JP6993637B2 - フコース含有糖鎖を特異的に切断するエンドグリコシダーゼ - Google Patents

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Description

本発明はフコース含有糖鎖を特異的に切断するエンドグリコシダーゼに関する。
真核生物においてほとんどの分泌タンパク質は糖鎖が修飾された糖タンパク質であり、糖鎖は酵素の安定性や生理活性に重要な働きを担っている。また近年、医薬品の売り上げにおける割合が増加しているバイオ医薬品は、その7割が糖タンパク質を主成分としており、インターフェロンβやエリスロポエチンなどがあるが、特に抗体医薬品の市場は目覚ましい発展を遂げている。
糖鎖はN-結合型糖鎖とO-結合型糖鎖の2種類ある。O-結合型糖鎖は任意のセリン又はトレオニン側鎖のOH基に糖鎖が結合したものであり、比較的単純な構造である。N-結合型糖鎖はタンパク質中のN-X-S/T(Xはプロリン以外のアミノ酸)という配列のアスパラギン側鎖のアミノ基にアミノグリコシド結合した糖鎖である。N-結合型糖鎖の構造は糖タンパク質が機能する上で重要な要素である。例えばバイオ医薬品として用いられるIgGにはFcドメインに2カ所糖鎖を持つことが知られているが、糖鎖の根本に存在するフコースという単糖を取り除くことで、IgGの薬効に寄与するADCC活性が50-1000倍増強することが知られている(特許文献1を参照)。このように小さな構造の違いでも糖タンパク質の機能に大きく影響を与えるため、バイオ医薬品に用いる糖タンパク質の糖鎖は理想的な糖鎖構造を均一に備えている必要がある。
しかしながら、糖タンパク質は主にチャイニーズハムスターの卵巣細胞、CHO細胞を宿主として生産されるが、その糖鎖構造は不均一な状態である場合が多く、最適な状態であるとは言えない。そのために糖タンパク質の糖鎖を理想的な構造で均一に整える方法が求められている。
そこで、期待されるのがエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(Endo-β-N-acetylglucosaminidase:ENGase)を利用して糖鎖を付け替える方法である。ENGaseは糖タンパク質のN-結合型糖鎖の還元末端側に存在するN,N’-ジアセチルキトビオース間を加水分解し、糖鎖をエンド型に遊離する酵素である。ENGaseは加水分解活性のみならず、種又の糖鎖の受容体のOH基に糖鎖を転移する活性も有しているものがある。この活性を利用し、まずENGaseによって糖タンパク質から糖鎖を遊離する。すると糖タンパク質側にはN-アセチルグルコサミン(以下GlcNAc)が残った状態となるので、そのGlcNAcをタグとしてENGaseを用いて構造の分かっている糖鎖を転移することで均一な糖鎖を持つ糖タンパク質を得ることができる。
最初にENGaseの糖転移活性が見出されたのは、本発明者らが見出したArthrobacter protophormiae由来のEndo-Aである。Endo-Aの酵素反応系にグルコース、GlcNAcやマンノースを添加すると見かけ上の酵素活性が上昇する現象が発見され、これは加水分解の際に酵素反応の中間体が単糖のOH基を良い受容体として速やかに反応することから糖転移反応が存在することが明らかになった。
CAZy(Carbohydrate-Active enZymes)と呼ばれる糖質関連酵素のデータベースにおいてENGaseはGH(Glycosyl Hydrolase)18, 85 family に分類される。主として糖転移活性を有するENGaseが分類されるのはGH85 familyであり、一方GH18 family はキチン分解酵素関連が分類されている。GH85 familyに属するEndo-Aに関して結晶構造解析が行われ、反応に重要なアミノ酸が同定された。それらのアミノ酸はGH85 familyのENGase間で高度に保存されている。その中で活性中心となる一般酸塩基触媒のグルタミン酸の2つ前に存在するアスパラギンは配向を司る重要なアミノ酸の1つで、このアミノ酸に変異を加えると著しく加水分解能が低下することが明らかになっている。そして、このENGase変異体とオキサゾリン化糖鎖を用いることで効率良く糖転移反応を起こす画期的な方法が見出されている。
ENGaseとして種々の酵素が知られているが(特許文献2を参照)、フコースが付加された糖鎖を特異的に切断する酵素は知られていなかった。
米国特許出願公開第2003/115614号明細書 特開2015-80453号公報
本発明はフコース含有糖鎖を特異的に切断するエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼの提供を目的とする。
本発明者らは、糖タンパク質のアスパラギン結合型(N-型)糖鎖の根本部分に存在するGlcNAc-GlcNAc(キトビオース)間を切断するエンドグリコシダーゼ(ENGase)の探索を行っている。その結果、土壌より単離・同定されたグラム陰性細菌Sphingobacterium sp.が、その培養液にヒトの糖タンパク質に存在する2本鎖複合型糖鎖に作用するENGaseを分泌生産していることを見出した。そして、本菌のゲノム塩基配列を次世代シーケンサーにより解読を行い、その中からENGase候補遺伝子の絞込みを行った。そしてこれらの候補遺伝子を大腸菌で発現して、酵素の精製を行った。得られた精製酵素について、その基質特異性を解析したところ、フコースが付加している2本鎖複合型糖鎖に特異的に作用した。さらに、本発明者らは、Cordyceps属糸状菌由来のENGase及びBeauveria属糸状菌由来のENGaseも同様の基質特異性を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明は以下のとおりである。
[1] α1,6-結合で還元末端のGlcNAc(N-アセチルグルコサミン)にフコースが結合している2本鎖複合型糖鎖に特異的に作用し、該2本鎖複合型糖鎖を切断するが、高マンノース型糖鎖を切断しないエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ。
[2] 以下の(a)又は(b)のスフィンゴバクテリウム属微生物由来の[1]のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ:
(a) 配列番号2、4、6又は8で表されるアミノ酸配列からなるエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ;
(b) 配列番号2、4、6又は8で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつα1,6-結合で還元末端のGlcNAc(N-アセチルグルコサミン)にフコースが結合している2本鎖複合型糖鎖に特異的に作用し、該2本鎖複合型糖鎖を切断するが、高マンノース型糖鎖を切断しない活性を有するエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ。
[3] 以下の(c)又は(d)のCordyceps属糸状菌由来の[1]のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ:
(c) 配列番号12で表されるアミノ酸配列からなるエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ;
(d) 配列番号12で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつα1,6-結合で還元末端のGlcNAc(N-アセチルグルコサミン)にフコースが結合している2本鎖複合型糖鎖に特異的に作用し、該2本鎖複合型糖鎖を切断するが、高マンノース型糖鎖を切断しない活性を有するエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ。
[4] 以下の(e)又は(f)のBeauveria属糸状菌由来の[1]のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ:
(e) 配列番号14で表されるアミノ酸配列からなるエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ;
(f) 配列番号14で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつα1,6-結合で還元末端のGlcNAc(N-アセチルグルコサミン)にフコースが結合している2本鎖複合型糖鎖に特異的に作用し、該2本鎖複合型糖鎖を切断するが、高マンノース型糖鎖を切断しない活性を有するエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ。
[5] 以下の(a)又は(b)のスフィンゴバクテリウム属微生物由来の[1]のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼをコードするDNA:
(a) 配列番号2、4、6又は8で表されるアミノ酸配列からなるエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ;
(b) 配列番号2、4、6又は8で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつα1,6-結合で還元末端のGlcNAc(N-アセチルグルコサミン)にフコースが結合している2本鎖複合型糖鎖に特異的に作用し、該2本鎖複合型糖鎖を切断するが、高マンノース型糖鎖を切断しない活性を有するエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ。
[6] 以下の(c)又は(d)のCordyceps属糸状菌由来の[1]のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼをコードするDNA:
(c) 配列番号12で表されるアミノ酸配列からなるエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ;
(d) 配列番号12で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつα1,6-結合で還元末端のGlcNAc(N-アセチルグルコサミン)にフコースが結合している2本鎖複合型糖鎖に特異的に作用し、該2本鎖複合型糖鎖を切断するが、高マンノース型糖鎖を切断しない活性を有するエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ。
[7] 以下の(e)又は(f)のBeauveria属糸状菌由来の[1]のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼをコードするDNA:
(e) 配列番号14で表されるアミノ酸配列からなるエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ;
(f) 配列番号14で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつα1,6-結合で還元末端のGlcNAc(N-アセチルグルコサミン)にフコースが結合している2本鎖複合型糖鎖に特異的に作用し、該2本鎖複合型糖鎖を切断するが、高マンノース型糖鎖を切断しない活性を有するエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ。
[8] 以下の(g)又は(h)のスフィンゴバクテリウム属微生物由来の[1]のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼをコードするDNA:
(g) 配列番号1、3、5又は7で表される塩基配列を含むDNA
(h) 配列番号1、3、5又は7で表される塩基配列を含むDNAと90%以上の配列同一性を有し、α1,6-結合で還元末端のGlcNAc(N-アセチルグルコサミン)にフコースが結合している2本鎖複合型糖鎖に特異的に作用し、該2本鎖複合型糖鎖を切断するが、高マンノース型糖鎖を切断しない活性を有するタンパク質をコードするDNA。
[9] 以下の(i)又は(j)のCordyceps属糸状菌由来の[1]のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼをコードするDNA:
(i) 配列番号11又は15で表される塩基配列を含むDNA
(j) 配列番号11又は15で表される塩基配列を含むDNAと90%以上の配列同一性を有し、α1,6-結合で還元末端のGlcNAc(N-アセチルグルコサミン)にフコースが結合している2本鎖複合型糖鎖に特異的に作用し、該2本鎖複合型糖鎖を切断するが、高マンノース型糖鎖を切断しない活性を有するタンパク質をコードするDNA。
[10] 以下の(k)又は(l)のBeauveria属糸状菌由来の[1]のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼをコードするDNA:
(k) 配列番号13又は16で表される塩基配列を含むDNA
(l) 配列番号13又は16で表される塩基配列を含むDNAと90%以上の配列同一性を有し、α1,6-結合で還元末端のGlcNAc(N-アセチルグルコサミン)にフコースが結合している2本鎖複合型糖鎖に特異的に作用し、該2本鎖複合型糖鎖を切断するが、高マンノース型糖鎖を切断しない活性を有するタンパク質をコードするDNA。
[11] [1]~[4]のいずれかのエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼを糖タンパク質と接触させることにより、α1,6-結合で還元末端のGlcNAc(N-アセチルグルコサミン)にフコースが結合している2本鎖複合型糖鎖が切断された糖タンパク質を作製する方法。
[12] 糖タンパク質が抗体である、[11]のフコースが結合している2本鎖複合型糖鎖が切断された糖タンパク質を作製する方法。
[13] 糖タンパク質がCHO細胞を用いて産生されたリコンビナントタンパク質である、[11]のフコースが結合している2本鎖複合型糖鎖が切断された糖タンパク質を作製する方法。
本発明のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼは、α1,6-結合で還元末端のGlcNAc(N-アセチルグルコサミン)にフコースが結合している2本鎖複合型糖鎖に特異的に作用し、該2本鎖複合型糖鎖を切断するが、高マンノース型糖鎖を切断しない活性を有し、フコースの付加した糖鎖を切断することができ、その後均一な糖鎖を結合させることにより、均一な糖鎖への酵素的変換を行い、均一な糖鎖を有する抗体を作製することができる。
ORF1152、1188、2117、3046及び3750タンパク質のドメイン構造(A~E)を示す図である。 スフィンゴバクテリウム属微生物由来エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(ENGase)の候補遺伝子を示す図である。 ORF1152、1188、3046及び3750リコンビナントタンパク質の分子量分析の結果を示す図である。 ORF1152、1188、3046及び3750リコンビナントタンパク質の至適pH分析の結果を示す図である。 ORF1152、1188、3046及び3750リコンビナントタンパク質の相対的加水分解酵素活性を示す図である。 ORF1152、1188、3046及び3750リコンビナントタンパク質のIgG(図5A)及びRNaseB(図5B)に対する加水分解活性のSDS-PAGEによる分析結果を示す図である。 Sequence alignment of ORF 1188タンパク質、Beauveria bassiana ARSEF 2860及びCordyceps militaris CM01の配列アラインメントを示す図である。 Beauveria bassiana ARSEF 2860及びCordyceps militaris CM01タンパク質の分子量分析の結果を示す図である。 Beauveria bassiana ARSEF 2860及びCordyceps militaris CM01タンパク質の至適pH分析の結果を示す図である。 Beauveria bassiana ARSEF 2860及びCordyceps militaris CM01タンパク質の相対的加水分解酵素活性を示す図である。 Beauveria bassiana ARSEF 2860及びCordyceps militaris CM01タンパク質のIgG(図9A)及びRNaseB(図9B)に対する加水分解活性のSDS-PAGEによる分析結果を示す図である。 リツキシマブのLC-MS/MSによる糖鎖構造の解析の結果を示す図である。 リツキシマブのLC-MS/MSによるIntact Mass分析の結果を示す図である。 ORF1188を用いた場合の酵素処理前後のリツキシマブの糖鎖構造を示す図である。 Cordyceps属由来ENGaseを用いた場合の酵素処理前後のリツキシマブの糖鎖構造を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
1.α1,6-結合で還元末端のGlcNAc(N-アセチルグルコサミン)にフコースが結合しているフコース含有2本鎖(2分岐)複合型糖鎖に特異的に作用し、該複合型糖鎖を切断するが、高マンノース型糖鎖を切断しないエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ
本発明は、糖タンパク質のN-結合型糖鎖の還元末端側に存在するN,N’-ジアセチルキトビオースの2つのGlcNAcの間(GlcNAc-GlcNAc)を加水分解し、糖鎖をエンド型に遊離する酵素エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼであり、さらに、α1,6-結合で還元末端の(根本の)GlcNAc(N-アセチルグルコサミン)にフコース(コアフコース)が結合している2本鎖複合型糖鎖(N-グリコシド結合複合型糖鎖)に特異的に作用し、該2本鎖複合型糖鎖を切断するが、高マンノース型糖鎖を切断しないエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼである。複合型糖鎖であっても還元末端(根本)部分にフコースが結合していない複合型糖鎖は切断しない。ここで、還元末端のGlcNAc残基にα1,6結合でフコースが付加している糖鎖を糖鎖の分枝の数により、「Fucosyl-biantennary」(2本鎖)、「Fucosyl-triantennary」(3本鎖)、「Fucosyl-tetraantennary」(4本鎖)のように表す。N-結合型糖鎖は、タンパク質のアミノ酸配列のAsn-任意のアミノ酸-Ser/Thrで表される糖鎖結合配列のアスパラギン残基に結合する。
フコースが結合している糖鎖としては、1~4本鎖複合型糖鎖が挙げられるが、本発明のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼはフコースが根元に結合した2本鎖(2分岐)複合型糖鎖に強く作用し、切断する。
本発明のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼが作用しない高マンノース型糖鎖は、Man残基からなる糖鎖であり、高マンノース型糖鎖としては、3個から9個のマンノースが結合したMan3型~Man9型糖鎖が挙げられる。例えば、6個のマンノースが結合した糖鎖は、Man6GlcNAc2Asnで表される。
従来から知られていたEndo-CC1は、複合体糖鎖には作用できるがフコースを含有する複合型糖鎖には作用できず、Endo-SはヒトIgGに特異的に作用できるがフコースを含有する複合型糖鎖には作用できない。
本発明のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼは、スフィンゴバクテリウム属微生物由来であり、スフィンゴバクテリウム属微生物(Sphingobacterium sp.)から単離することができる。本発明のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼは、GH(Glycoside Hydrolase)ファミリー18に属する。
本発明のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼとして、ORF1152、ORF1188、ORF2117、ORF3046及びORF3750と称する酵素が挙げられる。
ORF1152、ORF1188、ORF2117、ORF3046及びORF3750の分子量は、それぞれ、約37600、36300、129000、30200及び38800である。また、いずれの糖鎖もピリジルアミノ化(PA化)糖鎖を用いて測定した場合の至適pHは、pH3付近であるが、基質がIgGの場合は、pH5付近で糖鎖を切断する活性が高い。
ORF1152と称するエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼをコードするDNAの塩基配列を配列番号1に、アミノ酸配列を配列番号2に示す。
ORF1188と称するエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼをコードするDNAの塩基配列を配列番号3に、アミノ酸配列を配列番号4に示す。
ORF3046と称するエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼをコードするDNAの塩基配列を配列番号5に、アミノ酸配列を配列番号6に示す。
ORF3750と称するエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼをコードするDNAの塩基配列を配列番号7に、アミノ酸配列を配列番号8に示す。
ORF2177と称するエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼをコードするDNAの塩基配列を配列番号9に、アミノ酸配列を配列番号10に示す。
また、本発明のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼは、冬虫夏草であるCordyceps属糸状菌由来のものも含み、Cordyceps属糸状菌から単離することができる。Cordyceps属糸状菌として、例えば、Cordyceps militaris CM01株が挙げられる。Cordyceps属糸状菌由来のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼを単に「Cordyceps」と称することがある。Cordyceps属糸状菌由来のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼをコードするDNAの塩基配列を配列番号11に、アミノ酸配列を配列番号12に示す。また、大腸菌を用いてリコンビナントタンパク質を産生するために大腸菌用にコドンを最適化した塩基配列を配列番号15に示す。
Cordyceps属糸状菌由来のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼの分子量は、約34200である。また、いずれの糖鎖もピリジルアミノ化(PA化)糖鎖を用いて測定した場合の至適pHは、pH2.5付近であるが、基質がIgGの場合は、pH5付近で糖鎖を切断する活性が高い。
さらに、本発明のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼは、昆虫感染菌であるBeauveria属糸状菌由来のものも含み、Beauveria属糸状菌から単離することができる。Beauveria属糸状菌として、例えば、Beauveria bassiana ARSEF 2860が挙げられる。Beauveria属糸状菌由来のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼを、単に「Beauveria bassiana」と称する場合がある。Beauveria属糸状菌由来のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼをコードするDNAの塩基配列を配列番号13に、アミノ酸配列を配列番号14に示す。また、大腸菌を用いてリコンビナントタンパク質を産生するために大腸菌用にコドンを最適化した塩基配列を配列番号16に示す。
Beauveria属糸状菌由来のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼの分子量は、約34200である。また、いずれの糖鎖もピリジルアミノ化(PA化)糖鎖を用いて測定した場合の至適pHは、pH2.5付近であるが、基質がIgGの場合は、pH5付近で糖鎖を切断する活性が高い。
本発明のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼは、α1,6-結合で還元末端のGlcNAc(N-アセチルグルコサミン)にフコースが結合している複合型糖鎖に特異的に作用し、該複合型糖鎖を切断するが、高マンノース型糖鎖を切断しない活性を有する限り、当該アミノ酸配列において少なくとも1個、好ましくは1若しくは数個のアミノ酸に欠失、置換、付加等の変異が生じてもよい。
例えば、配列番号2、4、6、8、10及び12のいずれかで表わされるアミノ酸配列の少なくとも1個、好ましくは1又は数個(例えば1~9個、さらに好ましくは1~5個、特に好ましくは1若しくは2個)のアミノ酸が欠失してもよく、配列番号2、4、6、8、10及び12のいずれかで表わされるアミノ酸配列に少なくとも1個、好ましくは1又は数個(例えば1~9個、さらに好ましくは1~5個、特に好ましくは1若しくは2個)のアミノ酸が付加してもよく、あるいは、配列番号2、4、6、8、10及び12のいずれかで表わされるアミノ酸配列の少なくとも1個、好ましくは1又は数個(例えば1~9個、さらに好ましくは1~5個、特に好ましくは1若しくは2個)のアミノ酸が他のアミノ酸に置換してもよい。
このような配列番号2、4、6、8、10及び12のいずれかのアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列として、配列番号2、4、6、8、10及び12のいずれかのアミノ酸配列と、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool at the National Center for Biological Information(米国国立生物学情報センターの基本ローカルアラインメント検索ツール))等(例えば、デフォルトすなわち初期設定のパラメータ)を用いて計算したときに、少なくとも85%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上の配列同一性を有しているものが挙げられる。
このような配列番号2、4、6、8、10及び12のいずれかのアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質は配列番号2、4、6、8、10及び12のいずれかのアミノ酸配列を有するタンパク質と実質的に同一である。
また、配列番号1、3、5、7、9及び11に表される塩基配列からなるDNAと相補的な配列からなるDNAと下記のストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができるDNAであって、α1,6-結合で還元末端のGlcNAc(N-アセチルグルコサミン)にフコースが結合している複合型糖鎖に特異的に作用し、該複合型糖鎖を切断するが、高マンノース型糖鎖を切断しない活性を有するタンパク質をコードするDNAも本発明のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼをコードするDNAに含まれる。すなわち、DNAを固定したフィルターを用いて、0.7~1.0MのNaCl存在下、68℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1~2倍濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSCとは150mM NaCl、15mM クエン酸ナトリウムからなる)を用い、68℃で洗浄することにより同定することができる条件をいう。あるいは、サザンブロッティング法によりニトロセルロース膜上にDNAを転写、固定後、ハイブリダイゼーション緩衝液〔50% フォルムアミド、4×SSC、50mM HEPES(pH7.0)、10×デンハルツ(Denhardt, s)溶液、100μg/mlサケ精子DNA〕中で42℃で一晩反応させることによりハイブリッドを形成することができるDNAである。
また、配列番号1、3、5、7、9及び11に表される塩基配列からなるDNAとBLAST(Basic Local Alignment Search Tool at the National Center for Biological Information(米国国立生物学情報センターの基本ローカルアラインメント検索ツール))等(例えば、デフォルトすなわち初期設定のパラメータ)を用いて計算したときに、少なくとも85%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上の配列同一性を有しているDNAであって、α1,6-結合で還元末端のGlcNAc(N-アセチルグルコサミン)にフコースが結合している2本鎖複合型糖鎖に特異的に作用し、該2本鎖複合型糖鎖を切断するが、高マンノース型糖鎖を切断しない活性を有するタンパク質をコードするDNAも本発明のエンドグリコシダーゼをコードするDNAに包含される。
さらに、上記DNAに対するRNA、又は該RNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができるRNAであって2本鎖複合型糖鎖に特異的に作用し、該2本鎖複合型糖鎖を切断し遊離させ、かつ糖鎖を転移させる活性を有するタンパク質をコードするRNAも本発明に含まれる。
本発明は、α1,6-結合で還元末端のGlcNAc(N-アセチルグルコサミン)にフコースが結合している2本鎖複合型糖鎖に特異的に作用し、該2本鎖複合型糖鎖を切断し遊離させ、かつ糖鎖を転移させる活性を有するエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼをも包含する。該酵素は高マンノース型糖鎖を切断しないので、高マンノース型糖鎖を転移させることはできない。
2.本発明の酵素の産生
本発明のα1,6-結合で還元末端のGlcNAc(N-アセチルグルコサミン)にフコースが結合している2本鎖複合型糖鎖に特異的に作用し、該2本鎖複合型糖鎖を切断するが、高マンノース型糖鎖を切断しないエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼは、スフィンゴバクテリウム属微生物(Sphingobacterium sp.)、Cordyceps属糸状菌、又はBeauveria属糸状菌を培養し、製造することができ、これらの微生物の培養液等の培養物からアミノ酸配列を指標に単離することができる。また、本発明のα1,6-結合で還元末端のGlcNAc(N-アセチルグルコサミン)にフコースが結合している2本鎖複合型糖鎖に特異的に作用し、該2本鎖複合型糖鎖を切断するが、高マンノース型糖鎖を切断しないエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼは、該酵素をコードするDNAを宿主微生物に導入し、該微生物を培養することにより組換え酵素として製造することができる。例えば、適当なベクターに本発明のDNAを連結(挿入)することにより発現ベクターを作製し、該発現ベクターを宿主微生物に導入し宿主微生物を形質転換すればよい。
同様に、本発明のα1,6-結合で還元末端のGlcNAc(N-アセチルグルコサミン)にフコースが結合している2本鎖複合型糖鎖に特異的に作用し、該2本鎖複合型糖鎖を切断するが、高マンノース型糖鎖を切断しないエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼは、該酵素をコードするDNAを宿主微生物に導入し、該微生物を培養することにより組換え酵素として製造することができる。例えば、適当なベクターに本発明のDNAを連結(挿入)することにより発現ベクターを作製し、該発現ベクターを宿主微生物に導入し宿主微生物を形質転換すればよい。
本発明のDNAを挿入するためのベクターは、大腸菌等の細菌、酵母又は動物細胞等の宿主細胞中で複製可能なものであれば特に限定されず、例えば、プラスミドDNA、ファージDNA等が挙げられる。発現ベクターの構築に用いられるベクターDNAは、広く普及した入手の容易なものが用いられる。例えば、pETベクター、pQEベクター、pColdベクター、pUC19ベクター等が挙げられる。
本発明の発現ベクターの構築方法は、特に限定されるものではなく常法により行うことができる。
本発明の発現ベクターで形質転換された宿主細胞は、本発明のDNAを発現し得るものであれば特に制限されないが、例えば、細菌としては大腸菌、枯草菌等が、酵母としてはサッカロマイセス・セレビィシエ等が、動物細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、サルCOS細胞、マウス線維芽細胞等が挙げられる。
本発明は、上記DNAを含む宿主細胞をDNAの発現可能な条件下で培養して、α1,6-結合で還元末端のGlcNAc(N-アセチルグルコサミン)にフコースが結合している2本鎖複合型糖鎖に特異的に作用し、該2本鎖複合型糖鎖を切断するが、高マンノース型糖鎖を切断しないエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼを産生させ、該酵素を回収することを含むα1,6-結合で還元末端のGlcNAc(N-アセチルグルコサミン)にフコースが結合している2本鎖複合型糖鎖に特異的に作用し、該2本鎖複合型糖鎖を切断するが、高マンノース型糖鎖を切断しないエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼの製造方法を包含する。
さらに、本発明は、上記DNAを含む宿主細胞をDNAの発現可能な条件下で培養して、α1,6-結合で還元末端のGlcNAc(N-アセチルグルコサミン)にフコースが結合している2本鎖複合型糖鎖に特異的に作用し、該2本鎖複合型糖鎖を切断するが、高マンノース型糖鎖を切断しないエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼを産生させ、該酵素を回収することを含む酵素の製造方法を包含する。
宿主細胞により産生された酵素は、例えばゲル濾過クロマトグラフィー、限外濾過、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、クロマトフォカシング、等電点電気泳動法、ゲル電気泳動法等の公知の精製法を単独又は組み合わせて精製することができる。
3.本発明の酵素の利用
本発明のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼは、α1,6-結合で還元末端のGlcNAc(N-アセチルグルコサミン)にフコースが結合している2本鎖複合型糖鎖に特異的に作用し、該2本鎖複合型糖鎖を切断するが、高マンノース型糖鎖を切断しない。本発明のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼを用いることにより、フコースの付加した糖鎖を切断することができ、その後均一な糖鎖を結合させることにより、均一な糖鎖を有する糖タンパク質を作製することができる。
現在、抗体医薬が広く利用されているが、CHO細胞(チャイニーズハムスターの卵巣細胞)等の動物細胞を用いて産生された抗体に結合している糖鎖のほとんどにフコースが付加さている。本発明のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼを用いることにより、フコースの付加した糖鎖を切断することができ、その後均一な糖鎖を結合させることにより、均一な糖鎖への酵素的変換を行い、均一な糖鎖を有する抗体を作製することができる。ヒト抗体を含む抗体医薬品等の糖タンパク質医薬品の活性や、体内動態において、糖鎖の存在が非常に重要な役割を果たしており、本発明のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼを用いることにより、均一な抗体医薬品等の糖タンパク質医薬品を作製することができる。
本発明は、本発明のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼを糖タンパク質と接触させることにより、α1,6-結合で還元末端のGlcNAc(N-アセチルグルコサミン)にフコースが結合している2本鎖複合型糖鎖を切断する方法、及び本発明のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼを糖タンパク質と接触させることにより、α1,6-結合で還元末端のGlcNAc(N-アセチルグルコサミン)にフコースが結合している2本鎖複合型糖鎖が切断された糖タンパク質を作製する方法を包含する。
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
1. 実験材料及び方法
1-1使用株及びベクター
本研究ではサブクローニングに用いる形質転換の宿主として大腸菌Escherichia coli XL1-Blueを使用し、異種タンパク質発現に用いる宿主としてE. coli BL21(DE3) 、を用いた。また本研究で使用したSphingobacterium sp. は土壌より単離したものを用いた。
Sphingobacterium sp.の遺伝子にはpET32b(+)及びpET50b(+)を使用した。
1-2 培地組成
大腸菌及びSphingobacterium sp. の培養にはLB培地(1.0% Tryptone, 1.0% NaCl, 0.5% Yeast extract, pH7.0)、SOC培地 (2.0% peptone, 0.05% NaCl, 0.5% Yeast extract, 0.49% MgSO4, 0.36% Glucose, pH7.0) 、MMI培地(Tryptone 12.5 g/l, Yeast extract 25 g/l, NaCl 8.5 g/l, 2 M Tris-HCl(pH 7.0) 10 ml/l, Glycerol 4 ml/l)を用いた。
担子菌Coprinopsis cirenerea, Serpula lacrymans, Coniophora puteanaの培養にはマツタケ培地(0.5% エビオス錠(EBIOS), 2% Glucose、製造:アサヒビール株式会社、販売:田辺製薬株式会社)を用いた。
1-3 培養条件
大腸菌は37℃で培養し、試験管で培養する際は約170 rpmで培養した。Sphingobacterium sp.は30℃で培養し、試験管で培養する際は200 rpmで培養した。担子菌類は20℃で培養し、フラスコで培養する際は100 rpmで培養した。
1-4 DNA,RNAの調製
1-4-1 大腸菌プラスミドの調製
大腸菌プラスミドの調製にはSigma-Aldrich社製 GenElute(商標) HP Plasmid Miniprep Kitを用いた。方法はメーカーのプロトコルに従った。
1-4-2 Sphingobacterium sp. DNAの調製
Sphingobacterium sp. 菌体からのDNAの調製はゲノム抽出キットであるTaKaRa NucleoSpin(登録商標)Tissueを用いた。操作手順はそのプロトコルに従った。
1-5 電気泳動
1-5-1 アガロースゲル電気泳動
泳動装置はATTO社製のCROSSPOWER3500及びCONSTAPOWER3300を用いた。泳動用TAE Buffer (40mM Tris-acetate、1mM EDTA)に1%になるようにアガロースを加え0.5 mg/mLとなるようにエチジウムブロマイドを添加した。6×サンプルバッファー(0.25% Bromophenol blue、30% Glycerol)を試料に加え100 Vで電気泳動を行った。トランスイルミネーターを用いてDNAバンドを検出し、必要な場合はFUJIFILM社製LAS-4000 mini/PCシステムを用いて撮影した。撮影の手順などについては製品のプロトコルに従った。
1-5-2 SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)
SDS-PAGEはトリス-グリシンの不連続バッファー系を用いる方法に従った。分離ゲルには目的の検出タンパク質のサイズに応じて8~16%ゲル及びATTO社製e-PAGEL 15%、5~20%ゲルを使用した。
1-6 アガロースゲルからのDNAの抽出
GL science社製MonoFas(登録商標)DNA精製キットIを用いて行った。方法はメーカーのプロトコルに従った。
1-7 PCR法
PCR装置は、タカラバイオ社製PCR Thermal Cycler PERSONAL及びBiometra社製T- Gradient Thermal Cyclerを用いた。
1-8 In-Fusion反応を用いたDNAの連結
末端に15塩基程度の相同配列を持った2つのDNA断片はIn-Fusion反応によって相同組換えを起こし、連結することができる。本実験ではClontech社製のIn-Fusion HD Enzymeキットを使用した。操作手法はそのプロトコルに従った。
1-9 大腸菌コンピテント細胞の作製と形質転換
大腸菌コンピテント細胞の作製と形質転換は、Inoue法(Inoue H et al., Gene 96(1990)23-28)に従った。
1-10 DNA塩基配列の決定(シーケンス)
塩基配列の決定は、BigDye Terminator Cycle Sequencing Kitを用いて行った。サンプルの調製方法は、BigDye Terminator Cycle Sequencingのプロトコルに従った。
調製したサンプルは九州大学大学院医学研究院 教育研究支援センターに配列解析を依頼した。
1-11 タンパク質定量
タンパク質の定量はPIERCE社のBCA Protein Assay Reagent Kitを用いた。方法はキットのプロトコルに従った。
1-12 タンパク質の精製
発現タンパク質はHisタグを融合させているためNiとの相互作用を利用した精製方法をとった。使用したのはGE Healthcare社製のHisTrap(商標)FF 1 ml であり実験手順はそのプロトコルに従った。使用したbufferは100 mM Tris-HCl (pH 7.5)であった。
精製したタンパク質はMillipore社製のAmicon(登録商標)Ultra 0.5 mlを用いて20 mM Tris-HCl (pH 7.5)にバッファー交換した。その際バッファーの塩濃度が高い状態で濃縮するとタンパク質が凝集してしまう場合があったため、精製タンパク溶液を超純水で約10倍に希釈した後にカラムにいれた。
1-13 大腸菌による異種タンパク質発現とその調製
ENGase発現ベクターを大腸菌BL-21 DE3 Codon+に形質転換した。得られた形質転換体をMMI+Amp(30μg/ml)+Cm(30μg/ml)培地5 mlに接種、37℃で12時間培養した。pET-23bベクターを用いて発現させる場合、250 mlのLB+Amp、Cm培地にOD600=0.01となるように培養液を接種、30℃、200 rpmで12時間培養した。pET-32b, pET-50bベクターを用いて発現させる場合、250 mlのLB+Amp(pET-32b)or Kan(30μg/ml)(pET-50b)、Cm培地にOD600=0.03となるように培養液を接種、30℃、200 rpmで約4時間 OD600=0.5となるまで培養した。その培養液に終濃度0.1 mMとなるようにIPTGを添加した後、15℃、160 rpmでタンパク質発現量に応じて12~72h培養した。培養液を7000×gで7分間遠心分離して集菌、上清を捨てて、菌体を破砕バッファー5 ml加えて懸濁した。懸濁液を15 ml容チューブに菌液2 mlを入れ、氷上で超音波破砕した。(UD-201 TOMY社)(破砕条件OUT PUT 5、DUTY 70(10 sec氷上破砕10 sec氷上静置)2サイクル)破砕した溶液を15400×gで10分間遠心分離、上清を回収した。上清をフィルターに通してHis-Tag精製を行った。
1-14 HRV3C proteaseによるタグの切断
pET50bベクターで発現させたタンパク質にはNusタグが融合されるがこのタグはHRV3C認識サイトを融合点前に保有しておりHRV3C proteaseによって切断が可能であった。HRV3C ProteaseはNovagen社製を使用し、操作手順は製品のプロトコルに従った。
1-15 ENGaseの加水分解活性測定
1-15-1 ENGaseの薄層クロマトグラフィー(TLC)による活性測定
ダンシルクロライド(Dns)で蛍光標識したDns-Asn-Glycochain 0.1μg/μl、20 mMバッファー(酵素によってpH6.0 or pH7.5を使用)、3 ng/μl Enzyme、Total 10μlとなるように混合して、37℃で1時間又は12時間インキュベートした。この反応液を縦10 cmの長さのTLC用シリカプレートに下から1 cmのラインに2.5μlアプライした。これを1-ブタノール:酢酸:水=3:1:1の展開溶媒で展開した。9割方展開溶媒が上がってきたところで、シリカゲルプレートを取り出してドライヤーで乾かし、FUJIFILM社製LAS-4000 mini/PCシステムを用いて基質及び、加水分解物であるDns-Asn-GlcNAcを検出した。基質としてオボアルブミン由来の高マンノース型、2本鎖複合型、3本鎖複合型、4本鎖複合型糖を用いた。
1-15-2 HPLCによる活性測定
基質特異性の決定
増田化学社製又はタカラバイオ社製のピリジルアミノ(PA)で蛍光標識された各種PA化糖鎖 2 pmol、20 mMリン酸バッファー(pH=6.0)、3 ng/μl Enzymeを計10μlとなるように混合し、37℃で10分間反応させ、10%トリクロロ酢酸(TCA)を2μl加えて反応を停止した。PA化糖鎖には、高マンノース型糖鎖としてMan3、5、6、8、9型の5種類、複合型糖鎖は二本鎖シアロ型、二本鎖アシアロ型、二本鎖アガラクト型、三本鎖アシアロ型、四本鎖アシアロ型、バイセクティング型の6種類の計11種類の構造の糖鎖と反応させ、その反応速度の比を求めた。この反応液をGLサイエンス社製のHPLC装置を用いて分析を行った。カラムはWako社製のWakosil 5C18を使った。展開溶媒は50 mM酢酸アンモニウムバッファー(pH=4.0)、0.15%ブタノールを用い、流速は1.5 ml/min、カラム温度は40℃、蛍光はexcitation 320 nm、emission 400 nmで分析し、加水分解物であるPA-GlcNAcのピーク面積からそれぞれの基質に対するENGaseの反応速度を比較した。
Endo-CC1の糖タンパク質の糖鎖を基質とした酵素活性測定
市販の糖タンパク質10μg、100mM Tris-HCl (pH=7.5)、1μg Enzymeを計10μlとなるように混合し、37℃で12 h反応させ、サンプル化とともに反応を停止させた。サンプル化したタンパク質はSDS-PAGEで分離し、ATTO社製EzStainAQua(登録商標)を用いて染色した。操作手順はプロトコルに従った。基質となる糖タンパク質として高マンノース型糖鎖を持つRNase B(シグマ社製)、2本鎖複合型糖鎖を持つ抗体であるリツキシマブ(Rituximab)(リツキサン(登録商標)(全薬工業社製))を用いた。
1-15-3 リツキシマブのLC-MS/MSによる糖鎖構造の決定
Waters社が販売している糖鎖構造解析キット「Glycoworks Rapi-Fluor」をLC-MS/MSにより使用してリツキシマブの糖鎖構造の解析をおこなった。LC-MS/MSの分析条件は以下のとおりであった(A液の25~100%勾配)。
装置;Waters Vion IMS
カラム;Waters ACCUITY UPLC Glycan BEH Amide 130A 1.7um
2.1e150mm(1.7um)
カラム温度;80℃
流速;0.4ml/min
A液;50mm ギ酸(pH4.4)
B液;アセトニトリル
1-15-4 ORF1188及びCordyceps属由来ENGaseによるリツキシマブの糖加水分解
ORF1188及びCordyceps属由来ENGaseによりリツキシマブの切断を行い、LC-MS/MSを用いて、酵素処理前後のリツキシマブの糖鎖を確認し、糖鎖が切断された後に、GluNac-Fucoseのみを持つリツキシマブになるかどうかの評価をおこなった。
ORF1188を用いた場合の酵素反応条件は以下のとおりであった。
リツキシマブ;20μg
ORF1188;10μg
反応バッファー;酢酸バッファーpH3.5
反応温度;30℃
反応時間:18時間
また、Cordyceps属由来ENGaseを用いた場合の酵素反応条件は以下のとおりであった。
リツキシマブ;100μg
ORF1188;1μg
反応バッファー;酢酸バッファーpH3.5
反応温度;37℃
反応時間:48時間
2. 結果及び考察
Sphingobacterium sp.由来のENGaseの探索
Sphingobacterium sp.は、桜の木の根元の土壌中(北緯33.445678, 東経130.665851)より単離した3本鎖、4本鎖複合型糖鎖に作用することができる酵素を生産するバクテリアである。本実施例ではSphingobacterium sp.のゲノム中の遺伝子の中から3本鎖、4本鎖複合型糖鎖に作用するENGase遺伝子の同定を行った。
2-1 Sphingobacterium sp.からのゲノム抽出
単離した菌はLB培地で培養可能であったため、5 mlのLB培地で培養し、集菌したものからTaKaRa NucleoSpin(登録商標)Tissueを用いてゲノム抽出を行った。収量は6.3μgであった。
2-2 Sphingobacterium sp.の全ゲノム配列の決定
抽出したSphingobacterium sp.の全ゲノム配列を解析した。その結果、抽出したゲノムはContigが14であり、ORFは5770存在することが分かった。さらにそれらのORFをBLASTで検索することでグリコシダーゼ関連遺伝子が196存在することも分かった。ENGaseはGH18、85 familyに属していることから、この2つのGH Familyに属する遺伝子を絞り込んだ。GH85に属するグリコシダーゼは一つも存在せず、GH18に属するグリコシダーゼは5つ存在することがわかり、これら5つの遺伝子ORF1152, 1188, 2117, 3046, 3750をENGase候補遺伝子として解析を行った(図1及び図2)。
2-3 大腸菌発現ベクターの作製
ENGase候補遺伝子である5つのORFを大腸菌で発現させるためにpET-32bを用いてクローニングを行った。完成したプラスミドはシーケンシングによりその配列が正しいことを証明した。なお今回用いたpET-32 bはTrx-Tag、S-Tag領域を削除し、C末端にHis-Tagが結合しただけのタンパク質が発現するように設計している。pET-23bを用いてSphingobacterium sp.のORFを大腸菌で発現させようとした場合、発現タンパク質が大腸菌の生育を妨げタンパク質をほとんど得られなかったため、今回はIPTG誘導をかけられるpET-32bを使った。
2-4 Sphingobacterium sp.のORFの大腸菌での発現
それぞれのプラスミドはE. coli BL21 codon+へ形質転換した。形質転換体は250ml LB+Amp, Cm培地で培養した。発現と精製手順は実験手法(1-13)に記載した。精製されたタンパク質はSDS-PAGEで分析し、BCAキットで濃度を測定した。今回の実験でORF2117に関しては、分子量が非常に大きいこと、膜貫通領域を持つことから大腸菌で発現させることができなかった。また、ORF1152, ORF1188はシグナルペプチドを持ち、全長発現させると不溶化してしまったため、シグナルペプチド部分を取り除いた配列を発現させた。
その結果、4つのORF2117を除くGH18ファミリーについて、それぞれほぼ単一タンパク質にまで精製することができた(図3-1)。そこでこれらのタンパク質についてエンドグリコシダーゼ活性を測定した。その結果、2本鎖複合型糖鎖であるダンシル化SGPに対して、全て酵素活性を示したため、本酵素の至適pHを測定した。測定の結果、いずれの酵素の極めて低い至適pHを持っており、pH3付近で活性が最大であることがわかった(図3-2)。ORF1188はpH5においてもpH3における活性の約40%の活性を示しており、弱酸性条件でも糖鎖遊離反応は可能である。
2-5 ENGaseの基質特異性の解析
スフィンゴバクテリウムゲノムに存在するENGaseの基質特異性を調べるために、市販のPA化糖鎖を基質として反応を行った。その結果、4つの酵素ともにα1,6-結合で根本部分にフコースが結合している糖鎖に特異的に作用することがわかった(図4)。すなわち、図4に示すように、fucosyl sialobiantennary、fucosyl asialobiantennary、及びfucosyl agalactobiantennaryに、この順番で強く作用し、糖鎖を切断した。一方、フコースが付加されていないsialobiantenary、asialobiantenary、高マンノース糖鎖はほとんど切断しなかった。4つの酵素のアミノ酸配列の相同性はそれほど高くないにもかかわらず、基質特異性が極めて類似していることは非常に興味深い。また、これまでMan6GlcNAc2Asnなどの高マンノース型糖鎖を切断しないENGaseの報告は全くない。一方、スフィンゴバクテリウム属細菌の4つの酵素はいずれも、高マンノース型糖鎖を全く、もしくはほとんど切断できないことがわかった(図4)。さらに2本鎖複合型糖鎖の場合にも、フコースが付加している糖鎖の方が、分解速度が高いことが明らかになった。このような酵素もこれまで全く報告がなく、本実施例において取得したスフィンゴバクテリウム属細菌のENGaseは従来の酵素とは基質特異性が大きく異なっていることがわかった。
2-6 ENGaseによる糖タンパク質糖鎖の遊離
これまでの実験では、PA化糖鎖を基質としていた。そこで実際に本酵素が糖タンパク質糖鎖にも作用して、遊離することが可能かについて検討を行った。糖タンパク質の基質としては、フコースを含む複合型糖鎖を持つIgG抗体であるリツキシマブと、高マンノース型糖鎖を持つブタ膵臓リボヌクレアーゼBを用いた。まずリツキシマブと各精製酵素を30℃にて反応後、SDS-PAGEで分子量の変化を調べた。コントロールとしてリツキシマブ糖鎖をほとんど切断しないEndo-CCと良く切断するEndo-Sについて調べた。その結果、やはりEndo-Sは糖鎖を良く遊離することがわかった(図5)。スフィンゴバクテリウムのENGaseについて調べたところ、ORF1188と1152についてはEndo-Sと同等の脱糖鎖活性を示した。しかしORF3046と3750については、その活性は比較的低いものであった。特にORF3750の酵素については、PA化糖鎖の場合は他の酵素と類似した基質特異性を示したが、リツキシマブの糖鎖をほとんど遊離することができなかった(図5A)。
次に高マンノース型糖鎖を持つリボヌクレアーゼBを基質として反応を行った。その結果、Endo-CC1はリボヌクレアーゼBにも作用したのに対して、スフィンゴバクテリウム属細菌の酵素は全く作用しなかった(図5B)。以上の結果からPA化糖鎖実験で、高マンノース型糖鎖に作用しないという結果が出たことと一致するものであった。
以上のようにスフィンゴバクテリウム属細菌のENGaseはIgGの糖鎖切断に極めて有用な酵素であることが強く示唆された。
2-7 CordycepsとBeauveriaのホモログ酵素の特性解析
スフィンゴバクテリウム属の4つのENGaseはこれまで報告されたENGaseとは全く基質特異性が異なっていることがわかった。特にORF1152と1188はIgGの脱糖鎖に有用であると考えられた。そこでこれらの酵素と相同性の高い遺伝子が存在するかをデータベースにて解析を行った。その結果、ORF1152と相同性の高い遺伝子が、冬虫夏草であるCordyceps属糸状菌に、また昆虫感染菌であるBeauveria属糸状菌にも存在することがわかった(冬虫夏草データ(図6)、Beauveria bassiana ARSEF 2860(株名)及びCordyceps militaris CM01(株名)。そこで、これら2つの遺伝子についてDNAの合成を行い、大腸菌ベクターに組み込んで発現・精製を行った。その結果、両酵素ともに単一タンパク質にまで精製することができた(図7-1)。さらに両酵素の至適pHを調べたところ、両酵素ともにpH2.5の酢酸バッファーで最も高い活性を示した(図7-2)。
PA化糖鎖を用いて基質特異性を調べたところ、スフィンゴバクテリウム属細菌のENGaseと非常に類似した特異性を示すことがわかった。すなわち両酵素ともにα1,6結合のフコースが根本のGlcNAc残基に結合した複合型糖鎖に高い特異性を示した(図8)。すなわち、図8に示すように、fucosyl sialobiantennary、fucosyl asialobiantennary、及びfucosyl agalactobiantennaryに、この順番で強く作用し、糖鎖を切断した。一方、フコースが付加されていないsialobiantenary、asialobiantenary、高マンノース糖鎖はほとんど切断しなかった。さらに糖タンパク質糖鎖にも作用させたところ、両酵素ともにIgGであるリツキサンの糖鎖を良く遊離し(図9A)、さらに高マンノース型糖鎖を持つリボヌクレアーゼBには作用しなかった(図9B)。
以上の結果から、Cordyceps属およびBeauveria属糸状菌由来のENGaseもフコース含有糖鎖に高い特異性を示す酵素であること、IgGから糖鎖を効率良く遊離できることを明らかにすることができた。
2-8 リツキシマブのLC-MS/MSによる糖鎖構造の決定
リツキシマブの解析の結果、約96.5%の糖鎖が、コアフコースが付いた2分岐糖鎖であることがわかった(図10)。リツキシマブの糖鎖付加箇所は、275番目のAsn2箇所であり、糖鎖構造解析の結果を踏まえたIntact Mass分析の結果、図11の様なG0F/G1Fの組み合わせが最も多く、次にG1F/G1F、G0F/G0F、G1F/G2Fの様な分布になることがわかった。
2-9 ORF1188及びCordyceps属由来ENGaseによるリツキシマブの糖加水分解
ORF1188を用いた場合の酵素処理前後のリツキシマブの糖鎖構造を図12に示す。図12Aが酵素処理前、図12Bが酵素処理後である。同様にCordyceps属由来ENGaseを用いた場合の酵素処理前後のリツキシマブの糖鎖構造を図13に示す。図13Aが酵素処理前、図13Bが酵素処理後である。
図12及び図13は、酵素処理によりリツキシマブの糖鎖がほぼGlcNAc-Fucoseのみの糖鎖となったことを示す。すなわち、ORF1188及びCordyceps属由来ENGaseはコアフコースを有する糖鎖を切断した。
本発明のフコース含有糖鎖を特異的に切断するエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼを用いて、均一な糖鎖を有する抗体医薬等の治療用リコンビナント糖タンパク質を作製することができる。

Claims (6)

  1. 以下の(a)又は(b)のスフィンゴバクテリウム属微生物由来の、α1,6-結合で還元末端のGlcNAc(N-アセチルグルコサミン)にフコースが結合している2本鎖複合型糖鎖に特異的に作用し、該2本鎖複合型糖鎖を切断するが、高マンノース型糖鎖を切断しないエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ:
    (a) 配列番号2、4、6又は8で表されるアミノ酸配列からなるエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ;
    (b) 配列番号2、4、6又は8で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつα1,6-結合で還元末端のGlcNAc(N-アセチルグルコサミン)にフコースが結合している2本鎖複合型糖鎖に特異的に作用し、該2本鎖複合型糖鎖を切断するが、高マンノース型糖鎖を切断しない活性を有するエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ。
  2. 以下の(a)又は(b)のスフィンゴバクテリウム属微生物由来の、α1,6-結合で還元末端のGlcNAc(N-アセチルグルコサミン)にフコースが結合している2本鎖複合型糖鎖に特異的に作用し、該2本鎖複合型糖鎖を切断するが、高マンノース型糖鎖を切断しないエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼをコードするDNA:
    (a) 配列番号2、4、6又は8で表されるアミノ酸配列からなるエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ;
    (b) 配列番号2、4、6又は8で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつα1,6-結合で還元末端のGlcNAc(N-アセチルグルコサミン)にフコースが結合している2本鎖複合型糖鎖に特異的に作用し、該2本鎖複合型糖鎖を切断するが、高マンノース型糖鎖を切断しない活性を有するエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ。
  3. 以下の(g)又は(h)のスフィンゴバクテリウム属微生物由来の、α1,6-結合で還元末端のGlcNAc(N-アセチルグルコサミン)にフコースが結合している2本鎖複合型糖鎖に特異的に作用し、該2本鎖複合型糖鎖を切断するが、高マンノース型糖鎖を切断しないエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼをコードするDNA:
    (g) 配列番号1、3、5又は7で表される塩基配列を含むDNA
    (h) 配列番号1、3、5又は7で表される塩基配列を含むDNAと90%以上の配列同一性を有し、α1,6-結合で還元末端のGlcNAc(N-アセチルグルコサミン)にフコースが結合している2本鎖複合型糖鎖に特異的に作用し、該2本鎖複合型糖鎖を切断するが、高マンノース型糖鎖を切断しない活性を有するタンパク質をコードするDNA。
  4. 請求項1記載のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼを糖タンパク質と接触させることにより、α1,6-結合で還元末端のGlcNAc(N-アセチルグルコサミン)にフコースが結合している2本鎖複合型糖鎖が切断された糖タンパク質を作製する方法。
  5. 糖タンパク質が抗体である、請求項記載のフコースが結合している2本鎖複合型糖鎖が切断された糖タンパク質を作製する方法。
  6. 糖タンパク質がCHO細胞を用いて産生されたリコンビナントタンパク質である、請求項記載のフコースが結合している2本鎖複合型糖鎖が切断された糖タンパク質を作製する方法。
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