JP5800160B2 - 複合型糖鎖加水分解酵素 - Google Patents
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Description
しかしながら、主要な生理活性を示す糖タンパク質が有するアスパラギン結合型糖鎖は、その構造から高マンノース型(マンナン型糖鎖)、混成型及び複合型に分類されるが、複合型糖鎖を切断する活性を有すると報告されているのは、エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼのうちで、Endo-M、Endo-F2、Endo-F3、Endo-S、Endo-CEである。
Endo-Mはその諸性質が詳しく調べられており、その基質特異性は高マンノース型のMan8GlcNAc2に対する活性を100%とした際に、複合型2分岐糖鎖(agalacto biantennary PA-sugar)に対して4.4%である(非特許文献6)。また3分岐、アシアロ4分岐のN-型糖鎖を切断できるという記載(非特許文献7)がある一方、PA糖鎖を利用した酵素活性測定においては、アシアロ3分岐、アシアロ4分岐に対する活性は検出されていない(非特許文献6)。またコアフコースが付加した2分岐PA化糖鎖も切断できない。
Endo-F2はElizabethkingia miricola由来の酵素であり、高マンノース型および2分岐複合型糖鎖を加水分解するが、混成型糖鎖の加水分解活性はない(非特許文献8)。Endo-F3もElizabethkingia miricola由来の酵素であり、2分岐または3分岐複合型糖鎖を加水分解するが、高マンノース型、混成型糖鎖の加水分解活性はない(非特許文献8)。Endo-SはStreptococcus pyogenes由来の酵素であり、2分岐複合型糖鎖のみを加水分解するが、高マンノース型、混成型糖鎖の加水分解活性はない(非特許文献9)。Endo-CE はCaenorhabditis elegans由来の酵素であり、高マンノース型および2分岐の複合型糖鎖を加水分解するが、混成型糖鎖を切断するかどうかは不明である(非特許文献10)。
複合型糖鎖の修飾に関しても、従来の知見からみて、エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼのトランスグリコシダーゼ活性の基質特異性は分解活性と同一であるから、複合型糖鎖をアクセプターに転移することができるのもこれらの酵素のみしかない。
糖タンパク質の糖鎖構造の解析の際にはもちろんのこと、複合糖質糖鎖を含む様々な糖鎖を有する糖タンパク質を合成するためには、Endo-Mとは基質特異性が異なるエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼの提供が切望されており、またさらに複合型糖鎖に対する比活性が高い酵素の提供も望まれていた。
本発明のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(Endo-Om)は、次の酵素学的及び理化学的性質を有する;
(1)作用;アスパラギン結合型糖タンパク質にエンド型に作用し、糖鎖を遊離する。
(2)基質特異性;
1)高マンノース型、混成型、2分岐複合型糖鎖のコア構造に存在するN,N'-ジアセチルキトビオース間を切断してオリゴ糖を生成する。
2)高マンノース型M8A-PA糖鎖に対する活性を100%としたとき、高マンノース型M6B-PA糖鎖に対する活性が約103%、複合型2分岐糖鎖(agalacto biantennary PA-sugar)に対する活性が約15%。
(3)至適pH;約5.5
(4)至適温度;45〜50℃
(5)遺伝子;2,319bp(Endo-Mとアミノ酸配列で33.9%の相同性)
(6)分子量;87,398Da(アミノ酸配列より)
(7)1mM 複合型2分岐糖鎖(NGA2-Asn-Fmoc)を基質とした際の比活性;0.80μmol/min/mg
(Endo-Mの比活性(0.06μmol/min/mg)の約13倍)
(8)複合型2分岐糖鎖(NGA2-Asn-Fmoc)に対するKm; 5539μM,Vmax;3.88μmol/min/mg
(Endo-MのKm(176μM)の31倍、Endo-MのVmax(0.070μmol/min/mg)の55倍)
(9)トランスグリコシダーゼ活性;二分岐複合型(NGA2-Asn-Fmoc)を糖供与体、アクセプターをp-ニトロフェニルグルコースとした際に、有意なトランスグリコシダーゼ活性が確認された。
本発明のEndo-Omは、高マンノース型M8A-PA糖鎖に対する活性を100%としたとき、高マンノース型M6B-PA糖鎖に対する活性が約103%、複合型2分岐糖鎖(agalacto biantennary PA-sugar)に対する活性が約15%で、公知のEndo-Mとは基質特異性が異なっており、またEndo-Mの13倍という高い比活性およびEndo-Mの55倍という高いVmaxを有している。また、本発明により開発された過剰発現系を用いることで大量生産が可能であるから、高品質の酵素を安価に生産できる。
〔1〕 下記の(1)〜(5)のいずれかのアミノ酸配列を含むエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質;
(1)配列番号1,5,9又は13に示されるアミノ酸配列、
(2)配列番号1,5,9又は13に示されるアミノ酸配列のうち、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び/又は付加されているアミノ酸配列、
(3)配列番号1,5,9又は13に示されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列、
(4)配列番号2,6,10又は14に示される塩基配列にコードされたアミノ酸配列、
(5)配列番号2,6,10又は14に示される塩基配列の相補配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドの塩基配列によりコードされたアミノ酸配列。
〔2〕 前記〔1〕に記載のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
〔3〕 下記の(1)〜(6)のいずれかの塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(1)配列番号2,6,10又は14に示される塩基配列を含むポリヌクレオチド、
(2)配列番号2,6,10又は14に示される塩基配列の相補配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(3)配列番号3及び4に示される塩基配列を含むプライマーセットにより増幅され、配列番号2と90%以上の同一性を有し、エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
(4)配列番号7及び8に示される塩基配列を含むプライマーセットにより増幅され、配列番号6と90%以上の同一性を有し、エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
(5)配列番号11及び12に示される塩基配列を含むプライマーセットにより増幅され、配列番号10と90%以上の同一性を有し、エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
(6)配列番号15及び16に示される塩基配列を含むプライマーセットにより増幅され、配列番号14と90%以上の同一性を有し、エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
〔4〕 前記〔2〕又は〔3〕に記載のポリヌクレオチドを含有する、エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質を発現するためのベクター。
〔5〕 前記〔4〕に記載のベクターが導入されている、エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質発現用形質転換細胞。
〔6〕 前記形質転換細胞がOgataea minuta、Candida parapolymorpha、Pichia anomala、及びZygosaccharomyces rouxiiのいずれかの酵母から選択された酵母細胞を宿主とする形質転換細胞である、前記〔5〕に記載の形質転換細胞。
〔7〕 前記〔5〕又は〔6〕に記載の形質転換細胞を用いることを特徴とする、エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質の製造方法。
〔8〕 前記〔1〕に記載のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質を用いることを特徴とする、糖タンパク質からアスパラギン結合型糖鎖を切断する方法。
〔9〕 前記〔1〕に記載のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質を用いることを特徴とする、アスパラギン結合型糖鎖を任意のアクセプター分子に対して転移する方法。
本発明の他のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼであるEndo-Cp、Endo-Pa及びEndo-Zrも同様の複合型糖鎖切断活性及び複合型糖鎖転移活性を有しており、Endo-Omと同様の用途が期待される。
1−1.「Endo-Om」について
(1)酵素学的及び理化学的性質;
(1)作用; アスパラギン結合型糖タンパク質にエンド型に作用し、糖鎖を遊離する。
(2)基質特異性;
1)高マンノース型、混成型、2分岐複合型糖鎖のコア構造に存在するN,N'-ジアセチルキトビオース間を切断してオリゴ糖を生成する。
2)高マンノース型M8A-PA糖鎖に対する活性を100%としたとき、高マンノース型M6B-PA糖鎖に対する活性が約103%、複合型2分岐糖鎖(agalacto biantennary PA-sugar)に対する活性が約15%。
(3)至適pH; 約5.5
(4)至適温度; 45〜50℃
(5)遺伝子; 2,319bp(Endo-Mとアミノ酸配列で33.9%の相同性)
(6)分子量; 87,398 Da(アミノ酸配列より)
(7)1mM 複合型2分岐糖鎖(NGA2-Asn-Fmoc)を基質とした際の比活性;0.80μmol/min/mg
(Endo-Mの比活性(0.06μmol/min/mg)の約13倍)
(8) 複合型2分岐糖鎖(NGA2-Asn-Fmoc)に対するKm;5539μM,Vmax3.88μmol/min/mg
(Endo-MのKm(176μM)の31倍、Endo-MのVmax(0.070μmol/min/mg)の55倍)
(9)トランスグリコシダーゼ活性;二分岐複合型(NGA2-Asn-Fmoc)を糖供与体、アクセプターをp-ニトロフェニルグルコースとした際に、有意なトランスグリコシダーゼ活性が確認された。
本発明のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(Endo-Om)は、以下の(1)〜(5)のいずれかのアミノ酸配列を含むエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質、として表すことができる。好ましくは、酵母由来、特に、Ogataea属酵母由来のタンパク質であることが好ましい。
(1)配列番号1に示されるアミノ酸配列、
(2)配列番号1に示されるアミノ酸配列のうち、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び/又は付加されているアミノ酸配列、
ここで、数個とは1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜5個を表す。
(3)配列番号1に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%上の同一性を有するアミノ酸配列である。
(4)配列番号2に示される塩基配列にコードされたアミノ酸配列、
(5)配列番号2に示される塩基配列の相補配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドの塩基配列によりコードされたアミノ酸配列。
ここで、ストリンジェントな条件とは、T.Maniatisら編、Molecular Cloning:A Laboratory Manual 2nd ed.(1989)Cold Spring Harbor Laboratoryなどに記載の通常のハイブリダイゼーション操作で、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件であって、全塩基配列中の10%未満のミスマッチを許容する条件である。
さらに、本発明のEndo-Om活性を有するタンパク質は、配列番号1に示されるアミノ酸配列をもとに、NCBIのGenBankアミノ酸配列データベースに対するBLAST検索により90%以上の同一性で検出される酵母由来のアミノ酸配列からなり、かつエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質である。特に、Ogataea属酵母由来遺伝子であることが好ましい。
または、配列番号2に示される塩基配列をもとに、NCBIのGenBank塩基配列データベースに対するBLAST検索により90%以上の同一性で検出される酵母由来の塩基配列からなる遺伝子によりコードされ、かつエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質であると表現することができる。
また、本発明のEndo-Om遺伝子は、上記(1)〜(5)のいずれかのアミノ酸配列を含むエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド、と表現することができるが、以下の(1)〜(3)のいずれかのポリヌクレオチドとしても、表すことができる。なお、好ましくは、酵母由来、特に、Ogataea属酵母由来のポリヌクレオチドであることが好ましい。
(1)配列番号2に示される塩基配列を含むポリヌクレオチド、
(2)配列番号2に示される塩基配列の相補配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(3)配列番号3及び4に示される塩基配列を含むプライマーセットにより増幅され、配列番号2と90%以上の同一性を有し、エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
ここで、図2に示されるように、本発明のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(Endo-Om)は、公知のMucor属由来Endo-Mとは、アミノ酸配列レベルで33.9%の同一性しかなく、データベース内での最も近い位置のCandida属由来の機能不明タンパク質ともアミノ酸レベルで53.9%程度の同一性しかない、特異的な配列を有しているから、配列番号1に示されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドであれば、きわめてEndo-Om活性を有している蓋然性が高く、配列番号2に示される塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるポリヌクレオチドもまたEndo-Om遺伝子である蓋然性が高いといえる。ポリペプチドやポリヌクレオチドのホモロジー検索は、例えば、日本DNAデータバンク(DNA Databank of JAPAN(DDBJ)等を対象に、FASTAやBLASTなどのプログラムを用いて行うことができる。
本発明のEndo-Om精製酵素液を用いて、各種のPAラベル化された市販の複合糖鎖(TaKaRa-Bio社)に対する加水分解活性を測定した測定結果を、Endo-Mに関する論文(非特許文献6)の測定値と共に下記(表1)に示した。その際の加水分解活性は、HPLCにおける基質のPAラベル化糖鎖およびその加水分解物のピーク面積比から算出し、M8A構造の糖鎖に対する加水分解活性を100%として各種糖鎖に対する相対活性を算出した。
Endo-OmはEndo-Mと同様に、任意のアクセプター分子に対して糖鎖を転移する活性を有している。典型的なアクセプター分子は、グルコースまたはGlcNAcなどの単糖又はその誘導体であるが、それらを有する糖ペプチドや糖タンパク質に対しても転移させることができる。転移させることができる糖鎖は、アスパラギン結合型糖鎖であり、化学合成された糖鎖でも切断された糖鎖でもよい。
Endo-Omのトランスグリコシダーゼ活性を、基質の2分岐複合糖鎖、アクセプター分子(p-ニトロフェニルグルコース)およびEndo-Om精製酵素液を含む反応液を30℃で3時間インキュベートし、反応終了後にHPLCに供することにより検出したところ、加水分解物とは異なる新たなピークが検出され、MS解析によりアクセプター分子に2分岐複合糖鎖が付加された糖転移反応物であることが確認された(図7)。
(1)酵素学的及び理化学的性質;
(1)作用; アスパラギン結合型糖タンパク質にエンド型に作用し、糖鎖を遊離する。
(2)基質特異性;
1)高マンノース型、混成型、2分岐複合型糖鎖のコア構造に存在するN,N'-ジアセチルキトビオース間を切断してオリゴ糖を生成する。
2)高マンノース型M8A-PA糖鎖に対する活性を100%としたとき、高マンノース型M6B-PA糖鎖に対する活性が約172%、複合型2分岐糖鎖(agalacto biantennary PA-sugar)に対する活性が約7.0%。
(3)至適pH; 約5.5
(4)至適温度; 60℃
(5)遺伝子; 2,238bp(Endo-Mとアミノ酸配列で38.2%の相同性)
(6)分子量; 86,500Da(アミノ酸配列より)
(7)トランスグリコシダーゼ活性;二分岐複合型(NGA2-Asn-Fmoc)を糖供与体、アクセプターをp-ニトロフェニルグルコースとした際に、有意なトランスグリコシダーゼ活性が確認された。
本発明のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(Endo-Cp)は、以下の(1)〜(5)のいずれかのアミノ酸配列を含むエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質、として表すことができる。好ましくは、酵母由来、より好ましくはCandida属酵母由来、最も好ましくはCandida parapolymorpha由来のタンパク質である。
(1)配列番号5に示されるアミノ酸配列、
(2)配列番号5に示されるアミノ酸配列のうち、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び/又は付加されているアミノ酸配列、(なお、数個とは1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜5個を表す。)
(3)配列番号5に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%以上の同一性を有するアミノ酸配列、(なお、好ましくは、80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%上の同一性を有するアミノ酸配列である。)
(4)配列番号6に示される塩基配列にコードされたアミノ酸配列、
(5)配列番号6に示される塩基配列の相補配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドの塩基配列によりコードされたアミノ酸配列。(なお、ストリンジェントな条件については、上述の通り。)
さらに、本発明のEndo-Cp活性を有するタンパク質は、配列番号5に示されるアミノ酸配列をもとに、NCBIのGenBankアミノ酸配列データベースに対するBLAST検索により30%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上、最も好ましくは80%以上のホモロジーで検出される酵母由来のアミノ酸配列からなり、かつエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質である。特に、Candida属酵母由来遺伝子、とりわけCandida parapolymorpha由来であることが好ましい。
または、配列番号6に示される塩基配列をもとに、NCBIのGenBank塩基配列データベースに対するBLAST検索により、30%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上、最も好ましくは80%以上のホモロジーで検出される酵母由来の塩基配列からなる遺伝子によりコードされ、かつエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質であると表現することができる。
また、本発明のEndo-Cp遺伝子は、上記(1)〜(5)のいずれかのアミノ酸配列を含むエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド、と表現することができるが、以下の(1)〜(3)のいずれかのポリヌクレオチドとしても、表すことができる。なお、好ましくは、酵母由来、特に、Candida属酵母由来のポリヌクレオチドであることが好ましい。
(1)配列番号6に示される塩基配列を含むポリヌクレオチド、
(2)配列番号6に示される塩基配列の相補配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(3)配列番号7及び8に示される塩基配列を含むプライマーセットにより増幅され、配列番号6と70%以上の同一性を有し、エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。(なお、好ましくは、80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%上の同一性を有する塩基配列である。)
ここで、図2に示されるように、本発明のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(Endo-Cp)は、本発明のOgataea minuta由来「Endo-Om」とは、アミノ酸配列レベルで53.9%の同一性があり、同時に見出されたPichia anomala由来の「Endo-Pa」酵素、及びZygosaccharomyces rouxii由来「Endo-Zr」酵素とは、それぞれ42.8%及び31.9%の同一性を有している。また、公知のMucor属由来「Endo-M」とは、アミノ酸配列レベルで38.2%の同一性しかない。このように、本発明の「Endo-Cp」は特異的な配列を有しているから、配列番号5に示されるアミノ酸配列と70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドであれば、きわめてEndo-Cp活性を有している蓋然性が高く、配列番号6に示される塩基配列と70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上の同一性を有する塩基配列からなるポリヌクレオチドもまたEndo-Cp遺伝子である蓋然性が高いといえる。ポリペプチドやポリヌクレオチドのホモロジー検索は、例えば、日本DNAデータバンク(DNA Databank of JAPAN(DDBJ))等を対象に、FASTAやBLASTなどのプログラムを用いて行うことができる。
本発明のEndo-Cp部分精製酵素液を用いて、各種のPAラベル化された市販の複合糖鎖(TaKaRa-Bio社)に対する加水分解活性を測定した測定結果を、Endo-Mに関する論文(非特許文献6)の測定値と共に下記(表2)に示した。その際の加水分解活性は、HPLCにおける基質のPAラベル化糖鎖およびその加水分解物のピーク面積比から算出し、M8A構造の糖鎖に対する加水分解活性を100%として各種糖鎖に対する相対活性を算出した。
Endo-CpはEndo-Mと同様に、任意のアクセプター分子に対して糖鎖を転移する活性を有している。典型的なアクセプター分子は、グルコースまたはGlcNAcなどの単糖又はその誘導体であるが、それらを有する糖ペプチドや糖タンパク質に対しても転移させることができる。転移させることができる糖鎖は、アスパラギン結合型糖鎖であり、化学合成された糖鎖でも切断された糖鎖でもよい。
Endo-Cpのトランスグリコシダーゼ活性を、基質の2分岐複合糖鎖、アクセプター分子(p-ニトロフェニルグルコース)およびEndo-Cp部分精製酵素液を含む反応液を30℃で3時間インキュベートし、反応終了後にHPLCに供することにより検出したところ、加水分解物とは異なる新たなピークが検出され、MS解析によりアクセプター分子に2分岐複合糖鎖が付加された糖転移反応物であることが確認された(図11)。
(1)酵素学的及び理化学的性質;
(1)作用; アスパラギン結合型糖タンパク質にエンド型に作用し、糖鎖を遊離する。
(2)基質特異性;
1)高マンノース型、混成型、2分岐複合型糖鎖のコア構造に存在するN,N'-ジアセチルキトビオース間を切断してオリゴ糖を生成する。
2)高マンノース型M8A-PA糖鎖に対する活性を100%としたとき、高マンノース型M6B-PA糖鎖に対する活性が約140%、複合型2分岐糖鎖(agalacto biantennary PA-sugar)に対する活性が約54.4%。
(3)至適pH; 約5.0〜5.5
(4)至適温度; 40℃
(5)遺伝子; 1,971bp(Endo-Mとアミノ酸配列で33.0%の相同性)
(6)分子量; 76,050Da(アミノ酸配列より)
(7)トランスグリコシダーゼ活性;二分岐複合型(NGA2-Asn-Fmoc)を糖供与体、アクセプターをp-ニトロフェニルグルコースとした際に、有意なトランスグリコシダーゼ活性が確認された。
本発明のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(Endo-Pa)は、以下の(1)〜(5)のいずれかのアミノ酸配列を含むエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質、として表すことができる。好ましくは、酵母由来、特にPichia属酵母由来、とりわけPichia anomala由来のタンパク質であることが好ましい。
(1)配列番号9に示されるアミノ酸配列、
(2)配列番号9に示されるアミノ酸配列のうち、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び/又は付加されているアミノ酸配列、(なお、数個とは1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜5個を表す。)
(3)配列番号9に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%以上の同一性を有するアミノ酸配列、(なお、好ましくは、80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%上の同一性を有するアミノ酸配列である。)
(4)配列番号10に示される塩基配列にコードされたアミノ酸配列、
(5)配列番号10に示される塩基配列の相補配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドの塩基配列によりコードされたアミノ酸配列。(なお、ストリンジェントな条件については、上述の通り。)
さらに、本発明のEndo-Pa活性を有するタンパク質は、配列番号9に示されるアミノ酸配列をもとに、NCBIのGenBankアミノ酸配列データベースに対するBLAST検索により30%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上、最も好ましくは80%以上のホモロジーで検出される酵母由来のアミノ酸配列からなり、かつエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質である。特に、Pichia属酵母由来遺伝子、とりわけPichia anomala由来遺伝子であることが好ましい。
または、配列番号10に示される塩基配列をもとに、NCBIのGenBank塩基配列データベースに対するBLAST検索により、30%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上、最も好ましくは80%以上のホモロジーで検出される酵母由来の塩基配列からなる遺伝子によりコードされ、かつエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質であると表現することができる。
また、本発明のEndo-Pa遺伝子は、上記(1)〜(5)のいずれかのアミノ酸配列を含むエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド、と表現することができるが、以下の(1)〜(3)のいずれかのポリヌクレオチドとしても、表すことができる。なお、好ましくは、酵母由来、特に、Pichia属酵母由来、とりわけPichia anomala由来のポリヌクレオチドであることが好ましい。
(1)配列番号10に示される塩基配列を含むポリヌクレオチド、
(2)配列番号10に示される塩基配列の相補配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(3)配列番号11及び12に示される塩基配列を含むプライマーセットにより増幅され、配列番号10と70%以上の同一性を有し、エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。(なお、好ましくは、80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%上の同一性を有する塩基配列である。)
ここで、図2に示されるように、本発明のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(Endo-Pa)は、本発明のOgataea minuta由来「Endo-Om」とは、アミノ酸配列レベルで42.5%の同一性があり、同時に見出されたCandida parapolymorpha DL-1由来の「Endo-Cp」酵素、及びZygosaccharomyces rouxii由来「Endo-Zr」酵素とは、それぞれ42.8%及び30.2%の同一性を有している。また、公知のMucor属由来「Endo-M」とは、アミノ酸配列レベルで33.0%の同一性しかない。このように、本発明の「Endo-Pa」は特異的な配列を有しているから、配列番号9に示されるアミノ酸配列と70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドであれば、きわめてEndo-Pa活性を有している蓋然性が高く、配列番号10に示される塩基配列と70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上の同一性を有する塩基配列からなるポリヌクレオチドもまたEndo-Pa遺伝子である蓋然性が高いといえる。ポリペプチドやポリヌクレオチドのホモロジー検索は、例えば、日本DNAデータバンク(DNA Databank of JAPAN(DDBJ))等を対象に、FASTAやBLASTなどのプログラムを用いて行うことができる。
本発明のEndo-Pa部分精製酵素液を用いて、各種のPAラベル化された市販の複合糖鎖(TaKaRa-Bio社)に対する加水分解活性を測定した測定結果を、Endo-Mに関する論文(非特許文献6)の測定値と共に下記(表3)に示した。その際の加水分解活性は、HPLCにおける基質のPAラベル化糖鎖およびその加水分解物のピーク面積比から算出し、M8A構造の糖鎖に対する加水分解活性を100%として各種糖鎖に対する相対活性を算出した。
Endo-PaはEndo-Mと同様に、任意のアクセプター分子に対して糖鎖を転移する活性を有している。典型的なアクセプター分子は、グルコースまたはGlcNAcなどの単糖又はその誘導体であるが、それらを有する糖ペプチドや糖タンパク質に対しても転移させることができる。転移させることができる糖鎖は、アスパラギン結合型糖鎖であり、化学合成された糖鎖でも切断された糖鎖でもよい。
Endo-Paのトランスグリコシダーゼ活性を、基質の2分岐複合糖鎖、アクセプター分子(p-ニトロフェニルグルコース)およびEndo-Pa部分精製酵素液を含む反応液を30℃で16時間インキュベートし、反応終了後にHPLCに供することにより検出したところ、加水分解物とは異なる新たなピークが検出され、MS解析によりアクセプター分子に2分岐複合糖鎖が付加された糖転移反応物であることが確認された(図15)。
(1)酵素学的及び理化学的性質;
(1)作用; アスパラギン結合型糖タンパク質にエンド型に作用し、糖鎖を遊離する。
(2)基質特異性;
1)高マンノース型、混成型、2分岐複合型糖鎖のコア構造に存在するN,N'-ジアセチルキトビオース間を切断してオリゴ糖を生成する。
2)高マンノース型M8A-PA糖鎖に対する活性を100%としたとき、高マンノース型M6B-PA糖鎖に対する活性が約127%、複合型2分岐糖鎖(agalacto biantennary PA-sugar)に対する活性が約23.6%。
(3)至適pH; 約4.5〜5.0
(4)至適温度; 40℃
(5)遺伝子; 1920bp(Endo-Mとアミノ酸配列で29.4%の相同性)
(6)分子量; 73,105Da(アミノ酸配列より)
(7)トランスグリコシダーゼ活性;検出されなかった。
本発明のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(Endo-Zr)は、以下の(1)〜(5)のいずれかのアミノ酸配列を含むエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質、として表すことができる。好ましくは、酵母由来、特に、Zygosaccharomyces属酵母由来、とりわけZygosaccharomyces
rouxii由来のタンパク質であることが好ましい。
(1)配列番号13に示されるアミノ酸配列、
(2)配列番号13に示されるアミノ酸配列のうち、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び/又は付加されているアミノ酸配列、(なお、数個とは1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜5個を表す。)
(3)配列番号13に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%以上の同一性を有するアミノ酸配列、(なお、好ましくは、80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%上の同一性を有するアミノ酸配列である。)
(4)配列番号14に示される塩基配列にコードされたアミノ酸配列、
(5)配列番号14に示される塩基配列の相補配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドの塩基配列によりコードされたアミノ酸配列。(なお、ストリンジェントな条件については、上述の通り。)
さらに、本発明のEndo-Zr活性を有するタンパク質は、配列番号13に示されるアミノ酸配列をもとに、NCBIのGenBankアミノ酸配列データベースに対するBLAST検索により30%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上、最も好ましくは80%以上のホモロジーで検出される酵母由来のアミノ酸配列からなり、かつエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質である。特に、Zygosaccharomyces属酵母由来遺伝子であることが好ましい。
または、配列番号14に示される塩基配列をもとに、NCBIのGenBank塩基配列データベースに対するBLAST検索により、30%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上、最も好ましくは80%以上のホモロジーで検出される酵母由来の塩基配列からなる遺伝子によりコードされ、かつエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質であると表現することができる。
また、本発明のEndo-Zr遺伝子は、上記(1)〜(5)のいずれかのアミノ酸配列を含むエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド、と表現することができるが、以下の(1)〜(3)のいずれかのポリヌクレオチドとしても、表すことができる。なお、好ましくは、酵母由来、特に、Zygosaccharomyces属酵母由来のポリヌクレオチドであることが好ましい。
(1)配列番号14に示される塩基配列を含むポリヌクレオチド、
(2)配列番号14に示される塩基配列の相補配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(3)配列番号15及び16に示される塩基配列を含むプライマーセットにより増幅され、配列番号14と70%以上の同一性を有し、エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。(なお、好ましくは、80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%上の同一性を有する塩基配列である。)
ここで、図2に示されるように、本発明のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(Endo-Zr)は、本発明のOgataea minuta由来「Endo-Om」とは、アミノ酸配列レベルで30.6%の同一性があり、同時に見出されたCandida parapolymorpha DL-1由来の「Endo-Cp」酵素、及びPichia anomala由来の「Endo-Pa」酵素とは、それぞれ31.9%及び30.2%の同一性を有している。また、公知のMucor属由来「Endo-M」とは、アミノ酸配列レベルで29.4%の同一性しかない。このように、本発明の「Endo-Zr」は特異的な配列を有しているから、配列番号13に示されるアミノ酸配列と70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドであれば、きわめてEndo-Zr活性を有している蓋然性が高く、配列番号14に示される塩基配列と70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上の同一性を有する塩基配列からなるポリヌクレオチドもまたEndo-Zr遺伝子である蓋然性が高いといえる。ポリペプチドやポリヌクレオチドのホモロジー検索は、例えば、日本DNAデータバンク(DNA Databank of JAPAN(DDBJ))等を対象に、FASTAやBLASTなどのプログラムを用いて行うことができる。
本発明のEndo-Zr部分精製酵素液を用いて、各種のPAラベル化された市販の複合糖鎖(TaKaRa-Bio社)に対する加水分解活性を測定した測定結果を、Endo-Mに関する論文(非特許文献6)の測定値と共に下記(表4)に示した。その際の加水分解活性は、HPLCにおける基質のPAラベル化糖鎖およびその加水分解物のピーク面積比から算出し、M8A構造の糖鎖に対する加水分解活性を100%として各種糖鎖に対する相対活性を算出した。
2−1.Endo-Omの取得方法及び製造方法
(1)本発明のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(Endo-Om)産生菌株
本発明のEndo-Om産生微生物は、本発明者らの先の出願明細書特許文献6に記載されたメタノール資化性酵母Ogataea minuta IFO10746株であり、メタノールを唯一の炭素源として生育できる酵母株である。培養方法などの詳細は、特許文献6に記載されるとおりであり、通常の酵母用の培地にメタノールを加えて、通常の酵母の培養条件下で行う。培養後の菌体を回収して破砕し、不純物を除いた上清を粗酵素液として採取することもできるが、産生量が少ないため、Endo-Om遺伝子をクローニングし、もとの酵母株を宿主として形質転換を行い、下記(3)に述べるように、Endo-Om遺伝子過剰発現系を作製した。
Ogataea minuta IFO10746株を用いた宿主・ベクター系については、特許4464269号(特許文献7)に記載されている。このゲノム配列情報に対し、Endo-Mと相同性の高い遺伝子を検索したところ、部分的に相同性の高い遺伝子を見いだした。そこでO.minutaのゲノムDNAを常法により抽出し、プライマー1(配列番号3)とプライマー2(配列番号4)を用いてPCR法によりEndo-Om遺伝子のORF全長配列を増幅した。
プライマー1:5’-CGATGACAAGGGATCATGGCGCAATCTCAGCTACTGG-3’ (配列番号3)
プライマー2:5’-GCACCGTCTCGGATCTCACACCCAAACCTCACTCC-3’ (配列番号4)
得られたPCR断片をTOPO Blunt cloning kit(Invitrogen社)によりサブクローニングし、塩基配列の決定を行なった。
クローニングの結果得られたEndo-O遺伝子の塩基配列およびアミノ酸配列を図1に示した。Endo-OmのORFは2319塩基からなり、772アミノ酸からなる分子量87,398のタンパク質をコードしていた。
当該方法を本発明のEndo-Om 遺伝子を採取したOgataea minutaの近縁微生物、例えば他のメチル資化性酵母であるPichia属酵母などの酵母、又は細菌など微生物由来のDNAライブラリーに対して適用することで、Endo-Om活性を有する酵素遺伝子を採取することができる。
すなわち、このようにして得られたEndo-Om遺伝子は、配列番号2に示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつEndo-Om活性を有するタンパク質をコードする遺伝子として表現できる。
また、公知のデータベースを検索することでも本発明のEndo-Om遺伝子を採取することができ、得られたEndo-Om遺伝子は、配列番号2に示す塩基配列に対して90%以上、好ましくは95%以上の同一性を有する塩基配列を有しており、対応するEndo-Om活性を有するタンパク質は、配列番号1に示すアミノ酸配列に対して90%以上、好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなると表現できる。ポリヌクレオチド及びタンパク質のホモロジー検索は、例えば、日本DNAデータバンク(DNA Databank of JAPAN(DDBJ)等を対象に、FASTAやBLASTなどのプログラムを用いて行うことができる。
メタノール資化性酵母O.minutaでのEndo-Om過剰発現株の作製は以下のように行った。
まずPCR法によりEndo-Om遺伝子のORF全長配列(2349 bp)を増幅し、精製後、発現用プラスミド pOMEA1にIn-FusionTM Advantage PCR Cloning Kit(Clontech社)を用いて組み込み、pOMEA1-Endo-Omを構築する。
構築したpOMEA1-Endo-Omを、O.minuta TK10-1-2株のコンピテントセルにエレクトロポレーション法を用いて形質転換し、Endo-Om過剰発現O.minuta株(Endo-Om/TK10-1-2株)を得る。
Endo-Om/TK10-1-2株に対してEndo-Omの発現誘導を行い、回収した菌体に抽出バッファーとガラスビーズを加え、激しく振とうすることにより細胞を破砕し、遠心分離によって不溶物を除いた上清をEndo-Om粗酵素液とする。
Endo-Om粗酵素液をSDSサンプルバッファーにて変性後、常法によりウェスタンブロッティングを行い、タンパク質の発現を確認する。
上記のようなEndo-Om過剰発現株を得るために、宿主としては本発明のEndo-Om遺伝子を採取したと同じメチル資化性酵母又は類似の酵母を用いることが好ましいが、大腸菌などの細菌類、昆虫細胞、植物細胞、動物細胞を用いた場合でもベクターとして高発現プロモーターを組み込んだベクターを用いれば同様の過剰発現株が構築できる。またトランスジェニック動物などを用いての生産も可能である。
これら形質転換Ogataea minuta Endo-Om過剰発現株などの形質転換細胞株を用いて、通常の形質転換細胞培養条件で、又はメタノール誘導を用いた培養法などを適用することにより、大量生産が可能となる。
(1)本発明のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(Endo-Cp)産生菌株
本発明のEndo-Cp産生微生物は、メタノール資化性酵母Candida parapolymorpha DL-1 ATCC26012株であり、メタノールを唯一の炭素源として生育できる酵母株である。培養方法は通常の酵母用の培地にメタノールを加えて、通常の酵母の培養条件下で行う。培養後の菌体を回収して破砕し、不純物を除いた上清を粗酵素液として採取することもできるが、産生量が少ないため、Endo-Cp遺伝子をクローニングし、大腸菌を宿主として形質転換を行い、下記(3)に述べるように、Endo-Cp遺伝子過剰発現系を作製した。
Candida parapolymorpha DL-1 ATCC26012株のゲノムDNAを常法により抽出し、プライマー3(配列番号7)とプライマー4(配列番号8)を用いてPCR法によりEndo-Cp遺伝子のORF全長配列を増幅した。
プライマー3:
5’-TCGAAGGTAGGCATATGCCTCGAAACACAGCTAA-3’ (配列番号7)
プライマー4:
5’-GCTTGAATTCGGATCCTCAAATGTGCATATCGGTACCCT-3’ (配列番号8)
得られたPCR産物を、大腸菌用タンパク質発現プラスミド pCold I DNA (TaKaRa-Bio社)にIn-FusionTM HD Cloning Kit(Clontech社)を用いて組み込み、pCold I-Endo-Cpを構築した。精製したベクターのDNAシーケンスを行い、Endo-Cp遺伝子の全長塩基配列の決定を行なった。
クローニングの結果得られたEndo-Cp遺伝子の塩基配列およびアミノ酸配列を図8に示した。Endo-CpのORFは2238塩基からなり、745アミノ酸からなる分子量86,500のタンパク質をコードしていた。
当該方法を本発明のEndo-Cp遺伝子を採取したCandida parapolymorpha DL-1の近縁微生物、例えば他のメチル資化性酵母であるPichia属酵母などの酵母、又は細菌など微生物由来のDNAライブラリーに対して適用することで、Endo-Cp活性を有する酵素遺伝子を採取することができる。
すなわち、このようにして得られたEndo-Cp遺伝子は、配列番号6に示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつEndo-Cp活性を有するタンパク質をコードする遺伝子として表現できる。
また、公知のデータベースを検索することでも本発明のEndo-Cp遺伝子を採取することができ、得られたEndo-Cp遺伝子は、配列番号6に示す塩基配列に対して70%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の相同性(同一性)を有する塩基配列を有しており、対応するEndo-Cp活性を有するタンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列に対して70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の相同性(同一性)を有するアミノ酸配列からなると表現できる。ポリヌクレオチド及びタンパク質のホモロジー検索は、例えば、日本DNAデータバンク(DNA Databank of JAPAN(DDBJ))等を対象に、FASTAやBLASTなどのプログラムを用いて行うことができる。
大腸菌でのEndo-Cp過剰発現株の作製は以下のように行った。
上記(2)で述べたpCold I-Endo-Cpをタンパク質発現用の大腸菌コンピテントセル(NEB Express Competent E. coli (High Efficiency),NEW ENGRAND BioLabs社)に形質転換し、Endo-Cp発現大腸菌株を得る。
Endo-Cp発現大腸菌株に対してEndo-Cpの発現誘導を行い、回収した菌体に抽出バッファーとガラスビーズを加え、激しく振とうすることにより細胞を破砕し、遠心分離によって不溶物を除いた上清をEndo-Cp粗酵素液とする。
Endo-Cp粗酵素液をSDSサンプルバッファーにて変性後、常法によりウェスタンブロッティングを行い、タンパク質の発現を確認する。
上記のようなEndo-Cp過剰発現株を得るために、宿主としては本発明のEndo-Cp遺伝子を採取したと同じCandida属酵母又は類似の酵母を用いることが好ましいが、大腸菌などの細菌類、昆虫細胞、植物細胞、動物細胞を用いた場合でもベクターとして高発現プロモーターを組み込んだベクターを用いれば同様の過剰発現株が構築できる。またトランスジェニック動物などを用いての生産も可能である。
これらEndo-Cp過剰発現大腸菌株などの形質転換細胞株を用いて、通常の形質転換細胞培養条件で大量生産が可能となる。
(1)本発明のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(Endo-Pa)産生菌株
本発明のEndo-Pa産生微生物は、Pichia anomala ATCC36904株という酵母株である。培養方法は通常の酵母用の培地を用いて、通常の酵母の培養条件下で行う。培養後の菌体を回収して破砕し、不純物を除いた上清を粗酵素液として採取することもできるが、産生量が少ないため、Endo-Pa遺伝子をクローニングし、大腸菌を宿主として形質転換を行い、下記(3)に述べるように、Endo-Pa遺伝子過剰発現系を作製した。
Pichia anomala ATCC36904株のゲノムDNAを常法により抽出し、プライマー5(配列番号11)とプライマー6(配列番号12)を用いてPCR法によりEndo-Pa遺伝子のORF全長配列を増幅した。
プライマー5:
5’-TCGAAGGTAGGCATATGCAACATGATCATGCTGCCATA-3’ (配列番号11)
プライマー6:
5’-GCTTGAATTCGGATCCCTATATAAATATATCCTCGCCTTTG-3’(配列番号12)
得られたPCR産物を、大腸菌用タンパク質発現プラスミド pCold I DNA (TaKaRa-Bio社)にIn-FusionTM HD Cloning Kit(Clontech社)を用いて組み込み、pCold I-Endo-Paを構築した。精製したベクターのDNAシーケンスを行い、Endo-Pa遺伝子の全長塩基配列の決定を行なった。
クローニングの結果得られたEndo-Pa遺伝子の塩基配列およびアミノ酸配列を図12に示した。Endo-PaのORFは1971塩基からなり、656アミノ酸からなる分子量76,050のタンパク質をコードしていた。
当該方法を本発明のEndo-Pa遺伝子を採取したPichia anomalaの近縁微生物、例えばメチル資化性酵母であるPichia属酵母などの酵母、又は細菌など微生物由来のDNAライブラリーに対して適用することで、Endo-Pa活性を有する酵素遺伝子を採取することができる。
すなわち、このようにして得られたEndo-Pa遺伝子は、配列番号10に示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつEndo-Pa活性を有するタンパク質をコードする遺伝子として表現できる。
また、公知のデータベースを検索することでも本発明のEndo-Pa遺伝子を採取することができ、得られたEndo-Pa遺伝子は、配列番号10に示す塩基配列に対して70%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の相同性(同一性)を有する塩基配列を有しており、対応するEndo-Pa活性を有するタンパク質は、配列番号9に示すアミノ酸配列に対して70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の相同性(同一性)を有するアミノ酸配列からなると表現できる。ポリヌクレオチド及びタンパク質のホモロジー検索は、例えば、日本DNAデータバンク(DNA Databank of JAPAN(DDBJ))等を対象に、FASTAやBLASTなどのプログラムを用いて行うことができる。
大腸菌でのEndo-Pa過剰発現株の作製は以下のように行った。
上記(2)で述べたpCold I-Endo-Paをタンパク質発現用の大腸菌コンピテントセル(NEB Express Competent E. coli(High Efficiency),NEW ENGRAND BioLabs社)に形質転換し、Endo-Pa発現大腸菌株を得る。
Endo-Pa発現大腸菌株に対してEndo-Paの発現誘導を行い、回収した菌体に抽出バッファーとガラスビーズを加え、激しく振とうすることにより細胞を破砕し、遠心分離によって不溶物を除いた上清をEndo-Pa粗酵素液とする。
Endo-Pa粗酵素液をSDSサンプルバッファーにて変性後、常法によりウェスタンブロッティングを行い、タンパク質の発現を確認する。
上記のようなEndo-Pa過剰発現株を得るために、宿主としては本発明のEndo-Pa遺伝子を採取したと同じPichia属酵母又は類似の酵母を用いることが好ましいが、大腸菌などの細菌類、昆虫細胞、植物細胞、動物細胞を用いた場合でもベクターとして高発現プロモーターを組み込んだベクターを用いれば同様の過剰発現株が構築できる。またトランスジェニック動物などを用いての生産も可能である。
これらEndo-Pa過剰発現大腸菌株などの形質転換細胞株を用いて、通常の形質転換細胞培養条件で大量生産が可能となる。
(1)本発明のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(Endo-Zr)産生菌株
本発明のEndo-Zr産生微生物は、Zygosaccharomyces rouxii ATCC2623株という酵母株である。培養方法は通常の酵母用の培地を用いて、通常の酵母の培養条件下で行う。培養後の菌体を回収して破砕し、不純物を除いた上清を粗酵素液として採取することもできるが、産生量が少ないため、Endo-Zr遺伝子をクローニングし、大腸菌を宿主として形質転換を行い、下記(3)に述べるように、Endo-Zr遺伝子過剰発現系を作製した。
Zygosaccharomyces rouxii ATCC2623株のゲノムDNAを常法により抽出し、プライマー7(配列番号15)とプライマー8(配列番号16)を用いてPCR法によりEndo-Zr遺伝子のORF全長配列を増幅した。
プライマー7:
5’-TCGAAGGTAGGCATATGAAACGTATTAATCAGGT-3’(配列番号15)
プライマー8:
5’-GCTTGAATTCGGATCCTTACTTCTTGACTACGAATTTCAAAG-3’(配列番号16)
得られたPCR産物を、大腸菌用タンパク質発現プラスミド pCold I DNA (TaKaRa-Bio社)にIn-FusionTM HD Cloning Kit(Clontech社)を用いて組み込み、pCold I-Endo-Zrを構築した。精製したベクターのDNAシーケンスを行い、Endo-Zr遺伝子の全長塩基配列の決定を行なった。
クローニングの結果得られたEndo-Zr遺伝子の塩基配列およびアミノ酸配列を図16に示した。Endo-ZrのORFは1920塩基からなり、639アミノ酸からなる分子量73,105のタンパク質をコードしていた。
当該方法を本発明のEndo-Zr遺伝子を採取したZygosaccharomyces rouxiiの近縁微生物、例えばメチル資化性酵母であるPichia属酵母などの酵母、又は細菌など微生物由来のDNAライブラリーに対して適用することで、Endo-Zr活性を有する酵素遺伝子を採取することができる。
すなわち、このようにして得られたEndo-Zr遺伝子は、配列番号14に示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつEndo-Zr活性を有するタンパク質をコードする遺伝子として表現できる。
また、公知のデータベースを検索することでも本発明のEndo-Zr遺伝子を採取することができ、得られたEndo-Zr遺伝子は、配列番号14に示す塩基配列に対して70%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の相同性(同一性)を有する塩基配列を有しており、対応するEndo-Zr活性を有するタンパク質は、配列番号13に示すアミノ酸配列に対して70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の相同性(同一性)を有するアミノ酸配列からなると表現できる。ポリヌクレオチド及びタンパク質のホモロジー検索は、例えば、日本DNAデータバンク(DNA Databank of JAPAN(DDBJ))等を対象に、FASTAやBLASTなどのプログラムを用いて行うことができる。
大腸菌でのEndo-Zr過剰発現株の作製は以下のように行った。
上記(2)で述べたpCold I-Endo-Zrをタンパク質発現用の大腸菌コンピテントセル(NEB Express Competent E. coli (High Efficiency),NEW ENGRAND BioLabs社)に形質転換し、Endo-Zr発現大腸菌株を得る。
Endo-Zr発現大腸菌株に対してEndo-Zrの発現誘導を行い、回収した菌体に抽出バッファーとガラスビーズを加え、激しく振とうすることにより細胞を破砕し、遠心分離によって不溶物を除いた上清をEndo-Zr粗酵素液とする。
Endo-Zr粗酵素液をSDSサンプルバッファーにて変性後、常法によりウェスタンブロッティングを行い、タンパク質の発現を確認する。
上記のようなEndo-Zr過剰発現株を得るために、宿主としては本発明のEndo-Zr遺伝子を採取したと同じZygosaccharomyces属酵母又は類似の酵母を用いることが好ましいが、大腸菌などの細菌類、昆虫細胞、植物細胞、動物細胞を用いた場合でもベクターとして高発現プロモーターを組み込んだベクターを用いれば同様の過剰発現株が構築できる。またトランスジェニック動物などを用いての生産も可能である。
これらEndo-Zr過剰発現大腸菌株などの形質転換細胞株を用いて、通常の形質転換細胞培養条件で大量生産が可能となる。
本発明のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(Endo-Om)は、高い比活性で複合型糖鎖を切断する活性と共に、グルコースやN-アセチルグルコサミンなどの単糖又はその誘導体、あるいはそれらを有する糖ペプチドや糖タンパク質などの任意のアクセプター分子に対して切断した糖鎖や化学合成した糖鎖を転移する活性を有している。
したがって、本発明のEndo-Omを用いることで、糖タンパク質における複合型糖鎖も含めた糖鎖構造の解析が行える。また、天然には糖鎖が付加しないタンパク質に糖鎖を付加する、あるいは従来付加しない位置にN-型糖鎖を導入するといったネオグライコプロテイン(Neoglycoprotein)の調製や、不均一な糖鎖を一旦切断し、トランスグリコシダーゼ反応を用いて糖タンパク質のN-型糖鎖部分を均一化する、また糖鎖分析装置に対する標準糖タンパク質の作製等、様々な糖鎖修飾に用いることもできる。
本発明の他のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼであるEndo-Cp、Endo-Pa及びEndo-Zrも同様の複合型糖鎖切断活性及び任意のアクセプター分子に対する複合型糖鎖転移活性を有することから、同様の用途が期待される。
本発明者らの先の出願明細書(特許文献6)に記載の通り、O.minutaによるヒト糖転移酵素の分泌生産を行なった。分泌されたMGAT5を部分精製し、複合型2分岐糖鎖(NGA2-Asn-Fmoc)を受容体基質、UDP-GlcNAcを供与体基質として反応を行なった。生成産物の解析を行なったところ、糖転移反応による産物以外に、副産物として別のピークが確認された。受容体基質のNGA2-Asn-Fmocをエキソ型のグリコシダーゼで順次消化して標準サンプルを作製し、このピークについて解析を行なったところ、受容体基質の還元末端側に存在するGlcNAcβ1-4GlcNAcの間が切断されていることが示唆された。複合型2分岐糖鎖を効率よく切断する活性はEndo-Mが知られていることから、O.minutaにも同様の活性があると考えられたため、遺伝子のクローニングを検討した。
Ogataea minuta IFO10746株を用いた宿主・ベクター系については、特許4464269号(特許文献7)に記載されている。このゲノム配列情報に対し、Endo-Mと相同性の高い遺伝子を検索したところ、部分的に相同性の高い遺伝子を見いだした。そこでO.minutaのゲノムDNAを常法により抽出し、プライマー1(配列番号3)とプライマー2(配列番号4)を用いてPCR法によりEndo-Om遺伝子のORF全長配列を増幅した。
プライマー1:
5’-CGATGACAAGGGATCATGGCGCAATCTCAGCTACTGG-3’ (配列番号3)
プライマー2:
5’-GCACCGTCTCGGATCTCACACCCAAACCTCACTCC-3’ (配列番号4)
得られたPCR断片をTOPO Blunt cloning kit(Invitrogen社)によりサブクローニングし、塩基配列の決定を行なった。
クローニングの結果得られたEndo-O遺伝子の塩基配列およびアミノ酸配列を図1に示した。Endo-OmのORFは2319塩基からなり、772アミノ酸からなる分子量87,398のタンパク質をコードしていた。推定等電点は5.59であった。得られたアミノ酸配列を元にNCBIのアミノ酸配列データベースに対してBLAST検索を行った結果、Endo-OmはN末端側約80〜410アミノ酸の位置にGH18 Chitinase-like superfamilyに属するGH family 85 ENGaseに高度に保存されている配列を有していた。BLAST検索によりヒットした上位の配列のうち、酵母に近い種について系統樹を作製した結果を図2に示した。Endo-M以外の配列については、データベース上、ENGaseである旨のアノテーションは記載されていなかった。Endo-Omはメタノール資化性酵母Candida parapolymorpha DL-1(Hansenula polymorpha DL-1)由来の推定のENGase(下記実施例6、Endo-Cp)との相同性が最も高く、53.9%であった。Mucor
hiemalis由来のEndo-Mとの相同性は33.9%であり、N末端側の保存配列以外には全く相同性がなかった。一方、同じメタノール資化性酵母であるPichia pastorisやCandida boidiniiでは該当する遺伝子は検出されなかった。さらにSaccharomyces cerevisiaeでも該当する遺伝子は検出されなかった。
メタノール資化性酵母O.minutaでのEndo-Om過剰発現株の作製は以下のように行った。
まず実施例2の通り、上記プライマー1(配列番号3)とプライマー2(配列番号4)を用いてPCR法によりEndo-Om遺伝子のORF全長配列を増幅した。
増幅した2349 bpのPCR産物を精製した後、BamHIで切断した発現用プラスミド pOMEA1にIn-FusionTM Advantage PCR Cloning Kit(Clontech社)を用いてPCR産物を組み込み、pOMEA1-Endo-Omを構築した。
構築したpOMEA1-Endo-OmをNotIで切断後、O.minuta TK10-1-2株のコンピテントセルにエレクトロポレーション法を用いて形質転換した。形質転換後の菌液をSD-Ade寒天培地(2% D-グルコース、0.67% Yeast Nitrogen Base w/o amino acids(Difco社)、0.5% Casamino acid、0.1mg/ml Uracil、1.5% Agar)に塗布し、30℃で2日間培養することで形質転換体のコロニーを得た。コロニーをプレートから掻きとり、PCR反応液に懸濁する簡易PCR法にて染色体上への組み込みを確認し、Endo-Om過剰発現O.minuta株(Endo-Om/TK10-1-2株)とした。
Endo-Om/TK10-1-2株を3mlのYPD培地(2% Peptone、1% Yeast Extract、2% グルコース)にまき、30℃で2日間培養を行った。遠心分離により培地上清を除いた後、菌体に3mlのBMMY培地(2% Peptone、1% Yeast Extract、1.34% Yeast Nitrogen Base w/o amino acids、2% Casamino acid、1% MeOH、0.2mg/ml Adenine1/2硫酸塩、0.1mg/ml Uracil、100mM リン酸カリウムバッファー(pH6.0))を加えて再懸濁し、20℃でさらに2日間培養することでEndo-Omの発現誘導を行った。回収した菌体に抽出バッファー(50mM リン酸ナトリウムバッファー(pH7.4)、1.25M NaCl、1mM PMSF、1×Complete(Roche社)、5% グリセロール)とガラスビーズを加え、激しく振とうすることにより細胞を破砕した。遠心分離によって不溶物を除いた上清をEndo-Om粗酵素液とした。
ウェスタンブロッティングは以下のように行った。Endo-Om粗酵素液をSDSサンプルバッファーにて変性後、常法によりウェスタンブロッティングを行った。1次抗体としてマウス抗FLAG抗体、2次抗体として抗マウスIgG抗体ホースラディッシュペルオキシダーゼ複合体を用い、検出はECL plusシステム(GE Healthcare社)および化学発光検出器(GE Healthcare社)を用いて行った。
ウェスタンブロッティングの結果を図3のAに示した。Endo-Om過剰発現株ではEndo-Omの分子量である87kDaに相当する位置にFLAG-tagのシグナルが検出され、タンパク質の発現が確認された。
酵素活性測定は以下のように行った。終濃度100mM 酢酸ナトリウムバッファー(pH5.3)、0.5M NaCl、10μMのFmocラベル化した2分岐複合型糖鎖(NGA2-Asn-Fmoc)、およびEndo-Om粗酵素液を含む反応液(total volume:10μl)を50℃で1時間インキュベートし、95℃で5分間加熱することにより酵素反応を停止した。反応液をHPLCに供し、基質のNGA2-Asn-Fmocおよびその加水分解物のピーク面積比から酵素活性を算出した。カラムはAsahipak NH2P-50 4E(4.6×250 mm、Shodex社)を使用し、溶媒はアセトニトリル(溶媒A)と200mM TEAA(pH7.0、GLEN RESEARCH社:溶媒B)を用いた。流速1.0ml/min、溶媒B:43%の条件でアイソクラティック溶出を行い、蛍光検出器(励起波長265nm、蛍光波長315nm)にて検出を行った。Endo-Omの酵素活性は上記の反応条件で1分間に1μmolのNGA2-Asn-Fmocを加水分解する活性を1Unitとして定義した。
HPLCによる酵素反応の検出結果を図3のBに示した。まず基質の2分岐複合糖鎖(NGA2-Asn-Fmoc)を単独でHPLCに供したところ、11.7minの位置にピークが検出された。続いて形質転換前のO.minuta株とEndo-Om過剰発現株の粗酵素液でそれぞれ50μg protein/reactionの割合で反応を行い、活性を比較した。Endo-Om過剰発現株では形質転換前の株に比べて基質のピークが大幅に減少し、加水分解物のGlcNAc-Asn-Fmocのピーク(6.8min)が増大していた。この結果からEndo-OmがO.minutaの持つ2分岐複合型糖鎖を加水分解する酵素の正体であることが確認された。
続いてEndo-Om過剰発現株の比活性を比較した結果を図3のCに示した。形質転換前のTK10-1-2株では、10μM NGA2-Asn-Fmocを基質とした際に比活性が15.0[μUnit/mg protein]であったのに対し、Endo-Om過剰発現株では295〜339[μUnit/mg protein](形質転換前の20〜24倍)に増大していた。
(5−1)Endo-Om精製酵素液の調製と比活性およびKm、Vmaxの算出
Endo-Omの諸性質の検討は精製酵素液を用いて行った。実施例4に記載した方法により100ml分の菌液から調製したEndo-Om粗酵素液を透析により平衡化バッファー(20mM リン酸ナトリウムバッファー(pH7.4)、0.5M NaCl、0.5mM PMSF、50mM イミダゾール)に置換した。透析後のEndo-Om粗酵素液をHisTrap HPカラム(GE Healthcare社)に供し、平衡化バッファーで洗浄した後、50mM、100mM、200mMイミダゾールを含む平衡化バッファーで段階的に溶出することによりタンパク質を溶出した。カラムから溶出されたEndo-Omを含む画分をAmicon Ultra(50,000 NMWL,Millipore社)で限外ろ過濃縮し、さらに20mM リン酸ナトリウムバッファー(pH7.4)、0.5M NaClで透析した後、終濃度10%となるようにグリセロールを加えてEndo-Om精製酵素液とした。実施例4に記した方法により基質濃度を1mMとしたときのEndo-Om精製酵素液の活性を測定し、比活性を算出した。また、種々の濃度のNGA2-Asn-Fmocを基質として活性測定を行い、KmとVmaxを算出した。比較のために同様の方法により市販のEndo-Mの比活性およびKm、Vmaxを算出した。なおEndo-Mの至適pHは6.0(非特許文献6)であるため、Endo-Mの活性測定の際は酢酸ナトリウムバッファーのpHを6.0とした。
Endo-Omの精製結果を図4に示した。Endo-OmはSDS-PAGE上で単一にまで精製された。精製したEndo-Omの比活性は1mMのNGA2-Asn-Fmocを基質としたときに0.80μmol/min/mgであった。同測定条件における市販のEndo-Mの比活性は0.06μmol/min/mgであり、Endo-Mに比べてEndo-Omは約13倍の比活性を有していることが明らかとなった。また、種々の濃度のNGA2-Asn-Fmocを基質として活性測定を行い、KmとVmaxを算出した結果、Endo-OmのKmは5539μM、Vmaxは3.88μmol/min/mgであり、市販のEndo-MのKm(176μM)の31倍、市販のEndo-MのVmax(0.070μmol/min/mg)の55倍であることが明らかとなった(図5)。
Endo-Omの至適反応pHの検討は以下のように行った。終濃度100mMの各種バッファー、0.5M NaCl、10μM NGA2-Asn-Fmoc、およびEndo-Om精製酵素液を含む反応液(total volume:10μl)を50℃で1時間インキュベートし、95℃で5分間加熱することにより酵素反応を停止した。バッファーにはクエン酸ナトリウムバッファー(pH3.5-5.5)、酢酸ナトリウムバッファー(pH4.5-6.0)、リン酸ナトリウムバッファー(pH6.0-7.5)、MOPS-NaOHバッファー(pH6.5-8.0)、Tris-HClバッファー(pH8.0-9.0)を使用した。実施例4に記載した方法により反応液をHPLCに供し、酵素活性を算出した。至適反応温度の検討は実施例4に記載した活性測定法の反応温度を10℃から60℃まで変えることにより行った。
Endo-Omの至適反応条件の測定結果を図6に示した。Endo-Omの至適反応pHは5.5付近、至適反応温度は50℃付近であった。
各種構造のPAラベル化糖鎖に対する加水分解活性の比較は以下のように行った。終濃度100mM 酢酸ナトリウムバッファー(pH5.3)、0.5M NaCl、1μMの各種PAラベル化糖鎖(TaKaRa-Bio社)、およびEndo-Om精製酵素液を含む反応液(total volume:10μl)を30℃で3〜12時間インキュベートし、95℃で5分間加熱することにより酵素反応を停止した。反応液をHPLCに供し、基質のPAラベル化糖鎖およびその加水分解物のピーク面積比から酵素活性を算出した。カラムはCosmosil 5C18-ARII(2.0×150mm、ナカライテスク社)を使用し、溶媒は0.1M 酢酸アンモニウムバッファー(pH4.0:溶媒A)および0.1M 酢酸アンモニウムバッファー(pH4.0)、0.5% 1-ブタノール(溶媒B)を用いた。流速0.5 ml/minで24分間かけて溶媒B:5%-50%のリニアグラジエント溶出を行い、蛍光検出器(励起波長 320nm、蛍光波長400nm)にて検出を行った。上記の反応条件で1分間に1μmolのPAラベル化糖鎖を加水分解する活性を1Unitとして酵素活性を算出し、M8A構造の糖鎖に対する加水分解活性を100%として各種糖鎖に対する相対活性を算出した。
各種構造のPAラベル化糖鎖に対するEndo-Omの加水分解活性の測定結果を表1に示した。比較のためにEndo-Mの過去の論文のデータ(非特許文献6)を引用した。Endo-OmはEndo-Mと同様に高マンノース型糖鎖に対する加水分解活性が高く、さらに混成型糖鎖や2分岐の複合糖鎖を加水分解することができた。一方で、分岐が3つ以上の複合糖鎖やコアフコース構造を持つ糖鎖は分解できないことが明らかとなった。また、いくつかの糖鎖ではEndo-Mとは反応性が異なっており、特にagalacto biantennary、M3B、M6B、M9A構造の糖鎖に対してはEndo-Mと比較して高い反応性を示した。
ENGaseの中には糖鎖を加水分解するのと同時に任意のアクセプター分子に対して切断した糖鎖を転移する活性を持つものが知られており、その代表例としてEndo-Mが挙げられる。そこでEndo-Omにも同様の糖転移活性(トランスグリコシダーゼ活性)があるか否かを調べた。
Endo-Omのトランスグリコシダーゼ活性の検出は以下のように行った。終濃度100mM 酢酸ナトリウムバッファー(pH6.0)、2mM NGA2-Asn-Fmoc、50mMのアクセプター分子(p-ニトロフェニルグルコース)およびEndo-Om精製酵素液を含む反応液(total volume:10μl)を30℃で3時間インキュベートし、95℃で5分間加熱することにより酵素反応を停止した。反応液全量を実施例4に記載した方法でHPLCに供し、UV検出器(274nm)で検出を行った。さらに、糖転移反応物と思われるピークを分取し、凍結乾燥後にMilli-Q水に再溶解してMALDI-QIT-TOFMS (A×IMA-QIT、島津製作所)で質量分析を行うことにより、糖転移反応物の同定を行った。
Endo-Omの糖転移活性の検出結果を図7に示した。まず、反応系にアクセプターを加えていない条件では糖転移反応が起こらないため、ドナーのNGA2-Asn-Fmoc(10.8min)と加水分解物であるGlcNAc-Asn-Fmoc(6.6min)のピークのみが検出された。続いてアクセプターを加えた条件では、加水分解物のピークの他に糖転移反応物と思われる新たなピーク(4.15min)が検出された。このピークを分取してMS解析を行った結果、予測された糖転移反応物の分子量と一致する分子イオンピークが検出された(m/z=1389[M+Na-O2]+,m/z=1405[M+Na-O]+,m/z=1421[M+Na]+,m/z=1437[M+K]+)。以上の結果から、Endo-Omは任意のアクセプター分子に対して切断した糖鎖を転移する活性を有していることが示された。
Endo-Omのアミノ酸配列を元にNCBIのアミノ酸配列データベースに対してBLAST検索を行った結果、いくつかの酵母において部分的に相同性の高い遺伝子が検出された(図2)。この中でCandida parapolymorpha DL-1(Hansenula polymorpha DL-1)由来の遺伝子は、アミノ酸配列でEndo-Omと53.9%の相同性であったが、データベース上、ENGaseである旨のアノテーションは記載されていなかった。そこでEndo-Cp遺伝子のクローニングとタンパク質発現系の構築を検討した。
Candida parapolymorpha DL-1 ATCC26012株のゲノムDNAを常法により抽出し、プライマー3(配列番号7)とプライマー4(配列番号8)を用いてPCR法によりEndo-Cp遺伝子のORF全長配列を増幅した。
プライマー3:
5’-TCGAAGGTAGGCATATGCCTCGAAACACAGCTAA-3’(配列番号7)
プライマー4:
5’-GCTTGAATTCGGATCCTCAAATGTGCATATCGGTACCCT-3’(配列番号8)
得られたPCR産物を精製した後、Nde IとBamHIで切断した大腸菌用タンパク質発現プラスミド pCold I DNA(TaKaRa-Bio社)にIn-FusionTM HD Cloning Kit(Clontech社)を用いてPCR産物を組み込み、pCold I-Endo-Cpを構築した。精製したベクターのDNAシーケンスを行い、Endo-Cp遺伝子の全長塩基配列の決定を行なった。
クローニングの結果得られたEndo-Cp遺伝子の塩基配列およびアミノ酸配列を図8に示した。Endo-CpのORFは2238塩基からなり、745アミノ酸からなる分子量86,500のタンパク質をコードしていた。推定等電点は5.61であった。Endo-CpはN末端側約75〜410アミノ酸の位置にGH18 Chitinase-like superfamilyに属するGH family 85 ENGaseに高度に保存されている配列を有していた。
実施例6のpCold I-Endo-Cpをタンパク質発現用の大腸菌コンピテントセル(NEB Express Competent E. coli(High Efficiency),NEW ENGRAND BioLabs社)に形質転換した。形質転換後の菌液を100μg/mlのアンピシリンを含むLB寒天培地(2.5% LB Broth,Miller(Difco社)、1.5% Agar)に塗布し、37℃で一晩培養することで形質転換体のコロニーを得た。コロニーをプレートから掻きとり、PCR反応液に懸濁する簡易PCR法にてEndo-Cp遺伝子の増幅を確認し、Endo-Cp発現大腸菌株とした。
Endo-Cp発現大腸菌株を5mlのLB培地にまき、37℃で一晩培養を行った。菌液全量を500mlのLB培地に加え、37℃で約3時間培養することでOD値が0.5程度になるまで菌体を増殖させた。その後、終濃度1.0mMとなるようにIPTGを添加し、15℃に急冷してコールドショックを与えることによりタンパク質の発現誘導を行った。15℃で48時間の培養を行った後、菌体を回収し、抽出バッファー(50mM リン酸ナトリウムバッファー(pH7.4)、1.25M NaCl、1mM PMSF、1×Complete(Roche社)、5% グリセロール)とガラスビーズを加え、激しく振とうすることにより菌体を破砕した。遠心分離によって不溶物を除いた上清をEndo-Cp粗酵素液とした。Endo-Cp粗酵素液は透析により平衡化バッファー(20mM リン酸ナトリウムバッファー(pH7.4)、0.5M NaCl、0.5mM PMSF、50mM イミダゾール)に置換した。透析後のEndo-Cp粗酵素液をHisTrap HPカラム(GE Healthcare社)に供し、平衡化バッファーで洗浄した後、50mM、100mM、200mMイミダゾールを含む平衡化バッファーで段階的に溶出することによりタンパク質を溶出した。カラムから溶出されたEndo-Cpを含む画分をAmicon Ultra(50,000 NMWL,Millipore社)で限外ろ過濃縮し、さらに20 mM リン酸ナトリウムバッファー(pH7.4)、0.5M NaClで透析した後、終濃度10%となるようにグリセロールを加えてEndo-Cp部分精製酵素液とした。
ウェスタンブロッティングは以下のように行った。Endo-Cp部分精製酵素液をSDSサンプルバッファーにて変性後、常法によりウェスタンブロッティングを行った。1次抗体としてマウス抗Tetra-His抗体、2次抗体として抗マウスIgG抗体ホースラディッシュペルオキシダーゼ複合体を用い、検出はECL plusシステム(GE Healthcare社)および化学発光検出器(GE Healthcare社)を用いて行った。
酵素活性測定は以下のように行った。終濃度100mM 酢酸ナトリウムバッファー(pH5.3)、0.5M NaCl、10μMのFmocラベル化した2分岐複合型糖鎖(NGA2-Asn-Fmoc)、およびEndo-Cpを含む反応液(total volume:10μl)を30℃で3時間インキュベートし、95℃で5分間加熱することにより酵素反応を停止した。反応液をHPLCに供し、基質のNGA2-Asn-Fmocおよびその加水分解物のピーク面積比から酵素活性を算出した。カラムはAsahipak NH2P-50 4E(4.6×250mm、Shodex社)を使用し、溶媒はアセトニトリル(溶媒A)と200mM TEAA(pH7.0、GLEN RESEARCH社:溶媒B)を用いた。流速1.0ml/min、溶媒B:43%の条件でアイソクラティック溶出を行い、蛍光検出器(励起波長265nm、蛍光波長315nm)にて検出を行った。Endo-Cpの酵素活性は上記の反応条件で1分間に1μmolのNGA2-Asn-Fmocを加水分解する活性を1Unitとして定義した。
Endo-Cp部分精製酵素液のSDS-PAGE、ウェスタンブロッティングおよび活性測定の結果を図9に示した。SDS-PAGEでは複数のバンドが検出されたが、ウェスタンブロッティングではEndo-Cpの分子量である86.5kDaに相当する位置にHis-tagのシグナルが検出され、タンパク質の発現が確認された(図9A,B)。2分岐複合型糖鎖(NGA2-Asn-Fmoc)を基質として活性測定を行ったところ、Endo-Cp部分精製酵素液を加えた反応液では基質のピーク(10.8min)が減少し、加水分解物のGlcNAc-Asn-Fmocのピーク(6.8min)が出現した(図9C)。この結果からEndo-Cpが既知のEndo-Mと同様に2分岐複合型糖鎖を加水分解するENGaseであることが明らかとなった。また、Endo-Cp部分精製酵素液の比活性は120μUnit/mgであった。
(9−1)Endo-Cpの至適反応条件の検討
Endo-Cpの至適反応pHの検討は以下のように行った。終濃度100mMの各種バッファー、0.5M NaCl、10μM NGA2-Asn-Fmoc、およびEndo-Cp部分精製酵素液を含む反応液(total volume:10μl)を30℃で3時間インキュベートし、95℃で5分間加熱することにより酵素反応を停止した。バッファーにはクエン酸ナトリウムバッファー(pH3.5-5.5)、酢酸ナトリウムバッファー(pH4.5-6.0)、リン酸ナトリウムバッファー(pH6.0-7.5)、MOPS-NaOHバッファー(pH6.5-8.0)、Tris-HClバッファー(pH8.0-9.0)を使用した。実施例8に記載した方法により反応液をHPLCに供し、酵素活性を算出した。至適反応温度の検討は実施例8に記載した活性測定法の反応温度を10℃から70℃まで変えることにより行った。
Endo-Cpの至適反応条件の測定結果を図10に示した。Endo-Cpの至適反応pHは5.5付近、至適反応温度は60℃付近であった。
各種構造のPAラベル化糖鎖に対する加水分解活性の比較は以下のように行った。終濃度100mM 酢酸ナトリウムバッファー(pH5.3)、0.5M NaCl、1μMの各種PAラベル化糖鎖(TaKaRa-Bio社)、およびEndo-Cp部分精製酵素液を含む反応液(total volume:10μl)を30℃で3〜12時間インキュベートし、95℃で5分間加熱することにより酵素反応を停止した。反応液をHPLCに供し、基質のPAラベル化糖鎖およびその加水分解物のピーク面積比から酵素活性を算出した。カラムはCosmosil 5C18-ARII(2.0×150mm、ナカライテスク社)を使用し、溶媒は0.1M 酢酸アンモニウムバッファー(pH4.0:溶媒A)および0.1M 酢酸アンモニウムバッファー(pH4.0)、0.5% 1-ブタノール(溶媒B)を用いた。流速0.5 ml/minで24分間かけて溶媒B:5%-50%のリニアグラジエント溶出を行い、蛍光検出器(励起波長 320nm、蛍光波長400nm)にて検出を行った。上記の反応条件で1分間に1μmolのPAラベル化糖鎖を加水分解する活性を1Unitとして酵素活性を算出し、M8A構造の糖鎖に対する加水分解活性を100%として各種糖鎖に対する相対活性を算出した。
各種構造のPAラベル化糖鎖に対するEndo-Cpの加水分解活性の測定結果を表2に示した。比較のためにEndo-Mの過去の論文のデータ(非特許文献6)を引用した。Endo-CpはEndo-Mと同様に高マンノース型糖鎖に対する加水分解活性が高く、さらに混成型糖鎖や2分岐の複合糖鎖を加水分解することができた。一方で、分岐が3つ以上の複合糖鎖やコアフコース構造を持つ糖鎖は分解できないことが明らかとなった。また、いくつかの糖鎖ではEndo-Mとは反応性が異なっており、特にagalacto biantennary、M3B、M6B構造の糖鎖に対してはEndo-Mと比較して高い反応性を示した。
ENGaseの中には糖鎖を加水分解するのと同時に任意のアクセプター分子に対して切断した糖鎖を転移する活性を持つものが知られており、その代表例としてEndo-Mが挙げられる。そこでEndo-Cpにも同様の糖転移活性(トランスグリコシダーゼ活性)があるか否かを調べた。
Endo-Cpのトランスグリコシダーゼ活性の検出は以下のように行った。終濃度100mM 酢酸ナトリウムバッファー(pH6.0)、2mM NGA2-Asn-Fmoc、50mMのアクセプター分子(p-ニトロフェニルグルコース)およびEndo-Cp部分精製酵素液を含む反応液(total volume:10μl)を30℃で3時間インキュベートし、95℃で5分間加熱することにより酵素反応を停止した。反応液全量を実施例8に記載した方法でHPLCに供し、UV検出器(274nm)で検出を行った。また、糖転移反応物と思われるピークを分取し、凍結乾燥後にMilli-Q水に再溶解してMALDI-QIT-TOFMS (A×IMA-QIT、島津製作所)で質量分析を行うことにより、糖転移反応物の同定を行った。
Endo-Cpの糖転移活性の検出結果を図11に示した。比較のためにEndo-Omの結果を合わせて表示した。反応系にアクセプターを加えた条件でEndo-Cpを反応させたところ、Endo-Omと同様に加水分解物のピークの他に糖転移反応物のピーク(4.15min)が検出された。このピークを分取し、MS解析を行った結果、予測された糖転移反応物の分子量と一致する分子イオンピークが検出された(m/z=1389[M+Na-O2]+,m/z=1405[M+Na-O]+,m/z=1421[M+Na]+,m/z=1437[M+K]+)。以上の結果から、Endo-Cpは任意のアクセプター分子に対して切断した糖鎖を転移する活性を有していることが示唆された。
Endo-Omのアミノ酸配列を元にNCBIのアミノ酸配列データベースに対してBLAST検索を行った結果、いくつかの酵母において部分的に相同性の高い遺伝子が検出された(図2)。この中でPichia anomala由来の遺伝子は、アミノ酸配列でEndo-Omと42.5%の相同性であったが、データベース上、ENGaseである旨のアノテーションは記載されていなかった。そこでEndo-Pa遺伝子のクローニングとタンパク質発現系の構築を検討した。
Pichia anomala ATCC36904株のゲノムDNAを常法により抽出し、プライマー5(配列番号11)とプライマー6(配列番号12)を用いてPCR法によりEndo-Pa遺伝子のORF全長配列を増幅した。
プライマー5:
5’-TCGAAGGTAGGCATATGCAACATGATCATGCTGCCATA-3’(配列番号11)
プライマー6:
5’-GCTTGAATTCGGATCCCTATATAAATATATCCTCGCCTTTG-3’(配列番号12)
得られたPCR産物を精製した後、Nde IとBamHIで切断した大腸菌用タンパク質発現プラスミド pCold I DNA(TaKaRa-Bio社)にIn-FusionTM HD Cloning Kit(Clontech社)を用いてPCR産物を組み込み、pCold I-Endo-Paを構築した。精製したベクターのDNAシーケンスを行い、Endo-Pa遺伝子の全長塩基配列の決定を行なった。
クローニングの結果得られたEndo-Pa遺伝子の塩基配列およびアミノ酸配列を図12に示した。Endo-PaのORFは1971塩基からなり、656アミノ酸からなる分子量76,050のタンパク質をコードしていた。推定等電点は6.06であった。Endo-PaはN末端側約65〜400アミノ酸の位置にGH18 Chitinase-like superfamilyに属するGH family 85 ENGaseに高度に保存されている配列を有していた。
実施例10のpCold I-Endo-Paをタンパク質発現用の大腸菌コンピテントセル(NEB Express Competent E. coli(High Efficiency),NEW ENGRAND BioLabs社)に形質転換した。形質転換後の菌液を100μg/mlのアンピシリンを含むLB寒天培地(2.5% LB Broth,Miller (Difco社)、1.5% Agar)に塗布し、37℃で一晩培養することで形質転換体のコロニーを得た。コロニーをプレートから掻きとり、PCR反応液に懸濁する簡易PCR法にてEndo-Pa遺伝子の増幅を確認し、Endo-Pa発現大腸菌株とした。
Endo-Pa発現大腸菌株を5mlのLB培地にまき、37℃で一晩培養を行った。菌液全量を500mlのLB培地に加え、37℃で約3時間培養することでOD値が0.5程度になるまで菌体を増殖させた。その後、終濃度1.0mMとなるようにIPTGを添加し、15℃に急冷してコールドショックを与えることによりタンパク質の発現誘導を行った。15℃で48時間の培養を行った後、菌体を回収し、抽出バッファー(50mM リン酸ナトリウムバッファー(pH7.4)、1.25M NaCl、1mM PMSF、1×Complete(Roche社)、5% グリセロール)とガラスビーズを加え、激しく振とうすることにより菌体を破砕した。遠心分離によって不溶物を除いた上清をEndo-Pa粗酵素液とした。Endo-Pa粗酵素液は透析により平衡化バッファー(20mM リン酸ナトリウムバッファー(pH7.4)、0.5M NaCl、0.5mM PMSF、50mM イミダゾール)に置換した。透析後のEndo-Pa粗酵素液をHisTrap HPカラム(GE Healthcare社)に供し、平衡化バッファーで洗浄した後、50mM、100mM、200mMイミダゾールを含む平衡化バッファーで段階的に溶出することによりタンパク質を溶出した。カラムから溶出されたEndo-Paを含む画分をAmicon Ultra(50,000 NMWL,Millipore社)で限外ろ過濃縮し、さらに20mM リン酸ナトリウムバッファー(pH7.4)、0.5M NaClで透析した後、終濃度10%となるようにグリセロールを加えてEndo-Pa部分精製酵素液とした。
ウェスタンブロッティングは以下のように行った。Endo-Pa部分精製酵素液をSDSサンプルバッファーにて変性後、常法によりウェスタンブロッティングを行った。1次抗体としてマウス抗Tetra-His抗体、2次抗体として抗マウスIgG抗体ホースラディッシュペルオキシダーゼ複合体を用い、検出はECL plusシステム(GE Healthcare社)および化学発光検出器(GE Healthcare社)を用いて行った。
酵素活性測定は以下のように行った。終濃度100mM 酢酸ナトリウムバッファー(pH5.3)、0.5M NaCl、10μMのFmocラベル化した2分岐複合型糖鎖(NGA2-Asn-Fmoc)、およびEndo-Paを含む反応液(total volume:10μl)を30℃で3時間インキュベートし、95℃で5分間加熱することにより酵素反応を停止した。反応液をHPLCに供し、基質のNGA2-Asn-Fmocおよびその加水分解物のピーク面積比から酵素活性を算出した。カラムはAsahipak NH2P-50 4E(4.6×250 mm、Shodex社)を使用し、溶媒はアセトニトリル(溶媒A)と200mM TEAA(pH7.0、GLEN RESEARCH社:溶媒B)を用いた。流速1.0ml/min、溶媒B:43%の条件でアイソクラティック溶出を行い、蛍光検出器(励起波長265nm、蛍光波長315nm)にて検出を行った。Endo-Paの酵素活性は上記の反応条件で1分間に1μmolのNGA2-Asn-Fmocを加水分解する活性を1Unitとして定義した。
Endo-Pa部分精製酵素液のSDS-PAGE、ウェスタンブロッティングおよび活性測定の結果を図13に示した。SDS-PAGEでは複数のバンドが検出されたが、ウェスタンブロッティングでは配列から予測される分子量である76kDaよりもやや下の位置にHis-tagのシグナルが検出され、タンパク質の発現が確認された(図13A,B)。2分岐複合型糖鎖(NGA2-Asn-Fmoc)を基質として活性測定を行ったところ、Endo-Pa部分精製酵素液を加えた反応液では基質のピーク(10.8min)が減少し、加水分解物のGlcNAc-Asn-Fmocのピーク(6.8min)が出現した(図13C)。この結果からEndo-Paが既知のEndo-Mと同様に2分岐複合型糖鎖を加水分解するENGaseであることが明らかとなった。また、Endo-Pa部分精製酵素液の比活性は353μUnit/mgであった。
(13−1)Endo-Paの至適反応条件の検討
Endo-Paの至適反応pHの検討は以下のように行った。終濃度100mMの各種バッファー、0.5M NaCl、10μM NGA2-Asn-Fmoc、およびEndo-Pa部分精製酵素液を含む反応液(total volume:10μl)を30℃で3時間インキュベートし、95℃で5分間加熱することにより酵素反応を停止した。バッファーにはクエン酸ナトリウムバッファー(pH3.5-5.5)、酢酸ナトリウムバッファー(pH4.5-6.0)、リン酸ナトリウムバッファー(pH6.0-7.5)、MOPS-NaOHバッファー(pH6.5-8.0)、Tris-HClバッファー(pH8.0-9.0)を使用した。実施例12に記載した方法により反応液をHPLCに供し、酵素活性を算出した。至適反応温度の検討は実施例12に記載した活性測定法の反応温度を10℃から60℃まで変えることにより行った。
Endo-Paの至適反応条件の測定結果を図14に示した。Endo-Paの至適反応pHは5.0-5.5付近、至適反応温度は40℃付近であった。
各種構造のPAラベル化糖鎖に対する加水分解活性の比較は以下のように行った。終濃度100mM 酢酸ナトリウムバッファー(pH5.3)、0.5M NaCl、1μMの各種PAラベル化糖鎖(TaKaRa-Bio社)、およびEndo-Pa部分精製酵素液を含む反応液(total volume:10μl)を30℃で3〜12時間インキュベートし、95℃で5分間加熱することにより酵素反応を停止した。反応液をHPLCに供し、基質のPAラベル化糖鎖およびその加水分解物のピーク面積比から酵素活性を算出した。カラムはCosmosil 5C18-ARII(2.0×150mm、ナカライテスク社)を使用し、溶媒は0.1M 酢酸アンモニウムバッファー(pH4.0:溶媒A)および0.1M 酢酸アンモニウムバッファー(pH4.0)、0.5% 1-ブタノール(溶媒B)を用いた。流速0.5 ml/minで24分間かけて溶媒B:5%-50%のリニアグラジエント溶出を行い、蛍光検出器(励起波長 320nm、蛍光波長400nm)にて検出を行った。上記の反応条件で1分間に1μmolのPAラベル化糖鎖を加水分解する活性を1Unitとして酵素活性を算出し、M8A構造の糖鎖に対する加水分解活性を100%として各種糖鎖に対する相対活性を算出した。
各種構造のPAラベル化糖鎖に対するEndo-Paの加水分解活性の測定結果を表3に示した。比較のためにEndo-Mの過去の論文のデータ(非特許文献6)を引用した。Endo-PaはEndo-Mと同様に高マンノース型糖鎖に対する加水分解活性が高く、さらに混成型糖鎖や2分岐の複合糖鎖を加水分解することができた。一方で、分岐が3つ以上の複合糖鎖やコアフコース構造を持つ糖鎖は分解できないことが明らかとなった。また、ほとんどの糖鎖でEndo-Mと比較して高い反応性を示した。
ENGaseの中には糖鎖を加水分解するのと同時に任意のアクセプター分子に対して切断した糖鎖を転移する活性を持つものが知られており、その代表例としてEndo-Mが挙げられる。そこでEndo-Paにも同様の糖転移活性(トランスグリコシダーゼ活性)があるか否かを調べた。
Endo-Paのトランスグリコシダーゼ活性の検出は以下のように行った。終濃度100mM 酢酸ナトリウムバッファー(pH6.0)、2mM NGA2-Asn-Fmoc、50mMのアクセプター分子(p-ニトロフェニルグルコース)およびEndo-Pa部分精製酵素液を含む反応液(total volume:10μl)を30℃で16時間インキュベートし、95℃で5分間加熱することにより酵素反応を停止した。反応液全量を実施例12に記載した方法でHPLCに供し、UV検出器(274nm)で検出を行った。また、糖転移反応物と思われるピークを分取し、凍結乾燥後にMilli-Q水に再溶解してMALDI-QIT-TOFMS(A×IMA-QIT、島津製作所)で質量分析を行うことにより、糖転移反応物の同定を行った。
Endo-Cpの糖転移活性の検出結果を図15に示した。比較のためにEndo-Omの結果を合わせて表示した。反応系にアクセプターを加えた条件でEndo-Paを反応させたところ、Endo-Omと同様に加水分解物のピークの他に糖転移反応物のピーク(4.15min)が新たに検出された。このピークを分取し、MS解析を行った結果、予測された糖転移反応物の分子量と一致する分子イオンピークが検出された(m/z=1389[M+Na-O2]+,m/z=1405[M+Na-O]+,m/z=1421[M+Na]+,m/z=1437[M+K]+)。以上の結果から、Endo-Paは任意のアクセプター分子に対して切断した糖鎖を転移する活性を有していることが示唆された。
Endo-Omのアミノ酸配列を元にNCBIのアミノ酸配列データベースに対してBLAST検索を行った結果、いくつかの酵母において部分的に相同性の高い遺伝子が検出された(図2)。この中でZygosaccharomyces rouxii由来の遺伝子は、アミノ酸配列でEndo-Omと30.6%の相同性であったが、データベース上、ENGaseである旨のアノテーションは記載されていなかった。そこでEndo-Zr遺伝子のクローニングとタンパク質発現系の構築を検討した。
Zygosaccharomyces rouxii ATCC2623株のゲノムDNAを常法により抽出し、プライマー7(配列番号15)とプライマー8(配列番号16)を用いてPCR法によりEndo-Zr遺伝子のORF全長配列を増幅した。
プライマー7:
5’-TCGAAGGTAGGCATATGAAACGTATTAATCAGGT-3’(配列番号15)
プライマー8:
5’-GCTTGAATTCGGATCCTTACTTCTTGACTACGAATTTCAAAG-3’(配列番号16)
得られたPCR産物を精製した後、Nde IとBamHIで切断した大腸菌用タンパク質発現プラスミド pCold I DNA(TaKaRa-Bio社)にIn-FusionTM HD Cloning Kit(Clontech社)を用いてPCR産物を組み込み、pCold I-Endo-Zrを構築した。精製したベクターのDNAシーケンスを行い、Endo-Zr遺伝子の全長塩基配列の決定を行なった。
クローニングの結果得られたEndo-Zr遺伝子の塩基配列およびアミノ酸配列を図16に示した。Endo-ZrのORFは1920塩基からなり、639アミノ酸からなる分子量73,105のタンパク質をコードしていた。推定等電点は6.69であった。Endo-ZrはN末端側約70〜400アミノ酸の位置にGH18 Chitinase-like superfamilyに属するGH family 85 ENGaseに高度に保存されている配列を有していた。
実施例14のpCold I-Endo-Zrをタンパク質発現用の大腸菌コンピテントセル(NEB Express Competent E. coli(High Efficiency),NEW ENGRAND BioLabs社)に形質転換した。形質転換後の菌液を100μg/mlのアンピシリンを含むLB寒天培地(2.5% LB Broth,Miller (Difco社)、1.5% Agar)に塗布し、37℃で一晩培養することで形質転換体のコロニーを得た。コロニーをプレートから掻きとり、PCR反応液に懸濁する簡易PCR法にてEndo-Zr遺伝子の増幅を確認し、Endo-Zr発現大腸菌株とした。
Endo-Zr発現大腸菌株を5mlのLB培地にまき、37℃で一晩培養を行った。菌液全量を500mlのLB培地に加え、37℃で約3時間培養することでOD値が0.5程度になるまで菌体を増殖させた。その後、終濃度1.0mMとなるようにIPTGを添加し、15℃に急冷してコールドショックを与えることによりタンパク質の発現誘導を行った。15℃で48時間の培養を行った後、菌体を回収し、抽出バッファー(50mM リン酸ナトリウムバッファー(pH7.4)、1.25M NaCl、1mM PMSF、1×Complete(Roche社)、5% グリセロール)とガラスビーズを加え、激しく振とうすることにより菌体を破砕した。遠心分離によって不溶物を除いた上清をEndo-Zr粗酵素液とした。Endo-Zr粗酵素液は透析により平衡化バッファー(20mM リン酸ナトリウムバッファー(pH7.4)、0.5M NaCl、0.5mM PMSF、50mM イミダゾール)に置換した。透析後のEndo-Zr粗酵素液をHisTrap HPカラム(GE Healthcare社)に供し、平衡化バッファーで洗浄した後、50mM、100mM、200mMイミダゾールを含む平衡化バッファーで段階的に溶出することによりタンパク質を溶出した。カラムから溶出されたEndo-Zrを含む画分をAmicon Ultra(50,000 NMWL,Millipore社)で限外ろ過濃縮し、さらに20mM リン酸ナトリウムバッファー(pH7.4)、0.5M NaClで透析した後、終濃度10%となるようにグリセロールを加えてEndo-Zr部分精製酵素液とした。
ウェスタンブロッティングは以下のように行った。Endo-Zr部分精製酵素液をSDSサンプルバッファーにて変性後、常法によりウェスタンブロッティングを行った。1次抗体としてマウス抗Tetra-His抗体、2次抗体として抗マウスIgG抗体ホースラディッシュペルオキシダーゼ複合体を用い、検出はECL plusシステム(GE Healthcare社)および化学発光検出器(GE Healthcare社)を用いて行った。
酵素活性測定は以下のように行った。終濃度100mM 酢酸ナトリウムバッファー(pH5.3)、0.5M NaCl、10μMのFmocラベル化した2分岐複合型糖鎖(NGA2-Asn-Fmoc)、およびEndo-Zrを含む反応液(total volume:10μl)を30℃で3〜12時間インキュベートし、95℃で5分間加熱することにより酵素反応を停止した。反応液をHPLCに供し、基質のNGA2-Asn-Fmocおよびその加水分解物のピーク面積比から酵素活性を算出した。カラムはAsahipak NH2P-50 4E(4.6×250 mm、Shodex社)を使用し、溶媒はアセトニトリル(溶媒A)と200mM TEAA(pH7.0、GLEN RESEARCH社:溶媒B)を用いた。流速1.0ml/min、溶媒B:43%の条件でアイソクラティック溶出を行い、蛍光検出器(励起波長265nm、蛍光波長315nm)にて検出を行った。Endo-Zrの酵素活性は上記の反応条件で1分間に1μmolのNGA2-Asn-Fmocを加水分解する活性を1Unitとして定義した。
Endo-Zr部分精製酵素液のSDS-PAGE、ウェスタンブロッティングおよび活性測定の結果を図17に示した。SDS-PAGEでは複数のバンドが検出されたが、ウェスタンブロッティングではEndo-Zrの分子量である73kDaに相当する位置にHis-tagのシグナルが検出され、タンパク質の発現が確認された(図17A,B)。2分岐複合型糖鎖(NGA2-Asn-Fmoc)を基質として活性測定を行ったところ、Endo-Zr部分精製酵素液を加えた反応液では基質のピーク(10.8min)が減少し、加水分解物のGlcNAc-Asn-Fmocのピーク(6.8min)が出現した(図17C)。この結果からEndo-Zrが既知のEndo-Mと同様に2分岐複合型糖鎖を加水分解するENGaseであることが明らかとなった。また、Endo-Zr部分精製酵素液の比活性は3.3μUnit/mgであった。
(17−1)Endo-Zrの至適反応条件の検討
Endo-Zrの至適反応pHの検討は以下のように行った。終濃度100mMの各種バッファー、0.5M NaCl、10μM NGA2-Asn-Fmoc、およびEndo-Zr部分精製酵素液を含む反応液(total volume:10μl)を30℃で3時間インキュベートし、95℃で5分間加熱することにより酵素反応を停止した。バッファーにはクエン酸ナトリウムバッファー(pH3.5-5.5)、酢酸ナトリウムバッファー(pH4.5-6.0)、リン酸ナトリウムバッファー(pH6.0-7.5)、MOPS-NaOHバッファー(pH6.5-8.0)、Tris-HClバッファー(pH8.0-9.0)を使用した。実施例16に記載した方法により反応液をHPLCに供し、酵素活性を算出した。至適反応温度の検討は実施例16に記載した活性測定法の反応温度を10℃から60℃まで変えることにより行った。
Endo-Zrの至適反応条件の測定結果を図18に示した。Endo-Zrの至適反応pHは4.5-5.0付近、至適反応温度は40℃付近であった。
各種構造のPAラベル化糖鎖に対する加水分解活性の比較は以下のように行った。終濃度100mM 酢酸ナトリウムバッファー(pH5.3)、0.5M NaCl、1μMの各種PAラベル化糖鎖(TaKaRa-Bio社)、およびEndo-Zr部分精製酵素液を含む反応液(total volume:10μl)を30℃で3〜12時間インキュベートし、95℃で5分間加熱することにより酵素反応を停止した。反応液をHPLCに供し、基質のPAラベル化糖鎖およびその加水分解物のピーク面積比から酵素活性を算出した。カラムはCosmosil 5C18-ARII(2.0×150mm、ナカライテスク社)を使用し、溶媒は0.1M 酢酸アンモニウムバッファー(pH4.0:溶媒A)および0.1M 酢酸アンモニウムバッファー(pH4.0)、0.5% 1-ブタノール(溶媒B)を用いた。流速0.5ml/minで24分間かけて溶媒B:5%-50%のリニアグラジエント溶出を行い、蛍光検出器(励起波長 320nm、蛍光波長400nm)にて検出を行った。上記の反応条件で1分間に1μmolのPAラベル化糖鎖を加水分解する活性を1Unitとして酵素活性を算出し、M8A構造の糖鎖に対する加水分解活性を100%として各種糖鎖に対する相対活性を算出した。
各種構造のPAラベル化糖鎖に対するEndo-Zrの加水分解活性の測定結果を表4に示した。比較のためにEndo-Mの過去の論文のデータ(非特許文献6)を引用した。Endo-ZrはEndo-Mと同様に高マンノース型糖鎖に対する加水分解活性が高く、さらに混成型糖鎖や2分岐の複合糖鎖を加水分解することができた。一方で、分岐が3つ以上の複合糖鎖やコアフコース構造を持つ糖鎖、bisecting GlcNAcを有する混成型糖鎖は分解できないことが明らかとなった。また、いくつかの糖鎖ではEndo-Mとは反応性が異なっており、特に2分岐の複合型糖鎖やM3B、M5A、M6B構造の糖鎖に対してはEndo-Mと比較して高い反応性を示した。
ENGaseの中には糖鎖を加水分解するのと同時に任意のアクセプター分子に対して切断した糖鎖を転移する活性を持つものが知られており、その代表例としてEndo-Mが挙げられる。そこでEndo-Zrにも同様の糖転移活性(トランスグリコシダーゼ活性)があるか否かを調べた。
Endo-Zrのトランスグリコシダーゼ活性の検出は以下のように行った。終濃度100mM 酢酸ナトリウムバッファー(pH6.0)、2mM NGA2-Asn-Fmoc、50mMのアクセプター分子(p-ニトロフェニルグルコース)およびEndo-Zr部分精製酵素液を含む反応液(total volume:10μl)を30℃で16時間インキュベートし、95℃で5分間加熱することにより酵素反応を停止した。反応液全量を実施例16に記載した方法でHPLCに供し、UV検出器(274nm)で検出を行った。
HPLCによる解析の結果、Endo-Zrのサンプルでは糖転移反応物のピークは検出されず、トランスグリコシダーゼ活性は確認できなかった(Data not shown)。
[配列フリーテキスト]
配列番号1:Endo-Om AA
配列番号2:Endo-Om (2319 bp)
配列番号3:プライマー1(Endo-Om primer F)
配列番号4:プライマー2(Endo-Om primer R)
配列番号5:Endo-Cp AA(Candida parapolymorpha)
配列番号6:Endo-Cp(Candida parapolymorpha)(2238 bp)
配列番号7:プライマー3(Endo-Cp primer F)
配列番号8:プライマー4(Endo-Cp primer R)
配列番号9:Endo-Pa AA(Pichia anomala)
配列番号10:Endo-Pa(Pichia anomala)(1971 bp)
配列番号11:プライマー5(Endo-Pa primer F)
配列番号12:プライマー6(Endo-Om primer R)
配列番号13:Endo-Zr AA(Zygosaccharomyces rouxii)
配列番号14:Endo-Zr(Zygosaccharomyces rouxii)(1920 bp)
配列番号15:プライマー7(Endo-Zr primer F)
配列番号16:プライマー8(Endo-Zr primer R)
Claims (9)
- 下記の(1)〜(5)のいずれかのアミノ酸配列を含むエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質;
(1)配列番号1に示されるアミノ酸配列、
(2)配列番号1に示されるアミノ酸配列のうち、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び/又は付加されているアミノ酸配列、
(3)配列番号1に示されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列、
(4)配列番号2に示される塩基配列にコードされたアミノ酸配列、
(5)配列番号2に示される塩基配列の相補配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドの塩基配列によりコードされたアミノ酸配列。 - 請求項1に記載のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
- 下記の(1)〜(3)のいずれかの塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(1)配列番号2に示される塩基配列、
(2)配列番号2に示される塩基配列の相補配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列、
(3)配列番号3及び4に示される塩基配列を含むプライマーセットにより増幅され、配列番号2と90%以上の同一性を有し、エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。 - 請求項2又は3に記載のポリヌクレオチドを含有する、エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質を発現するためのベクター。
- 請求項4に記載のベクターが導入されている、エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質発現用形質転換細胞。
- 前記形質転換細胞がOgataea minuta酵母細胞を宿主とする形質転換細胞である、請求項5に記載の形質転換細胞。
- 請求項5又は6に記載の形質転換細胞を用いることを特徴とする、エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質の製造方法。
- 請求項1に記載のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質を用いることを特徴とする、糖タンパク質からアスパラギン結合型糖鎖を切断する方法。
- 請求項1に記載のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質を用いることを特徴とする、アスパラギン結合型糖鎖を任意のアクセプター分子に対して転移する方法。
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