JP2707845B2 - アクリロニトリル系黒鉛化繊維の製造方法 - Google Patents

アクリロニトリル系黒鉛化繊維の製造方法

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JP2707845B2 JP3006265A JP626591A JP2707845B2 JP 2707845 B2 JP2707845 B2 JP 2707845B2 JP 3006265 A JP3006265 A JP 3006265A JP 626591 A JP626591 A JP 626591A JP 2707845 B2 JP2707845 B2 JP 2707845B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はアクリロニトリル系黒鉛
化繊維の製造方法に関するものである。更には詳細に
は、特に引張弾性率およびコンポジット圧縮強度に優れ
たアクリロニトリル系黒鉛化繊維の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年黒鉛化繊維が航空宇宙用途および釣
竿、ゴルフシャフトなどのスポーツ用途に広く活用され
るとともに、剛性を維持して材料をより薄くするために
引張弾性率に対する向上要求がますます高くなってい
る。そのニーズに応えてポリアクリロニトリル(以下、
PAN)系黒鉛化繊維では引張弾性率約580GPa、
ピッチ系黒鉛化繊維では引張弾性率約890GPaの高
弾性率黒鉛化繊維が上市されるようになった。
【0003】しかし、PAN系黒鉛化繊維はピッチ系黒
鉛化繊維に比べて圧縮強度は高いものの、引張弾性率を
向上させることが難かしく、ピッチ系黒鉛化繊維並みの
680GPa以上の高引張弾性率を有するPAN系黒鉛
化繊維を得るのは困難であった。一方、ピッチ系黒鉛化
繊維は引張弾性率は高いものの、圧縮強度が低く実用
上、高弾性率を充分に生かすことができないという問題
があった。
【0004】本発明者らはピッチ系黒鉛化繊維のコンポ
ジット圧縮強度が低い原因を鋭意検討して結晶サイズが
PAN系炭素繊維に比較して大きいのが原因であること
を突き止め、その知見をもとに、結晶サイズをある一定
サイズ以下にする技術あるいはねじり弾性率をある一定
レベル以上にする技術による、圧縮強度の高い黒鉛化繊
維を提案した(特開昭63−11326号公報、特開平
1−124629号公報)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
の技術をもってしてもなお、引張弾性率が350〜60
0GPaのレベルの黒鉛化繊維しか得られず、680G
Pa以上の高引張弾性率を有する黒鉛化繊維を得ること
はできなかった。
【0006】すなわち、本発明の課題は、引張弾性率が
ピッチ系黒鉛化繊維並みに680GPa以上と高く、か
つコンポジット圧縮強度が600MPa以上という従来
技術では達成し得なかった高性能黒鉛化繊維を提供する
ことにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は上記課題を解決
するために次の構成を有する。すなわち、極限粘度
[η]が1.6以上であるポリアクリロニトリル系重合
体を紡糸して得られる単繊維繊度0.8デニール以下の
プリカーサを耐炎化処理してなる耐炎化繊維を、不活性
雰囲気中、500〜1000℃の温度、0.15g/d
以上の張力下で炭化し、1500〜2000℃の温度、
1g/d以上の張力下で前黒鉛化して後、2800〜3
200℃の温度、1.3g/d以上の張力下20%以上
の延伸を施して黒鉛化して、結晶配向度π002が95〜
99%、結晶サイズLC が60〜80オングストローム
であり、引張弾性率が680GPa、コンポジット圧縮
強度が600MPa以上である黒鉛化繊維を得ることを
特徴とするアクリロニトリル系黒鉛化繊維の製造方法で
ある。
【0008】以下、本発明について詳細に説明する。本
発明により得られる黒鉛化繊維は、結晶配向度π002
95〜99%と、従来のPAN系黒鉛化繊維に対して高
めることで引張弾性率を680GPa以上と向上させ、
かつ、結晶サイズLCを60〜80オングストロームと
従来のピッチ系炭素繊維に対して微細化することでコン
ポジット圧縮強度を600MPa以上と向上させてい
る。
【0009】本発明において結晶サイズLc とは、次の
ようにして求めた値をいう。 (結晶サイズLc )繊維束を40mm長に切断して、2
0mgを精秤採取し、試料繊維軸が正確に並行になるよ
うに揃えた後、試料調整用治具を用いて巾1mmの厚さ
が均一な試料繊維束に整える。薄いコロジオン液を含浸
させて形態が崩れないように固定した後、広角X線回折
測定試料台に固定する。X線源としては、理学電機社製
のX線発生装置を用いて、35kV、15mAの出力の
CuKα線(Niフィルターを使用)を用いる。理学電
機社製のゴニオメーターを用い、透過法によりグラファ
イトの面指数(002)に相当する2θ=26゜近傍の
回折ピークをシンチレーションカウンターにより検出す
る。上記回折ピークにおける半価巾から下式を用いて結
晶サイズLc を求める。 Lc =λ/(β0 COS θ) ここで、λは、本発明において用いるCuKα線の波長
1.5418オングストロームであり、θはBragg の回折角で
ある。また、β0 は真の半価巾であり、次式により求め
た値をいう。 β0 2 =βE 2 −β1 2 ここで、βE は見掛けの半価巾、β1 は装置定数(本発
明においては理学電機社製4036A2型X線発生装置を出力
35kV,15mAで使用したので1.05×10-2rad )を
いう。
【0010】本発明において結晶配向度π002 とは、次
のようにして求めた値をいう。(結晶配向度π002 )結
晶サイズLc の場合と同様に試料を調整し、同様の解析
方法によって次式を用いて配向度を求めた。 結晶配向度π002 ={(180 −H)/180 }×100 ここで、Hは(002)回折の最高強度を含む子午線方
向のプロフィルの拡がりの半価巾(゜)である。
【0011】結晶配向度π002 が95%未満では、引張
弾性率を680GPa以上にすることが難しく、一方、
結晶配向度πが99%を超える高配向繊維を製造するこ
とは事実上困難である。
【0012】さらに、結晶サイズLc が60オングスト
ローム未満では、結晶配向度π002 を95%以上に保ち
つつ引張弾性率を680GPa以上とすることが難し
く、一方、結晶サイズLc が80オングストロームを超
えるとコンポジット圧縮強度を600MPa以上とする
ことが困難となる。
【0013】従来の黒鉛化繊維について、結晶配向度π
002 と結晶サイズLc とは一般に正比例関係にあり、結
晶サイズLc が大きいほど結晶配向度π002 が向上する
傾向があった。したがって、従来の技術によっては、結
晶サイズが60〜80オングストロームと低いにもかか
わらず、結晶配向度π002 を95〜99%と高くなるよ
うな繊維内の結晶構造を形成することは不可能であっ
た。
【0014】本発明により得られた黒鉛化繊維は、黒鉛
化繊維の結晶配向度π002と結晶サイズLCとの従来の比
例関係から外れた結晶構造に制御することにより、すな
わち、結晶配向度π002を95〜99%、結晶サイズLC
を60〜80オングストロームとすることにより、従来
両立が困難であった680GPa以上の高引張弾性率と
600MPa以上の高コンポジット圧縮強度を同時に達
成することがはじめて可能となったものである。
【0015】かかる黒鉛化繊維の引張弾性率は、従来の
どのPAN系黒鉛化繊維に比べても引張弾性率が高く、
かつコンポジット圧縮強度は従来のピッチ系黒鉛化繊維
に対して約1.5倍以上高い値である。
【0016】なお、本発明において引張弾性率とは、次
のようにして求めた値をいう。 (引張弾性率)“ベークライト”ERL−4221/三
フッ化ホウ素モノエチルアミン/アセトン=100/3
/4部を炭素繊維に含浸し、得られた樹脂含浸ストラン
ドを130℃で30分間加熱して硬化させる。得られた
ストランドをJIS R 7601に規定する樹脂含浸ストランド
試験法に従って、直接読取り法により伸度0.1%〜
0.3%の伸度範囲における引張弾性率を求める。
【0017】また、本発明においてコンポジット圧縮強
度とは、次のようにして求めた値をいう。 (黒鉛化繊維のコンポジット圧縮強度)黒鉛化繊維を一
方向に引き揃え、東レ(株)製#3631樹脂で含浸し
たプリプレグを積層し、ASTM−D695に規定する
試験片および試験方法に従って測定する。
【0018】本発明において黒鉛化繊維は次の製造方法
により得られる。結晶配向度π002が95〜99%と高
く、該結晶配向度π002と結晶サイズLCの関係が従来の
比例関係から外れた結晶構造を形成するためには、次の
6つの要件の組合せが重要である。
【0019】すなわち、第1にプリカーサーに難黒鉛化
性物質であるPAN系重合体を用い、しかも、そのPA
N系重合体として、後述の共重合量が一定量以下のアク
リロニトリル共重合体またはアクリロニトリルホモポリ
マーを用いること、第2にプリカーサーポリマーの重合
度を表す尺度である極限粘度[η]を後述の一定値以上
とすること、第3にプリカーサーの単繊維繊度(単位:
デニール、以下dと略記)を後述する一定値以下とする
こと、第4に炭化工程以降の焼成工程を後述のとおり、
炭化、前黒鉛化、黒鉛化に分けることにより、各工程に
おける張力を個別に設定すること、第5に黒鉛化温度を
後述のとおり超高温とすること、第6に黒鉛化の際の張
力を後述のとおり一定以上の高張力とすることである。
【0020】特に、難黒鉛化性物質であるPANを素材
とする細繊度プリカーサーを用いて焼成するにあたり、
高張力下、超高温で黒鉛化することが最も重要である。
【0021】すなわち、2800〜3200℃という黒
鉛が可塑化するような超高温において高張力下で黒鉛化
することにより、従来の技術では不可能であった、繊維
内部の黒鉛結晶を高度に配向させることが可能となり、
また、プリカーサーの単繊維繊度を0.8d以下とする
ことによって、単繊維の内外構造差を小さくして配向の
低い内層部分を小さくし全体の配向を向上させることが
できるのである。加えて、超高温において高張力下で黒
鉛化するためには、極限粘度[η]を前記の一定値以上
としてポリマーの軟化点を向上させるとともに剛直なポ
リマーとすることによって、従来の技術では糸切れの起
きてしまうような焼成時の高い焼成張力に耐えうるよう
な構造にすることも重要である。
【0022】結晶配向度π002 を95%以上にしてかつ
結晶サイズLc を80オングストローム以下にするに
は、前駆体が易黒鉛化性物質である従来のピッチでは難
しく、難黒鉛化性物質であるPAN系重合体を原料とし
て選択するものである。
【0023】PAN系重合体としては、アクリロニトリ
ルのホモポリマーあるいはアクリロニトリルと共重合可
能なビニル系モノマ、たとえばアクリル酸、メタクリル
酸、イタコン酸およびそれらのアルカリ金属塩、アンモ
ニウム塩および低級アルキルエステル類、アクリルアミ
ドおよびその誘導体、アリルスルホン酸、メタリルスル
ホン酸およびそれらの塩類またはアルキルエステル類な
どとの共重合体を挙げることができる。
【0024】これら共重合体の共重合量は、3モル%以
下、好ましくは2.0モル%以下、より好ましくは1モ
ル%以下がよい。すなわち共重合量が3モル%を越える
と、後述する黒鉛化での焼成張力を1.3g/d以上ま
で上げると単繊維切れによる毛羽が発生し、品位のよい
黒鉛化繊維が得られず、したがって引張弾性率向上にと
って好ましくないという問題がある。
【0025】重合法については、従来公知の溶液重合、
懸濁重合、乳化重合などを適用することができる。重合
度の尺度として、極限粘度[η]で表現すれば、好まし
くは1.6以上、より好ましくは1.8以上、さらに好
ましくは2.0以上がよい。[η]が1.6未満では後
述する黒鉛化での焼成張力を十分に向上させることが難
しく、引張弾性率向上にとって好ましくない。ここで、
極限粘度[η]とは次のとおり測定した値をいう。 (極限粘度[η])PAN系重合体の乾燥試料75mgを25
mlのメスフラスコに入れ、0.1Nチオシアン産ソーダ−ジ
メチルホルムアミド溶液25mlを加えて完全に溶解した
後、オストワルド粘度計を用いて25℃で比粘度ηspを測
定する。 [η]={( 1+ 1.327ηsp1/2 − 1}/0.198 比粘度ηspから、上式より算出した値を極限粘度[η]
とする。
【0026】紡糸方法には、湿式紡糸法、乾式紡糸法、
乾湿式紡糸法などを採用することができるが、緻密性の
高いプリカーサーが得られる観点からは湿式紡糸法ある
いは乾湿式紡糸法が好ましい。
【0027】弾性率の高い炭素繊維を得るためには、緻
密性の高いプリカーサーが有効である。かかる観点から
は、緻密性の尺度とされるヨウ素吸着法によるΔLの値
が50以下、好ましくは30以下、さらに好ましくは1
0以下の緻密なプリカーサーが好ましい。ΔLが50以
下の緻密なプリカーサーを得るための条件としては、凝
固時の実質ドラフトを好ましくは5以下とし、工程油剤
の付着量を好ましくは3%以下にするのが良い。
【0028】本発明においてヨウ素吸着法によるΔLと
は、次のようにして求めた値をいう。 (ヨウ素吸着法によるΔL)繊維長5〜7cmの乾燥試料
を約0.5g精秤し、200mlの共栓付き三角フラスコ
に採り、これにヨウ素溶液(I2 :51g、2,4-ジクロ
ロフェノ−ル10g、酢酸90gおよびヨウ化カリウム
100gを秤量し、1 lのメスフラスコに移して水で溶
かして定容とする)100mlを加えて、60℃で50分
間振盪しながら吸着処理を行なう。ヨウ素を吸着した試
料を流水中で30分間水洗した後、遠心脱水(2000
rpm、1分)してすばやく風乾する。この試料を開繊し
た後、ハンタ−型色差計[カラ−マシン(株)製、CM-2
5 型]で明度(L値)を測定する(L1 )。一方、ヨウ
素の吸着処理を行なわない対応の試料を開繊し、同様に
前記ハンタ−型色差計で明度(L0 )を測定し、明度差
0 −L1 をΔLとする。また、弾性率の高い黒鉛化繊
維を得るためには、配向度の高いプリカーサーが好まし
く、特に広角X線回折による配向度(π400 )が85%
以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%
以上のPAN繊維がよい。広角X線回折による配向度
(π400 )が85%以上のPAN繊維を得るには、湿式
紡糸法あるいは乾湿式紡糸法などにより得られた凝固糸
に、熱水延伸、スチーム延伸あるいはグリセリンなどの
溶剤中延伸などの延伸を施し、その延伸倍率を好ましく
は5倍以上、より好ましくは10倍以上、さらに好まし
くは12倍以上とするのが良い。
【0029】本発明においてプリカーサーの配向度π
400 とは、次のようにして求めた値をいう。 (プリカーサーの配向度π400 )X線源としてNiフィル
ターで単色化されたCuKα線を使用し、 2θ=17.0゜
付近に観察される面指数(400 )のピークを円周方向に
スキャンして得られたピークの半値幅より、次式から求
める。 π400 ={(180 −H)/180 }×100 (%) ここで、Hは上記半値幅(゜)である。
【0030】プリカーサーの単繊維繊度としては0.8
d以下、好ましくは0.75d以下、より好ましくは
0.7d以下の細繊度が良い。0.8dを越える太繊度
では680GPa以上の引張弾性率を得るのが極めて難
しく、好ましくない。
【0031】かかるプリカーサーを焼成する際の耐炎化
条件としては、240〜300℃の酸化性雰囲気中で密
度が1.35g/cm3 以上、好ましくは1.40g/cm3
上、より好ましくは1.45g/cm3 以上まで加熱するこ
とが、炭化工程以降の焼成張力の向上ひいては弾性率の
向上に有効な手段である。耐炎化での焼成張力は、0.
2g/d以上、好ましくは0.25g/d以上、さらに
好ましくは0.3g/d以上にするのが弾性率向上にと
って好ましい。耐炎化雰囲気としては、公知の空気、酸
素、二酸化窒素、塩化水素などの酸化性雰囲気を採用で
きるが、経済性の面から空気が好ましい。
【0032】なお、本発明において焼成張力とは、以下
の方法により求めた値をいう。 (焼成張力)各焼成工程における工程出の繊度で焼成張
力を除して求める。
【0033】得られた耐炎化繊維を不活性雰囲気中、5
00〜1000℃で炭化した後、1500〜2000℃
で前黒鉛化し、さらに2800〜3200℃で黒鉛化す
ることが、引張弾性率および圧縮強度を向上させるうえ
で有効である。黒鉛化温度は、高いほど高弾性率を得る
には有利であるが、炉材の寿命を考慮すると、2800
〜3200℃、好ましくは2900〜3100℃とする
のがよい。
【0034】このように炭化、前黒鉛化、黒鉛化を分け
ることによって各張力を個別に設定することが可能とな
り、それによっての高張力黒鉛化が可能になる。
【0035】炭化工程での焼成張力は0.15g/d以
上とするのが高弾性率を得るために好ましく、さらに好
ましくは0.2g/d以上がよい。
【0036】前黒鉛化工程での焼成張力は1.0g/d
以上とするのが高弾性率を得るために好ましく、さらに
好ましくは1.5g/d以上がよい。
【0037】特に、2800〜3200℃の黒鉛化工程
において焼成張力を1.3g/d以上、好ましくは1.
5g/d以上、さらに好ましくは2.0g/d以上とす
ることが680GPa以上の高引張弾性率を得るために
重要である。すなわち、焼成張力を1.3g/d未満と
した場合には、黒鉛化糸品位は向上するが、結晶サイズ
Lc が60〜80オングストロームの領域において、引
張弾性率を680GPa以上と高くすることが難しい。
【0038】一般に黒鉛化温度が高い程、同一延伸比に
対する焼成張力は低下する関係にあり、2800〜32
00℃の超高温において1.3g/d以上の高張力で黒
鉛化することが弾性率向上のために重要である。設定黒
鉛化温度に対して引張弾性率および品位のバランスから
1.3g/d以上の範囲で張力を最適化することが好ま
しい。
【0039】黒鉛化張力を1.3g/d以上にするため
には、前述のように共重合体の共重合量が3モル%以下
のPANポリマーを用い、さらに、黒鉛化において15
%以上、好ましくは20%以上、さらに好ましくは25
%以上の延伸を行なえば良い。くりかえせば、共重合体
の共重合量が3モル%を越えるPANポリマーでは1.
3g/d以上まで黒鉛化張力を上げると単繊維切れによ
る毛羽が発生し、品位のよい黒鉛化繊維が得られないの
である。
【0040】昇温速度については、300〜500℃の
温度領域での昇温速度を500℃/分以下、好ましくは
200℃/分以下とし、1000〜1200℃の温度領
域での昇温速度を500℃/分以下、好ましくは200
℃/分以下とし、さらに2000℃以上最高温度までの
昇温速度を1000℃/分以下、好ましくは500℃/
分以下とすることが延伸性を向上させ、毛羽の発生を防
止するうえで有効である。
【0041】炭化、前黒鉛化および黒鉛化工程での各焼
成雰囲気としては窒素、アルゴンなどの不活性雰囲気を
採用できるが、3000℃附近の高温では窒素が炭素と
反応するおそれがあるので、黒鉛化雰囲気については物
性および安全上アルゴン雰囲気が好ましい。
【0042】得られた黒鉛化繊維は、さらに必要に応じ
て、表面処理およびサイジング剤付与され、熱硬化、熱
可塑性樹脂あるいは金属、セラミックス等の各種マトリ
ックスと組み合せて複合材料となる。
【0043】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに具体的に
説明する。 (実施例1)アクリロニトリル99.5モル%とメタク
リル酸0.5モル%からなる共重合体を用いて、濃度が
20重量%のジメチルスルホキシド(以下、DMSO)
溶液を作製した。極限粘度[η]は1.85であった。
この溶液を温度55℃に調整し、孔径0.05mm、ホー
ル数6000の紡糸口金を通して、温度50℃、濃度5
5%のDMSO水溶液中で凝固させた。凝固時の実質ド
ラフトは2.2であった。凝固糸条を水洗後、3段の温
水延伸浴で3.5倍に延伸しシリコーン系油剤を付与し
た後、130〜160℃に加熱されたローラー表面に接
触させて乾燥緻密化し、さらに3.7 kg/cm2 の加圧ス
チーム中で3倍に延伸して単糸繊度0.7d、トータル
デニール4200Dの繊維束を得た。得られたPAN繊
維の油剤付着量は1.5%、ΔLは45、配向度(π
400 )は92%であった。
【0044】得られた繊維束を240〜280℃の空気
中で30分間加熱し、密度1.36g/cm3 の耐炎化繊維
に転換した。耐炎化張力は0.25g/dであった。つ
いで、窒素雰囲気で900℃まで焼成張力0.2g/d
で炭化した後、さらに1800℃まで焼成張力1.8g
/dで前黒鉛化した。300〜500℃および1000
〜1200℃での昇温速度はそれぞれ200℃/分およ
び600℃/分であった。さらに連続して最高温度30
00℃のアルゴン雰囲気中で焼成張力1.6g/dで黒
鉛化することにより黒鉛化繊維を得た。2000〜30
00℃の昇温速度は500℃/分であった。
【0045】得られた黒鉛化繊維は引張弾性率が710
GPaで引張強度が4.5GPaと高弾性率高強度黒鉛
化糸であった。X線で構造解析した結果、結晶サイズL
c は74.3オングストロームであり、配向度は95.
8%であった。この黒鉛化繊維のコンポジット圧縮強度
を測定した結果、650MPaと高物性であった。得ら
れた黒鉛化繊維の特性を表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】(実施例2〜3、比較例1〜5)実施例1
においてメタクリル酸の共重合量、重合度、プリカーサ
ー繊維の単繊維繊度、黒鉛化温度および黒鉛化張力を表
1のように変える以外は実施例1と同じ条件で黒鉛化し
て黒鉛化繊維を得た。得られた黒鉛化繊維の特性を表1
に併せて示す。
【0048】(比較例6)A社製ピッチ系黒鉛化繊維の
特性を測定した結果、引張弾性率は800GPaと高物
性であったが、引張強度が2.5GPaと低く、コンポ
ジット圧縮強度も400MPaと低物性であった。X線
構造解析の結果、結晶サイズLc は96.3オングスト
ロームと大きく、配向度は97.0%であった。
【0049】(比較例7)B社製ピッチ系黒鉛化繊維の
特性を測定した結果、引張弾性率が620GPaで引張
強度が3.0GPaと低く、コンポジット圧縮強度も4
20MPaと低物性であった。X線構造解析の結果、結
晶サイズLc は87.0オングストロームと大きく、配
向度は94.6%であった。
【0050】
【発明の効果】本発明における黒鉛化繊維は、従来のP
AN系の高圧縮強度とピッチ系の高弾性率というそれぞ
れの長所を併せ持った非常にバランスのとれた黒鉛化繊
維であり、これによって高引張弾性率と高圧縮強度の両
方が求められる用途への炭素繊維強化複合材料の使用が
可能となった。具体的には、より軽量化および高弾性率
化が求められる超音速飛翔体などの航空機用途、ロケッ
ト、トラスなどの宇宙用途、鮎竿、磯竿などの釣竿用途
およびゴルフクラブなどのスポーツ用途における複合材
料用炭素繊維として好適に用いることができる。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】極限粘度[η]が1.6以上であるポリア
    クリロニトリル系重合体を紡糸して得られる単繊維繊度
    0.8デニール以下のプリカーサを耐炎化処理してなる
    耐炎化繊維を、不活性雰囲気中、500〜1000℃の
    温度、0.15g/d以上の張力下で炭化し、1500
    〜2000℃の温度、1g/d以上の張力下で前黒鉛化
    して後、2800〜3200℃の温度、1.3g/d以
    上の張力下20%以上の延伸を施して黒鉛化して、結晶
    配向度π002が95〜99%、結晶サイズLC が60〜
    80オングストロームであり、引張弾性率が680GP
    a、コンポジット圧縮強度が600MPa以上である
    鉛化繊維を得ることを特徴とするアクリロニトリル系黒
    鉛化繊維の製造方法
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