JPH0520826A - 磁気ヘツドおよび磁気ヘツドの製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 信頼性の優れたＡＢＳ面のクラウン形状を有
する磁気ヘッドを提供するとともに、そのＡＢＳ面を、
簡単な方法で精度良く、信頼性の極めて優れたクラウン
形状に形成することのできる磁気ヘッドの製造方法を提
供する。 【構成】 磁気ヘッドは、残留応力により、ＡＢＳ面の
少なくとも磁気媒体に対する相対移動方向と平行な方向
がクラウン形状に形成されたスライダを有することを特
徴とし、磁気ヘッドの製造方法は、スライダのＡＢＳ面
と底面を平行な平面に加工した後、前記ＡＢＳ面と底面
の少なくとも一方をさらに面粗度を変化させる加工を施
し、残留応力により、前記ＡＢＳ面の少なくとも磁気媒
体に対する相対移動方向と平行な方向をクラウン形状と
することを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、磁気ディスク等の磁気
媒体に対して相対移動しながら情報の記録・再生を行う
磁気ヘッドとその製造方法に係り、特に、磁気媒体に対
する磁気ヘッドの対向面を湾曲にして接触面積を少なく
した磁気ヘッドとその製造方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】一般に、コンピュータ等の磁気記録装置
の記録媒体であるハードディスクに情報の記録・再生を
行うための磁気ヘッド１は、例えば、図６のａと図６の
ｂに示すような支持装置２によって、弾性を有するアー
ムの先端に取り付けられて磁気媒体３の上に吊持されて
いる。そして、磁気媒体３を回転させることにより、磁
気ヘッド１を磁気媒体３より微小の隙間だけ浮上させる
浮動式の磁気ヘッドや、磁気ヘッド１を磁気媒体から浮
上させない接触式の磁気ヘッドにより、磁気媒体３の表
面を走査させて、記録または再生を行うようになってい
る。

【０００３】この種の磁気ヘッドの一例として小型の２
レールモノリシック型のフェライトヘッドが知られてい
る。図７に示すように、このフェライトヘッド４は、熱
間静水圧プレス処理をした多結晶Ｍｎ−Ｚｎフェライト
等の焼結フェライトからなる高密度フェライトで形成し
た略矩形のスライダ５を備えている。このスライダ５の
磁気媒体に対向する対向面であるＡＢＳ（Ａｉｒ Ｂｅ
ａｒｉｎｇＳｕｒｆａｃｅ）面６に、フェライトヘッド
４を磁気記録媒体３に対して浮上させるための負圧溝７
を磁気媒体に対する相対移動方向と平行に凹設して、２
本のレール８ａ，８ｂが形成されている。そして、１本
のレール８ａと高密度フェライトで形成した略コの字型
のヘッドコア９が、適宜なギャップ１０を介してガラス
１１により接合されている。そして、このヘッドコア９
とスライダ５のレール８ａの端部には、両者の幅方向中
心部にトラック幅に対応した狭幅の記録・再生部１３が
両者を削ることにより形成されており、この削り取られ
た部分に補強ガラス１２，１２を接合して、記録・再生
部１３が補強されている。

【０００４】従来、この種のフェライトヘッド４におい
ては、ＡＢＳ面６と磁気媒体に対向しない面である底面
１４とは、互いに平行状態とされ、かつ、それぞれ平面
状に形成されているのが一般的である。

【０００５】このフェライトヘッド４を図６のａと図６
のｂに示す磁気ヘッド１に適用した場合、ＡＢＳ面６
は、磁気媒体３と静止状態で接触されているときに、吸
着により密着することとなり、磁気媒体３の回転起動時
あるいは終了時に摩擦抵抗が大きくなり、磁気媒体３に
傷を付けたり、磁気媒体３を回転させるモータのトルク
を増加させたりしていた。

【０００６】そこで、ＣＳＳ（コンタクト・スタート・
ストップ）特性および摺動特性を向上させるためにフェ
ライトヘッド４のＡＢＳ面６をクラウン形状として、前
記クラウン形状の頂点を磁気媒体３と接触させるように
した磁気ヘッドが、例えば、特開平２−５０３０７号公
報に提案されている。

【０００７】前記ＡＢＳ面６をクラウン形状に形成する
製造方法としては、ＡＢＳ面６に形成する所望の曲率と
合致させたＲ加工を、ラッピングおよびポリッシング加
工に使用する定盤に施すことによる加工方法や、ＡＢＳ
面６を所望の曲率に従わせて動かしながらラッピングお
よびポリッシング加工をする加工方法、そして、フェラ
イトヘッド４に治具等で強制的に外圧を加えてラッピン
グおよびポリッシング加工をして、その変形を利用する
等の方法がある。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述し
た従来のＡＢＳ面をクラウン形状に形成する製造方法に
おいては、クラウン形状の加工精度が不十分であるとと
もに、クラウン形状の加工時に段取り時間や加工時間が
多く、さらに、管理項目が多く手間を食い、歩留まりが
悪い等の問題があった。従って、従来の磁気ヘッドにお
いては、ＡＢＳ面のクラウン形状の信頼性が劣るという
問題点があった。

【０００９】本発明はこれらの点に鑑みてなされたもの
であり、前述した従来のものにおける問題点を克服し、
信頼性の優れたＡＢＳ面のクラウン形状を有する磁気ヘ
ッドを提供するとともに、そのＡＢＳ面を、簡単な方法
で精度良く、信頼性の極めて優れたクラウン形状に形成
することのできる磁気ヘッドの製造方法を提供すること
を目的とする。

【００１０】

【課題を解決するための手段】前述した目的を達成する
ため請求項１に記載の本発明の磁気ヘッドは、残留応力
により、ＡＢＳ面の少なくとも磁気媒体に対する相対移
動方向と平行な方向がクラウン形状に形成されたスライ
ダを有することを特徴としている。

【００１１】また、請求項２に記載の本発明の磁気ヘッ
ドの製造方法は、磁気ヘッドのＡＢＳ面と底面を平行な
平面に加工した後、前記ＡＢＳ面と底面の少なくとも一
方をさらに面粗度を変化させる加工を施し、残留応力に
より、前記ＡＢＳ面の少なくとも磁気媒体に対する相対
移動方向と平行な方向をクラウン形状とすることを特徴
としている。

【００１２】

【作用】請求項１に記載の本発明の磁気ヘッドによれ
ば、磁気媒体と相対移動する磁気ヘッドのＡＢＳ面の少
なくとも前記相対移動方向と平行な方向（以下、縦方向
と称する）にクラウン形状が形成されているので、ＡＢ
Ｓ面は、磁気媒体と静止状態で接触されているときに、
両者の接触面積が少なく、吸着による密着を確実に防止
して、従来例においてみられた磁気媒体の回転起動時あ
るいは終了時に摩擦抵抗が大きくなり、磁気媒体に傷を
付けたり、磁気媒体を回転させるモータのトルクを増加
させたりする悪影響を確実に防止することができる請求
項２に記載の本発明の磁気ヘッドの製造方法によれば、
磁気ヘッドのＡＢＳ面の少なくとも縦方向にクラウン形
状を、一般的な加工方法で簡単に形成することができ、
ＡＢＳ面にクラウン形状を精度良く確実に形成すること
ができる。

【００１３】

【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参考にして説
明する。

【００１４】図１は本発明に係る磁気ヘッドの一実施例
を示し、前述した従来例と同一部分については、図面中
に同一の符号を付してある。

【００１５】本実施例は、小型の２レールモノリシック
型のフェライトヘッドに適用したものであり、図１に示
すように、フェライトヘッド４の磁気媒体３に対向する
ＡＢＳ面６が、少なくとも縦方向にクラウン形状となる
ように形成されている。

【００１６】つぎに、本実施例のフェライトヘッド４の
製造方法を図２のａおよびｂにより説明する。図２は説
明の都合上、ＡＢＳ面を上向きにしてある。

【００１７】図２のａは、ＡＢＳ面６をクラウン形状に
加工する直前まで加工された、加工途中の磁気ヘッドを
示しており、スライダ５の素材となる長尺なスライダブ
ロックと、ヘッドコア９の素材となる長尺なコアブロッ
クとをガラス１１を持ってギャップ１０を形成しながら
接合し、その長尺物の上下面を一体的に研磨して所定厚
さに成形した後に、各スライダ５の上面に負圧溝７を凹
状に形成して２本のレール８ａ，８ｂを形成するととも
にコアブロックの不要部分を切断して１本のレール８ａ
にギャップ１０を介して対向するヘッドコア９を形成
し、この長尺物より磁気ヘッドの単体を切り出した状態
を示している。

【００１８】その後、図２のａに示すようにＡＢＳ面６
とスライダ５の低面１４とが平行状態にある加工途中の
磁気ヘッドに対して、低面１４をダイヤモンドパウダに
よりラッピングして鏡面加工をすることにより面粗度を
向上させるとともに、図２のｂに示すように、トワイマ
ン効果により、ＡＢＳ面６にクラウン形状を形成する。
その後、ヘッドコア９およびスライダ５のクラウン形状
に形成した２本のレール１５ａ、１５ｂの角隅部に所定
の面取り加工を施す。そして、さらに必要とされる適宜
の仕上げ加工を施して図２のｂおよび図１に示すような
小型の２レールモノリシック型のフェライトヘッド４が
形成される。

【００１９】つぎに、前述した磁気ヘッドの製造方法に
おいて、トワイマン効果を用いフェライトヘッド４のス
ライダ５にクラウン形状を形成することについて、具体
例を例示して作用とともに説明する。

【００２０】まず、トワイマン効果を説明すると、例え
ば、図３のａに示す平板状の長方体のワーク１６の一面
（本例においては下面）へ研磨，ラッピング，ポリッシ
ング等の加工を施すと、加工表面に加工変質層１７が形
成され、この加工変質層１７には、残留応力が蓄えられ
る。そして、前記加工変質層１７を形成された表面と他
の表面の応力が異なることとなり、ワーク１６全体の初
期状態の内部応力バランスが変化することで、図３のｂ
に示すように形状が湾曲変形する。

【００２１】つぎに、トワイマン効果による変形と残留
応力の関係について、図４のａに示すように、長さＬ，
厚さＨの板が長さ方向に変形するモデルにより説明する
と、図４のａに示すように、上下面をラッピングした後
で、加工変質層をエッチング処理により除去して残留応
力の無い試料を得る。

【００２２】ついで、試料の上面を研磨して加工変質層
１７を設けると図３のｂに示すように変形する。このと
きの変形量δを測定する。

【００２３】つぎに、図４のｃに示すように、試料の上
面を研磨して形成した加工変質層１７面を除いた他の面
を樹脂１８により被覆して、前記加工変質層１７をエッ
チング処理により除去する。このときのエッチング処理
により除去した加工変質層１７の厚みａを測定する。

【００２４】そして、図４のｄに示すように、試料に被
覆した樹脂１８を除去した後で、再び変形量δを測定す
る。この変形量の変化がなくなるまで前記工程を繰り返
して、前記加工変質層１７を完全に除去したときの変形
量をδ’とすると、加工変質層１７の残留応力σは次式
で求めることができる。

【００２５】

【００２６】ここで、Ｅは弾性係数である。

【００２７】以上のような、加工表面に設けた加工変質
層をコントロールして、残留応力バランスによるトワイ
マン効果を利用したクラウン形状を、磁気ヘッドに設け
ることができ、このような、残留応力を変化させクラウ
ン形状を設ける方法は、磁気ヘッドの底面１４を加工し
て、底面１４の圧縮応力が大きくなるようにする方法
と、スライダ５のＡＢＳ面６を加工して、ＡＢＳ面６の
圧縮応力が少なくなるようにする方法とがある。

【００２８】図５にＭｎ−Ｚｎフェライトの表面に＃４
００砥石による研磨面と、粒径が３μｍのダイヤモンド
パウダによるラッピング面に形成した加工変質層１７と
における各表面からの深さと残留応力の関係の一例をそ
れぞれ示す。

【００２９】前記した例では、Ｍｎ−Ｚｎフェライトの
片面に＃４００砥石による２４ＭＰａの圧縮応力を持つ
研磨面、他方の面に粒径３μｍのダイヤモンドパウダに
よる４２ＭＰａの圧縮応力を持つラッピング面とした平
行な試料を作成し、一方の前記研磨面を粒径３μｍのダ
イヤモンドパウダによりさらにラッピング加工する。前
記研磨面は、４２ＭＰａの圧縮応力を持つラッピング面
となり、この後加工されたラッピング面が収縮すること
により、先にラッピング加工されていたラッピング面が
クラウン形状に形成される。

【００３０】以上述べたように、加工変質層１７の状態
により残留応力が決定されるため、一般的に、研磨，ラ
ッピング，ポリッシング等の加工においては、面粗度と
残留応力との間に、面粗度が細かくなると圧縮応力が増
加するという相関関係がある。このことより、加工前の
面粗度と加工後の面粗度の差を大きくすることにより、
クラウン形状の変形量を大きくさせることができ、前記
した加工前の面粗度と加工後の面粗度の差を所望の値に
することにより、所望のクラウン形状の変形量（クラウ
ンハイト量）を得ることができることとなる。

【００３１】そして、これらのことにより数ｎｍ／ｍｍ
から数百ｎｍ／ｍｍのクラウンハイト量の範囲で所望の
クラウンハイト量を設定させることができる。

【００３２】さらに、加工方向をスライダ５のＡＢＳ面
６の縦方向およびこれと直行する方向（以下横方向とい
う）の一方若しくは双方向と任意に選択することによ
り、クラウン形状の変形方向をＡＢＳ面６の縦方向，横
方向の一方若しくは双方向と自由に選択することもでき
る。

【００３３】また、本実施例により製造されたフェライ
トヘッド４は、ＡＢＳ面６または底面１４の少なくとも
一方が鏡面となり、さらに、ＡＢＳ面６と底面１４の両
者がほぼ同一の曲率を持って変形するという特徴を有す
る。

【００３４】前記実施例においては、磁気ヘッドのスラ
イダ５の単体に対してＡＢＳ面６をクラウン形状にする
加工を施して製造したけれども、磁気ヘッドのスライダ
５の単体を切り出す前のスライダブロックとコアブロッ
クとを接合した長尺物に対して、ＡＢＳ面となる部分を
クラウン形状になるように加工するようにしても良い。
この場合、その後の加工によりＡＢＳ面のクラウン形状
が変形するが、その変形量を予測して、変形があっても
使用に耐えるクラウン形状を有するように加工を施すと
良い。

【００３５】なお、本発明は前述した各実施例に限定さ
れるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能であ
る。

【００３６】また、本発明は前記実施例のフェライトヘ
ッドに限定されるものではなく、当然コンポジット型の
フェライトヘッド等の複合型磁気ヘッドにも適用するこ
とができ、さらに、薄膜磁気ヘッド等の磁気ヘッドに対
しても同様に適用することができる。

【００３７】

【発明の効果】以上説明したように本発明は、スライダ
のＡＢＳ面と底面を平行な平面に加工した後、前記ＡＢ
Ｓ面と底面の少なくとも一方をさらに面粗度を変化させ
る加工を施すことにより、簡単な方法で精度が高く、信
頼性の極めて優れた所望のクラウンハイト量を有するク
ラウン形状をしたＡＢＳ面をスライダに備えた、磁気ヘ
ッドを得ることができるとともに、このような優れた技
術的効果を有する磁気ヘッドを、精度良く簡単に製造す
ることができ、また、経済性に極めて優れたものとなる
等の効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の磁気ヘッドを小型の２レールモノリシ
ック型フェライトヘッドに適用した全体を示す斜視図

【図２】ａおよびｂは、本発明の磁気ヘッドの製造方法
に従って小型の２レールモノリシック型を製造する場合
の製造工程を示す図

【図３】ａおよびｂは、トワイマン効果を説明する図

【図４】ａからｄは、トワイマン効果による変形と残留
応力の関係を調べる工程を説明する図

【図５】加工変質層の表面からの深さと残留応力の関係
の一例を示す線図

【図６】従来の磁気ヘッドの支持状態を示す図で、ａは
正面図、ｂは側面図

【図７】従来の小型の２レールモノリシック型フェライ
トヘッドを示す斜視図

【符号の説明】

４ フェライトヘッド ５ スライダ ６ ＡＢＳ面 ７ 負圧溝 ９ ヘッドコア １４ 底部 １５ａ，１５ｂ （クラウン形状の）レール １７ 加工変質層

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 残留応力により、ＡＢＳ面の少なくとも
   磁気媒体に対する相対移動方向と平行な方向がクラウン
   形状に形成されたスライダを有することを特徴とする磁
   気ヘッド。
2. 【請求項２】 スライダのＡＢＳ面と底面を平行な平面
   に加工した後、前記ＡＢＳ面と底面の少なくとも一方を
   さらに面粗度を変化させる加工を施し、残留応力によ
   り、前記ＡＢＳ面の少なくとも磁気媒体に対する相対移
   動方向と平行な方向をクラウン形状とすることを特徴と
   する磁気ヘッドの製造方法。