JPH05199881A - 小麦胚芽凝集素蛋白質の微生物学的製造法 - Google Patents

小麦胚芽凝集素蛋白質の微生物学的製造法

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JPH05199881A
JPH05199881A JP23725491A JP23725491A JPH05199881A JP H05199881 A JPH05199881 A JP H05199881A JP 23725491 A JP23725491 A JP 23725491A JP 23725491 A JP23725491 A JP 23725491A JP H05199881 A JPH05199881 A JP H05199881A
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germ agglutinin
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三智郎 村木
Hitoshi Nagahora
仁 長洞
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 特定のヌクレオチド配列で表わされる小麦胚
芽凝集素の成熟体構造遺伝子、該ヌクレオチド配列を含
む組換えプラスミド、該組換えプラスミドで形質転換さ
れた形質転換体微生物および該形質転換体微生物を培養
して小麦胚芽凝集素を製造する方法。 【効果】 本発明において、WGAの生産に遺伝子工学
的手法を採用することにより純度の高いWGAを安定に
かつ多量に製造することができた。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は化学的に合成した小麦胚
芽凝集素遺伝子を用いた遺伝子工学的手法による小麦胚
芽凝集素の製造法に関する。
【0002】
【従来技術】小麦胚芽凝集素(wheat germ agglutinin,
以下WGAと略す)は、小麦胚芽中に見いだされる蛋
白質であり、ガン細胞を特異的に凝集させる活性をもつ
ことが知られている[J.C. Aub et al., Proc. Natl. A
cad. Sci. USA, Vol.50, p.613 (1963)]。また、WG
Aは、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)や N- アセチ
ルノイラミン酸(NeuNAc)(別名シアル酸)を含むオリ
ゴ糖や糖蛋白質、糖脂質などに特異的に結合する作用を
有するため、これを利用した生体成分の分離・分析用試
薬としても市販され、WGA単品だけでなく、種々の担
体に固定化したWGAとしても一般に利用されている。
WGAは、さらに、ガン患者の血清や体液中に存在する
ガン関連糖蛋白質と特異的に結合することから、腫瘍マ
ーカーの一つとして、ガンの診断にも利用できる(日本
特開、昭62-257062 および昭62ー257063 )。
【0003】WGAは従来、小麦胚芽から精製すること
により調製されている[例えば、Nagata and Burger,
J. Biol. Chem., Vol.249, p.3116 (1974) 及び Nagata
et al., Methods in Enzymology, p.611, Academic Pr
ess (1974) ]が、市販のWGAは数種類のWGA同族
体(アイソマー)を含んだ混合物として通常供給されて
いる。これは小麦胚芽の遺伝子構成の反映であるが、特
定の品種の胚芽を用いても2〜3種類のWGAアイソマ
ーが含まれることが分かっている[Rice, Biochim. Bio
phys. Acta, Vol.444, p.175 (1976) ]。WGAアイソ
マーの相互分離とそれらの精製はかなり煩雑で時間がか
かり、コストも高くなるため、市販のWGAは同族体の
混合物のまま供給されている場合が多いのが現状であ
る。
【0004】また、WGAの生産量と価格は、原料とな
る小麦胚芽の供給量および価格により変動するが、小麦
の生産そのものが気候など自然環境により影響をうけや
すいため、WGAの原料である小麦胚芽も、その供給お
よび価格が不安定になる欠点をもっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
WGAの生産と供給における質的、量的欠点を克服する
ため、組換えDNA技術により、純粋なWGAを、安定
にしかも多量に、分泌生産し、これを提供することを目
的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は次の
構成を含むものである。 (1) 配列番号1のヌクレオチド配列で表わされる小
麦胚芽凝集素の成熟体構造遺伝子。 (2) 上記(1)記載の小麦胚芽凝集素の構造遺伝子
の5’端に分泌に必要なシグナルペプチドをコードする
DNA領域を、また3’端に翻訳終止信号TGATAA
を、それぞれ有する小麦胚芽凝集素遺伝子。 (3) 上記(1)記載の小麦胚芽凝集素の構造遺伝子
の5’端に分泌に必要なシグナルペプチドをコードする
DNA領域を、また3’端に翻訳終止信号TGATAA
を、それぞれ有する小麦胚芽凝集素遺伝子を含む組換え
プラスミドDNA。 (4) 発現プロモーターが酵母プロモーターであり、
かつ、シグナルペプチドをコードする領域が該酵母プロ
モーターの下流側で、かつ小麦胚芽凝集素遺伝子の上流
にあり、いずれもこれらと解読枠が一致していることを
特徴とする上記(3)記載の組換えプラスミド。 (5) 宿主細胞を上記(3)または上記(4)記載の
小麦胚芽凝集素遺伝子を含む組換えプラスミドDNAで
形質転換した形質転換体微生物。 (6) 宿主細胞が酵母である上記(5)記載の形質転
換体微生物。 (7) 酵母が、サッカロミセス属に属する酵母株、あ
るいは液胞局在性蛋白質を細胞外に分泌する突然変異を
有するサッカロミセス属に属する酵母変異株であること
を特徴とする上記(6)記載の形質転換体微生物。 (8) 酵母変異株が、KS-58-2Ddelであることを特徴
とする上記(7)記載の形質転換体微生物。 (9) 上記(5)乃至上記(8)のいずれか記載の形
質転換体微生物を培地に培養して、培養物から小麦胚芽
凝集素を採取することを特徴とする小麦胚芽凝集素の製
造法。 (10) 配列番号2のヌクレオチド配列で表わされる
小麦胚芽凝集素前駆体をコードする遺伝子。 (11) 上記(10)記載の小麦胚芽凝集素前駆体を
コードする遺伝子の5’端に分泌に必要なシグナルペプ
チドをコードするDNA領域を、また3’端に翻訳終止
信号TGATAAを、それぞれ有する小麦胚芽凝集素前
駆体をコードする遺伝子。 (12) 上記(10)記載の小麦胚芽凝集素前駆体を
コードする遺伝子の5’端に分泌に必要なシグナルペプ
チドをコードするDNA領域を、また3’端に翻訳終止
信号TGATAAを、それぞれ有する小麦胚芽凝集素前
駆体をコードする遺伝子を含む組換えプラスミドDN
A。 (13) 発現プロモーターが酵母プロモーターであ
り、かつ、シグナルペプチドをコードする領域が該酵母
プロモーターの下流側で、かつ小麦胚芽凝集素遺伝子の
上流にあり、いずれもこれらと解読枠が一致しているこ
とを特徴とする上記(12)記載の組換えプラスミドD
NA。 (14) 宿主細胞を上記(12)または上記(14)
記載の小麦胚芽凝集素遺伝子を含む組換えプラスミドD
NAで形質転換した形質転換体微生物。 (15) 宿主細胞が酵母である上記(14)記載の形
質転換体微生物。 (16) 酵母が、サッカロミセス属に属する酵母株、
あるいは液胞局在性蛋白質を細胞外に分泌する突然変異
を有するサッカロミセス属に属する酵母変異株であるこ
とを特徴とする上記(15)記載の形質転換体微生物。 (17) 酵母変異株が、KS-58-2Ddelであることを特
徴とする上記(16)記載の形質転換体微生物。 (18) 上記(14)乃至上記(17)のいずれか記
載の形質転換体微生物を培地に培養して、培養物から小
麦胚芽凝集素を採取することを特徴とする小麦胚芽凝集
素の製造法。
【0007】以下、本発明を詳細に説明する。合成WG
A遺伝子を用いて組換えDNA技術により、WGAを製
造する方法は、基本的には下記の工程よりなる。 1)遺伝子の設計 2)遺伝子の化学合成と適当な発現用ベクターへの遺伝
子の組み込み 3)得られた組換えプラスミドによる適当な宿主の形質
転換と形質転換体の培養によるWGA蛋白質の産生およ
び回収 ところで、一般に遺伝子工学の手法により有用蛋白質を
生産する際、細胞内に蓄積させた場合には、細胞を回収
し、これを破砕した後、ここから目的の蛋白質を分離・
精製する必要がある。しかし、細胞内には多量の夾雑蛋
白質が存在するため、分離・精製がきわめて困難とな
る。さらに、酵母細胞を使用する時には、酵母細胞が強
固な細胞壁をもっているため、細胞を効率よく破砕する
ことも必須となる。したがって、組換えDNA技術を利
用して蛋白質を生産させる際も、蛋白質を細胞外に分泌
させる方法がきわめて有効である。しかし、蛋白質が効
率よく分泌されるか否かは蛋白質の性状や特性に大きく
依存するため、その条件設定は個々の蛋白質ごとに実験
的に設定する必要がある。
【0008】WGA蛋白質は植物体中では細胞内の液胞
またはプロテインボディーといわれるオルガネラに局在
している[M. A. Mansfield et al., Planta, Vol. 17
3, p.482-489 (1988) ]。このプロテインボディーは液
胞が断片化した構造体と推定されることから、植物体内
でこの蛋白質は小胞体(ER)の膜上で生合成された
後、細胞内の分泌経路によりERからゴルジ体まで輸送
され、その後液胞またはプロテインボディーに輸送され
るものと考えられている[N. V. Raikhel et al., Cur
r. Top. Plant. Biochem. Physiol., Vol. 7, p. 83-89
(1988)]。したがって、酵母細胞でWGA遺伝子を発
現させた場合も、通常は、植物細胞と同様、酵母の液胞
またはこれに相当するオルガネラに輸送されてしまうと
推定される。しかし、一方、酵母細胞では、本来液胞に
局在しているカルボキシペプチダーゼY(CPY)蛋白
質で、この遺伝子を多コピープラスミド上で高発現させ
ると細胞外に分泌されることが報告されている[T. H.
Stevens et al., J. Biol. Chem., Vol. 102, p.1551-1
557 (1986)]。この理由は、ゴルジ体から液胞への輸送
選別に関与している細胞内成分の量に限度があり、CP
Y蛋白質の生産量がこの限度をこえるとゴルジ体から液
胞への選別ができなくなり、分泌顆粒に輸送されて最終
的には細胞外に分泌してしまうためであると考えられて
いる[T. H. Stevens et al., J. Biol. Chem., Vol. 1
02, p.1551-1557 (1986)]。このため、本来液胞に輸送
されるWGA蛋白質についても、高発現プロモーターの
支配下で発現させるか、あるいはゴルジ体から液胞への
輸送選別に欠損変異をもつ酵母の変異株を使用すること
により、WGA蛋白質を酵母の細胞外に分泌させること
が可能であろうと考えた。
【0009】WGA蛋白質には3〜4種類の同族体(ア
イソマー)が存在するが、このうち3種類(WGAI 、
II、III )については、そのアミノ酸配列およびc−D
NAの塩基配列が報告されている。このうち、WGAII
はX線結晶解析によりその立体構造が詳細に解析されて
いるうえ、WGAII蛋白質とオリゴ糖との複合体の立体
構造も解析されており、糖鎖との結合様式についても多
くの情報が蓄積されている。そこで酵母を宿主としてW
GA蛋白質の分泌発現を検討するための1具体例として
は、WGAII蛋白質について検討した。具体的には、報
告されているWGAII蛋白質のアミノ酸配列をもとにし
て、しかしアミノ酸に対応するDNA上のコドンとし
て、小麦のコドンではなく、酵母の頻用コドンを用いて
WGAII遺伝子を設計・化学合成した。しかし、本発明
はこのWGAII の製造法に限定されるものではなく、
WGAII遺伝子に公知の方法により部位特異的変異を導
入したWGAI 遺伝子またはWGAIII 遺伝子を作成
し、これを酵母で分泌発現する際にも、また上記の遺伝
子を酵母以外の他の適当な宿主細胞で分泌発現する際に
も適用されるべきものである。
【0010】(1)遺伝子の設計 WGAII遺伝子については、c−DNAの塩基配列が報
告されており[Smithand Raikel, Plant Molecular Bio
logy, Vol.13, p.601-603 (1989) ]、それより以前に
報告されていたアミノ酸配列[(Wright and Olafsdott
ir, J. Biol. Chem, Vol.261, p.7191-7195 (1986)]に
は、3カ所で誤りがあったことが指摘されている(10
9番目でSer からPhe に、134番目でGly からLys
に、そして150番目でGly からTrp に)。そこでWG
AII遺伝子の設計には、c−DNA配列から推定される
アミノ酸配列を利用した。しかし、WGAII蛋白質から
決定されたアミノ酸配列とc−DNAから推定されたア
ミノ酸配列とはそれでもまだ37番目で異なっており、
前者の方法ではAsp 、後者の方法ではAsn と報告されて
いる。蛋白質レベルでのアミノ酸配列の分析結果の解釈
としては、Asn からAsp への脱アミノ化が生体内でおこ
っている可能性もあるが、一般的には、アミノ酸配列分
析に適したペプチド断片を蛋白質から調製する際、ある
いはペプチド断片の分離・精製の操作の過程で脱アミノ
化したものと考えられる。したがって、本発明における
1具体例としては、成熟型WGAII蛋白質の37番目ア
ミノ酸残基として、c−DNAから推定されるAsn を採
用した。
【0011】しかし、このアミノ酸配列に相当するWG
AII遺伝子をデザインするにあたっては、遺伝子コドン
の縮重により複数のコドン選択が可能である。特に小麦
など植物で頻用されているコドン[Smith and Raikel,
Plant Molecular Biology, Vol.13, p.601-603 (1989)
]と酵母で頻用されるコドン[Bennetzen and Hall,J.
Biol. Chem., Vol. 257, p. 3026-3031 (1982) ]は必
ずしも一致していない。そこで、WGAII遺伝子の設計
にあたっては、i )合成遺伝子の発現に適当と思われる
酵母において最も許容されるコドンを使用する。ii)遺
伝子中に特定の制限酵素認識部位を設けて、サブクロー
ニングしやすくする。iii )同一鎖上または相補鎖上に
自己相補的あるいは正しい配列以外のものと相補的であ
るような配列を極力さける、などに配慮した。このよう
な諸条件を満足する1具体例としては、前記本発明の構
成(1)または(10)に記載したものである。本発明
は第一に上記のDNA配列で示されるWGA発現のため
の合成遺伝子を有するDNAに関するが、本発明DNA
としては上記合成遺伝子の他、その5’末端に翻訳開始
コドンや分泌のためのシグナルペプチドをコードするD
NA配列を連結したもの、あるいは、その3’末端に翻
訳停止コドンを連結したもの、あるいはこの両者を連結
したもの、そしてこれらの5’末端と3’末端にそれぞ
れ制限酵素切断部位をもつものを含み、発現のための便
宜や遺伝子組換え等の操作の便宜を図ることができる。
またこの他、これらDNAを組み込んだプラスミドも本
発明に入るものである。
【0012】小麦胚芽中では、WGA蛋白質は成熟型W
GA蛋白質領域の他に、そのアミノ末端(N末端)に翻
訳開始に必要なMet を含めて28アミノ酸残基からなる
プレペプチドをもっているほか、そのカルボキシル末端
(C末端)には15アミノ酸残基からなる余計なプロペ
プチドをもっており、いわゆるプレプロ型の前駆体WG
A蛋白質として生合成されることが、そのc−DNA配
列の分析から推定されている[N. V. Raikhel and T.
A. Wilkins, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 84,
p. 6745-6749 (1987) および Smith and Raikel, Plant
Molecular Biology, Vol.13, p.601-603 (1989)]。
【0013】したがって、この前駆体WGA(プレプロ
WGA)蛋白質に対応するDNA配列をそのまま用いて
タバコなどの植物細胞で発現させることも可能である
が、このままでは発現されたWGA蛋白質は液胞に輸送
されてしまう[T. A. Wilkinset al., The Plant Cell,
Vol. 2., p. 301-313 (1990)]。したがって、植物以
外の細胞などを利用して、しかも分泌発現を成功させる
何等かの方法を開発する必要がある。しかし、このWG
A本来の分泌シグナルは植物以外の細胞で正しく機能す
るかどうか疑問である。例えば、ヒト・インターフェロ
ンの酵母での分泌では、23アミノ酸残基からなるヒト
由来の分泌シグナルはヘテロなシグナル切断点を示し、
酵母での機能としては不完全なものである[R. A. Hitz
eman et al., Science, Vol. 219, p. 620 (1983) ]。
一般に酵母の分泌シグナルの長さは15〜20アミノ酸
残基からなるものが多く、WGAのもつシグナルの長さ
(28アミノ酸残基)はこれより長い。一方、酵母で異
種蛋白質の分泌に有効な分泌シグナルとしては、酵母本
来のものだけでなく、異種生物由来のシグナルや、疎水
性のLeu クラスターを含み15アミノ酸からなる人工の
シグナルも、効率よく機能することが報告されている
[Y. Yamamoto et al., Biochem. Biophys. Res.Commu
n. Vol. 149, p. 431 (1987)]。したがって、酵母によ
るWGA蛋白質の分泌発現を検討する際にも、酵母で機
能する上記の種々の分泌シグナルが利用可能である。こ
の具体的な1例としては、上記の人工シグナルペプチド
をコードするDNA断片を化学合成して使用した結果を
後に実施例で示す。なお、このシグナルペプチド(以下
プレ領域という)に対応するDNAを連結するWGA遺
伝子としては、C末端プロ領域を持たない成熟体型WG
A遺伝子のほか、C末端プロ領域を持つ前駆体型WGA
遺伝子も使用することができる。そこで、プレWGA遺
伝子(分泌シグナル+成熟体型WGAをコードするDN
A領域)およびプレプロWGA遺伝子(分泌シグナル+
前駆体型WGAをコードするDNA領域)を各々作成し
て、その発現について検討した。
【0014】なお、これらのWGA遺伝子を含むDNA
を発現させる宿主細胞としては種々のものが使用可能で
あるが、酵母を宿主とする場合の1具体例は、酵母の解
糖系遺伝子の一つで発現効率の高いENO1プロモータ
ーを利用するものである[K.Ichikawa et al., Agric.
Biol. Chem., Vol. 53, p. 1445-1447 (1989)]。一
方、酵母で異種蛋白質を分泌発現するための遺伝子とし
ては酵母のα- ファクターのプロモーターおよびプレプ
ロ領域がよく利用されている[例えばBrake et al., Pr
oc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 81, p. 4642 (1984)
、Bitter et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol.
81, p. 5330 (1984)など]。そこで本発明における他の
具体例としては、酵母のα- ファクター遺伝子のプロモ
ーターおよびプレプロ領域をもつDNA領域の下流に、
上記の成熟体型WGA遺伝子またはC末端プロ領域をも
つ前駆体型WGA遺伝子を連結した分泌発現用遺伝子を
作成したものを示す。しかし、これら種々の分泌発現用
遺伝子が酵母内で正しく発現し、培地中に分泌された組
換えWGA蛋白質が、小麦胚芽から単離されたWGAII
蛋白質と同一のアミノ酸配列や糖鎖の結合活性をもつか
否かは容易に予測できない。また、成熟型WGA蛋白質
のC末端領域をもつプロWGA蛋白質が酵母の分泌過程
で正しく切断されるか否かは興味深い点である。しか
し、後述の実施例でも明かなようにWGA前駆体蛋白質
は酵母によってシグナルペプチドだけでなく、C末端の
プロ領域も正しく切断され、小麦胚芽から単離されたW
GAII蛋白質と同一の分子量をもつほか、糖鎖の結合比
活性も小麦胚芽由来のWGAIIと同一であることが本発
明により明かとなった。
【0015】(2)遺伝子の合成と発現用プラスミドの
構築 上記のWGA遺伝子は例えば約15〜45個の核酸塩基
鎖長をもつ複数個のオリゴデオキシヌクレオチドを合成
し、それらを連結することによって製造することができ
る。例えば、配列番号3に示したような32個のオリゴ
ヌクレオチド・フラグメントに分割して、たとえば[Mu
raki et al, Agric. Biol. Chem., Vol.50, p. 713-723
(1986)]にしたがって合成することができるし、オリ
ゴヌクレオチド・フラグメントは既知の方法でハイブリ
ダイズさせ、酵素的に連結することができる[例えばAg
arwal et al, Nature, Vol.227, p.27-34 (1970) ]。
なお、このフラグメントへの分割法は上記のものに限定
される必要はなく、前記の自己会合が回避できることな
どに留意すれば、種々の分割が可能である。次の段階と
しては、このようにして得られた合成遺伝子またはその
断片を量的に増やすために、まず適当なベクターに組み
込みサブクローニングすることであるが、以下では、そ
の1具体例として、成熟体型WGA遺伝子と前駆体型W
GA遺伝子に分けて上記のステップを詳しく説明する。
【0016】2−1 成熟体型WGA遺伝子の合成とク
ローニング 171個のアミノ酸からなる成熟型WGA蛋白質はアミ
ノ酸配列の解析や立体構造の解析結果などから、空間的
にはっきりした4個のドメイン(A,B,C,D)から
成り、それぞれのドメインはお互いにきわめて相同性の
高い配列をもつ41個の長さのアミノ酸で構成されるこ
とがわかっている[C. S. Wright, J. Mol. Biol., Vo
l. 194, p. 501-529 (1987)]。したがって、遺伝子の
設計および合成にあたっては、ヌクレオチドフラグメン
トが正しい配列以外のものとハイブリダイズするのをさ
けるため、WGA遺伝子の前半部分については、オリゴ
ヌクレオチド・ブロックが上記のドメインAおよびBと
一致するように分割した。しかし、この分割法ではブロ
ックのDNA断片を組み上げる際、酵素的に連結するス
テップが多くなり、結果的に連結反応の最終産物の収率
が低下して、その後のサブクローニングに成功する頻度
が低下することが判明した。そこで、WGA遺伝子の後
半部分については、上記のドメインCおよびDに相当す
るDNAをまとめて1つのブロックとしてDNA断片の
組み上げを行った。なお、ドメインAに相当するAブロ
ックについては、7番目(Gly )と8番目(Ser )にま
たがる部位に制限酵素BamHI 部位を設け、このサイトか
ら下流をとりあえず作成し、これよりN末端側について
は、後述の分泌シグナルを作成するときに同時に作成
し、BamHI 部位で翻訳解読枠が一致するように設計し
た。
【0017】上記のように設計した遺伝子を合成するに
は、+,−両鎖のそれぞれについて、これらをいくつか
のフラグメントに分けて、それらを化学的に合成し、各
々のフラグメントを連結する方法によれば良い。各鎖は
15〜45塩基からなり各々が少なくとも6塩基ずつ重
なる様に32個程度のフラグメントに分けるのが好まし
い。以上の操作の概要は図1に要約して示した。ドメイ
ンAに相当するAブロックの組み上げについては図1A
に示したが、このAドメインの最終的な酵素的連結産物
は制限酵素SpeIで消化後、サブクローニング用のベクタ
ーであるPhagescript のBamHI-XbaI断片と連結してクロ
ーニングした。このクローン化DNAからBamHI,SacI二
重消化によりWGA遺伝子断片を含むDNAを回収した
のち、これをさらに制限酵素MaeIで消化して得たBamHI-
MaeI断片を、BブロックおよびC+Dブロックとの連結
用DNA断片とした。また、ドメインBに相当するBブ
ロックについても、同様に、最終的な酵素的連結産物を
制限酵素SpeI,ApaI で二重消化後、Bluscript KS(+) の
SpeI-ApaI 部位にサブクローニングした。このクローン
化DNAからApaI,SacI 消化によりWGA遺伝子断片を
含むDNAを回収したのち、これをさらに制限酵素MaeI
で消化して得たMaeI-ApaI 断片を各ブロック間の連結用
DNA断片とした(図1B参照)。
【0018】一方、ドメインCとDに相当するC+Dブ
ロックについては、上述のようにオリゴヌクレオチドフ
ラグメントの鎖長をAやBドメインに相当するブロック
の場合の2〜3倍としたため、酵素的連結の回数は上記
のAまたはBブロックを作成するときと殆ど同じである
にも拘らず、最終連結産物の鎖長はC+Dに相当する約
2倍の長さになっている。このC+Dブロックはその
5’末端および3’末端にそれぞれApaI部位、Hind III
部位をもつため、Phagescript のApaI-Hind III部位に
サブクローニングしたのち、これをApaI,Hind III で消
化してWGA遺伝子断片を含むDNAを回収して各ブロ
ック間の連結用DNA断片とした(図1C参照)。
【0019】最後に、上記で調製したA、B、C+Dの
各DNA断片を図1Dに示した順序で連結し、これをプ
ラスミドベクターpUC18 のBamHI-Hind III部位にクロー
ン化した。この様にして作成した成熟型WGA遺伝子の
塩基配列が設計通りのものであることは、このDNA断
片の+鎖、ー鎖の両鎖の全領域について、公知のDNA
塩基配列決定法[例えば、F. Sanger et al., Proc. Na
tl. Acad. Sci. USA,Vol. 74, p. 5463 (1977)によるdi
deoxy nucleotide法]により塩基配列を分析して、確認
した。
【0020】2−2 分泌シグナルをもつWGA(プレ
WGA)遺伝子の合成と発現用ベクターへの導入 前述の様に、WGA蛋白質は小麦中では成熟型WGAの
N−末端およびC−末端にそれぞれ分泌シグナルあるい
は15アミノ酸からなる余分なペプチド(CT)をもっ
たプレプロ体として合成される。このうち、分泌シグナ
ルは蛋白質が生合成されるとともにER内腔に運ばれ、
その後、分泌経路を経て細胞外に輸送されるために必須
の機能をもっている。したがって、酵母でWGA蛋白質
を分泌発現させる際にもこの分泌シグナルを成熟型WG
AのN−末端側に付加する必要がある。分泌シグナルと
しては、勿論、インベルターゼや酸性フォスファターゼ
など酵母本来のシグナルも利用できるし、ニワトリ・リ
ゾチームのシグナルといった酵母以外(異種)のシグナ
ルも使用できる。また、分泌シグナルの構造とER膜の
透過性との解析結果から提案されている疎水性のアミノ
酸クラスターをもつ人工分泌シグナル[Y. Yamamoto et
al., Biochem. Biophys. Res. Commun. Vol. 149, p.
431 (1987)]も使用できる。ここでは、これらの1具体
例として上記の人工分泌シグナルを使用したものについ
て以下に説明するが、本発明はこれに限定されるもので
はない。
【0021】人工分泌シグナルに相当するDNAの塩基
配列およびこれを分割したオリゴヌクレオチド断片の構
成を配列番号3の配列の最上部に示した。なお、この配
列で、シグナルに相当する部分(-15 〜-1のアミノ酸残
基に相当する部分)の5’側の塩基配列は酵母のENO
1遺伝子の転写開始点から翻訳開始点までの配列と同一
であり、かつ、この5’末端には制限酵素SalI部位を、
また、この3’側には成熟型WGA蛋白質のN末端側7
〜8アミノ酸に相当する領域を含み、かつその末端には
制限酵素BamHI部位をもっている(配列番号3の配列のS
1〜S4に相当する領域を参照)。なお、これらのオリゴ
ヌクレオチド断片の化学合成と酵素的連結は公知の方法
によって行った。一方、上記2ー1項でクローン化した
WGA遺伝子は、成熟型WGAのN末端側7〜8アミノ
酸を欠失しており、その5’末端にBamHI 部位を、また
その3’末端には171番目のアミノ酸および2ケの翻
訳終止コドンの後にHindIII 部位をもっている。そこで
シグナル部分とWGA遺伝子部分の両者をBamHI 部位で
連結した後、プラスミドベクターpNJ1053 [このプラス
ミドベクターはプラスミドpESH(K.Ichikawa et al.,Agr
i. Biol. Chem. Vol.53, p.1445 〜1447(1989)) のHLY
遺伝子部分をプラスミドpBR322のSalI-HindIII断片と置
き換えたもの]のSalI-HindIII部位にクローン化した
(図2A)。なお、このプラスミドベクターpNJ1053 の
SalI部位は酵母のENOIプロモーターの転写開始点の3’
側に存在するため、この部位に翻訳開始コドンATG から
始まる遺伝子を挿入すれば、その転写と翻訳が効率的に
おこることが確認されている[K. Ichikawa et al., Ag
ric. Biol. Chem., Vol. 53, p.1445-1447 (1989) ]。
このプラスミドをpSW(SIGNAL-WGAの略)と命名した
(図2A参照)。なお、このようにして作成したシグナ
ルをもつプレWGA遺伝子のシグナル配列および連結部
分の塩基配列が設計通りであることは、前述のように、
公知の塩基配列決定法により、確認した。
【0022】2−3 分泌シグナルをもつ前駆体型WG
A(プレプロWGA)遺伝子の合成と発現用ベクターへ
の導入 次に、上記の分泌シグナルを持つ成熟型WGA遺伝子の
3’末端に小麦胚芽で確認されている15アミノ酸残基
からなるC末端の延長ペプチドを付加したプレプロWG
A遺伝子を合成した。このC末端プロ領域(CTペプチ
ド)の小麦胚芽中での機能は不明であるが、WGA蛋白
質が適切な立体構造に組み上がるために必要であるかも
知れないし、また分泌経路を効率よく輸送されるのに必
要なのかも知れない。いずれにしてもこのWGA蛋白質
前駆体が酵母細胞内で分泌効率の向上に機能するかどう
か、また、このWGA前駆体が酵母で正しく認識されて
成熟型WGAに変換されるか否かは興味深い点である。
【0023】配列番号4には設計したCTペプチドをコ
ードするDNAの塩基配列と合成オリゴヌクレオチド断
片の構成を示した。この領域の5’末端は制限酵素SmaI
/AvaI 部位をもっており、成熟型WGA遺伝子をAvaI切
断したものと連結できるように設計してある。CT1〜
CT4で示した4つの断片を前述の方法によりハイブリ
ダイズさせたのち、酵素的に連結した。この連結生成物
はその5’末端にAvaI部位を、またその3’末端にはHi
nd III部位をもっているため、先にクローン化したプラ
スミドp SW上のWGA遺伝子を含むSalI-AvaI 断片と
AvaI部位で連結した後、これをM13mp19 ベクターのSalI
-Hind III 部位に挿入した。このクローン化DNA断片
でシグナルを含む成熟型WGA遺伝子とCT部分とが正
しく連結していることはその塩基配列を上記の公知の方
法により調べることにより、確認した。このようにして
作成した上記のSalI-Hind III 断片は分泌シグナルをも
つ成熟型WGA遺伝子の3’末端にCTに相当するDN
Aが連結したプレプロWGA遺伝子の構造をもつもので
ある。この遺伝子を発現させるためのプラスミドとして
は上記のSalI-Hind III 断片を酵母ENO1プロモータ
ーをもつプラスミドpNJ1053 のSalI-Hind III 部位に挿
入することにより作成した(図2A参照)。このプラス
ミドはpSWC(SIGNAL-WGA-CT の略)と命名した。一
方、酵母のα- ファクター遺伝子のプロモーターとプレ
プロ領域を利用する分泌発現プラスミド〔pPW(pMFα-pr
epro-WGAの略),pPWC(pMFα-prepro-WGA-CTの略) 〕の構
築法については、図2Bに詳しくその手順を示した。な
お、この構築法の詳細については、実施例7を参照され
たい。
【0024】(3)形質転換と酵母によるWGA蛋白質
の分泌生産 前項で記述した合成DNA断片の「クローン化」は、実
際には得られた合成遺伝子を含むベクターを大腸菌など
の宿主を形質転換することにより達成される。形質転換
の方法それ自体は公知であり、宿主として大腸菌を用い
る場合は、例えばCohen らの方法[S.N. Cohen et. a
l., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol.69, p.2110 (19
72) ]により、又、宿主として酵母を用いる場合は、例
えば、Hinnenらの方法[A. Hinnen et. al., Proc. Nat
l. Acad. Sci. USA, Vol. 75, p.1927 (1978) ]やIto
らの方法[Ito et. al., J. Bacteriol., Vol. 153, p.
163-168 (1983) ]によって、形質転換が可能である。
宿主としては、大腸菌では例えば、E. coli C600 [Ne
lsonら、Virology, Vol. 108, p.338-350 (1981)]であ
り、酵母での1具体例は、S. cerevisiae KK4 [Nogi e
t. al., Mol. Gen. Genet., Vol. 195, p.29-34 (198
4)]やヒト・リゾチームを多量菌体外に分泌するssl1変
異をもつS. cerevisiae であるKS-58-2D [Suzuki et.
al., Vol. 219, p.58-64 (1989)]である。なお、ヒト
・リゾチームを高分泌する酵母変異株の取得法とそれを
用いたヒト・リゾチームの製造法については、前述の文
献のほか、本発明者の一部等により、特開昭64-47377号
公報にもその詳細が開示されている。また、WGA遺伝
子を組み込んだ組換えプラスミドによる形質転換は上記
の宿主に限定されるものではなく、公知の種々のS. cer
evisiae 誘導体(例えば、Yeast Genetic Stock Cent
er カタログ参照)を使用することができる。これらの
ものはYeast Genetic Stock Center および公認の微生
物機関、例えば American Type Culture Collection
に寄託されておりそこから分譲が可能である。
【0025】なお、発現の宿主としては、酵母だけでな
く、カビなどの微生物がひろく利用できるほか、動物細
胞や昆虫細胞およびこれらで増殖複製するウィルスなど
を利用することもできる。また、発現用のベクターとし
ては各々の宿主に適した発現用プロモーターの下流に、
プレWGA遺伝子またはプレプロWGA遺伝子を挿入す
るためのSalI切断部位を有するプラスミドが望ましい。
酵母における形質転換体の1具体例は、野生型S.cerevi
siae KK4 または ssl1変異をもつKS-58-2Ddelを上記の
プラスミドpSWまたはpSWCで形質転換させて得た
形質転換体、または同じ酵母をプラスミドpPW または p
PWC で形質転換した形質転換体であって、本発明ではこ
れをそれぞれ、S. cerevisiae KK4 (pSW) または KS-58
-2Ddel (pSW) 、S. cerevisiae KK4 (pSWC) または KS
-58-2Ddel (pSWC) 、S. cerevisiae KK4 (pPW) または
KS-58-2Ddel(pPW)、S. cerevisiae KK4 (pPWC) または
KS-58-2Ddel(pPWC) と命名した。
【0026】このようにして得た形質転換体を分子生物
学および発酵学の分野で公知の常法にしたがって培養す
ればWGA蛋白質が分泌生産される。酵母を使用する場
合の培地としては、例えばBurkholder最少培地[Proc.
Natl. Acad. Sci., USA, Vol.77, p.4505 (1980)]が挙
げられる。培養は通常20℃〜40℃,好ましくは25
℃〜37℃で、24〜144時間、好ましくは36〜1
20時間行い、必要に応じて通気や攪拌を行ったり、炭
素源を逐次添加して補給することもできる。培養終了
後、それ自体は公知の方法で菌体と上清とを分離する。
このようにして菌体内あるいは菌体外に産生されたWG
A蛋白質は通常の蛋白質精製法、例えば、塩析、等電点
沈澱、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル瀘過クロマ
トグラフィー、高速クロマトグラフィー(HPLC、FPLC)
などにしたがって精製でき、目的のWGA蛋白質を得る
ことができる。またこのようにして得たWGA蛋白質の
生物活性、例えば糖鎖の特異的な結合活性はWGAが特
異的に結合することが公知であるN−アセチルグルコサ
ミンを含む糖蛋白質に対する結合活性を調べることによ
り確認することができる。具体的には、例えばオボアル
ブミン蛋白質をマイクロタイタープレート上に吸着さ
せ、これに結合するWGA蛋白質を市販の抗WGA抗体
を用いて、サンドイッチELISA法[渋谷直人、バイ
オサイエンスとインダストリー、47巻、p. 1301-1302
(1989) ]により検出することができる。また、WGA
が細胞凝集活性をもつことはヒトまたはウマの赤血球が
WGA蛋白質の存在下で凝集することを肉眼で観察する
ことにより確認することができる。以下、実施例により
本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限
定されるものではない。
【0027】
【発明の効果】本発明において、WGAの生産に遺伝子
工学的手法を採用することにより純度の高いWGAを安
定にかつ多量に製造することができた。
【0028】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
る。ただし、これら実施例により本発明の技術的範囲を
限定するものではない。なお、以下で使用する試薬のう
ち制限酵素については宝酒造社製または東洋紡績社製の
ものを用いた。
【0029】実施例1 オリゴヌクレオチドの合成:S
1〜S4、1〜32、およびCT1〜CT4に相当する
各々のオリゴヌクレオチドフラグメントは、固相合成法
により、Applied Biosystems社製のDNA合成機(mode
l 391 )を用いて合成した。ホスホアミダイト試薬等の
合成用試薬はすべてApplied Biosystems社製のものを用
い、付属のオペレーターズマニュアルにしたがって使用
した。合成したオリゴヌクレオチドは、核酸塩基と5’
水酸基が保護され、リン酸保護基が脱保護された状態で
シリカゲル担体から切り出し、回収した。これらの保護
デオキシオリゴヌクレオチド 1mlに、28%アンモニア水
3mlを加え、密栓容器中、60℃、8〜16時間処理す
ることにより、5’末端のジメトキシトリチル基以外は
すべて脱保護されたオリゴヌクレオチドを得た。溶液中
のアンモニアをN2ガスを吹き付けて除去した後、Mille
x-GS フィルター(ポアサイズ 0.22μm、Millipore社
製)により瀘過し、C18逆相カラム(Cosmosil 5 C18,
(株)半井化学製)を用いて高速液体クロマトグラフ
ィーにより分離・精製し、最も遅く溶出される画分を回
収した。この画分を 2mlに濃縮し、等量の酢酸を加え
て、30分間放置し、ジメトキシトリチル基を除去し
た。酢酸をエーテルによって抽出した後、上記の方法に
よりC18 逆相クロマトグラフィーで精製し、 4〜13 O
D260 単位の完全に脱保護されたオリゴヌクレオチド約
148 〜481 μg を得た。
【0030】実施例2 オリゴヌクレオチドのハイブリ
ッド形成とその酵素的連結:成熟体WGAII遺伝子2本
鎖のA、B、C+Dブロックを作成するための酵素的連
結法の概略は図1A〜図1Cに示してある。ここでは、
その詳細を記載する。5’末端が制限酵素サイトとなっ
ているNo.1, 18, 19, 32を除き、オリゴヌクレオチド各
40μgを全液量が100 μl で、しかも50mM Tris-HCl (p
H 7.5), 10mMMgCl2, 15 mM DTT, 0.4mM Na2EDTA, 1mM A
TPの組成となるように調製し、T4ポリヌクレオチドキ
ナーゼ (EC 2.7.1.78)(16 unit/ μl, 1μl)を加え、3
7℃で、1時間インキュベートした。反応液を飽和フェ
ノールで洗い、3M 酢酸ナトリウム(pH 5.2)とエタノ
ールを加え、−80℃で10分間保ち、オリゴマーを沈
澱させ、20mM Tris-HCl (pH7.5), 10mM MgCl2 を含む10
0 μl の緩衝液を加えた。5’- 位をリン酸化したn番
目とn+1 番目(n:奇数)のオリゴマーを等モル混合
し、65℃で10分間、37℃で20分間、インキュベ
ートした後、室温で10分間放置してアニーリングし、
2本鎖を形成させた。図1A〜図1Cの連結スキームに
したがって、隣接する2本鎖を混合し、全液量が60μl
で、しかも20mM Tris-HCl (pH7.5), 10mM MgCl2, 1mM
ATP, 10mM DTT になるように調製し、T4 DNAリガー
ゼ (EC 6.5.1.1)( 5 unit/μl, 2μl)を加え、20℃で
30分間インキュベートして連結した。各連結段階で
は、反応液の一部分をアクリルアミドゲル電気泳動に付
し、反応の完結と副反応の有無を確認した。C+Dブロ
ックについては、最終の連結段階で副反応による多数の
バンドが認められたため、8% ポリアクリルアミドゲ
ル電気泳動を行い、目的とするバンドを含むゲルを切り
出し、ゲルを細片化したのち、遠心限外瀘過(Millipor
e 社製、ウルトラフリーC3HV)にて溶出した。
【0031】最終ステップの反応を終えたAブロック断
片とゲルから溶出回収したC+Dブロック断片は、フェ
ノールで洗い、3M 酢酸ナトリウム(pH 5.2 )とエタ
ノールを加え、ー80℃で10分間保ち、沈澱させた
後、前述と同様にしてT4 DNAキナーゼで5’末端を
リン酸化した。サブクローニングのために、Aブロック
とBブロックの末端部分は、制限酵素SpeIおよびApaIで
切り落とし、粘着末端を露出させた。具体的には、Bブ
ロックについてはDNA断片2.18 μgを、10mM Tris-HC
l(pH 7.5), 10mM MgCl2, 1 mM DTT および18単位のApaI
を含む300 μl の反応液中で37℃で、1時間反応させ
た後、26.1μl の1 M NaCl と 2μl の SpeI (10 unit
/ μl)を加え、再び、37℃で1時間反応させた。ま
た、Aブロックについては、DNA断片 3μg を、10 m
M Tris-HCl(pH7.5), 50 mM NaCl, 10 mM MgCl2, 1 mM D
TT および10単位のSpeIを含む 50 μl の反応液中で、
37℃、1時間反応させた。このようにして制限酵素処
理をしたAブロックとBブロックは、フェノールで洗っ
た後、エタノール沈澱を行った。
【0032】実施例3 各ブロック断片のサブクローニ
ング ファージスクリプト(Phagescript )SK(STRATAGENE 社
製; 東洋紡:Code No.SC221201) 10μg に50ユニットの
ApaIを加え、50μl の反応液 (10mM Tris-HCl(pH7.5),
10 mM MgCl2, 1mM DTT)中で37℃、1時間作用させた
後、6.95 μlの1M KCl と 5μl の Hind III (10 unit/
μl)を加え、さらに1時間反応させた。フェノールで
除蛋白、冷エタノールで沈澱させた後、0.7% アガロー
スゲル電気泳動を行い、目的のバンドを含むゲル部分を
切り出して、透析チューブ内に封入し、泳動用緩衝液内
に沈め、電気的に溶出した。これを、フェノールで処理
し、冷エタノールで沈澱させた。該DNAに実施例2で
調製したC+DブロックDNA断片 19.2 μg を混合
し、100 μl の連結反応液 (20 mM Tris-HCl (pH7.
5), 10 mM MgCl2, 1 mM DTT,1 mM ATP,T4 DNAリガ
ーゼ、12.5ユニット)中、16℃、1時間反応させて、
DNAを連結した。このうち、半量を用い、大腸菌XL1-
Blue株(STRATAGENE 社製; 東洋紡:Code No.SC212301)
にCohen らの方法(S. N. Cohen et al., Proc. Natl.
Acad. Sci. USA, Vol. 69, p. 2110 (1972))にしたがっ
て、形質転換した。プレート上の指標大腸菌のプラーク
が、DNA断片の挿入のないものではX-Gal の分解によ
り青色を呈するのに対し、DNA断片の挿入のあるもの
では無色になることを利用して目的の形質転換体を選択
し、この形質転換体の中から、アルカリ抽出法(H. C.
Birnboim and J. Doly, Nucl. Acids Res., Vol. 7, p.
1513 (1979))によってプラスミドを単離し、分子量お
よび制限酵素による分解パターンを調べ、ファージスク
リプトSK のApaI-Hind III 部位にC+Dブロックの挿
入されたプラスミドを得た(図1C)。
【0033】同様の方法によって、AブロックとBブロ
ックのDNA断片は、ファージスクリプトSKのBamHI-Xb
aI部位、ブルースクリプト(Bluscript )KS(+)(STRATA
GENE社製; 東洋紡:Code No.SC212207) のSpeI-ApaI 部
位に各々挿入した。AブロックDNA断片は両端にBamH
I サイトとSpeIサイトを持つことから、最初はファージ
スクリプトSKのマルチクローニングサイトのBamHI-SpeI
部位に導入することを試みたが、成功しなかった。BamH
I とSpeI部位が隣接しているため、BamHI とSpeIの両制
限酵素で切断されなかったためと思われる。そこで、Sp
eI部位と同一の粘着末端をもつXbaI部位を用いて、BamH
I-XbaI部位に挿入した(図1A、図1B参照)。各ブロ
ックDNA断片の塩基配列は、既知のデオキシヌクレオ
チド法 (F. Sanger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U
SA, Vol. 74, p.5463 (1977)) によるDNA塩基配列を
両ストランドの全域について分析することにより、設計
通りであることを確認した。
【0034】実施例4 WGA遺伝子のサブクローニン
グ:C+DブロックDNA断片を導入したファージスク
リプトSK 500μg を、500unitの制限酵素ApaIを含む反
応液 (10 mM Tris-HCl (pH 7.5), 10 mM MgCl2, 1mM DT
T) 1.2ml 中、37℃、2時間反応させた後、86.1μl
の 1 M KCl と 38.5 μl の Hind III(10 unit/μl)
を加え、さらに37℃、一夜反応させた。フェノールに
よる除蛋白、エタノール沈澱の後、8%ポリアクリルア
ミドゲル電気泳動を行い、0.27 Kb のC+DブロックD
NA断片を回収した。AブロックDNA断片に関して
は、基本的にはC+Dブロックと同様であるが、この断
片がファージスクリプトSK のBamHI-XbaI部位に導入さ
れていることから、マルチクローニングサイトのXbaI部
位の外側にあるSacI部位を用いて、一担、Aブロックの
DNA断片を含むBamHI-SacIによる2重消化によって、
DNA断片を切り出した。そしてこの断片をさらに、Sp
eIにより生じる4baseの粘着末端部分と同じ塩基配列を
認識するMaeIにより消化し、BamHI とMaeI部位の両末端
をもつAブロックDNA断片を得た。BブロックDNA
断片に関しても、AブロックDNA断片と連結するため
に、末端に同じMaeIの切り口をもつ必要があることか
ら、BブロックDNA断片を導入したBluescript KS(+)
から、一度、SacI-ApaI による2重消化を行ったのち、
これをさらにMaeIで消化することにより、MaeIとApaIの
両末端をもつBブロックDNA断片を得た。
【0035】このようにして調製したAブロック、Bブ
ロック、C+Dブロックの各DNA断片は図1Dのよう
にして連結した。BブロックとC+DブロックDNA断
片を混合し、T4 DNAリガーゼを含む実施例2に記載
した反応液 350μl 中で、16℃、一夜反応させた。フ
ェノール処理、エタノール沈澱の後、MaeI 30 unitを含
む反応液 (20 mM Tris-HCl (pH8.0), 250 mM NaCl, 6
mM MgCl2, 7 mM β- メルカプトエタノール, 100 μg/
mlBSA) 150 μl 中、45℃、1時間反応させた後、8
%ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行い、0.39 kb の
B+(C+D)ブロックDNA断片を回収した。次に、
AブロックDNA断片とB+(C+D)ブロックDNA
断片とを混合し、上記と同様の方法で連結反応を行い B
amH III とHind IIIによる二重消化をした後、フェノー
ル処理、エタノール沈澱を行い、A+B+(C+D)ブ
ロックDNA断片、即ち、成熟体型WGA遺伝子を作成
した。 一方、pUC18 プラスミド(東洋紡:Code No.PU
C-018) 10 μg を、30 unit のHind IIIを含む反応液
(10mM Tris-HCl (pH 7.5), 10 mM MgCl2, 1 mm DTT, 65
mM KCl) 100μl 中、37℃、一夜反応させ、0.7%アガ
ロースゲル電気泳動により、線状化したプラスミドDN
Aを回収した。この 5μg と上記、成熟体型WGA遺伝
子(A+B+(C+D))45μg とを混ぜ、上記と同様
の方法にて連結反応を行った。該DNAを用い、大腸菌
JM109 株(東洋紡:Code No.DNA-900)にCohen らの方法
にしたがって形質転換した。アンピシリン耐性を指標に
して選択した形質転換体の中から、アルカリ抽出法によ
ってプラスミドDNAを単離し、その分子量および制限
酵素による分解パターンを調べることにより、成熟体型
WGA遺伝子の導入されたプラスミドを取得した。
【0036】実施例5 成熟体型WGA遺伝子分泌発現
用プラスミドの構築:図2Aに構築の概略を示した。具
体的には以下に記す。酵母を用いた異種蛋白質の分泌発
現用に改良した人工シグナル配列(Y. Yamamoto et a
l., Biochem. Biophys. Res. Commun. Vol. 149, p.431
(1987) )をコードするオリゴヌクレオチドS1〜S4
を実施例1に記載した方法にしたがって合成した。これ
らのフラグメントは、実施例2に記載した方法にしたが
って、S2とS3をリン酸化し、アニーニングと連結を
行った後、再び、末端をリン酸化した。一方、実施例4
で作成した成熟体型WGA遺伝子を挿入したpUC18 プラ
スミド200μg を、同じく実施例4で記載した場合と同
様、制限酵素BamHI とHind IIIの2重消化を行った後、
8%ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行い、0.5 kbの
成熟体型WGA遺伝子断片を回収した。シグナル部分
(S1〜S4)のDNA断片と成熟体型WGA遺伝子断
片とを等モル混合し、実施例1に記載した方法にしたが
って、連結した。フェノール処理、エタノール沈澱の
後、40 unitの Hind III を含む反応液(65 mM KCl, 10
mMTri s-HCl (pH 7.5), 10 mM MgCl2, 1 mM DTT ) 10
0μl 中、37℃、1時間反応させ、さらに、9 μl 1M
KCl, 8 μl dH20, 3 μl SalI (15 unit/μl) を加
え、37℃、1時間反応させ、再びフェノール処理、エ
タノール沈澱を行い、分泌シグナルを連結したWGA遺
伝子(SIG-WGA )6μg を得た。
【0037】一方、プラスミド pNJ1053を上記と同様、
制限酵素 Hind III と SalI で2重消化し、反応物を0.
7%アガロースゲル電気泳動によって分離し、8.6 kbのD
NA断片を回収した。このプラスミドDNA 0.04 μg
と上記SIG-WGA 遺伝子の半量とを混合し、実施例3に記
載した方法にしたがって、連結反応を行った。これを、
大腸菌XL1-Blue株にCohen らの方法にしたがって、形質
転換した。アンピシリン耐性を指標として選択した形質
転換体の中から、アルカリ抽出法によってプラスミドを
単離し、分子量および制限酵素による分解パターン調べ
ることにより、pNJ1053 の酵母ENO1プロモーター下
流の SalI-Hind III部位に、SIG-WGA 遺伝子が挿入され
た、酵母での成熟体型WGA遺伝子分泌発現プラスミド
pSW 1,145mgを得た。
【0038】実施例6 前駆体WGA蛋白質遺伝子分泌
発現用プラスミドの構築:構築の概略は図2Aの後半部
分に示した。CTペプチドをコードしたオリゴヌクレオ
チドCT1〜CT4を、実施例1に記載した方法にした
がって合成した。つぎに、実施例2に記載した方法にし
たがって、CT2とCT3をリン酸化し、CT1とCT
2およびCT3とCT4をアニーリング、連結したの
ち、再び末端のリン酸化を行い、CTペプチドをコード
するブロックDNA断片を得た。一方、実施例5で作成
したpSWプラスミド 330μg を、実施例5に記載した
方法にしたがって、制限酵素SalIとHind IIIで2重消化
し、8%ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行い、0.58
Kb の SIG-WGA 遺伝子断片を回収した。このSIG-WGA
遺伝子断片 18 μg を、20 unit の制限酵素AvaIを含む
反応液 (10 mM Tris-HCl(pH 7.5), 10 mM MgCl2, 1 mM
DTT, 25 mM NaCl) 100 μl 中、37℃、2時間反応さ
せた後、8%ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行い、
0.53 Kb のDNA断片を回収した。このDNA断片 6.4
μg と上記CTペプチドをコードするDNA断片 1.6μ
g を混合し、実施例2に記載した方法により連結した
後、前述と同様、制限酵素SalIとHind IIIで2重消化し
た。5%ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行い、分泌
シグナルとCTペプチドを有する0.63 Kb のWGA遺伝
子(SIG-WGA-CT遺伝子)断片2.1 μg を回収した。次
に、プラスミドM13mp19 (東洋紡: Code No.M13-019)
20μg を、前述と同様、制限酵素SalIとHind IIIで2重
消化後、0.8 %アガロースゲル電気泳動を行い、7.5 kb
のプラスミドDNA断片を回収した。このプラスミド
DNA 0.4μg と上記SIG-WGA-CT遺伝子断片 2μg を混
合し、実施例2に記載した方法にしたがって連結した。
これを大腸菌 XL1 - Blue 株にCohen らの方法により形
質転換した。実施例3に記載した様に X-galの分解によ
る青色を呈せず、DNA断片の挿入により無色となった
ファージの中から、アルカリ抽出法によってプラスミド
を単離し、分子量および制限酵素による分解パターンを
調べ、M13mp19 の SalI-Hind III部位に SIG-WGA-CT 遺
伝子断片が導入されたプラスミドを得た。 このファー
ジから、ssDNA を回収し、既知の dideoxynucleotide
法によるDNA塩基配列によって、SIG-WGA-CT 遺伝子
の塩基配列が設計通りであることを確認した。
【0039】さらに、上記 SIG-WGA-CT 遺伝子を導入し
た M13mp19から、前述と同様、制限酵素SalIと Hind II
I で2重消化した後、5%ポリアクリルアミドゲル電気
泳動を行い、0.63 kb のSIG-WGA-CT遺伝子断片を回収し
た。このDNA断片と実施例5で調製したSalI-Hind II
I 部位を欠失したpNJ1053 とを実施例5に記載した方法
で連結した。これを大腸菌 XL1-Blue 株にCohen らの方
法にしたがって形質転換し、アンピシリン耐性を指標と
して選択した形質転換体の中から、アルカリ抽出法によ
ってプラスミドを単離し、分子量および制限酵素による
分解パターンを調べ、pNJ1053 の酵母ENO1プロモー
ター下流の SalI-Hind III部位に SIG-WGA-CT 遺伝子の
挿入された、前駆体WGA蛋白質分泌発現用プラスミド
pSWCを得た。
【0040】実施例7 酵母のα−ファクター遺伝子の
プロモーターとプレプロ領域を利用する成熟型WGA遺
伝子およびプロWGA遺伝子の分泌発現用プラスミドの
構築:構築の概略は図2Bに示した。具体的には以下の
ようにして行った。 EcoRI部位にαー ファクターのプロ
モーターから構造遺伝子全領域を含む1.7 KbのDNA断
片をもつpLS01 プラスミド[K. Inokuchi et al., Mol.
Cell. Biol., Vol. 7, p. 3185-3193 (1987) ] 260μ
g を300 unit の制限酵素EcoRI と600 unitのHind III
を含む反応液 (10 mM Tris-HCl (pH 7.5), 10 mM MgC
l2, 1 mM DTT,75 mM KCl)中で、37℃、一夜反応させ
た後、0.7%アガロースゲル電気泳動にて、酵母αー ファ
クターのプロモーターからプレプロ領域を含む1.2 Kb
のDNA断片を回収した。このDNA断片の末端のEcoR
I 部位をSalI部位に変換するため、実施例1に記載した
方法にしたがって、SalI-EcoRIアダプター を合成した。上記のアダプター 20 μg に40 unit のT
4 ポリヌクレオチドキナーゼ(東洋紡(株)製)を 100
μl の反応液(50mM Tris-HCl (pH 7.5),10mMMgCl2,
15mM DTT, 0.4mM Na2EDTA, 1mM ATP )中で37℃、1
時間作用させ、5’末端をリン酸化した。この 1μg の
アダプターと、40μg の上記 α- ファクターのプロモ
ーターからプレプロ領域のDNA断片を混合し、実施例
2記載の条件下でT4DNAリガーゼの作用で結合させ
た後、制限酵素 SalIとHind IIIで消化した。次に 8
%ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行い、末端にSalI
部位とHind III部位を有する、α- ファクターのプロモ
ーターからプレプロ領域のDNA断片を回収した。上記
断片のα- ファクターのプレプロ領域と成熟体及び前駆
体WGA遺伝子とをインフレームで連結するために、実
施例1記載の方法にしたがって下記の合成アダプター を合成した。各オリゴヌクレオチド40μg を上記と同様
T4 ポリヌクレオチドキナーゼを作用させ 5’末端を
リン酸化した後、このDNA 8μg と上記α- ファクタ
ーのプロモーターからプレプロ領域を含むDNA断片 2
5 μg を混合し、実施例2記載の条件下で T4 DNA
リガーゼを作用させ連結した。これを制限酵素 SalI及
びBamHIで二重消化した後、 0.8% アガロースゲル電気
泳動を行い、WGA遺伝子との連結部をもち、かつα-
ファクターのプロモーターからプレプロを含む約 1.2kb
のDNA断片を回収した。
【0041】一方、実施例4で作成した、成熟型WGA
遺伝子を挿入した pUC18 プラスミド 200μg を、200
ユニットの制限酵素 Hind III を含む200 μl の反応液
(10mM Tris-HCl(pH 7.5), 10mM MgCl2, 1mM DTT, 65mM
KCl)中で、37℃、1時間30分間反応させた後、18
μl 1M KCl, 6 μl dH2O, 16μl BamH1 (200 ユニッ
ト)を加え、さらに1時間反応させた。これを 8%ポ
リアクリルアミドゲル電気泳動を行い、0.5 kbの成熟型
WGA遺伝子を回収した。このDNA断片 30 μg と、
上記WGA遺伝子との連結部をもち、α- ファクターの
プロモーターからプレプロ領域を含むDNA断片 10 μ
g とを混合し、実施例2記載の条件下でT4 DNAリガ
ーゼの作用で結合させた。これを制限酵素 Sal IとHind
IIIで二重消化の後、0.8%アガロースゲル電気泳動を行
い、DNAをゲルから回収し、α-ファクターのプロモ
ーター下にプレプロ領域とインフレームで連結された成
熟型WGA遺伝子(MFα-WGA遺伝子)を得た。このDN
A断片を、実施例6と同様の方法で、M13mp19 の Sal I
- Hind III 部位の間に挿入した。このファージから、
ssDNAを回収し、MFα- WGA遺伝子の塩基配列を、
既知のデオキシヌクレオチド法によるDNA塩基配列分
析によって確認した。 MFα-WGA 及び MF α-WGA-CT
遺伝子の酵母での発現ベクターは、以下のようにして構
築した。pNJ1053 100 μg を、105 ユニットの制限酵素
Sma I を含む200 μl の反応液(10mM Tris-HCl(pH7.
5), 7mM MgCl2, 20mM KCl, 7mM 2-mercaptoethanol, 10
0 μg/ml BSA)中、30℃、1時間反応させた後、実施
例1記載の方法にしたがって合成し、5 ’末端をリン酸
化したSalIリンカー 0.3 μg と混ぜ、T4 DNAリガーゼを作用させて連結
した。これを再び、SmaI で消化した後、Cohen らの方
法にしたがって、大腸菌 XL1-Blue に形質転換した。ア
ンピシリン耐性を指標として選択した形質転換体の中か
ら、アルカリ抽出法によってプラスミドを単離し、Sal
I 消化によって 0.95 Kb のDNA断片が生じることを
確認し、pNJ1053 のSmaI部位にSal I リンカーを導入し
たpNJ1054を得た。このpNJ1054 37.5μg を、実施例5
記載の条件下で制限酵素SalIとHindIIIで二重消化した
後、0.8% アガロースゲル電気泳動にてENO1プロモ
ーターを欠いた7.3 KbのDNAを得た。このベクター側
DNA 2μg と前述のM13mp19 の SalI-Hind III部位間
のMFα-WGA をSalI-Hind III の二重消化によって切り
出したDNA断片 1.5μg とを混合し、実施例2記載の
方法にしたがってT4DNAリガーゼを作用させ、連結
した。このDNAを Cohenらの方法にしたがって、大腸
菌XL1-Blueに形質転換した後、アンピシリン耐性を指標
として選択した形質転換体の中からアルカリ抽出法によ
ってプラスミドを単離し、制限酵素による分解パターン
を調べ、酵母α- ファクターのプレプロ領域をもつ成熟
型WGA蛋白質分泌発現プラスミド(pPW)182.5μg
を得た。一方、CTペプチドを有する前駆体 WGA に関
しても、上記と全く同様の方法により、酵母α- ファク
ターのプレプロ領域をもつ発現プラスミド(pPWC)
245μgを作成した。
【0042】実施例8 酵母形質転換体の調製 4種の成熟体及び前駆体WGA遺伝子分泌発現用プラス
ミド pSW, pSWC, pPW及び pPWC を用いて 酵母野生株
Saccharomyces cerevisiae KK4 株 (MAT α,ura3,his
1,or his3,trp,leu2,gal80 )または 高分泌酵母変異
株 KS-58-2Ddel株 (MAT α,leu2,ura3,his,ssl1 )
を、既知の酢酸リチウム法(例えば、ltoet al., J. Ba
cteriol., Vol. 153, p. 163 (1983))で形質転換し、
該プラスミドを保持するロイシン非要求性の形質転換体
を得た。これらの形質転換体を各々S.c.KK4(pSW), S.c.
KK4(pSWC),S.c.KK4(pPW) S.c. 及び KK4(pPWC) および
S.c.KS-58-2Ddel(pSW), S.c.KS-58-2Ddel(pSWC), S.c.K
S-58-2Ddel(pPW),S.c.KS-58-2Ddel(pPWC) と命名した。
また、発現の有無をチェックするコントロールとして、
WGA遺伝子を持たないプラスミドpNJ1053 をもつKK4
株とKS-58-2Ddel株(各々KK4(pNJ1053)およびKS-58-2Dd
el(pNJ1053) と命名した)も同様の方法により作成し
た。
【0043】ここで得られる形質転換体は工業技術院微
生物工業技術研究所に寄託している。その寄託番号は次
の通りである。 S.c.KS-58-2Ddel (pSW) 微工研菌寄第12444号 S.c.KS-58-2Ddel (pSWC) 微工研菌寄第12442号 S.c.KS-58-2Ddel (pPW) 微工研菌寄第12443号 S.c.KS-58-2Ddel (pPWC) 微工研菌寄第12441号
【0044】実施例9 分泌発現プラスミドをもった酵
母野生株および高分泌変異株の培養 実施例8で作成した種々のプラスミドをもつ酵母形質転
換体は、それぞれ、ロイシンを除いた各種アミノ酸(終
濃度20〜375mg/l)と過剰量のヒスチジン(終濃度400m
g/l)、アデニンサルフェイト(終濃度20mg/l)、過
剰量のウラシ ル(終濃度400mg/l)を含む最小培地(D
ifco 社製、アミノ酸不含バクト酵母窒素塩基)(Sherm
an et al., Methods in Yeast Genetics, p. 62, Cold
Spring Harbour (1982)参照)に炭素源として8%グル
コースを加え30℃で5日間、振盪培養を行った。
【0045】実施例10 分泌生産されたWGA蛋白質
のウェスタンブロット法による解析 実施例9の方法により、30℃、5日間培養した培養液
40mlを取り、遠心分離して酵母細胞を除き、培養上清画
分を得た。これを凍結乾燥の後、5mlの脱イオン水に溶
解し、脱イオン水に対して充分透析した。再度、凍結乾
燥と透析を行い、333 倍に濃縮した。このうち、15μl
(5ml 培養上清に相当する)に同量の Laemmli's buffe
r 〔80mM Tris-HCl(pH6.8), 2% SDS, 10% グリセロー
ル、100mMDTT, 2mM PMSF, 0.001% BPB〕を加え、10分
間煮沸した。急冷後、全量30μlをSDS-15%PAGE に掛
け、150Vで3時間電気泳動した。泳動後、分泌され
た蛋白質をPVDFメンブランフィルター(イモビロン、ミ
リポア社製)へ転写した。具体的には、アトー社製のト
ランスブロット装置を用いて、転写用緩衝液(25 mM Tr
is-HCl (pH7.5), 192 mM glycine, 0.1% SDS, 15% meth
anol)中で、10V、1時間、転写させた。得られたメ
ンブランフィルターをTBS 緩衝液(100 mM Tris-HCl (p
H 7.5), 150 mM NaCl )に10分間浸した後、ブロッキ
ング溶液(TBS に3%のゼラチンを溶解したもの)に入
れ、30分間振盪した。次に、ウサギ抗WGA抗体(S
IGMA社製、Lot No. 128-8810)の500倍希釈溶液
中に上記のメンブランフィルターを入れ、一夜ゆっくり
と振盪した後、TTBS(TBS に0.05% Tween20 を加えたも
の)で10分間ずつ、2回、ゆっくり振盪しながら洗浄
した。得られたメンブランフィルターを125IーproteinA
New England Nuclear社 NEX146L10溶液中に入れ、1時
間かるく振盪して反応させた後、TTBSで10分、TBSで
10分、ゆっくり振盪しながら洗浄した。得られたメン
ブランフィルターを乾燥後、オートラジオグラフィーで
検出した。
【0046】結果は図3に示した通りで、市販のWGA
標準品((株) ホーネンコーポレーション製)と同一の
移動度を示す位置に、抗WGA抗体と反応する鮮明な単
一のバンドが確認された。プラスミドpSWをもつ酵母
で市販のWGA標準品と同一サイズのWGAを生成する
ことから、人工分泌シグナルは酵母内でWGAとの融合
部分で正しく切断されることがわかった。さらに、CT
ペプチドを有する前駆体WGA分泌発現用プラスミドp
SWCをもつ酵母でも、WGA標準品と同じ位置にバン
ドが検出され、その分泌量はCTペプチドをもたないp
PWの場合の約2 倍であることは特筆すべきことであ
る。このことは、CTペプチドの付加が分泌量の増加に
効果のあることを示すとともに、小麦胚芽中と同様、酵
母細胞内でもプレプロWGAからCTペプチド部分が切
断されることを示している。また、上記の結果はMFα
のプレプロ領域に融合したWGA蛋白質も融合部位で正
しく切断され、WGA標準品と同一の分子量を与えるこ
とを示している。但し、WGAの分泌量はMFαのプレ
プロ型よりもENO1プロモーターと人工分泌シグナル
の組み合せ型のほうが有意に高かった。さらに、注目す
べきことは、ヒト・リゾチームを高分泌する変異株とし
て単離した酵母変異株であり、液胞蛋白質を細胞外にミ
スソーティングする変異ssl1をもつ株であるKS-58-
2DdelのWGA蛋白質分泌量が、野生株KK4 に比べて約
20倍以上高いことである。この結果は明かに、液胞へ
の蛋白質輸送に欠損をもつ変異株の利用がWGAの分泌
生産に有利であることを示している。なお、WGA蛋白
質の分泌量が最も多かったのはKS-58-2Ddel(pSWC)を用
いた場合で、その分泌量は約200μg/l であった。
【0047】実施例11 分泌生産されたWGA蛋白質
の分離・精製 酵母形質転換体KS-58-2Ddel(pSWC)を、実施例9の培地
6L 中で30℃、5日間培養した。培養液を遠心分離し
て酵母細胞を除き、培養上清画分を得た。この上清画分
を凍結乾燥の後、少量(100 〜 150 ml )の脱イオン水
を加え、20 mM酢酸緩衝液(pH 4.0)に対して充分に透
析した。透析後、濃縮脱塩した試料をFPLCシステム(Ph
armacia 社製)を用い、陽イオン交換カラムMono S HR5
/5 (Pharmacia 社製)で分離した。 実施例12で述
べる糖鎖の結合活性をもつ画分は1ml/minの流速で20 mM
酢酸緩衝液(pH 4.0)存在下、0.01M NaCl/minのNaCl
直線濃度勾配にかけることによって、約20〜40分に
溶出された。以上のクロマトグラフィーにおける溶出パ
ターンと活性画分の位置を図4Aに示した。この活性画
分を集め、遠心限外瀘過器(Millipore 社製、ウルトラ
フリー20、再生セルロース膜)により、20 mM Tris-H
Cl(pH 9.5)緩衝液にバッファー交換した後、陰イオン交
換カラムMono Q HR5/5(Pharmacia 社製)で分離した。
1ml/min の流速で 20 mM Tris-HCl(pH 9.5) 緩衝液存在
下、60分間の0 〜0.3 M NaClの直線濃度勾配で溶出し
た。この時の溶出パターンと各画分の活性を図4Bに示
した。活性を有する画分を遠心限外瀘過器(Millipore
社製、ウルトラフリーCL、UFC4LGC25 、再生セルロース
膜)により、20 mM クエン酸緩衝液(pH 3.8)に置換
し、再び、陽イオン交換カラム Mono S HR5/5 (Pharma
cia 社)で分離した。1ml/min の流速で20 mM クエン酸
緩衝液(pH 3.8)存在下、0.01M NaCl/minのNaCl直線濃
度勾配で溶出した。図4Cにこの溶出パターンを示した
が、糖鎖結合活性は約27分で溶出する主要ピークに検
出された。また、市販のWGA標品(WGA I, II, II
I の混合物)を陽イオン交換カラムMono Sにより上記と
同一のNaCl直線濃度勾配で分離精製した。図4Dにこの
時のWGAイソレクチン蛋白質の分離パターンを示した
が、組換えWGA蛋白質の溶出位置は約27分で溶出す
るWGA IIの溶出位置と一致していた。上記クロマト
グラフィーによる組換えWGA分離精製におけるメイン
ピーク(図4C参照)を分取し、SDS-15%PAGEを行った
結果が図5である。クマシーブリリアントブルーによる
染色により、組換え体酵母の分泌生産するWGA蛋白質
試料からは標準WGA II 蛋白質と同一の移動度を示す
単一のバンドのみが検出された。なお、このようにして
精製した組換えWGA II 蛋白質の収量は約 100μg/l
であった。
【0048】実施例12 分泌生産されたWGA蛋白質
の糖鎖結合活性の検出 図6にWGA蛋白質の糖鎖結合活性の検出法を示した。
96穴のマイクロタイタープレート(ELISA 用プレート
F-FORM, グライナー社製)の各ウエルに、1%オボアル
ブミン(SIGMA社製、5X結晶)のPBS溶液を100μl
ずつ加え、 室温で1時間放置し、プラスチック表面
をオボアルブミンでコートした。0.05% Tween 20 を含
むPBS で100 μl ずつ3回洗浄したのち、種々の濃度の
精製した組換えWGAII蛋白質または実施例11に示し
た方法により市販のWGA標品から分離精製したWGA
II蛋白質を含むPBS 溶液 50 μlを加え、室温で、1時
間放置した。0.05% Tween 20 のPBS 溶液で100 μl ず
つ3回洗浄後、抗WGA抗体(SIGMA社製、Lot. N
o. 128F8810 )の150倍希釈PBS 溶液 50 μl を加
え、室温で1時間放置した。再度上記と同様に洗浄した
後、二次抗体として、抗ウサギIgG抗体とアルカリフ
ォスファターゼのコンジュゲート(E.Y.ラボラトリーズ
社)の300倍希釈PBS 溶液 50 μl を加え、室温で1
時間放置した。洗浄後、p-ニトロフェニルフォスフェー
ト 1mg/ml を含むジエタノールアミン緩衝液(ジエタノ
ールアミン 9.7% vol, 0.5 mM MgCl2, 3mM NaN3, pH 9.
5)を50μl 加え、室温でp-ニトロフェノールの発色を
観察した。発色を 1N NaOH 50μ l を加えて止め、マイ
クロタイタープロートリーダー(コロナ社、MTP-32)に
て415nm の吸光度を測定した。結果は図7の如く、組換
えWGAは標準WGAIIと同一の糖鎖結合比活性(蛋白
質当りの糖鎖結合能)を示した。なお、蛋白質の定量
は、BCA蛋白質定量試薬(PIERCE社製)を用い、付属
のプロトコールにしたがって行った。WGAに関する限
り、BCA法はクマシーブリリアント法に比べて、約7
0倍感度が高かった。以上の結果から、酵母で分泌生産
されたWGAII蛋白質は小麦由来のWGAと同一の糖鎖
結合活性をもつことが判明した。
【0049】配列表 1.配列番号1 (1)配列の長さ:513 (2)配列の型:核酸 (3)鎖の数:二本鎖 (4)トポロジー:直鎖状 (5)配列の種類:合成DNA (6)起源 (a)生物名:なし(合成DNA) (b)株名:なし (7)配列の特徴:小麦胚芽凝集素蛋白質(WGA)成熱体
をコードする遺伝子配列 (8)配列: CAA AGA TGT GGT GAA CAA GAA TCC AAC ATG 30 GTT TCT ACA CCA CTT GTT CTT AGG TTG TAC GAA TGT CCA AAC AAC TTG TGT TGT TCT CAA 60 CTT ACA GGT TTG TTG AAC ACA ACA AGA GTT TAC GGT TAC TGT GGT ATG GGT GGT GAT TAC 90 ATG CCA ATG ACA CCA TAC CCA CCA CTA ATG TGT GGT AAG GGT TGT CAA GAC GGT GCT TGT 120 ACA CCA TTC CCA ACA GTT CTG CCA CGA ACA TGG ACT AGT AAG AGA TGT GGT TCT CAA GCT 150 ACC TGA TCA TTC TCT ACA CCA AGA GTT CGA GGT GGT GCT ACT TGT CCA AAC AAC CAC TGT 180 CCA CCA CGA TGA ACA GGT TTG TTG GTG ACA TGT TCT CAA TAC GGT CAC TGT GGT TTC GGT 210 ACA AGA GTT ATG CCA GTG ACA CCA AAG CCA GCT GAG TAC TGT GGT GCT GGT TGT CAA GGG 240 CGA CTC ATG ACA CCA CGA CCA ACA GTT CCC GGC CCA TGT AGA GCT GAT ATC AAG TGT GGT 270 CCG GGT ACA TCT CGA CTA TAG TTC ACA CCA TCT CAA TCT GGT GGT AAG TTG TGT CCA AAC 300 AGA GTT AGA CCA CCA TTC AAC ACA GGT TTG AAC TTG TGT TGT TCT CAA TGG GGC AGC TGT 330 TTG AAC ACA ACA AGA GTT ACC CCG TCG ACA GGT TTG GGT TCT GAA TTT TGT GGT GGT GGT 360 CCA AAC CCA AGA CTT AAA ACA CCA CCA CCA TGT CAA TCT GGT GCA TGC TCT ACT GAC AAG 390 ACA GTT AGA CCA CGT ACG AGA TGA CTG TTC CCA TGT GGT AAG GAC GCC GGC GGT AGA GTT 420 GGT ACA CCA TTC CTG CGG CCG CCA TCT CAA TGT ACT AAC AAC TAC TGT TGT TCT AAG TGG 450 ACA TGA TTG TTG ATG ACA ACA AGA TTC ACC GGT TCT TGT GGT ATT GGT CCC GGG TAC TGT 480 CCA AGA ACA CCA TAA CCA GGG CCC ATG ACA GGT GCT GGT TGT CAA TCT GGT GGT TGT GAC 510 CCA CGA CCA ACA GTT AGA CCA CCA ACA CTG GCT CGA
【0050】2.配列番号2 (1)配列の長さ:558 (2)配列の型:核酸 (3)鎖の数:二本鎖 (4)トポロジー:直鎖状 (5)配列の種類:合成DNA (6)起源 (a)生物名:なし(合成DNA) (b)株名:なし (7)配列の特徴:小麦胚芽凝集素蛋白質(WGA)前駆体
をコードする遺伝子配列。 (8)配列: CAA AGA TGT GGT GAA CAA GAA TCC AAC ATG 30 GTT TCT ACA CCA CTT GTT CTT AGG TTG TAC GAA TGT CCA AAC AAC TTG TGT TGT TCT CAA 60 CTT ACA GGT TTG TTG AAC ACA ACA AGA GTT TAC GGT TAC TGT GGT ATG GGT GGT GAT TAC 90 ATG CCA ATG ACA CCA TAC CCA CCA CTA ATG TGT GGT AAG GGT TGT CAA GAC GGT GCT TGT 120 ACA CCA TTC CCA ACA GTT CTG CCA CGA ACA TGG ACT AGT AAG AGA TGT GGT TCT CAA GCT 150 ACC TGA TCA TTC TCT ACA CCA AGA GTT CGA GGT GGT GCT ACT TGT CCA AAC AAC CAC TGT 180 CCA CCA CGA TGA ACA GGT TTG TTG GTG ACA TGT TCT CAA TAC GGT CAC TGT GGT TTC GGT 210 ACA AGA GTT ATG CCA GTG ACA CCA AAG CCA GCT GAG TAC TGT GGT GCT GGT TGT CAA GGG 240 CGA CTC ATG ACA CCA CGA CCA ACA GTT CCC GGC CCA TGT AGA GCT GAT ATC AAG TGT GGT 270 CCG GGT ACA TCT CGA CTA TAG TTC ACA CCA TCT CAA TCT GGT GGT AAG TTG TGT CCA AAC 300 AGA GTT AGA CCA CCA TTC AAC ACA GGT TTG AAC TTG TGT TGT TCT CAA TGG GGC AGC TGT 330 TTG AAC ACA ACA AGA GTT ACC CCG TCG ACA GGT TTG GGT TCT GAA TTT TGT GGT GGT GGT 360 CCA AAC CCA AGA CTT AAA ACA CCA CCA CCA TGT CAA TCT GGT GCA TGC TCT ACT GAC AAG 390 ACA GTT AGA CCA CGT ACG AGA TGA CTG TTC CCA TGT GGT AAG GAC GCC GGC GGT AGA GTT 420 GGT ACA CCA TTC CTG CGG CCG CCA TCT CAA TGT ACT AAC AAC TAC TGT TGT TCT AAG TGG 450 ACA TGA TTG TTG ATG ACA ACA AGA TTC ACC GGT TCT TGT GGT ATT GGT CCC GGG TAC TGT 480 CCA AGA ACA CCA TAA CCA GGG CCC ATG ACA GGT GCT GGT TGT CAA TCT GGT GGT TGT GAC 510 CCA CGA CCA ACA GTT AGA CCA CCA ACA CTG GCT GTT TTC GCT GGT GCT ATT ACC GCT AAC 540 CGA CAA AAG CGA CCA CGA TAA TGG CGA TTG TCC ACC TTG TTG GCT GAA AGG TGG AAC AAC CGA CTT
【0051】3.配列番号3 (1)配列の長さ:588 (2)配列の型:核酸 (3)鎖の数:二本鎖 (4)トポロジー:直鎖状 (5)配列の種類:合成DNA (6)起源 (a)生物名:なし(合成DNA) (b)株名:なし (7)配列の特徴:酵母のENo1プロモーターの1部、人
工分泌シグナル、WGA成熱体をコードする遺伝子から構
成される。 (8)配列:
【0052】
【化1】
【0053】4.配列番号4 (1)配列の長さ:94 (2)配列の型:核酸 (3)鎖の数:二本鎖 (4)トポロジー:直鎖状 (5)配列の種類:合成DNA (6)起源 (a)生物名:なし(合成DNA) (b)株名:なし (7)配列の特徴:小麦胚芽凝集素蛋白質(WGA)の成熱
体のC末端側1部領域とWGA のプロ領域とをコードする
遺伝子配列 (8)配列:
【0054】
【化2】
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)Aブロックの酵素的連結法とサブクロー
ニング (B)Bブロックの酵素的連結法とサブクローニング (C)C+Dブロックの酵素的連結法とサブクローニン
グ (D)A、B、C+Dブロックの酵素的連結法とサブク
ローニング。
【図2】(A)成熟体型および前駆体型WGA遺伝子の
分泌発現用プラスミドの構築 (B)酵母のα−ファクター遺伝子のプロモーターとプ
レプロ領域を利用する成熟型および前駆体型WGA遺伝
子の分泌発現用プラスミドの構築。
【図3】分泌WGA蛋白質のウエスタンブロット解析。
【図4】(A)酵母培養液中のWGA蛋白質の Mono S
カラムによる分離 (B)上記AにおけるWGA溶出画分のMono Q カラム
による分離精製 (C)上記BにおけるWGA画分の Mono S カラムによ
る分離精製 (D)市販のWGA標品(WGAI、II、IIIの混合物)
のMono S カラムによる分離。
【図5】組換えWGA蛋白質のSDSー15%ポリアク
リルアミドゲル電気泳動による純度検定。
【図6】WGA蛋白質の糖鎖結合活性の測定法。
【図7】組換えWGA蛋白質と標準WGA蛋白質におけ
る糖鎖結合活性の比較。
【手続補正書】
【提出日】平成4年11月2日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】発明の詳細な説明
【補正方法】変更
【補正内容】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は化学的に合成した小麦胚
芽凝集素遺伝子を用いた遺伝子工学的手法による小麦胚
芽凝集素の製造法に関する。
【0002】
【従来技術】小麦胚芽凝集素(wheat germ
agglutinin, 以下WGAと略す)は、小麦
胚芽中に見いだされる蛋白質であり、ガン細胞を特異的
に凝集させる活性をもつことが知られている[J.C.
Aud et al.,Proc.Natl. Aca
d.Sci.USA,Vol.50,p.613(19
63)]。また、WGAは、N−アセチルグルコサミン
(GlcNAc)やN−アセチルノイラミン酸(Neu
NAc)(別名シアル酸)を含むオリゴ糖や糖蛋白質、
糖脂質などに特異的に結合する作用を有するため、これ
を利用した生体成分の分離・分析用試薬としても市販さ
れ、WGA単品だけでなく、種々の担体に固定化したW
GAとしても一般に利用されている。WGAは、さら
に、ガン患者の血清や体液中に存在するガン関連糖蛋白
質と特異的に結合することから、腫瘍マーカーの一つと
して、ガンの診断にも利用できる(特開昭62−257
062および特開昭62−257063)。
【0003】WGAは従来、小麦胚芽から精製すること
により調製されている[例えば、Nagata and
Burger,J.Biol.Chem.,Vol.
249,p.3116(1974)及びNagata
et al.,Methods in Enzymol
ogy,p.611,Academic Press
(1974)]が、市販のWGAは数種類のWGA同族
体(アイソマー)を含んだ混合物として通常供給されて
いる。これは小麦胚芽の遺伝子構成の反映であるが、特
定の品種の胚芽を用いても2〜3種類のWGAアイソマ
ーが含まれることが分かっている[Rice,Bioc
him.Biophys.Acta,Vol.444,
p.175(1976)]。WGAアイソマーの相互分
離とそれらの精製はかなり煩雑で時間がかかり、コスト
も高くなるため、市販のWGAは同族体の混合物のまま
供給されている場合が多いのが現状である。
【0004】また、WGAの生産量と価格は、原料とな
る小麦胚芽の供給量および価格により変動するが、小麦
の生産そのものが気候など自然環境により影響をうけや
すいため、WGAの原料である小麦胚芽も、その供給お
よび価格が不安定になる欠点をもっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
WGAの生産と供給における質的、量的欠点を克服する
ため、組換えDNA技術により、純粋なWGAを、安定
にしかも多量に、分泌生産し、これを提供することを目
的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は次の
構成を含むものである。 (1) 配列番号1のヌクレオチド配列で表わされる小
麦胚芽凝集素の成熟体構造遺伝子。 (2) 上記(1)記載の小麦胚芽凝集素の構造遺伝子
の5’端に分泌に必要なシグナルペプチドをコードする
DNA領域を、また3’端に翻訳終止信号TGATAA
を、それぞれ有する小麦胚芽凝集素遺伝子。 (3) 上記(1)記載の小麦胚芽凝集素の構造遺伝子
の5’端に分泌に必要なシグナルペプチドをコードする
DNA領域を、また3’端に翻訳終止信号TGATAA
を、それぞれ有する小麦胚芽凝集素遺伝子を含む組換え
プラスミドDNA。 (4) 発現プロモーターが酵母プロモーターであり、
かつ、シグナルペプチドをコードする領域が該酵母プロ
モーターの下流側で、かつ小麦胚芽凝集素遺伝子の上流
にあり、いずれもこれらと解読枠が一致していることを
特徴とする上記(3)記載の組換えプラスミド。 (5) 宿主細胞を上記(3)または上記(4)記載の
小麦胚芽凝集素遺伝子を含む組換えプラスミドDNAで
形質転換した形質転換体微生物。 (6) 宿主細胞が酵母である上記(5)記載の形質転
換体微生物。 (7) 酵母が、サッカロミセス属に属する酵母株、あ
るいは液胞局在性蛋白質を細胞外に分泌する突然変異を
有するサッカロミセス属に属する酵母変異株であること
を特徴とする上記(6)記載の形質転換体微生物。 (8) 酵母変異株が、KS−58−2Ddelである
ことを特徴とする上記(7)記載の形質転換体微生物。 (9) 上記(5)乃至上記(8)のいずれか記載の形
質転換体微生物を培地に培養して、培養物から小麦胚芽
凝集素を採取することを特徴とする小麦胚芽凝集素の製
造法。 (10) 配列番号2のヌクレオチド配列で表わされる
小麦胚芽凝集素前駆体をコードする遺伝子。 (11) 上記(10)記載の小麦胚芽凝集素前駆体を
コードする遺伝子の5’端に分泌に必要なシグナルペプ
チドをコードするDNA領域を、また3’端に翻訳終止
信号TGATAAを、それぞれ有する小麦胚芽凝集素前
駆体をコードする遺伝子。 (12) 上記(10)記載の小麦胚芽凝集素前駆体を
コードする遺伝子の5’端に分泌に必要なシグナルペプ
チドをコードするDNA領域を、また3’端に翻訳終止
信号TGATAAを、それぞれ有する小麦胚芽凝集素前
駆体をコードする遺伝子を含む組換えプラスミドDN
A。 (13) 発現プロモーターが酵母プロモーターであ
り、かつ、シグナルペプチドをコードする領域が該酵母
プロモーターの下流側で、かつ小麦胚芽凝集素遺伝子の
上流にあり、いずれもこれらと解読枠が一致しているこ
とを特徴とする上記(12)記載の組換えプラスミドD
NA。 (14) 宿主細胞を上記(12)または上記(14)
記載の小麦胚芽凝集素遺伝子を含む組換えプラスミドD
NAで形質転換した形質転換体微生物。 (15) 宿主細胞が酵母である上記(14)記載の形
質転換体微生物。 (16) 酵母が、サッカロミセス属に属する酵母株、
あるいは液胞局在性蛋白質を細胞外に分泌する突然変異
を有するサッカロミセス属に属する酵母変異株であるこ
とを特徴とする上記(15)記載の形質転換体微生物。 (17) 酵母変異株が、KS−58−2Ddelであ
ることを特徴とする上記(16)記載の形質転換体微生
物。 (18) 上記(14)乃至上記(17)のいずれか記
載の形質転換体微生物を培地に培養して、培養物から小
麦胚芽凝集素を採取することを特徴とする小麦胚芽凝集
素の製造法。
【0007】以下、本発明を詳細に説明する。合成WG
A遺伝子を用いて組換えDNA技術により、WGAを製
造する方法は、基本的には下記の工程よりなる。 1)遺伝子の設計 2)遺伝子の化学合成と適当な発現用ベクターへの遺伝
子の組み込み 3)得られた組換えプラスミドによる適当な宿主の形質
転換と形質転換体の培養によるWGA蛋白質の産生およ
び回収 ところで、一般に遺伝子工学の手法により有用蛋白質を
生産する際、細胞内に蓄積させた場合には、細胞を回収
し、これを破砕した後、ここから目的の蛋白質を分離・
精製する必要がある。しかし、細胞内には多量の夾雑蛋
白質が存在するため、分離・精製がきわめて困難とな
る。さらに、酵母細胞を使用する時には、酵母細胞が強
固な細胞壁をもっているため、細胞を効率よく破砕する
ことも必須となる。したがって、組換えDNA技術を利
用して蛋白質を生産させる際も、蛋白質を細胞外に分泌
させる方法がきわめて有効である。しかし、蛋白質が効
率よく分泌されるか否かは蛋白質の性状や特性に大きく
依存するため、その条件設定は個々の蛋白質ごとに実験
的に設定する必要がある。
【0008】WGA蛋白質は植物体中では細胞内の液胞
またはプロテインボディーといわれるオルガネラに局在
している[M.A.Mansfield et a
l.,Planta,Vol.173,p.482−4
89(1988)]。このプロテインボディーは液胞が
断片化した構造体と推定されることから、植物体内でこ
の蛋白質は小胞体(ER)の膜上で生合成された後、細
胞内の分泌経路によりERからゴルジ体まで輸送され、
その後液胞またはプロテインボディーに輸送されるもの
と考えられている[N.V.Raikhel et a
l.,Curr.Top.Plant.Bioche
m.Physiol.,Vol.7,p.83−89
(1988)]。したがって、酵母細胞でWGA遺伝子
を発現させた場合も、通常は、植物細胞と同様、酵母の
液胞またはこれに相当するオルガネラに輸送されてしま
うと推定される。しかし、一方、酵母細胞では、本来液
胞に局在しているカルボキシペプチダーゼY(CPY)
蛋白質で、この遺伝子を多コピープラスミド上で高発現
させると細胞外に分泌されることが報告されている
[T.H.Stevens et al.,J.Bio
l.Chem.,Vol.102,p.1551−15
57(1986)]。この理由は、ゴルジ体から液胞へ
の輸送選別に関与している細胞内成分の量に限度があ
り、CPY蛋白質の生産量がこの限度をこえるとゴルジ
体から液胞への選別ができなくなり、分泌顆粒に輸送さ
れて最終的には細胞外に分泌してしまうためであると考
えられている[T.H.Stevens et a
l.,J.Biol.Chem.,Vol.102,
p.1551−1557(1986)]。このため、本
来液胞に輸送されるWGA蛋白質についても、高発現プ
ロモーターの支配下で発現させるか、あるいはゴルジ体
から液胞への輸送選別に欠損変異をもつ酵母の変異株を
使用することにより、WGA蛋白質を酵母の細胞外に分
泌させることが可能であろうと考えた。
【0009】WGA蛋白質には3〜4種類の同族体(ア
イソマー)が存在するが、このうち3種類(WGAI、
II、III)については、そのアミノ酸配列およびc
−DNAの塩基配列が報告されている。このうち、WG
AIIはX線結晶解析によりその立体構造が詳細に解折
されているうえ、WGAII蛋白質とオリゴ糖との複合
体の立体構造も解析されており、糖鎖との結合様式につ
いても多くの情報が蓄積されている。そこで酵母を宿主
としてWGA蛋白質の分泌発現を検討するための1具体
例としては、WGAII蛋白質について検討した。具体
的には、報告されているWGAII蛋白質のアミノ酸配
列をもとにして、しかしアミノ酸に対応するDNA上の
コドンとして、小麦のコドンではなく、酵母の頻用コド
ンを用いてWGAII遺伝子を設計・化学合成した。し
かし、本発明はこのWGAIIの製造法に限定されるも
のではなく、WGAII遺伝子に公知の方法により部位
特異的変異を導入したWGAI遺伝子またはWGAII
I遺伝子を作成し、これを酵母で分泌発現する際にも、
また上記の遺伝子を酵母以外の他の適当な宿主細胞で分
泌発現する際にも適用されるべきものである。
【0010】(1)遺伝子の設計 WGAII遺伝子については、c−DNAの塩基配列が
報告されており[Smith and Raikel,
Plant Molecular Biology,V
ol.13,p.601−603(1989)]、それ
より以前に報告されていたアミノ酸配列[(Wrigh
t and Olafsdottir,J.Biol,
Chem,Vol.261,p.7191−7195
(1986)]には、3カ所で誤りがあったことが指摘
されている(109番目でSerからPheに、134
番目でGlyからLysに、そして150番目でGly
からTrpに)。そこでWGAII遺伝子の設計には、
c−DNA配列から推定されるアミノ酸配列を利用し
た。しかし、WGAII蛋白質から決定されたアミノ酸
配列とc−DNAから推定されたアミノ酸配列とはそれ
でもまだ37番目で異なっており、前者の方法ではAs
p、後者の方法ではAsnと報告されている。蛋白質レ
ベルでのアミノ酸配列の分析結果の解釈としては、As
nからAspへの脱アミノ化が生体内でおこっている可
能性もあるが、一般的には、アミノ酸配列分析に適した
ペプチド断片を蛋白質から調製する際、あるいはペプチ
ド断片の分離・精製の操作の過程で脱アミノ化したもの
と考えられる。したがって、本発明における1具体例と
しては、成熟型WGAII蛋白質の37番目アミノ酸残
基として、c−DNAから推定されるAsnを採用し
た。
【0011】しかし、このアミノ酸配列に相当するWG
AII遺伝子をデザインするにあたっては、遺伝子コド
ンの縮重により複数のコドン選択が可能である。特に小
麦など植物で頻用されているコドン[Smith an
d Raikel,Plant Molecular
Biology,Vol.13,p.601−603
(1989)]と酵母で頻用されるコドン[Benne
tzen and Hall,J.Biol.Che
m.,Vol.257,p.3026−3031(19
82)]は必ずしも一致していない。そこで、WGAI
I遺伝子の設計にあたっては、i)合成遺伝子の発現に
適当と思われる酵母において最も許容されるコドンを使
用する。ii)遺伝子中に特定の制限酵素認識部位を設
けて、サブクローニングしやすくする。iii)同一鎖
上または相補鎖上に自己相補的あるいは正しい配列以外
のものと相補的であるような配列を極力さける、などに
配慮した。このような諸条件を満足する1具体例として
は、前記本発明の構成(1)または(10)に記截した
ものである。本発明は第一に上記のDNA配列で示され
るWGA発現のための合成遺伝子を有するDNAに関す
るが、本発明DNAとしては上記合成遺伝子の他、その
5’末端に翻訳開始コドンや分泌のためのシグナルペプ
チドをコードするDNA配列を連結したもの、あるい
は、その3’末端に翻訳停止コドンを連結したもの、あ
るいはこの両者を連結したもの、そしてこれらの5’末
端と3’末端にそれぞれ制限酵素切断部位をもつものを
含み、発現のための便宜や遺伝子組換え等の操作の便宜
を図ることができる。またこの他、これらDNAを組み
込んだプラスミドも本発明に入るものである。
【0012】小麦胚芽中では、WGA蛋白質は成熟型W
GA蛋白質領域の他に、そのアミノ末端(N末端)に翻
訳開始に必要なMetを含めて28アミノ酸残基からな
るプレペプチドをもっているほか、そのカルボキシル末
端(C末端)には15アミノ酸残基からなる余計なプロ
ペプチドをもっており、いわゆるプレプロ型の前駆体W
GA蛋白質として生合成されることが、そのc−DNA
配列の分析から推定されている[N.V.Raikhe
l and T.A.Wilkins,Proc.Na
tl.Acad.Sci.USA,Vol.84,p.
6745−6749(1987)および Smith
and Raikel,Plant Molecula
r Biology,Vol.13,p.601−60
3(1989)]。
【0013】したがって、この前駆体WGA(プレプロ
WGA)蛋白質に対応するDNA配列をそのまま用いて
タバコなどの植物細胞で発現させることも可能である
が、このままでは発現されたWGA蛋白質は液胞に輸送
されてしまう[T.A.Wilkinset al,T
he Plant Cell,Vol.2.,p.30
1−313(1990)]。したがって、植物以外の細
胞などを利用して、しかも分泌発現を成功させる何等か
の方法を開発する必要がある。しかし、このWGA本来
の分泌シグナルは植物以外の細胞で正しく機能するかど
うか疑問である。例えば、ヒト・インターフェロンの酵
母での分泌では、23アミノ酸残基からなるヒト由来の
分泌シグナルはヘテロなシグナル切断点を示し、酵母で
の機能としては不完全なものである[R.A.Hitz
eman et al.,Science,Vol.2
19,p.620(1983)]。一般に酵母の分泌シ
グナルの長さは15〜20アミノ酸残基からなるものが
多く、WGAのもつシグナルの長さ(28アミノ酸残
基)はこれより長い。一方、酵母で異種蛋白質の分泌に
有効な分泌シグナルとしては、酵母本来のものだけでな
く、異種生物由来のシグナルや、疎水性のLeuクラス
ターを含み15アミノ酸からなる人工のシグナルも、効
率よく機能することが報告されている[Y.Yamam
oto et al.,Biochem.Biophy
s.Res.Commun.Vol.149,p.43
1(1987)]。したがって、酵母によるWGA蛋白
質の分泌発現を検討する際にも、酵母で機能する上記の
種々の分泌シグナルが利用可能である。この具体的な1
例としては、上記の人工シグナルペプチドをコードする
DNA断片を化学合成して使用した結果を後に実施例で
示す。なお、このシグナルペプチド(以下プレ領域とい
う)に対応するDNAを連結するWGA遺伝子として
は、C末端プロ領域を持たない成熟体型WGA遺伝子の
ほか、C末端プロ領域を持つ前駆体型WGA遺伝子も使
用することができる。そこで、プレWGA遺伝子(分泌
シグナル+成熟体型WGAをコードするDNA領域)お
よびプレプロWGA遺伝子(分泌シグナル+前駆体型W
GAをコードするDNA領域)を各々作成して、その発
現について検討した。
【0014】なお、これらのWGA遺伝子を含むDNA
を発現させる宿主細胞としては種々のものが使用可能で
あるが、酵母を宿主とする場合の1具体例は、酵母の解
糖系遺伝子の一つで発現効率の高いENO1プロモータ
ーを利用するものである[K.Ichikawa et
al.,Agric.Biol Chem.,Vo
l.53,p.1445−1447(1989)]。一
方、酵母で異種蛋白質を分泌発現するための遺伝子とし
ては酵母のα−ファクターのプロモーターおよびプレプ
ロ領域がよく利用されている[例えばBrake et
al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U
SA,Vol.81,p.4642(1984)、Bi
tter et al.,Proc.Natl.Aca
d. Sci.USA,Vol.81,p.5330
(1984)など]。そこで本発明における他の具体例
としては、酵母のα−ファクター遺伝子のプロモーター
およびプレプロ領域をもつDNA領域の下流に、上記の
成熟体型WGA遺伝子またはC末端プロ領域をもつ前駆
体型WGA遺伝子を連結した分泌発現用遺伝子を作成し
たものを示す。しかし、これら種々の分泌発現用遺伝子
が酵母内で正しく発現し、培地中に分泌された組換えW
GA蛋白質が、小麦胚芽から単離されたWGAII蛋白
質と同一のアミノ酸配列や糖鎖の結合活性をもつか否か
は容易に予測できない。また、成熟型WGA蛋白質のC
末端領域をもつプロWGA蛋白質が酵母の分泌過程で正
しく切断されるか否かは興昧深い点である。しかし、後
述の実施例でも明かなようにWGA前駆体蛋白質は酵母
によってシグナルペプチドだけでなく、C末端のプロ領
域も正しく切断され、小麦胚芽から単離されたWGAI
I蛋白質と同一の分子量をもつほか、糖鎖の結合比活性
も小麦胚芽由来のWGAIIと同一であることが本発明
により明かとなった。
【0015】(2)遺伝子の合成と発現用プラスミドの
構築 上記のWGA遺伝子は例えば約15〜45個の核酸塩基
鎖長をもつ複数個のオリゴデオキシヌクレオチドを合成
し、それらを連結することによって製造することができ
る。例えば、配列番号3に示したような32個のオリゴ
ヌクレオチド・フラグメントに分割して、たとえば[M
uraki et al,Agric.Biol.Ch
em.,Vol.50,p.713−723(198
6)]にしたがって合成することができるし、オリゴヌ
クレオチド・フラグメントは既知の方法でハイブリダイ
ズさせ、酵素的に連結することができる[例えばAga
rwal et al,Nature,Vol.22
7,p.27−34(1970) ]。なお、このフラ
グメントへの分割法は上記のものに限定される必要はな
く、前記の自己会合が回避できることなどに留意すれ
ば、種々の分割が可能である。次の段階としては、この
ようにして得られた合成遺伝子またはその断片を量的に
増やすために、まず適当なベクターに組み込みサブクロ
ーニングすることであるが、以下では、その1具体例と
して、成熟体型WGA遺伝子と前駆体型WGA遺伝子に
分けて上記のステップを詳しく説明する。
【0016】2−1 成熟体型WGA遺伝子の合成とク
ローニング 171個のアミノ酸からなる成熟型WGA蛋白質はアミ
ノ酸配列の解析や立体構造の解析結果などから、空間的
にはっきりした4個のドメイン(A,B,C,D)から
成り、それぞれのドメインはお互いにきわめて相同性の
高い配列をもつ41個の長さのアミノ酸で構成されるこ
とがわかっている[C.S.Wright,J.Mo
l.Biol.,Vol.194,p.501−529
(1987)]。したがって、遺伝子の設計および合成
にあたっては、ヌクレオチドフラグメントが正しい配列
以外のものとハイブリダイズするのをさけるため、WG
A遺伝子の前半部分については、オリゴヌクレオチド・
ブロックが上記のドメインAおよびBと一致するように
分割した。しかし、この分割法ではブロックのDNA断
片を組み上げる際、酵素的に連結するステップが多くな
り、結果的に連結反応の最終産物の収率が低下して、そ
の後のサブクローニングに成功する頻度が低下すること
が判明した。そこで、WGA遺伝子の後半部分について
は、上記のドメインCおよびDに相当するDNAをまと
めて1つのブロックとしてDNA断片の組み上げを行っ
た。なお、ドメインAに相当するAブロックについて
は、7番目(Gly)と8番目(Ser)にまたがる部
位に制限酵素BamHI部位を設け、このサイトから下
流をとりあえず作成し、これよりN末端側については、
後述の分泌シグナルを作成するときに同時に作成し、B
amHI部位で翻訳解読枠が一致するように設計した。
【0017】上記のように設計した遺伝子を合成するに
は、+,−両鎖のそれぞれについて、これらをいくつか
のフラグメントに分けて、それらを化学的に合成し、各
々のフラグメントを連結する方法によれば良い。各鎖は
15〜45塩基からなり各々が少なくとも6塩基ずつ重
なる様に32個程度のフラグメントに分けるのが好まし
い。以上の操作の概要は図1〜図4に要約して示した。
ドメインAに相当するAブロックの組み上げについては
に示したが、このAドメインの最終的な酵素的連結
産物は制限酵素SpeIで消化後、サブクローニング用
のベクターであるPhagescriptのBamHI
−XbaI断片と連結してクローニングした。このクロ
ーン化DNAからBamHI,SacI二重消化により
WGA遺伝子断片を含むDNAを回収したのち、これを
さらに制限酵素MaeIで消化して得たBamHI−M
aeI断片を、BブロックおよびC+Dブロックとの連
結用DNA断片とした。また、ドメインBに相当するB
ブロックについても、同様に、最終的な酵素的連結産物
を制限酵素SpeI,ApaIで二重消化後、Blus
cript KS(+)のSpeI−ApaI部位にサ
ブクローニングした。このクローン化DNAからApa
I,SacI消化によりWGA遺伝子断片を含むDNA
を回収したのち、これをさらに制限酵素MaeIで消化
して得たMaeI−ApaI断片を各ブロック間の連結
用DNA断片とした(図参照)。
【0018】一方、ドメインCとDに相当するC+Dブ
ロックについては、上述のようにオリゴヌクレオチドフ
ラグメントの鎖長をAやBドメインに相当するブロック
の場合の2〜3倍としたため、酵素的連結の回数は上記
のAまたはBブロックを作成するときと殆ど同じである
にも拘らず、最終連結産物の鎖長はC+Dに相当する約
2倍の長さになっている。このC+Dブロックはその
5’末端および3’末端にそれぞれApaI部位、Hi
ndIII部位をもつため、Phagescriptの
ApaI−HindIII部位にサブクローニングした
のち、これをApaI,HindIIIで消化してWG
A遺伝子断片を含むDNAを回収して各ブロック間の連
結用DNA断片とした(図参照)。
【0019】最後に、上記で調製したA、B、C+Dの
各DNA断片を図に示した順序で連結し、これをプラ
スミドベクターpUC18のBamHI−Hind I
II部位にクローン化した。この様にして作成した成熟
型WGA遺伝子の塩基配列が設計通りのものであること
は、このDNA断片の+鎖、一鎖の両鎖の全領域につい
て、公知のDNA塩基配列決定法[例えば、F.San
ger et al.,Proc.Natl.Aca
d.Sci.USA,Vol.74,p.5463(1
977)によるdideoxy nucleotide
法]により塩基配列を分析して、確認した。
【0020】2−2 分泌シグナルをもつWGA(プレ
WGA)遺伝子の合成と発現用ベクターへの導入 前述の様に、WGA蛋白質は小麦中では成熟型WGAの
N−末端およびC−末端にそれぞれ分泌シグナルあるい
は15アミノ酸からなる余分なペプチド(CT)をもっ
たプレプロ体として合成される。このうち、分泌シグナ
ルは蛋白質が生合成されるとともにER内腔に運ばれ、
その後、分泌経路を経て細胞外に輸送されるために必須
の機能をもっている。したがって、酵母でWGA蛋白質
を分泌発現させる際にもこの分泌シグナルを成熟型WG
AのN−末端側に付加する必要がある。分泌シグナルと
しては、勿論、インベルターゼや酸性フォスファターゼ
など酵母本来のシグナルも利用できるし、ニワトリ・リ
ゾチームのシグナルといった酵母以外(異種)のシグナ
ルも使用できる。また、分泌シグナルの構造とER膜の
透過性との解析結果から提案されている疎水性のアミノ
酸クラスターをもつ人工分泌シグナル[Y.Yamam
oto et al.,Biochem.Biophy
s.Res.Commun.Vol.149,p.43
1(1987)]も使用できる。ここでは、これらの1
具体例として上記の人工分泌シグナルを使用したものに
ついて以下に説明するが、本発明はこれに限定されるも
のではない。
【0021】人工分泌シグナルに相当するDNAの塩基
配列およびこれを分割したオリゴヌクレオチド断片の構
成を配列番号3の配列の最上部に示した。なお、この配
列で、シグナルに相当する部分(−15〜−1のアミノ
酸残基に相当する部分)の5’側の塩基配列は酵母のE
NO1遺伝子の転写開始点から翻訳開始点までの配列と
同一であり、かつ、この5’末端には制限酵素SaII
部位を、また、この3’側には成熟型WGA蛋白質のN
末端側7〜8アミノ酸に相当する領域を含み、かつその
末端には制限酵素BamHI部位をもっている(配列番
号3の配列のS1〜S4に相当する領域を参照)。な
お、これらのオリゴヌクレオチド断片の化学合成と酵素
的連結は公知の方法によって行った。一方、上記2−1
項でクローン化したWGA遺伝子は、成熟型WGAのN
末端側7〜8アミノ酸を欠失しており、その5’末端に
BamHI部位を、またその3’末端には171番目の
アミノ酸および2ケの翻訳終止コドンの後にHindI
II部位をもっている。そこでシグナル部分とWGA遺
伝子部分の両者をBamHI部位で連結した後、プラス
ミドベクターpNJ1053[このプラスミドベクター
はプラスミドpESH(K.Ichikawa et
al.,Agri.Biol.Chem.Vol.5
3,p.1445〜1447(1989))のHLY遺
伝子部分をプラスミドpBR322のSalI−Hin
dIII断片と置き換えたもの]のSalI−Hind
III部位にクローン化した(図)。なお、このプラ
スミドベクターpNJ1053のSalI部位は酵母の
ENOIプロモーターの転写開始点の3’側に存在する
ため、この部位に翻訳開始コドンATGから始まる遺伝
子を挿入すれば、その転写と翻訳が効率的におこること
が確認されている[K.Ichikawa et a
l.,Agric.Biol.Chem.,Vol.5
3,p.1445−1447(1989)]。このプラ
スミドをpSW(SIGNAL−WGAの略)と命名し
た(図参照)。なお、このようにして作成したシグナ
ルをもつプレWGA遺伝子のシグナル配列および連結部
分の塩基配列が設計通りであることは、前述のように、
公知の塩基配列決定法により、確認した。
【0022】2−3 分泌シグナルをもつ前駆体型WG
A(プレプロWGA)遺伝子の合成と発現用ベクターへ
の導入 次に、上記の分泌シグナルを持つ成熟型WGA遺伝子の
3’末端に小麦胚芽で確認されている15アミノ酸残基
からなるC末端の延長ペプチドを付加したプレプロWG
A遺伝子を合成した。このC末端プロ領域(CTペプチ
ド)の小麦胚芽中での機能は不明であるが、WGA蛋白
質が適切な立体構造に組み上がるために必要であるかも
知れないし、また分泌経路を効率よく輸送されるのに必
要なのかも知れない。いずれにしてもこのWGA蛋白質
前駆体が酵母細胞内で分泌効率の向上に機能するかどう
か、また、このWGA前駆体が酵母で正しく認識されて
成熟型WGAに変換されるか否かは興味深い点である。
【0023】配列番号4には設計したCTペプチドをコ
ードするDNAの塩基配列と合成オリゴヌクレオチド断
片の構成を示した。この領域の5’末端は制限酵素Sm
aI/AvaI部位をもっており、成熟型WGA遺伝子
をAVaI切断したものと連結できるように設計してあ
る。CT1〜CT4で示した4つの断片を前述の方法に
よりハイブリダイズさせたのち、酵素的に連結した。こ
の連結生成物はその5’末端にAVaI部位を、またそ
の3’末端にはHind III部位をもっているた
め、先にクローン化したプラスミドpSW上のWGA遺
伝子を含むSalI−AvaI断片とAvaI部位で連
結した後、これをM13mp19ベクターのSalI−
Hind III部位に挿入した。このクローン化DN
A断片でシグナルを含む成熟型WGA遺伝子とCT部分
とが正しく連結していることはその塩基配列を上記の公
知の方法により調べることにより、確認した。このよう
にして作成した上記のSalI−Hind III断片
は分泌シグナルをもつ成熟型WGA遺伝子の3’末端に
CTに相当するDNAが連結したプレプロWGA遺伝子
の構造をもつものである。この遺伝子を発現させるため
のプラスミドとしては上記のSalI−Hind II
I断片を酵母ENO1プロモーターをもつプラスミドp
NJ1053のSalI−Hind III部位に挿入
することにより作成した(図参照)。このプラスミド
はpSWC(SIGNAL−WGA−CTの略)と命名
した。一方、酵母のα−ファクター遺伝子のプロモータ
ーとプレプロ領域を利用する分泌発現プラスミド[pP
W α−prepro−WGAの略),pPWC(pM
Fα−prepro−WGA−CTの略)〕の構築法に
ついては、図に詳しくその手順を示した。なお、この
構築法の詳細については、実施例7を参照されたい。
【0024】(3)形質転換と酵母によるWGA蛋白質
の分泌生産 前項で記述した合成DNA断片の「クローン化」は、実
際には得られた合成遺伝子を含むベクターを大腸菌など
の宿主を形質転換することにより達成される。形質転換
の方法それ自体は公知であり、宿主として大腸菌を用い
る場合は、例えばCohenらの方法[S.N.Coh
en et.al.,Proc.Natl.Acad.
Sci.USA,Vol.69,p.2110(197
2)]により、又、宿主として酵母を用いる場合は、例
えば、Hinnenらの方法[A.Hinnen e
t.al.,Proc.Natl. Acad.Sc
i.USA,Vol.75,p.1927(197
8)]やItoらの方法[Itoet.al.,J.B
acteriol.,Vol.153,p.163−1
68(1983) ]によって、形質転換が可能であ
る。宿主としては、大腸菌では例えば、E.coli
C600 [Nelsonら、Virology,Vo
l.108,p.338−350(1981)]であ
り、酵母での1具体例は、S.cerevisiae
KK4 [Nogi et.al.,Mol.Gen.
Genet.,Vol.195,p.29−34(19
84)]やヒト・リゾチームを多量菌体外に分泌するs
sll変異をもつS.cerevisiaeであるKS
−58−2D [Suzuki et.al.,Mo
l.Gen.Genet.,Vol.219,p.58
−64(1989)]である。なお、ヒト・リゾチーム
を高分泌する酵母変異株の取得法とそれを用いたヒト・
リゾチームの製造法については、前述の文献のほか、本
発明者の一部等により、特開昭64−47377号公報
にもその詳細が開示されている。また、WGA遺伝子を
組み込んだ組換えプラスミドによる形質転換は上記の宿
主に限定されるものではなく、公知め種々のS.cer
evisiae 誘導体(例えば、YeastGene
tic Stock Center カタログ参照)を
使用することができる。これらのものはYeast G
enetic Stock Center および公認
の微生物機関、例えば American Type
Culture Collection に寄託されて
おりそこから分譲が可能である。
【0025】なお、発現の宿主としては、酵母だけでな
く、カビなどの微生物がひろく利用できるほか、動物細
胞や昆虫細胞およびこれらで増殖複製するウィルスなど
を利用することもできる。また、発現用のベクターとし
ては各々の宿主に適した発現用プロモーターの下流に、
プレWGA遺伝子またはプレプロWGA遺伝子を挿入す
るためのSalI切断部位を有するプラスミドが望まし
い。酵母における形質転換体の1具体例は、野生型S.
cerevisiae KK4 またはssll変異を
もつKS−58−2Ddelを上記のプラスミドpSW
またはpSWCで形質転換させて得た形質転換体、また
は同じ酵母をプラスミドpPWまたはpPwCで形質転
換した形質転換体であって、本発明ではこれをそれぞ
れ、S.cerevisiae KK4(pSW)また
は KS−58−2Ddel(pSW) 、S.cer
visiae KK4(pSWC) またはKS−58
−2Dde1(pSWC)、S.cerevisiae
KK4(pPW)またはKS−58−2Ddel(p
PW)、S.cerevisiae KK4 (pPW
C) またはKS−58−2Ddel(pPWC) と
命名した。
【0026】このようにして得た形質転換体を分子生物
学および発酵学の分野で公知の常法にしたがって培養す
ればWGA蛋白質が分泌生産される。酵母を使用する場
合の培地としては、例えばBurkholder最少培
地[Proc.Natl.Acad.Sci.,US
A,Vol.77,p.4505(1980)]が挙げ
られる。培養は通常20℃〜40℃,好ましくは25℃
〜37℃で、24〜144時間、好ましくは36〜12
0時間行い、必要に応じて通気や撹拌を行ったり、炭素
源を逐次添加して補給することもできる。培養終了後、
それ自体は公知の方法で菌体と上清とを分離する。この
ようにして菌体内あるいは菌体外に産生されたWGA蛋
白質は通常の蛋白質精製法、例えば、塩析、等電点沈
澱、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル瀘過クロマト
グラフィー、高速クロマトグラフィー(HPLC、FP
LC)などにしたがって精製でき、目的のWGA蛋白質
を得ることができる。またこのようにして得たWGA蛋
白質の生物活性、例えば糖鎖の特異的な結合活性はWG
Aが特異的に結合することが公知であるN−アセチルグ
ルコサミンを含む糖蛋白質に対する結合活性を調べるこ
とにより確認することができる。具体的には、例えばオ
ボアルブミン蛋白質をマイクロタイタープレート上に吸
着させ、これに結合するWGA蛋白質を市販の抗WGA
抗体を用いて、サンドイッチELISA法[渋谷直人、
バイオサイエンスとインダストリー、47巻、p.13
01−1302(1989)]により検出することがで
きる。また、WGAが細胞凝集活性をもつことはヒトま
たはウマの赤血球がWGA蛋白質の存在下で凝集するこ
とを肉眼で観察することにより確認することができる。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、
本発明はこれらに限定されるものではない。
【0027】
【発明の効果】本発明において、WGAの生産に遺伝子
工学的手法を採用することにより純度の高いWGAを安
定にかつ多量に製造することができた。
【0028】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
る。ただし、これら実施例により本発明の技術的範囲を
限定するものではない。なお、以下で使用する試薬のう
ち制限酵素については宝酒造社製または東洋紡績社製の
ものを用いた。
【0029】実施例1 オリゴヌクレオチドの合成:S
1〜S4、1〜32、およびCT1〜CT4に相当する
各々のオリゴヌクレオチドフラグメントは、固相合成法
により、Applied Biosystems社製の
DNA合成機(model 391)を用いて合成し
た。ホスホアミダイト試薬等の合成用試薬はすべてAp
plied Biosystems社製のものを用い、
付属のオペレーターズマニュアルにしたがって使用し
た。合成したオリゴヌクレオチドは、核酸塩基と5’水
酸基が保護され、リン酸保護基が脱保護された状態でシ
リカゲル担体から切り出し、回収した。これらの保護デ
オキシオリゴヌクレオチド1mlに、28%アンモニア
水3mlを加え、密栓容器中、60℃、8〜16時間処
理することにより、5’末端のジメトキシトリチル基以
外はすべて脱保護されたオリゴヌクレオチドを得た。溶
液中のアンモニアをNガスを吹き付けて除去した後、
Millex−GS フィルター(ポアサイズ0.22
μm、Millipore社製)により瀘過し、C18
逆相カラム(Cosmosil 5 C18,(株)半
井化学製)を用いて高速液体クロマトグラフィーにより
分離・精製し、最も遅く溶出される画分を回収した。こ
の画分を2mlに濃縮し、等量の酢酸を加えて、30分
間放置し、ジメトキシトリチル基を除去した。酢酸をエ
ーテルによって抽出した後、上記の方法によりC18逆
相クロマトグラフィーで精製し、4〜13 OD260
単位の完全に脱保護されたオリゴヌクレオチド約148
〜481μgを得た。
【0030】実施例2 オリゴヌクレオチドのハイブリ
ッド形成とその酵素的連結:成熟体WGAII遺伝子2
本鎖のA、B、C+Dブロックを作成するための酵素的
連結法の概略は図1〜図3に示してある。ここでは、そ
の詳細を記載する。5’末端が制限酵素サイトとなって
いるNo.1,18,19,32を除き、オリゴヌクレ
オチド各40μgを全液量が100μlで、しかも50
mM Tris−HCl(pH7.5),10mM M
gCl2,15mM DTT,0.4mM Na2ED
TA,1mM ATPの組成となるように調製し、T4
ポリヌクレオチドキナーゼ(EC2.7.1.78)
(16 unit/μl,1μl)を加え、37℃で、
1時間インキュベートした。反応液を飽和フェノールで
洗い、3M 酢酸ナトリウム(pH5.2)とエタノー
ルを加え、−80℃で10分間保ち、オリゴマーを沈澱
させ、20mM Tris−HCl(pH7.5),1
0mM MgCl2 を含む100μlの緩衝液を加え
た。5’−位をリン酸化したn番目とn+1番目(n:
奇数)のオリゴマーを等モル混合し、65℃で10分
間、37℃で20分間、インキュベートした後、室温で
10分間放置してアニーリングし、2本鎖を形成させ
た。図1〜図3の連結スキームにしたがって、隣接する
2本鎖を混合し、全液量が60μlで、しかも20mM
Tris−HCl(pH7.5),10mM MgC
12,1mM ATP,10mMDTTになるように調
製し、T4DNAリガーゼ(EC6.5.1.1)(5
unit/μl,2μl)を加え、20℃で30分間イ
ンキュベートして連結した。各連結段階では、反応液の
一部分をアクリルアミドゲル電気泳動に付し、反応の完
結と副反応の有無を確認した。C+Dブロックについて
は、最終の連結段階で副反応による多数のバンドが認め
られたため、8% ポリアクリルアミドゲル電気泳動を
行い、目的とするバンドを含むゲルを切り出し、ゲルを
細片化したのち、遠心限外瀘過(Millipore社
製、ウルトラフリーC3HV)にて溶出した。
【0031】最終ステップの反応を終えたAブロック断
片とゲルから溶出回収したC+Dブロック断片は、フェ
ノールで洗い、3M 酢酸ナトリウム(pH 5.2)
とエタノールを加え、−80℃で10分間保ち、沈澱さ
せた後、前述と同様にしてT4DNAキナーゼで5’末
端をリン酸化した。サブクローニングのために、Aブロ
ックとBブロックの末端部分は、制限酵素SpeIおよ
びApaIで切り落とし、粘着末端を露出させた。具体
的には、BブロックについてはDNA断片2.18 μ
gを、10mM Tris−HCl(pH7.5),1
0mM MgCl2,1mM DTTおよび18単位の
ApaIを含む300μlの反応液中で37℃で、1時
間反応させた後、26.1μlの1MNaclと2μl
のSpeI(10unit/μl)を加え、再び、37
℃で1時間反応させた。また、Aブロックについては、
DNA断片3μgを、10mM Tris−HCl(p
H7.5),50mM Nacl,10mMMgCl
2,1mM DTT および10単位のSpeIを含む
50μlの反応液中で、37℃、1時間反応させた。こ
のようにして制限酵素処理をしたAブロックとBブロッ
クは、フェノールで洗った後、エタノール沈澱を行っ
た。
【0032】実施例3 各ブロック断片のサブクローニ
ング ファージスクリプト(Phagescript)SK
(STRATAGENE社製;東洋紡:Code N
o. SC221201)10μgに50ユニットのA
paIを加え、50μlの反応液(10mM Tris
−HCl(pH7.5),10mM MgCl2,1m
MDTT)中で37℃、1時間作用させた後、6.95
μlの1M KCl と5μlのHind III
(10unit/μl)を加え、さkに1時間反応させ
た。フェノールで除蛋白、冷エタノールで沈澱させた
後、0.7% アガロースゲル電気泳動を行い、目的の
バンドを含むゲル部分を切り出して、透析チューブ内に
封入し、泳動用緩衝液内に沈め、電気的に溶出した。こ
れを、フェノールで処理し、冷エタノールで沈澱させ
た。該DNAに実施例2で調製したC+DブロックDN
A断片19.2μgを混合し、100μlの連結反応液
(20 mM Tris−HCl(pH7.5),1
0mM MgCl2,1mM DTT,1mM AT
P,T4 DNAリガーゼ、12.5ユニット)中、1
6℃、1時間反応させて、DNAを連結した。このう
ち、半量を用い、大腸菌XLl−Blue株(STRA
TAGENE社製;東洋紡:Code No.SC21
2301)にCohenらの方法(S.N.Cohen
et al.,Proc.Natl.Acad.Sc
i. USA,Vol.69,p.2110(197
2))にしたがって、形質転換した。プレート上の指標
大腸菌のプラークが、DNA断片の挿入のないものでは
X−Galの分解により青色を呈するのに対し、DNA
断片の挿入のあるものでは無色になることを利用して目
的の形質転換体を選択し、この形質転換体の中から、ア
ルカリ抽出法(H.C.Birnboim and
J.Doly,Nucl.Acids Res.,Vo
l.7,p.1513(1979))によってプラスミ
ドを単離し、分子量および制限酵素による分解パターン
を調べ、ファージスクリプトSK のApaI−Hin
d III部位にC+Dブロックの挿入されたプラスミ
ドを得た(図)。
【0033】同様の方法によって、AブロックとBブロ
ックのDNA断片は、ファージスクリプトSKのBam
HI−XbaI部位、ブルースクリプト(Bluscr
ipt)KS(+)(STRATAGENE社製;東洋
紡:Code No.SC212207)のSpeI−
ApaI部位に各々挿入した。AブロックDNA断片は
両端にBamHIサイトとSpeIサイトを持つことか
ら、最初はファージスクリプトSKのマルチクローニン
グサイトのBamHI−SpeI部位に導入することを
試みたが、成功しなかった。BamHIとSpeI部位
が隣接しているため、BamHIとSpeIの両制限酵
素で切断されなかったためと思われる。そこで、Spe
I部位と同一の粘着末端をもつXbaI部位を用いて、
BamHI−XbaI部位に挿入した(図、図
照)。各ブロックDNA断片の塩基配列は、既知のデオ
キシヌクレオチド法(F.Sanger et a
l.,Proc.Natl.Acad.Sci.US
A,Vol.74,p.5463(1977))による
DNA塩基配列を両ストランドの全域について分析する
ことにより、設計通りであることを確認した。
【0034】実施例4 WGA遺伝子のサブクローニン
グ:C+DブロックDNA断片を導入したファージスク
リプトSK500μgを、500unitの制限酵素A
paIを含む反応液(10mM Tris−HCl(p
H7.5),10mM MgCl2,1mM DTT)
1.2ml中、37℃、2時間反応させた後、86.1
μlの1MKCl と38.5μlのHind III
(10 unit/μl) を加え、さらに37℃、一
夜反応させた。フェノールによる除蛋白、エタノール沈
澱の後、8%ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行い、
0.27KbのC+DブロックDNA断片を回収した。
AブロックDNA断片に関しては、基本的にはC+Dブ
ロックと同様であるが、この断片がファージスクリプト
SK のBamHI−XbaI部位に導入されているこ
とから、マルチクローニングサイトのXbaI部位の外
側にあるSacI部位を用いて、一担、AブロックのD
NA断片を含むBamHI−SacIによる2重消化に
よって、DNA断片を切り出した。そしてこの断片をさ
らに、SpeIにより生じる4baseの粘着末端部分
と同じ塩基配列を認識するMaeIにより消化し、Ba
mHIとMaeI部位の両末端をもつAブロックDNA
断片を得た。BブロックDNA断片に関しても、Aブロ
ックDNA断片と連結するために、末端に同じMaeI
の切り口をもつ必要があることから、BブロックDNA
断片を導入したBluescript KS(+)か
ら、一度、SacI−ApaIによる2重消化を行った
のち、これをさらにMaeIで消化することにより、M
aeIとApaIの両末端をもつBブロックDNA断片
を得た。
【0035】このようにして調製したAブロック、Bブ
ロック、C+Dブロックの各DNA断片は図のように
して連結した。BブロックとC+DブロックDNA断片
を混合し、T4DNAリガーゼを含む実施例2に記載し
た反応液350μl中で、16℃、一夜反応させた。フ
ェノール処理、エタノール沈澱の後、MaeI30un
itを含む反応液 (20mMTris−HCl(pH
8.0),250mM Nacl,6mM MgCl
2,7mM β−メルカプトエタノール,100μg/
mlBSA)150μl中、45℃、1時間反応させた
後、8%ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行い、0.
39kbのB+(C+D)ブロックDNA断片を回収し
た。次に、AブロックDNA断片とB+(C+D)ブロ
ックDNA断片とを混合し、上記と同様の方法で連結反
応を行いBamHとHindIIIによる二重消化を
した後、フェノール処理、エタノール沈澱を行い、A+
B+(C+D)ブロックDNA断片、即ち、成熟体型W
GA遺伝子を作成した。 一方、pUC18プラスミド
(東洋紡:Code No.PUC−018)10μg
を、30unitのHind IIIを含む反応液(1
0mM Tris−HCl(pH7.5),10mMM
gCl2,1mm DTT,65mM KCl)100
μl中、37℃、一夜反応させ、0.7%アガロースゲ
ル電気泳動により、線状化したプラスミドDNAを回収
した。この5μgと上記、成熟体型WGA遺伝子(A+
B+(C+D))45μgとを混ぜ、上記と同様の方法
にて連結反応を行った。該DNAを用い、大腸菌JM1
09株(東洋紡:Code No.DNA−900)に
Cohenらの方法にしたがって形質転換した。アンピ
シリン耐性を指標にして選択した形質転換体の中から、
アルカリ抽出法によってプラスミドDNAを単離し、そ
の分子量および制限酵素による分解パターンを調べるこ
とにより、成熟体型WGA遺伝子の導入されたプラスミ
ドを取得した。
【0036】実施例5 成熟体型WGA遺伝子分泌発現
用プラスミドの構築:図に構築の概略を示した。具体
的には以下に記す。酵母を用いた異種蛋白質の分泌発現
用に改良した人工シグナル配列(Y.Yamamoto
et al.,Biochem.Biophys.R
es.Commun.Vol.149,p.431(1
987))をコードするオリゴヌクレオチドS1〜S4
を実施例1に記載した方法にしたがって合成した。これ
らのフラグメントは、実施例2に記載した方法にしたが
って、S2とS3をリン酸化し、アニーニングと連結を
行った後、再び、末端をリン酸化した。一方、実施例4
で作成した成熟体型WGA遺伝子を挿入したpUC18
プラスミド200μgを、同じく実施例4で記載した場
合と同様、制限酵素BamHIとHindIIIの2重
消化を行った後、8%ポリアクリルアミドゲル電気泳動
を行い、0.5kbの成熟体型WGA遺伝子断片を回収
した。シグナル部分(S1〜S4)のDNA断片と成熟
体型WGA遺伝子断片とを等モル混合し、実施例1に記
載した方法にしたがって、連結した。フェノール処理、
エタノール沈澱の後、40unitのHind III
を含む反応液(65mM KCl,10mM Tris
−HCl(pH7.5),10mM MgCl2,1m
M DTT)100μl中、37℃、1時間反応させ、
さらに、9μl1M KCl,8μl dH20,3μ
l SalI(15unit/μl)を加え、37℃、
1時間反応させ、再びフェノール処理、エタノール沈澱
を行い、分泌シグナルを連結したWGA遺伝子(SIG
−WGA)6μgを得た。
【0037】一方、プラスミド pNJ1053を上記
と同様、制限酵素HindIIIとSalIで2重消化
し、反応物を0.7%アガロースゲル電気泳動によって
分離し、8.6kbのDNA断片を回収した。このプラ
スミドDNA0.04μgと上記SIG−WGA遺伝子
の半量とを混合し、実施例3に記載した方法にしたがっ
て、連結反応を行った。これを、大腸菌XLl−Blu
e株にCohenらの方法にしたがって、形質転換し
た。アンピシリン耐性を指標として選択した形質転換体
の中から、アルカリ抽出法によってプラスミドを単離
し、分子量および制限酵素による分解パターン調べるこ
とにより、pNJ1053の酵母ENO1プロモーター
下流のSalI−HindIII部位に、SIG−WG
A遺伝子が挿入された、酵母での成熟体型WGA遺伝子
分泌発現プラスミドpSW1145mgを得た。
【0038】実施例6 前駆体WGA蛋白質遺伝子分泌
発現用プラスミドの構築:構築の概略は図の後半部分
に示した。CTペプチドをコードしたオリゴヌクレオチ
ドCT1〜CT4を、実施例1に記載した方法にしたが
って合成した。つぎに、実施例2に記載した方法にした
がって、CT2とCT3をリン酸化し、CT1とCT2
およびCT3とCT4をアニーリング、連結したのち、
再び末端のリン酸化を行い、CTペプチドをコードする
ブロックDNA断片を得た。一方、実施例5で作成した
pSWプラスミド330μgを、実施例5に記載した方
法にしたがって、制限酵素SalIとHind III
で2重消化し、8%ポリアクリルアミドゲル電気泳動を
行い、0.58KbのSIG−WGA 遺伝子断片を回
収した。このSIG−WGA遺伝子断片18μgを、2
0unitの制限酵素AvaIを含む反応液(10mM
Tris−HCl(pH7.5),10mMMgCl
2,1mM DTT,25mM Nacl)100μl
中、37℃、2時間反応させた後、8%ポリアクリルア
ミドゲル電気泳動を行い、0.53KbのDNA断片を
回収した。このDNA断片6.4μgと上記CTペプチ
ドをコードするDNA断片1.6μgを混合し、実施例
2に記載した方法により連結した後、前述と同様、制限
酵素SalIとHind IIIで2重消化した。5%
ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行い、分泌シグナル
とCTペプチドを有する0.63KbのWGA遺伝子
(SIG−WGA−CT遺伝子)断片2.1μgを回収
した。次に、プラスミドM13mp19(東洋紡:Co
de No.M13−019)20μgを、前述と同
様、制限酵素SalIとHind IIIで2重消化
後、0.8%アガロースゲル電気泳動を行い、7.5k
b のプラスミドDNA断片を回収した。このプラスミ
ドDNA0.4μgと上記SIG−WGA−CT遺伝子
断片2μgを混合し、実施例2に記載した方法にしたが
って連結した。これを大腸菌XL1−Blue株にCo
henらの方法により形質転換した。実施例3に記載し
た様にX−galの分解による青色を呈せず、DNA断
片の挿入により無色となったファージの中から、アルカ
リ抽出法によってプラスミドを単離し、分子量および制
限酵素による分解パターンを調べ、M13mp19のS
alI−HindIII部位にSIG−WGA−CT遺
伝子断片が導入されたプラスミドを得た。 このファー
ジから、ssDNAを回収し、既知のdideoxyn
ucleotide 法によるDNA塩基配列によっ
て、SIG−WGA−CT遺伝子の塩基配列が設計通り
であることを確認した。
【0039】さらに、上記SIG−WGA−CT遺伝子
を導入したM13mp19から、前述と同様、制限酵素
SalIとHind IIIで2重消化した後、5%ポ
リアクリルアミドゲル電気泳動を行い、0.63kbの
SIG−WGA−CT遺伝子断片を回収した。このDN
A断片と実施例5で調製したSalI−Hind II
I部位を欠失したpNJ1053とを実施例5に記載し
た方法で連結した。これを大腸菌XL1−Blue株に
Cohenらの方法にしたがって形質転換し、アンピシ
リン耐性を指標として選択した形質転換体の中から、ア
ルカリ抽出法によってプラスミドを単離し、分子量およ
び制限酵素による分解パターンを調べ、pNJ1053
の酵母ENO1プロモーター下流のSalI−Hind
III部位にSIG−WGA−CT遺伝子の挿入され
た、前駆体WGA蛋白質分泌発現用プラスミドpSWC
を得た。
【0040】実施例7 酵母のα−ファクター遺伝子の
プロモーターとプレプロ領域を利用する成熟型WGA遺
伝子およびプロWGA遺伝子の分泌発現用プラスミドの
構築:構築の概略は図に示した。具体的には以下のよ
うにして行った。EcoRI部位にα−ファクターのプ
ロモーターから構造遺伝子全領域を含む1.7KbのD
NA断片をもつpLS01プラスミド[K.Inoku
chi et al.,Mol.Cell.Bio
l.,Vol.7,p.3185−3193(198
7)]260μgを300unit の制限酵素Eco
RIと600 unitのHind IIIを含む反応
液 (10mM Tris−Hcl(pH7.5),1
0mM MgCl2,1mM DTT,75mM KC
l)中で、37℃、一夜反応させた後、0.7%アガロ
ースゲル電気泳動にて、酵母α−ファクターのプロモー
ターからプレプロ領域を含む1.2Kb のDNA断片
を回収した。このDNA断片の末端のEcoRI部位を
SalI部位に変換するため、実施例1に記載した方法
にしたがって、SalI−EcoRIアダプター を合成した。上記のアダプター20μgに40unit
のT4ポリヌクレオチドキナーゼ(東洋紡(株)製)を
100μlの反応液(50mM Tris−HCl(p
H7.5),10mM MgCl2,15mMDTT,
0.4mM Na2EDTA,1mM ATP)中で3
7℃、1時間作用させ、5’末端をリン酸化した。この
1μgのアダプターと、40μgの上記 α−ファクタ
ーのプロモーターからプレプロ領域のDNA断片を混合
し、実施例2記載の条件下でT4DNAリガーゼの作用
で結合させた後、制限酵素SalIとHindIIIで
消化した。次に 8%ポリアクリルアミドゲル電気泳動
を行い、末端にSalI部位とHind III部位を
有する、α−ファクターのプロモーターからプレプロ領
域のDNA断片を回収した。上記断片のα−ファクター
のプレプロ領域と成熟体及び前駆体WGA遺伝子とをイ
ンフレームで連結するために、実施例1記載の方法にし
たがって下記の合成アダプター を合成した。各オリゴヌクレオチド40μgを上記と同
様 T4ポリヌクレオチドキナーゼを作用させ5’末端
をリン酸化した後、このDNA8μgと上記α−ファク
ターのプロモーターからプレプロ領域を含むDNA断片
25μgを混合し、実施例2記載の条件下で T4DN
Aリガーゼを作用させ連結した。これを制限酵素Sal
I及びBamHIで二重消化した後、0.8%アガロー
スゲル電気泳動を行い、WGA遺伝子との連結部をも
ち、かつα−ファクターのプロモーターからプレプロを
含む約1.2kb のDNA断片を回収した。
【0041】一方、実施例4で作成した、成熟型WGA
遺伝子を挿入したpUC18 プラスミド200μg
を、200ユニットの制限酵素Hind IIIを含む
200μlの反応液(10mM Tris−HCl(p
H7.5),10mM MgCl2,1mM DTT,
65mM KCl)中で、37℃、1時間30分間反応
させた後、18μl 1M KCl,6μl dH2
0,16μl BamH1(200ユニット)を加え、
さらに1時間反応させた。これを 8%ポリアクリルア
ミドゲル電気泳動を行い、0.5kbの成熟型WGA遺
伝子を回収した。このDNA断片30μgと、上記WG
A遺伝子との連結部をもち、α−ファクターのプロモー
ターからプレプロ領域を含むDNA断片10μgとを混
合し、実施例2記載の条件下でT4DNAリガーゼの作
用で結合させた。これを制限酵素SalIとHind
IIIで二重消化の後、0.8%アガロースゲル電気泳
動を行い、DNAをゲルから回収し、α−ファクターの
プロモーター下にプレプロ領域とインフレームで連結さ
れた成熟型WGA遺伝子(MFα−WGA遺伝子)を得
た。このDNA断片を、実施例6と同様の方法で、M1
3mp19のSalI−Hind III 部位の間に
挿入した。このファージから、ssDNAを回収し、M
Fα−WGA遺伝子の塩基配列を、既知のデオキシヌク
レオチド法によるDNA塩基配列分析によって確認し
た。 MFα−WGA 及びMF α−WGA−CT遺
伝子の酵母での発現ベクターは、以下のようにして構築
した。pNJ1053 100μgを、105ユニット
の制限酵素SmaIを含む200μlの反応液(10m
M Tris−HCl(pH7.5),7mM MgC
l2,20mM KCl,7mM 2−mercapt
oethanol,100μg/ml BSA)中、3
0℃、1時間反応させた後、実施例1記載の方法にした
がって合成し、5’末端をリン酸化したSaIIリンカ
0.3μgと混ぜ、T4DNAリガーゼを作用させて連
結した。これを再び、SmaIで消化した後、Cohe
nらの方法にしたがって、大腸菌XL1−Blueに形
質転換した。アンピシリン耐性を指標として選択した形
質転換体の中から、アルカリ抽出法によってプラスミド
を単離し、SalI消化によって0.95Kb のDN
A断片が生じることを確認し、pNJ1053のSma
I部位にSalIリンカーを導入したpNJ1054を
得た。このpNJ1054 37.5μgを、実施例5
記載の条件下で制限酵素SalIとHindIIIで二
重消化した後、0.8% アガロースゲル電気泳動にて
ENO1プロモーターを欠いた7.3KbのDNAを得
た。このベクター側DNA2μgと前述のM13mp1
9のSalI−Hind III部位間のMFα−WG
A をSalI−Hind IIIの二重消化によって
切り出したDNA断片1.5μgとを混合し、実施例2
記載の方法にしたがってT4DNAリガーゼを作用さ
せ、連結した。このDNAをCohenらの方法にした
がって、大腸菌XL1−Blueに形質転換した後、ア
ンピシリン耐性を指標として選択した形質転換体の中か
らアルカリ抽出法によってプラスミドを単離し、制限酵
素による分解パターンを調べ、酵母α−ファクターのプ
レプロ領域をもつ成熟型WGA蛋白質分泌発現プラスミ
ド(pPW)182.5μgを得た。一方、CTペプチ
ドを有する前駆体WGA に関しても、上記と全く同様
の方法により、酵母α−ファクターのプレプロ領域をも
つ発現プラスミド(pPWC)245μgを作成した。
【0042】実施例8 酵母形質転換体の調製 4種の成熟体及び前駆体WGA遺伝子分泌発現用プラス
ミドpSW,pSWC,pPW及びpPWCを用いて
酵母野生株Saccharomyces cerevi
siae KK4株 (MAT α,ura3,his
1,or his3,trp,leu2,gal80)
または 高分泌酵母変異株KS−58−2Ddel株
(MAT α,leu2,ura3,his,ssl
l)を、既知の酢酸リチウム法(例えば、to et
al.,J.Bacteriol.,Vol.15
3,p.163(1983))で形質転換し、該プラス
ミドを保持するロイシン非要求性の形質転換体を得た。
これらの形質転換体を各々S.c.KK4(pSW),
S.c.KK4(pSWC),S.c.KK4(pP
W),及びS.c.KK4(pPWC)およびS.
c. KS−58−2Ddel(pSW),S.c.K
S−58−2Ddel(pSWC),S.c.KS−5
8−2Ddel(pPW),及びS.c.KS−58−
2Ddel(pPWC)と命名した。また、発現の有無
をチェックするコントロールとして、WGA遺伝子を持
たないプラスミドpNJ1053をもつKK4株とKS
−58−2Ddel株(各々KK4(pNJ1053)
およびKS−58−2Ddel(pNJ1053) と
命名した)も同様の方法により作成した。
【0043】ここで得られる形質転換体は工業技術院微
生物工業技術研究所に寄託している。その寄託番号は次
の通りである。 S.c.KS−58−2Ddel(pSW) 微工研菌寄第12444号 S.c.KS−58−2Ddel(pSWC) 微工研菌寄第12442号 S.c.KS−58−2Ddel(pPW) 微工研菌寄第12443号 S.c.KS−58−2Ddel(pPWC) 微工研菌寄第12441号
【0044】実施例9 分泌発現プラスミドをもった酵
母野生株および高分泌変異株の培養 実施例8で作成した種々のプラスミドをもつ酵母形質転
換体は、それぞれ、ロイシンを除いた各種アミノ酸(終
濃度20〜375mg/l)と過剰量のヒスチジン(終
濃度400mg/l)、アデニンサルフェイト(終濃度
20mg/l)、過剰量のウラシル(終濃度400mg
/l)を含む最小培地(Difco社製、アミノ酸不含
バクト酵母窒素塩基)(Sherman et a
l.,Methods in Yeast Genet
ics,p.62,Cold Spring Harb
our(1982)参照)に炭素源として8%グルコー
スを加え30℃で5日間、振盪培養を行った。
【0045】実施例10 分泌生産されたWGA蛋白質
のウェスタンブロット法による解析 実施例9の方法により、30℃、5日間培養した培養液
40mlを取り、遠心分離して酵母細胞を除き、培養上
清画分を得た。これを凍結乾燥の後、5mlの脱イオン
水に溶解し、脱イオン水に対して充分透析した。再度、
凍結乾燥と透析を行い、333倍に濃縮した。このう
ち、15μl(5ml培養上清に相当する)に同量のL
aemmli’s buffer〔80mM Tris
−HCl(pH6.8),2%SDS,10%グリセロ
ール、100mM DTT,2mM PMSF,0.0
01%BPB〕を加え、10分間煮沸した。急冷後、全
量30μlをSDS−15%PAGEに掛け、150V
で3時間電気泳動した。泳動後、分泌された蛋白質をP
VDFメンブランフィルター(イモビロン、ミリポア社
製)へ転写した。具体的には、アトー社製のトランスブ
ロット装置を用いて、転写用緩衝液(25mM Tri
s−HCl(pH7.5),192mMglycin
e,0.1%SDS,15% methanol)中
で、10V、1時間、転写させた。得られたメンブラン
フィルターをTBS緩衝液(100mM Tris−H
Cl(pH7.5),150mM NaCl)に10分
間浸した後、ブロッキング溶液(TBSに3%のゼラチ
ンを溶解したもの)に入れ、30分間振盪した。次に、
ウサギ抗WGA抗体(SIGMA社製、Lot No.
128−8810)の500倍希釈溶液中に上記のメン
ブランフィルターを入れ、一夜ゆっくりと振盪した後、
TTBS(TBSに0.05%Tween20を加えた
もの)で10分間ずつ、2回、ゆっくり振盪しながら洗
浄した。得られたメンブランフィルターを125 I−
protein ANew England Nuc
lear社NEX146L10溶液中に入れ、1時間
かるく振盪して反応させた後、TTBSで10分、TB
Sで10分、ゆっくり振盪しながら洗浄した。得られた
メンブランフィルターを乾燥後、オートラジオグラフィ
ーで検出した。
【0046】結果は図に示した通りで、市販のWGA
標準品((株)ホーネンコーポレーション製)と同一の
移動度を示す位置に、抗WGA抗体と反応する鮮明な単
一のバンドが確認された。プラスミドpSWをもつ酵母
で市販のWGA標準品と同一サイズのWGAを生成する
ことから、人工分泌シグナルは酵母内でWGAとの融合
部分で正しく切断されることがわかった。さらに、CT
ペプチドを有する前駆体WGA分泌発現用プラスミドp
SWCをもつ酵母でも、WGA標準品と同じ位置にバン
ドが検出され、その分泌量はCTペプチドをもたないp
Wの場合の約2倍であることは特筆すべきことであ
る。このことは、CTペプチドの付加が分泌量の増加に
効果のあることを示すとともに、小麦胚芽中と同様、酵
母細胞内でもプレプロWGAからCTペプチド部分が切
断されることを示している。また、上記の結果はMFα
のプレプロ領域に融合したWGA蛋白質も融合部位で正
しく切断され、WGA標準品と同一の分子量を与えるこ
とを示している。但し、WGAの分泌量はMFαのプレ
プロ型よりもENO1プロモーターと人工分泌シグナル
の組み合せ型のほうが有意に高かった。さらに、注目す
べきことは、ヒト・リゾチームを高分泌する変異株とし
て単離した酵母変異株であり、液胞蛋白質を細胞外にミ
スソーティングする変異ssllをもつ株であるKS−
58−2DdelのWGA蛋白質分泌量が、野生株KK
4に比べて約20倍以上高いことである。この結果は明
かに、液胞への蛋白質輸送に欠損をもつ変異株の利用が
WGAの分泌生産に有利であることを示している。な
お、WGA蛋白質の分泌量が最も多かったのはKS−5
8−2Ddel(pSWC)を用いた場合で、その分泌
量は約200μg/lであった。
【0047】実施例11 分泌生産されたWGA蛋白質
の分離・精製 酵母形質転換体KS−58−2Ddel(pSWC)
を、実施例9の培地6L中で30℃、5日間培養した。
培養液を遠心分離して酵母細胞を除き、培養上清画分を
得た。この上清画分を凍結乾燥の後、少量(100〜1
50ml)の脱イオン水を加え、20mM酢酸緩衝液
(pH4.0)に対して充分に透析した。透析後、濃縮
脱塩した試料をFPLCシステム(Pharmacia
社製)を用い、陽イオン交換カラムMono S HR
5/5 (Pharmacia社製)で分離した。 実
施例12で述べる糖鎖の結合活性をもつ画分は1ml/
minの流速で20mM酢酸緩衝液(pH4.0)存在
下、0.01M NaCl/minのNaCl直線濃度
勾配にかけることによって、約20〜40分に溶出され
た。以上のクロマトグラフィーにおける溶出パターンと
活性画分の位置を図に示した。この活性画分を集め、
遠心限外瀘過器(Millipore社製、ウルトラフ
リー20、再生セルロース膜)により、20 mM T
ris−HCl(pH9.5)緩衝液にバッファー交換
した後、陰イオン交換カラムMono Q HR5/5
(Pharmacia社製)で分離した。1ml/mi
nの流速で20mM Tris−HCl(pH9.5)
緩衝液存在下、60分間の0〜0.3MNaClの直線
濃度勾配で溶出した。この時の溶出パターンと各画分の
活性を図に示した。活性を有する画分を遠心限外瀘過
器(Millipore社製、ウルトラフリーCL、U
FC4LGC25、再生セルロース膜)により、20m
Mクエン酸緩衝液(pH3.8)に置換し、再び、陽イ
オン交換カラムMonoSHR5/5(Pharmac
ia 社)で分離した。1ml/minの流速で20m
Mクエン酸緩衝液(pH3.8)存在下、0.01M
NaC1/minのNaCl直線濃度勾配で溶出した。
10にこの溶出パターンを示したが、糖鎖結合活性は
約27分で溶出する主要ピークに検出された。また、市
販のWGA標品(WGAI,II,IIIの混合物)を
陽イオン交換カラムMono Sにより上記と同一のN
acl直線濃度勾配で分離精製した。図11にこの時の
WGAイソレクチン蛋白質の分離パターンを示したが、
組換えWGA蛋白質の溶出位置は約27分で溶出するW
GAIIの溶出位置と一致していた。上記クロマトグラ
フィーによる組換えWGA分離精製におけるメインピー
ク(図10参照)を分取し、SDS−15%PAGEを
行った結果が図12である。クマシーブリリアントブル
ーによる染色により、組換え体酵母の分泌生産するWG
A蛋白質試料からは標準WGA II蛋白質と同一の移
動度を示す単一のバンドのみが検出された。なお、この
ようにして精製した組換えWGA II蛋白質の収量は
約100μg/lであった。
【0048】実施例12 分泌生産されたWGA蛋白質
の糖鎖結合活性の検出 図13にWGA蛋白質の糖鎖結合活性の検出法を示し
た。96穴のマイクロタイタープレート(ELISA用
プレートF−FORM,グライナー社製)の各ウエル
に、1%オボアルブミン(SIGMA社製、5X結晶)
のPBS溶液を100μlずつ加え、室温で1時間放置
し、プラスチック表面をオボアルブミンでコートした。
0.05% Tween 20 を含むPBSで100
μlずつ3回洗浄したのち、種々の濃度の精製した組換
えWGAII蛋白質または実施例11に示した方法によ
り市販のWGA標品から分離精製したWGAII蛋白質
を含むPBS溶液50μlを加え、室温で、1時間放置
した。0.05% Tween 20 のPBS溶液で
100μlずつ3回洗浄後、抗WGA抗体(SIGMA
社製、Lot.No.128F8810)の150倍希
釈PBS溶液50μlを加え、室温で1時間放置した。
再度上記と同様に洗浄した後、二次抗体として、抗ウサ
ギIgG抗体とアルカリフォスファターゼのコンジュゲ
ート(E.Y.ラボラトリーズ社)の300倍希釈PB
S溶液50μlを加え、室温で1時間放置した。洗浄
後、p−ニトロフェニルフォスフェート1mg/mlを
含むジエタノールアミン緩衝液(ジエタノールアミン
9.7%vol,0.5mM MgCl2,3mM N
aN3,pH9.5)を50μl加え、室温でp−ニト
ロフェノールの発色を観察した。発色を1N NaOH
50μlを加えて止め、マイクロタイタープロートリー
ダー(コロナ社、MTP−32)にて415nmの吸光
度を測定した。結果は図14の如く、組換えWGAは標
準WGAIIと同一の糖鎖結合比活性(蛋白質当りの糖
鎖結合能)を示した。なお、蛋白質の定量は、BCA蛋
白質定量試薬(PIERCE社製)を用い、付属のプロ
トコールにしたがって行った。WGAに関する限り、B
CA法はクマシーブリリアント法に比べて、約70倍感
度が高かった。以上の結果から、酵母で分泌生産された
WGAII蛋白質は小麦由来のWGAIIと同一の糖鎖
結合活性をもつことが判明した。
【0049】
【配列表】
【0050】
【0051】3・配列番号3 (1)配列の長さ:588 (2)配列の型:核酸 (3)鎖の数:二本鎖 (4)トポロジー:直鎖状 (5)配列の種類:合成DNA (6)起源 (a)生物名:なし(合成DNA) (b)株名:なし (7)配列の特徴:酵母のENolプロモーターの1
部、人工分泌シグナル、WGA成熱体をコードする遺伝
子から構成される。 (8)配列:
【0O52】
【化1】
【0053】4.配列番号4 (1)配列の長さ:94 (2)配列の型:核酸 (3)鎖の数:二本鎖 (4)トポロジー:直鎖状 (5)配列の種類:合成DNA (6)起源 (a)生物名:なし(合成DNA) (b)株名:なし (7)配列の特徴:小麦胚芽凝集素蛋白質(WGA)の
成熱体のC末端側1部領域とWGAのプロ領域とをコー
ドする遺伝子配列 (8)配列:
【0054】
【化2】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図面の簡単な説明
【補正方法】変更
【補正内容】
【図面の簡単な説明】
【図1】Aブロックの酵素的連結法とサブクローニング
を示すフローチャートである。
【図2】 Bブロックの酵素的連結法とサブクローニング
を示すフローチャートである。
【図3】 C+Dブロックの酵素的連結法とサブクローニ
ングを示すフローチャートである。
【図4】 A、B、C+Dブロックの酵素的連結法とサブ
クローニングを示すフローチャートである。
【図5】 成熟体型および前駆体型WGA遺伝子の分泌発
現用プラスミドの構築法を示すフローチャートである。
【図6】 酵母のα−ファクター遺伝子のプロモーターと
プレプロ領域を利用する成熟型および前駆体型WGA遺
伝子の分泌発現用プラスミドの構築法を示すフローチャ
ートである。
【図7】 分泌WGA蛋白質のウエスタンブロット法によ
解析図である
【図8】 酵母培養液中のWGA蛋白質のMono S
カラムによる分離の結果のクロマトグラムと活性画分の
位置を示すグラフである。
【図9】 上記図8におけるWGA溶出画分のMono
Q カラムによる分離精製の結果のクロマトグラムと活
性画分の位置を示すグラフである。
【図10】 上記図9におけるWGA画分のMono S
カラムによる分離精製の結果のクロマトグラムであ
る。
【図11】 市販のWGA標品(WGAI、II、III
の混合物)のMono S カラムによる分離の結果の
クロマトグラムである。
【図12】 組換えWGA蛋白質のSDS−15%ポリア
クリルアミドゲル電気泳動による純度検定の結果を示す
電気泳動パターンである。
【図13】 WGA蛋白質の糖鎖結合活性の検定法を示す
模式図である。
【図14】 組換えWGA蛋白質と標準WGA蛋白質にお
ける糖鎖結合活性の比較のための、WGA量と吸光度の
関係を示したグラフである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正内容】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図6】
【図8】
【図9】
【図12】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12R 1:865) (C12P 21/02 C12R 1:865)

Claims (18)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 配列番号1のヌクレオチド配列で表わさ
    れる小麦胚芽凝集素の成熟体構造遺伝子。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の小麦胚芽凝集素の構造遺
    伝子の5’端に分泌に必要なシグナルペプチドをコード
    するDNA領域を、また3’端に翻訳終止信号TGAT
    AAを、それぞれ有する小麦胚芽凝集素遺伝子。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の小麦胚芽凝集素の構造遺
    伝子の5’端に分泌に必要なシグナルペプチドをコード
    するDNA領域を、また3’端に翻訳終止信号TGAT
    AAを、それぞれ有する小麦胚芽凝集素遺伝子を含む組
    換えプラスミドDNA。
  4. 【請求項4】 発現プロモーターが酵母プロモーターで
    あり、かつ、シグナルペプチドをコードする領域が該酵
    母プロモーターの下流側で、かつ小麦胚芽凝集素遺伝子
    の上流にあり、いずれもこれらと解読枠が一致している
    ことを特徴とする請求項3記載の組換えプラスミド。
  5. 【請求項5】 宿主細胞を請求項3または請求項4記載
    の小麦胚芽凝集素遺伝子を含む組換えプラスミドDNA
    で形質転換した形質転換体微生物。
  6. 【請求項6】 宿主細胞が酵母である請求項5記載の形
    質転換体微生物。
  7. 【請求項7】 酵母が、サッカロミセス属に属する酵母
    株、あるいは液胞局在性蛋白質を細胞外に分泌する突然
    変異を有するサッカロミセス属に属する酵母変異株であ
    ることを特徴とする請求項6記載の形質転換体微生物。
  8. 【請求項8】 酵母変異株が、KS-58-2Ddelであること
    を特徴とする請求項7記載の形質転換体微生物。
  9. 【請求項9】 請求項5乃至請求項8のいずれかの項記
    載の形質転換体微生物を培地に培養して、培養物から小
    麦胚芽凝集素を採取することを特徴とする小麦胚芽凝集
    素の製造法。
  10. 【請求項10】 配列番号2のヌクレオチド配列で表わ
    される小麦胚芽凝集素前駆体をコードする遺伝子。
  11. 【請求項11】 請求項10記載の小麦胚芽凝集素前駆
    体をコードする遺伝子の5’端に分泌に必要なシグナル
    ペプチドをコードするDNA領域を、また3’端に翻訳
    終止信号TGATAAを、それぞれ有する小麦胚芽凝集
    素前駆体をコードする遺伝子。
  12. 【請求項12】 請求項10記載の小麦胚芽凝集素前駆
    体をコードする遺伝子の5’端に分泌に必要なシグナル
    ペプチドをコードするDNA領域を、また3’端に翻訳
    終止信号TGATAAを、それぞれ有する小麦胚芽凝集
    素前駆体をコードする遺伝子を含む組換えプラスミドD
    NA。
  13. 【請求項13】発現プロモーターが酵母プロモーターで
    あり、かつ、シグナルペプチドをコードする領域が該酵
    母プロモーターの下流側で、かつ小麦胚芽凝集素遺伝子
    の上流にあり、いずれもこれらと解読枠が一致している
    ことを特徴とする請求項12記載の組換えプラスミドD
    NA。
  14. 【請求項14】 宿主細胞を請求項12または請求項1
    3記載の小麦胚芽凝集素遺伝子を含む組換えプラスミド
    DNAで形質転換した形質転換体微生物。
  15. 【請求項15】 宿主細胞が酵母である請求項14記載
    の形質転換体微生物。
  16. 【請求項16】 酵母が、サッカロミセス属に属する酵
    母株、あるいは液胞局在性蛋白質を細胞外に分泌する突
    然変異を有するサッカロミセス属に属する酵母変異株で
    あることを特徴とする請求項15記載の形質転換体微生
    物。
  17. 【請求項17】 酵母変異株が、KS-58-2Ddelであるこ
    とを特徴とする請求項16記載の形質転換体微生物。
  18. 【請求項18】 請求項14乃至請求項17のいずれか
    の項記載の形質転換体微生物を培地に培養して、培養物
    から小麦胚芽凝集素を採取することを特徴とする小麦胚
    芽凝集素の製造法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6399329B1 (en) 1998-12-23 2002-06-04 Genencor International, Inc. Phenol oxidizing enzymes
WO2022042873A1 (en) 2020-08-27 2022-03-03 Immunologik Gmbh Pharmaceutically acceptable lectins derived from plants, fungi and bacteria for the treatment of sars-cov-2 infections

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