
メタクリルアミドおよびそれらの誘導体、アリルスルホ
ン酸、メタリルスルホン酸およびそれらの塩類またはア
ルキルエステル類等をあげることができる。また、不飽
和カルボン酸等、耐炎化反応を促進する重合性不飽和単
量体を共重合することが好ましい。その共重合量は0.
1〜10%であることが好ましく、0.3〜5%である
ことがより好ましく、0.5〜3%であることがさらに
好ましい。不飽和カルボン酸の具体例としては、アクリ
ル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラ
コン酸、エタクリル酸、マレイン酸、メサコン酸等をあ
げることができる。重合方法としては、懸濁重合、溶液
重合、乳化重合など従来公知の方法を採用することがで
きる。
【0025】アクリル系炭素繊維のプリカーサーを構成
するポリアクリロニトリルの重合度としては、得られる
炭素繊維の物性を向上させる観点から、極限粘度[η]
で表現すれば、好ましくは1.0以上、より好ましくは
1.35以上、さらに好ましくは1.7以上である。な
お、[η]は5.0以下にするのが紡糸安定性の点から
一般的である。
【0026】溶液紡糸の場合の溶媒は、有機、無機の公
知の溶媒を使用することができる。重合体は公知の方法
によってプリカーサーとすることができる。紡糸は、直
接凝固浴中へ紡出する湿式紡糸法や、一旦空気中へ紡出
した後に浴中凝固させる乾湿式紡糸法、あるいは乾式紡
糸法、溶融紡糸によってもよい。溶媒、可塑剤を使用す
る紡糸方法による時には、紡出糸を直接浴中延伸しても
よいし、また、水洗して溶媒、可塑剤を除去した後に浴
中延伸してもよい。浴中延伸の条件は、通常、50〜9
8℃の延伸浴中で約2〜6倍に延伸される。浴中延伸後
の糸条はホットドラムなどで乾燥することによって乾燥
緻密化が達成される。乾燥温度、時間などは適宜選択す
ることができる。また、必要に応じて乾燥緻密化後の糸
条をより高温(たとえば加圧スチーム中)で延伸するこ
ともおこなわれ、これらによって、所定の繊度、配向度
を有するプリカーサーとすることができる。また、乾燥
緻密化に先立って、耐熱性付与を目的としてシリコン油
剤を付与することが好ましい。
【0027】圧縮強度の高い炭素繊維を得るためには、
緻密性の高いプリカーサーが有効である。緻密性として
は、ヨウ素吸着法による明度差ΔLの値が好ましくは4
5以下、より好ましくは30以下、さらに好ましくは1
5以下の緻密なプリカーサーがよい。ΔLが45以下の
緻密なプリカーサーを得るための手段としては、紡糸原
液の高濃度化、紡糸原液および凝固浴液の低温化および
凝固時の低張力化などにより凝固糸の膨潤度を低くおさ
え、かつ浴延伸時の延伸段数、延伸倍率および延伸温度
の最適化により浴延伸糸の膨潤度を低くおさえることが
有効である。
【0028】プリカーサーの単繊維繊度としては、圧縮
強度向上の観点から引き続く耐炎化工程おいて焼成ムラ
を起こさないよう細い方が好ましく、好ましくは2.0
d以下、より好ましくは1.5d以下、さらに好ましく
は1.0d以下である。
【0029】かかるプリカーサーを焼成することにより
高性能な炭素繊維とすることができる。耐炎化条件とし
ては、従来公知の方法を採用することができ、酸化性雰
囲気中200〜300℃の範囲で、緊張、あるいは延伸
条件下が好ましく使用され、密度が好ましくは1.25
g/cm3 以上、より好ましくは1.30g/cm3
達するまで加熱処理される。この密度は、1.60g/
cm3 以下にとどめるのが一般的であり、これ以上にす
ると、物性が低下することがあり好ましくない。一般に
雰囲気については、公知の空気、酸素、二酸化窒素、塩
化水素などの酸化性雰囲気を使用できるが、経済性の面
から空気が好ましい。
【0030】耐炎化を完了した糸条は、従来公知の方法
で不活性雰囲気中炭化処理をおこなう。炭化温度として
は、得られる炭素繊維の物性から1000℃以上が好ま
しく、さらに必要に応じて2000℃以上の温度で黒鉛
化することができる。また、350〜500℃および1
000〜1200℃における昇温速度は、好ましくは5
00℃/分以下であり、より好ましくは300℃/分以
下、さらに好ましくは150℃/分以下である。これに
より、ボイドなど内部欠陥の少ない緻密な炭素繊維を得
ることができる。
【0031】なお、この昇温速度が10℃/分以下では
生産性が低くなりすぎる。また、350〜500℃ある
いは2300℃以上において、好ましくは1%以上、よ
り好ましくは5%以上、さらに好ましくは10%以上の
延伸をおこなうことが緻密性向上の観点から好ましい。
なお、40%をこえる延伸は毛羽が発生しやすくなるた
め好ましくない。そして、必要に応じてさらに従来公知
の技術により表面処理、サイジング付与などをおこなう
ことができる。
【0032】本発明における黒鉛結晶サイズLc、単繊
維圧縮強度σcf、レーザーラマン分光法による炭素繊維
断面深さ方向の結晶性分布は、それぞれ以下の方法によ
り求めた値をいう。
【0033】<結晶サイズLc>繊維束を40mm超に切
断して、20mgを精秤採取し、試料繊維軸が正確に平行
になるようにそろえた後、試料調整用治具を用いて幅1
mmの厚さが均一な試料繊維束に整えた。薄いコロジオン
液を含浸して形態がくずれないように固定した後、広角
X線回折測定試料台に固定した。
【0034】X線源として、Niフィルターで単色化さ
れたCuのKα線を用い、2θ=26.0°付近に観察
される面指数(002)のピークを赤道方向にスキャン
して得られたピークからその半価幅を求め、λ/(β0
cos θ)により算出した値(オングストローム)を結晶
サイズLcとする。
【0035】ここで、β0 は(βe 2 −βl 2 1/2
よって求められる真の半価幅をいう。また、λはX線の
波長であって、本発明の場合は1.5418オングスト
ローム、θは回折角、βe は見かけの半価幅、βl は装
置定数であって、本発明において用いた装置[理学電機
(株)製4036A2型X線発生装置]の場合、1.05×1
-2rad である。
【0036】<単繊維圧縮強度σcf>10cmの単繊維
をスライドグラス上に置き、中央部にグリセリンを1〜
2滴たらして単繊維をひねりながらループを作り、その
上にカバーグラスを置く。これを顕微鏡下に置いて顕微
鏡に接続したビデオカメラでモニタ(以下、CRT)上
に映し、これを観察しながら常にループを視野に捉える
ようにする。そしてループの両端を指で押さえながら、
一定速度で引張り、歪をかける。破断するまでの挙動を
ビデオに録画し、再生画面を停止させながらループの短
径Dと長径φをCRT上で測定する。単繊維径dとDか
らε=1.07×d/Dにより図1のA点における歪ε
を計算し、εを横軸,長径と短径との比(φ/D)を縦
軸にしてグラフにプロットする(図2)。
【0037】φ/Dは、圧縮座屈しない領域では一定値
(約1.34)を示すが、圧縮座屈すると急に大きくな
るので、φ/Dが急に増大し始める歪を圧縮降伏歪εcf
として求める。これを10本の単繊維につき測定し、そ
の平均値を求め、得られた平均値に引張弾性率を乗じた
値を単繊維圧縮強度とした。
【0038】<レーザーラマン分光法による炭素繊維断
面深さ方向の結晶性分布>単繊維を無電解で銅メッキし
た後エポキシ樹脂に包埋し、繊維軸に対して傾斜角が2
〜8゜になるように単繊維の断面を研磨し、解析に供し
た。8゜をこえると半径方向の分解能が落ちるため、傾
斜角は8゜以下である必要がある。
【0039】評価機器として、仏Jobin−Yvon
社製Ramanor U−1000顕微ラマンシステム
を用いた。励起波長5145オングストロームのアルゴ
ンイオンレーザー(ビーム径:1μm)を用い、炭素繊
維表面から中心部へと約1μmおきにラマンスペクトル
を測定した。各ラマンスペクトルに対して、ガウス関数
形を用いたカーブフィッティングによりピーク分割をお
こない、1320〜1380cm-1(以下、1350c
-1近傍)と1580cm-1近傍に認められるピークの
強度比I1350/I1580の変化を深さ方向に求めた。な
お、ガウス関数でピーク分割できないスペクトルに対し
てはローレンツ関数形を用いてピーク分割した。
【0040】<レーザーラマン分光法による炭素繊維表
面の結晶性>炭素繊維の単繊維の表面をそのまま解析に
供し、その後は断面における結晶性と同様に評価した。
ここで結晶性とは、炭素繊維を構成する結晶の寸法およ
び炭素網面配列の秩序性によって定まる特性であり、結
晶の寸法がより大きくかつ炭素網面配列の秩序性がより
大きい場合に、結晶性がより高いと言われるものであ
る。
【0041】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに具体的に
説明する。なお、本発明における引張強度、弾性率は樹
脂含浸ストランド法により求めた値をいう。 <引張強度、弾性率>“ベークライト”ERL−422
1(登録商標、ユニオン・カーバイド(株)製)/三フ
ッ化ホウ素モノエチルアミン(BF3 ・MEA)/アセ
トン=100/3/4部を炭素繊維に含浸し、得られた
樹脂含浸ストランドを130℃で30分間加熱して硬化
させ、JIS R 7601に規定する樹脂含浸ストラ
ンド試験法に従って測定した。
【0042】なお、本実施例におけるΔLは以下の方法
により求めた値である。 <ヨウ素吸着法によるΔL>繊維長5〜7cmの乾燥試
料を約0.5g精秤し、200mlの共栓付三角フラス
コに採り、これにヨウ素溶液(I2 :51g、2、4−
ジクロロフェノール10g、酢酸90gおよびヨウ化カ
リウム100gを精秤し、1lのメスフラスコに移して
水で溶かして定容とする)100mlを加えて、60℃
で50分間振盪しながら吸着処理をおこなう。ヨウ素を
吸着した試料を流水中で30分間水洗した後、遠心脱水
(2000rpm×1分)してすばやく風乾する。この
試料を開繊した後、ハンター型色差計[カラーマシン
(株)製、CM−25型]で明度(L値)を測定する
(L1 )。一方、ヨウ素の吸着処理をおこなわない対応
の試料を開繊し、同様に前記ハンター型色差計で、明度
(L0 )を測定し、L0 −L1 により明度差ΔLを求め
た。
【0043】<ねじり弾性率>長さ10cmの単繊維の
一端を0.5gのガラス製おもりの中央に設けた細孔内
に挿入して瞬間接着剤で接着し、クリップで固定して吊
り下げる(図3)。おもりを約+10回転回して繊維に
ねじりを与え、解放してから反対回転に約−10回転回
って停止し、また回転してねじりがもとの+10回転に
戻って停止するまでの時間を1周期T(秒)として連続
5周期求めてその平均を求める。これを5本の単繊維に
ついて測定しその平均値をもとめ、Gf=125πlI
/(d42 )×10-5により、ねじり弾性率Gf(G
Pa)を求めた。ここで、lは繊維の長さ(mm)、I
はI=MD2 /8gで求められるねじりモーメント、d
は単繊維径(mm)、Mはおもりの質量(g)、Dはお
もりの直径(mm)、gは重力加速度(m/sec2
をいう。
【0044】<コンポジット0゜圧縮強度>炭素繊維を
一方向に引き揃え、東レ(株)製#3620樹脂で含浸
したプリプレグを積層し、ASTM−D695に規定す
る試験片および試験方法に従って測定した。
【0045】<繊維軸方向の配向度π002 >結晶サイズ
Lcの場合と同様に試料を調整し、同様の解析手法によ
り得られた(002)回折の最高強度を含む子午線方向
のプロフィールの広がりの半価幅(H゜)からπ002
[(180−H)/180]×100を用いて結晶配向
度π002 (%)を求めた。
【0046】(実施例1、比較例1)ジメチルスルホキ
シドを溶媒とする溶液重合法により、アクリロニトリル
98%とメタクリル酸2%とからなる重合体濃度20%
の紡糸原液を得た。これを3000ホールの口金を通じ
て一旦空気中に吐出して空間部分を走行させた後、ジメ
チルスルホキシド水溶液中で凝固させ、凝固糸条を水洗
後、4倍まで浴延伸し、工程油剤を付与した後、乾燥緻
密化した。さらに、加圧スチーム中で2.5倍まで延伸
して単糸繊度0.8d、総繊度2400Dのプリカーサ
ーを得た。該繊維束のΔLは28であった。
【0047】得られたプリカーサーを240〜280℃
の空気中で、延伸比1.05で加熱して密度1.37g
/cm3 の耐炎化糸を得た。ついで、窒素雰囲気中35
0〜500℃の温度領域での昇温速度を200℃/分と
し、8%の延伸をおこなった後、さらに2400℃まで
焼成した。
【0048】得られた炭素繊維Aから単繊維約100本
を分別して、10cm四方のアルミ枠に単繊維が平行に
並ぶように引き揃えて固定し、150keVの加速電圧
で電子線を照射して炭素繊維B〜Fを得た。
【0049】さらに、電子線照射前後の炭素繊維A〜F
につき、レーザーラマン分光法による結晶性、黒鉛結晶
サイズLc、単繊維圧縮強度およびねじり弾性率を解析
した結果を表1に示す。
【0050】
【表1】 (実施例2、比較例2)実施例1で用いた電子線照射前
の炭素繊維Aを集束した状態で緊張下、500keVの
加速電圧で電子線を3000Mrad照射して炭素繊維
Gを得た。
【0051】得られた電子線照射前後の炭素繊維A、G
についてX線解析による結晶サイズLc、配向度
π002 、引張強度、弾性率およびコンポジット0゜圧縮
強度を測定した結果を表2に示す。
【0052】
【表2】
【0053】
【発明の効果】以上述べたように、本発明の方法によれ
ば、従来技術では到達し得なかった高い圧縮強度を有す
る高性能アクリル系炭素繊維が効率よく得られ、結晶サ
イズLcが大きい領域、つまり弾性率の高い黒鉛化糸の
領域においても単繊維圧縮強度レベルが約7GPaと弾
性率240GPa前後の炭化糸並の圧縮強度を付与する
ことが可能となり、弾性率および圧縮強度のいずれもが
高い炭素繊維を工業的に生産する方法を提供できる。こ
のような圧縮強度の高い炭素繊維により、航空機の一次
構造材料などの曲げ強度が要求される用途への展開を拡
大することができる。
【0054】また、本発明によれば、先に提案されたイ
オン注入のように単繊維の表層のみを非晶化する必要は
なく、単繊維全体を非晶化すればよいため、束の状態で
の全体の同時処理が可能であり、糸条厚みを薄くして処
理の均一性を確保する必要がないばかりか、高密度での
処理が可能となる。また、本発明においては、たとえば
電子線、中性子線のように常圧下で扱うことのできる放
射線を用いうるため、高真空を必ずしも必要とはしない
利点もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】ループ法による単繊維圧縮強度の測定法であっ
て、ループの短径Dと長径φの測定法を示す概略図であ
る。
【図2】ループ法による単繊維圧縮強度の測定法であっ
て、歪εを横軸,長径と短径との比φ/Dを縦軸にして
プロットしたグラフ例を示すものである。
【図3】ねじり弾性率の測定法の概略図である。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成4年2月21日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正内容】
【0010】本発明のアクリル系炭素繊維は、繊維中心
部に対して結晶性が同等もしくは高い表層部を有するも
のである。一般に、アクリル系炭素繊維は繊維中心部に
対して結晶性が同等もしくは高い表層部を有しており、
この内部構造は後述する本発明の方法である放射線照射
処理後においても相対的にそのまま継承されているもの
である。一方、高圧縮強度を達成するアクリル系炭素繊
維として、繊維中心部に対して結晶性が低い表層部を有
する炭素繊維が前記した特開平3−180514号公報
に開示されている。しかし、かかる構造の繊維を得るた
めには、繊維束に対して均一に、しかも表層部のみ結晶
性を低下させる処理をする必要があり、現在のところイ
オン注入という工業化するには制約の大きい手段しか知
られていないのは前記したとおりである。なお、このよ
うな構造を有するアクリル系炭素繊維を得るための方法
については後述する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正内容】
【0014】本発明においては、かかるアクリル系炭素
繊維へ放射線を照射するものである。かかる手段によら
なければ圧縮強度の高い炭素繊維を工業的に製造するこ
とは極めて困難である。放射線照射はアクリル系炭素繊
維の表面処理工程やサイジング工程などに先だっておこ
なってもよいし、また、その後におこなってもよい。さ
らに、熱処理中に放射線を照射することもできる。ただ
し、黒鉛結晶の成長を抑制する観点から、放射線照射後
においては1000℃以上の温度で熱処理をしないこと
が好ましい。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0033
【補正方法】変更
【補正内容】
【0033】<結晶サイズLc>繊維束を40mm長に切
断して、20mgを精秤採取し、試料繊維軸が正確に平行
になるようにそろえた後、試料調整用治具を用いて幅1
mmの厚さが均一な試料繊維束に整えた。薄いコロジオン
液を含浸して形態がくずれないように固定した後、広角
X線回折測定試料台に固定した。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】広角X線回折により求めた炭素網面の結晶
    サイズLcが15〜75オングストロームであり、ルー
    プ法による単繊維圧縮強度σcf(GPa)がσcf≧1
    0.78−0.1176×Lcを満たすアクリル系炭素
    繊維において、繊維中心部に対して結晶性が同等もしく
    は高い表層部を有することを特徴とするアクリル系炭素
    繊維。
  2. 【請求項2】引張強度2GPa以上のアクリル系炭素繊
    維に照射エネルギー100 keV〜10 MeV、照射量30
    0Mrad以上の放射線を照射することを特徴とするアクリ
    ル系炭素繊維の製造方法。
  3. 【請求項3】放射線が電子線であることを特徴とする請
    求項1記載のアクリル系炭素繊維の製造方法。
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Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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